説明

ダブルフライトスクリュ

【課題】 小型超精密成形や高い寸法精度が要求される成形品を安定して加工できるようにするダブルフライトスクリュを提供する。
【解決手段】 射出成形機等に用いられるダブルフライトスクリュであって、フィードゾーンとコンプレッション及びメルトゾーン、メータリングゾーンとを備えたスクリュのコンプレッション及びメルトゾーンに主フライトと副フライトとが配されている。副フライトで区画されたメルトチャンネル13bの底面であって、メータリングゾーンDの手前部分に、該メルトチャンネル13bの深さを一定とした谷径一定部Eを形成してあり、メルトチャンネル13b内を移送される成形材料が該谷径一定部Eにおいて、メータリング機能による作用を受けてより均一化されてメータリングゾーンDに供給されてさらに均一化される機能を付与したスクリュ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形機や押出成形機、ブロー成形機等における熱可塑性樹脂用のスクリュに関し、特に主フライトと副フライトとのダブルフライトスクリュに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機等に使用される熱可塑性樹脂用のスクリュでは、可塑化効率と混練効率を向上させるために、1条ネジスクリュによる主フライトとなるフルフライトスクリュに副フライトとなるサブフライトが設けられた、バリヤスクリュが用いられている。
【0003】
この種のサブフライトをスクリュの長手方向の中間部に設けたバリヤスクリュでは、溶融された樹脂をただちにサブフライトを越えさせて、メルトチャンネル内で溶融・混練するため、メルトチャンネル内で溶融・混練の促進により、均一溶融性能が向上する。しかし、一般的な射出成形機では、スクリュ長の往復動作に基づくスクリュ有効長の変化による可塑化状態の均一化が不十分で超精密成形部品の寸法、形状のくり返し精度維持が出来ない場合がある。
【0004】
上述の問題に鑑みて、本願発明の発明者は、一般的長さの比較的短いスクリュで、汎用樹脂やエンプラ、スーパーエンプラを含む樹脂の溶融混練性能の向上と可塑化の均一化の向上を図り、寸法精度や微細なバリ、ショートの欠陥を防ぐことのできるバリヤスクリュを提案している(特許文献1参照。)
【0005】
また、従来のこの種のダブルフライトスクリュとして特許文献2には、樹脂成形機用スクリュが開示されている。図9に示すように、このスクリュ1は棒状体の軸2にフライトが螺旋状に巻回されているもので、フィードゾーンAとコンプレッションゾーンB、メルトゾーンC、メータリングゾーンDとを有した構造とされ、フィーゾーンAからコンプレッションゾーンBには複数のフライト3a、3b、3cを備えた多条フライトが設けられている。メルトゾーンCは、主フライト4と副フライト5とを有するダブルフライトとされている。また、前記メータリングゾーンDはフライト6を備えている。
【0006】
図10はダブルフライトスクリュの主フライト7と副フライト8とに沿って切断した一例を示す断面図である。このコンプレッションゾーンBとメルトゾーンCの底面は、フィードゾーンA側からメータリングゾーンDに向かって漸次深くなるように形成されており、メータリングゾーンDの手前から漸次浅くなる傾斜面でメータリングゾーンDに至る形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3170757号公報
【特許文献2】特開2002−192597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年では、小型精密成形に対する期待や要望が増大化しており、携帯電話等で使用される狭ピッチコネクタや多数個取りのLCP(液晶ポリマ Liquid Crystal Polymer)薄肉ベース成形では、LCP樹脂やアモデル樹脂、その他エンプラ樹脂成形で寸法精度を確保し、且つ、微細なバリやショートを防ぐことは容易ではない。しかも、長時間にわたって安定した成形を繰り返すことができるようにすることは容易ではない。
【0009】
このような市場のニーズに応えるものとして近年はプリプラ式射出装置(特許第3311999号公報参照)などの提案があり、同市場で実用されている。
【0010】
他方、小形精密成形分野に限らず、シリコンウェハ搬送用容器のように大きな成形品であっても高い寸法精度が要求される場合がある。斯かる搬送容器では、例えば、シリコンウェハを収納する25段のPBT(ポリブチレンテレフタレート Polybutylene Terephthalate)樹脂製のウェハ保持板では、高い寸法精度が要求されるが、寸法精度の確保は難しく、従来歩留まりが65%程度であり十分なものではなく、製作コストの削減の支障となっている。
【0011】
そこで、この発明は、狭ピッチコネクタを始め小形精密部品や高い寸法精度が要求される製品の成形加工を行うことができると共に、長時間の繰り返しの使用によっても成形の安定性を損なうことがないインラインスクリュの欠点を解消する高性能なダブルフライトスクリュを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るダブルフライトスクリュは、スパイラル状の異なったリード角を持つ二つのフライトより構成され、フィードゾーンとコンプレッション及びメルトゾーン、メータリングゾーンとを有し、前記コンプレッション及びメルトゾーン内の任意の位置から前記メータリングゾーンの手前までサブフライトを配設し、前記コンプレッション及びメルトゾーンのメルトチャンネルの一部の谷径を一定として円筒状の底面を形成した谷径一定部を形成してあることを特徴としている。
【0013】
ソリッドチャンネル内で加熱、溶融した成形材料はスクリュの回転によってサブフライトを越えてメルトチャンネルに移送され、主フライトによりメルトチャンネル内でかきとられる。混練と溶融が促進されて前記谷径一定部に達すると、当該部分のメータリング作用を受けて一層均一化される。
【0014】
また、請求項2の発明に係るダブルフライトスクリュは、前記コンプレッション及びメルトゾーンのメルトチャンネルの底面をメータリングゾーンに向けて漸次深くなるよう谷径を徐々に縮径して形成し、前記メータリングゾーンの手前に谷径を一定として円筒状の底面を形成した前記谷径一定部を形成してあることを特徴としている。
【0015】
同時にメルトチャンネル内の容積は成形品射出重量にほぼ相当する容積にデザインすることで、次ショットの計量はすでに十分溶融したメルトチャンネル内の溶融樹脂をメルトチャンネル内メータリングゾーンと先端メータリングゾーンを経由して計量することが可能となり、溶融樹脂温、粘度、混練状態の均一化が十分行われる。
【0016】
前記谷径一定部におけるメータリング作用を受けて溶融粘度と混練度、樹脂温度が均一化された成形材料は、後続するメータリングゾーンで再度溶融状態のより均一化が図られる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るダブルフライトスクリュによれば、メータリングゾーンに給送されるに先だって、コンプレッション及びメルトゾーンで混練と溶融が果たされて均一化された成形材料は、前記谷径一定部においてメータリング作用を受けて溶融状態の均一化が図られるから、後続のメータリングゾーンで計量されると共に、再度メータリング作用を受けて均一化がより促進されて成形加工に供されることになる。このため、スクリュが後退して、可塑化のためのスクリュ有効長が短くなっても成形品がより溶融状態が均一化される。また、成形材料のくり返し溶融状態の均一化によって成形精度が大幅に向上され、狭ピッチコネクタ等の小形精密成形やシリコンウェハの搬送容器部品のような大型成形品であっても高い寸法精度が要求される加工成形に適したものとすることができ、従来のインラインスクリュの欠点を十分にカバー出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るダブルフライトスクリュの樹脂移送溝(チャンネル)の展開図である。
【図2】(a)は図1におけるP−P線に沿った断面図、(b)は同じくQ−Q線に沿った断面図である。
【図3】この発明に係るダブルフライトスクリュの外形図である。
【図4】この発明に係るダブルフライトスクリュと従来のダブルフライトスクリュ(図3の形状であるがメルトチャンネル内に谷径一定部がない従来タイプで、図10のメルトチャンネル状である)とのそれぞれによる射出樹脂温度プロファイルを比較した図であり、背圧が0の場合を示している。新発明のダブルフライトスクリュは均一溶融性能が格段に優れていると言える。背圧0の状態で溶融温度がくり返し一定化することは成形品質を左右するスクリュ可塑化機能として最も重要なファクタと言える。
【図5】この発明に係るダブルフライトスクリュと従来のダブルフライトスクリュとのそれぞれによる射出樹脂温度プロファイルを比較した図であり、背圧が5(kg/cm2)の場合を示している。
【図6】この発明に係るダブルフライトスクリュによりシリコンウェハの出荷容器用保持板を、従来の汎用スクリュ、従来のダブルフライトスクリュ及び本発明に係るダブルフライトスクリュとのそれぞれによって成形し、所定の出荷容器に装着し、保持板精度を比較測定した場合の、シリコンウェハの測定点を示す図である。
【図7】シリコンウェハの左右の保持板を成形し出荷容器に装着しニコンレーザ機による寸法測定を行った結果合格率を示す比較表である。
【図8】0.4mm狭ピッチコネクタ(8ヶ取り同一金型)を成形した場合の成形機、各スクリュと成形結果とその外観品質判定を示す。
【図9】ダブルフライトスクリュの一例を示す図である。
【図10】従来のダブルフライトスクリュの構造を説明する図であり、図2(a)に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るダブルフライトスクリュを具体的に説明する。なお、図9と図10に示す従来構造と同一の部位については同一の符号を付してある。
【0020】
図3はこの発明に係るダブルフライトスクリュ10の外形を示す図であり、図1にはこのダブルフライトスクリュ10の展開図を示している。図3に示すように、軸2に主フライト11が螺旋状に巻回されており、順に、フィードゾーンAとコンプレッション及びメルトゾーンM、メータリングゾーンDを形成している。コンプレッション及びメルトゾーンMには前記主フライト11よりも大きなリード角の副フライト12が形成されてダブルフライトゾーンとされている。図2は前記コンプレッション及びメルトゾーンMの断面図であり、(a)は図1に示すP−P線に沿った断面図、(B)は同じくQ−Q線に沿った断面図である。副フライト12はコンプレッション及びメルトゾーンMの開始端の主フライト11の前部から立ち上がり、主フライト11によって形成されるチャンネルを上流側となる一次側のソリッドチャンネル13aと下流側となる二次側のメルトチャンネル13bとに分離する。なお、主フライト11の外周端はシリンダバレル15の内周面に対し、0.03〜0.05程度の間隙を有しており、副フライト12の外径は主フライト11の外径よりも小さく、該副フライト12の外周端はシリンダバレル15の内周面とメルトフィルムが通過する適宜な間隙が形成されている。このため、ソリッドチャンネル13aに供給された成形材料は、スクリュ10の矢標R方向への回転により、この間隙を通ってメルトチャンネル13bに移送されることになる。
【0021】
前記メルトチャンネル13bの底面は、図2(a)に示すように、コンプレッション及びメルトゾーンMの上流側から下流側にかけて漸次低くなるよう、すなわち、主フライト11の外周面から徐々に深くなるように傾斜面に形成されている。そして、この底面の下流側の部分には、深さが変化しない谷径一定部Eが設けられている。この谷径一定部Eの下流側端部から軸2が徐々に拡径してメータリングゾーンDに至るようにしてある。
【0022】
一方、前記ソリッドチャンネル13aの底面は、図2(b)に示すように、コンプレッション及びメルトゾーンMの上流側から下流側にかけて漸次高くなるように、すなわち、主フライト11の外周面から徐々に浅くなるように傾斜面に形成されている。
【0023】
以上により構成されたダブルフライトスクリュ10では、フィードゾーンAに供給された成形材料はスクリュ10の矢標R方向への回転によって主フライト11により押動されてコンプレッション及びメルトゾーンMに移送される。成形材料はコンプレッション及びメルトゾーンMのソリッドチャンネル13aに供給され、該ソリッドチャンネル13a内で加熱・溶融される。成形材料は溶融されメルトフィルムとして、前記副フライト12の外周面とシリンダバレル15の内周面との間に形成された間隙を通過して主フライト11によりバレル内壁よりかきとられ、メルトチャンネル13b内に貯えられ移送される。メルトチャンネル13b内ではさらに混練・溶融が促進されて成形材料として適宜な状態に調整される。メルトチャンネル13b内を移送されて前記谷径一定部Eに到達した成形材料は、該谷径一定部Eではメルトチャンネル13bの底面が一定の深さにあるため、この部分でメータリング作用を受けてさらに溶融状態・溶融温度が均一化される。
【0024】
その後、前記メルトチャンネル13bから前記メータリングゾーンDに移送され、さらに溶融状態の均一化が図られて、シリンダバレル15の図示しないノズルから射出等されることになる。
【0025】
図4と図5とには、この発明に係るダブルフライトスクリュ10による可塑化樹脂の射出樹脂温度プロファイルと従来のダブルフライトスクリュによる同じく温度プロファイルとを示しており、図4は背圧を0(kg/cm2)とした場合を、図5は5(kg/cm2)の背圧を付与した場合について示している。また、実験は外径D = 100mmのスクリュについて行い、条件は以下の通りである。
(1) 樹脂 PP(ノーブレン MA4)
(2) 温度条件 NH250/250/250/250/230℃
(3) 計量ストローク 250mm(2.5D相当)
(4) ソークタイム 1:2
(5) スクリュ回転数 128rpm
【0026】
これら図4と図5とにおいてはいずれも、(a)のグラフが従来のダブルフライトスクリュによる結果であり、(b)のグラフが本願発明に係るダブルフライトスクリュによる結果である。実験はいずれの条件においてもショット数を等しくした複数回のショットについて行ったもので、これらの図に示されたように、いずれの背圧時においても繰り返し溶融温度は、本願発明によるダブルフライトスクリュの方が均一性能が高いことが確認された。
【0027】
次に、シリコンウエハー出荷容器の保持板(溝板)の寸法精度向上に伴うことによって歩留まりの改善について説明する。比較に供したスクリュは、スクリュ径60mmで、比較する構造のスクリュとしては、
1) 従来タイプ使用スクリュ:メータリングゾーンに短いサブフライトを設けた汎用スクリュA、
2) 図10に示す構造を備えたスクリュで、但し図3に類似した二次側メルトチャンネルに一定溝深さのゾーンがないダブルフライトスクリュB、
3) この発明に係るダブルフライトスクリュで、図1〜図3に示す構造を備えた発明スクリュC、
を用いた。
これらのスクリュA〜Cのそれぞれを用いて全電動機 EC350-i19A 成形機により直径300mmのシリコンウエハーを収納するシリコンウェハ保持板(左、右)を成形した。
この左右の保持板を装着した出荷容器に、直径300mmのシリコンウエハを25枚実装し、ニコンレーザ測定機に搭載し、容器下部の基礎レベルから25枚の各ウェハについて、図6に示すように、a〜d点の4か所のそれぞれの高さをニコンレーザ機で測定した結果(歩留り)を図7に示す。測定箇所は基準面から44mm〜284mm高さまでの25段(枚)のa〜d点のウェハプレーンを測定、溝板各段のウェハ実装高さの公差は基準面からの各段高さの+0.45mm〜−0.45mm。なお、左右保持板の25段の溝ピッチの出来具合が上記出荷容器としての寸法精度を左右する。
【0028】
図7に示す測定結果より、Cのスクリュを使用した場合が最も歩留まりが高く、すなわち、本発明に係るダブルフライトスクリュによる加工精度が最も良好であると判断できる。
【0029】
次に、ハイブリッド竪型成形機(VH40-i4.0YV)でスクリュ径16を用いて狭ピッチコネクタ成形を行ったので、その結果を図8に示す。なお、使用したスクリュの形式は、前述したA)の汎用スクリュAとC)の発明スクリュCである。成形したコネクタは樹脂LCP(ポリプラスチック製:Vectra E471i)でコネクタピッチ0.4mm(8ヶ取り)とした。同時に本狭ピッチコネクタの成形を40トン竪型プリプラ射出装置成形機でも行っており、同機による比較結果も同図に併記した。
【0030】
図8において二つのインライン用スクリュ、及びプリプラ射出装置機でのそれぞれ最適な条件として バレル温度、射出速度、背圧、充填時間等を記載している。スクリュAは従来のLCP専用フルフライトスクリュ、スクリュCは本発明に係るダブルフライトスクリュであり、比較対象として、狭ピッチコネクタ市場で実績のあるプリプラタイプの射出装置を備えた同クラス40トン成形機を掲載した。
スクリュAは従来LCP樹脂成形専用として使用して来たが本0.4狭ピッチコネクタ成形で微細なショート、バリが解消できず、本発明に係るダブルフライトスクリュ(スクリュC)の開発を行うきっかけとなる。
スクリュAとスクリュCはφ16、プリプラスクリュはφ14(φ12プランジャ併用)、金型温度は100℃、バレル温度はそれぞれ最適温度としている。スクリュCのみ340℃のより低温で成形出来ている。
各機の当該コネクタ成形時の射出圧力立ち上り応答はスクリュA、Cの成形機VH40-i0.4YVは油圧型締装置に電動サーボモータ駆動の射出装置で36ms.、一方、プリプラ射出装置機はアキュームレータ油圧サーボにより18ms.と極めて速い。
また、充填時間(射出速度)は最善な品質を得たとしての最適な条件。
外観品質判定では微細なバリ、ショートの有無を4時間以上の連続運転で評価した結果を○、×で示す。
スクリュAでは360〜370℃の高温下でもショートが解消できず、また微細なバリもランダムに発生した。一方、本発明に係るスクリュCでは比較的容易に微細なバリやショートが解消し、安定成形を行う事が出来た。結果本発明に係るスクリュCの新ダブルフライトスクリュの採用したバレル温度は340℃で、同じく良品成形のプリプラ射出装置機の成形温度は360℃とやや高めであった。
【0031】
すなわち、汎用スクリュAでは成形バレル温度が360〜370℃で成形が行われるが微小なショート、バリが不安定に発生したのに対して、発明スクリュCではこれらの欠陥を容易に防止できた。また、発明スクリュCでは、バレル温度を汎用スクリュAよりも20℃低い温度で、ショート、バリ無し成形ができ、良品の成形を容易に行えた。発明スクリュCは薄肉狭ピッチコネクタの成形に必要な均一溶融と混練性能面で十分な能力を発揮した。しかも、バレル温度を大幅に下げられ、強度等の樹脂物性の維持、改善ができ、製品強度を高められる。また、樹脂温度の低下でバレル内での滞留樹脂の分解を抑制でき、結果鼻だれを抑制でき、成形作業を楽にする効果も確認できた。
【0032】
図8に挙げたプリプラ射出装置機でも安定した良品成形を行っているが本装置のスクリュA往復運動をしない、固定位置でプリプラ可塑化するスクリュで、常に最初も最後も同じスクリュ長で溶融混練出来る優位性を持つ。更に射出油圧源にアキュームレータ油圧サーボを備え、射出時の圧力応答が18ms.(実機モニター値)と速い。これらの相乗効果で薄肉狭ピッチコネクタ成形に対応した成形機となっている。
一方本機(スクリュA、C搭載)の射出装置は汎用電動サーボにより射出立ち上り応答は上記プリプラ装置機の倍の36ms.(実機モニター値)であり、薄肉の狭ピッチコネクタ成形に不利となっているにも関わらず、Cの新ダブルフライトスクリュの採用でプリプラ射出装置機よりバレル温度が20℃低い温度で同等の成形品を得ている。従来インラインスクリュで出来なかった当該狭ピッチコネクタの安定成形を実現する事が出来たがこれらは新ダブルフライトスクリュデザインの大きな効果として評価できると思われる。
【0033】
また、汎用スクリュAでは、背圧に7MPaが必要であるのに対して、発明スクリュCでは6MPaで成形でき鼻だれ防止ができた。すなわち、背圧が低いにも拘わらず安定成形ができたことは、発明スクリュCが十分な均一溶融、混練性能を備えているものと判断できる。さらに、繰り返し均一な品質、寸法を確保できることはメルトチャンネルのメータリング効果によるものと推定できる。
【0034】
また、前記プリプラ射出装置機はプリプラスクリュと射出プランジャとの2軸の組み合わせで溶融、混練、射出成形性能等の繰り返し安定性を分業付与し、高度化していると思われる。しかし新ダブルフライトスクリュの考案、開発により従来1軸のインラインスクリュでは無し得なかった当該狭ピッチコネクタ成形に於いて同等の安定成形性能を発揮できた事は大きな改善と考えられる。
インラインスクリュでの高度な安定成形に必要な均一溶融、混練性能が従来より大幅に改善された事を証明していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明に係るダブルフライトスクリュによれば、安定した溶融温度、溶融状態、混練状態を繰り返して確保できて、製品の安定した成形加工に寄与する。従来のインラインスクリュ式汎用射出成形機で安定成形が困難であった狭ピッチコネクタ、LED薄肉ベース多数取り、寸法精度の厳しい各種エンプラ、電子、携帯電話部品等への活用が期待できる。
【符号の説明】
【0036】
10 ダブルフライトスクリュ
11 主フライト
12 副フライト
13a ソリッドチャンネル
13b メルトチャンネル
15 シリンダバレル
A フィードゾーン
M コンプレッション及びメルトゾーン
D メータリングゾーン
E 谷径一定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル状の異なったリード角を持つ二つのフライトより構成され、フィードゾーンとコンプレッション及びメルトゾーン、メータリングゾーンとを有し、前記コンプレッション及びメルトゾーン内の任意の位置から前記メータリングゾーンの手前までサブフライトを配設し、
前記コンプレッション及びメルトゾーンのメルトチャンネルの一部の谷径を一定として円筒状の底面を形成した谷径一定部を形成してあることを特徴とするダブルフライトスクリュ。
【請求項2】
前記コンプレッション及びメルトゾーンのメルトチャンネルの底面をメータリングゾーンに向けて漸次深くなるよう谷径を徐々に縮径して形成し、
前記メータリングゾーンの手前に谷径を一定として円筒状の底面を形成した前記谷径一定部を形成してあることを特徴とする請求項1に記載のダブルフライトスクリュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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