ダンパー装置
【課題】ダンパー装置の応答性をより向上させる。
【解決手段】ピストン体2に向き合うシリンダー体1の閉塞部10の外側10aにあってこのシリンダー体1の内外を連通させる流路を形成させる突出部12と、この流路にシリンダー体1の外側から入れ込まれる軸部50を備えた栓状体5と、この栓状体5の付勢手段6とを備えている。シリンダー体1の閉塞部10から離れる向きの前記ピストン体2の移動又は相対的な移動により生じる圧力変化によって付勢手段6の付勢に抗して流路への栓状体5の軸部50の入り込み寸法が増加するようになっている。
【解決手段】ピストン体2に向き合うシリンダー体1の閉塞部10の外側10aにあってこのシリンダー体1の内外を連通させる流路を形成させる突出部12と、この流路にシリンダー体1の外側から入れ込まれる軸部50を備えた栓状体5と、この栓状体5の付勢手段6とを備えている。シリンダー体1の閉塞部10から離れる向きの前記ピストン体2の移動又は相対的な移動により生じる圧力変化によって付勢手段6の付勢に抗して流路への栓状体5の軸部50の入り込み寸法が増加するようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンダー体及びピストン体を備え、少なくともこれらのいずれか一方の側を制動対象物に取り付けさせることにより、制動対象物の移動又は相対的な移動に制動力を作用させるダンパー装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダー体及びピストン体を備えてなるダンパー装置(ピストンダンパーなどと称される。)において、ピストン体に向き合うシリンダー体の閉塞部に通気路を形成すると共に、この通気路にシリンダー体の外側から栓状体の軸部を入れ込ませるようにしたものがある。(特許文献1参照)
【0003】
かかるダンパー装置にあっては、前記閉塞部から離れる向きのピストン体の往動は、通気路を通じた吸気によって許容される。ピストン体の往動速度が速ければ速いほど、シリンダー体内外の圧力差は大きくなることから前記通気路への軸部の入り込み寸法が増加する。この入り込み寸法が増加すればする程、通気路を通じた吸気が行い難くなることから、ピストン体の前記往動に必要な力、つまり、ダンパー装置から生じる制動力が大きくなる。
【0004】
しかるに、かかるダンパー装置にあっては、前記通気路をシリンダー体の閉塞部に形成された貫通孔に管一端を連通させてこの閉塞部からシリンダー体内に突き出す管状部によって形成させていることから、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置において、両者の間に生じる空間を極小化することは必ずしも容易でない。かかる空間が極小化できないと、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置からこの閉塞部から離れる向きへ往動を開始すると同時に、栓状体の軸部の通気路への入り込み寸法を大きくさせるような圧力変化を生じさせ難くなることから、ダンパー装置の初動の応答性が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−275138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のダンパー装置の応答性をより向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ダンパー装置を、シリンダー体及びピストン体を備え、少なくともこれらのいずれか一方の側を制動対象物に取り付けさせることにより、制動対象物の移動又は相対的な移動に制動力を作用させるダンパー装置であって、
前記ピストン体に向き合う前記シリンダー体の閉塞部の外側に、このシリンダー体の内外を連通させる流路を形成させる突出部と、
この流路に前記シリンダー体の外側から入れ込まれる軸部を備えた栓状体と、
この栓状体の付勢手段とを備えており、
前記シリンダー体の閉塞部から離れる向きの前記ピストン体の移動又は相対的な移動により生じる圧力変化によって前記付勢手段の付勢に抗して前記流路への栓状体の軸部の入り込み寸法が増加するようになっているものとした。
【0008】
ピストン体のシリンダー体の閉塞部から離れる向きへの移動又は相対的な移動は、流路からのシリンダー体内への流体の流入により許容される。これにより、ピストン体のかかる移動又は相対的な移動に所用の大きさの力を要するようにして、前記制動力の作用が可能となる。ピストン体の前記移動又は相対的な移動の速度が早いほど、このピストン体とシリンダー体の閉塞部間の空間は負圧になることから、流路への軸部の入り込み寸法が増加する。この入り込み寸法が増加すればするほど流路を通じた流体の流入が行い難くなることから、ピストン体の前記移動又は相対的な移動に必要な力が大きくなる。すなわち、制動対象物の移動又は相対的な移動の速度が早くなれば早くなるほどダンパー装置により制動対象物に作用される制動力は大きくなる。(速度応答)前記流路は、前記突出部によって、シリンダー体の閉塞部の外側に形成されていることから、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置において、両者の間に形成される空間をできるだけ小さくすることができる。これにより、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置からこの閉塞部から離れる向きへの移動又は相対的な移動を開始すると同時に、栓状体の軸部の流路への入り込み寸法を大きくさせる圧力変化を生じさせることができる。
【0009】
前記シリンダー体の閉塞部の外側に、シリンダー体の内側に凸所を作る凹所を形成し、この凹所内に前記突出部を備えさせるようにしておけば、シリンダー体の閉塞部の外側に流路を形成しながら、シリンダー体の長さ寸法が大きくならないようにすることができる。
【0010】
この場合、さらに、ピストン体に、シリンダー体の内側に形成された凸所の納まる凹部を形成させるようにしておけば、シリンダー体の内側に凸所を作る凹所を設けながら、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置において、両者の間に形成される空間をできるだけ小さくすることができる。
【0011】
前記栓状体に、軸部の基部の側方にあって、この軸部の流路への入り込み寸法が最大となったときに突出部の突き出し端に当接してこの栓状体による流路の閉鎖を阻止する突部を形成させておくこともある。このようにしておけば、軸部の流路への入り込み寸法が最大となっても流路を通じたシリンダー体内部への流体の流入を確保してシリンダー体の閉塞部から離れる向きへのピストン体の移動又は相対的な移動を許容することができ、制動対象物の移動をダンパー装置が原因となって突然停止させてしまうことがない。
【0012】
前記シリンダー体の閉塞部の外側に、この閉塞部の外縁よりこの閉塞部の中央側にあって突出部を囲繞する周回壁部を形成させ、この周回壁部の内側において移動可能に栓状体を支持させるようにしておくこともある。このようにしておけば、栓状体はできるだけ軽量に構成可能となり、したがって、付勢手段の付勢力も最小化させることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、シリンダー体及びピストン体を備えてなるダンパー装置の応答性を、その構造の複雑化を招くことなく、適切に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は実施の形態にかかるダンパー装置の斜視図である。
【図2】図2は実施の形態にかかるダンパー装置の断面図である。
【図3】図3は図2の要部断面図である。
【図4】図4は図2の状態からピストン体が往動して栓状体の軸部の通気路への入り込み寸法が最大になった状態を示した要部断面図である。
【図5】図5はピストンロッドを一体に備えたピストン体の側面図であり、シールリングの記載を省略している。
【図6】図6はピストンロッドを一体に備えたピストン体の要部斜視図であり、シールリングの記載を省略している。
【図7】図7は栓状体の正面図である。
【図8】図8は図7におけるA−A線位置での断面図である。
【図9】図9は図7におけるB−B線位置での断面図である。
【図10】図10は栓状体の側面図である。
【図11】図11は栓状体の背面図である。
【図12】図12は栓状体の斜視図である。
【図13】図13は図12の下側から栓状体を見て示した斜視図である。
【図14】図14はシリンダー体の側面図である。
【図15】図15はシリンダー体の断面図である。
【図16】図16はシリンダー体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図16に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるダンパー装置は、シリンダー体1及びピストン体2を備え、少なくともこれらのいずれか一方の側を制動対象物に取り付けさせることにより、制動対象物の移動又は相対的な移動に制動力を作用させるものである。
【0016】
例えば、ピストン体2を可動体(図示は省略する。)としての制動対象物に取り付けさせ、シリンダー体1を固定体(図示は省略する。)に取り付けさせれば、制動対象物の移動によりピストン体2を移動させるようにしてこのピストン体2を介して制動対象物のこの移動に制動力を作用させることができる。これとは逆に、シリンダー体1を可動体としての制動対象物に取り付けさせ、ピストン体2を固定体に取り付けさせれば、制動対象物の移動によりピストン体2を相対的に移動させるようにしてこのシリンダー体1を介して制動対象物のこの移動に制動力を作用させることができる。
【0017】
また、ピストン体2を可動体としての制動対象物に取り付けさせ、かつ、シリンダー体1を別の可動体としての制動対象物に取り付けさせれば、二つの制動対象物の互いに近づく向きの、あるいは離れ出す向きの移動により、シリンダー体1とピストン体2の双方を移動させるようにして、二つの制動対象物のこの移動にそれぞれ制動力を作用させることができる。
【0018】
この実施の形態にあっては、シリンダー体1は、実質的に円筒状を呈している。シリンダー体1の筒一端はピストン体2に向き合う閉塞部10となっている。ピストン体2はシリンダー体1の筒軸に直交する向きの断面内郭形状に整合する外郭形状を持った短寸の筒状を呈している。ピストン体2の前記閉塞部10に向き合う前側2aは開放されていると共に、これと反対の背側2bは閉塞され、かつ、この背側2bにはピストンロッド3の内端3aが一体に連接されている。シリンダー体1の筒他端にはピストンロッド3の通過開口4aを備えたキャップ4が嵌め付けられている。図示の例では、かかるシリンダー体1の側部と、ピストンロッド3の外端とにそれぞれ、前記可動体又は固定体に対する取り付け部11、3cが形成されている。
【0019】
ピストン体2は、その外周部に、周回溝2cを備えている。図示の例では、かかる周回溝2cは、ピストン体2の前側2aの筒端に形成された第一の外鍔2dと、この第一の外鍔2dよりも後方においてピストン体2の側部に形成された第二の外鍔2eとにより両者の間に形成されている。この周回溝2cには、シールリング2fが嵌められており、このシールリング2fによってピストン体2の外周部とシリンダー体1の内面との間がシールされるようになっている。周回溝2cの溝幅は、シールリング2fの太さよりも大きくなっている。これにより、シールリング2fは、ピストン体2がシリンダー体1の閉塞部10から離れる向きに移動(以下、往動という。)されるときは周回溝2cの溝壁の一方をなす前記第一の外鍔2dに接し、一方、ピストン体2が復動するときは周回溝2cの溝壁の他方をなす前記第二の外鍔2eに接するようになっている。
【0020】
この実施の形態にあっては、ピストン体2は、その直径方向両側においてそれぞれ、前記周回溝2cの溝底にピストン体2の内外を連通させる貫通孔2gを有している。かかる貫通孔2gは前記第一の外鍔2d側に形成されている。この貫通孔2gの後方においては、第二の外鍔2eが割り欠かれている。それと共に、かかる割り欠き部2hと前記貫通孔2gとの間において、周回溝2cの溝底に、ピストン体2の移動方向に沿った二条の通気用溝2i、2iが形成されている。この通気用溝2iの溝一端は前記割り欠き部2hにおいて開放されている。そして、ピストン体2が往動するときは前記貫通孔2gをシールリング2fが塞ぎ、ピストン体2とシリンダー体1の閉塞部10との間の空間Sへは後述の流路(この実施の形態にあっては通気路13)を通じて外部からの吸気がなされ、一方、ピストン体2が復動するときは前記貫通孔2gをシールリング2fが塞がず、前記空間Sからこの貫通孔2gと前記通気用溝2iとを通じてピストン体2の背側2bに向けた排気がなされるようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、ピストン体の往動には一定の力が必要となる反面、その復動は抵抗少なく行えるようになっている。
【0021】
また、前記シリンダー体1は、前記ピストン体2に向き合う前記閉塞部10の外側10aに、このシリンダー体1の内外を連通させる通気路13を形成させる突出部12を備えている。それと共に、シリンダー体1は、かかる通気路13に前記シリンダー体1の外側から入れ込まれる軸部50を備えた栓状体5と、この栓状体5の付勢手段6とを備えている。そして、この実施の形態にかかるダンパー装置にあっては、前記ピストン体2の往動又は相対的な往動により生じる圧力変化によって前記付勢手段6の付勢に抗して前記通気路13への栓状体5の軸部50の入り込み寸法が増加するようになっている。
【0022】
図示の例では、突出部12は、円管状をなすと共に、その一端を閉塞部10の中央に一体に連接させている。この閉塞部10の中央には貫通孔10bが形成されており、この突出部12と貫通孔10bとを通じて前記空間S内に吸気がなされるようになっている。
【0023】
また、図示の例では、栓状体5の軸部50は、円柱状をなすと共に、前記通気路13の長さよりもやや長く、この通気路13に最も入り込んだ位置で、その先端を前記貫通孔の前記空間S側の孔口に位置させる長さを備えている。(図4)この軸部50の外径は通気路13の内径よりもやや小さい。また、この軸部50の外端は、頭部51の中央に一体に連接されている。
【0024】
図示の例では、栓状体5の頭部51は、内筒部51aと、外筒部51dとを有している。軸部50の外側に内筒部51aが位置され、内筒部51aの外側に周回状の間隔を開けて外筒部51dが位置されている。軸部50は内筒部51aの閉塞された筒外端51b(前記閉塞部10に向けられる筒内端51cと反対の筒端)に基部50aを一体に連接させている。軸部50は内筒部51aの全長の約二倍の長さを有し、内筒部51aの開放された筒内端51cから外側に突き出されている。内筒部51aの外側部と外筒部51dの内側部との間には周回連接部51iが形成されている。
【0025】
また、図示の例では、外筒部51dの筒外端であって、この外筒部51dの直径方向両側にはそれぞれ、外側に向けた張り出し部51eが形成されている。張り出し部51eの張り出し端には爪部51fが形成されていると共に、この爪部51fの内方には空所51gが形成されており、この爪部51fの形成箇所の内方への弾性変形が許容されるようになっている。
【0026】
一方、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aには、この閉塞部10の外縁10cよりこの閉塞部10の中央側にあって前記突出部12を囲繞する周回壁部14が形成されており、この周回壁部14の内側において移動可能に前記栓状体5が支持されている。
【0027】
図示の例では、周回壁部14の直径方向両側にはそれぞれ、窓孔14aが形成されている。そして、この二箇所の窓孔14a、14aに爪部51fをそれぞれ入り込ませるようにして、周回壁部14の内側に前記のように栓状体5が支持されている。より具体的には、栓状体5の一対の爪部51f、51fの先端間の距離は周回壁部14の内径よりもやや大きく、突出部12内の通気路13に軸部50を入り込ませるようにして周回壁部14内に栓状体5の頭部51を入れ込み操作すると、爪部51fの形成箇所が前記のように弾性変形して周回壁部14内への入り込みを許容すると共に、かかる爪部51fは前記形成箇所の弾性復帰により窓孔14aに入り込みこれに掛合するようになっている。これにより、栓状体5は窓孔14aの範囲内において移動可能に周回壁部14に支持されている。なお、図中符号51hは栓状体5の外筒部51dの外面に形成された案内凸条であり、符号14bは周回壁部14の内面に形成されたこの案内凸条が納まる案内溝である。
【0028】
一方、図示の例では、付勢手段6は、栓状体5の頭部51と閉塞部10の外面部との間に介装された圧縮コイルバネ6aにより構成されている。具体的には、かかるバネ6aは前記突出部12を内側に納めるように配されると共に、バネ6a一端を栓状体5の周回連接部51iに当接させ、かつ、バネ6a他端を閉塞部10の外面部に当接させている。そして、このバネ6aにより、栓状体5は、ピストン体2を往動させない状態において、前記通気路13に対する軸部50の入り込み寸法を最小とする可動前位置(図2)に位置づけられるようになっている。
【0029】
ピストン体2のシリンダー体1の閉塞部10から離れる向きへの移動又は相対的な移動、つまり、前記往動は、通気路13からのシリンダー体1内への吸気により許容される。これにより、ピストン体2のかかる移動又は相対的な移動に所用の大きさの力を要するようにして、前記制動力を作用できるようにしている。
【0030】
図示の例では、栓状体5の外筒部51dと周回壁部14及び後述する凹所10dとの間、栓状体5の内筒部51aと突出部12との間、通気路13と軸部50との間にはそれぞれ隙間が形成されており、この隙間により前記吸気がなされるようになっている。(図2)
【0031】
ピストン体2の前記移動又は相対的な移動の速度が早いほど、このピストン体2とシリンダー体1の閉塞部10間の空間Sは負圧になることから、通気路13への軸部50の入り込み寸法が増加する。この入り込み寸法が増加すればするほど通気路13を通じた吸気が行い難くなることから、ピストン体2の前記移動又は相対的な移動に必要な力が大きくなる。すなわち、制動対象物の移動又は相対的な移動の速度が早くなれば早くなるほどダンパー装置により制動対象物に作用される制動力は大きくなる。(速度応答)
【0032】
この実施の形態にあっては、前記通気路13は、前記突出部12によって、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aに形成されていることから、ピストン体2が最もシリンダー体1の閉塞部10に近接した位置において、両者の間に形成される空間Sをできるだけ小さくすることができる。これによりこの実施の形態にあっては、ピストン体2が最もシリンダー体1の閉塞部10に近接した位置からこの閉塞部10から離れる向きへの移動又は相対的な移動を開始すると同時に、栓状体5の軸部50の通気路13への入り込み寸法を大きくさせる圧力変化が生じるようになっている。
【0033】
この実施の形態にあっては、栓状体5は、シリンダー体1の外径より小さい前記周回壁部14の内部において支持されており、できるだけ軽量に構成可能となっている。したがって、付勢手段6の付勢力も最小化可能となっている。これにより、ピストン体2の前記移動又は相対的な移動が生じたときに、つまり、制動対象物の前記移動又は相対的な移動が生じたときに、タイムラグなく栓状体5を移動して、かかる制動対象物に適切な制動力を作用させることが可能となっている。また、制動対象物の前記移動又は相対的な移動の速度に変化が生じたときは、これに応じてタイムラグなく栓状体5を前記通気路13への軸部50の入り込み寸法を大きくする向き又はこれを小さくする向きに移動させて、ダンパー装置が制動対象物に作用させる制動力の大きさを変化させるようになっている。
【0034】
この実施の形態にあっては、栓状体5の頭部51における、前記軸部50の基部50aの側方にあって、この軸部50の通気路13への入り込み寸法が最大となったときに突出部12の突き出し端に当接する箇所に、この栓状体5による通気路13の閉鎖を阻止する突部51jが形成されている。図示の例では、前記内筒部51aの閉塞された筒外端51bの内面に、軸部50の基部50aから放射方向に延びる前記突部51jとしてのリブが、この基部50aを中心とした対称位置にそれぞれ形成されており、軸部50の通気路13への入り込み寸法が最大となったときに通気路13の入り口に栓状体5の頭部51が張り付いてこの通気路13を完全に閉塞しないようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、軸部50の通気路13への入り込み寸法が最大となっても通気路13を通じたシリンダー体1内部への通気を確保してシリンダー体1の閉塞部10から離れる向きへのピストン体2の移動又は相対的な移動を許容することができ、制動対象物の移動をダンパー装置が原因となって突然停止させてしまうことがないようになっている。(図4)
【0035】
また、この実施の形態にあっては、栓状体5の軸部50には、その先端から基部50a近傍に亘って、この軸部50の軸線に直交する断面の外郭形状をD字状とするカット面50bが形成されている。かかるカット面50bは、軸部50の先端からその長さ方向略中程の位置までは軸部50の軸線に平行をなしているが、この中程の位置から基部50a近傍までの間では基部50aに近づくに連れて次第に前記軸線から離れるように傾斜している。これにより、軸部50はその長さ方向中程の位置から基部50a近傍までの間では基部50aに近づくに連れて太くなるように構成されている。(以下、軸部50のこの箇所を太さの漸増箇所50cと称する。)そして、この実施の形態にあっては、前記可動前位置においては栓状体5の軸部50は通気路13に漸増箇所50cを入り込ませないようになっている。(図3)ピストン体2の前記往動により通気路13へ軸部50が入り込むと前記太さの漸増箇所50cが通気路13内に入り込み、この入り込み寸法が増えれば増えるほど軸部50と通気路13との間の隙間は絞られ、ピストン体2の往動に必要な力が大きくなるようになっている。
【0036】
この実施の形態にあってはまた、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aには、シリンダー体1の内側に凸所10eを作る凹所10dが形成されており、この凹所10d内に突出部12が備えられている。これにより、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aに通気路13を形成しながら、シリンダー体1の長さ寸法が大きくならないようにしている。また、この実施の形態にあっては、ピストン体2に、シリンダー体1の内側に形成された凸所10eの納まる凹部2jが形成されている。この実施の形態にあっては、ピストン体2が最もシリンダー体1の閉塞部10に近接した位置において、ピストン体2の開放された前側2aからこのピストン体2内に前記凸所10eが入り込むようになっている。すなわち、この実施の形態にあっては、かかるピストン体2の内部が前記凹部2jとして機能するようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、シリンダー体1の内側に凸所10eを作る凹所10dを設けながら、ピストン体2が最もシリンダー体1の閉塞部10に近接した位置において、両者の間に形成される空間Sができるだけ小さくなるようにしている。この実施の形態にあっては、前記凹所10dは、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aに円形の凹所10d入り口を形成させる円形の窪みであり、前記凸所10eはこの閉塞部10の内側に突き出す短寸円柱状部であり、この凹所10dと凸所10eとにより閉塞部10の肉厚はどの位置でも略同一となっている。この凸所10eの外径とピストン体2の内径及びこの凸所10eの突きだし寸法とピストン体2の前側2aの開放縁から底までの寸法とは略一致するようになっている。
【符号の説明】
【0037】
1 シリンダー体
10 閉塞部
10a 外側
12 突出部
2 ピストン体
5 栓状体
50 軸部
6 付勢手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンダー体及びピストン体を備え、少なくともこれらのいずれか一方の側を制動対象物に取り付けさせることにより、制動対象物の移動又は相対的な移動に制動力を作用させるダンパー装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダー体及びピストン体を備えてなるダンパー装置(ピストンダンパーなどと称される。)において、ピストン体に向き合うシリンダー体の閉塞部に通気路を形成すると共に、この通気路にシリンダー体の外側から栓状体の軸部を入れ込ませるようにしたものがある。(特許文献1参照)
【0003】
かかるダンパー装置にあっては、前記閉塞部から離れる向きのピストン体の往動は、通気路を通じた吸気によって許容される。ピストン体の往動速度が速ければ速いほど、シリンダー体内外の圧力差は大きくなることから前記通気路への軸部の入り込み寸法が増加する。この入り込み寸法が増加すればする程、通気路を通じた吸気が行い難くなることから、ピストン体の前記往動に必要な力、つまり、ダンパー装置から生じる制動力が大きくなる。
【0004】
しかるに、かかるダンパー装置にあっては、前記通気路をシリンダー体の閉塞部に形成された貫通孔に管一端を連通させてこの閉塞部からシリンダー体内に突き出す管状部によって形成させていることから、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置において、両者の間に生じる空間を極小化することは必ずしも容易でない。かかる空間が極小化できないと、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置からこの閉塞部から離れる向きへ往動を開始すると同時に、栓状体の軸部の通気路への入り込み寸法を大きくさせるような圧力変化を生じさせ難くなることから、ダンパー装置の初動の応答性が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−275138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のダンパー装置の応答性をより向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ダンパー装置を、シリンダー体及びピストン体を備え、少なくともこれらのいずれか一方の側を制動対象物に取り付けさせることにより、制動対象物の移動又は相対的な移動に制動力を作用させるダンパー装置であって、
前記ピストン体に向き合う前記シリンダー体の閉塞部の外側に、このシリンダー体の内外を連通させる流路を形成させる突出部と、
この流路に前記シリンダー体の外側から入れ込まれる軸部を備えた栓状体と、
この栓状体の付勢手段とを備えており、
前記シリンダー体の閉塞部から離れる向きの前記ピストン体の移動又は相対的な移動により生じる圧力変化によって前記付勢手段の付勢に抗して前記流路への栓状体の軸部の入り込み寸法が増加するようになっているものとした。
【0008】
ピストン体のシリンダー体の閉塞部から離れる向きへの移動又は相対的な移動は、流路からのシリンダー体内への流体の流入により許容される。これにより、ピストン体のかかる移動又は相対的な移動に所用の大きさの力を要するようにして、前記制動力の作用が可能となる。ピストン体の前記移動又は相対的な移動の速度が早いほど、このピストン体とシリンダー体の閉塞部間の空間は負圧になることから、流路への軸部の入り込み寸法が増加する。この入り込み寸法が増加すればするほど流路を通じた流体の流入が行い難くなることから、ピストン体の前記移動又は相対的な移動に必要な力が大きくなる。すなわち、制動対象物の移動又は相対的な移動の速度が早くなれば早くなるほどダンパー装置により制動対象物に作用される制動力は大きくなる。(速度応答)前記流路は、前記突出部によって、シリンダー体の閉塞部の外側に形成されていることから、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置において、両者の間に形成される空間をできるだけ小さくすることができる。これにより、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置からこの閉塞部から離れる向きへの移動又は相対的な移動を開始すると同時に、栓状体の軸部の流路への入り込み寸法を大きくさせる圧力変化を生じさせることができる。
【0009】
前記シリンダー体の閉塞部の外側に、シリンダー体の内側に凸所を作る凹所を形成し、この凹所内に前記突出部を備えさせるようにしておけば、シリンダー体の閉塞部の外側に流路を形成しながら、シリンダー体の長さ寸法が大きくならないようにすることができる。
【0010】
この場合、さらに、ピストン体に、シリンダー体の内側に形成された凸所の納まる凹部を形成させるようにしておけば、シリンダー体の内側に凸所を作る凹所を設けながら、ピストン体が最もシリンダー体の閉塞部に近接した位置において、両者の間に形成される空間をできるだけ小さくすることができる。
【0011】
前記栓状体に、軸部の基部の側方にあって、この軸部の流路への入り込み寸法が最大となったときに突出部の突き出し端に当接してこの栓状体による流路の閉鎖を阻止する突部を形成させておくこともある。このようにしておけば、軸部の流路への入り込み寸法が最大となっても流路を通じたシリンダー体内部への流体の流入を確保してシリンダー体の閉塞部から離れる向きへのピストン体の移動又は相対的な移動を許容することができ、制動対象物の移動をダンパー装置が原因となって突然停止させてしまうことがない。
【0012】
前記シリンダー体の閉塞部の外側に、この閉塞部の外縁よりこの閉塞部の中央側にあって突出部を囲繞する周回壁部を形成させ、この周回壁部の内側において移動可能に栓状体を支持させるようにしておくこともある。このようにしておけば、栓状体はできるだけ軽量に構成可能となり、したがって、付勢手段の付勢力も最小化させることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、シリンダー体及びピストン体を備えてなるダンパー装置の応答性を、その構造の複雑化を招くことなく、適切に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は実施の形態にかかるダンパー装置の斜視図である。
【図2】図2は実施の形態にかかるダンパー装置の断面図である。
【図3】図3は図2の要部断面図である。
【図4】図4は図2の状態からピストン体が往動して栓状体の軸部の通気路への入り込み寸法が最大になった状態を示した要部断面図である。
【図5】図5はピストンロッドを一体に備えたピストン体の側面図であり、シールリングの記載を省略している。
【図6】図6はピストンロッドを一体に備えたピストン体の要部斜視図であり、シールリングの記載を省略している。
【図7】図7は栓状体の正面図である。
【図8】図8は図7におけるA−A線位置での断面図である。
【図9】図9は図7におけるB−B線位置での断面図である。
【図10】図10は栓状体の側面図である。
【図11】図11は栓状体の背面図である。
【図12】図12は栓状体の斜視図である。
【図13】図13は図12の下側から栓状体を見て示した斜視図である。
【図14】図14はシリンダー体の側面図である。
【図15】図15はシリンダー体の断面図である。
【図16】図16はシリンダー体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図16に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるダンパー装置は、シリンダー体1及びピストン体2を備え、少なくともこれらのいずれか一方の側を制動対象物に取り付けさせることにより、制動対象物の移動又は相対的な移動に制動力を作用させるものである。
【0016】
例えば、ピストン体2を可動体(図示は省略する。)としての制動対象物に取り付けさせ、シリンダー体1を固定体(図示は省略する。)に取り付けさせれば、制動対象物の移動によりピストン体2を移動させるようにしてこのピストン体2を介して制動対象物のこの移動に制動力を作用させることができる。これとは逆に、シリンダー体1を可動体としての制動対象物に取り付けさせ、ピストン体2を固定体に取り付けさせれば、制動対象物の移動によりピストン体2を相対的に移動させるようにしてこのシリンダー体1を介して制動対象物のこの移動に制動力を作用させることができる。
【0017】
また、ピストン体2を可動体としての制動対象物に取り付けさせ、かつ、シリンダー体1を別の可動体としての制動対象物に取り付けさせれば、二つの制動対象物の互いに近づく向きの、あるいは離れ出す向きの移動により、シリンダー体1とピストン体2の双方を移動させるようにして、二つの制動対象物のこの移動にそれぞれ制動力を作用させることができる。
【0018】
この実施の形態にあっては、シリンダー体1は、実質的に円筒状を呈している。シリンダー体1の筒一端はピストン体2に向き合う閉塞部10となっている。ピストン体2はシリンダー体1の筒軸に直交する向きの断面内郭形状に整合する外郭形状を持った短寸の筒状を呈している。ピストン体2の前記閉塞部10に向き合う前側2aは開放されていると共に、これと反対の背側2bは閉塞され、かつ、この背側2bにはピストンロッド3の内端3aが一体に連接されている。シリンダー体1の筒他端にはピストンロッド3の通過開口4aを備えたキャップ4が嵌め付けられている。図示の例では、かかるシリンダー体1の側部と、ピストンロッド3の外端とにそれぞれ、前記可動体又は固定体に対する取り付け部11、3cが形成されている。
【0019】
ピストン体2は、その外周部に、周回溝2cを備えている。図示の例では、かかる周回溝2cは、ピストン体2の前側2aの筒端に形成された第一の外鍔2dと、この第一の外鍔2dよりも後方においてピストン体2の側部に形成された第二の外鍔2eとにより両者の間に形成されている。この周回溝2cには、シールリング2fが嵌められており、このシールリング2fによってピストン体2の外周部とシリンダー体1の内面との間がシールされるようになっている。周回溝2cの溝幅は、シールリング2fの太さよりも大きくなっている。これにより、シールリング2fは、ピストン体2がシリンダー体1の閉塞部10から離れる向きに移動(以下、往動という。)されるときは周回溝2cの溝壁の一方をなす前記第一の外鍔2dに接し、一方、ピストン体2が復動するときは周回溝2cの溝壁の他方をなす前記第二の外鍔2eに接するようになっている。
【0020】
この実施の形態にあっては、ピストン体2は、その直径方向両側においてそれぞれ、前記周回溝2cの溝底にピストン体2の内外を連通させる貫通孔2gを有している。かかる貫通孔2gは前記第一の外鍔2d側に形成されている。この貫通孔2gの後方においては、第二の外鍔2eが割り欠かれている。それと共に、かかる割り欠き部2hと前記貫通孔2gとの間において、周回溝2cの溝底に、ピストン体2の移動方向に沿った二条の通気用溝2i、2iが形成されている。この通気用溝2iの溝一端は前記割り欠き部2hにおいて開放されている。そして、ピストン体2が往動するときは前記貫通孔2gをシールリング2fが塞ぎ、ピストン体2とシリンダー体1の閉塞部10との間の空間Sへは後述の流路(この実施の形態にあっては通気路13)を通じて外部からの吸気がなされ、一方、ピストン体2が復動するときは前記貫通孔2gをシールリング2fが塞がず、前記空間Sからこの貫通孔2gと前記通気用溝2iとを通じてピストン体2の背側2bに向けた排気がなされるようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、ピストン体の往動には一定の力が必要となる反面、その復動は抵抗少なく行えるようになっている。
【0021】
また、前記シリンダー体1は、前記ピストン体2に向き合う前記閉塞部10の外側10aに、このシリンダー体1の内外を連通させる通気路13を形成させる突出部12を備えている。それと共に、シリンダー体1は、かかる通気路13に前記シリンダー体1の外側から入れ込まれる軸部50を備えた栓状体5と、この栓状体5の付勢手段6とを備えている。そして、この実施の形態にかかるダンパー装置にあっては、前記ピストン体2の往動又は相対的な往動により生じる圧力変化によって前記付勢手段6の付勢に抗して前記通気路13への栓状体5の軸部50の入り込み寸法が増加するようになっている。
【0022】
図示の例では、突出部12は、円管状をなすと共に、その一端を閉塞部10の中央に一体に連接させている。この閉塞部10の中央には貫通孔10bが形成されており、この突出部12と貫通孔10bとを通じて前記空間S内に吸気がなされるようになっている。
【0023】
また、図示の例では、栓状体5の軸部50は、円柱状をなすと共に、前記通気路13の長さよりもやや長く、この通気路13に最も入り込んだ位置で、その先端を前記貫通孔の前記空間S側の孔口に位置させる長さを備えている。(図4)この軸部50の外径は通気路13の内径よりもやや小さい。また、この軸部50の外端は、頭部51の中央に一体に連接されている。
【0024】
図示の例では、栓状体5の頭部51は、内筒部51aと、外筒部51dとを有している。軸部50の外側に内筒部51aが位置され、内筒部51aの外側に周回状の間隔を開けて外筒部51dが位置されている。軸部50は内筒部51aの閉塞された筒外端51b(前記閉塞部10に向けられる筒内端51cと反対の筒端)に基部50aを一体に連接させている。軸部50は内筒部51aの全長の約二倍の長さを有し、内筒部51aの開放された筒内端51cから外側に突き出されている。内筒部51aの外側部と外筒部51dの内側部との間には周回連接部51iが形成されている。
【0025】
また、図示の例では、外筒部51dの筒外端であって、この外筒部51dの直径方向両側にはそれぞれ、外側に向けた張り出し部51eが形成されている。張り出し部51eの張り出し端には爪部51fが形成されていると共に、この爪部51fの内方には空所51gが形成されており、この爪部51fの形成箇所の内方への弾性変形が許容されるようになっている。
【0026】
一方、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aには、この閉塞部10の外縁10cよりこの閉塞部10の中央側にあって前記突出部12を囲繞する周回壁部14が形成されており、この周回壁部14の内側において移動可能に前記栓状体5が支持されている。
【0027】
図示の例では、周回壁部14の直径方向両側にはそれぞれ、窓孔14aが形成されている。そして、この二箇所の窓孔14a、14aに爪部51fをそれぞれ入り込ませるようにして、周回壁部14の内側に前記のように栓状体5が支持されている。より具体的には、栓状体5の一対の爪部51f、51fの先端間の距離は周回壁部14の内径よりもやや大きく、突出部12内の通気路13に軸部50を入り込ませるようにして周回壁部14内に栓状体5の頭部51を入れ込み操作すると、爪部51fの形成箇所が前記のように弾性変形して周回壁部14内への入り込みを許容すると共に、かかる爪部51fは前記形成箇所の弾性復帰により窓孔14aに入り込みこれに掛合するようになっている。これにより、栓状体5は窓孔14aの範囲内において移動可能に周回壁部14に支持されている。なお、図中符号51hは栓状体5の外筒部51dの外面に形成された案内凸条であり、符号14bは周回壁部14の内面に形成されたこの案内凸条が納まる案内溝である。
【0028】
一方、図示の例では、付勢手段6は、栓状体5の頭部51と閉塞部10の外面部との間に介装された圧縮コイルバネ6aにより構成されている。具体的には、かかるバネ6aは前記突出部12を内側に納めるように配されると共に、バネ6a一端を栓状体5の周回連接部51iに当接させ、かつ、バネ6a他端を閉塞部10の外面部に当接させている。そして、このバネ6aにより、栓状体5は、ピストン体2を往動させない状態において、前記通気路13に対する軸部50の入り込み寸法を最小とする可動前位置(図2)に位置づけられるようになっている。
【0029】
ピストン体2のシリンダー体1の閉塞部10から離れる向きへの移動又は相対的な移動、つまり、前記往動は、通気路13からのシリンダー体1内への吸気により許容される。これにより、ピストン体2のかかる移動又は相対的な移動に所用の大きさの力を要するようにして、前記制動力を作用できるようにしている。
【0030】
図示の例では、栓状体5の外筒部51dと周回壁部14及び後述する凹所10dとの間、栓状体5の内筒部51aと突出部12との間、通気路13と軸部50との間にはそれぞれ隙間が形成されており、この隙間により前記吸気がなされるようになっている。(図2)
【0031】
ピストン体2の前記移動又は相対的な移動の速度が早いほど、このピストン体2とシリンダー体1の閉塞部10間の空間Sは負圧になることから、通気路13への軸部50の入り込み寸法が増加する。この入り込み寸法が増加すればするほど通気路13を通じた吸気が行い難くなることから、ピストン体2の前記移動又は相対的な移動に必要な力が大きくなる。すなわち、制動対象物の移動又は相対的な移動の速度が早くなれば早くなるほどダンパー装置により制動対象物に作用される制動力は大きくなる。(速度応答)
【0032】
この実施の形態にあっては、前記通気路13は、前記突出部12によって、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aに形成されていることから、ピストン体2が最もシリンダー体1の閉塞部10に近接した位置において、両者の間に形成される空間Sをできるだけ小さくすることができる。これによりこの実施の形態にあっては、ピストン体2が最もシリンダー体1の閉塞部10に近接した位置からこの閉塞部10から離れる向きへの移動又は相対的な移動を開始すると同時に、栓状体5の軸部50の通気路13への入り込み寸法を大きくさせる圧力変化が生じるようになっている。
【0033】
この実施の形態にあっては、栓状体5は、シリンダー体1の外径より小さい前記周回壁部14の内部において支持されており、できるだけ軽量に構成可能となっている。したがって、付勢手段6の付勢力も最小化可能となっている。これにより、ピストン体2の前記移動又は相対的な移動が生じたときに、つまり、制動対象物の前記移動又は相対的な移動が生じたときに、タイムラグなく栓状体5を移動して、かかる制動対象物に適切な制動力を作用させることが可能となっている。また、制動対象物の前記移動又は相対的な移動の速度に変化が生じたときは、これに応じてタイムラグなく栓状体5を前記通気路13への軸部50の入り込み寸法を大きくする向き又はこれを小さくする向きに移動させて、ダンパー装置が制動対象物に作用させる制動力の大きさを変化させるようになっている。
【0034】
この実施の形態にあっては、栓状体5の頭部51における、前記軸部50の基部50aの側方にあって、この軸部50の通気路13への入り込み寸法が最大となったときに突出部12の突き出し端に当接する箇所に、この栓状体5による通気路13の閉鎖を阻止する突部51jが形成されている。図示の例では、前記内筒部51aの閉塞された筒外端51bの内面に、軸部50の基部50aから放射方向に延びる前記突部51jとしてのリブが、この基部50aを中心とした対称位置にそれぞれ形成されており、軸部50の通気路13への入り込み寸法が最大となったときに通気路13の入り口に栓状体5の頭部51が張り付いてこの通気路13を完全に閉塞しないようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、軸部50の通気路13への入り込み寸法が最大となっても通気路13を通じたシリンダー体1内部への通気を確保してシリンダー体1の閉塞部10から離れる向きへのピストン体2の移動又は相対的な移動を許容することができ、制動対象物の移動をダンパー装置が原因となって突然停止させてしまうことがないようになっている。(図4)
【0035】
また、この実施の形態にあっては、栓状体5の軸部50には、その先端から基部50a近傍に亘って、この軸部50の軸線に直交する断面の外郭形状をD字状とするカット面50bが形成されている。かかるカット面50bは、軸部50の先端からその長さ方向略中程の位置までは軸部50の軸線に平行をなしているが、この中程の位置から基部50a近傍までの間では基部50aに近づくに連れて次第に前記軸線から離れるように傾斜している。これにより、軸部50はその長さ方向中程の位置から基部50a近傍までの間では基部50aに近づくに連れて太くなるように構成されている。(以下、軸部50のこの箇所を太さの漸増箇所50cと称する。)そして、この実施の形態にあっては、前記可動前位置においては栓状体5の軸部50は通気路13に漸増箇所50cを入り込ませないようになっている。(図3)ピストン体2の前記往動により通気路13へ軸部50が入り込むと前記太さの漸増箇所50cが通気路13内に入り込み、この入り込み寸法が増えれば増えるほど軸部50と通気路13との間の隙間は絞られ、ピストン体2の往動に必要な力が大きくなるようになっている。
【0036】
この実施の形態にあってはまた、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aには、シリンダー体1の内側に凸所10eを作る凹所10dが形成されており、この凹所10d内に突出部12が備えられている。これにより、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aに通気路13を形成しながら、シリンダー体1の長さ寸法が大きくならないようにしている。また、この実施の形態にあっては、ピストン体2に、シリンダー体1の内側に形成された凸所10eの納まる凹部2jが形成されている。この実施の形態にあっては、ピストン体2が最もシリンダー体1の閉塞部10に近接した位置において、ピストン体2の開放された前側2aからこのピストン体2内に前記凸所10eが入り込むようになっている。すなわち、この実施の形態にあっては、かかるピストン体2の内部が前記凹部2jとして機能するようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、シリンダー体1の内側に凸所10eを作る凹所10dを設けながら、ピストン体2が最もシリンダー体1の閉塞部10に近接した位置において、両者の間に形成される空間Sができるだけ小さくなるようにしている。この実施の形態にあっては、前記凹所10dは、シリンダー体1の閉塞部10の外側10aに円形の凹所10d入り口を形成させる円形の窪みであり、前記凸所10eはこの閉塞部10の内側に突き出す短寸円柱状部であり、この凹所10dと凸所10eとにより閉塞部10の肉厚はどの位置でも略同一となっている。この凸所10eの外径とピストン体2の内径及びこの凸所10eの突きだし寸法とピストン体2の前側2aの開放縁から底までの寸法とは略一致するようになっている。
【符号の説明】
【0037】
1 シリンダー体
10 閉塞部
10a 外側
12 突出部
2 ピストン体
5 栓状体
50 軸部
6 付勢手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー体及びピストン体を備え、少なくともこれらのいずれか一方の側を制動対象物に取り付けさせることにより、制動対象物の移動又は相対的な移動に制動力を作用させるダンパー装置であって、
前記ピストン体に向き合う前記シリンダー体の閉塞部の外側に、このシリンダー体の内外を連通させる流路を形成させる突出部と、
この流路に前記シリンダー体の外側から入れ込まれる軸部を備えた栓状体と、
この栓状体の付勢手段とを備えており、
前記シリンダー体の閉塞部から離れる向きの前記ピストン体の移動又は相対的な移動により生じる圧力変化によって前記付勢手段の付勢に抗して前記流路への栓状体の軸部の入り込み寸法が増加するようになっていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
シリンダー体の閉塞部の外側には、シリンダー体の内側に凸所を作る凹所が形成されており、この凹所内に突出部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
ピストン体に、シリンダー体の内側に形成された凸所の納まる凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のダンパー装置。
【請求項4】
栓状体に、軸部の基部の側方にあって、この軸部の流路への入り込み寸法が最大となったときに突出部の突き出し端に当接してこの栓状体による流路の閉鎖を阻止する突部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項5】
シリンダー体の閉塞部の外側には、この閉塞部の外縁よりこの閉塞部の中央側にあって突出部を囲繞する周回壁部が形成されており、この周回壁部の内側において移動可能に栓状体が支持されていることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載のダンパー装置。
【請求項1】
シリンダー体及びピストン体を備え、少なくともこれらのいずれか一方の側を制動対象物に取り付けさせることにより、制動対象物の移動又は相対的な移動に制動力を作用させるダンパー装置であって、
前記ピストン体に向き合う前記シリンダー体の閉塞部の外側に、このシリンダー体の内外を連通させる流路を形成させる突出部と、
この流路に前記シリンダー体の外側から入れ込まれる軸部を備えた栓状体と、
この栓状体の付勢手段とを備えており、
前記シリンダー体の閉塞部から離れる向きの前記ピストン体の移動又は相対的な移動により生じる圧力変化によって前記付勢手段の付勢に抗して前記流路への栓状体の軸部の入り込み寸法が増加するようになっていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
シリンダー体の閉塞部の外側には、シリンダー体の内側に凸所を作る凹所が形成されており、この凹所内に突出部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
ピストン体に、シリンダー体の内側に形成された凸所の納まる凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のダンパー装置。
【請求項4】
栓状体に、軸部の基部の側方にあって、この軸部の流路への入り込み寸法が最大となったときに突出部の突き出し端に当接してこの栓状体による流路の閉鎖を阻止する突部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項5】
シリンダー体の閉塞部の外側には、この閉塞部の外縁よりこの閉塞部の中央側にあって突出部を囲繞する周回壁部が形成されており、この周回壁部の内側において移動可能に栓状体が支持されていることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載のダンパー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−24285(P2013−24285A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157859(P2011−157859)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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