説明

チェーン分別装置

【課題】効率的かつ安全にチェーンを分別することのできるチェーン分別装置の提供を目的とする。
【解決手段】チェーン分別装置1は、スプロケット2、チェーンガイド3、スプロケット駆動手段4,スプロケット位置決め手段5、ピン押し出し手段6、受け板7、制御手段(図示せず)及び作業台8などを備え、チェーンリンク11及びリンクピン12を有するチェーン10を分別する構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーン分別装置に関し、特に、効率的かつ安全にチェーンを分別することのできるチェーン分別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器製造工程において、製品や半製品を搬送する際、特にペットボトルの前駆体であるプリフォームを搬送する際に、大量のプラスチック製チェーンが使用されている。上記のプラスチック製チェーンは、後述するように、樹脂製のチェーンリンク(本体部材)及び金属製のリンクピン(連結部材)を有している。
【0003】
(従来の分別方法)
ところで、昨今、環境への取り組みが重要視されており、産廃量の削減や資源の再利用のため、廃棄部品などについて、材料毎の資源分別が求められている。
このため、上記のプラスチック製チェーンが摩耗等の原因で廃棄される際、このチェーンを切断(チェーンは、リンクピンを抜くことにより切断される。)して、各要素を分別することが求められるが、上記のプラスチック製チェーンは簡易な構成であるため、その数量が少ない場合には、作業者がハンマー及びポンチ等を用い、一対のチェーンリンクを連結しているリンクピンを打ち抜いて各要素を分別していた。
【0004】
次に、本発明に関連する技術について説明する。
例えば、特許文献1には、所定の間隔をもって歯を形成した治具と、該治具の中央には2個の貫通孔を設けた受け治具を、チェーンを装着するに必要な僅かな隙間を残して上方へ突出し、各治具をホルダーに固定した固定治具と、該固定治具の反対側には、ネジ又は空圧、油圧等により上記貫通孔に進入する2本の押圧ピンを平行に配置した移動治具から成るチェーン切断装置の技術が開示されている。
この技術は、上記固定治具を円弧状治具としたことを特徴としている。
【0005】
また、特許文献2には、ピンリンク、ブッシュリング等を連結して長尺に編成したチェーンを所望の長さに切断するピンリンク分解装置の技術が開示されている。
この技術は、チェーンが通過する分解室のチェーン窓に、チェーンのバレル部に当接する往復自在のホークと、チェーンのピンに当接する往復自在のポンチとを互いに直交するように配設し、ホークの対向側に降下窓を開口し、ポンチの対向側に投下窓を開口したことを特徴としている。
【0006】
また、特許文献3には、離間して配置された一対のスプロケット部材とこれらのスプロケット部材のスプロケット車に巻き掛けられたエンドレスのチェーンとを有し、チェーンがリンクピンによって連結された複数のチェーンリンクからなるチェーンカップリングの分解組立装置の技術が開示されている。
この技術は、チェーンに装着されるピン支持体を備え、該ピン支持体が、チェーンの側面を覆う壁部と、該壁部に設けられた作業孔と、チェーンに装着したときに作業孔をリンクピンに一致させる位置決め部とを備えていることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−3569号公報
【特許文献2】特開昭62−88524号公報
【特許文献3】特開2004−82305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したチェーンの分別作業において、廃棄されるチェーンの量が膨大(例えば、数万リンク)になると、直径およそ数mmのリンクピンとポンチの手作業による位置合わせや、切断後の分別作業に非常に長い時間を要し、さらに、長時間の単純作業による注意力欠如等によって、作業者が指をハンマーで打ってしまうといった恐れもあり、作業効率と安全性の向上が望まれていた。
【0009】
なお、特許文献1〜3の技術は、本発明に関連する技術ではあるものの、上記の要望に応えることができない技術であった。
すなわち、対象となる全てのチェーンをチェーンリンク及びリンクピンに分別することが望まれているところ、特許文献1、3の技術は、無端状に取り付けられたチェーンの1カ所を切断するものであり、チェーンを連続的に(効率よく)分別できない技術であった。また、特許文献2の技術は、長尺状に製造されたチェーンを所定長さで切り出すものであり、連続的に一つずつ分別することもできるが、下流側のチェーン(すなわち、下流側の端部のチェーン)を分別できない構造となっており、本発明の目的を達成できない技術であった。
【0010】
本発明は、以上のような要望に応えるために提案されたものであり、効率的かつ安全にチェーンを分別することのできるチェーン分別装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のチェーン分別装置は、チェーンをチェーンリンク及びリンクピンに分別するチェーン分別装置であって、前記チェーンを巻き込むとともに、所定の分別位置に供給するスプロケットと、前記チェーンが通過可能な間隙を有するように、前記スプロケットの歯の外方向に配置されるチェーンガイドと、前記スプロケットを間欠回転可能とするスプロケット駆動手段と、前記スプロケットの停止状態において、前記所定の分別位置と対応するように、前記スプロケットを位置決めするスプロケット位置決め手段と、前記所定の分別位置の前記チェーンのリンクピンを押し出すピンを往復移動させるピン押し出し手段とを備えた構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチェーン分別装置によれば、効率的かつ安全にチェーンを分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置を説明するための要部の概略平面図を示している。
【図2】図2は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置を説明するための要部の概略正面図を示している。
【図3】図3は、図2のA−A拡大矢視図を示している。
【図4】図4は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置のピン押し出し手段の要部の概略分解図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の開始時の巻き込み動作を説明するための要部の概略図を示している。
【図6】図6は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の連続運転中の押し出し動作を説明するための要部の概略図を示している。
【図7】図7は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の連続運転中の巻き込み動作を説明するための要部の概略図を示している。
【図8】図8は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の連続運転中の押し出し動作を説明するための要部の概略図を示している。
【図9】図9は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の終了時の巻き込み動作を説明するための要部の概略図を示している。
【図10】図10は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の終了時の排出動作を説明するための要部の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[チェーン分別装置の実施形態]
図1、2において、本実施形態のチェーン分別装置1は、スプロケット2、チェーンガイド3、スプロケット駆動手段4、スプロケット位置決め手段5、ピン押し出し手段6、受け板7、制御手段(図示せず)及び作業台8などを備えた構成としてある。このチェーン分別装置1は、チェーン10をチェーンリンク11及びリンクピン12に分別する。
【0015】
(チェーン)
まず、分別の対象となっているチェーン10は、樹脂製のチェーンリンク11及び金属製のリンクピン12を有するプラスチック製チェーンとしてある(図5参照)。また、リンクピン12は、一対のチェーンリンク11に圧入されており、圧入されたリンクピン12を押し出すには、例えば、10kgfの力が必要である。このチェーン10は、市販されており、例えば、株式会社椿本チェインのRSPプラチェーンなどが挙げられる。
なお、チェーン10は、プラスチック製チェーンとしてあるが、これに限定されるものではなく、例えば、異なる材質からなるチェーンリンク及びリンクピンを有し、これらの材質に応じて分別する必要のあるチェーンであってもよい。
【0016】
(スプロケット)
図3は、図2のA−A拡大矢視図を示している。
図3において、本実施形態のスプロケット2は、チェーン10と噛み合う歯を有しており、歯数を20としてある。なお、歯数は、20に限定されるものではない。
このスプロケット2は、スプロケット駆動手段4によって、回転と停止を繰り返すように、間欠的に回転する。スプロケット2は、回転しているとき、チェーン投入用ガイド33の上面をスライドするチェーン10を巻き込み、該巻き込まれたチェーン10を所定の分別位置に供給する。また、スプロケット2は、巻き込んだチェーン10に対して、周方向の位置及び径方向の内側への位置を規制している。
ここで、所定の分別位置とは、スプロケット2に巻き込まれたチェーン10のリンクピン12が、ピン押し出し手段6のピン61と対応する位置をいう。
【0017】
(チェーンガイド)
チェーンガイド3は、ブロック状の上部チェーンガイド31及び下部チェーンガイド32を有しており、上部チェーンガイド31及び下部チェーンガイド32は、所定の曲率半径を有する側面を有している。ここで、所定の曲率半径とは、スプロケット2に巻き込まれたチェーン10の外周側の面に対して、微小距離(例えば、0.数mm)の隙間を有する半径をいう。これにより、チェーンガイド3(本実施形態では、上部チェーンガイド31及び下部チェーンガイド32)は、チェーン10が通過可能な間隙を有するように、スプロケット2の歯の外方向に沿って配置され、チェーン10を所定の分別位置に位置決めする。すなわち、チェーンガイド3は、巻き込んだチェーン10に対して、径方向の外側への位置を規制する。
【0018】
また、上部チェーンガイド31及び下部チェーンガイド32は、受け板7に固定されており、図3に示すように、上部チェーンガイド31は、スプロケット2の図中左側かつ上側の部分に対応しており、下部チェーンガイド32は、スプロケット2の左側かつ下側の部分に対応している。
なお、本実施形態のチェーンガイド3は、上部チェーンガイド31及び下部チェーンガイド32を有する構成としてあるが、これに限定されるものではなく、例えば、図示してないが、一体的に形成されたチェーンガイドとしてもよい。また、巻き込んだチェーン10の径方向外側への位置を規制するのであれば、本実施形態のチェーンガイド3のようなブロック状に限定されず、レール等を用いてもよい。
【0019】
また、チェーン分別装置1は、スプロケット2に巻き込まれるチェーン10をガイドする部材として、チェーン投入用ガイド33を有している。チェーン投入用ガイド33は、細長い板状であり、平板部及び湾曲部を有しており、受け板7に固定されている。このチェーン投入用ガイド33は、チェーン10を載置する状態でガイドし、チェーン10は、チェーン投入用ガイド33の上面をスライドしながら移動する。
【0020】
また、チェーン分別装置1は、図1、2に示すように、分別されるチェーン10(図1、2には、図示せず)が巻かれた状態で保持可能なチェーンホルダ83を有している。チェーンホルダ83は、一対の円板及びこれらを連結する筒状部材を有しており、フレーム81に軸支された軸に、着脱自在に取り付けられる。これにより、チェーン10は、円滑にチェーン投入用ガイド33に供給される。
なお、チェーンホルダ83は、上記の使用方法に限定されるものではなく、例えば、分別されるチェーン10をガイドするために使用されてもよい。すなわち、チェーンホルダ83は、チェーン10が収められた箱(図示せず)とチェーン投入用ガイド33とに間に位置しており、箱からのチェーン10が掛けられることにより、チェーン10を円滑にチェーン投入用ガイド33に供給することができる。
【0021】
(スプロケット駆動手段)
スプロケット駆動手段4は、図1、2に示すように、スプロケット用軸41、軸受42、円板43、センサ44、モータ45及び電磁クラッチ46などを有している。
スプロケット用軸41は、一方の端部がスプロケット2と連結され、ほぼ中央部が軸受42によって軸支され、他方の端部が電磁クラッチ46の従動側部分と連結され、さらに、中央部と他方の端部との間には、円板43が取り付けられている。
軸受42は、リブを介して受け板7に固定された取り付け板の下面に螺着されており、スプロケット用軸41を回転可能に支持している。
円板43は、スプロケット用軸41に取り付けられ、図示してないが、スプロケット2の停止タイミングを検出するため、等間隔で周縁部に複数の溝(本実施形態では、90°ピッチで形成された四つの溝としてある。)が配設されている。
【0022】
センサ44は、円板43の溝を検出する光電センサとしてあり、取り付け部材を介して基板82に取り付けられている。このセンサ44は、制御手段と接続されており、前記溝を検出すると検出信号を制御手段に出力する。
モータ45は、ギア付きモータとしてあり、取り付け台を介して基板82に取り付けられている。このモータ45は、主軸が電磁クラッチ46の駆動側部分と連結されており、スプロケット用軸41にトルクを伝達する。このモータ45は、運転開始スイッチがONの状態において、所定の速度で回転し続ける。
電磁クラッチ46は、スプロケット用軸41の他方の端部とモータ45の主軸とを連結しており、また、図示しない制御手段と接続されており、制御手段からの連結解除信号を入力している間、連結を解除する。これにより、モータ45からスプロケット2に伝達するトルクが遮断され、スプロケット2は回転を停止する。なお、本実施形態では、円板43の溝をセンサ44で検出しているが、これに限定されることはなく、例えばスプロケット用軸41の回転数を計測する、あるいはスプロケット2の歯に検出用マークを付け、該マークを検出することで、同様の効果を得ることが出来る。
【0023】
(スプロケット位置決め手段)
スプロケット位置決め手段5は、図3に示すように、スプロケット2の歯と係合する係合部材51、及び、この係合部材51を往復移動させる係合部材用移動手段52(本実施形態では、エアシリンダとしてある。)を有し、スプロケット2の停止状態において、スプロケット2を所定の分別位置と対応するように位置決めする。係合部材用移動手段52は、受け板7に固定されており、そのロッド先端に係合部材51が螺着されている。このようにすると、スプロケット2を所定の分別位置と対応するように正確に位置決めすることができる。
【0024】
なお、係合部材用移動手段52は、図示しない制御手段と接続されており、制御手段から作動信号を入力している間、ロッドを突き出し、スプロケット2を所定の分別位置と対応するように位置決めする状態を維持する。
また、係合部材51は、半円形状の凸部を有しているが、凸部の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、スプロケット2の歯と係合できる形状であればよい。また、スプロケット2を所定の分別位置と対応するように位置決めする状態を維持可能であれば、係合部材51は上記形状に限定されず、例えば、スプロケット2の両側面を挟み込むような押圧手段を用いて、スプロケット2の位置決め状態を維持してもよい。
【0025】
以上のように、上記構成のスプロケット駆動手段4によれば、回転と停止を繰り返すようにスプロケット2を間欠回転させることができる。さらに、スプロケット位置決め手段5によれば、前記停止状態において、スプロケット2を所定の分別位置と対応するように正確に位置決めすることができる。
なお、スプロケット駆動手段4及びスプロケット位置決め手段5は、上記の構成に限定されるものではなく、例えば、図示してないが、位置制御可能なステッピングモータやサーボモータなどを用いる構成としてもよい。
また、スプロケット駆動手段4及びスプロケット位置決め手段5の詳細な動作などは、後述する。
【0026】
(ピン押し出し手段)
ピン押し出し手段6は、図1、2、4に示すように、ピン61、往復移動手段62、ピンホルダ63、スライドシャフト64及びリニアブッシュ65などを有している。
ピン61は、図4に示すように、本実施形態では五本用いられており、所定の分別位置に位置決めされたチェーン10のリンクピン12を押し出す構成としてある。ピン61は、二枚の平板状部材66、67を有するピンホルダ63に、頭部が挟まれる状態で固定されている。また、ピン61の頭部の天面と、それと対向する平板状部材、すなわち、往復移動手段62側の平板状部材67との間には、緩衝部材68が配されており、ピン61の頭部と平板状部材67が直に接触することを防止して、平板状部材67に対する負荷を軽減する構成となっている。
【0027】
往復移動手段62は、通常、エアシリンダとしてあり、受け板7に螺着された箱状部材に固定されている。この箱状部材は、チェーンホルダ83側の側板に、チェーン10を供給するための開口部が形成されており、また、分別したチェーンリンク11を落下させるために、底板を有しない構造としてある。この往復移動手段62は、ロッドがフローティングジョイントなどを介してピンホルダ63と連結されており、ピン61を往復移動させる。すなわち、往復移動手段62は、制御手段と接続されており、制御手段から作動信号を入力すると、ロッドを突き出し、ピン61がチェーン10のリンクピン12を押し出す構成としてある。
【0028】
また、受け板7及び箱状部材に、二本のスライドシャフト64が固定されており、各スライドシャフト64には、リニアブッシュ65が取り付けられており、ピンホルダ63は、連結部材を介して、各リニアブッシュ65と連結されている。これにより、ピン61は、所定の軌道を円滑に移動することができる。
【0029】
ここで、好ましくは、図3に示すように、スプロケット2が縦置き状態(すなわち、回転軸が水平方向に沿っている状態)で設置され、停止状態において、スプロケット2の上流部の歯21と下流部の歯22との間に巻き込まれたチェーン10(図示せず)のリンクピン12の少なくとも一部に対応する位置(ポイントP〜P10の少なくとも一部)に、ピン押し出し手段6のピン61が配設されているとよい。なお、本実施形態では、上流部の歯21側を上流、下流部の歯22側を下流として説明する。
【0030】
ここで、スプロケット2の上部において、上流部の歯21と係合し、ポイントPにリンクピン12が位置している状態のチェーン10は、チェーン投入用ガイド33上に載置されたチェーン10の自重によって上流側に引っ張られた状態となるため、チェーンリンク11及びリンクピン12の位置が上流側(図中右方向)にずれているおそれがあり、リンクピン12を押し出すには好ましくない状態にある。すなわち、本実施形態においては、上流側に引っ張られていないリンクピン12(ポイントP〜P10の少なくとも一部に位置するリンクピン12)を押し出す構成としてあるので、リンクピン12の位置精度が向上し、ピン61がチェーンリンク11を押すといった不具合を回避することができる。これにより、チェーン分別装置1の損傷などを防止でき、また、チェーン分別装置1の動作安定性を向上させることができる。
また、スプロケット2の上部において、チェーン10が、上流部の歯21と係合しているので、次の回転において、確実にチェーン10を巻き込むことができる。また、スプロケット2の下部において、リンクピン12の押し出されたチェーンリンク11をほぼ真下に排出することができる。これらによっても、チェーン分別装置1の動作安定性を向上させることができる。
【0031】
また、さらに好ましくは、停止状態において、スプロケット2の上流部の歯21から所定の数量だけ下流側の歯と下流部の歯22との間に巻き込まれたチェーン10のリンクピン12の少なくとも一部に対応する位置に、ピン押し出し手段6のピン61が配設されているとよい。また、本実施形態では、ポイントP〜Pに位置するリンクピン12に対応する位置に、五本のピン61を配設してある。ここで、所定の数量とは、通常、1以上5以下であり、好ましくは、2以上3以下である。
このようにすると、スプロケット2の上部において、上流部の歯21と係合したチェーン10が摩耗している場合であっても、上流部の歯21から所定の数量だけ下流側の歯が、チェーン10と係合するので、摩耗によるチェーン10のガタツキを低減でき、ピン61と対応するリンクピン12の位置がずれるといった不具合を効果的に防止することができる。したがって、チェーン分別装置1が損傷するリスクをさらに低減でき、また、チェーン分別装置1の動作安定性をさらに向上させることができる。
【0032】
(受け板)
受け板7は、図1、2に示すように、ほぼ矩形状の平板としてあり、ピン押し出し手段6と対設されている。なお、本実施形態の受け板7は、基板82に立設してある。また、受け板7は、スプロケット2に巻き込まれたチェーン10の側面との間に微小な隙間(例えば、0.数mmの隙間)を有している。
そして、この受け板7は、ピン61によってリンクピン12が押し出される際、チェーン10の側面と当接し、チェーン10を支持し、チェーンリンク11を受け、かつ押し出されるリンクピン12が通過可能な貫通孔71が設けられている(図3参照)。なお、貫通孔71の形状を湾曲した長円状としてあるが、特に限定されるものではなく、例えば、五つの円孔としてもよい。
また、受け板7は、モータ45側の面にリンクピン排出用カバー72が取り付けられている。これにより、押し出されたリンクピン12を回収ボックス(図示せず)などに確実に回収することができる。
【0033】
(制御手段)
制御手段(図示せず)は、プログラマブルロジックコントローラ及び操作手段などを有する情報処理装置としてあり、スプロケット駆動手段4、スプロケット位置決め手段5及びピン押し出し手段6などを制御する。
なお、制御の内容(各部の動作)については、後述する。
【0034】
(作業台)
作業台8は、フレーム81及び基板82などを有しており、基板82の上方に、スプロケット駆動手段4、スプロケット位置決め手段5、ピン押し出し手段6及び受け板7などが設けられている。
また、基板82は、図示してないが、分別され落下するチェーンリンク11を通す開口部、及び、リンクピン12を通す開口部が形成されている。さらに、基板82の下方には、チェーンリンク11を回収する回収ボックス、及び、リンクピン12を回収する回収ボックスが置かれている。
【0035】
次に、上記構成のチェーン分別装置1の動作などについて、図面を参照して説明する。
図5は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の開始時の巻き込み動作を説明するための要部の概略図を示している。
図5において、まず、チェーン分別装置1は、作業者によって、チェーン10が開始位置にセットされる。すなわち、作業者は、チェーンホルダ83に巻かれたチェーン10の先端側の部分をチェーン投入用ガイド33上に載置し、チェーン10の先端をスプロケット2の上流部の歯21と当接させる。なお、上述したように、セットされるチェーン10は、箱(図示せず)に収められ、チェーンホルダ83に掛けられた状態であってもよい。
【0036】
次に、作業者が、操作手段の運転開始スイッチをONにすると、チェーン分別装置1は、制御手段がモータ45を回転させ、スプロケット2が回転するので、チェーン10がスプロケット2に巻き込まれ、所定の分別位置に供給される。
このとき、円板43は、センサ44によって溝が検出されない状態(角度位置)にあるものとしてある。また、電磁クラッチ46は連結状態にあり、往復移動手段62及び係合部材用移動手段52は、OFF状態(ロッドが突き出ていない状態)にある。
【0037】
次に、センサ44が円板43の溝を検出し、検出信号を制御手段に出力する。制御手段は、検出信号を入力すると、電磁クラッチ46に連結解除信号を出力し、また、連結解除信号の出力とほぼ同時に、係合部材用移動手段52に作動信号を出力する。
これにより、チェーン分別装置1は、スプロケット2がモータ45からトルクを伝達されない状態となり、図6に示すように、係合部材用移動手段52がロッドを突き出し、係合部材51がスプロケット2の歯と係合し、スプロケット2を所定の分別位置と対応するように位置決めする。
なお、図6に示すスプロケット2は、図5に示す状態から、約90°回転しているが、開始時の円板43の溝の位置に応じて、約90°より小さい角度だけ回転してもよい。
【0038】
続いて、制御手段は、往復移動手段62の作動信号を出力し、往復移動手段62がロッドを突き出し(ワンショットとしての突き出しを行い)、ピンホルダ63に固定された五本のピン61が往復移動する。ここでは、ポイントP及びPに対応するピン61がリンクピン12を押し出し、これらのリンクピン12は、チェーンリンク11から押し出される。このとき、ポイントP〜Pに対応するピン61は空打ちとなる。そして、押し出されたリンクピン12は、貫通孔71及びリンクピン排出用カバー72を通って、リンクピン12用の回収ボックスに回収される。
上述したように、チェーン分別装置1は、容易かつ円滑に分別動作を開始することができる。
【0039】
次に、制御手段は、ピン61の往復移動が終了すると、係合部材用移動手段52への作動信号の出力を止め、また、この作動信号を止めるのとほぼ同時に、電磁クラッチ46への連結解除信号の出力を止める。
これにより、チェーン分別装置1は、係合部材用移動手段52が、OFF状態(ロッドが突き出ていない状態)となり、また、電磁クラッチ46が連結状態となり、スプロケット2が、連続的に回転しているモータ45からトルクを伝達されて回転し、チェーン10がスプロケット2に巻き込まれる。
チェーン分別装置1は、上記の動作(すなわち、スプロケット2の回転、停止、リンクピン12の押し出し)を繰り返すことにより、チェーン10を連続的に分別することができる。
次に、チェーン10を連続的に分別している状態について、図面を参照して説明する。
【0040】
図7は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の連続運転中の巻き込み動作を説明するための要部の概略図を示している。
図7において、チェーン分別装置1は、スプロケット2が回転しており、下流側先端のリンクピン12がポイントPにほぼ移動している。このとき、ポイントPより下流側に位置するチェーンリンク11は、既に、リンクピン12が押し出されており、ポイントP11を通過したチェーンリンク11は、ほぼ真下に落下し、チェーンリンク11用の回収ボックスに回収される。
【0041】
図8は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の連続運転中の押し出し動作を説明するための要部の概略図を示している。ここでは、ポイントP〜Pに対応するピン61がリンクピン12を押し出すこと以外は、上記の動作(すなわち、スプロケット2の回転、停止、リンクピン12の押し出し)が同様に繰り返される。これにより、チェーン10を連続的に分別することができる。
【0042】
また、図9は、本発明の実施形態にかかるチェーン分別装置の終了時の巻き込み動作を説明するための要部の概略図、すなわち、チェーン10の上流側の端部を分別している状態(分別終了時の状態)を示している。
図9において、チェーン分別装置1は、チェーン10をスプロケット2が巻き込む構成としてあるので、チェーン10の上流側の部分を円滑に巻き込むことができる。また、図示してないが、巻き込まれたチェーン10の上流側の端部は、上述したように、チェーンリンク11からリンクピン12が押し出される。
次に、リンクピン12の押し出されたチェーンリンク11は、スプロケット2の回転によって移動し、ポイントP11を通過したチェーンリンク11は、落下し、チェーンリンク11用の回収ボックスに回収される。そして、図10に示すように、チェーン分別装置1は、最後のチェーンリンク11が、ポイントP11を通過すると、ほぼ真下に落下し、チェーンリンク11用の回収ボックスに回収され、チェーン10の全てをチェーンリンク11とリンクピン12とに分別することができる。
【0043】
なお、図示してないが、チェーン分別装置1は、チェーン投入用ガイド33の先端側の付近に、チェーンリンク11を検出する自動停止用センサなどを有していてもよい。このようにすると、チェーン分別装置1は、自動停止用センサがチェーン10を検出しなくなったときから、数サイクルの動作を繰り返した後、チェーン10の分別を終了したものとして、自動的に停止することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態のチェーン分別装置1によれば、効率的かつ安全にチェーン10を分別することができる。また、チェーン10が摩耗しているような場合であっても、摩耗の悪影響を低減でき、動作の安定性や耐久性などを向上させることができる。さらに、チェーン10を自動的に分別するので、作業者が、ハンマーで指を打ち付けるといった恐れを回避することができる。
【0045】
以上、本発明のチェーン分別装置について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るチェーン分別装置は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、チェーン分別装置1は、スプロケット2を縦置き状態(回転軸が水平方向となる状態)としてあるが、これに限定されるものではなく、例えば、横置き状態(回転軸が垂直方向となる状態)であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 チェーン分別装置
2 スプロケット
3 チェーンガイド
4 スプロケット駆動手段
5 スプロケット位置決め手段
6 ピン押し出し手段
7 受け板
8 作業台
10 チェーン
11 チェーンリンク
12 リンクピン
21 上流部の歯
22 下流部の歯
31 上部チェーンガイド
32 下部チェーンガイド
33 チェーン投入用ガイド
41 スプロケット用軸
42 軸受
43 円板
44 センサ
45 モータ
46 電磁クラッチ
51 係合部材
52 係合部材用移動手段
61 ピン
62 往復移動手段
63 ピンホルダ
64 スライドシャフト
65 リニアブッシュ
66 平板状部材
67 平板状部材
68 緩衝部材
71 貫通孔
72 リンクピン排出用カバー
81 フレーム
82 基板
83 チェーンホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンをチェーンリンク及びリンクピンに分別するチェーン分別装置であって、
前記チェーンを巻き込むとともに、所定の分別位置に供給するスプロケットと、
前記チェーンが通過可能な間隙を有するように、前記スプロケットの歯の外方向に配置されるチェーンガイドと、
前記スプロケットを間欠回転可能とするスプロケット駆動手段と、
前記スプロケットの停止状態において、前記所定の分別位置と対応するように、前記スプロケットを位置決めするスプロケット位置決め手段と、
前記所定の分別位置の前記チェーンのリンクピンを押し出すピンを往復移動させるピン押し出し手段と、
を備えたことを特徴とするチェーン分別装置。
【請求項2】
前記スプロケットの停止状態において、前記スプロケットの上流部の歯と下流部の歯との間に巻き込まれた前記チェーンのリンクピンの少なくとも一部に対応する位置に、前記ピン押し出し手段のピンが配設されたことを特徴とする請求項1に記載のチェーン分別装置。
【請求項3】
前記スプロケット位置決め手段が、前記スプロケットの歯と係合する係合部材及び該係合部材を移動させる係合部材用移動手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のチェーン分別装置。
【請求項4】
前記スプロケット駆動手段が、
スプロケット用軸に取り付けられ、等間隔で配設された複数の溝を有する円板と、
前記複数の溝を検出するセンサと、
前記スプロケット用軸とモータの主軸とを連結する電磁クラッチと
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のチェーン分別装置。
【請求項5】
前記ピン押し出し手段のピンホルダが、複数の平板状部材を有し、前記ピンは、前記複数の平板状部材間に該ピンの頭部を挟んだ状態で前記ピンホルダに固定されており、該ピンの頭部天面と、それと対向する平板状部材との間に緩衝部材を配したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のチェーン分別装置。
【請求項6】
前記ピン押し出し手段と対設されており、前記リンクピンが押し出される際、前記チェーンリンク側面に接触する受け板を備え、該受け板には押し出される前記リンクピンが通過可能な貫通孔を形成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のチェーン分別装置。
【請求項7】
前記チェーンが、樹脂製のチェーンリンク及び金属製のリンクピンを有するプラスチック製チェーンであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のチェーン分別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−56297(P2013−56297A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195835(P2011−195835)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】