説明

ダイレクトデジタルシンセサイザ、光変調装置、光反射測定装置および光通信システム

【課題】フィルタ次数が低いローパスフィルタを用いた場合であっても所望の周波数および波形を有する信号を高精度に生成することができるダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)を提供する。
【解決手段】DDS100は、累積加算部110,位相加算部120および位相振幅変換部130等を備える。累積加算部110は、基準クロックclockが一定周期で指示する各タイミングで周波数指令値pを累積加算して、当該累積加算値を出力する。位相加算部120は、この累積加算値に位相オフセット値qを加算して、当該加算値Rを出力する。位相振幅変換部130は、この加算値Rを位相値とし、波形標本数M個のデジタル振幅値のうち、位相値Rを値Mで除算したときの剰余の値rに対応するデジタル振幅値を出力する。周波数指令値pと波形標本数Mとの最大公約数は周波数指令値pより小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトデジタルシンセサイザ、光変調装置、光反射測定装置および光通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて光ファイバ線路の状態を監視するために光反射測定装置が用いられる。光反射測定技術としては、光時間領域反射計測法(OTDR、optical time domain reflectometry)、光周波数領域反射計測法(OFDR、optical frequency domain reflectometry)、および、光コヒーレンス領域反射計測法(OCDR、optical coherence domain reflectometry)が知られている(特許文献1〜3を参照)。
【0003】
これら何れの技術においても、光反射測定装置から出力された監視光が光ファイバ線路を伝搬する際に生じる反射光が光反射測定装置に入力される。光反射測定装置において、この反射光に基づいて解析が行われて、光ファイバ線路における光反射率分布が測定される。そして、この光反射率分布から、光ファイバ線路の終端の有無が検出され、また、光ファイバ線路の途中での故障の有無が検出される。
【0004】
このような光反射測定装置において、終端位置または故障位置を検出する際の位置分解能は、小さいことが要求され、例えば数cmまたは数mmであることが要求される。例えば、OCDRでは、数mmの位置分解能で測定するためには、高精度に光周波数が変調された監視光を生成することが必要である。また、光周波数の変調を行うには、ダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS、direct digital synthesizer)から出力されるアナログ信号を変調信号として変調器に与え、この変調器において変調信号に基づいて光の周波数を変調することができる。ダイレクトデジタルシンセサイザを用いれば、高精度に光周波数が変調された監視光を生成することができると期待される。
【0005】
ダイレクトデジタルシンセサイザは、特許文献4や非特許文献1,2に記載されているように、所望の周波数および波形を有するデジタル振幅値の時系列信号を出力することができる。また、ダイレクトデジタルシンセサイザは、AD変換部を備えることにより、デジタル振幅値の時系列信号をアナログ振幅値の時系列信号に変換して、このアナログ振幅値の時系列信号を出力することができる。AD変換部から出力されるアナログ振幅値の時系列信号は、所望の周波数成分の他に、不要な高周波数成分をも含む。そこで、ダイレクトデジタルシンセサイザは、ローパスフィルタを備えることにより、このアナログ振幅値の時系列信号のうち周波数成分を選択的に出力して、不要な高周波数成分が抑制されて所望の周波数成分からなるアナログ信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−014456号公報
【特許文献2】特開2010−139253号公報
【特許文献3】特開2010−175502号公報
【特許文献4】特開平8−293733号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Analog Devices, “1 GBPS Direct Digital Synthesizer with 14-Bit DAC, AD9912,” Rev.D.
【非特許文献2】Ken Gentile, “Direct DigitalSynthesis (DDS) with a Programmable Modulus,” Analog Devices Application Note,AN-953, Rev.0.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ローパスフィルタは、不要な高周波数成分が遮断周波数から離れているほど不要な高周波数成分を充分に除去することができるので、この観点からは遮断周波数が低い方が望ましい。一方で、ローパスフィルタは、所望の周波数成分からなるアナログ信号を精度よく得るためには、なるべく多くの高周波成分まで遮断することなく出力する方がよいので、この観点からは遮断周波数が高い方が望ましい。これらの2つの要求を両立する一般的な解決策は、フィルタ次数を高くして、可能な限り遮断周波数を高くすることである。しかし、この方法では、ローパスフィルタを構成する回路要素が増えるので、信号対雑音比(S/N)が悪くなる。したがって、ローパスフィルタのフィルタ次数を高くすることには限界がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、フィルタ次数が低いローパスフィルタを用いた場合であっても所望の周波数および波形を有する信号を高精度に生成することができるダイレクトデジタルシンセサイザを提供することを目的とする。また、本発明は、このようなダイレクトデジタルシンセサイザを用いて光の変調を高精度に行うことができる光変調装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、このような光変調装置を用いて位置分解能が優れた反射率分布測定を行うことができる光反射測定装置および光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のダイレクトデジタルシンセサイザは、(1) 一定周期の基準クロックを入力するとともに、周波数指令値pを入力し、基準クロックが一定周期で指示する各タイミングで周波数指令値pを累積加算して、当該累積加算値を出力する累積加算部と、(2) 累積加算部から出力される累積加算値を位相値とし、波形標本数M個のデジタル振幅値のうち、位相値を値Mで除算したときの剰余の値に対応するデジタル振幅値を出力する位相振幅変換部と、を備えることを特徴とする。さらに、本発明のダイレクトデジタルシンセサイザは、周波数指令値pと波形標本数Mとの最大公約数が周波数指令値pより小さいことを特徴とする。
【0011】
或いは、本発明のダイレクトデジタルシンセサイザは、(1) 一定周期の基準クロックを入力するとともに、周波数指令値pを入力し、基準クロックが一定周期で指示する各タイミングで周波数指令値pを累積加算して、当該累積加算値を出力する累積加算部と、(2) 累積加算部から出力される累積加算値に位相オフセット値を加算して、当該加算値を出力する位相加算部と、(3) 位相加算部から出力される加算値を位相値とし、波形標本数M個のデジタル振幅値のうち、位相値を値Mで除算したときの剰余の値に対応するデジタル振幅値を出力する位相振幅変換部と、を備えることを特徴とする。さらに、本発明のダイレクトデジタルシンセサイザは、周波数指令値pと波形標本数Mとの最大公約数が周波数指令値pより小さいことを特徴とするダイレクトデジタルシンセサイザ。
【0012】
本発明のダイレクトデジタルシンセサイザは、基準クロックを入力するとともに、位相振幅変換部から出力されるデジタル振幅値を入力し、基準クロックが一定周期で指示する各タイミングでデジタル振幅値をアナログ振幅値に変換して、このアナログ振幅値を出力するAD変換部を更に備えるのが好適である。また、本発明のダイレクトデジタルシンセサイザは、AD変換部から出力されるアナログ振幅値を入力し、このアナログ振幅値の時系列信号のうち低周波数成分を選択的に出力するローパスフィルタを更に備えるのが好適である。
【0013】
本発明のダイレクトデジタルシンセサイザにおいては、波形標本数Mと周波数指令値pとの最大公約数は、周波数指令値pの100の1以下であることが好適であり、4以下であるのが更に好適であり、1であるのが最も好適である。特に、波形標本数Mと周波数指令値pとの最大公約数が1であるときは、波形標本数Mが2のべき乗の数であり、周波数指令値pが奇数であるのが好適である。また、波形標本数Mが素数であるのも好適である。
【0014】
本発明のダイレクトデジタルシンセサイザは、位相振幅変換部から出力されるデジタル振幅値の時系列信号が正弦波信号であるのが好適であり、また、位相振幅変換部から出力されるデジタル振幅値の時系列信号が三角波信号であるのも好適である。
【0015】
本発明の光変調装置は、上記の本発明のダイレクトデジタルシンセサイザと、ダイレクトデジタルシンセサイザから出力されるアナログ信号に基づいて光の強度,位相または光周波数を変調する変調部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の光反射測定装置は、上記の本発明の光変調装置と、この光変調装置により変調された監視光を出力する光源部と、この光源部から出力される監視光が測定対象物を伝搬する際に生じる反射光に基づいて、測定対象物における光反射率分布を測定する測定部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
或いは、本発明の光反射測定装置は、上記の本発明の光変調装置と、この光変調装置により光周波数が変調された監視光を出力する光源部と、この光源部から出力される監視光の一部を分岐して参照光として出力する光分岐部と、光源部から出力された監視光が測定対象物を伝搬する際に生じる反射光および光分岐部から出力される参照光に基づいて、測定対象物における光反射率分布を測定する測定部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
或いは、本発明の光反射測定装置は、上記の本発明の光変調装置と、この光変調装置により光周波数が変調されて櫛歯状の光波コヒーレンス関数を有する監視光を出力する光源部と、この光源部から出力される監視光の一部を分岐して参照光として出力する光分岐部と、光源部から出力された監視光が測定対象物を伝搬する際に生じる反射光および光分岐部から出力される参照光に基づいて、OCDR測定により測定対象物における光反射率分布を測定する測定部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の光通信システムは、光ファイバ線路により互いに光学的に接続された局側端末と加入者端末との間で光通信を行う光通信システムであって、光ファイバ線路の途中に設けられた光結合部と、この光結合部に光学的に接続された上記の本発明の光反射測定装置と、を備え、光反射測定装置から出力される監視光を、光結合部を経て光ファイバ線路に伝搬させ、監視光が光ファイバ線路を伝搬する際に生じる反射光を、光結合部を経て光反射測定装置に入力させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のダイレクトデジタルシンセサイザは、フィルタ次数が低いローパスフィルタを用いた場合であっても、所望の周波数および波形を有する信号を高精度に生成することができる。本発明の光変調装置は、このようなダイレクトデジタルシンセサイザを用いることで、光の変調を高精度に行うことができる。また、本発明光反射測定装置および光通信システムは、このような光変調装置を用いることで、位置分解能が優れた反射率分布測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザ100の構成図である。
【図2】本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザ100のAD変換部140から出力されるアナログ振幅値vの時間的変化の例を示す図である。
【図3】瞬時周波数算出の補助図である。
【図4】瞬時周波数f'と設定周波数fとの誤差周波数のフィルタ次数nに対する依存性を纏めた図表である。
【図5】波形標本数Mと周波数指令値pとの比M/pをパラメータとした第n高調波までのフーリエ級数の三角波に対する頂点近傍の20%を除く区間における誤差を示すグラフである。
【図6】本実施形態の光反射測定装置13を備える光線路監視システム1の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザ100の構成図である。ダイレクトデジタルシンセサイザ100は、累積加算部110,位相加算部120,位相振幅変換部130,AD変換部140およびローパスフィルタ150を備える。これらのうち、累積加算部110,位相加算部120および位相振幅変換部130は、デジタル処理を行うものであるので、共通基板上に集積化されているのが好適である。AD変換部140およびローパスフィルタ150は、この共通基板上に形成されていてもよいし、この共通基板とは別に設けられていてもよい。
【0024】
累積加算部110は、一定周期の基準クロックclockを入力するとともに、周波数指令値pを入力し、基準クロックclockが一定周期で指示する各タイミングで周波数指令値pを累積加算して、当該累積加算値を位相加算部120へ出力する。累積加算部110は、加算回路111およびラッチ回路112を含む。加算回路111は、ラッチ回路112から出力される累積加算値pと周波数指令値pとを加算して、その加算値pn+1(=p+p)をラッチ回路112へ出力する。ラッチ回路112は、基準クロックclockが一定周期で指示するタイミングで加算回路111から出力される加算値pn+1をラッチし、そのラッチした値を位相加算部120へ出力する。ラッチ回路112の初期出力値を値0とすると、基準クロックclockによる第n回の指示タイミングでラッチ回路112から出力される累積加算値pはnpとなる。
【0025】
位相加算部120は、累積加算部110から出力される累積加算値pに位相オフセット値qを加算して、当該加算値R(=p+q)を位相振幅変換部130へ出力する。位相振幅変換部130は、位相加算部120から出力される加算値Rを位相値とし、波形標本数M個のデジタル振幅値のうち、位相値Rを値Mで除算したときの剰余の値rに対応するデジタル振幅値をAD変換部140へ出力する。
【0026】
位相振幅変換部130は、剰余値rとデジタル振幅値との対応関係をテーブルとして記憶しておいて、剰余値rに対応するデジタル振幅値を表から取り出し、そのデジタル振幅値を出力してもよい。また、位相振幅変換部130は、上記の対応関係に応じた論理演算回路を有し、剰余値rに対応するデジタル振幅値を演算により求め、そのデジタル振幅値を出力してもよい。
【0027】
AD変換部140は、基準クロックclockを入力するとともに、位相振幅変換部130から出力されるデジタル振幅値を入力し、基準クロックclockが一定周期で指示する各タイミングでデジタル振幅値をアナログ振幅値に変換して、このアナログ振幅値をローパスフィルタ150へ出力する。ローパスフィルタ150は、AD変換部140から出力されるアナログ振幅値を入力し、このアナログ振幅値の時系列信号のうち低周波数成分を選択的に出力する。
【0028】
なお、位相オフセット値qの加算が不要である場合には、位相加算部120は設けられなくてもよい。この場合、位相振幅変換部130は、累積加算部110から出力される累積加算値を位相値とし、波形標本数M個のデジタル振幅値のうち、位相値を値Mで除算したときの剰余の値に対応するデジタル振幅値をAD変換部140へ出力する。
【0029】
このようなダイレクトデジタルシンセサイザ100を用いて、下記(1)式〜(4)式を満たす信号g(t)を生成する場合を考える。tは時間変数である。信号gは、周期Tの信号である。信号gの1周期をM等分したときの各時刻nΔTでの信号gの値をγと表す。ΔTは標本化周期である。Mは波形標本数である。波形標本数Mは2以上の整数である。nは0〜M−1の整数である。(2)式は、信号gがフーリエ級数で表されることを示している。
【0030】
【数1】

【0031】
【数2】

【0032】
【数3】

【0033】
【数4】

【0034】
AD変換部140から出力されるアナログ振幅値vは下記(5)式〜(7)式で表される。τは、AD変換部140出力時の標本化周期である。
【0035】
【数5】

【0036】
【数6】

【0037】
【数7】

【0038】
図2は、本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザ100のAD変換部140から出力されるアナログ振幅値vの時間的変化の例を示す図である。波形標本数Mを16とした。細線は、{p=1、q=0}の場合のアナログ振幅値vの時間的変化を示す。太線は、{p=3、q=6}の場合のアナログ振幅値vの時間的変化を示す。また、破線は、{p=1、q=0}の場合にローパスフィルタ150から出力されるべきアナログ信号gの時間的変化を示す。図中の数字0〜15は、{p=1、q=0}の場合と{p=3、q=6}の場合との間の対応関係を表すための便宜上のものである。
【0039】
この図からも判るように、一般に、アナログ振幅値vの時系列信号の周波数は、周波数指令値pに対して比例する。したがって、周波数指令値pは、所望の周波数を有する信号gが得られるよう適切な値に設定される。
【0040】
なお、ここでは簡略化のため波形標本数Mを16としたが、通常、波形標本数Mは大きな値とされる。例えば、非特許文献1では波形標本数Mは248である。また、標本化数列{γn}の周期性から、有効範囲は、0<p≦M/2、および、0≦q<Mである。
【0041】
上記(6)式から、AD変換部140の出力値vは、Mの周期性を有するので、下記(8)式の形で表せる。ここで、上記(2)式〜(4)式に注意すると、(9)式から(10)式が導かれる。ただし、δijはクロネッカーのデルタである。
【0042】
【数8】

【0043】
【数9】

【0044】
【数10】

【0045】
ここで、ダイレクトデジタルシンセサイザの典型的な動作条件、すなわち、波形標本数Mが2のべき乗の数である場合について考える。周波数指令値pが下記(11)式で表されるとすると、上記(10)式から下記(12)式が導かれる。また、上記(8)式および(12)式から下記(13)式が得られる。ただし、fはAD変換部140の出力値vの基本周波数であり、fは波形再生時の標本化周波数である。
【0046】
【数11】

【0047】
【数12】

【0048】
【数13】

【0049】
【数14】

【0050】
【数15】

【0051】
次に、ダイレクトデジタルシンセサイザの特殊な動作条件の例として、波形標本数Mが素数である場合について考える。波形標本数Mが2のべき乗の数である場合と同様に考えると、上記(12)式および(13)式それぞれは、下記(16)式および(17)式のようになる。ここで、(17)式右辺の2番目の総和演算は、−(M/2以下の最大の整数) から +(M/2以下の最大の整数) までの範囲で行われる。
【0052】
【数16】

【0053】
【数17】

【0054】
ところで、AD変換部140の出力値vは、上記(5)式で表されるように周期τでステップ的に変化するから、所望の周波数成分の他に、不要な高周波数成分をも含む。この不要な高周波成分は、(13)式や(17)式における折り返し周波数成分であり、ローパスフィルタ150により除去される。一般に、ローパスフィルタは、不要な高周波数成分が遮断周波数から離れているほど不要な高周波数成分を充分に除去することができるので、この観点からは遮断周波数が低い方が望ましい。一方で、ローパスフィルタは、所望の周波数成分からなるアナログ信号を精度よく得るためには、なるべく多くの高周波成分まで遮断することなく出力する方がよいので、この観点からは遮断周波数が高い方が望ましい。これらの2つの要求を両立する一般的な解決策は、フィルタ次数を高くして、可能な限り遮断周波数を高くすることである。しかし、この方法では、ローパスフィルタを構成する回路要素が増えるので、信号対雑音比(S/N)が悪くなる。したがって、ローパスフィルタのフィルタ次数を高くすることには限界があるので注意が必要である。
【0055】
上記(13)式から、波形標本数Mが2のべき乗の数である場合は、周波数指令値pが十分に大きな奇数の因数2s+1を含むとき、折り返し周波数を十分に高周波側に偏移できることがわかる。また、上記(17)式から、波形標本数Mが素数である場合は、周波数指令値pが十分に大きいとき、折り返し周波数を十分に高周波側に偏移できることがわかる。
【0056】
したがって、周波数指令値pは、緩い条件としては(18)式を満たすようにすればよく、理想的な条件としては(19)を満たすようにすればよい。ここで、gcd(p,M) は、周波数指令値pと波形標本数Mとの最大公約数を表す。周波数指令値pと波形標本数Mとの最大公約数は、周波数指令値pより小さく、好ましくは周波数指令値pの100分の1以下であり、より好ましくは4以下であり、また、理想的には1である。
【0057】
【数18】

【0058】
【数19】

【0059】
波形標本数Mが2のべき乗の数である場合、周波数指令値pが1だけ異なる場合の周波数差はf/M程度である。この周波数差を一致と見做せるなら、周波数指令値pを奇数に限定することができる。
【0060】
次に、ローパスフィルタ150から正弦波信号を出力する場合、すなわち、位相振幅変換部130から出力されるデジタル振幅値の時系列信号を正弦波信号(ただし、周期τでステップ的に振幅が変化する信号)とする場合について説明する。
【0061】
既に説明したとおり、OCDRでは、数mmの位置分解能で測定するためには、高精度に光周波数が変調された監視光を生成することが必要である。ダイレクトデジタルシンセサイザから出力されるアナログ信号を変調信号として用いて光の周波数を変調することで、光周波数が変調された監視光を生成することができる。このとき、ダイレクトデジタルシンセサイザは、周波数の揺らぎが0.05ppm以下に抑制された正弦波信号を生成する必要がある。本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザは、以下に説明するように、このような正弦波信号を生成することができる。
【0062】
一般に、正弦波の複素フーリエ係数は下記(20)式で表されるので、p>0 について、上記(12)式から下記(21)式が得られる。(20)式および(21)式それぞれにおいて右辺は復号同順である。ただし、波形標本数Mを2のべき乗の数とした。また、上記(8)式および(21)式から下記(22)式が得られる。
【0063】
【数20】

【0064】
【数21】

【0065】
【数22】

【0066】
ここで、AD変換部140の出力値vの瞬時周波数をfとすると、図3に示された瞬時周波数算出の補助図を参考にすれば、下記(23)式が成り立つことがわかる。ただし、εは、AD変換部140の出力値vのひずみであり、下記(24)式で表される。
【0067】
【数23】

【0068】
【数24】

【0069】
また、ローパスフィルタ150の遮断周波数をfとし、ローパスフィルタ150のフィルタ次数をnとすると、ローパスフィルタ150の出力値v'の瞬時周波数f'について下記(25)式が得られる。
【0070】
【数25】

【0071】
【数26】

【0072】
以上から、周波数指令値pを十分大きな奇数に限定すれば、容易に純度の高い正弦波が得られることがわかる。
【0073】
ここで、非特許文献1に記載されたダイレクトデジタルシンセサイザを例にして、最良ケースと最悪ケースとを対比する。このダイレクトデジタルシンセサイザでは、標本化周波数fは1GHzであり、波形標本数Mは248である。ローパスフィルタ150の遮断周波数fを500MHzとする。最悪ケースでは周波数指令値pを240とし、最良ケースでは周波数指令値pを240+1とする。ローパスフィルタ150の出力値v'の周波数は3.91MHzとなり、最良ケースと最悪ケースとの間の周波数差は3.6μHzである。OCDRで20km遠方において5mmを識別するために必要な周波数差は0.75Hzであるので、或る周波数fを実現するのに奇数および偶数の何れを選ぶかは全く問題とならない。
【0074】
図4は、瞬時周波数f'と設定周波数fとの誤差周波数のフィルタ次数nに対する依存性を纏めた図表である。誤差周波数の単位はHzである。同図から、最良ケースでは2次のフィルタを使えば原理的な周波数の揺らぎはないと考えてよい。したがって、この条件下で発生する周波数の揺らぎは電源雑音などが原因と考えてよい。一方、最悪ケースではOCDRの要求仕様である周波数揺らぎ0.05ppm以下を実現するためには5次のフィルタを必要とすることがわかる。
【0075】
これまでの議論から、周波数指令値pが奇数であれば最良ケースとなるので、2次以上のフィルタを使えば、p=240−1と p=240+1 とは、原理的な周波数の揺らぎを含めて10−18Hz以下の精度で分離することができる。しかし、5次のフィルタを使っても、p=240の場合の原理的な周波数の揺らぎは、周波数指令値換算で5桁の範囲に及ぶ。
【0076】
なお、ローパスフィルタ150の遮断周波数fを低くすれば、フィルタ次数に関する制限は緩くなる。例えば、f=50MHzでは4次のフィルタを使うことにより、また、f=5MHz では3次のフィルタを使うことにより、最悪ケースでも周波数揺らぎ0.05ppm以下を実現することができる。
【0077】
次に、ローパスフィルタ150から三角波信号を出力する場合、すなわち、位相振幅変換部130から出力されるデジタル振幅値の時系列信号を三角波信号(ただし、周期τでステップ的に振幅が変化する信号)とする場合について説明する。
【0078】
一般に、三角波の複素フーリエ係数は、下記(27)式で表される。特に、波形標本数M=2 を十分に大きい値とし、周波数指令値pを奇数に限定すれば、lがMと比較して充分に小さいとき、下記(28)式がよい近似となる。これから、AD変換部140の出力値vは下記(29)式で表される。
【0079】
【数27】

【0080】
【数28】

【0081】
【数29】

【0082】
図5は、波形標本数Mと周波数指令値pとの比M/pをパラメータとした第n高調波までのフーリエ級数の三角波に対する頂点近傍の20%(挿入図の網掛け部分)を除く区間における誤差を示すグラフである。同図から、波形標本数Mの半分程度に相当する高調波成分までの和を取るときに誤差が最小となることがわかる。したがって、ローパスフィルタ150の遮断周波数fは標本化周波数fの半分程度とすればよい。
【0083】
三角波信号値と或る一定値とを大小比較することで、その比較結果として方形波パルス信号を生成することができる。この方形波パルス信号は、様々な分野においてゲートを開閉するためのゲート信号として用いられ得る。方形波パルスのデューティ比は誤差5%以下が望ましいので、三角波信号の誤差は1%程度に抑えるべきである。したがって、波形標本数Mと周波数指令値pとの比M/pは30以上が望ましい。使用する周波数fが1.5MHz程度であることから、標本化周波数fは45MHz以上であることが望ましい。
【0084】
次に、ダイレクトデジタルシンセサイザ100を用いた光変調装置、この光変調装置を用いた光反射測定装置、および、この光反射測定装置を用いた光通信システムについて、図6を用いて説明する。
【0085】
図6は、本実施形態の光反射測定装置13を備える光線路監視システム1の構成図である。この図に示される光線路監視システム1は、局舎10に設けられた局側端末11とN個の加入者端末21〜21とが光分岐器20を介して互いに光ファイバ線路により光学的に接続されていて、局側端末11と各加入者端末21との間で光通信を行うものである。ここで、Nは2以上の整数であり、nは1以上N以下の各整数である。このような光線路監視システム1の形態は、PON(Passive Optical Network)と呼ばれる。分岐数Nは4〜32が典型的である。
【0086】
局舎10には、局側端末11の他に光結合器12および光反射測定装置13が設けられている。局側端末11と光結合器12とは光ファイバ線路31により光学的に接続されている。光結合器12と光分岐器20とは第1の光線路32により光学的に接続されている。光分岐器20と各加入者端末21とは第2の光線路33により光学的に接続されている。第1の光線路および第2の光線路は光ファイバで構成される線路であり、好ましくはITU-T G.652準拠のシングルモード光ファイバで構成される。各第2の光線路33上であって加入者端末21近くには、通信光を透過させ監視光を反射させる光フィルタ22が配置されているのが好ましい。一般的には通信光として1.26μm〜1.62μmの波長の光が用いられるため、監視光としては1.65μm帯(1.64〜1.66μm)の光を用いることが好ましく、従って光フィルタも1.65μm帯の光を選択的に反射するフィルタであることが好ましい。このような光フィルタはファイバグレーティングなどにより実現することができる。また、光結合器12には光反射測定装置13も光学的に接続されている。
【0087】
光反射測定装置13は、OCDR測定を行って測定対象物(第1の光線路32,光分岐器20,第2の光線路33,光フィルタ22,加入者端末21)を監視する。光反射測定装置13は、光源41、強度変調器42、光結合器43、監視光ゲート部44、光サーキュレータ45、偏波変調器46、遅延光ファイバ47、光結合器51、バランス検波器52、第1フィルタ53、電気信号ゲート部54、第2フィルタ55、RF検波器56、AD変換器57、制御部61および信号発生器62〜65を備える。
【0088】
光源41は、出力光の光周波数を変調することができるものであって、例えば半導体DFBレーザ光源や外部共振器付き半導体レーザ光源等である。光源41は、信号発生器62から出力される周期的な直接変調信号Aを入力して、この直接変調信号Aに基づいて光周波数が周期的に変調された光を出力する。この光源41からの出力光は櫛歯状の光波コヒーレンス関数を有する。信号発生器62は、本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザを含み、このダイレクトデジタルシンセサイザから出力される正弦波信号を直接変調信号Aとして光源41へ与える。ダイレクトデジタルシンセサイザを含む信号発生器62および光源41は、本実施形態の光変調装置を構成しており、光の変調を高精度に行うことができる。
【0089】
強度変調器42は、信号発生器63から出力される周期的な外部変調信号Bを入力して、この外部変調信号Bに基づいて光源41からの出力光を強度変調して出力する。外部変調信号Bは直接変調信号Aに同期した周期的な信号である。この強度変調器42からの出力光は、強度変調によって光スペクトルが整形されたものとなり、光波コヒーレンス関数に含まれるノイズが低減されたものとなる。信号発生器63は、本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザを含み、このダイレクトデジタルシンセサイザから出力される三角波信号に基づいて生成した外部変調信号Bを強度変調器42へ与える。ダイレクトデジタルシンセサイザを含む信号発生器63および強度変調器42は、本実施形態の光変調装置を構成しており、光の変調を高精度に行うことができる。
【0090】
光結合器43は、光源41から出力され必要に応じて強度変調器42により強度変調された光を入力し、この入力光を監視光と参照光とに2分岐して、そのうち監視光を監視光ゲート部44へ出力し、参照光を偏波変調器46へ出力する。
【0091】
監視光ゲート部44は、光結合器43から出力された監視光を入力し、また、信号発生器64から出力された監視光ゲート信号Cをも入力する。監視光ゲート信号Cは、一定周期Tでゲート幅w1のパルスを有する周期的な信号である。監視光ゲート信号Cのゲート幅w1は、直接変調信号Aおよび外部変調信号Bそれぞれの変調周期にほぼ等しい。監視光ゲート部44は、このような監視光ゲート信号Cのゲート幅w1のパルスの期間のみ、光分岐器43から出力された監視光を光サーキュレータ45へ出力する。信号発生器64は、本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザを含み、このダイレクトデジタルシンセサイザから出力される三角波信号に基づいて生成した監視光ゲート信号Cを監視光ゲート部44へ与える。ダイレクトデジタルシンセサイザを含む信号発生器65および監視光ゲート部44は、本実施形態の光変調装置を構成しており、光の変調を高精度に行うことができる。
【0092】
光サーキュレータ45は、監視光ゲート部44からパルス化されて出力された監視光を入力し、その監視光を光結合器12へ出力する。また、光サーキュレータ45は、光結合器12から到達した光を入力し、その光を光結合器51へ出力する。
【0093】
光サーキュレータ45から出力された監視光は、光結合器12を経て第1の光線路32へ送出され、さらに、第1の光線路32,光分岐器20,第2の光線路33を経て光フィルタ22に達する。この監視光の伝搬の際に生じる反射光(フレネル反射光やレイリー散乱光)は、監視光の伝搬経路と逆方向の経路を辿って、光結合器12および光サーキュレータ45を経て光結合器51に入力される。このとき、各第2の光線路33上であって加入者端末21近くに光フィルタ22が配置されていることにより、反射光のパワーが大きくなって、OCDR測定のSN比が改善され、測定時間が短縮されるので好ましい。
【0094】
特に、光フィルタの反射率Rは、光分岐器の分岐数をNとして、 R > R0 + 20log10N [dB] を満たすことが好ましい。ここでR0は、光サーキュレータ、光結合器12、第1の光線路および光分岐器における内部反射率であり、典型的には−40dBである。上式を満たすことにより、光フィルタで反射されて光反射測定装置13に到達する反射光のパワーは、光分岐器の上流(光反射測定装置13側)での意図しない反射により生じた反射光のパワーに比べて大きくなるため、光分岐器上流での意図しない反射による雑音の影響が相対的に低減され、測定時間が短縮される。
【0095】
光分岐器43と光結合器51との間の参照光の光路に遅延光ファイバ47が設けられているのが好ましい。遅延光ファイバ47は、光サーキュレータ45から光結合器51に入力される反射光(監視光の戻り光)と、光分岐器43から光結合器51に入力される参照光と、の間の遅延時間を設定する。測定する距離範囲内の任意の位置で監視光が反射されて生じた反射光と参照光との間の遅延時間が、光源41の出力光のコヒーレンス時間より長くなるように、遅延光ファイバ47の長さを設定するのが好ましい。遅延時間がコヒーレンス時間より短い範囲では空間分解能は遅延時間と共に増大し、遅延時間がコヒーレンス時間より長い範囲では空間分解能は略一定値となるので、遅延時間を上記のように設定することにより、測定範囲内での空間分解能のバラツキを低減することができる。
【0096】
光分岐器43と光結合器51との間の参照光の光路に偏波変調器46が設けられているのも好ましい。偏波変調器46は、光分岐器43から出力された参照光を入力し、その参照光の偏波状態を変えて出力する。反射光(監視光の戻り光)と参照光とを互いに干渉させて検出する際、その検出効率は2つの光の偏波状態の相対関係に依存するので、反射光および参照光の少なくとも一方の偏波状態を変えながら測定を行い、複数の偏波状態で測定した結果に対して平均化などの演算処理を施して、偏波状態に依存しない測定結果を得ることが好ましい。
【0097】
光結合器51は、光サーキュレータ45から出力された反射光(監視光の戻り光)を入力するとともに、光分岐器43から出力されて偏波変調器46および遅延光ファイバ47を経た参照光を入力し、これら入力した反射光と参照光とを合波してバランス検波器52へ出力する。光結合器51として例えば3dBカプラが用いられる。
【0098】
バランス検波器52は、光結合器51により合波された反射光および参照光を入力して、これら反射光と参照光とが互いに干渉してなる干渉光の強度を示す電気信号を第1フィルタ53へ出力する。すなわち、バランス検波器52は、干渉光の強度に応じた値の電気信号を出力する光電変換部として作用する。
【0099】
第1フィルタ53は、バランス検波器52から出力される電気信号を入力し、この電気信号に含まれる不要雑音を除去して、その除去後の電気信号を電気信号ゲート部54へ出力する。第1フィルタ53は、入力した電気信号の直流成分を除去するフィルタであることが好ましい。直流成分の雑音は、光結合器51およびバランス検波器におけるバランスの誤差によって生じるが、これを第1フィルタ53により除去することにより、後段の電気信号ゲート部54における雑音発生量を低減することができる。
【0100】
電気信号ゲート部54は、バランス検波器52から出力されて第1フィルタ53を経た電気信号を入力し、また、信号発生器65から出力された電気信号ゲート信号Dをも入力する。電気信号ゲート信号Dは、一定周期Tでゲート幅w2のパルスを有する周期的な信号である。電気信号ゲート信号Dの周期Tは監視光ゲート信号Cの周期Tとほぼ等しい。電気信号ゲート信号Dのパルス中心は、監視光ゲート信号Cのパルス中心に対してゲート遅延時間dだけ遅れている。信号発生器65も、本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザを含んでいてもよく、このダイレクトデジタルシンセサイザから出力される三角波信号に基づいて生成した電気信号ゲート信号Dを電気信号ゲート部54へ与える。
【0101】
電気信号ゲート部54は、このような電気信号ゲート信号Dのゲート幅w2のパルスの期間のみ、第1フィルタ53から出力された電気信号を第2フィルタ55へ出力する。電気信号ゲート部54から第2フィルタ55へ出力される電気信号はパルス信号となる。電気信号ゲート部54としては、電気信号ゲート信号Dのレベルに応じてON/OFF動作するオペアンプ回路が用いられる。
【0102】
第2フィルタ55は、電気信号ゲート部54から出力されたパルス状の電気信号を入力し、その入力した電気信号の特定周波数帯域のものを選択的にRF検波器56へ出力する。第2フィルタ55における上記特定周波数帯域は、電気信号ゲート信号Dの繰り返し周波数f(=1/T)の整数倍の周波数nf(ただしnは自然数)を含まないことが好ましい。特に、上記特定周波数帯域はf(=1/T)の半奇数倍の周波数を含みf/2以下の帯域幅を持つことが好ましい。電気信号ゲート部に入力される信号は、直流および1/pの整数倍の周波数に雑音を持っており、この雑音が電気信号ゲート部を通過することにより、fの整数倍の周波数に雑音が拡散する。しかし、上記のように周波数帯域を設定することにより、電気信号ゲート部54において生じる雑音の影響を低減することができ、測定のSN比を改善することができて、測定時間を短縮することができる。
【0103】
RF検波器56は、第2フィルタ55から出力される電気信号を入力し、干渉成分の大きさに相当する電気信号に変換してAD変換器57へ出力する。AD変換器57は、RF検波器56から出力される電気信号を入力し、この電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換して、このデジタル信号を制御部61へ出力する。このデジタル信号の値は、光源41における光周波数変調の周期pおよびゲート遅延時間dにより決定される光線路上の位置zにおいて生じた反射光のパワーを表す。
【0104】
制御部61は、AD変換器57から出力されたデジタル値を入力して、このデジタル値と位置zとを互いに関連付けて記憶する。制御部61は、信号発生器62〜65それぞれを制御して、信号発生器62から出力される直接変調信号Aの変調周期p、信号発生器63から出力される外部変調信号Bの変調周期p、信号発生器64から出力される監視光ゲート信号Cの周期Tおよびゲート幅w1、信号発生器65から出力される電気信号ゲート信号Dの周期Tおよびゲート幅w2、ならびに、ゲート遅延時間dを指定する。これにより、制御部61は、測定対象である光線路上の測定位置zを指定して、その位置zにおいて生じた反射光のパワーを表すデジタル値をAD変換器57から取得する。そして、制御部61は、光線路における監視光伝搬方向に沿った反射率分布を求める。
【0105】
また、制御部61は記録装置71に接続されており、記録装置71には、光反射測定装置13から光フィルタ22の各々までの距離や、光フィルタおよび加入者端末の設置位置(建物の名称や建物内での位置など)などの情報が格納される。制御部61は、反射率分布の中から光フィルタ22に由来する反射率のピークを検出し、事前に準備された光フィルタ22までの距離の情報と反射率ピークの距離とを照合して、各光フィルタ22からの反射光が検出されたか否かを判定する。そして、制御部61は、反射光が検出される加入者端末と反射光が検出されない加入者端末とが混在する場合は、後者の加入者端末が所属する加入者側光ファイバに断線などの異常があると判定し、異常を表示する。さらに、制御部61では光フィルタまでの距離情報に基づいて、光フィルタの近傍に限定してOCDR測定を行い、光フィルタからの反射光の有無や反射率の大きさを知ることにより、その光フィルタが属する第2の光線路の異常の有無を迅速に調べることができる。
【0106】
このように構成される本実施形態の光反射測定装置13および光通信システム1では、ダイレクトデジタルシンセサイザを含む信号発生器62から出力される直接変調信号Aにより、光源部41から出力される監視光の周波数揺らぎが非常に小さく抑えられる。また、ダイレクトデジタルシンセサイザを含む信号発生器63から出力される外部変調信号Bにより、強度変調器42において監視光が高精度に強度変調される。また、ダイレクトデジタルシンセサイザを含む信号発生器65から出力される監視光ゲート信号Cにより、監視光ゲート部44において監視光が高精度に強度変調される。したがって、本実施形態の光反射測定装置13および光通信システム1は位置分解能が優れた反射率分布測定を行うことができる。
【0107】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では光反射測定装置としてOCDRについて説明したが、OFDRやOTDRの光反射測定装置においても本実施形態のダイレクトデジタルシンセサイザから出力されるアナログ信号を変調信号として監視光を変調してもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…光線路監視システム、10…局舎、11…局側端末、12…光結合器、13…光反射測定装置、20…光分岐器、21〜21…加入者端末、22〜22…光フィルタ、31…光ファイバ線路,32…第1の光線路,33〜33…第2の光線路、41…光源、42…強度変調器、43…光結合器、44…監視光ゲート部、45…光サーキュレータ、46…偏波変調器、47…遅延光ファイバ、48…参照光ゲート部、51…光結合器、52…バランス検波器、53…第1フィルタ、54…電気信号ゲート部、55…第2フィルタ、56…RF検波器、57…AD変換器、61…制御部、62〜66…信号発生器、71…記録装置、100…ダイレクトデジタルシンセサイザ、110…累積加算部、111…加算回路、112…ラッチ回路、120…位相加算部、130…位相振幅変換部、140…AD変換部、150…ローパスフィルタ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定周期の基準クロックを入力するとともに、周波数指令値pを入力し、前記基準クロックが一定周期で指示する各タイミングで前記周波数指令値pを累積加算して、当該累積加算値を出力する累積加算部と、
前記累積加算部から出力される累積加算値を位相値とし、波形標本数M個のデジタル振幅値のうち、前記位相値を値Mで除算したときの剰余の値に対応するデジタル振幅値を出力する位相振幅変換部と、
を備え、
前記周波数指令値pと前記波形標本数Mとの最大公約数が前記周波数指令値pより小さい、
ことを特徴とするダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項2】
一定周期の基準クロックを入力するとともに、周波数指令値pを入力し、前記基準クロックが一定周期で指示する各タイミングで前記周波数指令値pを累積加算して、当該累積加算値を出力する累積加算部と、
前記累積加算部から出力される累積加算値に位相オフセット値を加算して、当該加算値を出力する位相加算部と、
前記位相加算部から出力される加算値を位相値とし、波形標本数M個のデジタル振幅値のうち、前記位相値を値Mで除算したときの剰余の値に対応するデジタル振幅値を出力する位相振幅変換部と、
を備え、
前記周波数指令値pと前記波形標本数Mとの最大公約数が前記周波数指令値pより小さい、
ことを特徴とするダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項3】
前記基準クロックを入力するとともに、前記位相振幅変換部から出力されるデジタル振幅値を入力し、前記基準クロックが一定周期で指示する各タイミングで前記デジタル振幅値をアナログ振幅値に変換して、このアナログ振幅値を出力するAD変換部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項4】
前記AD変換部から出力されるアナログ振幅値を入力し、このアナログ振幅値の時系列信号のうち低周波数成分を選択的に出力するローパスフィルタを更に備える、
ことを特徴とする請求項3に記載のダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項5】
前記周波数指令値pと前記波形標本数Mとの最大公約数が前記周波数指令値pの100分の1以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項6】
前記周波数指令値pと前記波形標本数Mとの最大公約数が4以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項7】
前記周波数指令値pと前記波形標本数Mとの最大公約数が1であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項8】
前記波形標本数Mが2のべき乗の数であり、前記周波数指令値pが奇数である、ことを特徴とする請求項7に記載のダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項9】
前記波形標本数Mが素数であることを特徴とする請求項7に記載のダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項10】
前記位相振幅変換部から出力されるデジタル振幅値の時系列信号が正弦波信号であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項11】
前記位相振幅変換部から出力されるデジタル振幅値の時系列信号が三角波信号であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイレクトデジタルシンセサイザ。
【請求項12】
請求項4に記載のダイレクトデジタルシンセサイザと、
前記ダイレクトデジタルシンセサイザから出力されるアナログ信号に基づいて光の強度,位相または光周波数を変調する変調部と、
を備えることを特徴とする光変調装置。
【請求項13】
請求項12に記載の光変調装置と、
この光変調装置により変調された監視光を出力する光源部と、
この光源部から出力される監視光が測定対象物を伝搬する際に生じる反射光に基づいて、前記測定対象物における光反射率分布を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする光反射測定装置。
【請求項14】
請求項12に記載の光変調装置と、
この光変調装置により光周波数が変調された監視光を出力する光源部と、
この光源部から出力される監視光の一部を分岐して参照光として出力する光分岐部と、
前記光源部から出力された監視光が測定対象物を伝搬する際に生じる反射光および前記光分岐部から出力される参照光に基づいて、前記測定対象物における光反射率分布を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする光反射測定装置。
【請求項15】
請求項12に記載の光変調装置と、
この光変調装置により光周波数が変調されて櫛歯状の光波コヒーレンス関数を有する監視光を出力する光源部と、
この光源部から出力される監視光の一部を分岐して参照光として出力する光分岐部と、
前記光源部から出力された監視光が測定対象物を伝搬する際に生じる反射光および前記光分岐部から出力される参照光に基づいて、OCDR測定により前記測定対象物における光反射率分布を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする光反射測定装置。
【請求項16】
光ファイバ線路により互いに光学的に接続された局側端末と加入者端末との間で光通信を行う光通信システムであって、
前記光ファイバ線路の途中に設けられた光結合部と、この光結合部に光学的に接続された請求項13〜15の何れか1項に記載の光反射測定装置と、を備え、
前記光反射測定装置から出力される前記監視光を、前記光結合部を経て前記光ファイバ線路に伝搬させ、
前記監視光が前記光ファイバ線路を伝搬する際に生じる反射光を、前記光結合部を経て前記光反射測定装置に入力させる、
ことを特徴とする光通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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