ダム式魚道及び魚道制御方法
【課題】 ダムの貯水位の変動に対応した制御が可能な、規模が比較的小さく安価なダム式魚道及び魚道制御方法を提供することである。
【解決手段】 ダムの堤体を実質的に水平方向に貫通する魚道路と、魚道路の上流側に配置され、魚道路を開閉するための開閉ゲートと、魚道路に所定間隔隔てて配置された複数の隔壁と、魚道路において開閉ゲートの下流側に配置された流量調整ゲートと、流量調整ゲートの下流側であって、かつ、最上流隔壁の上流側に配置された開閉スライド格子ゲートと、魚道路のうち開閉ゲートと最上流隔壁との間によって構成される放流プールに、ダム貯水池の水を給水する手段と、魚道路のうち最上流隔壁の下流側に、ダム貯水池の水を給水する手段とを備え、開閉スライド格子ゲートが、開閉ゲートの直ぐ下流の位置までスライドするように構成されている。
【解決手段】 ダムの堤体を実質的に水平方向に貫通する魚道路と、魚道路の上流側に配置され、魚道路を開閉するための開閉ゲートと、魚道路に所定間隔隔てて配置された複数の隔壁と、魚道路において開閉ゲートの下流側に配置された流量調整ゲートと、流量調整ゲートの下流側であって、かつ、最上流隔壁の上流側に配置された開閉スライド格子ゲートと、魚道路のうち開閉ゲートと最上流隔壁との間によって構成される放流プールに、ダム貯水池の水を給水する手段と、魚道路のうち最上流隔壁の下流側に、ダム貯水池の水を給水する手段とを備え、開閉スライド格子ゲートが、開閉ゲートの直ぐ下流の位置までスライドするように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムの貯水位が変動しても魚類遡上機能を有するダム式魚道及び魚道制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム、堰、床固め等の河川横断施設は、魚類が移動する際の障害物となる。したがって、河川横断施設には、従来から、魚の通り道となる魚道が設けられている。特に、河川環境を重要視する近年の社会状況においては、魚道施設は、河川横断施設の計画上、必須の施設となりつつある。
【0003】
一方、ダムの目的のうち上水、灌漑、発電等の利水機能を有するダムでは、渇水時に貯水位が低下するため、階段式等の定置式の魚道では機能上問題があり、貯水位の変動に追従する特別な魚道機構を必要としており、セクター式、エレベータ式等の水位変動追従型の魚道が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水位変動追従型の魚道施設では、規模が大きくなるため、イニシャルコストやランニングコストが高価となるという課題がある。また、ダムの利水計画は一般的に、近年10年間のうち第1位の渇水を基準として計画されるが、平水年においては水位変動が僅かである場合も多いにもかかわらず、従来の水位変動追従型の魚道施設では、僅かな水位変動に対しても大きな動力を必要とするという課題もある。
【0005】
したがって、本発明は、ダムの貯水位の変動に対応した制御が可能な、規模が比較的小さく安価なダム式魚道及び魚道制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載のダム式魚道は、ダムの堤体を実質的に水平方向に貫通する魚道路と、前記魚道路の上流側に配置され、魚道路を開閉するための開閉ゲートと、前記魚道路に所定間隔隔てて配置された複数の隔壁と、前記魚道路において前記開閉ゲートの下流側に配置された流量調整ゲートと、前記流量調整ゲートの下流側であって、かつ、前記隔壁のうち最上流に位置する隔壁の上流側に配置された開閉スライド格子ゲートと、前記魚道路のうち前記開閉ゲートと前記最上流隔壁との間によって構成される放流プールに、ダム貯水池の水を給水する手段と、前記魚道路のうち前記最上流隔壁の下流側に、ダム貯水池の水を給水する手段とを備え、前記開閉スライド格子ゲートが、前記開閉ゲートの直ぐ下流の位置までスライドするように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項2に記載のダム式魚道は、前記請求項1のダム式魚道において、前記流量調整ゲートが、下端の支点を中心として回転するようになったフラップゲートであることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項3に記載の魚道制御方法は、ダムの貯水位が前記最上流隔壁の天端高さ以上となる場合には、前記開閉ゲート及び前記開閉スライド格子ゲートを開放した状態で、前記流量調整ゲートを用いて前記魚道路内の水位を調整して魚を遡上させ、ダムの貯水位と前記放流プールの水位が同程度である場合には、前記流量調整ゲートを開放し、かつ、前記開閉ゲートを閉鎖した状態で、前記放流プールに給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを開放して、魚を前記放流プールに移動させ、次いで、前記開閉ゲート及び前記開閉スライド格子ゲートを閉鎖した状態で、前記最上流隔壁の下流側に給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを前記開閉ゲートの方へスライドさせて、魚をダムに追い出し、ダムの貯水位が前記放流プールの水位よりもかなり下にある場合には、前記流量調整ゲートを開放し、かつ、前記開閉ゲートを閉鎖した状態で、前記放流プールに給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを開放して、魚を前記放流プールに移動させ、次いで、前記最上流隔壁の下流側に給水しつつ、前記開閉ゲートを開放して、魚をダムに放流することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ダムの貯水位の変動に対処することができる、比較的小規模で施工・維持コストが安価なダム式魚道及び魚道制御方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係るダム式魚道について詳細に説明する。図1は本発明の好ましい実施の形態に係るダム式魚道を概略的に示した側断面図、図2は図1の部分2の拡大側断面図、図3は図2の平面図である。図1及び図2において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係るダム式魚道は、ダムの堤体を実質的に水平方向に貫通する魚道路12と、魚道路12の最上流側に配置された制水ゲート14と、制水ゲート14の下流側に配置された開閉ゲート16とを備えている。
【0011】
制水ゲート14は、通常は開放されており、洪水時や施設の維持管理時に閉鎖されるようになっているが、本発明のダム式魚道にとって必須の設備ではない。制水ゲート14は一般的に、昇降式のものが用いられており、堤体頂部に設置された駆動源14aによってワイヤ14bを介して昇降されるように構成されている。また、開閉ゲート16は、魚道路12を開閉するためのものであり、上流側に向かって開放するようになった両開き式のものが用いられている。
【0012】
なお、魚道路12には、階段状の定置式魚道が設けられており、高さが変化する箇所に上流側から隔壁A1 ,A2 ,A3 ,A4 ,・・・・が設置されている。魚道路12のうち開閉ゲート16と最上流隔壁A1 との間が放流プール12aとなる。
【0013】
ダム式魚道10は又、開閉ゲート16の下流側に配置された流量調整ゲート18と、流量調整ゲート18の下流側であって最上流隔壁A1 の上流側に配置された開閉スライド格子ゲート20とを備えている。流量調整ゲート18としては、下端の支点18aを中心として回転するようになった(図2の矢印参照)フラップゲートが用いられており、フラップの回転角度を調整することによって魚道路12の流量を調整するようになっている。また、開閉スライド格子ゲート20は、金属材を格子状に組んで形成し、下流側に向かって開放するようになった両開き式のゲートであり、魚道路12の天井に配置されたレール20aに沿って開閉ゲート16の手前までスライドすることができるようになっている。開閉スライド格子ゲート20を格子状の金属材で形成したのは、詳細には後述するように開閉スライド格子ゲート20をスライドさせる際に開閉スライド格子ゲート20に作用する水圧を最小限にするためである。
【0014】
なお、開閉ゲート16、流量調整ゲート18、及び開閉スライド格子ゲート20を駆動させるのには、一般的な駆動源を用いてよい。
【0015】
ダム式魚道10は更に、ダム貯水池の最低水位以下に取水口22aを有する吸水管22と、吸水管22に連結された真空ポンプ24と、放流プール12aと真空ポンプ24とを連結する第1放水管26と、最上流隔壁A1 の下流側の魚道路12と真空ポンプ24とを連結する第2放水管28とを備えている。真空ポンプ24には、開閉バルブ24aが設置されている。
【0016】
以上のように構成されたダム式魚道10を用いた魚道制御方法について説明する。本発明の魚道制御方法は、ダムの貯水位と放流プール12aの水位の差に応じて3つのケースに分けられる。
【0017】
(第1ケース)
ダムの貯水位が最上流隔壁A1 の天端高さ以上となる場合である(図4参照)。第1ケースでは、流量調整ゲート18の操作のみで魚道の制御を行う。すなわち、制水ゲート14、開閉ゲート16、及び開閉スライド格子ゲート20を開放した状態で、流量調整ゲート18を、支点18aを中心として回転させることにより、魚道路12内の水位を調整して、魚を遡上させる。
【0018】
(第2ケース)
ダムの貯水位と放流プール12aの水位が同程度である場合である(図5参照)。第2ケースでは、開閉スライド格子ゲート20を用いて魚を強制的に追い出す。すなわち、まず最初に、制水ゲート14、及び流量調整ゲート18を開放し、かつ、開閉ゲート16を閉鎖した状態で、真空ポンプ24を作動させ第1放流管26を介して、放流プール12aに給水しつつ、開閉スライド格子ゲート20を開放する(図5(a)参照)。すると、放流プール12aの水位が上昇して、魚がこの箇所に移動する。次いで、開閉ゲート16、及び開閉スライド格子ゲート20を閉鎖した状態で、真空ポンプ24を作動させ第2放流管28を介して、最上流隔壁A1 の下流側の箇所に給水しつつ、開閉スライド格子ゲート20を開閉ゲート16の方へスライドさせて、魚をダムに追い出す(図5(b)、(d)参照)。次いで、再び開閉ゲート16を閉鎖するとともに、開閉スライド格子ゲート20を最上流隔壁A1 の付近に戻して閉鎖した状態で、第1放流管26を介して放流プール12aに給水する(図5(c)参照)。以上の操作を繰り返して、魚を遡上させる。
【0019】
(第3ケース)
ダムの貯水位が放流プール12aの水位よりもかなり下にある場合である(図6参照)。第3ケースでは、放流プール12aの上流側に位置する開閉ゲート16を開放することにより、魚を水流とともに貯水池に放流する。すなわち、まず最初に、制水ゲート14、及び流量調整ゲート18を開放し、かつ、開閉ゲート16を閉鎖した状態で、真空ポンプ24を作動させ第1放流管26を介して、放流プール12aに給水しつつ、開閉スライド格子ゲート20を開放する(図6(a)参照)。すると、放流プール12aの水位が上昇して、魚がこの箇所に移動する。次いで、真空ポンプ24を作動させ第2放流管28を介して、最上流隔壁A1 の下流側の箇所に給水しつつ、開閉ゲート16を開放して、魚をダムに放流する(図5(b)参照)。次いで、再び開閉ゲート16を閉鎖するとともに、第1放流管26を介して放流プール12aに給水する(図6(c)参照)。以上の操作を繰り返して、魚を遡上させる。
【0020】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係るダム式魚道を概略的に示した側断面図である。
【図2】図1の部分2の拡大側断面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】第1ケースにおける魚道制御方法を示した図である。
【図5】第2ケースにおける魚道制御方法を示した一連の図である。
【図6】第3ケースにおける魚道制御方法を示した一連の図である。
【符号の説明】
【0022】
10 ダム式魚道
12 魚道路
14 制水ゲート
16 開閉ゲート
18 流量調整ゲート(フラップゲート)
20 開閉スライド格子ゲート
22 吸水管
24 真空ポンプ
26 第1放水管
28 第2放水管
A1 、A2 、A3 、A4 定置式魚道の隔壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムの貯水位が変動しても魚類遡上機能を有するダム式魚道及び魚道制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム、堰、床固め等の河川横断施設は、魚類が移動する際の障害物となる。したがって、河川横断施設には、従来から、魚の通り道となる魚道が設けられている。特に、河川環境を重要視する近年の社会状況においては、魚道施設は、河川横断施設の計画上、必須の施設となりつつある。
【0003】
一方、ダムの目的のうち上水、灌漑、発電等の利水機能を有するダムでは、渇水時に貯水位が低下するため、階段式等の定置式の魚道では機能上問題があり、貯水位の変動に追従する特別な魚道機構を必要としており、セクター式、エレベータ式等の水位変動追従型の魚道が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水位変動追従型の魚道施設では、規模が大きくなるため、イニシャルコストやランニングコストが高価となるという課題がある。また、ダムの利水計画は一般的に、近年10年間のうち第1位の渇水を基準として計画されるが、平水年においては水位変動が僅かである場合も多いにもかかわらず、従来の水位変動追従型の魚道施設では、僅かな水位変動に対しても大きな動力を必要とするという課題もある。
【0005】
したがって、本発明は、ダムの貯水位の変動に対応した制御が可能な、規模が比較的小さく安価なダム式魚道及び魚道制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載のダム式魚道は、ダムの堤体を実質的に水平方向に貫通する魚道路と、前記魚道路の上流側に配置され、魚道路を開閉するための開閉ゲートと、前記魚道路に所定間隔隔てて配置された複数の隔壁と、前記魚道路において前記開閉ゲートの下流側に配置された流量調整ゲートと、前記流量調整ゲートの下流側であって、かつ、前記隔壁のうち最上流に位置する隔壁の上流側に配置された開閉スライド格子ゲートと、前記魚道路のうち前記開閉ゲートと前記最上流隔壁との間によって構成される放流プールに、ダム貯水池の水を給水する手段と、前記魚道路のうち前記最上流隔壁の下流側に、ダム貯水池の水を給水する手段とを備え、前記開閉スライド格子ゲートが、前記開閉ゲートの直ぐ下流の位置までスライドするように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項2に記載のダム式魚道は、前記請求項1のダム式魚道において、前記流量調整ゲートが、下端の支点を中心として回転するようになったフラップゲートであることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項3に記載の魚道制御方法は、ダムの貯水位が前記最上流隔壁の天端高さ以上となる場合には、前記開閉ゲート及び前記開閉スライド格子ゲートを開放した状態で、前記流量調整ゲートを用いて前記魚道路内の水位を調整して魚を遡上させ、ダムの貯水位と前記放流プールの水位が同程度である場合には、前記流量調整ゲートを開放し、かつ、前記開閉ゲートを閉鎖した状態で、前記放流プールに給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを開放して、魚を前記放流プールに移動させ、次いで、前記開閉ゲート及び前記開閉スライド格子ゲートを閉鎖した状態で、前記最上流隔壁の下流側に給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを前記開閉ゲートの方へスライドさせて、魚をダムに追い出し、ダムの貯水位が前記放流プールの水位よりもかなり下にある場合には、前記流量調整ゲートを開放し、かつ、前記開閉ゲートを閉鎖した状態で、前記放流プールに給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを開放して、魚を前記放流プールに移動させ、次いで、前記最上流隔壁の下流側に給水しつつ、前記開閉ゲートを開放して、魚をダムに放流することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ダムの貯水位の変動に対処することができる、比較的小規模で施工・維持コストが安価なダム式魚道及び魚道制御方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係るダム式魚道について詳細に説明する。図1は本発明の好ましい実施の形態に係るダム式魚道を概略的に示した側断面図、図2は図1の部分2の拡大側断面図、図3は図2の平面図である。図1及び図2において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係るダム式魚道は、ダムの堤体を実質的に水平方向に貫通する魚道路12と、魚道路12の最上流側に配置された制水ゲート14と、制水ゲート14の下流側に配置された開閉ゲート16とを備えている。
【0011】
制水ゲート14は、通常は開放されており、洪水時や施設の維持管理時に閉鎖されるようになっているが、本発明のダム式魚道にとって必須の設備ではない。制水ゲート14は一般的に、昇降式のものが用いられており、堤体頂部に設置された駆動源14aによってワイヤ14bを介して昇降されるように構成されている。また、開閉ゲート16は、魚道路12を開閉するためのものであり、上流側に向かって開放するようになった両開き式のものが用いられている。
【0012】
なお、魚道路12には、階段状の定置式魚道が設けられており、高さが変化する箇所に上流側から隔壁A1 ,A2 ,A3 ,A4 ,・・・・が設置されている。魚道路12のうち開閉ゲート16と最上流隔壁A1 との間が放流プール12aとなる。
【0013】
ダム式魚道10は又、開閉ゲート16の下流側に配置された流量調整ゲート18と、流量調整ゲート18の下流側であって最上流隔壁A1 の上流側に配置された開閉スライド格子ゲート20とを備えている。流量調整ゲート18としては、下端の支点18aを中心として回転するようになった(図2の矢印参照)フラップゲートが用いられており、フラップの回転角度を調整することによって魚道路12の流量を調整するようになっている。また、開閉スライド格子ゲート20は、金属材を格子状に組んで形成し、下流側に向かって開放するようになった両開き式のゲートであり、魚道路12の天井に配置されたレール20aに沿って開閉ゲート16の手前までスライドすることができるようになっている。開閉スライド格子ゲート20を格子状の金属材で形成したのは、詳細には後述するように開閉スライド格子ゲート20をスライドさせる際に開閉スライド格子ゲート20に作用する水圧を最小限にするためである。
【0014】
なお、開閉ゲート16、流量調整ゲート18、及び開閉スライド格子ゲート20を駆動させるのには、一般的な駆動源を用いてよい。
【0015】
ダム式魚道10は更に、ダム貯水池の最低水位以下に取水口22aを有する吸水管22と、吸水管22に連結された真空ポンプ24と、放流プール12aと真空ポンプ24とを連結する第1放水管26と、最上流隔壁A1 の下流側の魚道路12と真空ポンプ24とを連結する第2放水管28とを備えている。真空ポンプ24には、開閉バルブ24aが設置されている。
【0016】
以上のように構成されたダム式魚道10を用いた魚道制御方法について説明する。本発明の魚道制御方法は、ダムの貯水位と放流プール12aの水位の差に応じて3つのケースに分けられる。
【0017】
(第1ケース)
ダムの貯水位が最上流隔壁A1 の天端高さ以上となる場合である(図4参照)。第1ケースでは、流量調整ゲート18の操作のみで魚道の制御を行う。すなわち、制水ゲート14、開閉ゲート16、及び開閉スライド格子ゲート20を開放した状態で、流量調整ゲート18を、支点18aを中心として回転させることにより、魚道路12内の水位を調整して、魚を遡上させる。
【0018】
(第2ケース)
ダムの貯水位と放流プール12aの水位が同程度である場合である(図5参照)。第2ケースでは、開閉スライド格子ゲート20を用いて魚を強制的に追い出す。すなわち、まず最初に、制水ゲート14、及び流量調整ゲート18を開放し、かつ、開閉ゲート16を閉鎖した状態で、真空ポンプ24を作動させ第1放流管26を介して、放流プール12aに給水しつつ、開閉スライド格子ゲート20を開放する(図5(a)参照)。すると、放流プール12aの水位が上昇して、魚がこの箇所に移動する。次いで、開閉ゲート16、及び開閉スライド格子ゲート20を閉鎖した状態で、真空ポンプ24を作動させ第2放流管28を介して、最上流隔壁A1 の下流側の箇所に給水しつつ、開閉スライド格子ゲート20を開閉ゲート16の方へスライドさせて、魚をダムに追い出す(図5(b)、(d)参照)。次いで、再び開閉ゲート16を閉鎖するとともに、開閉スライド格子ゲート20を最上流隔壁A1 の付近に戻して閉鎖した状態で、第1放流管26を介して放流プール12aに給水する(図5(c)参照)。以上の操作を繰り返して、魚を遡上させる。
【0019】
(第3ケース)
ダムの貯水位が放流プール12aの水位よりもかなり下にある場合である(図6参照)。第3ケースでは、放流プール12aの上流側に位置する開閉ゲート16を開放することにより、魚を水流とともに貯水池に放流する。すなわち、まず最初に、制水ゲート14、及び流量調整ゲート18を開放し、かつ、開閉ゲート16を閉鎖した状態で、真空ポンプ24を作動させ第1放流管26を介して、放流プール12aに給水しつつ、開閉スライド格子ゲート20を開放する(図6(a)参照)。すると、放流プール12aの水位が上昇して、魚がこの箇所に移動する。次いで、真空ポンプ24を作動させ第2放流管28を介して、最上流隔壁A1 の下流側の箇所に給水しつつ、開閉ゲート16を開放して、魚をダムに放流する(図5(b)参照)。次いで、再び開閉ゲート16を閉鎖するとともに、第1放流管26を介して放流プール12aに給水する(図6(c)参照)。以上の操作を繰り返して、魚を遡上させる。
【0020】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係るダム式魚道を概略的に示した側断面図である。
【図2】図1の部分2の拡大側断面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】第1ケースにおける魚道制御方法を示した図である。
【図5】第2ケースにおける魚道制御方法を示した一連の図である。
【図6】第3ケースにおける魚道制御方法を示した一連の図である。
【符号の説明】
【0022】
10 ダム式魚道
12 魚道路
14 制水ゲート
16 開閉ゲート
18 流量調整ゲート(フラップゲート)
20 開閉スライド格子ゲート
22 吸水管
24 真空ポンプ
26 第1放水管
28 第2放水管
A1 、A2 、A3 、A4 定置式魚道の隔壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムの堤体を実質的に水平方向に貫通する魚道路と、
前記魚道路の上流側に配置され、魚道路を開閉するための開閉ゲートと、
前記魚道路に所定間隔隔てて配置された複数の隔壁と、
前記魚道路において前記開閉ゲートの下流側に配置された流量調整ゲートと、
前記流量調整ゲートの下流側であって、かつ、前記隔壁のうち最上流に位置する隔壁の上流側に配置された開閉スライド格子ゲートと、
前記魚道路のうち前記開閉ゲートと前記最上流隔壁との間によって構成される放流プールに、ダム貯水池の水を給水する手段と、
前記魚道路のうち前記最上流隔壁の下流側に、ダム貯水池の水を給水する手段と、
を備え、
前記開閉スライド格子ゲートが、前記開閉ゲートの直ぐ下流の位置までスライドするように構成されていることを特徴とするダム式魚道。
【請求項2】
前記流量調整ゲートが、下端の支点を中心として回転するようになったフラップゲートであることを特徴とする請求項1に記載のダム式魚道。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダム式魚道を用いた魚道制御方法であって、 ダムの貯水位が前記最上流隔壁の天端高さ以上となる場合には、前記開閉ゲート及び前記開閉スライド格子ゲートを開放した状態で、前記流量調整ゲートを用いて前記魚道路内の水位を調整して魚を遡上させ、
ダムの貯水位と前記放流プールの水位が同程度である場合には、前記流量調整ゲートを開放し、かつ、前記開閉ゲートを閉鎖した状態で、前記放流プールに給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを開放して、魚を前記放流プールに移動させ、次いで、前記開閉ゲート及び前記開閉スライド格子ゲートを閉鎖した状態で、前記最上流隔壁の下流側に給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを前記開閉ゲートの方へスライドさせて、魚をダムに追い出し、
ダムの貯水位が前記放流プールの水位よりもかなり下にある場合には、前記流量調整ゲートを開放し、かつ、前記開閉ゲートを閉鎖した状態で、前記放流プールに給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを開放して、魚を前記放流プールに移動させ、次いで、前記最上流隔壁の下流側に給水しつつ、前記開閉ゲートを開放して、魚をダムに放流することを特徴とする方法。
【請求項1】
ダムの堤体を実質的に水平方向に貫通する魚道路と、
前記魚道路の上流側に配置され、魚道路を開閉するための開閉ゲートと、
前記魚道路に所定間隔隔てて配置された複数の隔壁と、
前記魚道路において前記開閉ゲートの下流側に配置された流量調整ゲートと、
前記流量調整ゲートの下流側であって、かつ、前記隔壁のうち最上流に位置する隔壁の上流側に配置された開閉スライド格子ゲートと、
前記魚道路のうち前記開閉ゲートと前記最上流隔壁との間によって構成される放流プールに、ダム貯水池の水を給水する手段と、
前記魚道路のうち前記最上流隔壁の下流側に、ダム貯水池の水を給水する手段と、
を備え、
前記開閉スライド格子ゲートが、前記開閉ゲートの直ぐ下流の位置までスライドするように構成されていることを特徴とするダム式魚道。
【請求項2】
前記流量調整ゲートが、下端の支点を中心として回転するようになったフラップゲートであることを特徴とする請求項1に記載のダム式魚道。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダム式魚道を用いた魚道制御方法であって、 ダムの貯水位が前記最上流隔壁の天端高さ以上となる場合には、前記開閉ゲート及び前記開閉スライド格子ゲートを開放した状態で、前記流量調整ゲートを用いて前記魚道路内の水位を調整して魚を遡上させ、
ダムの貯水位と前記放流プールの水位が同程度である場合には、前記流量調整ゲートを開放し、かつ、前記開閉ゲートを閉鎖した状態で、前記放流プールに給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを開放して、魚を前記放流プールに移動させ、次いで、前記開閉ゲート及び前記開閉スライド格子ゲートを閉鎖した状態で、前記最上流隔壁の下流側に給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを前記開閉ゲートの方へスライドさせて、魚をダムに追い出し、
ダムの貯水位が前記放流プールの水位よりもかなり下にある場合には、前記流量調整ゲートを開放し、かつ、前記開閉ゲートを閉鎖した状態で、前記放流プールに給水しつつ、前記開閉スライド格子ゲートを開放して、魚を前記放流プールに移動させ、次いで、前記最上流隔壁の下流側に給水しつつ、前記開閉ゲートを開放して、魚をダムに放流することを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−270477(P2007−270477A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96297(P2006−96297)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(591102006)財団法人ダム水源地環境整備センター (10)
【出願人】(594157418)株式会社ドーコン (20)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(591102006)財団法人ダム水源地環境整備センター (10)
【出願人】(594157418)株式会社ドーコン (20)
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