説明

ダイヤル支持構造

【課題】外観品質・組み付け性・操作性を向上させることができるダイヤル支持構造を提供する。
【解決手段】ケース10に収容された可動部材20に連動連結するダイヤル50がケース10に回転自在に支持され、ケース10を覆う意匠部材30の露出口37からダイヤル50の外周部54が露出しているダイヤル支持構造であって、ダイヤル50の側面50S1,50S2に軸部51,52が突設され、ケース10からケース10の外方側に延ばされた軸受け40に軸部51,52が回転自在に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ケースに収容された可動部材に連動連結するダイヤルが前記ケースに回転自在に支持され、
前記ケースを覆う意匠部材の露出口から前記ダイヤルの外周部が露出しているダイヤル支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のダイヤル支持構造は、一例として、自動車の空調装置から送風される空気を車室内に吹き出すルーバーに設けられている。このダイヤル支持構造のダイヤルは、一般的に回転中心に回転軸を持つ。そして、回転軸が軸保持部品に回転自在に差し込まれている。
しかし、このように軸保持部品に回転機能と保持機能を持たせる構造では剛性不足が問題となる。すなわち、片持ち軸構造の場合、軸だけでの保持では剛性が不足するため、乗員がダイヤルを押した時にダイヤルがたわんでしまう。
一方、両持ち軸構造とすると、片持ち軸構造と比べて剛性面で若干有利であるが、見栄えの良いとされる径の大きなダイヤルにすると、乗員からの押圧力に耐え切れずにダイヤルがたわんでしまう。
この問題を改善するため、従来、特許文献1に開示されているように、ダイヤルの軸とは異なる部分からリブを意匠部材(この意匠部材はフィンを有する)から延ばして意匠部材にダイヤルを支持させる技術があった。
特許文献1の技術について詳述すると、ケースの側壁に支持軸が突設されるとともに、ダイヤルの径方向中央部に軸孔が貫通形成されている。そして、前記支持軸が軸孔に挿通され、ダイヤルが前記支持軸を介してケースに支持軸の軸芯周りに回転自在に支持されている。また、前記リブはダイヤルの両側面に半円弧状に突設され、意匠部材(ベゼル)の互いに対向する左右一対の内部の縦壁に前記リブが当接している。この特許文献1の技術のダイヤルは前記回転軸を備えず、回転軸は他部品であるケースに設けられている。(特許文献1の図1〜図3、明細書の段落(0036)など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3386745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、ダイヤルのたわみの防止には有効であるが、ダイヤルと意匠部材が一対一に動く関係性を持っているので、乗員がダイヤルを強く押した時にダイヤルの変形に伴い意匠部材が変形して見栄えが低下することがあった。そして、リブが意匠部材をこすりながら意匠部材に組み付けられ、組み付け後には意匠部材をこすりながら回転することから組み付け性や操作性が悪化していた。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、外観品質・組み付け性・操作性を向上させることができるダイヤル支持構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
ケースに収容された可動部材に連動連結するダイヤルが前記ケースに回転自在に支持され、
前記ケースを覆う意匠部材の露出口から前記ダイヤルの外周部が露出しているダイヤル支持構造であって、
前記ダイヤルの側面に軸部が突設され、
前記ケースから前記ケースの外方側に延ばされた軸受けに前記軸部が回転自在に支持されている点にある。(請求項1)
【0006】
本構造をとることで、堅固な軸受けを設けることができ、乗員がダイヤルを押した時に起きるたわみを防止することができる。
すなわち、本構造のようにケースからダイヤルに向けて軸受けを延ばすことで、乗員がダイヤルを押した時の押し付け方向に対して支持ができるため、ダイヤルのたわみを防止することができる。前記ケースは、例えば自動車のガーニッシュやインストルメントパネル、ダクト等との接続部を有する部品に支持されているため、ケースのより堅固な固定が可能であり、ダイヤルのたわみをより確実に防止することができる。その結果、ダイヤルの変形や、ダイヤルの変形に伴う意匠部材の変形を防止することができ、外観品質を向上させることができる。
また、ダイヤルは見栄えを良くするために、大きな径のものが好まれることがあるが、大きな径のダイヤルは、大きさの分だけカがかかることになる。このように大きなダイヤルを設定した場合やダイヤルを強く押した場合でも、前記インストルメントパネル等の部品に堅固に固定されているケースから軸受けを延ばしているので、軸受けがダイヤルを介して強く押されたとしてもそれを支えるだけの強度を得ることができる。このようにダイヤルの堅固な支持が可能となるため、ダイヤルがたわむことなく、見栄えの良い径の大きなダイヤルを設定することも可能となり、外観品質をより向上させることができる。
上記のように、ダイヤルの変形や、ダイヤルの変形に伴う意匠部材の変形を防止することができることから、意匠部材にダイヤルを支持させる手段としての意匠部材に対する当接リブをダイヤルに設ける必要がなくなる。その結果、ダイヤル側のリブが意匠部材をこすりながら意匠部材に組み付けられることや、組み付け後に意匠部材をこすりながら回転することがなくなって、組み付け性や操作性を向上させることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記軸受けはU字状に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
軸受けを孔状に形成した構造では、組み付け時にダイヤルの軸を軸受けの孔に通す手間がかかるが、本発明の上記構成によれば、ケースから延ばした軸受けをU字状とすることで、ダイヤルの軸部を軸受けの開放部からその軸受けに嵌合させることができ、スムーズな組み付けが可能となる。
また、軸受けをU字状とすることで、ダイヤルとケースの省スペース化につなげることができる。
すなわち、従来のように軸受けを孔状として、軸受けの孔にダイヤルの軸部を差し込む場合、軸部を孔に差し込むための作業スペースがダイヤルの側方に必要となり、ダイヤル付近には組み付けを成立させるためだけに求められる外観上不恰好な空間が存在していた。特に両持ち軸構造の場合は、片方の軸部を孔に差し込んだ後、傾けながらもう一方の軸部を孔に差し込むための大きな作業スペースをとらざるを得なかった。これに対し、本発明では軸受けをU字状とすることで、上記の作業スペースを不要にすることができる。また、軸受けはダイヤルの軸部の根元付近にまで設定することができるようになるため、軸受けでより堅固にダイヤルを支持して確実にダイヤルのたわみを防止しながら、無駄なスペースを作らず、省スペース化を図ることができる。
さらに、ダイヤルのたわみを防止するには、操作者(本構造が自動車に設けられている場合は乗員)からの力がかかる方向に対面する部分を確実に支持すると共に、力のかかる向きと反対側の面にも支持が必要である。これは、ダイヤルを押したときの反動がかかるためであり、この反動も操作者はたわみととらえることがある。そのため、この反動を抑える方向にも支持が必要である。本発明の上記構成によればこのような支持が可能である。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記意匠部材は前記ケースに形成されたケース開口を覆い、
前記ケース開口は下側開口面と上側開口面を備え、
前記軸受けは、縦断面において、前記ケース開口の開口方向とほぼ直交する方向に沿うように前記下側開口面の外方側に配設されて、前記上側開口面の外方側に向かって開口し、
前記ダイヤルはダイヤル軸芯周りに所定の角度内を揺動回転し、
前記ダイヤルが一方の第1ストローク端に位置した状態と他方の第2ストローク端に位置した状態とのいずれの状態にあるかを識別するための識別突起が前記ダイヤルの外周部の操作面に突設され、
前記ダイヤル軸芯を挟んで前記操作面とは反対側のダイヤル部分が切り欠かれて、前記ダイヤルの径方向に沿うダイヤル端面が前記ダイヤルに形成され、
縦断面において、前記ダイヤル端面が、前記上側開口面と前記下側開口面に沿うように、前記ダイヤルを前記軸受けに支持させると、前記識別突起が前記第1ストローク端又は第2ストローク端に位置するよう構成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
前記ダイヤル端面を前記上側開口面と下側開口面に沿わせてダイヤルを上方から下方に軸受けに組み付けて行くことで、ダイヤルを軸受けに所望の向きに正確に組み付けることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記軸部は前記ダイヤルの両側面に突設され、
前記軸受けはケース幅方向で対向する第1支持壁部と第2支持壁部を備え、
前記ダイヤルの一方の側面に突設された一方の軸部が回転自在に嵌合するU字状の第1嵌合部が前記第1支持壁部に形成され、
前記ダイヤルの他方の側面に突設された他方の軸部が回転自在に嵌合するU字状の第2嵌合部が前記第2支持壁部に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
ダイヤルの一方の側面に突設された一方の軸部が、第1支持壁部のU字状の第1嵌合部に回転自在に嵌合し、ダイヤルの他方の側面に突設された他方の軸部が、第2支持壁部のU字状の第2嵌合部に回転自在に嵌合する。これにより、ダイヤルを軸受けで両持ち支持することができて、ダイヤルを安定支持することができ、運転席の乗員と助手席の乗員のどちらがダイヤルにアクセスしても、ダイヤルが乗員からの車幅方向の荷重(外力)に耐えることができて、ダイヤルの耐久性を向上させることができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記第2支持壁部のケース幅方向の両壁面のうち、前記第1支持壁部とは反対側に位置する一方の第1壁面に、前記意匠部材に設けられた被当接部にケース幅方向で当接する第1当接部が設けられ、
前記第2支持壁部の他方の第2壁面に、前記ダイヤルの側面にケース幅方向で当接する第2当接部が設けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
本構造をとることで、ダイヤルと意匠部材の合わせ部に生じる外観不良を抑えることができる。本発明の構造は、ダイヤルと意匠部材との間に直接の位置規制形状などを持たせず、関係性を持たせない構造としている。このような構造の場合には、ダイヤルと意匠部材の合わせ部の隙間が大きくなったり小さくなったりと外観上の不具合を発生させやすい。支持が強固になったとしても、外観上の不具合を誘発してしまっては、支持構造としての意味がなくなる。
しかし、本発明の上記の構造のように直接関係はないものの、ダイヤルと意匠部材に対して位置規制をする前記第1当接部と第2当接部をケース側の第2支持壁部に設けることで、共通の部品(第2支持壁部)を介して、合わせを有する部品同士(ダイヤルと意匠部材)に位置規制の関係性を持たせることが可能になる。これにより、外観不良を最小限に抑えることが可能になる。
【0015】
本発明において、
前記第2支持壁部は、前記下側開口面から前記下側開口面の外方側に突出する板状の第1縦壁と、前記第1縦壁よりも前記第1支持壁部側に位置し、前記第1支持壁部に間隔を空けて対向するように連結壁を介して前記第1縦壁に連結された第2縦壁とを備え、
前記第2縦壁に前記U字状の第2嵌合部が形成され、
前記第2縦壁と前記第1縦壁の間は、前記U字状の第2嵌合部の開口方向と同一方向に開口した軸部収容空間に構成され、
前記第1壁面は前記第1縦壁の壁面であり、
前記第2壁面は前記第2縦壁の壁面であると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0016】
前記第2支持壁部は、前記下側開口面から前記下側開口面の外方側に突出する板状の第1縦壁と、前記第1縦壁よりも前記第1支持壁部側に位置し、前記第1支持壁部に間隔を空けて対向するように連結壁を介して前記第1縦壁に連結された第2縦壁とを備え、前記第2縦壁に前記U字状の第2嵌合部が形成されているから、第2支持壁部が一枚板状に形成されている構造に比べると、第2支持壁の強度を向上させることができる。
そして、前記第1壁面は前記第1縦壁の壁面であり、第1縦壁の壁面に前記第1当接部が設けられ、前記第2壁面は前記第2縦壁の壁面であり、第2縦壁の壁面に前記第2当接部が設けられているから、第1壁面と第2壁面の間隔(すなわち第1当接部と第2当接部の間隔)を確保することができて、ダイヤルと意匠部材の合わせ部をより正確に決めることができる。(請求項6)
【0017】
本発明において、
前記ケースは、自動車の空調装置から送風される空気を車室内に吹き出すルーバーのルーバーケース、
前記可動部材は前記ルーバーケースに内蔵された前記ルーバーの内部フィン、
前記意匠部材は前記ルーバーの車室内側の外部フィンであり、
前記ルーバーケースはインストルメントパネルに取り付けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項7)
【0018】
前記ルーバーの意匠部材には一般にフィンが設けられており、意匠部材が変形すると、前記意匠部材に設けられたフィンも変形してしまう恐れがある。フィンは、室内の快適性能を満足させる最適な方向に風を送れるように形成されているので、変形すると狙いの方向に送風できなくなり、送風性能が低下する。
しかしながら、本発明の上記構成によれば、ダイヤルの変形や、ダイヤルの変形に伴う意匠部材のフィンの変形を防止することができることから、自動車の空調性能の低下を防止することができる。
また、車幅方向中央に配置されるルーバーのダイヤルは、運転席側および助手席側から共にアクセスできることが利便性の向上につながるため、車幅方向でルーバーの中央部にダイヤルがあることが望ましい。しかし、従来、この車幅方向の中央にレイアウトするダイヤルの場合、ダイヤルのたわみと組み付け性を共に満足させることは難しく、例えば、共に満足できた場合には、ルーバー間の意匠幅が広がってしまい、見栄えが悪いなどの別の不具合を伴っていた。
しかし、本発明によれば、前記軸受けをU字形状とすることで、前述のように、ダイヤルとケースの省スペース化を図ることができるから、ルーバー間の意匠幅の広がりをなくしながらダイヤルを車幅方向中央にレイアウトできて、利便性を向上させることができる。(請求項7)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
外観品質・組み付け性・操作性を向上させることができるダイヤル支持構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ルーバーが取り付けられたインストルメントパネルの斜視図
【図2】ルーバーの正面図
【図3】ルーバーの斜視図
【図4】ルーバーケース(ケース)とダイヤルの組み付け構造を示す斜視図
【図5】外部フィン(意匠部材)の斜視図
【図6】ダイヤル支持構造の縦断側面図
【図7】(a)はダイヤルを左上方から見た斜視図、(b)はダイヤルを右上方から見た斜視図
【図8】軸受けの斜視図
【図9】軸受けにダイヤルが支持された状態の斜視図
【図10】ダイヤル支持構造の横断平面図
【図11】図10の要部の拡大図
【図12】ダイヤルの軸受けへの組み付け方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1,図2に示すように、自動車のインストルメントパネル1に上側のルーバー2と下側のルーバー3が取り付けられている。上側のルーバー2と下側のルーバー3は、自動車の空調装置から送風される空気を受け入れるとともに、空気の量を変更調節してその空気を車室内に吹き出す。下側のルーバー3はフィン9を備えている。次に、前記上側のルーバー2(以下「ルーバー2」と称する)について説明する。
【0022】
図3,図4に示すように、前記ルーバー2は、車幅方向に長いボックス状のルーバーケース10(ケースに相当)と、ルーバーケース10に横軸芯O(図6参照)周りに揺動自在に収容された内部フィン20(可動部材に相当)と、ルーバーケース10の車室内側の部分を覆う意匠部材としての外部フィン30(図5参照)と、内部フィン20に連動連結し、外部フィン30に形成された縦長の長方形状の露出口37、及びインストルメントパネル1の露出口1Hから外周部の一部分が露出する円板状(詳しくは扇形の部分が除去された円板状)のダイヤル50とを備え、ダイヤル50の外周部54が乗員に回転操作されるに伴って内部フィン20が横軸芯O周りに揺動して、車室内に吹き出される空気の量が変更調節されるよう構成されている。
【0023】
[ルーバーケース10の構造]
図3,図4,図6に示すように、前記ルーバーケース10は縦断面長方形状に形成され、上壁11・底壁12・前壁・左右一対の側壁13を備えている。図6に示すように、上壁11と底壁12は、車室内側とは反対側の車両前方側になるにつれて下方に位置するように傾斜している。そして、前壁の車幅方向中央部から空調装置の送風ダクトに連通接続する接続ダクト16が突出し、ルーバーケース10の車室内側の端部(車両後方側の端部)にケース開口10Hが形成されている。
【0024】
前記ケース開口10Hはケース幅方向(車幅方向)に長い長方形状に形成され、底壁12の車室内側の端面である下側開口面12Mと、上壁11の車室内側の端面である上側開口面11Mと、左側の側壁13の車室内側の端面である左側開口面13Mと、右側の側壁13の車室内側の端面である右側開口面13Mとを備えている。
【0025】
前記上壁11の車室内側の端部には、インストルメントパネル1に係合連結する複数の係合部15が分散配設されている。また、左右一対の側壁13の車室内側の端部からケース幅方向外側にインストルメントパネル1に対する第1取り付けフランジ14が張り出している。
【0026】
図4に示すように、第1取り付けフランジ14は、車室内側及びケース幅方向内側が開放したボックス状に形成され、第1取り付けフランジ14の車室内側とは反対側の壁部にスクリュー挿通孔14Hが形成されている。
【0027】
また、前記上壁11と底壁12の車幅方向中央部同士を連結する左右一対の縦壁25が設けられている。前記内部フィン20は車幅方向に長い長方形状に形成されて左右一対設けられ、左側の内部フィン20がルーバーケース10の左側の側壁13と左側の縦壁25に架け渡されるとともに、右側の内部フィン20がルーバーケース10右側の側壁13と右側の縦壁25に架け渡されている。また、両縦壁25に後述のダイヤル50に対するU字状の軸受け40が設けられている。この軸受け40の構造及びダイヤル支持構造については後述する。
【0028】
[外部フィン30の構造]
図5に示すように、外部フィン30は格子状に形成されている。外部フィン30の外枠31は車幅方向に長い長方形の環状に形成され、外枠31の上部の長手方向中央部から外枠31の下部の長手方向中央部にわたる左右一対の縦壁49(図10,図11も参照)が設けられ、両縦壁49の車室内側の端部を連結する後壁36が設けられて、この後壁36に前記露出口37が形成されている。後壁36はインストルメントパネル1に覆われている。
【0029】
そして、外枠31の一方の側部31Sと一方の縦壁49との間に上下複数の横フィン32が架け渡され、外枠31の他方の側部31Sと他方の縦壁49との間に上下複数の横フィン32が架け渡されるとともに、外枠31の上部と下部に、前記横フィン32と交差する複数の縦フィン33が架け渡されている。前記横フィン32と縦フィン33から成る格子状のフィン34は非可動式に構成されている。このフィン34が可動式に構成されていてもよい。
【0030】
さらに、外部フィン30の車幅方向の両側部31Sから縦断面コの字状の左右一対の第2取り付けフランジ35が張り出し、第2取り付けフランジ35の車室内側とは反対側の壁部にスクリュー挿通孔35Hが形成されている。
【0031】
また、前記外枠31の下部から横断面コの字状の別の左右一対の第2取り付けフランジ35が車両後方側下方に延びている。この第2取り付けフランジ35の車室内側とは反対側の壁部にもスクリュー挿通孔35Hが形成されている。
【0032】
[ルーバーケース10と外部フィン30の取り付け構造]
ルーバーケース10の車室内側(車両後方側)の端部に形成されたケース開口10Hに外部フィン30が嵌合し(図6参照)、前記外部フィン30の外枠31の両側部31Sの第2取り付けフランジ35が、ルーバーケース10の両側壁13の第1取り付けフランジ14に嵌合し(図3参照)、第2取り付けフランジ35と第1取り付けフランジ14がインストルメントパネル1にスクリューで共締め固定されている。
また、前記外部フィン30の外枠31の下部から張り出す第2取り付けフランジ35がインストルメントパネル1にスクリューで締め付け固定されている。
このように、外部フィン30がルーバーケース10及びインストルメントパネル1に取り付けられてルーバーケース10のケース開口10Hを覆っている。
【0033】
[ダイヤル50の構造及びダイヤル支持構造]
前記ダイヤル50はダイヤル軸芯P周りに所定の角度内を揺動回転し、ダイヤル50が一方の第1ストローク端に位置した状態と他方の第2ストローク端に位置した状態とのいずれの状態にあるかを識別するための長方形状の識別突起53がダイヤル50の外周部54の操作面に突設されている(図7(a),図7(b)参照)。
また、ダイヤル軸芯Pを挟んで前記操作面とは反対側の扇形のダイヤル部分が切り欠かれて、ダイヤル50の径方向に沿うダイヤル端面77がダイヤル50に形成され、縦断面において、ダイヤル端面77が、前記上側開口面11Mと前記下側開口面12Mに沿うように、ダイヤル50を前記軸受け40に支持させると、前記識別突起53が第1ストローク端又は第2ストローク端に位置するよう構成されている。
これにより、前記ダイヤル端面77を上側開口面11Mと下側開口面12Mに沿わせて上方から下方に軸受けに組み付けて行くことで、ダイヤル50を軸受け40に所望の向きに正確に組み付けることができる。
また、ダイヤル50の外周部54の両側部に外周部54の周方向に沿うリブ50Rが突設されている。そして、両リブ50Rの間の外周部54が波形の凹凸状に形成されている。
【0034】
さらに、ダイヤル50の外周部54の周方向の一端部から連結片59が径方向外方側に突出している。連結片59はダイヤル50の径方向に長く形成され、この連結片59に径方向に長い長孔59Hが形成されている。連結片59の突出端部は円弧状に形成されている。
【0035】
前記ダイヤル50の両側面50S1,50S2に断面円形の軸部51,52が突設され、図4,図8〜図11示すように、ルーバーケース10の左右一対の縦壁25から車室内側(ルーバーケース10の外方側に相当)にU字状の軸受け40が延び、この軸受け40に前記軸部51,52が回転自在に両持ち支持されている。前記一方の軸部51と他方の軸部52とダイヤル50の外周面とは同芯状に位置している。
【0036】
前記軸受け40は、縦断面において、前記ケース開口10Hの開口方向とほぼ直交する方向に沿うようにケース開口10Hの下側開口面12Mの外方側に配設されて、ケース開口10Hの上側開口面11Mの外方側に向かって開口している(図6参照)。
【0037】
前記軸受け40はケース幅方向(車幅方向)で対向する第1支持壁部41と第2支持壁部42を備え、ダイヤル50の一方の側面50S1に突設された一方の軸部51が回転自在に嵌合するU字状の第1嵌合部41Kが第1支持壁部41に形成され、ダイヤル50の他方の側面50S2に突設された他方の軸部52が回転自在に嵌合するU字状の第2嵌合部46Kが第2支持壁部42に形成されている。
【0038】
前記他方の軸部52は一方の軸部51よりも大径に、かつ、軸方向の長さが長く形成されている。
前記第2支持壁部42は、前記下側開口面12M(図4参照)から下側開口面12Mの外方側に突出する板状の第1縦壁43と、第1縦壁43よりも第1支持壁部41側に位置し、第1支持壁部41に間隔を空けて対向するように連結壁44を介して前記第1縦壁43に連結された第2縦壁46とを備えている。
そして、第2縦壁46に前記U字状の第2嵌合部46Kが形成され、第2縦壁46と第1縦壁43の間が、U字状の第2嵌合部46の開口方向と同一方向に開口した軸部収容空間45に構成されている。つまり、前記第2支持壁部42はボックス状に形成されている。
【0039】
上記の構成により、ダイヤル50の一方の側面50S1に突設された一方の軸部51が、第1支持壁部41のU字状の第1嵌合部41Kに回転自在に嵌合し、ダイヤル50の他方の側面50S2に突設された他方の軸部52が、第2支持壁部42のU字状の第2嵌合部46Kに回転自在に嵌合する。これにより、ダイヤル50を軸受け40で両持ち支持することができて、ダイヤル50を安定支持することができ、運転席の乗員と助手席の乗員のどちらがダイヤル50にアクセスしても、ダイヤル50が乗員からの車幅方向の荷重(外力)に耐えることができて、ダイヤル50の耐久性を向上させることができる。
【0040】
図11に示すように、前記第2支持壁部42のケース幅方向の両壁面43M,46M、すなわち、第2支持壁部42の第1縦壁43の第1支持壁部41とは反対側の壁面43M(以下、「外側壁面43M」と称する)と、第2縦壁46の第1支持壁部41側の壁面46M(以下、「内側壁面46M」と称する)のうち、前記外側壁面43M(第1支持壁部とは反対側に位置する一方の第1壁面に相当)に、外部フィン30の縦壁49に設けられた被当接部49Tにケース幅方向で当接する第1当接部43M1が設けられている。
また、前記内側壁面46M(第2支持壁部の他方の第2壁面に相当)に、前記ダイヤル50の側面50S2にケース幅方向で当接する第2当接部46M1が設けられている。
【0041】
本構造をとることで、ダイヤル50と外部フィン30の合わせ部に生じる外観不良を抑えることができる。本発明の構造は、ダイヤル50と外部フィン30との間に直接の位置規制形状などを持たせず、関係性を持たせない構造としている。
このような構造の場合には、ダイヤル50と外部フィン30の合わせ部の隙間A(図11参照)が大きくなったり小さくなったりと外観上の不具合を発生させることにつながりやすい。支持が強固になったとしても、外観上の不具合を誘発してしまっては、支持構造としての意味がなくなる。
しかし、本発明の上記の構造のように直接関係はないものの、ダイヤル50と外部フィン30に対して位置規制をする前記第1当接部43M1と第2当接部46M1をルーバーケース10側の前記外側壁面43Mと内側壁面46M第2支持壁部に各別に設けることで、共通の部品(第2支持壁部42)を介して、合わせを有する部品同士(ダイヤル50と外部フィン30)に位置規制の関係性を持たせることが可能になる。これにより、外観不良を最小限に抑えることが可能になる。
【0042】
[ダイヤル50と内部フィン20の連結構造]
図6に示すように、内部フィン20の回転軸にリンク部材21の一端部が固定されており、前記リンク部材21の他端部が、ダイヤル50の連結片59の突出端部にピン70を介して連結している。このようにしてダイヤル50が内部フィン20に連動連結している。これにより、ダイヤル50が乗員に回転操作されると、それに伴って、ピン70が連結片59の長孔59H内を移動しながらリンク部材21が軸芯O周りに揺動して、内部フィン20が軸芯O周りに揺動し、ルーバー3から車室内への空気の吹き出し量が変更調節される。
【0043】
ルーバー2を組み付ける場合、図4に示すように、ルーバーケース10に内部フィン20を取り付けた状態にし、ルーバーケース10に設けた軸受け40にダイヤル50の軸部51,52を差し込み、最後に、外部フィン30をルーバーケース10のケース開口10Hに取り付ける。
【0044】
上記の構成により、
(1) 堅固な軸受け40を設けることができ、乗員がダイヤル50を押したときに生じるたわみを防止することができる。
すなわち、ルーバーケース10からダイヤル50に向けて軸受け40を延ばすことで、乗員がダイヤル50を押した時の押し付け方向に対して支持ができるため、ダイヤル50のたわみを防止することができる。前記ルーバーケース10はインストルメントパネル1に支持されているため、ルーバーケース10のより堅固な固定が可能であり、ダイヤル50のたわみをより確実に防止することができる。その結果、ダイヤル50の変形や、ダイヤル50の変形に伴う外部フィン30の変形を防止することができ、外観品質を向上させることができる。
ダイヤル50は見栄えを良くするために、大きな径のものが好まれることがあるが、大きな径のダイヤル50は、大きさの分だけカがかかることになる。このように大きなダイヤル50を設定した場合やダイヤル50を強く押した場合でも、インストルメントパネル1に堅固に固定されているルーバーケース10から軸受け40を延ばしているので、軸受け40がダイヤル50を介して強く押されたとしてもそれを支えるだけの強度を得ることができる。このように堅固な支持が可能となるため、ダイヤル50がたわむことなく、見栄えの良い径の大きなダイヤル50を設定することも可能となり、外観品質をより向上させることができる。
上記のように、ダイヤル50の変形や、ダイヤル50の変形に伴う外部フィン30の変形を防止することができることから、外部フィン30にダイヤル50を支持させる手段としての外部フィン30に対する当接リブをダイヤル50に設ける必要がなくなる。その結果、ダイヤル50側の当接リブが外部フィン30をこすりながら外部フィン30に組み付けられることや、組み付け後に外部フィン30をこすりながら回転することがなくなって、組み付け性や操作性を向上させることができる。
【0045】
(2) 例えば、軸受けを孔状に形成した構造では、組み付け時にダイヤル50の軸部51,52を軸受けの孔に通す手間がかかるが、本発明の上記構成によれば、ルーバーケース10から延ばした軸受け40をU字状とすることで、ダイヤル50の軸部51,52を軸受け40の開放部からその軸受け40に嵌合させることができ、スムーズな組み付けが可能となる。
また、軸受け40をU字状とすることで、ダイヤル50とルーバーケース10の省スペース化を図ることができる。
すなわち、図12に示すように、例えば、軸受けの第1支持壁41の孔H1にダイヤル50の一方の軸部51を挿入するとともに、軸受けの第2支持壁42の孔H2にダイヤル50の他方の軸部52を挿入する比較例の構造では、他方の軸部52の第2支持壁42の孔H2への挿入作業の際に、一方の軸部51が第1支持壁部41に干渉しないように、第1支持壁部41を第2支持壁部42から本発明の場合の第1支持壁部41の位置よりも距離Bだけ第2支持壁部42から離間させて、作業スペースCを確保する必要がある。
図9において、実線で示す符号41の部品は本発明の第1支持壁部41、二点鎖線で示す符号41の部品は比較例の構造の第1支持壁部41である。
これに対し、本発明では軸受け40をU字状とすることで、前記一方の軸部51が第1支持壁部41に干渉しなくなって、上記の作業スペースを不要にすることができる。また、軸受け40はダイヤル50の軸部51,52の根元付近にまで設定することができるようになるため、より堅固にダイヤル50を支持して確実にダイヤル50のたわみを防止しながら、無駄なスペースを作らず、省スペース化することができる。
また、ダイヤル50のたわみを防止するには、乗員からの力がかかる方向に対面する部分を確実に支持すると共に、力のかかる向きと反対側の面にも支持が必要である。これは、ダイヤル50を押したときの反動がかかるためであり、この反動も操作者はたわみととらえることがある。そのため、この反動を抑える方向にも支持が必要である。本発明の上記構成によればこのような支持が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 インストルメントパネル
10 ケース(ルーバーケース)
10H ケース開口
11M 上側開口面
12M 下側開口面
20 可動部材(内部フィン)
30 意匠部材(外部フィン)
37 露出口
40 軸受け
41 第1支持壁部
41K 第1嵌合部
42 第2支持壁部
43 第1縦壁
43M 第1壁面
43M1 第1当接部
44 連結壁
45 軸部収容空間
46 第2縦壁
46K 第2嵌合部
46M 第2壁面
46M1 第2当接部
49T 被当接部
50 ダイヤル
50S1 ダイヤルの側面(ダイヤルの一方の側面)
50S2 ダイヤルの側面(ダイヤルの他方の側面)
51 軸部(一方の軸部)
52 軸部(他方の軸部)
53 識別突起
54 ダイヤルの外周部
77 ダイヤル端面
P ダイヤル軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに収容された可動部材に連動連結するダイヤルが前記ケースに回転自在に支持され、
前記ケースを覆う意匠部材の露出口から前記ダイヤルの外周部が露出しているダイヤル支持構造であって、
前記ダイヤルの側面に軸部が突設され、
前記ケースから前記ケースの外方側に延ばされた軸受けに前記軸部が回転自在に支持されているダイヤル支持構造。
【請求項2】
前記軸受けはU字状に形成されている請求項1記載のダイヤル支持構造。
【請求項3】
前記意匠部材は前記ケースに形成されたケース開口を覆い、
前記ケース開口は下側開口面と上側開口面を備え、
前記軸受けは、縦断面において、前記ケース開口の開口方向とほぼ直交する方向に沿うように前記下側開口面の外方側に配設されて、前記上側開口面の外方側に向かって開口し、
前記ダイヤルはダイヤル軸芯周りに所定の角度内を揺動回転し、
前記ダイヤルが一方の第1ストローク端に位置した状態と他方の第2ストローク端に位置した状態とのいずれの状態にあるかを識別するための識別突起が前記ダイヤルの外周部の操作面に突設され、
前記ダイヤル軸芯を挟んで前記操作面とは反対側のダイヤル部分が切り欠かれて、前記ダイヤルの径方向に沿うダイヤル端面が前記ダイヤルに形成され、
縦断面において、前記ダイヤル端面が、前記上側開口面と前記下側開口面に沿うように、前記ダイヤルを前記軸受けに支持させると、前記識別突起が前記第1ストローク端又は第2ストローク端に位置するよう構成されている請求項2記載のダイヤル支持構造。
【請求項4】
前記軸部は前記ダイヤルの両側面に突設され、
前記軸受けはケース幅方向で対向する第1支持壁部と第2支持壁部を備え、
前記ダイヤルの一方の側面に突設された一方の軸部が回転自在に嵌合するU字状の第1嵌合部が前記第1支持壁部に形成され、
前記ダイヤルの他方の側面に突設された他方の軸部が回転自在に嵌合するU字状の第2嵌合部が前記第2支持壁部に形成されている請求項3記載のダイヤル支持構造。
【請求項5】
前記第2支持壁部のケース幅方向の両壁面のうち、前記第1支持壁部とは反対側に位置する一方の第1壁面に、前記意匠部材に設けられた被当接部にケース幅方向で当接する第1当接部が設けられ、
前記第2支持壁部の他方の第2壁面に、前記ダイヤルの側面にケース幅方向で当接する第2当接部が設けられている請求項4記載のダイヤル支持構造。
【請求項6】
前記第2支持壁部は、前記下側開口面から前記下側開口面の外方側に突出する板状の第1縦壁と、前記第1縦壁よりも前記第1支持壁部側に位置し、前記第1支持壁部に間隔を空けて対向するように連結壁を介して前記第1縦壁に連結された第2縦壁とを備え、
前記第2縦壁に前記U字状の第2嵌合部が形成され、
前記第2縦壁と前記第1縦壁の間は、前記U字状の第2嵌合部の開口方向と同一方向に開口した軸部収容空間に構成され、
前記第1壁面は前記第1縦壁の壁面であり、
前記第2壁面は前記第2縦壁の壁面である請求項5記載のダイヤル支持構造。
【請求項7】
前記ケースは、自動車の空調装置から送風される空気を車室内に吹き出すルーバーのルーバーケース、
前記可動部材は前記ルーバーケースに内蔵された前記ルーバーの内部フィン、
前記意匠部材は前記ルーバーの車室内側の外部フィンであり、
前記ルーバーケースはインストルメントパネルに取り付けられている請求項1〜6のいずれか一つに記載のダイヤル支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−23173(P2013−23173A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162961(P2011−162961)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【出願人】(508348657)イオインダストリー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】