説明

チェン

【課題】寿命が摩耗により短くなってしまうことを、容易かつ安価に防止することができるチェンを提供する。
【解決手段】 交互に連結されるピンリンク38とローラリンク8を備え、循環経路に沿って互いに平行に走行する一対のチェン34であって、一対のチェン34の間に搬送手段30が設けられ、ピンリンク38が有する一対のピンリンクプレート10,40のうち、搬送手段30と反対側のピンリンクプレート40の進行方向前方端に、進行方向の前方側から後方側に向かうに従って、ピンリンクプレート40から離れていくように形成した固定フラップ42が設けられるようにした。
【効果】寿命が摩耗により短くなってしまうことを、容易かつ安価に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物等の硬い搬送対象物を搬送する搬送装置に用いられるチェンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6及び図7は、従来の搬送装置2の一部を示す側面図、及び平面図である。この従来の搬送装置2は、水平方向に伸びて互いに平行に並んで配置される2本のチェン4を備えている。この2本のチェン4は、無端チェンであり、かつ、回転軸が略水平であって略水平方向に離れて配置される不図示の複数のスプロケット間を、略水平方向に循環駆動するものである。図6及び図7のチェン4は、少なくとも図示されている範囲内で、複数のスプロケット間の循環経路におけるスプロケットの下側を略水平方向に走行している状態を示すものである。
【0003】
チェン4は、図8に示すように、交互に連結される複数のピンリンク6と複数のローラリンク8とを備えて構成されている。チェン4のピンリンク6のそれぞれは、図8及び図9に示すように、一対のピンリンクプレート10、及び2本のピン12を備えている。
【0004】
ピンリンク6における一対のピンリンクプレート10のそれぞれには、図8に示すように、2つのピン用孔14が、チェン4の長さ方向に一定間隔だけ離れて形成されている。ピンリンク6の2本のピン12のそれぞれは、図9に示すように、その長さ中間部分において、後述するローラリンク8のブシュ22を軸支しており、このブシュ22の両端からその長さ方向の両外側に突出したピン12の長さ部分が、互いに対向する一対のピンリンクプレート10のそれぞれのピン用孔14に嵌合している。
【0005】
また、ピンリンク6のピン12は、その長さ方向の両端部12a,12bのそれぞれが、一対のピンリンクプレート10のそれぞれの外側に突出している。このピン12の一方の端部12aは、他の長さ部分よりも若干太く形成されていることにより抜けないようになっている。また、ピン12の他方の端部12bには、その軸線と交差する方向に貫通する抜止めピン16が打ち込まれている。
【0006】
また、チェン4のローラリンク8のそれぞれは、一対のローラリンクプレート20、2本のブシュ22、及び2個のローラ24を備えている。ローラリンク8のローラリンクプレート20には、ピンリンク6のピンリンクプレート10のピン用孔14に対応するブシュ用孔26が形成されている。
【0007】
ローラリンク8のブシュ22は、その長さ中間部分において、ローラ24を軸支しており、このローラ24の両端からその長さ方向の両外側に突出したブシュ22の長さ部分が、互いに対向する一対のローラリンクプレート20のそれぞれのブシュ用孔26に嵌合している。このブシュ22は、その長さ方向の両端部のそれぞれが、一対のローラリンクプレート20のそれぞれの外側に突出している。
【0008】
また、チェン4のローラリンク8のローラリンクプレート20と、ピンリンク6のピンリンクプレート10との間には、計4個のオイルシール28のそれぞれが配置されている。
【0009】
また、搬送装置2は、図6及び図7に示すように、チェン4により搬送される複数のバケット30を備えている。この複数のバケット30のそれぞれは、2本のチェン4が互いに対向する方向に幅を有しており、この幅方向の両端部のそれぞれが、2本のチェン4のそれぞれに、アタッチメント32等を介して連結されている。バケット30同士は、チェン4の長さ方向に互いに一定の間隔を空けて配置されている。また、バケット30は、その進行方向(矢印S)の前側が開放されていることにより、進行方向の前側から搬送対象物を内部に取り込むようになっている。
【0010】
ここで、この搬送装置2は、上述したように、その2本のチェン4のそれぞれが、循環駆動されるようになっている。このため、搬送装置2のチェン4のそれぞれ及びバケット30は、図示しないがその全体の搬送経路の往路が下側に、復路が上側に配置されるようになっており、復路と往路では、互いの上下関係が逆転するようになっている。
【0011】
このような従来の搬送装置2は、図示しないが、破砕した鉄鉱石もしくは銅鉱石等の鉱石、又は他の破砕した鉱物等の搬送対象物を、その集積所から他の場所や装置等まで搬送するのに用いられている。搬送装置2のバケット30は、搬送対象物の集積所内をチェン4によりほぼ水平に搬送されるようになっており、その際に、集積された搬送対象物の上層部分をほぼ水平にすくい取って、搬送対象物を内部に取り込むようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の搬送装置2のチェン4においては、このチェン4が鉱石や鉱物等の搬送対象物と接触して摩耗してしまうため、その寿命が短くなってしまうという問題があった。
【0013】
つまり、搬送装置2は、そのチェン4を駆動してバケット30により搬送対象物をすくい取りながら、これらチェン4及びバケット30の進行方向と略直角の方向に水平移動していくようになっている。このため、搬送装置2のチェン4は、水平移動する搬送装置2全体の進行方向上にある搬送対象物に接触してしまうので、図10及び図11に示すように、ピンリンクプレート10の下部等が徐々に摩り減って変形してしまうという問題があった。
【0014】
また、このようなチェン4の摩耗対策として、このチェン4の表面に溶解した材料を吹き付けて皮膜を形成する溶射などの表面処理を施したり、チェン4自体を硬い材質で製作したりした場合には、チェン4の製作費用が高額になるため、現実的ではないという問題があった。
【0015】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、寿命が摩耗により短くなってしまうことを、容易かつ安価に防止することができるチェンを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明は、
交互に連結されるピンリンクとローラリンクを備え、循環経路に沿って互いに平行に走行する一対のチェンであって、
前記一対のチェンの間に搬送手段が設けられ、
前記ピンリンクが有する一対のピンリンクプレートのうち、前記搬送手段と反対側のピンリンクプレートの進行方向前方端に、進行方向の前方側から後方側に向かうに従って、ピンリンクプレートから離れていくように形成した固定フラップが設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明によるチェンは、
一対の互いに対向する方向の間隔が異なるピンリンクとローラリンクが長さ方向に一体化されて、進行方向に互いに隣り合うピンリンク側の端部とローラリンク側の端部が互いに嵌合して連結される型式のオフセットリンクを備え、循環経路に沿って互いに平行に走行する一対のチェンであって、
前記オフセットリンクは、前記ピンリンク側の端部が進行方向前側に、前記ローラリンク側の端部が後側に配置され、
前記一対のチェンの間に搬送手段が設けられ、
前記オフセットリンクが有する一対のオフセットリンクプレートのうち、前記搬送手段と反対側のオフセットリンクプレートの進行方向前方端に、進行方向の前方側から後方側に向かうに従って、オフセットリンクプレートから離れていくように形成した固定フラップが設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明のチェンによれば、
交互に連結されるピンリンクとローラリンクを備え、循環経路に沿って互いに平行に走行する一対のチェンであって、
前記一対のチェンの間に搬送手段が設けられ、
前記ピンリンクが有する一対のピンリンクプレートのうち、前記搬送手段と反対側のピンリンクプレートの進行方向前方端に、進行方向の前方側から後方側に向かうに従って、ピンリンクプレートから離れていくように形成した固定フラップが設けられていることにより、
当該チェンの寿命が摩耗により短くなってしまうことを、容易かつ安価に防止することができる。
【0019】
また、本発明のチェンによれば、
一対の互いに対向する方向の間隔が異なるピンリンクとローラリンクが長さ方向に一体化されて、進行方向に互いに隣り合うピンリンク側の端部とローラリンク側の端部が互いに嵌合して連結される型式のオフセットリンクを備え、循環経路に沿って互いに平行に走行する一対のチェンであって、
前記オフセットリンクは、前記ピンリンク側の端部が進行方向前側に、前記ローラリンク側の端部が後側に配置され、
前記一対のチェンの間に搬送手段が設けられ、
前記オフセットリンクが有する一対のオフセットリンクプレートのうち、前記搬送手段と反対側のオフセットリンクプレートの進行方向前方端に、進行方向の前方側から後方側に向かうに従って、オフセットリンクプレートから離れていくように形成した固定フラップが設けられていることにより、
オフセットリンクを用いたチェンの寿命が摩耗により短くなってしまうことを容易かつ安価に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るチェンを実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態に係るチェン34について説明するために参照する図である。従来と同様の部分には同じ符号を用いて説明し、従来と同様の構成についての重複する説明は省略するものとする。図1及び図2のチェン34は、少なくとも図示されている範囲内で、複数のスプロケット間の循環経路におけるスプロケットの下側を略水平方向に走行している状態を示すものである。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るチェン34のそれぞれは、前記従来のチェン4におけるピンリンク6の代わりに、構成がピンリンク6と異なるピンリンク38を備えている。このピンリンク38は、図7に示す前記従来のチェン4におけるピンリンク6の一対のピンリンクプレート10のうちの、バケット30(搬送手段)とは反対側の(バケット30から遠い側の)ピンリンクプレート10が、ピンリンクプレート40に置き換えられている。
【0022】
また、ピンリンク38のそれぞれは、そのピンリンクプレート40の進行方向前方端に固定フラップ42を有している。この固定フラップ42は、曲げ加工により、ピンリンクプレート40と一体的に形成されたものである。
【0023】
この固定フラップ42は、図2に示すように、ピンリンクプレート40との間の角度が鋭角をなすように折曲げられていることにより、進行方向の前方側から後方側に向かうに従って、ピンリンクプレート40から離れていくように形成されている。
【0024】
このような本実施の形態に係るチェン34によれば、複数のピンリンクプレート40のそれぞれに固定フラップ42を備えているので、チェン34が循環駆動することにより、固定フラップ42が設けられたピンリンク38のピンリンクプレート40、及びその後続の他のピンリンク38のピンリンクプレート40等に接触するおそれがある鉱石等の搬送対象物が、固定フラップ42により水平方向かつバケット30とは反対側の方向に押し退けられていくようになる。
【0025】
これにより、チェン34は、そのピンリンク38のピンリンクプレート40等に、搬送対象物が直接接触するのを防止することができるので、ピンリンクプレート40が摩耗するのを防止して、その寿命が短くなってしまうことを容易かつ安価に防止することができる。
【0026】
次に、図3から図5は、本発明の第2の実施の形態に係るチェン50について説明するために参照する図である。前記第1の実施の形態に係るチェン34と同様の部分には同じ符号を用いて説明し、同様の構成についての重複する説明は省略するものとする。
【0027】
本実施の形態に係るチェン50は、前記第1の実施の形態に係るチェン34の、交互に連結されるピンリンク38及びローラリンク8の代わりに、図3及び図4に示すように、互いに連結される複数のオフセットリンク52を備えて構成されている。
【0028】
このチェン50のオフセットリンク52のそれぞれは、図4に示すように、一対のオフセットリンクプレート54,56を備えている。この一対のオフセットリンクプレート54,56は、オフセットリンクプレート54の方がバケット30側に配置され、オフセットリンクプレート56の方がバケット30とは反対側に配置されている。
【0029】
この一対のオフセットリンクプレート54,56のそれぞれは、その進行方向(図4中左右方向)の長さ範囲の中の、中央の一定長さ部分が、互いに対向する方向(図4中上下方向)の間隔が後方側に向かって狭くなっていくよう傾斜して形成されている。
【0030】
そして、チェン50のオフセットリンク52は、この一対のオフセットリンクプレート54,56のそれぞれが、このように傾斜して形成される長さ部分よりも前方側の長さ部分、及び、後方側の長さ部分のそれぞれにおいて、互いに平行となるように形成されている。
【0031】
また、オフセットリンク52の一対のオフセットリンクプレート54,56は、その進行方向のほぼ前側半分が、前記第1の実施の形態に係るチェン34の一対のピンリンクプレート40,10間と同様の間隔に構成され、ほぼ後側半分がローラリンク8の一対のローラリンクプレート20,20間と同様の間隔に構成されている。これにより、チェン50のオフセットリンク52のそれぞれは、図4及び図5に示すように、そのピン12が、進行方向前方に配置されている別個のオフセットリンク52の後側半分のブシュ22を軸支して次々と連結するようになっている。
【0032】
また、オフセットリンク52のそれぞれのオフセットリンクプレート56には、前記第1の実施の形態に係るチェン34におけるピンリンク38のピンリンクプレート40と同様に、固定フラップ42が設けられている。
【0033】
このような本実施の形態に係るチェン50によれば、前記第1の実施の形態と同様に、そのオフセットリンク52のオフセットリンクプレート56等に、搬送対象物が直接接触するのを防止することができるので、オフセットリンクプレート56が摩耗するのを防止して、その寿命が短くなってしまうことを容易かつ安価に防止することができる。
【0034】
なお、前記第1の実施の形態に係るチェン34においては、そのピンリンクプレート40とローラリンクプレート20との間にオイルシール28を備えていたが、オイルシール28を備えないようになっていてもよい。また、前記第2の実施の形態に係るチェン50においても、そのオフセットリンクプレート54同士、又は56同士の間にオイルシール28を備えていたが、オイルシール28を備えないようになっていてもよい。
【0035】
また、前記第1及び第2の実施の形態に係るチェン34,50においては、固定フラップ42は、曲げ加工により形成されていたが、鋳造等のような曲げ加工以外の他の製造方法により形成されるようになっていてもよい。
【0036】
また、前記第1及び第2の実施の形態においては、上側と下側で互いに略平行となっている循環経路のうちの、スプロケットの下側を略水平方向に走行している状態のチェンを示す場合について説明したが、チェンの循環経路は、スプロケットの下側を略水平方向に走行するものでありさえすれば、スプロケットの上側は必ずしもスプロケットの下側と平行となっている必要はなく、チェンの循環経路はスプロケットが3つ以上により構成されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るチェン34の一部、及びバケット30を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るチェン34の一部、及びバケット30を示す平面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るチェン50の一部、及びバケット30を示す側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るチェン50の一部、及びバケット30を示す平面図である。
【図5】図3中のチェン50のC−C線断面図であって、そのオフセットリンク52を示す図である。
【図6】従来の搬送装置2のチェン4の一部、及びバケット30を示す側面図である。
【図7】従来の搬送装置2のチェン4の一部、及びバケット30を示す平面図である。
【図8】図6に示すチェン4のピンリンク6及びローラリンク8を示す拡大側面図である。
【図9】図8中のチェン4のA−A線断面図であって、そのピンリンク6及びローラリンク8を示す図である。
【図10】図6に示すチェン4のピンリンク6及びローラリンク8を示す拡大側面図であって、ピンリンク6等が摩耗により変形した状態を示す図である。
【図11】図10中のチェン4のB−B線断面図であって、ピンリンク6及びローラリンク8を示すと共にピンリンク6等が摩耗により変形した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
2 搬送装置
4 チェン
6 ピンリンク
8 ローラリンク
10 ピンリンクプレート
12 ピン
12a,12b 端部
14 ピン用孔
16 抜止めピン
20 ローラリンクプレート
22 ブシュ
24 ローラ
26 ブシュ用孔
28 オイルシール
30 バケット
32 アタッチメント
34 チェン
38 ピンリンク
40 ピンリンクプレート
42 固定フラップ
50 チェン
52 オフセットリンク
54,56 オフセットリンクプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に連結されるピンリンクとローラリンクを備え、循環経路に沿って互いに平行に走行する一対のチェンであって、
前記一対のチェンの間に搬送手段が設けられ、
前記ピンリンクが有する一対のピンリンクプレートのうち、前記搬送手段と反対側のピンリンクプレートの進行方向前方端に、進行方向の前方側から後方側に向かうに従って、ピンリンクプレートから離れていくように形成した固定フラップが設けられていることを特徴とするチェン。
【請求項2】
一対の互いに対向する方向の間隔が異なるピンリンクとローラリンクが長さ方向に一体化されて、進行方向に互いに隣り合うピンリンク側の端部とローラリンク側の端部が互いに嵌合して連結される型式のオフセットリンクを備え、循環経路に沿って互いに平行に走行する一対のチェンであって、
前記オフセットリンクは、前記ピンリンク側の端部が進行方向前側に、前記ローラリンク側の端部が後側に配置され、
前記一対のチェンの間に搬送手段が設けられ、
前記オフセットリンクが有する一対のオフセットリンクプレートのうち、前記搬送手段と反対側のオフセットリンクプレートの進行方向前方端に、進行方向の前方側から後方側に向かうに従って、オフセットリンクプレートから離れていくように形成した固定フラップが設けられていることを特徴とするチェン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−79735(P2009−79735A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250700(P2007−250700)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】