説明

ダクトの取替方法

【課題】ダクトの取替え方法を提供する。
【解決手段】第1建屋(タービン建屋14)から屋外に延出した第1ダクト62と、屋外で前記第1ダクト62に第3ダクト70を介して接続され第2建屋(原子炉建屋12)に貫通する第2ダクト84と、を取り替えるダクトの取替方法であって、前記第1建屋内において、前記第1建屋の内壁14cの前記第1ダクト62が貫通する部分の周囲を境界として共有する第1閉空間96を形成するとともに、前記第2建屋内において、前記第2建屋の内壁12cの前記第2ダクト84が貫通する部分の周囲を境界として共有する第2閉空間100を形成したのち、前記第1ダクト62及び前記第2ダクト84を取替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトの取替方法について、特に負圧に制御された建屋に貫通するダクトを、建屋の負圧を維持した状態で取替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の換気空調設備は、原子力発電所の建屋内に清浄な空気を供給し、必要に応じて空気を加熱或いは冷却し、建屋内設置の各機器からの発熱を伴う状況においても建屋内が適正な室内温度となるように維持するとともに、建屋の室内にて発生する放射性塵埃を捕集し原子力発電所外に排気する空気の放射線量を管理値内にして排気塔から高所にて拡散排気させ、公衆被爆線量を規定値以下に抑えている設備である。このため、換気空調設備には、原子炉建屋等の空気中の放射性塵埃を含む可能性のある区域(以下、換気空調対象区域という。)に清浄な空気を供給する供給側空調設備(以下、給気系と略すことがある)と、上記換気空調対象区域を換気した排気を濾過した後、排気筒から高所に吹き上げて拡散放出させるように案内する排気側空調設備(以下、排気系と略すことがある)とを備えている。
【0003】
上記換気空調対象区域としては、原子炉建屋、タービン建屋、廃棄物処理建屋等がある。ところで原子炉建屋、廃棄物処理建屋には通常、余剰スペースが少ないが、タービン建屋は機器配置の関係で他の建屋よりスペース上の余裕を取り易いため、各建屋用の給気の加熱設備(コイル)・冷却設備(コイル)、ファン、及び各建屋の排気フィルタやファンが設置される。このため原子炉建屋及び廃棄物処理建屋はそれぞれタービン建屋にあるそれぞれの換気空調設備とダクトによって接続されている。そして廃棄物処理建屋等のダクトは、タービン建屋内を通り抜け、排気塔を介して屋外に貫通している。
【0004】
このように建屋内外に設けられたダクトを含む換気空調設備は、その後の老朽化に伴ってダクトの補修あるいは交換が必要とされる。従来、ダクトの補修方法としては損傷箇所のみを対象としてダクト外面に当板を取り付けるなどの応急的処置がとられるが、長期的な面から給気系又は排気系の健全性を回復させるためには既設ダクトを新設ダクトに取り替える必要があり、ダクトを取り替える際には給気系または排気系の運転を停止しなければならない。したがって、給気系または排気系の運転の停止が許される条件下では、既設ダクトを全て撤去した後に新設ダクトを取り付ける一体型ダクト取替方法が多く採用され、工費や作業日数を低減したダクトの取替え作業を行うことができる。
【0005】
しかしながら、原子力発電所では、建屋内の負圧及び温度維持や放射性塵埃濃度の上昇防止の面から給気系または排気系の運転を停止する時間が限定され、1回につき5〜6時間以内に制限されることが多い。そのため、停止時間を極力短くするために既存ダクトを単位ダクトごとに順に段階的に取り替える段階的ダクト取替方法が採用されている。
【0006】
図8に示すように、特許文献1においては、既設ダクト216全体のうち取替えが必要とされる取替え範囲の既設ダクト216aを新設ダクト230に取り替えるダクト取替方法において、前記既設ダクト216に設けられた出入り可能な開閉口218から仮設ダクト220を構成する仮設ダクトパネル220aを搬入し、前記取替え範囲の既設ダクト216aの内側に該既設ダクト216aの径よりも一回り小さな仮設ダクト220を組み立て、前記組み立てた仮設ダクト220の両端の末広がり部220bを前記既設ダクト216aに接続して、前記既設ダクト216aと前記仮設ダクト220により閉空間222を形成する第1工程(図8(a)参照)と、前記取替え範囲の既設ダクト216aを解体して撤去する第2工程(図8(b)参照)と、前記取替え範囲の既設ダクト216aを撤去した箇所に、新設ダクトパネル230a及び連結部材230bにより新設ダクト230を組み立てて設置する第3工程(図8(b)参照)と、前記仮設ダクト220を解体し、前記仮設ダクトパネル220aを前記開閉口218から搬出する第4工程と、からなるダクト取替方法が開示されている。これにより、搬入のための既設ダクト216に対する加工処理を行う必要がなくなるとともに、仮設ダクト220は仮設ダクトパネル220aを組み立てるだけで設置可能であるので、第1工程に要する工程や時間を低減することができる。また仮設ダクト220は既設ダクト216内に設置されるので、仮設ダクト220の設置作業や設置に要するスペースを大幅に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−265217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、タービン建屋も換気空調対象区域であり、換気空調設備により負圧に設定されている。そのため、例えばタービン建屋と原子炉建屋を貫通するダクトの取替え工事の際は、原子炉建屋に接続されたダクトに設置されたダンパで給・排気系統を遮断するのみならず、タービン建屋用の給・排気系統も遮断し給・排気を停止する必要があった。また、仮にタービン建屋用の給・排気を停止した場合でも、上述のように放射性物質の汚染拡大防止のため、停止時間を5〜6時間程度に抑える必要があり、タービン建屋用の給・排気を停止しない工法を検討する必要があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に着目し、タービン建屋用の給・排気を停止させることなく、タービン建屋を貫通する屋外ダクトを取り替えることが可能な屋外ダクトの取替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るダクトの取替方法は、第1には、建屋から屋外に延出したダクトの取替方法であって、前記建屋内において、前記建屋の内壁の前記ダクトが貫通する部分の周囲を境界として共有する閉空間を形成したのち、前記ダクトを取替えることを特徴とする。
【0011】
第2には、前記ダクトの前記閉空間に閉じ込められた側面に予め点検口を形成したことを特徴とする。
第3には、前記閉空間は、その境界を複数のパネルを繋ぎ合わせて形成することを特徴とする。
【0012】
第4には、第1建屋から屋外に延出した第1ダクトと、屋外で前記第1ダクトに接続され第2建屋に貫通する第2ダクトと、を取り替えるダクトの取替方法であって、前記第1建屋内において、前記第1建屋の内壁の前記第1ダクトが貫通する部分の周囲を境界として共有する第1閉空間を形成するとともに、前記第2建屋内において、前記第2建屋の内壁の前記第2ダクトが貫通する部分の周囲を境界として共有する第2閉空間を形成したのち、前記第1ダクト及び前記第2ダクトを取替えることを特徴とする。
【0013】
第5には、前記第1ダクトと第2ダクトとの間には第3ダクトが介装され、前記第1ダクト及び前記第2ダクトを取替えるとともに、前記第3ダクトを取替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る屋外ダクトの取替方法によれば、第1には、前記建屋の内壁の前記ダクトが貫通する部分の周囲を境界として共有する閉空間を形成するが、閉空間を形成するときはダクトを取り外さないのでダクトを用いる給・排気を停止させる必要はない。そして閉空間の形成後ダクトを取り外す際にはダクトを用いる給・排気を停止させる必要があるが、建屋の気密が維持されるため、建屋用の給・排気を停止させることなくダクトの取替えを行うことができる。
【0015】
第2には、ダクトの閉空間に閉じ込められた側面に予め点検口を形成することにより、作業者が閉空間内においてダクトの外に出られるのでダクトの取り外しを容易に行うことができ作業効率が向上する。
【0016】
第3には、前記閉空間は、その境界を複数のパネルを繋ぎ合わせて形成することにより、パネルの建屋への搬入は容易であるとともに、建屋の設計に応じた閉空間を容易に形成することができる。
第4には、第1ダクトを取り替える工程と第2ダクトを取り替える工程を分割できるので空調器の許容された停止時間を利用して段階的に取替え作業を行うことができる。
【0017】
第5には、第1ダクトを取り替える工程と第2ダクトを取り替える工程と第3ダクトを取り替える工程とを分割できるので、ダクトが長大なものであっても空調器の許容された停止時間に対応してダクトを分割して段階的に取替え作業を行うため、少人数の作業者で行うことができ作業負担も軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】原子力発電所の換気空調設備の模式図である。
【図2】本実施形態が適用される給気ダクトの斜視図である。
【図3】本実施形態が適用される給気ダクトの模式図である。
【図4】本実施形態に係る仮設ハウスの模式図である。
【図5】本実施形態に係るダクトの取り換え手順を示す図である。
【図6】本実施形態に係るダクトの取り換え手順を示す図である。
【図7】本実施形態に係るダクトの取り換え手順を示す図である。
【図8】従来技術に係るダクトの取り換え方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0020】
本実施形態に係るダクトの取替方法は、建屋から屋外に延出したダクトの取替方法であって、前記建屋内において、前記建屋の内壁の前記ダクトが貫通する部分の周囲を境界として共有する閉空間を形成したのち、前記ダクトを取替えるものであり、より詳細には、第1建屋(タービン建屋14)から屋外に延出した第1ダクト62と、屋外で前記第1ダクトに第3ダクト70を介して接続され第2建屋(原子炉建屋12)に貫通する第2ダクト84と、を取り替えるダクトの取替方法であって、前記第1建屋(タービン建屋14)内において、前記第1建屋の内壁14cの前記第1ダクト62が貫通する部分の周囲を境界として共有する第1閉空間96を形成するとともに、前記第2建屋(原子炉建屋12)内において、前記第2建屋の内壁12cの前記第2ダクト84が貫通する部分の周囲を境界として共有する第2閉空間100を形成したのち、前記第1ダクト62及び前記第2ダクト84を取替えるものである。本実施形態に係る方法が適用される原子力発電所の換気空調設備の模式図を図1に示す。
【0021】
原子力発電所10には、不図示の原子炉が内設された原子炉建屋12、不図示のタービンを備えたタービン建屋14、放射性廃棄物の処理を行う廃棄物処理建屋16、発電所全体の制御を行うコントロール建屋18などが設けられている。そして他の建屋に比べて大きめに設計されたタービン建屋14には各建屋に供給される空気を取り入れる外気取入口44、外気の温度を調節するための加熱コイル200、冷却コイル201、及び空気を各建屋に供給するための給気ファン202、更に各建屋からの排気から放射性塵埃を除去するための排気フィルタ52、及び排気ファン203が設置されている。このため、タービン建屋14には、タービン建屋14から延出し原子炉建屋12に貫通する給気ダクト28及び排気ダクト30、タービン建屋14から延出し廃棄物処理建屋16に貫通する給気ダクト34及び排気ダクト36、タービン建屋14から延出しコントロール建屋18に貫通する給気ダクト40及び排気ダクト42が備えられている。図1において、タービン建屋14からの各給気ダクト及び各排気ダクトはタービン建屋14の側面14aを貫通して屋外に延出し、各建屋の屋上から屋内に貫通している。そして、本実施形態に係るダクトの取替方法は、特に原子炉建屋12に接続された給気ダクト28及び廃棄物処理建屋16に接続された給気ダクト34に適用することができる。
【0022】
各建屋に供給される空気は、外気取入口44から取り入れられた外気を給気フィルタ46にて除塵して清浄化した後、加熱コイル200、または冷却コイル201で温度調整した後、給気ファン202及びタービン建屋内ダクト48を介して供給される。一方、排気側において、各建屋から排気ダクト30、36、42を介して排出される排気は排気ダクト50で集められ、排気フィルタ52でフィルタリングして放射性塵埃等を除去して後、排気ファン203から主排気ダクト54を通り、主排気塔56に導かれるようになっている。
【0023】
図2に給気ダクト28の斜視図、図3に給気ダクト28の正面図を示す。矩形の断面を有する給気ダクト28はタービン建屋14の側面14aを貫通して屋外に延出し、原子炉建屋12の屋上12aに固定され、所定の位置から直角下向きに曲げられ屋上12aから原子炉建屋12内部に貫通する形態を有している。
【0024】
給気ダクト28は一体構造ではなく、いくつかのパーツに分割されている。給気ダクト28は、原子炉建屋12に接続するタービン建屋内ダクト48、第1ダクト62、第3ダクト70、第2ダクト84、原子炉建屋内ダクト88からなり、タービン建屋14から原子炉建屋12まで、以上の順で直列に接続されている。
【0025】
第1ダクト62は、タービン建屋14を貫通する第1貫通ダクト64、フレキダクト66、第1中継ダクト68からなる。第3ダクト70は、第2中継ダクト72、第3中継ダクト74、第4中継ダクト76、エルボダクト78からなる。第2ダクト84は原子炉建屋12を貫通する第2貫通ダクト86からなる。第2中継ダクト72は原子炉建屋12の屋上12aの支持台12fに支持固定される第1サポート部材80により支持され、第4中継ダクト76は同様に屋上12aの支持台12gにより支持固定された第2サポート部材82により支持されている。エルボダクト78と第4中継ダクト76及び第2貫通ダクト86とは溶接により接続され、その他のダクト同士はフランジ接続されている。
【0026】
タービン建屋14には第1貫通ダクト64を貫通させる第1貫通孔14b(図1、図3、図5(b)参照)が形成され、第1貫通孔14bの開口部にはアンカー止めされた矩形のリング状の第1溶接受け金具92がタービン建屋14の内側に取り付けられ、第1溶接受け金具92と同型の第1溶接受け金具93がタービン建屋14の外側に取り付けられている。
【0027】
同様に原子炉建屋12には第2貫通ダクト86を貫通させる第2貫通孔12b(図1、図3、図6(b)参照)が形成され、第2貫通孔12bの開口部にはアンカー止めされた矩形のリング状の第2溶接受け金具94が原子炉建屋12の内側に取り付けられ、第2溶接受け金具94と同型の第2溶接受け金具95が原子炉建屋12の外側に取り付けられている。また第1溶接受け金具92、93と第1貫通ダクト64が溶接により接続され、第2溶接受け金具94、95が第2貫通ダクト86と溶接により接続されている。なお第2貫通孔12bの開口部12eは原子炉建屋12内に雨水等の侵入を防止するため、屋上12aの面より一段高く設計されている。また後述の第1サポート部材80及び第2サポート部材82をそれぞれ支持固定する支持台12f、12gが屋上12aに取り付けられている。
【0028】
また第1貫通ダクト64の両端のフランジ64bは第1貫通孔14bより小さな外形を有し、第2貫通ダクト86の両端のフランジ86bは第2貫通孔12bより小さな外形を有する。よって第1溶接受け金具92、93と第1貫通ダクト64を溶断し、第2溶接金具94、95と第2貫通ダクト86を溶断し、第1溶接受け金具92、93及び第2溶接受け金具94、95を各建屋からそれぞれ取り外すことにより、第1貫通ダクト64及び第2貫通ダクト86は建屋外に撤去することができ、また新たな第1貫通ダクト64a及び第2貫通ダクト86aを挿入することができる。
【0029】
さらに、タービン建屋内ダクト48には開閉可能な第1点検口60が、同じく原子炉建屋内ダクト88にも開閉可能な第2点検口90が形成され、作業者が第1点検口60及び第2点検口90から出入りすることができる。
【0030】
タービン建屋14内において、タービン建屋14の内壁14cの第1貫通ダクト64を貫通する部分の周囲14dを境界として共有し、タービン建屋内ダクト48の第1点検口60までを覆う第1閉空間96を形成する第1仮設ハウス98が設けられ、原子炉建屋12内において、原子炉建屋12の内壁12cの第2貫通ダクト86が貫通する部分の周囲12dを境界として共有し、原子炉建屋内ダクト88の第2点検口90を覆う第2閉空間100を形成する第2仮設ハウス102が設けられている。
【0031】
図4に第1仮設ハウス及び第2仮設ハウスの模式図を示す。各仮設ハウスは、それぞれパネル104と断面が角型のフレーム106により形成されている。
パネル104は矩形の底の浅いトレーのような形状を有しており、側面には複数のボルト孔104aが形成されている。パネル104同士のつなぎ合わせは、隣同士のボルト孔104aを整合させる態様で側面同士を突き当てて、ボルト孔104aにボルト104bを挿入してボルト止めすることにより行うことができる。またパネル104とフレーム106とのつなぎ合わせは、フレーム106においてパネル104のボルト孔104aに対応する位置に雌ネジ(不図示)が形成され、雌ネジ(不図示)とボルト孔104aをボルト104bによりボルト止めすることにより行うことができる。フレーム106同士の接続は同様にボルト止めにより行うか溶接により行えばよい。またパネル104若しくはフレーム106の各建屋の内壁14c、12cへの接続はアンカー止め等により行えばよい。そしてフレーム106とタービン建屋内ダクト48(原子炉建屋内ダクト88)との間隙の充填はコーキング材等により行えばよい。このように各閉空間は、その境界を建屋への搬入を容易に行えるパネル104とフレーム106を複数互いに繋ぎ合わせて形成することにより、建屋の設計に応じた各閉空間を容易に形成することができる。
【0032】
図5〜7を用いて本実施形態に係るダクトの取替え手順について説明する。本実施形態において、上述のようにタービン建屋14の給・排気を停止させることなく行うものとする。また原子力建屋12の給気は1日当たり5〜6時間程度の停止時間が認められている。そして原子炉建屋12の給気を停止するためにダンパ(不図示)を閉じて給気の流路を遮断させ、排気ダクト42は稼動させておくことにより、作業中においても原子炉建屋12の負圧を維持することがきる。また本実施形態においては4日間にわたって施工を行うことを想定している。
【0033】
本実施形態に係るダクトの取替方法においては、新設の第1ダクト62aについては、第1貫通ダクト64a、フレキダクト66a、第1中継ダクト68a(第1分割ダクト68b、第2分割ダクト68c)が用意され、新設の第3ダクト70aについては、第2中継ダクト72a、第3中継ダクト74a、第4中継ダクト76a、エルボダクト78aが用意され、新設の第2ダクト84aについては第2貫通ダクト86aが用意される。さらに仮設用には、第2分割ダクト68cの代わりとなる第1仮設ダクト108、第2中継ダクト72aの代わりに第2仮設ダクト110、エルボダクト78aの代わりに両端部がフランジ接続の仮設エルボダクト112が用意され、さらに支持台12f及び支持台12gに支持固定され、第2中継ダクト72を一時的に支持する仮設サポート部材114も用意される。また第4中継ダクト76のエルボダクト78側は溶断されるので、第4中継ダクト76の溶断箇所に溶接し、第4中継ダクト76と仮設エルボダクト112とフランジ接続する仮設フランジ116も用意される。そして、既設の第1溶接受け金具92、93及び第2溶接受け金具94、95も新設の第1溶接金具92a、93a及び第2溶接受け金具94a、95aに取り替えることができる。なお全ての部材の搬入、搬出及び一時的な支持はクレーン等(不図示)により行う。
【0034】
まず第1日目は第1仮設ハウス98及び第2仮設ハウス102を形成する(図3参照)。タービン建屋内ダクト48の第1点検口60、原子炉建屋内ダクト88の第2点検口90が形成されていない場合は、原子炉建屋12の給気停止中にこれらを先に形成する。各仮設ハウスは給気の稼動に拘わらず形成することができる。
【0035】
図5に示すように、第2日目は、第1ダクト62(図3参照)を取替える。まず、図5(a)に示すように、フレキダクト66と第1貫通ダクト64とのフランジ接続、及びフレキダクト66と第1中継ダクト68とのフランジ接続を解除してフレキダクト66を取り外して撤去する。フレキダクト66は伸縮性があるので両方のフランジ接続を解除すると容易に取り外すことができる。そして第1中継ダクト68と第2中継ダクト72とのフランジ接続を解除し、第1サポート部材80を支持台12fから取り外すことにより、第1中継ダクトを第1サポート部材80とともに取り外して撤去する。このとき第2中継ダクト72には仮設サポート部材114を設置して第2中継ダクト72を支持する。
【0036】
次に作業者が第1貫通ダクト64に入り、第1点検口60から第1閉空間96に入り、タービン建屋内ダクト48と第1貫通ダクト64とのフランジ接続を解除し、タービン建屋14内にある第1溶接受け金具92と第1貫通ダクトとを溶断するとともに、第1溶接受け金具92を建屋から取り外す。そして、図5(b)に示すように、タービン建屋14外にある第1溶接受け金具93と第1貫通ダクト64とを溶断して第1溶接受け金具93を取り外すことにより第1貫通ダクト64を取り外して撤去する。このとき第1溶接受け金具92、93と新設の第1貫通ダクト64aとの溶接を容易にするため、第1溶接受け金具92、93の第1貫通ダクト64aとの接続部分に鑢がけを行う、または第1溶接受け金具92、93を撤去し、新設の第1溶接受け金具92a、93aを搬入する。これと平行して仮設サポート部材114を搬入して支持台12g及び支持台12fに固定し、仮設サポート部材114で第2中継ダクト72を支持固定する。
【0037】
そして新設の第1貫通ダクト64a(図5(c)参照)を搬入して第1貫通孔14bに挿入し、タービン建屋内ダクト48と第1貫通ダクト64aとのフランジ接続を行い、タービン建屋14内外の第1溶接受け金具92、93(または新たに搬入した第1溶接受け金具92a、93a)を貫通孔14bの開口部に取り付け、第1貫通ダクト64aと第1溶接受け金具92、93(92a、93a)(図5(c)参照)との溶接を行い、作業者は第1点検口60を閉じて第1閉空間96から退出する。そしてフレキダクト66a、第1分割ダクト68b、第1仮設ダクト108(図5(c)参照)を搬入して、第2中継ダクト72と第1仮設ダクト108とのフランジ接続を行い、第1仮設ダクト108と第1分割ダクト68bとのフランジ接続を行い、そして第1分割ダクト68bと第1仮設ダクト108とのフランジ接続及び第1貫通ダクト64aとフレキダクト66aとのフランジ接続を行うことにより、図5(c)に示すように、給気ダクト28は再び原子炉建屋12に給気できる状態となり、第2日目が終了する。
【0038】
図6に示すように、第3日目は、第1サポート部材80のついた第2分割ダクト68c(図6(c)参照)の取り付けと、第2ダクト84、すなわち第2貫通ダクト86(図6(a)参照)の取替えを行う。まず、図6(a)に示すように、クレーン等(不図示)で第1分割ダクト68bを支持した状態で、仮設サポート部材114を取り外して撤去する。そして図6(b)に示すように、第1分割ダクト68bと第1仮設ダクト108とのフランジ接続を解除し、第2中継ダクト72と第3中継ダクト74とのフランジ接続を解除することにより、第1仮設ダクト108及び第2中継ダクト72を取り外して撤去する。そして図6(c)に示すように、新設の第2分割ダクト68c(新設の第1サポート部材80a付)と第2仮設ダクト110とをフランジ接続したものについて、第2分割ダクト68c側を第1分割ダクト68bにフランジ接続するとともに、第1サポート部材80aを支持台12fに固定して第1サポート部材80aにより第2分割ダクト68cを支持固定し、第2仮設ダクト110側を第3中継ダクト74にフランジ接続する。
【0039】
一方、図6(a)に示すように、第4中継ダクト76のエルボダクト78側と、第2貫通ダクト86のエルボダクト78側を溶断することによりエルボダクト78を撤去する。そして第2貫通ダクト86内に作業者が入り、第2点検口90から第2閉空間100に出て原子力建屋12内にある第2溶接受け金具94と第2貫通ダクト86とを溶断するとともに第2溶接受け金具94を建屋から取り外す。そして図6(b)に示すように、建屋外にある第2溶接受け金具95と第2貫通ダクト86とを溶断するとともに第2溶接受け金具94、95を原子炉建屋12から取り外して第2貫通ダクト86を撤去する。このとき第2溶接受け金具94、95と新設の第2貫通ダクト86aとの溶接を容易にするため、第2溶接受け金具94、95の第2貫通ダクト86aとの接続部分に鑢がけを行う、または第2溶接受け金具94、95を撤去し新たな第2溶接受け金具94a、95aを搬入する。
【0040】
そして図6(c)に示すように、新設の第2貫通ダクト86aを第2貫通孔12bに挿入して原子炉建屋内ダクト88とフランジ接続し、廃棄物処理建屋16内外の第2溶接受け金具94、95(または新たな第2溶接受け金具94a、95a)を第2貫通孔12bの開口部に取り付けて第2貫通ダクト86aと溶接する。
【0041】
ここで、第4中継ダクト76のエルボダクト78側は溶断されたので、この後に取り付ける仮設エルボダクト112のフランジと適合する仮設フランジ116を溶接により取り付ける。そして仮設エルボダクト112を第4中継ダクト76及び第2貫通ダクト86aにそれぞれフランジ接続することにより、給気ダクト28は再び原子炉建屋12に給気できる状態となり、第3日目が終了する。
【0042】
図7に示すように、第4日目は第3ダクト70(図3参照)を取り替えるとともに第1仮設ハウス98及び第2仮設ハウス102を撤去する。まず図7(a)に示すように、第1ダクト62を構成する第2分割ダクト68cと、第3ダクト70を構成する第2仮設ダクト110とのフランジ接続を解除し、仮設エルボダクト112と第2貫通ダクト86aとのフランジ接続を解除し、第2サポート部材82を支持台12gから取り外すことにより、図7(b)に示すように第3ダクト70を撤去する。そして新設の第2中継ダクト72a、第3中継ダクト74a、第4中継ダクト76a(第2サポート部材82a付)、エルボダクト78aを組み合わせた第3ダクト70aを搬入し、第2分割ダクト68cと第2中継ダクト72aをフランジ接続し、エルボダクト78aと第2貫通ダクト86aをフランジ接続し、第2サポート部材82aを支持台12gに固定して第2支持サポート部材82aにより第4中継ダクト76a支持固定することにより、給気ダクト28は再び原子炉建屋12に給気できる状態となる。そして、これらの作業と並行して第1仮設ハウス98及び第2仮設ハウス102を撤去することにより第4日目が終了し、給気ダクト28の取替え工程が全て終了する。このように給気ダクト28の取替え工程を4日間に分けて行うことにより、作業者をそれほど多く必要とせず、かつ作業者に負担をかけずに取り替え作業を行うことができる。
【0043】
なおタービン建屋14内の仮設ハウス98は第2日目において、第1貫通ダクト64を取り替えたのちに撤去することもでき、原子力建屋12内の仮設ハウス102は第3日目において、第2貫通ダクト86を取り替えたのちに撤去することもできる。
【0044】
以上述べたように、本実施形態に係るダクトの取替方法によれば、第1には、建屋(タービン建屋14、原子炉建屋12)の内壁14c、12cのダクト(給気ダクト28)が貫通する部分の周囲を境界として共有する閉空間(第1閉空間96、第2閉空間100)を形成するが、閉空間を形成するときはダクトを取り外さないのでダクトへの給気を停止させる必要はない。そして閉空間の形成後ダクトを取り外す際にはダクトへの給気を停止させる必要があるが、建屋の気密が維持されるため、建屋(タービン建屋14)の給・排気を停止させることなくダクトの取替えを行うことができる。
【0045】
第2には、ダクト(給気ダクト28)の閉空間に閉じ込められた側面に予め点検口(第1点検口60、第2点検口90)を形成することにより、作業者が閉空間内においてダクトの外に出られるのでダクト(第1貫通ダクト64、第2貫通ダクト86)の取り外しを容易に行うことができ作業効率が向上する。
【0046】
第3には、閉空間は、その境界を複数のパネル104を繋ぎ合わせて形成することにより、パネル104は搬入が容易であるとともに、建屋(タービン建屋14、原子炉建屋12)の設計に応じた閉空間を容易に形成することができる。
【0047】
第4には、第1ダクト62を取り替える工程と第2ダクト84を取り替える工程を分割できるので、給気の許容された停止時間を利用して段階的に取替え作業を行うことができる。
【0048】
第5には、第1ダクト62を取り替える工程と第2ダクト84を取り替える工程と第3ダクト70を取り替える工程とを分割できるので、ダクトが長大なものであっても給気の許容された停止時間に対応してダクトを分割して段階的に取替え作業を行うため、少人数の作業者で行うことができ作業負担も軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
作業中においても建屋の負圧を維持しつつ建屋を貫通するダクトを取替え可能なダクトの取替方法として利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10………原子力発電所、12………原子炉建屋、14………タービン建屋、16………廃棄物処理建屋、18………コントロール建屋、22………給気ダクト、24………排気ダクト、28………給気ダクト、30………排気ダクト、32………空調器、34………給気ダクト、36………排気ダクト、40………給気ダクト、42………排気ダクト、44………外気取入口、46………給気フィルタ、48………タービン建屋内ダクト、50………排気ダクト、52………排気フィルタ、54………主排気ダクト、56………主排気塔、60………第1点検口、62………第1ダクト、64………第1貫通ダクト、66………フレキダクト、68………第1中継ダクト、70………第3ダクト、72………第2中継ダクト、74………第3中継ダクト、76………第4中継ダクト、78………エルボダクト、80………第1サポート部材、82………第2サポート部材、84………第2ダクト、86………第2貫通ダクト、88………原子炉建屋内ダクト、90………第2点検口、92………第1溶接受け金具、94………第2溶接受け金具、96………第1閉空間、98………第1仮設ハウス、100………第2閉空間、102………第2仮設ハウス、104………パネル、106………フレーム、108………第1仮設ダクト、110………第2仮設ダクト、112………仮設エルボダクト、114………仮設サポート部材、116………仮設フランジ、200………加熱コイル、201………冷却コイル、202………給気ファン、203………排気ファン、216………既設ダクト、216a………交換される既設ダクト、220………仮設ダクト、218………開閉口、220a………仮設ダクトパネル、220b………末広がり部、222………閉空間、230………新設ダクト、230a………新設ダクトパネル、230b………連結部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋から屋外に延出したダクトの取替方法であって、
前記建屋内において、前記建屋の内壁の前記ダクトが貫通する部分の周囲を境界として共有する閉空間を形成したのち、
前記ダクトを取替えることを特徴とするダクトの取替方法。
【請求項2】
前記ダクトの前記閉空間に閉じ込められた側面に予め点検口を形成したことを特徴とする請求項1に記載のダクトの取替方法。
【請求項3】
前記閉空間は、その境界を複数のパネルを繋ぎ合わせて形成することを特徴とする請求項1または2に記載のダクトの取替方法。
【請求項4】
第1建屋から屋外に延出した第1ダクトと、屋外で前記第1ダクトに接続され第2建屋に貫通する第2ダクトと、を取り替えるダクトの取替方法であって、
前記第1建屋内において、前記第1建屋の内壁の前記第1ダクトが貫通する部分の周囲を境界として共有する第1閉空間を形成するとともに、前記第2建屋内において、前記第2建屋の内壁の前記第2ダクトが貫通する部分の周囲を境界として共有する第2閉空間を形成したのち、
前記第1ダクト及び前記第2ダクトを取替えることを特徴とするダクトの取替方法。
【請求項5】
前記第1ダクトと第2ダクトとの間には第3ダクトが介装され、前記第1ダクト及び前記第2ダクトを取替えるとともに、前記第3ダクトを取替えることを特徴とする請求項4に記載のダクトの取替方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図8】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate