ダブルステータ型モータ
【課題】減磁に弱いフェライト磁石11を使用でき、且つ、製造が容易なダブルステータ型モータを提供する。
【解決手段】本発明のモータは、環状のロータRと、このロータRの内側に配置される内ステータSiと、ロータRの外側に配置される外ステータSoとで構成される。ロータRは、ブリッジを介して環状に連結される複数のセグメント部10と、隣り合うセグメント部10間に配置されるフェライト磁石11とで構成される。内ステータSiと外ステータSoは、ロータRと同一極数であり、且つ、セグメント部10に対し両者の巻線起磁力が並列に印加されるように、内ステータ巻線と外ステータ巻線とが逆相に接続されている。 また、内ステータ巻線の方が外ステータ巻線よりスロット内導体数が少なく設定され、且つ、内ステータ巻線のスロット内導体13aと外ステータ巻線の内側スロット内導体15a1とが渡り部を介して連接されている。
【解決手段】本発明のモータは、環状のロータRと、このロータRの内側に配置される内ステータSiと、ロータRの外側に配置される外ステータSoとで構成される。ロータRは、ブリッジを介して環状に連結される複数のセグメント部10と、隣り合うセグメント部10間に配置されるフェライト磁石11とで構成される。内ステータSiと外ステータSoは、ロータRと同一極数であり、且つ、セグメント部10に対し両者の巻線起磁力が並列に印加されるように、内ステータ巻線と外ステータ巻線とが逆相に接続されている。 また、内ステータ巻線の方が外ステータ巻線よりスロット内導体数が少なく設定され、且つ、内ステータ巻線のスロット内導体13aと外ステータ巻線の内側スロット内導体15a1とが渡り部を介して連接されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト磁石のように減磁に弱い磁石でも使うことの出来るモータ構造の工夫に関するものであり、周方向に着磁した永久磁石をセグメント極間に挟む環状ロータを有し、そのロータの径方向内側に三相の内ステータを配置し、径方向外側に三相の外ステータを配置して構成されるダブルステータ型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のモータは、ネオジム磁石を用いた永久磁石埋め込み型同期モータが主流になっている。しかし、添加物質として無くてはならないジスプロシウムなどの重希土類金属の価格高騰により、将来的にこのようなレアアース磁石を大量生産用モータへ使用することにはリスクがある。このため、安定的需給材料として、フェライト磁石を用いた脱レアアースモータの研究開発が盛んになっている。
しかし、フェライト磁石は、ネオジム磁石に比べて、磁束密度および保持力において、それぞれ数分の1程度の低い特性であり、このような低特性の磁石を如何に使いこなすかが目下の技術課題となっている。
【0003】
永久磁石埋め込み型同期モータにおいて、これまでネオジム磁石を埋め込んでいた部分をフェライト磁石に置き換えると、磁束密度が低いのに応じて出力特性が下がる。その下がった分は、我慢許容して使う考え方もあるが、これが出来ない問題点がある。それは、フェライト磁石の保持力が低いために、強いステータの巻線起磁力に対してネオジム磁石のように耐えることができず、永久減磁してしまい、そもそものモータとしての機能をも失ってしまうためである。このようなフェライト磁石が減磁する課題に対して、ステータの巻線起磁力が磁石に印加されにくくする、または巻線起磁力を小さくする方式、構造が求められている。
【0004】
上記の課題に対して、本願発明者は、特許文献1に記載されているダブルステータ型モータの構造が解決の参考になるのではないかと考えた。すなわち、起磁力源であるステータの起磁力が内外に二分割され得る構造と考えれば、永久磁石に印加される起磁力を半分にできるのではないかと考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−139156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来公知のダブルステータ型モータは、以下の問題点(1)〜(3)を有しているため、特許文献1に開示された方式のままでは実用化が難しく、且つ、減磁を抑制できる効果が期待できないと言う課題がある。
(1)二重構造(ダブルステータ型)のため、ステータの部品数、特に複雑な製法を要するステータ巻線の数が二倍となり、製造が難しくなる。
(2)二重構造のため、内ステータの巻線スペースと鉄心断面積との関係が苦しくなる。つまり、内ステータ鉄心の磁路断面積が狭くなるため、特性が出なくなる。
(3)磁石をロータの径方向に着磁した配置とし、且つ、内外ステータの起磁力が磁石に協同して同方向に作用する構成であるため、磁石の減磁を軽減することができない。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、フェライトのような減磁に弱い磁石でも使用でき、且つ、特許文献1に開示された従来モータと比較して製造が容易なダブルステータ型モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1の発明)
本発明のダブルステータ型モータは、回転軸に連結されて回転軸と一体に回転する環状のロータと、このロータの径方向内側に配置される内ステータと、ロータの径方向外側に配置される外ステータとを備える。
ロータは、周方向に所定の間隔を有して環状に配置される複数のセグメント部と、周方向に隣り合うセグメント部同士の間に介在され、且つ、周方向に対して交互に逆向きに着磁された複数の永久磁石とを有している。
【0008】
内ステータは、複数のスロットが外周面に開口する内ステータ鉄心と、複数のスロットを介して内ステータ鉄心に巻装される三相の内ステータ巻線とを備えている。
外ステータは、複数のスロットが内周面に開口する外ステータ鉄心と、複数のスロットを介して外ステータ鉄心に巻装される三相の外ステータ巻線とを備えている。
ロータと内ステータおよび外ステータは、いずれも同一極数であり、内ステータと外ステータは、両者の巻線起磁力によって発生する磁界が同一のセグメント部に対して並列に印加されるように、内ステータ巻線と外ステータ巻線とが逆相に接続されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、同一のセグメント部に対して、内ステータの巻線起磁力と外ステータの巻線起磁力とが同方向に協同することなく、並列に対向して印加されるので、磁石に印加されるステータの起磁力が分散して小さいという特徴がある。また、永久磁石の極性をステータの方向(径方向)に向けず、周方向に着磁しているので、磁石の着磁方向にステータの減磁界が印加されにくい特徴がある。
上記の両作用の相乗効果により、磁石の減磁が起きにくい効果を得ることができ、フェライトのような減磁に弱い磁石でも使用可能となる。
【0010】
(請求項2の発明)
請求項1に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータと外ステータは、内ステータ鉄心のスロット数と外ステータ鉄心のスロット数とが同一であり、且つ、内ステータ巻線と外ステータ巻線は、それぞれスロット内に収納されるスロット内導体を有し、外ステータ巻線のスロット内導体数より内ステータ巻線のスロット内導体数の方が少ないことを特徴とする。
上記の構成では、外ステータ鉄心と内ステータ鉄心とで両者のスロット数は同一であるが、スロット内に収納されるスロット内導体は、内ステータ巻線の方が外ステータ巻線より少ないので、外ステータ鉄心に対し内ステータ鉄心のスロット面積を小さくできる。これにより、例えば、小径モータが求められる場合でも、内ステータ鉄心のスロット面積を小さく形成することで、磁束通路である内ステータの鉄心断面積を十分に確保できるので、内外ステータの径差制約の下でも、内ステータを外ステータに比べて小さく設計することが容易である。
【0011】
(請求項3の発明)
請求項1に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータと外ステータは、内ステータ鉄心のスロット数の方が外ステータ鉄心のスロット数より少ないことを特徴とする。
上記の構成では、内ステータ鉄心の方が外ステータ鉄心よりスロット数が少ないので、外ステータ鉄心に対し内ステータ鉄心のスロットピッチを大きく取ることができる。これにより、例えば、小径モータが求められる場合でも、内ステータ鉄心のスロットピッチを大きく取ることで、磁束通路である内ステータの鉄心断面積を十分に確保できるので、内外ステータの径差制約の下でも、内ステータを外ステータに比べて小さく設計することが容易である。
【0012】
(請求項4の発明)
請求項2に記載したダブルステータ型モータにおいて、外ステータ巻線のスロット内導体は、スロットの内周側に収納される内側スロット内導体と、スロット内で内側スロット内導体の外周側に収納される外側スロット内導体とを有し、外ステータ巻線の内側スロット内導体と内ステータ巻線のスロット内導体は、内ステータと外ステータとの間でロータの軸方向一端側を径方向に跨いで配設される渡り部を介してU字状に連続して一体に設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成では、外ステータ巻線の内側スロット内導体と内ステータ巻線のスロット内導体とが渡り部を介して一体に構成されているので、内外ステータ巻線に使用される導体数を少なくでき、部品点数の低減によるコストダウン効果を得ることが可能である。なお、渡り部を介してU字状に設けられた外ステータ巻線の内側スロット内導体と内ステータ巻線のスロット内導体は、外ステータ鉄心および内ステータ鉄心の各スロットに対し軸方向から挿入して組み付けた後、渡り部によって連接されていない反U字側の軸方向端部を連接(亀甲状に屈曲した後に所定箇所を溶接等により接合)すれば良いので、簡単に組み付けることができ、且つ、スロット占積率も向上できる効果もある。
【0014】
(請求項5の発明)
請求項4に記載したダブルステータ型モータにおいて、外ステータ巻線は、外ステータ鉄心の周方向に異なる二箇所のスロット内に収納される一方の外側スロット内導体と他方の外側スロット内導体とが外ステータ鉄心の軸方向一端面より外側でU字状に連続して一体に設けられ、内側スロット内導体と外側スロット内導体とが軸方向の他端側で電気的かつ機械的に接続されていることを特徴とする。
【0015】
上記の構成では、一方の外側スロット内導体と他方の外側スロット内導体とが軸方向の一端側でU字状に連続して一体に設けられているので、内外ステータ巻線に使用される導体数を少なくでき、部品点数の低減によるコストダウン効果を得ることが可能である。なお、軸方向の一端側がU字状に連続して一体に設けられた一方の外側スロット内導体と他方の外側スロット内導体は、外ステータ鉄心の各スロットに対し軸方向より挿入して組み付けた後、反U字側の軸方向端部を連接(亀甲状に屈曲した後に所定箇所を溶接等により接合)すれば良いので、簡単に組み付けることができ、且つ、スロット占積率も向上できる効果もある。
【0016】
(請求項6の発明)
請求項4または5に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータ巻線と外ステータ巻線は、それぞれスロット内導体の断面形状が長方形で同一断面積を有し、内ステータ巻線のスロット内導体は、断面形状の長辺側を内ステータ鉄心の半径方向に向けてスロット内に収納され、外ステータ巻線のスロット内導体は、断面形状の長辺側を外ステータ鉄心の周方向に向けてスロット内に収納され、渡り部は、スロット内導体と同一断面形状および同一断面積を有し、且つ、90度捻られていることを特徴とする。
この構成では、内ステータ巻線のスロット内導体を縦向き、つまり、断面形状の長辺側を内ステータ鉄心の半径方向に向けて配置することで、内ステータ鉄心のスロット幅(周方向の幅)を狭く形成できる。これにより、内ステータ鉄心の周方向に隣り合うスロット間に磁束通路を形成するティースの断面積が増加するので、特に小径モータにおいて高性能化の効果を奏する。
【0017】
(請求項7の発明)
請求項4または5に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータ巻線と外ステータ巻線は、それぞれスロット内導体の断面形状が長方形で同一断面積を有し、外ステータ巻線の外側スロット内導体は、断面形状の長辺側を外ステータ鉄心の周方向に向けてスロット内に収納され、外ステータ巻線の内側スロット内導体は、断面形状の長辺側を外ステータ鉄心の半径方向に向けてスロット内に収納され、内ステータ巻線のスロット内導体は、断面形状の長辺側を内ステータ鉄心の半径方向に向けてスロット内に収納されていることを特徴とする。
上記の構成では、渡り部を介して連接される外ステータ巻線の内側スロット内導体と内ステータ巻線のスロット内導体が、共に縦向きに配置されるので、渡り部を90度捻る必要はない。つまり、渡り部を90度捻る工程を用いることなく、請求項6に係る発明と同様の効果を得ることができるので、工程数を減らすことができる。
【0018】
(請求項8の発明)
請求項4に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータ巻線と外ステータ巻線は、内ステータ巻線のスロット内導体と外ステータ巻線の内側スロット内導体とが軸方向の一端側で渡り部によってU字状に連接され、さらに、軸方向の他端側で内側スロット内導体と外側スロット内導体とがU字状に連接されて全体が蛇行状に連続した巻線体を構成し、この巻線体を複数組み合わせて一相分の巻線が形成されることを特徴とする。
上記の構成によれば、内ステータ巻線のスロット内導体と外ステータ巻線の内側スロット内導体および外側スロット内導体とが一つの連続した巻線体として構成されるので、内外ステータ巻線を形成する巻線体を少なくできる。また、一つの連続した巻線体は、予め蛇行状に成形された形のまま、内外ステータ鉄心の各スロットにワンストロークで収納できるので、内外ステータ巻線を組み付けるための工程数を低減でき、組み付け時間を短縮できる。
【0019】
(請求項9の発明)
請求項2、4〜8に記載した何れか一つのダブルステータ型モータにおいて、ロータのセグメント部には、径方向の内周側と外周側との間にスリットが形成されていることを特徴とする。
請求項2に係る発明では、内ステータ巻線の方が外ステータ巻線よりスロット内導体数(スロット内に収納されるストッロ内導体の本数)が少ないので、内ステータの巻線起磁力より外ステータの巻線起磁力の方が強くなる。この場合、内ステータとセグメント部の通路に形成された磁束が、外ステータとセグメント部の通路に形成された磁束に合流するように引き寄せられる傾向が生じる。
【0020】
上記の場合、外ステータの磁束総量が増加して鉄心飽和が厳しくなる一方、内ステータの磁束総量が減って鉄心飽和が緩くなるというアンバランスが生じるため、体格や鉄心素材量の割りに出力が十分出にくいという問題が残る。
これに対し、本発明では、セグメント部の内周側と外周側との間にスリットを形成している、つまり、セグメント部の内周側と外周側とをスリットによって磁気的に分離しているので、セグメント部を径方向に磁束が通りにくくなる。これにより、内ステータと外ステータとの間で磁束の入り混じりを防ぐ作用が生じるため、内外ステータの磁束総量のアンバランスを抑制でき、体格や鉄心素材量に応じた出力を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ダブルステータ型モータの全体構成図である。
【図2】インバータに接続される内外ステータ巻線の結線図である。
【図3】内外ステータ巻線のスロット内導体を示す断面図である(実施例1)。
【図4】(a)内外ステータ巻線の形状を軸方向から見た図面、(b)内外ステータ巻線の形状を示す側面図である(実施例1)。
【図5】従来技術と本発明に係るモデルA〜Dの基本構成を記載した図である。
【図6】(a)モデルAの構成を示す断面図、(a)モデルAの磁場解析の結果を示す解析図である。
【図7】(a)モデルBの構成を示す断面図、(a)モデルBの磁場解析の結果を示す解析図である。
【図8】(a)モデルCの構成を示す断面図、(a)モデルCの磁場解析の結果を示す解析図である。
【図9】(a)モデルDの構成を示す断面図、(a)モデルDの磁場解析の結果を示す解析図である。
【図10】モデルA〜Dのシミュレーション結果を記載した図である。
【図11】内外ステータ巻線のスロット内導体を示す断面図である(実施例2)。
【図12】(a)内外ステータ巻線の形状を軸方向から見た図面、(b)内外ステータ巻線の形状を示す側面図である(実施例2)。
【図13】内外ステータ巻線のスロット内導体を示す断面図である(実施例3)。
【図14】(a)内外ステータ巻線の形状を軸方向から見た図面、(b)内外ステータ巻線の形状を示す側面図である(実施例3)。
【図15】(a)内外ステータ巻線の形状を軸方向から見た図面、(b)内外ステータ巻線の形状を示す側面図である(実施例4)。
【図16】内外ステータ巻線の組み立て工程を示す説明図である(実施例4)。
【図17】セグメント部にスリットを形成した断面図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
実施例1に記載するダブルステータ型モータ1は、図1に示す様に、スルーボルト2によって装置ハウジング3に固定されるモータケース4と、このモータケース4にベアリング5を介して回転自在に支持されるシャフト6と、このシャフト6にロータディスク7を介して連結される環状のロータRと、このロータRの径方向内側に配置されてモータケース4に固定される内ステータSiと、ロータRの径方向外側に配置されてモータケース4に固定される外ステータSoとで構成される。
ロータディスク7は、例えば、非磁性SUS材によって形成され、径方向の中央部に円筒形のボス部7aを有し、このボス部7aがシャフト6の外周に嵌合して、シャフト6に対しキー8により回り止めされ、且つ、シャフト6に設けられるフランジ部6aと、シャフト6の端部に形成された雄ねじ部6bに結合されるナット9によって軸方向に固定されている。
【0024】
ロータRは、図3に示す様に、ブリッジ10aを介して環状に連結される複数のセグメント部10と、周方向に隣り合うセグメント部10同士の間に介在される複数の永久磁石11とで構成され、ロータRの軸方向端面がロータディスク7に固定されている。なお、図3は、ロータRおよび内外ステータSi、Soの周方向の一部を示す断面図であるが、断面を表示するハッチングは省略している。
セグメント部10は、例えば、新日本製鉄社の35H250(商品名)である電磁鋼板を積層して構成され、径方向の内周側と外周側とにそれぞれ凹み部10bを有し、且つ、径方向の外周側(または内周側)が前記ブリッジ10aによって周方向に隣り合うセグメント部10と連結されている。なお、凹み部10bは、セグメント部10の周方向中央部に形成されている。
永久磁石11は、例えば、TDK社のFB14H(商品名)を使用したフェライト磁石であり、周方向に対して交互に逆向きに着磁されている。つまり、周方向に隣り合う一方の磁石11と他方の磁石11は、図示矢印で示す様に、周方向に対向する磁極同士が同一の極性を有している。
【0025】
内ステータSiは、外周面に開口する複数のスロットが周方向等ピッチに形成された内ステータ鉄心12と、複数のスロットを介して内ステータ鉄心12に巻装される内ステータ巻線13とで構成される。
外ステータSoは、内周面に開口する複数のスロットが周方向等ピッチに形成された外ステータ鉄心14と、複数のスロットを介して外ステータ鉄心14に巻装される外ステータ巻線15とで構成される。
内ステータ鉄心12と外ステータ鉄心14は、それぞれ鉄心形状に打ち抜かれた電磁鋼板(例えば35H250)を積層して構成され、図1に示す様に、軸方向の図示左端面が保持プレート16の端面に溶接等によって固定されている。
【0026】
保持プレート16は、例えば、板厚2mmの低炭素鋼板をプレス加工して円環状に形成され、内周側の端面に内ステータ鉄心12の軸方向端面が固定され、外周側の端面に外ステータ鉄心14の軸方向端面が固定される。この保持プレート16には、内ステータ鉄心12に形成されるスロットおよび外ステータ鉄心14に形成されるスロットとそれぞれ同数のスロットが周方向の同位置に形成されている。
保持プレート16に内ステータ鉄心12と外ステータ鉄心14が固定されることで、内ステータSiと外ステータSoとが同軸に保持され、且つ、内ステータ巻線13および外ステータ巻線15を組み立てる際のサブアッセンブリ部品として構成される。
【0027】
内ステータSiと外ステータSoは、内ステータ鉄心12に形成されるスロット数と、外ステータ鉄心14に形成されるスロット数とが同一であり、且つ、ステータ極数がロータ極数と同一である。つまり、ロータRと内ステータSiと外ステータSoは、いずれも同一極数(本実施例では12極)である。
内ステータ巻線13と外ステータ巻線15は、それぞれ延線方向と直交する断面形状が長方形であり、且つ、同一断面積を有する平角導体が使用される。
内ステータ巻線13は、図2に示す様に、三相コイルX、Y、Zを星型結線して形成され、外ステータ巻線15は、内ステータ巻線13の三相コイルX、Y、Zとそれぞれ直列に接続される三相コイルU、V、Wによって形成される。また、三相コイルU、V、Wの各端子Uo、Vo、Woは、図2に示す様に、複数のスイッチ素子17とダイオード18およびスイッチング制御装置(図示せず)を備える周知のインバータIに接続され、このインバータIが電池Bに接続されている。
【0028】
内ステータ巻線13と外ステータ巻線15は、それぞれスロット内に収納される直線状のスロット内導体13a、15aを有し、外ステータ巻線15のスロット内導体数より内ステータ巻線13のスロット内導体数の方が少なく設定されている。実施例1では、図3に示す様に、外ステータ巻線15のスロット内導体数が8本であるのに対し、内ステータ巻線13のスロット内導体数は4本である。言い換えると、外ステータ巻線15は、1相/1極当たりのターン数が8ターンであるのに対し、内ステータ巻線13は4ターンである。また、内ステータ巻線13は、スロット内導体13aが縦向きに配置される。すなわち、スロット内導体13aの長辺側を内ステータ鉄心12の半径方向に向けてスロット内に収納される。一方、外ステータ巻線15は、スロット内導体15aが横向きに配置される。すなわち、スロット内導体15aの長辺側を外ステータ鉄心14の周方向に向けてスロット内に収納される。
【0029】
上記の構成により、内ステータSiのスロット面積は、外ステータSoのスロット面積の約半分となっている。また、外ステータSoのスロットは、スロット内導体15aを横向きに配置するので、周方向に幅が広く形成されるのに対し、内ステータSiのスロットは、スロット内導体13aを縦向きに配置するので、周方向の幅が狭く、半径方向に長く形成されている。
また、外ステータ巻線15の8本のスロット内導体15aは、図4(b)に示す様に、スロットの内周側に収納される4本(以下、内側スロット内導体15a1と呼ぶ)が、それぞれ渡り部19を介して内ステータ巻線13の4本のスロット内導体13aと連続して一体に設けられている。
【0030】
渡り部19は、内ステータSiと外ステータSoとの間でロータRの図示左端側を径方向に跨いで配設され、外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aとの間をU字状に連接している。また、渡り部19には、横向きに配置される外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と、縦向きに配置される内ステータ巻線13のスロット内導体13aとを連接するために、図4(a)に示す様に、90度の捻り部19aが設けられている。以下、渡り部19を介して一体に設けられる外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aを第1のU字状導体と呼ぶ。
【0031】
外ステータ鉄心14のスロット内に収納される8本のスロット内導体のうち、内側スロット内導体15a1より外周側の4本(以下、外側スロット内導体15a2と呼ぶ)は、図4(b)に示す様に、二組のU字状導体(以下、第2のU字状導体と呼ぶ)として形成される。つまり、第2のU字状導体は、外ステータ鉄心14の周方向に異なる二箇所のスロット内に収納される一方の外側スロット内導体15a2と他方の外側スロット内導体15a2とが、外ステータ鉄心14の図示左端面より外側でU字状に連続して一体に設けられている。
【0032】
第1のU字状導体および第2のU字状導体は、それぞれ、内ステータ鉄心12および外ステータ鉄心14に対し、反U字側の端部からスロット内へ軸方向に挿入して組み付けられ、各スロットより突き出る反U字側の端部を周方向に所定角度捻った状態で亀甲状に接合され、全体として前記X、Y、Z相およびU、V、W相を形成するように、内外ステータ巻線13、15として接続される。但し、内ステータSiと外ステータSoは、図3に破線矢印で示す様に、両者の巻線起磁力によって発生する磁界φi、φoが、ロータRの同一セグメント部10に対し、並列に対向して印加されるように、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15とが逆相に接続されている。
【0033】
次に、上記ダブルステータ型モータ1の作動を説明する。
ロータRの周方向に隣り合うセグメント部10間の中央よりも少し外れた角度に電流分布の中心が位置するように、インバータIにより内ステータ巻線13と外ステータ巻線15に交流電流を流すと、セグメント部10が磁気的に電流分布の中心方向に引き込まれる。すなわち、リラクタンストルク作用を生じる。
また、セグメント部10は、隣接する永久磁石11(フェライト磁石)により磁化されて磁極を形成するため、電流分布の中央にセグメント部10の中心が引き込まれる。すなわち、磁石トルク作用を生じる。これらリラクタンストルクと磁石トルクとが協同してロータRを駆動することにより、シャフト6が回転してモータ作動を成す。
【0034】
永久磁石11は、周方向に隣り合うセグメント部10間において、それぞれのセグメント部10を向いて、すなわち、周方向を向いて磁化されており、また、内ステータSiと外ステータSoの巻線起磁力は、同方向に協同することなく、図3に示す様に、同一のセグメント部10に対し、並列に対向して磁界φi、φoを印加する。このため、永久磁石11は、両ステータSi、Soの巻線起磁力の和ではなく、略平均レベルの反磁界を受けることとなる。すなわち、特許文献1に記載される従来モータよりも永久磁石11の受ける反磁界が低くなることで高性能を出すことができ、且つ、減磁に対して強くできる。
また、ダブルステータ構造であっても、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15とを第1のU字状導体と第2のU字状導体とで具現化できるため、例えば、内外ステータSi、Soで異なる断面積の巻線をそれぞれに並列に複数のインバータIで電流を流すなどの必要もなく、同一の断面積の巻線導体で内外ステータSi、Soも一括して簡素に巻線作業を行うことができる。
【0035】
(本発明と従来技術とのモデル解析による出力特性の比較)
以下、より具体的な事例として、従来技術に係るシングルステータ型モータと、本発明に係るダブルステータ型モータのモデルA〜Dを設定し、統一解析条件(下記参照)の元で実施した出力特性のシミュレーション結果を基に、本発明の効果について説明する。
統一解析条件…回転数:1000rpm、電流:140[Arms]、電流位相角:50[degE]、磁石温度:60[degC]
図5は、各シミュレーションモデルA〜Dの基本構成を一覧にした表である。
なお、図5に記載された磁石厚とは、着磁方向の平均磁石厚である。
図6〜図9は、各モデルA〜Dの形状および磁場解析の結果である。
図10は、各モデルA〜Dのシミュレーション結果を一覧にした表である。
【0036】
図6に示すモデルAは、一般にネオジム磁石で構成される永久磁石埋め込み型IPMモータ(シングルステータ)において、磁石11をフェライトで構成した一例である。このモデルAは、図10に示す様に、それなりのトルクは得られるものの、図6(b)の磁力線図より理解されるように、磁石11内の磁力線が非常に疎となる。すなわち、磁石11に対する反磁界が強くなり、減磁してしまうため、実際にはモータとして成立できない問題点がある。そこで、モデルAより磁石11を厚くして減磁耐力を向上する構造に改良したものが図7に示すモデルBである。このモデルBは、図10に示す様に、減磁に対しては強くなったが、トルクが小さいという問題点がある。
【0037】
これらに対して、本願の請求項1の発明に含まれるモデルC(図8参照)は、内ステータSiと外ステータSoの磁界が並列して対向しあう関係としたダブルギャップ構造を有し、且つ、ロータRを複数のセグメント部10と、そのセグメント部10間にフェライト磁石11を配置した構造である。このモデルCは、モデルBと同様に磁石11が減磁する心配がない上に、モデルBよりもトルクが大きく出来る効果を奏する。しかし、図8(a)に示すモデル形状から明らかなように、外ステータSoのティース最小幅が3.5mmであるのに対し、内ステータSiのティース最小幅は1mmと非常に小さく、内外ステータSi、Soの磁束通路のアンバランスが大きくなるという課題がある。
【0038】
上記の課題に対し、実施例1に相当するモデルD(図9参照)は、外ステータSoのスロット内導体数を多く、内ステータSiのスロット内導体数を少なくしている。例えば、スロット内導体数とスロット面積において、外:内=2:1と差異を付けることにより、外ステータSoのティース最小幅が3mm、内ステータSiのティース最小幅が2mmとなり、モデルCに対して内ステータSiのティース最小幅が二倍に改善される。その結果、図10に記載したモデルCとモデルDとの比較でも明らかなように、トルクがより向上する。
上記のように、本発明の実施例1に相当するモデルDは、φ180mm程度の小径モータにおいて、モデルA(シングルステータで減磁に耐えられない)より減磁耐力が向上し、かつ高性能が発揮でき、モデルB(シングルステータで減磁には耐えられる)に対して、約30Nmものトルク向上が図れる。
【0039】
(実施例2)
本発明の実施例2を図11、図12に示す。
実施例1に記載した外ステータ巻線15は、内側スロット内導体15a1および外側スロット内導体15a2を共に横向き(外ステータ鉄心14の周方向)に配置しているが、この実施例2に示す外ステータ巻線15は、図11に示す様に、外側スロット内導体15a2を横向きに配置し、内側スロット内導体15a1を縦向き(外ステータ鉄心14の半径方向)に配置している。なお、図11は、ロータRおよび内外ステータSi、Soの周方向の一部を示す断面図であるが、断面を表示するハッチングは省略している。
また、内ステータ巻線13のスロット内導体13aは、実施例1と同じく、縦向きに配置される。なお、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15に使用される各導体は、いずれも断面形状が長方形であり、且つ、同一断面積を有する平角導体を使用していることは実施例1と同じである。
【0040】
上記の構成では、渡り部19を介して連接される外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aが共に縦向きに配置されるので、図12(a)、(b)に示す様に、渡り部19を90度捻る必要はない。つまり、渡り部19を90度捻ることなく実施例1と同様の効果を得ることができるので、渡り部19の捻り作業が不要となり、その分の工程数を減らすことができる。また、外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1を縦向き配置とすることにより、外ステータSoのティース最小幅を大きくできるので、外ステータSoの磁束流通量を増やすことができ、より高トルク化の効果を奏する。
【0041】
(実施例3)
本発明の実施例3を図13、図14に示す。
この実施例3では、図13に示す様に、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15に使用される各導体の断面形状が全て同一(略正方形)であり、且つ、同一断面積を有している。なお、図13は、ロータRおよび内外ステータSi、Soの周方向の一部を示す断面図であるが、断面を表示するハッチングは省略している。また、図14(a)、(b)に示す様に、外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aとを連接する渡り部19に捻りを設けない構成としている。
上記の構成は、内外ステータ巻線13、15の巻き数が少ないモータに適したもので、内外ステータ巻線13、15に使用される導体の断面形状が略正方形となる場合に、巻線構造が簡素になる効果を奏する。
【0042】
(実施例4)
本発明の実施例4を図15、図16に示す。
この実施例4は、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15の一相分の巻線を一つの連続した巻線体20(図16参照)として構成する一例である。なお、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15に使用される各導体は、実施例3と同様に、断面形状が全て同一(略正方形)であり、且つ、同一断面積を有している(図15参照)。
内ステータ巻線13と外ステータ巻線15は、図15(b)に示す様に、外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aとが軸方向の一端側(図示左側)で渡り部19によってU字状に連接され、さらに、軸方向の他端側で内側スロット内導体15a1と外側スロット内導体15a2とがU字状に連接されて、全体が蛇行状に連続した巻線体20を構成している。
【0043】
上記の巻線体20は、図16(a)→(b)→(c)のように、軸方向の他端側から内外ステータ鉄心12、14に対し、一括してスロット内に差し込んで一度に組み付けられる。同様に組み付けられた複数の巻線体20の端部同士を接続することで一相分の巻線が形成される。
上記の構成では、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15の各導体を蛇行状に連続した一つの巻線体20として成形できるの、内外ステータ巻線13、15の組み立て工程を簡単にできる。つまり、一つの連続した巻線体20を内外ステータ鉄心12、14のスロットにワンストロークで収納できるので、内外ステータ巻線13、15の組み立て工数を低減でき、組み付け時間を短縮できる。
本発明のダブルステータ型モータ1は、巻線構造が複雑になると、コスト的に採用が困難であるが、この実施例4では、巻線構造を簡素にできるため、小型モータのような巻線工程に割り当てられる僅かなコストでも実現できる。すなわち、特に小型モータ向きの構成である。
【0044】
(実施例5)
本発明の実施例5を図17に示す。
実施例1〜実施例4では、内ステータ巻線13の方が外ステータ巻線15よりスロット内導体数(スロット内に収納されるストッロ内導体の本数)が少ないので、内ステータSiの巻線起磁力より外ステータSoの巻線起磁力の方が強くなる。この場合、内ステータSiとセグメント部10の通路に形成された磁束が、外ステータSoとセグメント部10の通路に形成された磁束に合流するように引き寄せられる傾向が生じる。その結果、外ステータSoでは、磁束総量が増加して鉄心飽和が厳しくなる一方、内ステータSiでは、磁束総量が減って鉄心飽和が緩くなるというアンバランスが生じるため、体格や鉄心素材量の割りに出力が十分出にくいという問題が残る。
【0045】
これに対し、実施例5では、図17に示す様に、ロータRのセグメント部10にスリット21を形成している。なお、図17は、ロータRおよび内外ステータSi、Soの周方向の一部を示す断面図であるが、断面を表示するハッチングは省略している。
上記スリット21は、セグメント部10の内周側と外周側との間を周方向に円弧状に形成されている。このスリット21は、セグメント部10の内周側と外周側とを磁気的に分離する働きを有するので、セグメント部10を径方向に磁束が通りにくくなる。これにより、内ステータSiと外ステータSoとの間で磁束の入り混じりを防ぐ作用が生じるため、上記した内ステータSiと外ステータSoとで生じる磁束総量のアンバランスを抑制でき、体格や鉄心素材量に応じた出力を得ることが可能となる。
【0046】
(変形例)
実施例1では、ロータRの永久磁石11にフェライト磁石を使用した一例を記載したが、フェライト磁石ではなく、希土類磁石(例えばネオジム磁石)を使用しても良い。あるいは、フェライト磁石と希土類磁石とを周方向に交互に配置しても良い。
実施例2〜4では、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15の各スロット内導体数、つまり、1相/1極当たりのターン数を、それぞれ2ターン、4ターンとして図示(図11、図13、図15参照)しているが、実施例1と同じく4ターン、8ターンでも良い。 同様に、実施例1では、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15の各スロット内導体数をそれぞれ2ターン、4ターンとすることもできる。
さらに、内外ステータ巻線13、15のスロット内導体数は、内:外=1:2に限定する必要はなく、内:外=3:4(例えば、6ターンと8ターン)等も可能である。
【0047】
実施例1に記載したダブルステータ型モータ1は、内ステータSiのスロット数と外ステータSoのスロット数とを同一に設定しているが、内ステータSiのスロット数を外ステータSoのスロット数より少なくすることもできる。この場合、外ステータ鉄心14と比較して、内ステータ鉄心12のスロットピッチを大きく取ることができるので、例えば、小径モータにおいても、磁束通路である内ステータ鉄心12の断面積を十分に確保できる。その結果、内外ステータSi、Soの径差制約の下でも、内ステータSiを外ステータSoに比べて小さく設計することが容易である。
【符号の説明】
【0048】
1 ダブルステータ型モータ
6 シャフト(回転軸)
10 セグメント部
11 永久磁石(フェライト磁石)
12 内ステータ鉄心
13 内ステータ巻線
13a 内ステータ巻線のスロット内導体
14 外ステータ鉄心
15 外ステータ巻線
15a 外ステータ巻線のスロット内導体
19 渡り部
20 巻線体
21 セグメント部に形成されたスリット
R ロータ
Si 内ステータ
So 外ステータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト磁石のように減磁に弱い磁石でも使うことの出来るモータ構造の工夫に関するものであり、周方向に着磁した永久磁石をセグメント極間に挟む環状ロータを有し、そのロータの径方向内側に三相の内ステータを配置し、径方向外側に三相の外ステータを配置して構成されるダブルステータ型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のモータは、ネオジム磁石を用いた永久磁石埋め込み型同期モータが主流になっている。しかし、添加物質として無くてはならないジスプロシウムなどの重希土類金属の価格高騰により、将来的にこのようなレアアース磁石を大量生産用モータへ使用することにはリスクがある。このため、安定的需給材料として、フェライト磁石を用いた脱レアアースモータの研究開発が盛んになっている。
しかし、フェライト磁石は、ネオジム磁石に比べて、磁束密度および保持力において、それぞれ数分の1程度の低い特性であり、このような低特性の磁石を如何に使いこなすかが目下の技術課題となっている。
【0003】
永久磁石埋め込み型同期モータにおいて、これまでネオジム磁石を埋め込んでいた部分をフェライト磁石に置き換えると、磁束密度が低いのに応じて出力特性が下がる。その下がった分は、我慢許容して使う考え方もあるが、これが出来ない問題点がある。それは、フェライト磁石の保持力が低いために、強いステータの巻線起磁力に対してネオジム磁石のように耐えることができず、永久減磁してしまい、そもそものモータとしての機能をも失ってしまうためである。このようなフェライト磁石が減磁する課題に対して、ステータの巻線起磁力が磁石に印加されにくくする、または巻線起磁力を小さくする方式、構造が求められている。
【0004】
上記の課題に対して、本願発明者は、特許文献1に記載されているダブルステータ型モータの構造が解決の参考になるのではないかと考えた。すなわち、起磁力源であるステータの起磁力が内外に二分割され得る構造と考えれば、永久磁石に印加される起磁力を半分にできるのではないかと考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−139156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来公知のダブルステータ型モータは、以下の問題点(1)〜(3)を有しているため、特許文献1に開示された方式のままでは実用化が難しく、且つ、減磁を抑制できる効果が期待できないと言う課題がある。
(1)二重構造(ダブルステータ型)のため、ステータの部品数、特に複雑な製法を要するステータ巻線の数が二倍となり、製造が難しくなる。
(2)二重構造のため、内ステータの巻線スペースと鉄心断面積との関係が苦しくなる。つまり、内ステータ鉄心の磁路断面積が狭くなるため、特性が出なくなる。
(3)磁石をロータの径方向に着磁した配置とし、且つ、内外ステータの起磁力が磁石に協同して同方向に作用する構成であるため、磁石の減磁を軽減することができない。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、フェライトのような減磁に弱い磁石でも使用でき、且つ、特許文献1に開示された従来モータと比較して製造が容易なダブルステータ型モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1の発明)
本発明のダブルステータ型モータは、回転軸に連結されて回転軸と一体に回転する環状のロータと、このロータの径方向内側に配置される内ステータと、ロータの径方向外側に配置される外ステータとを備える。
ロータは、周方向に所定の間隔を有して環状に配置される複数のセグメント部と、周方向に隣り合うセグメント部同士の間に介在され、且つ、周方向に対して交互に逆向きに着磁された複数の永久磁石とを有している。
【0008】
内ステータは、複数のスロットが外周面に開口する内ステータ鉄心と、複数のスロットを介して内ステータ鉄心に巻装される三相の内ステータ巻線とを備えている。
外ステータは、複数のスロットが内周面に開口する外ステータ鉄心と、複数のスロットを介して外ステータ鉄心に巻装される三相の外ステータ巻線とを備えている。
ロータと内ステータおよび外ステータは、いずれも同一極数であり、内ステータと外ステータは、両者の巻線起磁力によって発生する磁界が同一のセグメント部に対して並列に印加されるように、内ステータ巻線と外ステータ巻線とが逆相に接続されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、同一のセグメント部に対して、内ステータの巻線起磁力と外ステータの巻線起磁力とが同方向に協同することなく、並列に対向して印加されるので、磁石に印加されるステータの起磁力が分散して小さいという特徴がある。また、永久磁石の極性をステータの方向(径方向)に向けず、周方向に着磁しているので、磁石の着磁方向にステータの減磁界が印加されにくい特徴がある。
上記の両作用の相乗効果により、磁石の減磁が起きにくい効果を得ることができ、フェライトのような減磁に弱い磁石でも使用可能となる。
【0010】
(請求項2の発明)
請求項1に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータと外ステータは、内ステータ鉄心のスロット数と外ステータ鉄心のスロット数とが同一であり、且つ、内ステータ巻線と外ステータ巻線は、それぞれスロット内に収納されるスロット内導体を有し、外ステータ巻線のスロット内導体数より内ステータ巻線のスロット内導体数の方が少ないことを特徴とする。
上記の構成では、外ステータ鉄心と内ステータ鉄心とで両者のスロット数は同一であるが、スロット内に収納されるスロット内導体は、内ステータ巻線の方が外ステータ巻線より少ないので、外ステータ鉄心に対し内ステータ鉄心のスロット面積を小さくできる。これにより、例えば、小径モータが求められる場合でも、内ステータ鉄心のスロット面積を小さく形成することで、磁束通路である内ステータの鉄心断面積を十分に確保できるので、内外ステータの径差制約の下でも、内ステータを外ステータに比べて小さく設計することが容易である。
【0011】
(請求項3の発明)
請求項1に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータと外ステータは、内ステータ鉄心のスロット数の方が外ステータ鉄心のスロット数より少ないことを特徴とする。
上記の構成では、内ステータ鉄心の方が外ステータ鉄心よりスロット数が少ないので、外ステータ鉄心に対し内ステータ鉄心のスロットピッチを大きく取ることができる。これにより、例えば、小径モータが求められる場合でも、内ステータ鉄心のスロットピッチを大きく取ることで、磁束通路である内ステータの鉄心断面積を十分に確保できるので、内外ステータの径差制約の下でも、内ステータを外ステータに比べて小さく設計することが容易である。
【0012】
(請求項4の発明)
請求項2に記載したダブルステータ型モータにおいて、外ステータ巻線のスロット内導体は、スロットの内周側に収納される内側スロット内導体と、スロット内で内側スロット内導体の外周側に収納される外側スロット内導体とを有し、外ステータ巻線の内側スロット内導体と内ステータ巻線のスロット内導体は、内ステータと外ステータとの間でロータの軸方向一端側を径方向に跨いで配設される渡り部を介してU字状に連続して一体に設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成では、外ステータ巻線の内側スロット内導体と内ステータ巻線のスロット内導体とが渡り部を介して一体に構成されているので、内外ステータ巻線に使用される導体数を少なくでき、部品点数の低減によるコストダウン効果を得ることが可能である。なお、渡り部を介してU字状に設けられた外ステータ巻線の内側スロット内導体と内ステータ巻線のスロット内導体は、外ステータ鉄心および内ステータ鉄心の各スロットに対し軸方向から挿入して組み付けた後、渡り部によって連接されていない反U字側の軸方向端部を連接(亀甲状に屈曲した後に所定箇所を溶接等により接合)すれば良いので、簡単に組み付けることができ、且つ、スロット占積率も向上できる効果もある。
【0014】
(請求項5の発明)
請求項4に記載したダブルステータ型モータにおいて、外ステータ巻線は、外ステータ鉄心の周方向に異なる二箇所のスロット内に収納される一方の外側スロット内導体と他方の外側スロット内導体とが外ステータ鉄心の軸方向一端面より外側でU字状に連続して一体に設けられ、内側スロット内導体と外側スロット内導体とが軸方向の他端側で電気的かつ機械的に接続されていることを特徴とする。
【0015】
上記の構成では、一方の外側スロット内導体と他方の外側スロット内導体とが軸方向の一端側でU字状に連続して一体に設けられているので、内外ステータ巻線に使用される導体数を少なくでき、部品点数の低減によるコストダウン効果を得ることが可能である。なお、軸方向の一端側がU字状に連続して一体に設けられた一方の外側スロット内導体と他方の外側スロット内導体は、外ステータ鉄心の各スロットに対し軸方向より挿入して組み付けた後、反U字側の軸方向端部を連接(亀甲状に屈曲した後に所定箇所を溶接等により接合)すれば良いので、簡単に組み付けることができ、且つ、スロット占積率も向上できる効果もある。
【0016】
(請求項6の発明)
請求項4または5に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータ巻線と外ステータ巻線は、それぞれスロット内導体の断面形状が長方形で同一断面積を有し、内ステータ巻線のスロット内導体は、断面形状の長辺側を内ステータ鉄心の半径方向に向けてスロット内に収納され、外ステータ巻線のスロット内導体は、断面形状の長辺側を外ステータ鉄心の周方向に向けてスロット内に収納され、渡り部は、スロット内導体と同一断面形状および同一断面積を有し、且つ、90度捻られていることを特徴とする。
この構成では、内ステータ巻線のスロット内導体を縦向き、つまり、断面形状の長辺側を内ステータ鉄心の半径方向に向けて配置することで、内ステータ鉄心のスロット幅(周方向の幅)を狭く形成できる。これにより、内ステータ鉄心の周方向に隣り合うスロット間に磁束通路を形成するティースの断面積が増加するので、特に小径モータにおいて高性能化の効果を奏する。
【0017】
(請求項7の発明)
請求項4または5に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータ巻線と外ステータ巻線は、それぞれスロット内導体の断面形状が長方形で同一断面積を有し、外ステータ巻線の外側スロット内導体は、断面形状の長辺側を外ステータ鉄心の周方向に向けてスロット内に収納され、外ステータ巻線の内側スロット内導体は、断面形状の長辺側を外ステータ鉄心の半径方向に向けてスロット内に収納され、内ステータ巻線のスロット内導体は、断面形状の長辺側を内ステータ鉄心の半径方向に向けてスロット内に収納されていることを特徴とする。
上記の構成では、渡り部を介して連接される外ステータ巻線の内側スロット内導体と内ステータ巻線のスロット内導体が、共に縦向きに配置されるので、渡り部を90度捻る必要はない。つまり、渡り部を90度捻る工程を用いることなく、請求項6に係る発明と同様の効果を得ることができるので、工程数を減らすことができる。
【0018】
(請求項8の発明)
請求項4に記載したダブルステータ型モータにおいて、内ステータ巻線と外ステータ巻線は、内ステータ巻線のスロット内導体と外ステータ巻線の内側スロット内導体とが軸方向の一端側で渡り部によってU字状に連接され、さらに、軸方向の他端側で内側スロット内導体と外側スロット内導体とがU字状に連接されて全体が蛇行状に連続した巻線体を構成し、この巻線体を複数組み合わせて一相分の巻線が形成されることを特徴とする。
上記の構成によれば、内ステータ巻線のスロット内導体と外ステータ巻線の内側スロット内導体および外側スロット内導体とが一つの連続した巻線体として構成されるので、内外ステータ巻線を形成する巻線体を少なくできる。また、一つの連続した巻線体は、予め蛇行状に成形された形のまま、内外ステータ鉄心の各スロットにワンストロークで収納できるので、内外ステータ巻線を組み付けるための工程数を低減でき、組み付け時間を短縮できる。
【0019】
(請求項9の発明)
請求項2、4〜8に記載した何れか一つのダブルステータ型モータにおいて、ロータのセグメント部には、径方向の内周側と外周側との間にスリットが形成されていることを特徴とする。
請求項2に係る発明では、内ステータ巻線の方が外ステータ巻線よりスロット内導体数(スロット内に収納されるストッロ内導体の本数)が少ないので、内ステータの巻線起磁力より外ステータの巻線起磁力の方が強くなる。この場合、内ステータとセグメント部の通路に形成された磁束が、外ステータとセグメント部の通路に形成された磁束に合流するように引き寄せられる傾向が生じる。
【0020】
上記の場合、外ステータの磁束総量が増加して鉄心飽和が厳しくなる一方、内ステータの磁束総量が減って鉄心飽和が緩くなるというアンバランスが生じるため、体格や鉄心素材量の割りに出力が十分出にくいという問題が残る。
これに対し、本発明では、セグメント部の内周側と外周側との間にスリットを形成している、つまり、セグメント部の内周側と外周側とをスリットによって磁気的に分離しているので、セグメント部を径方向に磁束が通りにくくなる。これにより、内ステータと外ステータとの間で磁束の入り混じりを防ぐ作用が生じるため、内外ステータの磁束総量のアンバランスを抑制でき、体格や鉄心素材量に応じた出力を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ダブルステータ型モータの全体構成図である。
【図2】インバータに接続される内外ステータ巻線の結線図である。
【図3】内外ステータ巻線のスロット内導体を示す断面図である(実施例1)。
【図4】(a)内外ステータ巻線の形状を軸方向から見た図面、(b)内外ステータ巻線の形状を示す側面図である(実施例1)。
【図5】従来技術と本発明に係るモデルA〜Dの基本構成を記載した図である。
【図6】(a)モデルAの構成を示す断面図、(a)モデルAの磁場解析の結果を示す解析図である。
【図7】(a)モデルBの構成を示す断面図、(a)モデルBの磁場解析の結果を示す解析図である。
【図8】(a)モデルCの構成を示す断面図、(a)モデルCの磁場解析の結果を示す解析図である。
【図9】(a)モデルDの構成を示す断面図、(a)モデルDの磁場解析の結果を示す解析図である。
【図10】モデルA〜Dのシミュレーション結果を記載した図である。
【図11】内外ステータ巻線のスロット内導体を示す断面図である(実施例2)。
【図12】(a)内外ステータ巻線の形状を軸方向から見た図面、(b)内外ステータ巻線の形状を示す側面図である(実施例2)。
【図13】内外ステータ巻線のスロット内導体を示す断面図である(実施例3)。
【図14】(a)内外ステータ巻線の形状を軸方向から見た図面、(b)内外ステータ巻線の形状を示す側面図である(実施例3)。
【図15】(a)内外ステータ巻線の形状を軸方向から見た図面、(b)内外ステータ巻線の形状を示す側面図である(実施例4)。
【図16】内外ステータ巻線の組み立て工程を示す説明図である(実施例4)。
【図17】セグメント部にスリットを形成した断面図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
実施例1に記載するダブルステータ型モータ1は、図1に示す様に、スルーボルト2によって装置ハウジング3に固定されるモータケース4と、このモータケース4にベアリング5を介して回転自在に支持されるシャフト6と、このシャフト6にロータディスク7を介して連結される環状のロータRと、このロータRの径方向内側に配置されてモータケース4に固定される内ステータSiと、ロータRの径方向外側に配置されてモータケース4に固定される外ステータSoとで構成される。
ロータディスク7は、例えば、非磁性SUS材によって形成され、径方向の中央部に円筒形のボス部7aを有し、このボス部7aがシャフト6の外周に嵌合して、シャフト6に対しキー8により回り止めされ、且つ、シャフト6に設けられるフランジ部6aと、シャフト6の端部に形成された雄ねじ部6bに結合されるナット9によって軸方向に固定されている。
【0024】
ロータRは、図3に示す様に、ブリッジ10aを介して環状に連結される複数のセグメント部10と、周方向に隣り合うセグメント部10同士の間に介在される複数の永久磁石11とで構成され、ロータRの軸方向端面がロータディスク7に固定されている。なお、図3は、ロータRおよび内外ステータSi、Soの周方向の一部を示す断面図であるが、断面を表示するハッチングは省略している。
セグメント部10は、例えば、新日本製鉄社の35H250(商品名)である電磁鋼板を積層して構成され、径方向の内周側と外周側とにそれぞれ凹み部10bを有し、且つ、径方向の外周側(または内周側)が前記ブリッジ10aによって周方向に隣り合うセグメント部10と連結されている。なお、凹み部10bは、セグメント部10の周方向中央部に形成されている。
永久磁石11は、例えば、TDK社のFB14H(商品名)を使用したフェライト磁石であり、周方向に対して交互に逆向きに着磁されている。つまり、周方向に隣り合う一方の磁石11と他方の磁石11は、図示矢印で示す様に、周方向に対向する磁極同士が同一の極性を有している。
【0025】
内ステータSiは、外周面に開口する複数のスロットが周方向等ピッチに形成された内ステータ鉄心12と、複数のスロットを介して内ステータ鉄心12に巻装される内ステータ巻線13とで構成される。
外ステータSoは、内周面に開口する複数のスロットが周方向等ピッチに形成された外ステータ鉄心14と、複数のスロットを介して外ステータ鉄心14に巻装される外ステータ巻線15とで構成される。
内ステータ鉄心12と外ステータ鉄心14は、それぞれ鉄心形状に打ち抜かれた電磁鋼板(例えば35H250)を積層して構成され、図1に示す様に、軸方向の図示左端面が保持プレート16の端面に溶接等によって固定されている。
【0026】
保持プレート16は、例えば、板厚2mmの低炭素鋼板をプレス加工して円環状に形成され、内周側の端面に内ステータ鉄心12の軸方向端面が固定され、外周側の端面に外ステータ鉄心14の軸方向端面が固定される。この保持プレート16には、内ステータ鉄心12に形成されるスロットおよび外ステータ鉄心14に形成されるスロットとそれぞれ同数のスロットが周方向の同位置に形成されている。
保持プレート16に内ステータ鉄心12と外ステータ鉄心14が固定されることで、内ステータSiと外ステータSoとが同軸に保持され、且つ、内ステータ巻線13および外ステータ巻線15を組み立てる際のサブアッセンブリ部品として構成される。
【0027】
内ステータSiと外ステータSoは、内ステータ鉄心12に形成されるスロット数と、外ステータ鉄心14に形成されるスロット数とが同一であり、且つ、ステータ極数がロータ極数と同一である。つまり、ロータRと内ステータSiと外ステータSoは、いずれも同一極数(本実施例では12極)である。
内ステータ巻線13と外ステータ巻線15は、それぞれ延線方向と直交する断面形状が長方形であり、且つ、同一断面積を有する平角導体が使用される。
内ステータ巻線13は、図2に示す様に、三相コイルX、Y、Zを星型結線して形成され、外ステータ巻線15は、内ステータ巻線13の三相コイルX、Y、Zとそれぞれ直列に接続される三相コイルU、V、Wによって形成される。また、三相コイルU、V、Wの各端子Uo、Vo、Woは、図2に示す様に、複数のスイッチ素子17とダイオード18およびスイッチング制御装置(図示せず)を備える周知のインバータIに接続され、このインバータIが電池Bに接続されている。
【0028】
内ステータ巻線13と外ステータ巻線15は、それぞれスロット内に収納される直線状のスロット内導体13a、15aを有し、外ステータ巻線15のスロット内導体数より内ステータ巻線13のスロット内導体数の方が少なく設定されている。実施例1では、図3に示す様に、外ステータ巻線15のスロット内導体数が8本であるのに対し、内ステータ巻線13のスロット内導体数は4本である。言い換えると、外ステータ巻線15は、1相/1極当たりのターン数が8ターンであるのに対し、内ステータ巻線13は4ターンである。また、内ステータ巻線13は、スロット内導体13aが縦向きに配置される。すなわち、スロット内導体13aの長辺側を内ステータ鉄心12の半径方向に向けてスロット内に収納される。一方、外ステータ巻線15は、スロット内導体15aが横向きに配置される。すなわち、スロット内導体15aの長辺側を外ステータ鉄心14の周方向に向けてスロット内に収納される。
【0029】
上記の構成により、内ステータSiのスロット面積は、外ステータSoのスロット面積の約半分となっている。また、外ステータSoのスロットは、スロット内導体15aを横向きに配置するので、周方向に幅が広く形成されるのに対し、内ステータSiのスロットは、スロット内導体13aを縦向きに配置するので、周方向の幅が狭く、半径方向に長く形成されている。
また、外ステータ巻線15の8本のスロット内導体15aは、図4(b)に示す様に、スロットの内周側に収納される4本(以下、内側スロット内導体15a1と呼ぶ)が、それぞれ渡り部19を介して内ステータ巻線13の4本のスロット内導体13aと連続して一体に設けられている。
【0030】
渡り部19は、内ステータSiと外ステータSoとの間でロータRの図示左端側を径方向に跨いで配設され、外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aとの間をU字状に連接している。また、渡り部19には、横向きに配置される外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と、縦向きに配置される内ステータ巻線13のスロット内導体13aとを連接するために、図4(a)に示す様に、90度の捻り部19aが設けられている。以下、渡り部19を介して一体に設けられる外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aを第1のU字状導体と呼ぶ。
【0031】
外ステータ鉄心14のスロット内に収納される8本のスロット内導体のうち、内側スロット内導体15a1より外周側の4本(以下、外側スロット内導体15a2と呼ぶ)は、図4(b)に示す様に、二組のU字状導体(以下、第2のU字状導体と呼ぶ)として形成される。つまり、第2のU字状導体は、外ステータ鉄心14の周方向に異なる二箇所のスロット内に収納される一方の外側スロット内導体15a2と他方の外側スロット内導体15a2とが、外ステータ鉄心14の図示左端面より外側でU字状に連続して一体に設けられている。
【0032】
第1のU字状導体および第2のU字状導体は、それぞれ、内ステータ鉄心12および外ステータ鉄心14に対し、反U字側の端部からスロット内へ軸方向に挿入して組み付けられ、各スロットより突き出る反U字側の端部を周方向に所定角度捻った状態で亀甲状に接合され、全体として前記X、Y、Z相およびU、V、W相を形成するように、内外ステータ巻線13、15として接続される。但し、内ステータSiと外ステータSoは、図3に破線矢印で示す様に、両者の巻線起磁力によって発生する磁界φi、φoが、ロータRの同一セグメント部10に対し、並列に対向して印加されるように、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15とが逆相に接続されている。
【0033】
次に、上記ダブルステータ型モータ1の作動を説明する。
ロータRの周方向に隣り合うセグメント部10間の中央よりも少し外れた角度に電流分布の中心が位置するように、インバータIにより内ステータ巻線13と外ステータ巻線15に交流電流を流すと、セグメント部10が磁気的に電流分布の中心方向に引き込まれる。すなわち、リラクタンストルク作用を生じる。
また、セグメント部10は、隣接する永久磁石11(フェライト磁石)により磁化されて磁極を形成するため、電流分布の中央にセグメント部10の中心が引き込まれる。すなわち、磁石トルク作用を生じる。これらリラクタンストルクと磁石トルクとが協同してロータRを駆動することにより、シャフト6が回転してモータ作動を成す。
【0034】
永久磁石11は、周方向に隣り合うセグメント部10間において、それぞれのセグメント部10を向いて、すなわち、周方向を向いて磁化されており、また、内ステータSiと外ステータSoの巻線起磁力は、同方向に協同することなく、図3に示す様に、同一のセグメント部10に対し、並列に対向して磁界φi、φoを印加する。このため、永久磁石11は、両ステータSi、Soの巻線起磁力の和ではなく、略平均レベルの反磁界を受けることとなる。すなわち、特許文献1に記載される従来モータよりも永久磁石11の受ける反磁界が低くなることで高性能を出すことができ、且つ、減磁に対して強くできる。
また、ダブルステータ構造であっても、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15とを第1のU字状導体と第2のU字状導体とで具現化できるため、例えば、内外ステータSi、Soで異なる断面積の巻線をそれぞれに並列に複数のインバータIで電流を流すなどの必要もなく、同一の断面積の巻線導体で内外ステータSi、Soも一括して簡素に巻線作業を行うことができる。
【0035】
(本発明と従来技術とのモデル解析による出力特性の比較)
以下、より具体的な事例として、従来技術に係るシングルステータ型モータと、本発明に係るダブルステータ型モータのモデルA〜Dを設定し、統一解析条件(下記参照)の元で実施した出力特性のシミュレーション結果を基に、本発明の効果について説明する。
統一解析条件…回転数:1000rpm、電流:140[Arms]、電流位相角:50[degE]、磁石温度:60[degC]
図5は、各シミュレーションモデルA〜Dの基本構成を一覧にした表である。
なお、図5に記載された磁石厚とは、着磁方向の平均磁石厚である。
図6〜図9は、各モデルA〜Dの形状および磁場解析の結果である。
図10は、各モデルA〜Dのシミュレーション結果を一覧にした表である。
【0036】
図6に示すモデルAは、一般にネオジム磁石で構成される永久磁石埋め込み型IPMモータ(シングルステータ)において、磁石11をフェライトで構成した一例である。このモデルAは、図10に示す様に、それなりのトルクは得られるものの、図6(b)の磁力線図より理解されるように、磁石11内の磁力線が非常に疎となる。すなわち、磁石11に対する反磁界が強くなり、減磁してしまうため、実際にはモータとして成立できない問題点がある。そこで、モデルAより磁石11を厚くして減磁耐力を向上する構造に改良したものが図7に示すモデルBである。このモデルBは、図10に示す様に、減磁に対しては強くなったが、トルクが小さいという問題点がある。
【0037】
これらに対して、本願の請求項1の発明に含まれるモデルC(図8参照)は、内ステータSiと外ステータSoの磁界が並列して対向しあう関係としたダブルギャップ構造を有し、且つ、ロータRを複数のセグメント部10と、そのセグメント部10間にフェライト磁石11を配置した構造である。このモデルCは、モデルBと同様に磁石11が減磁する心配がない上に、モデルBよりもトルクが大きく出来る効果を奏する。しかし、図8(a)に示すモデル形状から明らかなように、外ステータSoのティース最小幅が3.5mmであるのに対し、内ステータSiのティース最小幅は1mmと非常に小さく、内外ステータSi、Soの磁束通路のアンバランスが大きくなるという課題がある。
【0038】
上記の課題に対し、実施例1に相当するモデルD(図9参照)は、外ステータSoのスロット内導体数を多く、内ステータSiのスロット内導体数を少なくしている。例えば、スロット内導体数とスロット面積において、外:内=2:1と差異を付けることにより、外ステータSoのティース最小幅が3mm、内ステータSiのティース最小幅が2mmとなり、モデルCに対して内ステータSiのティース最小幅が二倍に改善される。その結果、図10に記載したモデルCとモデルDとの比較でも明らかなように、トルクがより向上する。
上記のように、本発明の実施例1に相当するモデルDは、φ180mm程度の小径モータにおいて、モデルA(シングルステータで減磁に耐えられない)より減磁耐力が向上し、かつ高性能が発揮でき、モデルB(シングルステータで減磁には耐えられる)に対して、約30Nmものトルク向上が図れる。
【0039】
(実施例2)
本発明の実施例2を図11、図12に示す。
実施例1に記載した外ステータ巻線15は、内側スロット内導体15a1および外側スロット内導体15a2を共に横向き(外ステータ鉄心14の周方向)に配置しているが、この実施例2に示す外ステータ巻線15は、図11に示す様に、外側スロット内導体15a2を横向きに配置し、内側スロット内導体15a1を縦向き(外ステータ鉄心14の半径方向)に配置している。なお、図11は、ロータRおよび内外ステータSi、Soの周方向の一部を示す断面図であるが、断面を表示するハッチングは省略している。
また、内ステータ巻線13のスロット内導体13aは、実施例1と同じく、縦向きに配置される。なお、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15に使用される各導体は、いずれも断面形状が長方形であり、且つ、同一断面積を有する平角導体を使用していることは実施例1と同じである。
【0040】
上記の構成では、渡り部19を介して連接される外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aが共に縦向きに配置されるので、図12(a)、(b)に示す様に、渡り部19を90度捻る必要はない。つまり、渡り部19を90度捻ることなく実施例1と同様の効果を得ることができるので、渡り部19の捻り作業が不要となり、その分の工程数を減らすことができる。また、外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1を縦向き配置とすることにより、外ステータSoのティース最小幅を大きくできるので、外ステータSoの磁束流通量を増やすことができ、より高トルク化の効果を奏する。
【0041】
(実施例3)
本発明の実施例3を図13、図14に示す。
この実施例3では、図13に示す様に、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15に使用される各導体の断面形状が全て同一(略正方形)であり、且つ、同一断面積を有している。なお、図13は、ロータRおよび内外ステータSi、Soの周方向の一部を示す断面図であるが、断面を表示するハッチングは省略している。また、図14(a)、(b)に示す様に、外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aとを連接する渡り部19に捻りを設けない構成としている。
上記の構成は、内外ステータ巻線13、15の巻き数が少ないモータに適したもので、内外ステータ巻線13、15に使用される導体の断面形状が略正方形となる場合に、巻線構造が簡素になる効果を奏する。
【0042】
(実施例4)
本発明の実施例4を図15、図16に示す。
この実施例4は、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15の一相分の巻線を一つの連続した巻線体20(図16参照)として構成する一例である。なお、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15に使用される各導体は、実施例3と同様に、断面形状が全て同一(略正方形)であり、且つ、同一断面積を有している(図15参照)。
内ステータ巻線13と外ステータ巻線15は、図15(b)に示す様に、外ステータ巻線15の内側スロット内導体15a1と内ステータ巻線13のスロット内導体13aとが軸方向の一端側(図示左側)で渡り部19によってU字状に連接され、さらに、軸方向の他端側で内側スロット内導体15a1と外側スロット内導体15a2とがU字状に連接されて、全体が蛇行状に連続した巻線体20を構成している。
【0043】
上記の巻線体20は、図16(a)→(b)→(c)のように、軸方向の他端側から内外ステータ鉄心12、14に対し、一括してスロット内に差し込んで一度に組み付けられる。同様に組み付けられた複数の巻線体20の端部同士を接続することで一相分の巻線が形成される。
上記の構成では、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15の各導体を蛇行状に連続した一つの巻線体20として成形できるの、内外ステータ巻線13、15の組み立て工程を簡単にできる。つまり、一つの連続した巻線体20を内外ステータ鉄心12、14のスロットにワンストロークで収納できるので、内外ステータ巻線13、15の組み立て工数を低減でき、組み付け時間を短縮できる。
本発明のダブルステータ型モータ1は、巻線構造が複雑になると、コスト的に採用が困難であるが、この実施例4では、巻線構造を簡素にできるため、小型モータのような巻線工程に割り当てられる僅かなコストでも実現できる。すなわち、特に小型モータ向きの構成である。
【0044】
(実施例5)
本発明の実施例5を図17に示す。
実施例1〜実施例4では、内ステータ巻線13の方が外ステータ巻線15よりスロット内導体数(スロット内に収納されるストッロ内導体の本数)が少ないので、内ステータSiの巻線起磁力より外ステータSoの巻線起磁力の方が強くなる。この場合、内ステータSiとセグメント部10の通路に形成された磁束が、外ステータSoとセグメント部10の通路に形成された磁束に合流するように引き寄せられる傾向が生じる。その結果、外ステータSoでは、磁束総量が増加して鉄心飽和が厳しくなる一方、内ステータSiでは、磁束総量が減って鉄心飽和が緩くなるというアンバランスが生じるため、体格や鉄心素材量の割りに出力が十分出にくいという問題が残る。
【0045】
これに対し、実施例5では、図17に示す様に、ロータRのセグメント部10にスリット21を形成している。なお、図17は、ロータRおよび内外ステータSi、Soの周方向の一部を示す断面図であるが、断面を表示するハッチングは省略している。
上記スリット21は、セグメント部10の内周側と外周側との間を周方向に円弧状に形成されている。このスリット21は、セグメント部10の内周側と外周側とを磁気的に分離する働きを有するので、セグメント部10を径方向に磁束が通りにくくなる。これにより、内ステータSiと外ステータSoとの間で磁束の入り混じりを防ぐ作用が生じるため、上記した内ステータSiと外ステータSoとで生じる磁束総量のアンバランスを抑制でき、体格や鉄心素材量に応じた出力を得ることが可能となる。
【0046】
(変形例)
実施例1では、ロータRの永久磁石11にフェライト磁石を使用した一例を記載したが、フェライト磁石ではなく、希土類磁石(例えばネオジム磁石)を使用しても良い。あるいは、フェライト磁石と希土類磁石とを周方向に交互に配置しても良い。
実施例2〜4では、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15の各スロット内導体数、つまり、1相/1極当たりのターン数を、それぞれ2ターン、4ターンとして図示(図11、図13、図15参照)しているが、実施例1と同じく4ターン、8ターンでも良い。 同様に、実施例1では、内ステータ巻線13と外ステータ巻線15の各スロット内導体数をそれぞれ2ターン、4ターンとすることもできる。
さらに、内外ステータ巻線13、15のスロット内導体数は、内:外=1:2に限定する必要はなく、内:外=3:4(例えば、6ターンと8ターン)等も可能である。
【0047】
実施例1に記載したダブルステータ型モータ1は、内ステータSiのスロット数と外ステータSoのスロット数とを同一に設定しているが、内ステータSiのスロット数を外ステータSoのスロット数より少なくすることもできる。この場合、外ステータ鉄心14と比較して、内ステータ鉄心12のスロットピッチを大きく取ることができるので、例えば、小径モータにおいても、磁束通路である内ステータ鉄心12の断面積を十分に確保できる。その結果、内外ステータSi、Soの径差制約の下でも、内ステータSiを外ステータSoに比べて小さく設計することが容易である。
【符号の説明】
【0048】
1 ダブルステータ型モータ
6 シャフト(回転軸)
10 セグメント部
11 永久磁石(フェライト磁石)
12 内ステータ鉄心
13 内ステータ巻線
13a 内ステータ巻線のスロット内導体
14 外ステータ鉄心
15 外ステータ巻線
15a 外ステータ巻線のスロット内導体
19 渡り部
20 巻線体
21 セグメント部に形成されたスリット
R ロータ
Si 内ステータ
So 外ステータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に連結されて前記回転軸と一体に回転する環状のロータと、
このロータの径方向内側に配置される内ステータと、
前記ロータの径方向外側に配置される外ステータとを備え、
前記ロータは、周方向に所定の間隔を有して環状に配置される複数のセグメント部と、周方向に隣り合う前記セグメント部同士の間に介在され、且つ、周方向に対して交互に逆向きに着磁された複数の永久磁石とを有し、
前記内ステータは、複数のスロットが外周面に開口する内ステータ鉄心と、前記複数のスロットを介して前記内ステータ鉄心に巻装される三相の内ステータ巻線とを備え、
前記外ステータは、複数のスロットが内周面に開口する外ステータ鉄心と、前記複数のスロットを介して前記外ステータ鉄心に巻装される三相の外ステータ巻線とを備え、
前記ロータと前記内ステータおよび前記外ステータは、いずれも同一極数であり、
前記内ステータと前記外ステータは、両者の巻線起磁力によって発生する磁界が同一の前記セグメント部に対して並列に印加されるように、前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線とが逆相に接続されていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項2】
請求項1に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータと前記外ステータは、前記内ステータ鉄心のスロット数と前記外ステータ鉄心のスロット数とが同一であり、且つ、前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線は、それぞれ前記スロット内に収納されるスロット内導体を有し、前記外ステータ巻線のスロット内導体数より前記内ステータ巻線のスロット内導体数の方が少ないことを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項3】
請求項1に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータと前記外ステータは、前記内ステータ鉄心のスロット数の方が前記外ステータ鉄心のスロット数より少ないことを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項4】
請求項2に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記外ステータ巻線の前記スロット内導体は、前記スロットの内周側に収納される内側スロット内導体と、前記スロット内で前記内側スロット内導体の外周側に収納される外側スロット内導体とを有し、
前記外ステータ巻線の前記内側スロット内導体と前記内ステータ巻線の前記スロット内導体は、前記内ステータと前記外ステータとの間で前記ロータの軸方向一端側を径方向に跨いで配設される渡り部を介してU字状に連続して一体に設けられていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項5】
請求項4に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記外ステータ巻線は、前記外ステータ鉄心の周方向に異なる二箇所の前記スロット内に収納される一方の前記外側スロット内導体と他方の前記外側スロット内導体とが前記外ステータ鉄心の軸方向一端面より外側でU字状に連続して一体に設けられ、
前記内側スロット内導体と前記外側スロット内導体とが軸方向の他端側で電気的かつ機械的に接続されていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項6】
請求項4または5に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線は、それぞれ前記スロット内導体の断面形状が長方形で同一断面積を有し、
前記内ステータ巻線の前記スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記内ステータ鉄心の半径方向に向けて前記スロット内に収納され、
前記外ステータ巻線の前記スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記外ステータ鉄心の周方向に向けて前記スロット内に収納され、
前記渡り部は、前記スロット内導体と同一断面形状および同一断面積を有し、且つ、90度捻られていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項7】
請求項4または5に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線は、それぞれ前記スロット内導体の断面形状が長方形で同一断面積を有し、
前記外ステータ巻線の前記外側スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記外ステータ鉄心の周方向に向けて前記スロット内に収納され、
前記外ステータ巻線の前記内側スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記外ステータ鉄心の半径方向に向けて前記スロット内に収納され、
前記内ステータ巻線の前記スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記内ステータ鉄心の半径方向に向けて前記スロット内に収納されていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項8】
請求項4に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線は、前記内ステータ巻線の前記スロット内導体と前記外ステータ巻線の前記内側スロット内導体とが軸方向の一端側で前記渡り部によってU字状に連接され、さらに、軸方向の他端側で前記内側スロット内導体と前記外側スロット内導体とがU字状に連接されて全体が蛇行状に連続した巻線体を構成し、この巻線体を複数組み合わせて一相分の巻線が形成されることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項9】
請求項2、4〜8に記載した何れか一つのダブルステータ型モータにおいて、
前記ロータの前記セグメント部には、径方向の内周側と外周側との間にスリットが形成されていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項1】
回転軸に連結されて前記回転軸と一体に回転する環状のロータと、
このロータの径方向内側に配置される内ステータと、
前記ロータの径方向外側に配置される外ステータとを備え、
前記ロータは、周方向に所定の間隔を有して環状に配置される複数のセグメント部と、周方向に隣り合う前記セグメント部同士の間に介在され、且つ、周方向に対して交互に逆向きに着磁された複数の永久磁石とを有し、
前記内ステータは、複数のスロットが外周面に開口する内ステータ鉄心と、前記複数のスロットを介して前記内ステータ鉄心に巻装される三相の内ステータ巻線とを備え、
前記外ステータは、複数のスロットが内周面に開口する外ステータ鉄心と、前記複数のスロットを介して前記外ステータ鉄心に巻装される三相の外ステータ巻線とを備え、
前記ロータと前記内ステータおよび前記外ステータは、いずれも同一極数であり、
前記内ステータと前記外ステータは、両者の巻線起磁力によって発生する磁界が同一の前記セグメント部に対して並列に印加されるように、前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線とが逆相に接続されていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項2】
請求項1に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータと前記外ステータは、前記内ステータ鉄心のスロット数と前記外ステータ鉄心のスロット数とが同一であり、且つ、前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線は、それぞれ前記スロット内に収納されるスロット内導体を有し、前記外ステータ巻線のスロット内導体数より前記内ステータ巻線のスロット内導体数の方が少ないことを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項3】
請求項1に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータと前記外ステータは、前記内ステータ鉄心のスロット数の方が前記外ステータ鉄心のスロット数より少ないことを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項4】
請求項2に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記外ステータ巻線の前記スロット内導体は、前記スロットの内周側に収納される内側スロット内導体と、前記スロット内で前記内側スロット内導体の外周側に収納される外側スロット内導体とを有し、
前記外ステータ巻線の前記内側スロット内導体と前記内ステータ巻線の前記スロット内導体は、前記内ステータと前記外ステータとの間で前記ロータの軸方向一端側を径方向に跨いで配設される渡り部を介してU字状に連続して一体に設けられていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項5】
請求項4に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記外ステータ巻線は、前記外ステータ鉄心の周方向に異なる二箇所の前記スロット内に収納される一方の前記外側スロット内導体と他方の前記外側スロット内導体とが前記外ステータ鉄心の軸方向一端面より外側でU字状に連続して一体に設けられ、
前記内側スロット内導体と前記外側スロット内導体とが軸方向の他端側で電気的かつ機械的に接続されていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項6】
請求項4または5に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線は、それぞれ前記スロット内導体の断面形状が長方形で同一断面積を有し、
前記内ステータ巻線の前記スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記内ステータ鉄心の半径方向に向けて前記スロット内に収納され、
前記外ステータ巻線の前記スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記外ステータ鉄心の周方向に向けて前記スロット内に収納され、
前記渡り部は、前記スロット内導体と同一断面形状および同一断面積を有し、且つ、90度捻られていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項7】
請求項4または5に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線は、それぞれ前記スロット内導体の断面形状が長方形で同一断面積を有し、
前記外ステータ巻線の前記外側スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記外ステータ鉄心の周方向に向けて前記スロット内に収納され、
前記外ステータ巻線の前記内側スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記外ステータ鉄心の半径方向に向けて前記スロット内に収納され、
前記内ステータ巻線の前記スロット内導体は、断面形状の長辺側を前記内ステータ鉄心の半径方向に向けて前記スロット内に収納されていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項8】
請求項4に記載したダブルステータ型モータにおいて、
前記内ステータ巻線と前記外ステータ巻線は、前記内ステータ巻線の前記スロット内導体と前記外ステータ巻線の前記内側スロット内導体とが軸方向の一端側で前記渡り部によってU字状に連接され、さらに、軸方向の他端側で前記内側スロット内導体と前記外側スロット内導体とがU字状に連接されて全体が蛇行状に連続した巻線体を構成し、この巻線体を複数組み合わせて一相分の巻線が形成されることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【請求項9】
請求項2、4〜8に記載した何れか一つのダブルステータ型モータにおいて、
前記ロータの前記セグメント部には、径方向の内周側と外周側との間にスリットが形成されていることを特徴とするダブルステータ型モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−90531(P2013−90531A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231635(P2011−231635)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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