説明

ダンゴ釣り用練り餌及び配合餌

【課題】 一本の釣り針につながる竿によって釣り上げることができ、空中では崩壊、脱落することがなく、水中では1分〜5分で完全崩壊し、尚かつ手も汚れにくいダンゴ釣り用練り餌および配合餌を提供する。
【解決手段】 魚餌料にチリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等の紙片を混入したことを特徴とする、ダンゴ釣り用練り餌及び配合餌。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紀州釣り又はバクダン釣り等に使用される。ダンゴ形成用練り餌及び配合餌に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紀州釣り又はバクダン釣り等と呼ばれるダンゴ釣りとは、釣り針に刺された刺し餌をダンゴ状に包み、ダンゴを手に持って水中に投入し、所定のポイントでダンゴがばらけ、刺し餌が飛び出し、魚が食いつくという魚釣り方法である。直径約40mm〜50mm、重量約40g〜80gに作られるダンゴ餌は、一本の釣り針に結ばれた、糸につながる竿によって釣り上げる強度を求めないために、遠投での利用中に空中で崩壊、脱落してしまうむつかしさがある。又、ダンゴを手で握るために、どうしても手が汚れやすいという欠点もある(非特許文献1参照)。
【0003】
空中で崩壊、脱落しない、一本の釣り針で釣り上げることができる、ダンゴ餌の強化方法として、油脂の増量は水の浸透を遅らせ、水中での崩壊を遅らせてしまう。又、粒子を小さくする強化方法でも、同様に、水の浸透を遅らせ、水中での崩壊を遅らせてしまう。
【0004】
繊維を利用した強化方法もたくさん提案されているが、一本、一本の繊維として混入する方法や、長さが15mm未満の物では、一本の釣り針で釣り上げることができるまでの強度は得られ難い。又、配合量によっては、水中での崩壊の最終段階に、繊維が釣り針に絡みつき残ってしまう限界がある(特許文献1参照)。
【0005】
そのための解決方法として、水中で発泡する物質をダンゴ餌に添加し、水中に投入する物も提案されているが、水分を含んだ練り餌に添加して保存しておくことができなく、乾燥した配合餌に水分を加え固形化をした時に、水中に投入するまでの間の反応をどのように止めておくのかという問題が残っている(特許文献2参照)。
【0006】
【非特許文献1】 週刊釣りサンデー別冊、チヌ釣りダンゴ完璧マニュアル、1999年6月5日、第1刷、発行人 小西英人、発行所 株式会社週刊釣りサンデーP1〜P25参照。
【特許文献1】 公開特許広報 平4−23935号広報
【特許文献2】 公開特許広報 特開2000−157132号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一本の釣り針に刺された刺し餌をしっかりと包みこみながら、一本の釣り針に結ばれた、糸につながる竿によって釣り上げることができ、空中では崩壊、脱落することがなく、水中に投入されたダンゴ餌は1分〜5分で完全崩壊し、刺し餌が飛び出す。尚かつ手も汚れにくい、ダンゴ釣り用練り餌及び配合餌を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係るダンゴ釣り用練り餌及び配合餌は、魚餌料にチリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等の紙片を混入したことを特徴とする、ダンゴ釣り用練り餌及び配合餌である。
チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等とは、チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー程度の柔軟性、吸水性、浸透性及び水分解性のある紙であればよいという意味である。
【0009】
チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー程度の柔軟性は、ダンゴ餌を作成するときに、チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等の紙片が他の物質に絡みつきやすく、互いの接着を強め、空中での釣り上げに耐える強度を増す。
【0010】
チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー程度の吸水性及び浸透性は、ダンゴ餌の中に含まれるチリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等の紙片が、水中で水の浸透の通路としての役割を果たし、水中での崩壊を早める。
【0011】
チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー程度の水分解性は、水分を含んだダンゴ餌を作成するときに、チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等の紙片が他の物質に絡みつきやすい。又、水中での崩壊の最終段階で、きれいに完全崩壊する。
【0012】
請求項2に係るダンゴ釣り用練り餌及び配合餌は、魚餌料に長さ10mm〜50mm、幅2mm〜10mmのチリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等の紙片を混入したことを特徴とする。請求項1記載のダンゴ釣り用練り餌及び配合餌である。
長さ10mm〜50mm、幅2mm〜10mmのチリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等の紙片の大きさは、他の物質に絡みつきやすくする大きさであって、ダンゴ餌の作成の最終段階、水中に投入する直前には、その範囲の大きさの紙片が見えるように作成する。
紙片が手の汚れを拭き取る役割もする。
【発明の効果】
【0013】
発明の効果を比較によって明らかにするために試料を作成する。
試料1は紙片を加えない場合の、一本の釣り針で釣り上げることができる。ダンゴ釣り用練り餌の最強の物であって、水中では1分〜5分に完全崩壊することを条件に作成した。
【0014】
解凍したアミエビ455gと解凍した沖アミ454gに食塩91gを加え主原料とする。
ふとん綿30gを15mmの長さに切断し、生米糠500g、脱脂糠400gによく絡めてゆく。ふとん綿を15mmの長さに切断するのは、これを超える長さでは、水中での崩壊の最終段階にふとん綿が釣り針に絡みつき、残ってしまうからであり、これ未満の長さでは、空中での釣り上げに耐える強度が得られにくいためである。又、30gの配合量は最高限度であって、これを超える配合量では、水中での崩壊の最終段階に、ふとん綿が釣り針に絡みつき残ってしまう。
【0015】
ふとん綿の絡め方は、繊維が一本、一本になるまでバラバラにしてしまっては。空中での釣り上げに耐える強度が得られにくく、繊維が絡まり合い、ふとん綿として残っている程度で生米糠及び脱脂糠に絡めてゆく。
【0016】
生米糠500gの配合量は、生米糠に含まれる油脂の利用の最高限度であって、これを超える配合量では、空中での釣り上げに耐える強度は得られやすいものの、水中での1分〜5分の完全崩壊ができなくなる。
最後に主原料を加えよく混練する。
【0017】
空中での釣り上げに耐える強化方法として、主原料、生米糠及び脱脂糠等の粒子を小さくする方法は、空中での強度は得られやすいものの、水中での1分〜5分の完全崩壊ができなくなる。
【0018】
次に試料2として、紙片を加えた場合の、一本の釣り針で釣り上げることができる、ダンゴ釣り用練り餌の最強の物であって、水中では1分〜5分に完全崩壊することを条件に作成した。
【0019】
解凍したアミエビ455gと解凍した沖アミ454gに食塩91gを加え主原料とする。
ふとん綿20gを15mmの長さに切断すると、ともに、トイレットペーパー100gを長さ100mm、幅20mm程度に引き裂き、生米糠950gによく絡めてゆく。
トイレットペーパー紙片100gの配合量は最高限度の配合量であって、これを超えると他の物質に絡みきれない部分が多く残ってしまう。尚、80g未満では、紙片の働きが弱くなる。
【0020】
最後に主原料を加え混練するが、紙片の長さが10mm〜50mm、幅が2mm〜10mmの範囲で残るようにしなければならない。紙片が見えなくなるまで混練してしまうと、空中での釣り上げに耐える強度と、水中での1分〜5分の完全崩壊の役に立たない。
【0021】
生米糠の配合量が、紙片を加えない試料1より多くなっているのは、トイレットペーパー紙片が生米糠の油脂を吸収してしまうためである。
【0022】
試料1及び試料2をそれぞれダンゴ状に作り、その中心にメジナ針を埋めこみ、室温17℃〜18℃下で釣り上げ試験を行った。メジナ針は6号を使用し、模擬刺し餌としてゴム片20mm×4mm×2mmを針に刺し、針には3号テグスを結びつけ釣り上げた。
表1に結果を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
釣り上げ試験の結果
紙片を加えない場合の最高釣り上げ可能重量は250gであった。
紙片を加えた場合の最高釣り上げ可能重量は400gであった。
試料2と同じ物を、トイレットペーパー紙片をティッシュペーパー紙片に置き換えた試験を行ってみたが、効果は同じであった。
【0025】
水中での崩壊の確認は、模擬試験として直径30mmのダンゴ餌を作り、500ml入りのコップの水中に投入し、崩壊状況を観察した。ダンゴ餌には模擬刺し餌として、ゴム片20mm×4mm×2mmを刺した6号メジナ針を中心に埋めこみ、針には3号テグスを結びつけ、水中に漂うように設けた。
【0026】
観察は水温10℃〜20℃下で行い、ダンゴ餌の握り具合を硬く握る、普通に握る、柔らかく握るの3種類を並べて行い、最短の完全崩壊時間を2分、最長の完全崩壊時間を20分とする設定で100回以上行った。
【0027】
実際の魚釣り現場では、上記模擬試験の2倍〜4倍の速さで崩壊が進む。実際の試験は紀伊半島〜大阪湾で、1年間10回以上の試験を行った。模擬試験の完全崩壊時間2分〜20分の設定は、実際の魚釣り現場での完全崩壊時間1分〜5分に相当することを確認した。
【0028】
見出し項目の発明が解決しようとする課題のなかの、「水中に投入されたダンゴ餌は1分〜5分で完全崩壊し」の記述、以下、「水中の完全崩壊時間1分〜5分」の記述は、すべて実際上の魚釣り現場に於いての完全崩壊時間の記述であり、1分の完全崩壊時間は、ダンゴ餌を柔らかく握り、いちばん早く崩壊させる時の時間であり、5分の完全崩壊時間は硬く握ったときの、一番遅く崩壊させるときの時間であって、水深30m付近まで充分到達する時間である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
市販生アミエビ、生沖アミを解凍し、食塩を生アミエビ、生沖アミの10重量%を添加し主原料とする。
食塩は防腐と比重を大きくする目的がある。
ふとん綿を15mmの長さに切断する。ふとん綿は主原料の2重量%とし、生米糠を主原料の95重量%として、互いをよく絡めてゆく。
繊維物は水分を含んだ時に、繊維物同質が付着する傾向が強いために、この時点で乾燥物同質をよく絡めておく。
【0030】
次に、チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等を主原料の10重量%とし、長さ100mm、幅20mm程度に引き裂き、先に作成したふとん綿及び生米糠に絡めてゆく。乾燥物を二段階に分けて絡めてゆくのは、紙片をあまり小さくしてしまわないためである。
【0031】
最後に、主原料を加え混練するが、紙片の長さが10mm〜50mm、幅が2mm〜10mmの範囲の大きさで見えるところで止めておく。
【0032】
混練を終えた練り餌は、直径50mm程度の円柱状とし、非通気性フィルム等で密閉し冷凍又は冷蔵保存する。
使用時には、直径40mm〜50mmのダンゴ餌となるように取り出し、刺し餌を中心に包み、竿で投入する。
手も汚れにくく、初心者でも簡単にダンゴ釣りができる。
【実例例1】
【0033】
乾燥配合餌として、ふとん綿を全体の0.7重量%、チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等紙片を全体の7重量%、食塩を全体の6.4重量%、沖アミ粉を全体の43重量%、生米糠を全体の29重量%及び脱脂糠を全体の13.9重量%をよく混和してゆく。
【0034】
混和の仕方として、ふとん綿は15mmの長さに切断する。チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等紙片は、使用時に水を加えて練りこみ、水中に投入する直前に長さが10mm〜50mm、幅が2mm〜15mmの範囲の大きさで見えることができる物であればよい。
【0035】
混和を終えた乾燥配合餌は、非通気性フィルム袋等で密閉し保存する。
使用時には、乾燥配合餌全体の55重量%の水を加え練りこみ、人の手より硬い、直径40mm〜50mmのダンゴ餌を作り、刺し餌を中心に包み、竿で投入する。
手も汚れにくく、初心者でも簡単にダンゴ釣りができる。
【実施例2】
【0036】
乾燥配合餌として、ふとん綿を全体の0.7重量%、チリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等紙片を全体の7重量%、食塩を全体の6.4重量%、サナギ粉を全体の43重量%、生米糠を全体の29重量%及び脱脂糠を全体の13.9重量%をよく混和してゆく。
【0037】
混和の仕方、保存方法及び使用方法は実施例1に同じ。
実施例1と実施例2は沖アミ粉とサナギ粉を置き換えただけの物であるが、置換物は集魚効果のある乾燥、魚餌料粉末であればよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚餌料にチリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等の紙片を混入したことを特徴とする、ダンゴ釣り用練り餌及び配合餌。
【請求項2】
魚餌料に長さ10mm〜50mm、幅2mm〜10mmのチリ紙、トイレットペーパー又はティッシュペーパー等の紙片を混入したことを特徴とする、請求項1記載のダンゴ釣り用練り餌及び配合餌。

【公開番号】特開2010−162012(P2010−162012A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27871(P2009−27871)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(508173185)
【Fターム(参考)】