説明

チェーンコンベヤ装置

【課題】コンベヤチェーンの係合手段の遊びなどに起因する台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止し、水平方向に湾曲する経路でも台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止するチェーンコンベヤ装置を提供する。
【解決手段】走行レールに案内されて走行可能な台車と、走行レールの下方に設けられたガイドレールに案内されて循環駆動されるコンベヤチェーン110と、コンベヤチェーンと台車とを係合・離脱可能とする係合手段130と、コンベチェーンを駆動する駆動手段とを有し、係合手段が、コンベヤチェーンに設けられたドグ131と、台車のドグより進行方向後方側に設けられた揺動軸134に上下方向揺動可能に軸支された押え爪133と揺動軸に上下方向揺動可能に軸支されドグの進行方向前方に係合する係合爪132とを有するとともに、駆動手段がサーボモータからなることによって前記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行レールに案内されて走行可能な台車と、走行レールの下方に設けられたガイドレールに案内されて循環駆動されるコンベヤチェーンと、コンベヤチェーンと台車とを係合・離脱可能とする係合手段とを有するチェーンコンベヤ装置に関し、特に、正確な速度制御や位置決め制御が必要な組立、加工、塗装などを台車によってワークを搬送しつつ行う製造ラインの搬送手段として適したチェーンコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行レールに案内されて走行可能な台車と走行レールの下方に設けられたガイドレールに案内されて循環駆動されるコンベヤチェーンを、コンベヤチェーンと台車に設けられた係合手段により係合してコンベヤチェーンが台車を牽引搬送するチェーンコンベヤ装置が知られている。
【0003】
また、コンベヤチェーンの速度変化や張力変化、係合手段の遊びなどに起因する台車の搬送速度や位置の不規則な変動や意図しない逸走を防止するために、コンベヤチェーンの係合手段として、台車の係合手段を進行方向後側から押える押え部材を設けたチェーンコンベヤ装置が公知である。
【0004】
公知のチェーンコンベヤ装置500は、図8に示すように、チェーンリンク511の連結部両側に取付けたサイドローラ512によりガイドレール(図示されていない)に支持されて循環駆動されるコンベヤチェーン510と、走行レール(図示されていない)に支持されて走行可能な台車520と、コンベヤチェーン510と台車520とを係合する係合手段530とを有している。
【0005】
係合手段530は、コンベヤチェーン510に設けられた推進部材531と押え部材532と、台車520に設けられた係合部材521とを有している。
【0006】
推進部材531と押え部材532とは、それぞれチェーンリンク511の上部に適当な間隔をもって固定されたブラケット513、514にピン515により傾動自由に枢支されており、また、それぞれ重錘部533により互いにハ字形に向き合う係合位置に保持されている。
【0007】
係合部材521は、台車520の下部に取付けられ、係合部材521の後面に推進部材531の先端が当って台車520が押送され、係合部材521の前面下部に押え部材532の先端面が接して台車520の逸走を防止している(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−150415号のマイクロフィルム(特に、第4−6頁、図1乃至図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような公知の従来のチェーンコンベヤ装置500は、コンベヤチェーン510側の係合手段530である推進部材531と押え部材532が異なるチェーンリンク511に設けられているため、チェーンリンク511間の不可避の隙間の影響で推進部材531と押え部材532との間隔の精度が低く、依然としてコンベヤチェーン510の速度変化や張力変化、係合手段の遊びなどに起因する台車520の搬送速度や位置の不規則な変動が生じるという課題があった。これは、所定の場所に一定時間間隔で台車520を搬送するいわゆる定ピッチタクト搬送を行うときに、特に重大な課題であった。
【0010】
また、コンベヤチェーン510が水平に湾曲した場合、異なるチェーンリンク511に設けられた推進部材531と押え部材532との間隔がさらに大きく変動することになるため、水平方向に湾曲する経路を有するチェーンコンベヤ装置500には適用できないという課題があった。
【0011】
また、チェーンコンベヤ装置500をロボット塗装に適用する場合、高精度の停止制御が必要とされるため、位置決め制御手段及びセンサーが必要であり装置構成が複雑になるとともに、この位置決め制御手段及びセンサーに塗料がこびりついて誤動作が発生したり、メンテナンス作業負担が増大するという課題があった。
【0012】
また、台車520と係合手段530との位置決めに時間が掛かるため搬送時間が長期化するという課題があった。
【0013】
さらに、複数の循環駆動されるコンベヤチェーンを直列に並べて、異なる工程を連続して行う場合、一つの工程の台車が搬送路の終端に到達するとワークを次の工程の台車に移し替え、空になった台車はコンベヤチェーンを逆回転させて搬送路の始端に戻す必要があり、搬送時間が長期化するとともにランニングコストが増大するという課題があった。
【0014】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、コンベヤチェーンの速度変化や張力変化、係合手段の遊びなどに起因する台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止し、水平方向に湾曲する経路でも台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止する定ピッチタクト搬送を行うチェーンコンベヤ装置を提供することである。
【0015】
また、本発明のさらなる目的は、位置決め制御手段やセンサを不要とし、装置構成を簡略化するとともに、誤動作が少なく、メンテナンス作業負担が軽いチェーンコンベヤ装置を提供することである。
【0016】
また、本発明のさらなる目的は、複数の循環駆動されるコンベヤチェーンを直列に並べて、異なる工程を連続して行う場合、各コンベヤチェーンの搬送精度を高めることにより、各コンベヤチェーン間における台車の乗り継ぎを可能とし、いわゆる定ピッチタクト搬送に適したチェーンコンベヤ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
まず、本請求項1に係る発明は、走行レールに案内されて走行可能な台車と、前記走行レールの下方に設けられたガイドレールに案内されて循環駆動されるコンベヤチェーンと、該コンベヤチェーンと前記台車とを係合・離脱可能とする係合手段と、前記コンベチェーンを駆動する駆動手段とを有する定ピッチタクト搬送を行うチェーンコンベヤ装置において、前記係合手段が、前記コンベヤチェーンに設けられたドグと、前記台車の前記ドグより進行方向後方側に設けられた揺動軸に上下方向揺動可能に軸支された押え爪と、前記揺動軸に上下方向揺動可能に軸支され前記ドグの進行方向前方に係合する係合爪とを有することにより、前述した課題を解決したものである。
【0018】
また、本請求項2に係る発明は、請求項1に係るチェーンコンベヤ装置において、前記ドグが、前記係合爪との係合時に前記押え爪の先端の揺動軌道とほぼ相似の形状を有することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0019】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係るチェーンコンベヤ装置において、前記係合爪が、前記押え爪の揺動下限を規制する押え爪ストッパを有することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0020】
また、本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置において、前記ガイドレールが、前記コンベヤチェーンと前記台車との係合を開始する領域において前記走行レールとの間隔が徐々に狭くなるように配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0021】
また、本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置において、前記台車が、前記係合爪の揺動下限を規制する係合爪ストッパを有することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0022】
また、本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置において、前記駆動手段が、サーボモータからなることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
ここで、サーボモータは、回転検出器(エンコーダ)を組み込んだモータであって、このエンコーダでモータ軸の回転角度や回転速度を検知して、指定パルスと比較指定フィードバック制御を行うことにより、停止精度・位置決め精度が高く、指定位置で精度良く止まることができるという特徴を有している。
【0023】
また、本請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置において、前記コンベヤチェーンが、ニードルブシュチェーンであることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
ここで、ニードルブシュチェーンは、チェーンのローラとブシュとの間に複数の転動体(ニードル)を組み込んだチェーンであって、運転開始時にわずかに初期摩耗伸びが発生するものの、その後の摩耗伸びが発生しないという特徴を有している。
【発明の効果】
【0024】
本発明のチェーンコンベヤ装置は、走行レールに案内されて走行可能な台車と、走行レールの下方に設けられたガイドレールに案内されて循環駆動されるコンベヤチェーンと、コンベヤチェーンと台車とを係合・離脱可能とする係合手段と、コンベヤチェーンを駆動する駆動手段とを有することによって、個別の台車に駆動装置や制御装置を設けることなく、搬送区間に応じた搬送速度や位置の制御が可能となるとともに、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0025】
すなわち、本請求項1に係るチェーンコンベヤ装置によれば、係合手段が、コンベヤチェーンに設けられたドグと、台車のドグより進行方向後方側に設けられた揺動軸に上下方向揺動可能に軸支された押え爪と、揺動軸に上下方向揺動可能に軸支されドグの進行方向前方に係合する係合爪とを有するとともに、駆動手段が、サーボモータからなることによって、台車側の係合手段である係合爪と押え爪の間隔を高精度に配置できるため、コンベヤチェーンの速度変化や張力変化、係合手段の遊びなどに起因する台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止できるとともに、コンベヤチェーン側の係合手段であるドグが一つのチェーンリンクに設けられ、水平方向の湾曲によっても係合爪と押え爪との間隔が変化しないため、水平方向に湾曲する経路でも台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止することができ、定ピッチタクト搬送が可能となる。
【0026】
また、本請求項2に係るチェーンコンベヤ装置によれば、請求項1に係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、ドグが、係合爪との係合時に押え爪の先端の揺動軌道とほぼ相似の形状を有することによって、ドグと係合爪が接近して係合が完了するまでは押え爪がドグと干渉することはなく、係合が完了した時に押え爪が後方を押えることとなるため、係合手段の遊びがさらに少なくなり、係合手段の遊びなどに起因する台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止できる。
【0027】
また、本請求項3に係るチェーンコンベヤ装置によれば、請求項1または請求項2に係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、係合爪が、押え爪の揺動下限を規制するストッパを有することによって、押え爪が係合爪に設けられたストッパにより係合爪に対する揺動下限が規制されるため、係合開始時などにドグが円滑に通過することができ、コンベヤチェーンの速度変化や張力変化を減少させることができる。
【0028】
また、本請求項4に係るチェーンコンベヤ装置によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、ガイドレールが、コンベヤチェーンと台車との係合を開始する領域において走行レールとの間隔が徐々に狭くなるように配置されていることによって、ドグが下方に揺動した係合爪と当接して徐々に搬送時の位置まで上昇することとなるため、円滑に係合爪に当接することができるとともに、押え爪を確実にドグの後方に位置させることができ、コンベヤチェーンの速度変化や張力変化を減少させることができる。
【0029】
さらに、本請求項5に係るチェーンコンベヤ装置によれば、請求項1乃至請求項4のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、台車が、係合爪の揺動下限を規制する係合爪ストッパを有することによって、ドグが係合爪に係合する前に係合爪が上方に揺動する量が減少し、ドクと係合爪とが円滑に当接係合できるとともに、係合爪に設けられた押え爪ストッパに規制された押え爪の揺動下限も規制されるため、ドグが押え爪を通過する際に上方に揺動する量も減少するため円滑に係合爪に当接することができ、コンベヤチェーンの速度変化や張力変化を減少させることができる。
【0030】
また、本請求項6に係るチェーンコンベヤ装置によれば、請求項1乃至請求項5のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、駆動手段が、サーボモータからなることによって、コンベヤチェーンの高精度の停止制御が可能になるため、位置決め制御手段やセンサが不要となり、装置構成の簡略化が実現できるとともに、誤動作の減少、メンテナンス作業負担の軽減が実現できる。
【0031】
そして、本請求項7に係るチェーンコンベヤ装置によれば、請求項1乃至請求項6のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、コンベヤチェーンが、ニードルブシュチェーンであることをにより、コンベヤチェーンに摩耗伸びが発生しないため、複数の循環駆動されるコンベヤチェーンを直列に並べて、異なる工程を連続して行う場合、各コンベヤチェーンの搬送精度が向上し、各コンベヤチェーン間における台車の乗り継ぎが可能となり、タクト搬送に適したチェーンコンベヤ装置が実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明のチェーンコンベヤ装置は、走行レールに案内されて走行可能な台車と、走行レールの下方に設けられたガイドレールに案内されて循環駆動されるコンベヤチェーンと、コンベヤチェーンと台車とを係合・離脱可能とする係合手段と、コンベチェーンを駆動する駆動手段とを有し、係合手段が、コンベヤチェーンに設けられたドグと、台車のドグより進行方向後方側に設けられた揺動軸に上下方向揺動可能に軸支された押え爪と、揺動軸に上下方向揺動可能に軸支されドグの進行方向前方に係合する係合爪とを有するものであって、コンベヤチェーンの速度変化や張力変化、係合手段の遊びなどに起因する台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止し、水平方向に湾曲する経路でも台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止し、定ピッチタクト搬送を可能とするものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0033】
例えば、本発明のチェーンコンベヤ装置は、台車の上にワークが支持されるワーク持ち上げ型コンベヤ装置として用いられるものでも、台車の下にワークが吊り下げられるワーク吊り下げ型コンベヤ装置として用いられるものであっても、搬送動作及びコンベヤチェーンと台車との係合・離脱動作に何ら支障はない。
【0034】
また、本発明のチェーンコンベヤ装置は、いかなる用途に用いられるものでも良く、特に、正確な速度や位置決めが必要な前処理、吹き付け、乾燥などの工程を搬送しつつ連続して行う定ピッチタクト搬送方式のロボット塗装ラインに用いるのが好適である。
【実施例】
【0035】
本発明の一実施例を図1乃至図7に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例であるチェーンコンベヤ装置の全体側面図であり、図2は、図1のII部を拡大した側面図であり、図3は、図1のIII−III線における断面図であり、図4は、本実施例のチェーンコンベヤ装置の係合開始領域での係合開始時の説明図であり、図5は、本実施例のチェーンコンベヤ装置の係合開始領域での係合途中の説明図であり、図6は、本実施例のチェーンコンベヤ装置の係合開始領域での係合完了時の説明図であり、図7は、本実施例のチェーンコンベヤ装置の離脱領域での係合解除時の説明図である。
【0036】
本発明の一実施例であるチェーンコンベヤ装置100は、図1乃至図3に示すように、走行レール101に案内されて走行可能な台車120と走行レール101の下方に設けられたガイドレール102に案内されて循環駆動されるコンベヤチェーン110とを、コンベヤチェーン110と台車120とを係合・離脱可能とする係合手段130により係合して、コンベヤチェーン110が台車120を牽引搬送するように構成されている。
【0037】
走行レール101とガイドレール102の間隔は、コンベヤチェーン110と台車120との係合を開始する係合開始領域L1において徐々に狭くなり、搬送領域L2では並行であり、コンベヤチェーン110と台車120との係合を解除する離脱領域L3において徐々に広くなるように配置されている。
【0038】
走行レール101は、図3に示すように、開放辺を対向させて配置した一対の断面コ字状のレールからなり、ガイドレール102は、少なくとも係合開始領域L1から離脱領域L3まで開放辺を対向させて配置した一対の断面コ字状のレールからなる。
【0039】
台車120は、図1に示すように、係合手段130を有する前方台車121と搬送物保持手段123を有する後方台車122とが連結手段124を介して水平方向に屈曲可能に連結され、コンベヤチェーン110に係合手段130により係合された前方台車121が後方台車122を牽引するように構成されている。
【0040】
前方台車121および後方台車122は、図2、図3に示すように、前後に走行レール101の断面コ字状の内部を走行する走行ローラ125と走行レール101の対向している開放辺間に台車120の走行方向に対して垂直に軸支されたガイドローラ126とを備え、走行レール101に沿って走行するように構成されている。
【0041】
コンベヤチェーン110は、多数のチェーンリンク111がピン115により屈曲可能に無端状に連結され、ピン115の両側部にサイドローラ112が設けられ、サイドローラ112がガイドレール102の断面コ字状の内部を走行することで、少なくとも係合開始領域L1から離脱領域L3まではガイドレール102に沿って駆動されるよう構成されている。このコンベヤチェーン110は、図1に示すように、従動スプロケット182と駆動スプロケット184との間に掛架され、無端循環状の軌道を形成している。そして、駆動スプロケット184の回転軸に連結されているサーボモータ170によって、コンベヤチェーン100に対して高精度な速度制御と停止制御が行われる。
【0042】
そして、このコンベヤチェーン110に、ローラとブシュとの間に複数の転動体(ニードル)を組み込んだニードルブシュチェーンを用いることにより、チェーン伸びに起因する位置ずれを低減している。そして、前述したサーボモータ170による高精度な停止制御との相乗効果により、これまでロボット塗装に要求される停止精度を実現するために不可欠であった台車停止用のストッパが不要となった。
【0043】
係合手段130は、図2、図3に示すように、コンベヤチェーン110の適宜の間隔毎のチェーンリンク111の台車側に固定的に立設されたドグ131と、前方台車121に揺動軸134を介して上下方向に揺動可能に設けられた係合爪132および押え爪133を有している。
【0044】
係合爪132は、前方台車121に設けられた係合爪ストッパ135によって揺動下限が規制されており、押え爪133は、係合爪132に設けられた押え爪ストッパ137によって揺動下限が規制されている。
【0045】
なお、本実施例では台車120は、前方台車121と後方台車122を有しているが、当然、1つの台車が係合手段と搬送物保持手段の両方を備えていても良い。以降、台車120と表記して説明する。
【0046】
次に、係合手段130の各構成の詳細について図2乃至図7に基づいて説明する。
係合爪132は、台車120に設けられた揺動軸134に軸支されて前方に延びて先端部が下方に屈曲しドグ131と係合する形状であり、前方に伸びた部分の係合爪下面152と下方に屈曲した部分の係合面151は、鋭角β(図2参照)をなすように構成されている。また、前方に伸びた部分の上方には係合爪揺動規制部138が設けられ、台車120に設けられた係合爪ストッパ135に当接して係合爪132の台車120に対する揺動下限が規制されている。さらに、係合爪132の下方に屈曲した部分の先端には、搬送方向の左右に突出した押上部136が形成されている。
【0047】
押え爪133は、台車120に設けられた揺動軸134に軸支されて前方に延び、係合爪132の後端面が押え爪ストッパ137として機能し、押え爪133の後端面が押え爪ストッパ137に当接して押え爪133の係合爪132に対する揺動下限が規制されている。
【0048】
ドグ131は、チェーンリンク111の台車120側に固定的に立設され、ドグ上面142は、チェーンリンク111のピン115を結ぶ線と平行な平面、係合爪132と当接するドグ前面141は、ドグ上面142と鋭角の平面、押え爪133と当接するドグ後面143は、ドグ上面142と鈍角で押え爪133の先端の円弧軌跡に相似する曲面をなしている。
【0049】
なお、図6に示すように、ドグ前面141とドグ上面142の成す鋭角β(図2参照)は、係合爪下面152と係合面151の成す鋭角α(図2参照)よりも小さく、かつ、両者の角部分はそれぞれR形状に形成されている。
【0050】
次に、係合手段130の係合及び解除の動作について、図4乃至図7に基づいて説明する。
【0051】
まず、係合開始領域L1の始点、すなわち、コンベヤチェーン110のピン115の中心線と台車120に設けられた揺動軸134の中心線の距離が最も離れたR1である位置で、台車120の係合爪132に向かって、ドグ131がコンベヤチェーン110の駆動により上流(図面左側)から接近する。
【0052】
ドグ131は、接近時に押え爪133をわずかに上方に揺動させて通過し、ドグ前面141が係合爪132の係合面151と当接して、図4に示す状態となる。
このとき、コンベヤチェーン110のピン115の中心線と台車120に設けられた揺動軸134の中心線の距離が離れており、かつ、押え爪133の揺動下限が押え爪ストッパ137により規制されているため、ドグ131が押え爪133と接触するときの衝撃は極めて小さい。
【0053】
そして、ドグ131が進行(図面右方向)すると、ドグ131が係合爪132を推進して台車120は、係合開始領域L1の中間点に至り図5に示す状態となる。
このとき、コンベヤチェーン110のピン115の中心線と台車120に設けられた揺動軸134の中心線の距離は徐々に狭まってR2となり、この間、ドグ131は、前進するとともに上昇するが、ドグ前面141とドグ上面142の成す鋭角α(図2参照)は、係合爪下面152と係合面151の成す鋭角β(図2参照)よりも小さく、ドグ131が係合爪132に及ぼす推進力は、係合爪132を下方向に揺動させる分力を発生させるため、ドグ131と係合爪132の係合が外れることはない。
【0054】
また、ドグ131の上昇に伴い、押え爪133の先端は、ドグ131に接近するが、ドグ後面143は、ドグ上面142と鈍角であるとともに押え爪133の先端の円弧軌跡に相似する曲面をなしているため、押え爪133がドグ131と接触することはない。
【0055】
さらに、ドグ131が進行(図面右方向)すると、ドグ131が係合爪132を推進して台車120は係合開始領域L1の最終点に至り、図6に示す状態となる。
このとき、コンベヤチェーン110のピン115の中心線と台車120に設けられた揺動軸134の中心線の距離は徐々に狭まってR3となり、この間、ドグ131は前進するとともに上昇し最終的にドグ上面142と係合爪下面152が当接する。
【0056】
そして、ドグ131の上昇に伴い、押え爪133の先端はドグ131にさらに接近し、押え爪133の先端がドグ後面143に当接してドグ131を進行方向の後方から押さえて係合手段130の遊びをなくす。なお、製造時の寸法誤差により、押え爪133の先端は、図6の実線で示す位置で僅かな間隔を有すること、あるいは、点線で示す位置でドグ後面143と当接することもあり得るが、いずれも、係合手段の遊びが極めて少なくなり、遊びなどに起因する台車120の搬送速度や位置の不規則な変動を防止できるという効果を奏するものである。
【0057】
係合開始領域L1に続く搬送領域L2においては、図6に示す状態でドグ131と係合爪132が係合し、押え爪133の先端がドグ131を進行方向の後方から押さえて、台車120がコンベヤチェーン110を駆動することにより台車120が円滑に牽引搬送される。
【0058】
離脱領域L3における係合手段130の係合の解除は、係合開始領域L1での係合動作とは逆に、離脱領域L3の始点では図6の状態であり、ドグ131が進行(図面右方向)すると、ドグ131が係合爪132を推進して台車120は離脱領域L3の中間点に至り図5に示す状態となり、さらに、ドグ131が進行(図面右方向)すると、ドグ131が係合爪132を推進して台車120は離脱領域L3の最終点に到り、図4に示す状態となる。
【0059】
そして、図7に示すように、コンベヤチェーン110のピン115の中心線と台車120に設けられた揺動軸134の中心線の距離が最も離れたR1である位置で、係合解除部材160により係合爪132の先端に設けられた押上部136を上方に押し上げて係合爪132を上方に揺動させることで、係合爪132とドグ131の係合を解除する。
このとき、図4に示すように、ドグ131は係合爪132に対して下降した位置にあり、押え爪133の先端はドグ131から離れた位置にあるため、係合爪132を上方に揺動させる際に押え爪133が係合爪132とともに上方に揺動してもドグ131に干渉することはない。
【0060】
コンベヤチェーン110から係合を解除された台車120は、乗り継ぎ領域L4をプッシャー機構(図示はされていない)に誘導されて移動して、隣接するコンベヤチェーン110の係合開始領域L1において、前述したのと同様の動作により、台車120とコンベヤチェーン110とが係合手段130により係合する。したがって、離脱領域L3の最終点に到った台車120からワークを取り外し、空になった台車120を係合開始領域L1の始点に戻すという作業が不要になり、搬送時間の大幅な短縮が実現できる。
【0061】
なお、本実施例では、離脱領域L3における係合手段130の係合の解除を離脱領域L3の最終点で行っているが、ドグ131が係合爪132に対してある程度下降し、係合爪132を上方に揺動させる際に押え爪133が係合爪132とともに上方に揺動してもドグ131に干渉しない位置であれば、離脱領域L3の中間点であっても良い。
また、係合解除部材160は、上下に移動し選択的に任意の台車120の係合を解除するものでも良く、経路上に固定的に設けられて台車120の走行に伴い自動的にすべての台車120の係合を解除するものであっても良い。
【0062】
以上のように、本発明のチェーンコンベヤ装置は、走行レールに案内されて走行可能な台車と、走行レールの下方に設けられたガイドレールに案内されて循環駆動されるコンベヤチェーンと、コンベヤチェーンと台車とを係合・離脱可能とする係合手段とを有し、係合手段が、コンベヤチェーンに設けられたドグと、台車に設けられドグの進行方向前方に係合する係合爪と、台車のドグより進行方向後方側に設けられた揺動軸により上下方向揺動可能に設けられた押え爪とを有していることにより、コンベヤチェーンの速度変化や張力変化、係合手段の遊び等に起因する台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止でき、水平方向に湾曲する経路でも台車の搬送速度や位置の不規則な変動を防止でき、定ピッチタクト搬送に好適に用いられる。
【0063】
加えて、本発明のチェーンコンベヤ装置は、コンベヤチェーンとしてチェーン伸びがないニードルブシュチェーンを採用するとともに、コンベヤチェーンを高精度に速度制御・停止制御が可能なサーボモータで駆動しているため、ストッパを用いることなく停止精度を飛躍的に向上させ、誤動作の低減、メンテナンス作業負担の軽減、隣接して配置されたコンベヤチェーンの無端循環軌道間での台車の円滑な乗り継ぎを可能にするなど、その効果は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施例であるチェーンコンベヤ装置の全体側面図。
【図2】図1のII部を拡大した側面図。
【図3】図1のIII−III線における断面図。
【図4】本発明の係合開始領域での係合開始時の説明図。
【図5】本発明の係合開始領域での係合途中の説明図。
【図6】本発明の係合開始領域での係合完了時の説明図。
【図7】本発明の離脱領域での係合解除時の説明図。
【図8】従来のチェーンコンベヤ装置の全体側面図。
【符号の説明】
【0065】
100、500 ・・・チェーンコンベヤ装置
101 ・・・走行レール
102 ・・・ガイドレール
110、510 ・・・コンベヤチェーン
111、511 ・・・チェーンリンク
112、512 ・・・サイドローラ
513 ・・・ブラケット
514 ・・・ブラケット
115、515 ・・・ピン
120、520 ・・・台車
121 ・・・前方台車
122 ・・・後方台車
123 ・・・搬送物保持手段
124 ・・・連結手段
125 ・・・走行ローラ
126 ・・・ガイドローラ
521 ・・・係合部材
130、530 ・・・係合手段
131 ・・・ドグ
132 ・・・係合爪
133 ・・・押え爪
134 ・・・揺動軸
135 ・・・係合爪ストッパ
136 ・・・押上部
137 ・・・押え爪ストッパ
138 ・・・係合爪揺動規制部
531 ・・・推進部材
532 ・・・押え部材
533 ・・・重錘部
141 ・・・ドグ前面
142 ・・・ドグ上面
143 ・・・ドグ後面
151 ・・・係合面
152 ・・・係合爪下面
103 ・・・係合開始領域
104 ・・・搬送領域
105 ・・・離脱領域
160 ・・・係合解除部材
170 ・・・サーボモータ
182 ・・・従動スプロケット
184 ・・・駆動スプロケット
L1 ・・・係合開始領域
L2 ・・・搬送領域
L3 ・・・離脱領域
L4 ・・・乗り継ぎ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールに案内されて走行可能な台車と、前記走行レールの下方に設けられたガイドレールに案内されて循環駆動されるコンベヤチェーンと、該コンベヤチェーンと前記台車とを係合・離脱可能とする係合手段と、前記コンベチェーンを駆動する駆動手段とを有する定ピッチタクト搬送を行うチェーンコンベヤ装置において、
前記係合手段が、前記コンベヤチェーンに設けられたドグと、前記台車の前記ドグより進行方向後方側に設けられた揺動軸に上下方向揺動可能に軸支された押え爪と、前記揺動軸に上下方向揺動可能に軸支され前記ドグの進行方向前方に係合する係合爪とを有することを特徴とするチェーンコンベヤ装置。
【請求項2】
前記ドグが、前記係合爪との係合時に前記押え爪の先端の揺動軌道とほぼ相似の形状を有することを特徴とする請求項1に記載のチェーンコンベヤ装置。
【請求項3】
前記係合爪が、前記押え爪の揺動下限を規制する押え爪ストッパを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーンコンベヤ装置。
【請求項4】
前記ガイドレールが、前記コンベヤチェーンと前記台車との係合を開始する領域において前記走行レールとの間隔が徐々に狭くなるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーンコンベヤ装置。
【請求項5】
前記台車が、前記係合爪の揺動下限を規制する係合爪ストッパを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のチェーンコンベヤ装置。
【請求項6】
前記駆動手段が、サーボモータからなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のチェーンコンベヤ装置。
【請求項7】
前記コンベヤチェーンが、ニードルブシュチェーンであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のチェーンコンベヤ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−285248(P2010−285248A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140159(P2009−140159)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】