説明

チェーファー用ゴム組成物

【課題】ビード耐久性能に優れ、リム脱着時におけるチェーファーのゴム欠けが発生しなく、かつ低燃費性能に優れた、破断強度の大きいゴム組成物を提供する。
【解決手段】(A)1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を2.5〜20質量%含むブタジエンゴム(A1)を10〜60質量%、リチウム開始剤により重合され、スズ原子の含有量が50〜3000ppm、ビニル結合量が5〜50質量%、および分子量分布が2.0以下であるスズ変性ブタジエンゴム(A2)を5〜50質量%、ならびにブタジエンゴム(A1)およびスズ変性ブタジエンゴム(A2)以外のジエン系ゴム(A3)を20〜75質量%含有するジエン系ゴム成分100質量部に対して、(B)シリカを5〜30質量部含むチェーファー用ゴム組成物であって、破断時伸びが280%以上であるチェーファー用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーファー用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラックやバスに用いられるタイヤの耐久性については、タイヤを構成するベルト部(ブレーカーともいう)およびリムと接触するビード部が重要となるが、ビード部の変形を抑えるために硬質ゴム(以下、チェーファーともいう)が使用される。ゴムの変形を抑制するために、ゴムを硬くするのが良いが、あまり硬くし過ぎるとリム脱着時にチェーファーの先端が欠けるので、一般的には硬さは70〜75に設定されるが、荷重が大きくなるような使用条件下でのビード部耐久性を向上させるためには、硬さ76以上が必要となってくる。
【0003】
ゴムの硬さの向上のために、カーボンブラックの様な補強用充填剤を配合し、ゴム組成物を硬くする、ゴム成分を特定のものとすることで、硬さを向上させる手法が用いられている。たとえば、特許文献1のように、使用するブタジエンゴムを1,2−シンジオタクチック結晶を含有するポリブタジエンにすることによって、75以上の硬さを出すことが可能となる。しかしながら、これらの技術を用いても低燃費性と経年での物性変化を抑制することは困難である。
【0004】
また、ビードワイヤー(鉄)とレバーローラー(鉄)にはさまれ、キャンバスチェーファーでワイヤー付近をカバーするのが通常のビード構造であるが、ゴムチェーファーにおいて、生産性向上および軽量化を行うために、キャンバスによる繊維補強を用いないラバーチェーファーが知られている。ところで、ラバーチェーファーとして特許文献1のゴム成分の配合を用いた場合、破断時伸びを向上させることが難しく、キャンバスチェーファー除去が不可能であり、生産性向上、軽量化を行うことは困難であった。
【0005】
また、破断時伸びの低いゴム組成物は、リム組付時のレバーがビードトー付近のゴムを破断するという問題があり、一般に、破断時伸びを向上させるためには、天然ゴムの含有量を大きくする、カーボンブラックの微粒子化するなどの手法が考えられるが、低発熱性が悪化してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−63143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ビード耐久性能に優れ、リム脱着時におけるチェーファーのゴム欠けが発生しなく、かつ低燃費性能に優れた、破断強度の大きいゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を2.5〜20質量%含むブタジエンゴム(A1)を10〜60質量%、
リチウム開始剤により重合され、スズ原子の含有量が50〜3000ppm、ビニル結合量が5〜50質量%、および分子量分布が2.0以下であるスズ変性ブタジエンゴム(A2)を5〜50質量%、ならびに
ブタジエンゴム(A1)およびスズ変性ブタジエンゴム(A2)以外のジエン系ゴム(A3)を20〜75質量%含有するジエン系ゴム成分100質量部に対して、
(B)シリカを5〜30質量部含むチェーファー用ゴム組成物であって、
破断時伸びが280%以上であるチェーファー用ゴム組成物に関する。
【0009】
さらに、シランカップリング剤をシリカ100質量部に対して、10質量部以下含有することが好ましい。
【0010】
本発明のチェーファー用ゴム組成物は、ラバーチェーファー用に用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ゴム成分として、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴムを含有し、補強用充填剤としてシリカを含有するため、カーボンブラックの含有量を減少させることができ、ゴム組成物の剛性を向上させることができる。また、ゴム成分として、スズ変性ブタジエンゴムを含有することによって、低燃費化を向上させることができる。
【0012】
そのため、本発明のゴム組成物は、ビード耐久性能に優れ、リム脱着時におけるチェーファーのゴム欠けが発生しなく、かつ低燃費性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のチェーファー用ゴム組成物は、(A)1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(以下、SPB含有BRともいう)(A1)、スズ変性ブタジエンゴム(以下、スズ変性BRともいう)(A2)を5〜50質量%、ならびにSPB含有BR(A1)およびスズ変性BR(A2)以外のジエン系ゴム(A3)、シリカ(B)を含有する。
【0014】
ジエン系ゴム成分(A)におけるSPB含有BR(A1)は、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散していることが好ましい。前記結晶がゴム成分と化学結合したうえで分散することにより、クラックの発生および伝播が抑制される傾向がある。
【0015】
また、BR中に含有する1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶は充分な硬さを有するため、架橋密度が少なくても充分な複素弾性率を得ることができる。そのため、得られるゴム組成物の耐摩耗性を向上させることができる。
【0016】
1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましい。融点が180℃未満では、プレスにおけるタイヤの加硫中に結晶が溶融し、硬度が低下する傾向がある。また、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましい。融点が220℃をこえると、BRの分子量が大きくなるため、ゴム組成物中において分散性が悪化する傾向がある。
【0017】
SPB含有BR中において、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は、2.5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。含有量が2.5質量%未満では、ゴム組成物の充分な硬度が得られない傾向がある。また、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましい。含有量が22質量%をこえると、BR自体の粘度が高く、ゴム組成物中におけるBRおよびフィラーの分散性が悪化する傾向がある。ここで、沸騰n−ヘキサン不溶物とは、SPB含有BR中における1,2−シンジオタクチックポリブタジエンを示す。
【0018】
SPB含有BR中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は、2.5質量%以上、好ましくは10質量%以上である。含有量が2.5質量%未満では、硬度が不充分である。また、BR中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は20質量%以下、好ましくは18質量%以下である。含有量は20質量%をこえると、BRがゴム組成物中に分散し難く、加工性が悪化する。
【0019】
ジエン系ゴム成分(A)中におけるSPB含有BR(A1)の含有量は、リムチェーフィング性、硬度(Hs)において優れるという点から、2.5質量%以上であり、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、ジエン系ゴム成分(A)中におけるSPB含有BRの含有量は、破断時伸びが向上し、かつtanδが悪化しない点において優れるという点から、60質量%以下であり、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0020】
スズ変性BR(A2)は、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合をおこなったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらにBR分子の末端がスズ−炭素結合で結合されていることが好ましい。
【0021】
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、アリルリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウムおよび有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物があげられる。リチウム系化合物をBRの開始剤とすることで、Highビニル、lowシス含量のスズ変性BRを作製できる。
【0022】
スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、トリフェニルスズエトキシド、ジフェニルジメチルスズ、ジトリルスズクロライド、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジエチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p−トリブチルスズスチレンなどがあげられ、これらのなかから、1種または2種以上選択して使用することができる。
【0023】
スズ変性BR(A2)中において、スズ原子の含有量は50ppm以上、好ましくは60ppm以上である。含有量が50ppm未満では、スズ変性BR中のカーボンブラックの分散を促進する効果が小さく、tanδが悪化する。また、スズ原子の含有量は3000ppm以下、好ましくは2500ppm以下、さらに好ましくは250ppm以下である。含有量が3000ppmをこえると、混練り物のまとまりが悪く、エッジが整わないため、混練り物の押出し性が悪化する。
【0024】
スズ変性BR(A2)の分子量分布(Mw/Mn)は2以下、好ましくは1.5以下である。Mw/Mnが2をこえると、カーボンブラックの分散性、およびtanδが悪化する。分子量分布の下限は特に限定されないが、1であることが好ましい。
【0025】
スズ変性BR(A2)のビニル結合量は、耐アブレーション性(リムチェーフィング性)において優れるという点から、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。また、スズ変性BR(A2)中のビニル結合量は、製造効率において優れるという点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。
【0026】
ジエン系ゴム成分(A)中におけるスズ変性BR(A2)の含有量は、低発熱性(tanδ)において優れるという点から、5質量%以上であり、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、ジエン系ゴム成分(A)中におけるスズ変性BRの含有量は、破断時伸びが向上し、Hsにおいて優れるという点から、50質量%以下であり、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0027】
前記であげられたSPB含有BR(A1)およびスズ変性BR(A2)以外のジエン系ゴム成分(A3)としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、および高シス含有量のブタジエンゴム(ハイシスBR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などがあげられるが、これらの中で、NRやIRが、破断強度および加工性の点で好ましい。
【0028】
NRとしては、とくに制限はなく、通常ゴム工業で使用されるものを使用することができ、具体的には、RSS♯3、TSR20などがあげられる。
【0029】
また、IRとしても、とくに制限はなく、タイヤ工業で従来から使用されるものを使用することができる。なお、IRはNRと同じ化学構造を有することから、NRと同じ物性を示すことは技術分野において周知である。
【0030】
ハイシスBRとは、得られたゴムのブタジエン部分に対するシス1,4−結合の含有率が90%以上のBRをいう。
【0031】
本発明で使用されるハイシスBRは、市販のハイシスBRを用いることができ、例えば、宇部興産(株)製のBR130B、BR150Bなどのハイシス含有量のBR(ハイシスBR)などを好適に使用することができる。
【0032】
ジエン系ゴム成分(A)におけるSPB含有BR(A1)およびスズ変性BR(A2)以外のジエン系ゴム成分(A3)の含有量は、破断強度、Hsにおいて優れるという点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、ジエン系ゴム成分(A3)の含有量は、リムチェーフィング性において優れるという点から、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
前記SPB含有BR(A1)、スズ変性BR(A2)およびジエン系ゴム成分(A3)を組み合わせたゴム成分とすることで、ゴム組成物の硬度、破断時応力および破断時応力を低減させることなく、tanδを大幅に低減することができる。
【0034】
本発明は、リムずれ摩耗性に影響せず、破断時伸びを向上させることができる点、低発熱性の向上において優れるという点から、充填剤としてさらに、シリカ(B)を含有する。
【0035】
シリカ(B)の含有量は、破断強度の向上および低発熱性の向上において優れるという点から、ジエン系ゴム成分(A)100質量部に対して、5質量部以上であり、7質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、シリカの含有量は、破断強度の向上および低発熱性の向上、リムチェーフィング性の維持において優れるという点から、ジエン系ゴム成分(A)100質量部に対して、30質量部以下であり、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0036】
シリカのN2SAは、30〜220m2/gが好ましく、50〜200m2/gがより好ましく、70〜180m2/gがさらに好ましい。N2SAが30m2/g未満では、リムチェーフィング性が悪化、破断強度が低下する傾向があり、N2SAが220m2/gをこえると、低発熱性が悪化する傾向がある。
【0037】
補強性や耐摩耗性が乗用車用タイヤに用いるのに充分な効果を発揮し、加工性および分散性も良好であることから、ローディア社製のZ115GR(N2SA:112m2/g)が好適に用いられる。
【0038】
本発明のゴム組成物はシリカを含有するため、シリカの分散性を向上させるために、さらにシランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0039】
シランカップリング剤としては、とくに制限はなく、タイヤ工業で従来からゴム組成物中にシリカとともに配合されているものであれば使用することができ、具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられ、これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどが好適に用いられる。
【0040】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカの量が10質量部以上の場合、加工性および低発熱性に優れる点から、シリカ100質量部に対して4質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。また、シランカップリング剤の含有量は、カップリング反応に関係していないシランカップリング剤はゴムの熱酸化劣化、経時変化を促進する理由から、シリカ100質量部に対して10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。なお、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が10質量部未満の場合、シランカップリング剤の配合は不要である。ジエン系ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が10質量部以上の場合、シリカの分散が困難となるので、シランカップリング剤はシリカに対して6〜8質量%配合することが好ましい。TB(トラックバス)用タイヤでは、シリカとシランカップリング剤が反応する部分で低燃費化が計れ、シリカとシランカップリング剤が未反応の部分で伸びを出し耐欠け性を向上することができる。
【0041】
本発明のゴム組成物は、さらに、リムチェーフィング性において優れるという点から、カーボンブラックを含有することが好ましい。
【0042】
カーボンブラックの含有量は、充分な硬度が得られ、リムにおける耐アブレージョン性が悪化しない点において優れるという点から、ジエン系ゴム成分(A)100質量部に対して、30質量部以上であり、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、tanδが悪化しない点において優れるという点から、ジエン系ゴム成分(A)100質量部に対して、55質量部以下であり、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。
【0043】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50〜220m2/gが好ましく、60〜200m2/gがより好ましく、70〜150m2/gがさらに好ましい。N2SAが50m2/g未満では、耐アブレージョン性が悪化する、破断強度が悪化する傾向があり、N2SAが220m2/gをこえると、tanδが悪化する傾向がある。実用的には、PC(乗用車)用タイヤに用いるカーボンブラックのN2SAは70m2/gが好ましく、TB(トラックバス)用タイヤに用いるカーボンブラックのN2SAは120m2/gが好ましい。
【0044】
カーボンブラックとしては、たとえば、N330、N351、N220,N219などのカーボンブラックが、低発熱性、リムチェーフィング性、破断強度の点で好ましい。
【0045】
シリカ(B)やカーボンブラックなどの補強用充填剤の合計量は、低発熱性の向上、リムチェーフィング性において優れるという点から、ジエン系ゴム成分(A)100質量部に対して、40質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましい。また、補強用充填剤の合計量は、低発熱性の向上、破断強度において優れるという点から、ジエン系ゴム成分(A)100質量部に対して、62質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、58質量部以下がさらに好ましい。
【0046】
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分(A)、シリカ(B)、シランカップリング剤、カーボンブラックのほかに、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、たとえば、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、アロマオイル、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを必要に応じて通常使用される量を含むことができる。
【0047】
引張試験におけるゴム組成物の破断時伸びEBは、自動マウンターのアームがビードトー部を傷つけず、ゴム欠け亀裂起点が発生しない点において優れるという点から、280%以上であり、300%以上が好ましく、320%以上がより好ましい。また、ゴム組成物の破断時伸びEBの上限は特に限定されないが、600%以下であることが好ましい。なお、引張試験は、JIS−K6251に準じておこなわれる。
【0048】
本発明のゴム組成物は、低発熱性、破断強度、耐摩耗性において優れるため、チェーファー用に好適に用いられ、特にキャンバスチェーファーのようなキャンバスによる繊維補強を用いないラバーチェーファーとして好適に用いられる。
【0049】
本発明の空気入りタイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、必要に応じて前記配合剤を配合した本発明のゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのチェーファーの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより空気入りタイヤを得る。
【実施例】
【0050】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0051】
次に、実施例および比較例で用いた各種薬品について、説明する。
天然ゴム(NR):TSR20
乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR):JSR(株)製のSBR1502(スチレン単位含有率23.5重量%)
変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S−SBR):JSR(株)製のHPR340(結合スチレン量10重量%、ビニル量42重量%)
ブチル系ゴム:エクソンモービル(有)製のHT−1066(塩素化ブチルゴム)
SPB含有BR1:宇部興産(株)製のVCR617(1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶分散体、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量:17質量%、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点:200℃、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量:15〜18質量%)
SPB含有BR2:宇部興産(株)製のVCR412(1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶分散体、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量:12質量%、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点:200℃、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量:12.0質量%、(シス−1,4−結合含量:98質量%、ムーニー粘度(100℃):45、SPBの還元比粘度:2.2)
スズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR):日本ゼオン(株)製のBR1250(開始剤としてリチウムを用いて重合、ビニル結合量:10〜13質量%、Mw/Mn:1.5、スズ原子の含有量:250ppm)
1,4−ハイシスBR:宇部興産(株)製のBR150B
カーボンブラックN330:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN330(N2SA:79m2/g)
カーボンブラックN219:三菱化学(株)製のLI(窒素吸着比表面積:105m2/g)
シリカZ115GR:ローディア社製のZ115GR(N2SA:112m2/g)
シリカVN3:デグッサ製のウルトラジルVN3(N2SA:210m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
アロマオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノック
老化防止剤6C:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
老化防止剤RD:老化防止剤:精工化学(株)製のノンフレックスRD(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒトロキノリン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
粘着性レジン:エクソン化学(株)製のエスコレッツ1102
不溶性硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミサルファー(二硫化炭素による不溶物60%以上の不溶性硫黄、オイル分:10%)
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0052】
実施例1〜16および比較例1〜12
硫黄および加硫促進剤TBBSを除く各種薬品を、表1〜4に示す配合量にしたがって、バンバリーミキサーにて混練りした。得られた混練り物に、硫黄および加硫促進剤TBBSを表1〜4に示す配合量添加し、オープンロールにて混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物を、170℃の条件下で12分間加硫することにより、実施例1〜13および比較例1〜12の試験用ゴムシートを作製し、得られた試験用ゴムシートを用いて以下に示す試験をおこなった。表1および表2は、PC(乗用車用)タイヤおよびLT(ライトトラック)タイヤとして好ましい配合であり、表3および4はTB(トラックバス)タイヤとして好ましい配合である。
【0053】
また、前記未加硫ゴム組成物を所定の形状の口金を備えた押し出し機で押し出し成形し、チェーファー形状のゴム組成物を得、さらに、得られたゴム組成物を定法にてタイヤ成型機上で張り合わせ、タイヤローカバーを作製し、これを金型中で170℃および圧力25kgf/cm2で加硫し、試験用タイヤを作製し、以下の測定を実施した。
【0054】
以下の表1および表2は乗用車(PC)用タイヤおよびライトトラック(LT)用タイヤで使用する配合であり、ライトトラック(LT)用タイヤ(タイヤサイズ:225/70R16 117/115)を試作した。
【0055】
以下の表3および表4はトラックバス(TB)用タイヤで使用する配合であり、トラックバス(TB)用タイヤ(タイヤサイズ:11R22.5 14PR)を試作した。
【0056】
<引張試験>
前記加硫ゴム組成物からからなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定した。表1および表2では、EBが大きいほどゴム強度が優れることを示す。
【0057】
<粘弾性試験>
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動歪2%および周波数10Hzの条件下で、70℃における加硫ゴム組成物の複素弾性率E*および損失正接tanδを測定した。表1および表2では、E*が大きいほど、剛性が高く、硬度が高いことを示し、tanδが小さいほど低発熱性に優れることを示す。
【0058】
また、表3および表4では、実施例10のtanδを100として、下記計算式で指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗特性が優れる。
(転がり抵抗指数)
=(実施例10のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0059】
<リムチェーフィング性試験>
前記未加硫ゴム組成物をチェーファーの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材と貼り合わせ、未加硫タイヤを形成し、170℃および25kgf/cm2の条件下で15分間プレス加硫し、商用車用トラックタイヤ(LTタイヤ)(タイヤサイズ:225/70R16 117/115)を製造した。
【0060】
JIS規格の最大荷重(最大内圧条件)の230%荷重の条件下で、タイヤを速度20km/hで600時間ドラム走行させた後、リムフランジ接触部の摩耗深さを測定した。表1および表2では、実施例1のリムチェーフィング性指数を100とし、以下の計算式により、各配合の摩耗深さを指数表示した。なお、リムチェーフィング性指数が大きいほど、リムずれしにくく、摩耗量が少なく好ましいことを示す。
(リムチェーフィング性指数)
=(実施例1の摩耗深さ)/(各配合の摩耗深さ)×100
【0061】
<ビード耐久性試験>
特開2007−204733を参考にすることができる。試験用タイヤにおける路面と接触するトレッド部位をタイヤ残溝4mmになるまでバフ除去したのち、該試験用タイヤを8.25サイズのリムに組みこみ、まず、内圧800KPa、速度20km/hおよび加重58kNの条件で96時間、次に、内圧950kPa、速度20km/hおよび加重68kNの条件で96時間走行試験をおこなった。そのうえで、内圧1000kPa、速度20km/h、加重77kNでビードに損傷が発生するまでの時間を測定した。なお、温度25℃において試験をおこなった。
【0062】
トラックバス(TB)用タイヤにおいて、実施例10の損傷に至る走行時間(ビードの損傷発生時間)を100として、表3および表4の実施例および比較例の走行時間を指数化した。ビード耐久性の指数が100以上であれば改善効果ありと判断でき、合格であることを示す。
【0063】
<耐ゴム欠け性>
試供タイヤを、リム組み機械(油圧式タイヤチェンジャー)を用いて、JIS規格リムのアルミホイールリムにリム組み、リム外しテストを行ない、トウ欠けの有無を検査し、5段階評価を行った。なお、アルミホイールリムは、フランジが摩滅し表面削れを生じているものを用い、試供タイヤのビード部には、予め、潤滑用のペーストを薄く塗布したのち、布で拭き取りをしている。
【0064】
(総合評価)
試供タイヤについて、以下の基準で総合評価を行なった。
5:欠けなし、スムース
4:欠けなし、引っかき傷程度
3:欠け1mm以上
2:欠け5mm以上
1:欠け3cm以上
【0065】
上記評価結果を表1〜4に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を2.5〜20質量%含むブタジエンゴム(A1)を10〜60質量%、
リチウム開始剤により重合され、スズ原子の含有量が50〜3000ppm、ビニル結合量が5〜50質量%、および分子量分布が2.0以下であるスズ変性ブタジエンゴム(A2)を5〜50質量%、ならびに
ブタジエンゴム(A1)およびスズ変性ブタジエンゴム(A2)以外のジエン系ゴム(A3)を20〜75質量%含有するジエン系ゴム成分100質量部に対して、
(B)シリカを5〜30質量部含むチェーファー用ゴム組成物であって、
破断時伸びが280%以上であるチェーファー用ゴム組成物。
【請求項2】
さらに、シランカップリング剤をシリカ100質量部に対して、10質量部以下含有する請求項1記載のチェーファー用ゴム組成物。
【請求項3】
ラバーチェーファー用である請求項1または2記載のチェーファー用ゴム組成物。

【公開番号】特開2010−163154(P2010−163154A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152342(P2009−152342)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】