説明

チェーン搬送装置

【課題】リング状のチェーン要素を交互に交差させて無端状に連結した構成の搬送チェーンに作用する張力を検出することができるチェーン搬送装置を提供する。
【解決手段】検出用スプロケット20は、左右一対のスプロケット歯21と当たりコマ22とを有し、搬送チェーン7の移動時に、第1チェーン要素8の連結端8aの下端部側は、当たりコマ22の当たり面に摺接する。駆動中に搬送チェーン7が停止して、搬送チェーン7に作用する張力が増大すると、連結端8aの下端部側によって当たり面を下方向に押圧する押圧力が増大する。そして、検出用スプロケット20の回転軸20aを上方に付勢しているバネ27のバネ力に抗して、回転軸20aが下方向に移動したのを、近接センサで検出する。これにより、搬送チェーンに作用する張力を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、リング状のチェーン要素を交互に交差させて無端状に連結した搬送チェーンを用いて、被搬送物を搬送するチェーン搬送装置に関するものであり、特に、搬送チェーンに作用する張力を検出することができるチェーン搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から搬送チェーンに作用している張力が、異物を噛み込むなどによって増大して過剰な張力となり、搬送チェーンが途中から切断してしまったり、リング状のチェーン要素が引き伸ばされてチェーン要素間の連結が外れてしまったりすることがあった。そこで、搬送チェーンが途中で破断してしまうのを防止するため、搬送チェーンを駆動する駆動スプロケットのところには、シャーピンを設けることが従来から行われていた。シャーピンは、対向して配された一対の面板がシャーピンを介して一体的に同軸回転できるように、一対の面板間を貫通するようにして挿入されるピンの名称ではあるが、一対の面板を含めた装置を呼ぶこともある。
【0003】
この装置構造は、駆動スプロケットにおける断面図を図6に示すと、搬送チェーン60に搬送力を付与する駆動スプロケット61には面板62が設けられており、面板62に対向して配された面板63は、図示せぬ駆動モータによって回転駆動される構成となっている。そして、図6及びシャーピン64部の要部拡大図である図7(a)に示すように、駆動モータによって回転駆動された面板63の回転力は、面板62と面板63との間を貫通して挿入されたシャーピン64を介して面板62に伝達される構成となっている。シャーピン64は、その中間部において破断を生じ易くするため、中間部には小径部64aが形成されている。
【0004】
搬送チェーン60に作用している張力が増大したとき、搬送チェーン60に過剰な張力が掛かる。そのとき、搬送チェーン60が途中で破断してしまう前に、図7(b)に示すように面板62と面板63とを回転連結しているシャーピン64が、一対の面板62,63間の小径部64aにおいて破断する。シャーピン64が破断することによって、面板63から面板62への回転力の伝達が遮断する。
【0005】
シャーピン64が破断したときには、駆動モータの回転を停止させない限り、駆動モータによって面板63はそのまま回転を続行することになり、駆動スプロケット61に設けられた面板62は、回転が停止した状態となる。シャーピン64が破断した状態のまま面板63が回転を続けると、シャーピン64の破断面によって、面板62及び面板63の面にカジリが発生してしまう。カジリが大きくなると、面板62及び面板63が正常な機能を奏することができなくなり、新たなシャーピン64に交換したとしても装置の正常な機能が期待できない。
【0006】
破断したシャーピン64の交換作業を行うときには、チェーン搬送装置を停止させてからシャーピン64の交換作業を行うことになるが、一般的にチェーン搬送装置において駆動スプロケット61が配されている場所は狭いため、シャーピン64の交換作業には時間を要することになる。まして、面板62及び面板63の面に生じたカジリが大きくなって、面板62及び面板63の交換作業も行わなければならないときには、交換作業には長時間を要してしまうことになる。
【0007】
搬送チェーンを駆動する駆動スプロケットのところにシャーピンを設けた構成としては、例えばシャーピン安全装置(特許文献1参照)などが提案されている。また、シャーピンの構成については、特に記載されていないが、チェーンに作用する張力を検出することができる装置としては、ウインチの乱巻き防止装置(特許文献2参照)などが提案されている。
【0008】
特許文献2に記載されたウインチの乱巻き防止装置を、図8を用いて説明する。ワイヤを巻き廻すウインチドラム50に図示せぬワイヤが乱巻きされていると、乱巻きされたワイヤの部分がウインチドラム50から巻き出されるときには、ワイヤにたるみが生じてしまい、ワイヤを一定の張力の下で巻き出すことができなくなる。
【0009】
そこでこのウインチの乱巻き防止装置では、図8に示すように、巻き出し時におけるワイヤのたるみを、ウインチドラム50を巻き出し方向に駆動するチェーン51の張力によって検出している。
【0010】
ウインチドラム50を巻き出し方向に駆動するチェーン51の張力は、チェーン51の外側から内側に向かって押圧する方向に付勢された検出アーム52の回動量として検出し、検出アーム52の回動量は、スイッチ56によって検出することができる構成となっている。即ち、一端部側が支軸53回りに回動可能となるように配された検出アーム52の先端には、円板体55が設けられており、円板体55はバネ54によってチェーン51を押圧する方向に付勢されている。
【0011】
ウインチドラム50から巻き出されているワイヤが緩むと、ウインチドラム50を駆動するトルクも低下してチェーン51の張力が緩むことになる。チェーン51の張力が緩むと、バネ54によってチェーン51を押圧する方向に引っ張られている検知アーム52は、更にチェーン51を押圧する方向に回動することになる。このとき、検知アーム52が一定量以上回動すると、スイッチ56が作動して、チェーン51における張力の緩みを検出することができる構成となっている。
【0012】
また、チェーンの張力を検出するものではないが、回転搬送体を回転走行させるときの駆動モータにおける出力電流を検出して、回転走行体の作動時における張力を検出する装置としては、特許文献3に記載した回転走行部材の張力監視方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−131452号公報
【特許文献2】特開平10−17280号公報
【特許文献3】特開2001−240231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載したようなシャーピン安全装置では、上述したようにシャーピン64の交換や面板62及び面板63の交換作業が必要となり、その作業には、長時間を要してしまうことになる。
【0015】
特許文献2に記載した乱巻き防止装置では、チェーン51の張力を検出することはできるが、検出できるチェーン51の張力は、チェーン51の張力が緩んだ場合である。しかも、特許文献2におけるチェーン51は、リング状のチェーン要素を交互に交差させて無端状に連結した構成とは異なる構成のチェーンとなっている。そのため、リング状のチェーン要素を交互に交差させて無端状に連結した構成の搬送チェーンに対しては、特許文献2の張力検出装置をそのまま適用することはできない。
【0016】
また、特許文献2に記載した乱巻き防止装置において、チェーンに過剰な張力が作用した場合を検出するためには、チェーンに過剰な張力が作用したときにチェーンがピーンと張られるように構成しておかなければならない。そのため、チェーンの張力をある程度ゆとりを持たせた状態に最初から作っておかなければならない。そして、検出アームが、特許文献2とは逆向きの回動を検出するスイッチを設けることにより、過剰な張力が作用してチェーンが張られた状態を検出アームによって検出することができる。
【0017】
しかし、チェーン搬送装置においては、チェーンの張力が緩んだ状態のままで被搬送物を搬送できるように構成しておくことは難しい。仮に、チェーンが移動する移送路の外側に設けた検出アームによって、チェーンに作用した過剰な張力を検出できる構成が得られた場合であっても、チェーン搬送装置に検出アームを配しておくスペースがない場合には、特許文献2に記載したような構成で検出装置を用いることはできない。
【0018】
また、重量の重い被搬送物を搬送チェーンで搬送する場合には、搬送チェーンに作用する張力も大きくなり、大きな張力が作用している搬送チェーンに対して予め押圧力を作用させておくためには、検出アームを用いた検出装置は大掛かりなものになってしまう。
【0019】
特許文献3に記載されているような、駆動モータにおける出力電流を検出して回転搬送体の張力を検出するものでは、回転搬送体を用いて搬送する被搬送物の個数や被搬送物の重量に応じて、それぞれ基準となる出力電流値が変わってしまうことになる。そのため、回転搬送体を用いて搬送する被搬送物の数が常に一定ではなく、任意の搬送個数となる場合や重量が異なった被搬送物を適宜組合わせて搬送する場合などには、それぞれ基準となる出力電流が異なってしまう。
【0020】
そこで、搬送する条件に対応した基準となる電流値を、いくつも用意しておかなければならない。そして、回転搬送体を用いて搬送する被搬送物の種類や個数等の搬送条件に応じて、その度ごとに基準となる出力電流値を設定し直しておかなければならない。また、搬送の途中で、新たな被搬送物を追加して搬送させる場合には、基準となる出力電流値がその度ごとにくるくると変わってしまうことになる。
【0021】
また、回転搬送体を用いて被搬送物を搬送するときに、搬送の途中で被搬送物の搬送を一旦停止させる搬送制御が行われている場合には、停止後に被搬送物の搬送を再開する度ごとに、駆動モータにおける出力電流としては一瞬ピーク電流を生じることになる。このような、ピーク電流による影響も考慮しておかなければ、駆動モータの出力電流によって、回転搬送体に作用している張力を検出することはできなくなる。
【0022】
本願発明では、これらの従来における問題を解決することができ、搬送チェーンの移送路における外側に検出装置を設けなくても、リング状のチェーン要素を交互に交差させて無端状に連結した構成の搬送チェーンに作用する張力を検出することができ、しかも、被搬送物の個数や被搬送物の重量が変化したとしても、搬送チェーンに作用している張力が過剰な張力となったことを検出できるチェーン搬送装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願発明に係わる上記課題は、次の各発明によって達成することができる。即ち、本願発明のチェーン搬送装置は、過負荷防止用のシャーピンを有する駆動スプロケットを備えた駆動部と、従動スプロケットを備えた従動部と、複数のリング状の第1チェーン要素と複数のリング状の第2チェーン要素とを交互に交差させて無端状に連結し、前記駆動部と前記従動部間に掛け回された搬送チェーンと、前記従動部を上流側とし前記駆動部を下流側として、前記従動部と前記駆動部との間に形成した搬送領域と、を備えたチェーン搬送装置において、
前記搬送領域の終端から前記駆動部にかけて、前記搬送チェーンが斜め下方に向かって移動する下り傾斜領域と、前記下り傾斜領域において前記搬送チェーンの張力負荷を検出する検出装置と、を設け、
前記下り傾斜領域において、前記第1チェーン要素の連結端が鉛直方向を向いて前記第2チェーン要素の連結端に連結し、前記検出装置は、水平方向に配した回転軸回りに自由回転する検出用スプロケットと、前記検出用スプロケットの回転軸を上方に付勢するバネと、前記回転軸の下方向への移動量を検出する検出センサと、を有し、
前記検出用スプロケットが、前記下り傾斜領域における前記搬送チェーンの下面側に配されてなり、前記検出用スプロケットは、隣接する前記第2チェーン要素間において、鉛直方向を向いた前記第1チェーン要素の左右両面を両側から案内する一対のスプロケット歯と、前記第1チェーン要素の移動方向側における前記連結端の下端部側に摺接する当たりコマとを有し、複数設けられた前記一対のスプロケット歯は、前記検出用スプロケットの周方向に等間隔に配され、複数設けられた前記当たりコマは、前記周方向で隣接する前記一対のスプロケット歯間において、前記検出用スプロケットの周方向に等間隔に配され、前記バネが、検出基準となる前記搬送チェーンの張力負荷を設定してなることを最も主要な特徴としている。
【0024】
また、本願発明では、前記当たりコマにおける前記連結端の下端部側に摺接する当たり面が、傾斜面として形成されてなることを主要な特徴としている。
更に、本願発明では、前記当たりコマが、前記検出用スプロケットの外周面に対して取付取り外し自在に構成されてなることを主要な特徴としている。
更にまた、本願発明では、前記検出センサが、近接センサであることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本願発明では、シャーピンを破断させずに搬送チェーンに加わっている張力状態を、検出装置によって検出することができる。即ち、被搬送物が何らかの原因によって搬送途中において急に停止してしまったり、搬送チェーンに何らかの異物が挟まれたりして駆動部側に引っ張られる搬送チェーンの移動が停止したときには、搬送チェーンに作用する張力が増大していくことになる。
【0026】
搬送チェーンに作用する張力が増大すると、各チェーン要素には、駆動スプロケット側へ向かう押圧力が発生することになる。この押圧力によって、第1チェーン要素の移動方向側における連結端の下端部側では、連結端の下端部側によって、当たりコマに対して斜め下方向への押圧力を作用させることになる。そして、当たりコマに作用した斜め下方向への押圧力のうち鉛直方向の押圧力成分が、検出用スプロケットの回転軸を上方に付勢しているバネのバネ力に打ち勝つと、検出用スプロケットの回転軸は、下方向に移動することになる。この下方向への移動を、検出装置に設けた検出センサによって検出することができる。
【0027】
検出センサとしては、近接センサ、光電センサ、リミットスイッチ、レーザセンサ等を用いることができる。これらの各センサのうちで汚れにも比較的強く、センサとしての単価がレーザセンサに比べて安く、しかもミリ単位の検出が可能な近接センサを用いておくことが望ましい構成となっている。
【0028】
本願発明では、第1チェーン要素の連結端の下端部側に摺接する当たりコマの当たり面を、傾斜面として形成しておくことができる。当たりコマの当たり面を、傾斜面として形成しておくことにより、通常の搬送状態においては、第1チェーン要素の連結端の下端部側との摺接状態を良好にして、搬送チェーンの移動とともに検出用スプロケットを滑らかに回転させることができる。
【0029】
本願発明では、当たりコマを駆動スプロケットに対して取付取り外し自在に構成しておくことができる。即ち、ボルト等を介して当たりコマを駆動スプロケットに対して着脱自在に取り付けておくことができる。当たりコマの当たり面が摩耗したときには、新しい当たりコマと交換することができる。また、搬送ラインの変更等によって当たりコマの当たり面と第1チェーン要素の連結端の下端部側との間隔に変更が生じたときには、前記間隔が最適な間隔となるように当たりコマの高さの調整や新しい当たりコマへの取替えを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】チェーン搬送装置の概略断面図である。(実施例)
【図2】駆動部の要部拡大断面図である。(実施例)
【図3】検出装置と搬送チェーンの配置関係を示す要部拡大断面図である。(実施例)
【図4】検出用スプロケットの斜視図である。(実施例)
【図5】搬送チェーンによって検出用スプロケットが下方に移動するのを説明した図である。(説明図)
【図6】駆動スプラインの要部断面図である。(説明図)
【図7】シャーピンの作動を説明する図である。(説明図)
【図8】ウインチの駆動構成を示す要部側面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明のチェーン搬送装置の下り傾斜領域に設けた検出装置の構成としては、以下で説明する構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例】
【0032】
図1にチェーン搬送装置の概略断面図を示しているように、チェーン搬送装置1は、駆動部2と従動部3との間に掛け回された搬送チェーン7を備えた構成となっている。そして、搬送チェーン7は、駆動部2によって図1の反時計回り方向に回動する。また、従動部3側を上流として駆動部2側を下流とした搬送領域4が、従動部3と駆動部2との間に設けられている。
【0033】
従動部3側と搬送領域4の搬送開始端側との間では、搬送チェーン7は斜め上方向に向かって移動し、搬送領域4の搬送終了端側と駆動部2側との間では、搬送チェーン7は斜め下方向に向かって移動する構成となっている。そして、搬送領域4の搬送開始端側と搬送領域4の搬送終了端側とには、搬送チェーン7の移動方向を変更するガイド部19a、19bが設けられている。
【0034】
ガイド部19a、19bとしては、搬送チェーン7の移動に抵抗を与えずに移動方向を変更することができる構成であれば、自由回転するスプロケットを用いることも、筒状の案内体を用いることも、搬送チェーン7の下面側を案内するガイド片、ローラー体等を用いることもできる。
【0035】
本願発明では、搬送領域4の搬送終了端側と駆動部2側との間において、搬送チェーン7が斜め下方向に向かって移動する領域を下り傾斜領域5としている。図3に示すように、搬送チェーン7の移動方向は、水平方向に対して角度θだけ傾斜した下り方向となっている。また、下り傾斜領域5に、搬送チェーン7に作用している張力が増大して過剰な張力となったことを検出する検出装置6を設けている。検出装置6の構成を説明する前に、駆動部2と従動部3の構成について説明を行う。
【0036】
図2に示すように、駆動部2には駆動スプロケット11と、駆動スプロケット11を駆動する駆動モータ15と、搬送チェーン7に作用した過剰な張力を検出する検出装置6と、搬送チェーン7の移動方向を変更するスプロケット18a、18bとを備えた構成となっている。
【0037】
駆動モータ15による駆動スプロケット11の駆動としては、適宜の動力伝達機構を設けることができる。動力伝達機構としては、ベルト伝達機構、チェーン伝達機構、歯車伝達機構等の各種伝達機構を採用することができる。また、駆動モータ15、駆動スプロケット11、スプロケット18a、18bにおける構成としては、従来から公知の構成を採用することができる。
【0038】
そして、駆動スプロケット11における構成としては、例えば、図6に示した駆動スプロケット61における構成のように、対向する面板62、63間にシャーピン64を貫通させた構成としておくことができる。また、駆動スプロケット11の上流側と下流側とに、スプロケット18aとスプロケット18bとを配しておくことによって、搬送チェーン7を駆動スプロケット11に巻き回しておくことができ、搬送チェーン7と駆動スプロケット11との係合状態を良好に保つことができる。
【0039】
従動部3における構成としては、図1に示すように、駆動スプロケット11との間で搬送チェーン7に張力を与える従動スプロケット17と、スプロケット18cとを有した構成となっている。スプロケット18cは従動スプロケット17の上流側に配されており、駆動スプロケット11からスプロケット18bを介して従動スプロケット17に戻された搬送チェーン7を、従動スプロケット17に巻き回しておく機能を有している。従動スプロケット17、スプロケット18cにおける構成としては、従来から公知の構成を採用することができる。
【0040】
搬送領域4では、適宜の方法により被搬送物が、搬送チェーン7によって搬送領域4の上流側から下流側に向かって搬送できるように構成されている。搬送チェーン7は図3に示すように、リング状の第1チェーン要素8とリング状の第2チェーン要素9とを交互に交差するように連結させることで、無端状に構成されている。
【0041】
そして、搬送領域4の搬送終了端側と駆動部2側との間における下り傾斜領域5では、第1チェーン要素8における第2チェーン要素9との連結端8aが、鉛直方向を向いた状態で搬送チェーン7が移動するように構成されている。そして、搬送領域4の搬送終了端側に設けたガイド部19aとスプロケット18aとによって、第1チェーン要素8における第2チェーン要素9との連結端8aが、鉛直方向を向くように規制されている。
【0042】
検出装置6の構成について図3を用いて説明する。検出装置6は、図1に示す下り傾斜領域5における搬送チェーン7の下面側に配されている。検出装置6は、搬送チェーン7に係合する検出用スプロケット20と、検出用スプロケット20の回転軸20aを支える回転軸支持台25と、回転軸支持台25とともに回転軸20aを搬送チェーン7側の上方向側に付勢するバネ27と、バネ27を支える検出装置台26と、回転軸20aの下方向への移動量を検出する近接センサ34と、を備えた構成となっている。
【0043】
検出用スプロケット20の回転軸20aは、回転軸支持台25によって回転自在に支持されている。チェーン搬送装置1の基材に取り付けられた検出装置台26に対して、回転軸支持台25は上下方向に摺動自在に構成されている。そして、回転軸支持台25と検出装置台26との間には、回転軸支持台25を上方向に付勢するバネ27が設けられている。バネ27には、後述するように、搬送チェーン7に作用する張力を検出する上での基準となるバネ力が与えられている。
【0044】
また、バネ27の配設位置、配設個数に関しては、回転軸支持台25に支持された回転軸20aを水平状態に維持しながら、検出装置台26に対して回転軸20aを上下方向に平行移動させることができる構成であって、搬送チェーン7に作用する張力を検出する上での基準となるバネ力が得られれば、バネ27の配設位置、配設個数は適宜設けておくことができる。
【0045】
バネ27における付勢方向が常に鉛直方向を向くように、バネ27の伸長方向を規制する案内ロッド28が検出装置台26上に立設されている。図示例では、バネ27をスプリングコイルとした構成例を示しているが、回転軸20aの水平状態を維持させながら回転軸支持台25を検出装置台26に対して上下方向に平行移動させることができる構成であれば、他の構成のバネを採用することもできる。
【0046】
また、回転軸支持台25と検出装置台26との間には、回転軸支持台25の移動方向を規制するため、ガイドシャフト31が設けられている。ガイドシャフト31は、検出装置台26の上面であるガイドプレート29に設けた鉛直方向の案内筒部30内に沿って案内される構成となっている。
【0047】
また、ガイドシャフト31が案内筒部30から抜け出てしまうのを防止するため、更には、回転軸支持台25の検出装置台26に対する相対的な移動量を規制するため、ガイドシャフト31の下端部側には位置規制部材32が設けられている。ガイドシャフト31に取り付ける位置規制部材32の取付位置を調整することによって、回転軸支持台25の検出装置台26に対する相対的な移動量を規制することができる。
【0048】
回転軸支持台25の検出装置台26に対する相対的な移動量は、回転軸支持台25に設けた近接ドッグ33を、近接センサ34によって検出することで求めることができる。近接センサ34は、検出装置台26に設けた近接ブラケット35に取り付けておくことができる。そして、近接ドッグ33と近接センサ34との配設関係の調整は、近接ブラケット35に取り付ける近接センサ34の取付位置、検出装置台26に取り付ける近接ブラケット35の取付位置等を調整することによって行うことができる。
【0049】
図3及び検出用スプロケット20の要部斜視図を示している図4に示すように、検出用スプロケット20は、周方向に等間隔に形成した左右一対のスプロケット歯21と、周方向に隣接した左右一対のスプロケット歯21間に設けられた当たりコマ22と、を有する構成となっている。左右一対のスプロケット歯21によって、鉛直方向を向いた第1チェーン要素8を前後の第2チェーン要素9間において挟んで案内することができ、鉛直方向を向いた状態を維持されておくことができる。当たりコマ22の周方向の角部には、傾斜面の当たり面22aが形成されている。
【0050】
左右一対のスプロケット歯21によって案内されている第1チェーン要素8の移動方向側における連結端8aの下端部側が、当たりコマ22の当たり面22aに摺接することになる。当たりコマ22は、ボルト23を介して検出用スプロケット20の外周面に着脱自在に取り付けられている。
【0051】
当たりコマ22を検出用スプロケット20の外周面に対して着脱自在に取付ける構成にしておくことによって、当たりコマ22の当たり面22aが摩耗したときには、新しい当たりコマと交換することができる。また、搬送ラインの変更等によって当たりコマ22の当たり面22aと第1チェーン要素8の連結端8aの下端部側との間隔を調整する必要が生じたときには、前記間隔が最適な間隔となるように当たりコマ22の高さ調整や新しい当たりコマ22への取替えを容易に行うことができる。
【0052】
次に、検出装置6の作動について、図3、図5を用いて説明する。尚、図5では、スプロケット歯21の図示は省略しているとともに、説明を判り易くするため誇張した図面にしてある。
【0053】
本願発明のチェーン搬送装置1では、搬送チェーン7に作用している張力が、駆動スプロケット11に設けた図示せぬシャーピンを破断させない安全な張力状態であるときには、検出装置6からは、検出信号が出力されない構成となっている。シャーピンとしては、図6、図7(a)に示したシャーピン64のように構成しておくことができる。即ち、図3に示すように、この状態のときには、駆動部2に設けた駆動スプロケット11(図1参照)よって搬送チェーン7は、駆動スプロケット11側に引っ張られている。
【0054】
そして、第1チェーン要素8の移動方向側における連結端8aの下端部側が、当たりコマ22の当たり面22aに摺接しながら押圧して、検出用スプロケット20を回転軸20a回りに回転させる。また、当たり面22aに摺接していた連結端8aの下端部側が、当たり面22aとの摺接状態から離れると、摺接状態から離れた第1チェーン要素8の後続に配されている次の第1チェーン要素8の移動方向側における連結端8aの下端部側が、次の当たりコマ22の当たり面22aに摺接して、検出用スプロケット20の回転を継続させることになる。これを順次繰り返して、駆動スプロケット11(図1参照)によって搬送チェーン7が移動している間中、検出用スプロケット20は回転を続けることになる。
【0055】
搬送チェーン7によって搬送されている被搬送物が何らかの原因によって、搬送の途中において急に停止してしまったり、搬送チェーン7に何らかの異物が挟み込まれたりして駆動部2側に引っ張られる搬送チェーン7の移動が停止したときには、搬送チェーン7に作用している張力は増大していくことになる。そして、張力が増大して、搬送チェーン7を構成しているチェーン要素間でのゆとりがなくなると、搬送チェーン7の移動は停止して、搬送チェーン7はピーンと張った状態のまま、搬送チェーン7に作用する張力は更に増大していくことになる。
【0056】
このとき、第1チェーン要素8の移動方向側における連結端8aの下端部側では、搬送チェーン7に作用する増大した張力によって、図5に示すように、当たりコマ22の当たり面22aに対して斜め下方向へ向かう押圧力Fが作用することになる。当たりコマ22の当たり面22aに作用した斜め下方向へ向かう押圧力Fのうちで、鉛直方向の押圧力成分f1が、検出用スプロケット20の回転軸20aを上方に付勢しているバネ27(図3参照)のバネ力Kに打ち勝った状態になると、検出用スプロケット20の回転軸20aは、下方向に移動することになる。
【0057】
この回転軸20aにおける下方向への移動量は、回転軸支持台25の下方向への移動量として検出することができ、図3に示すように、回転軸支持台25に設けた近接ドッグ33の移動量として近接センサ34によって検出することができる。このときに生じる回転軸支持台25の下方向への移動量は、微小な移動量(例えば、数ミリ単位の移動量)ではあるが、近接センサ34によってこの微小な移動量を検出することができる。
【0058】
即ち、近接センサ34によって近接ドッグ33の移動量が所定量以上移動したことを検出することで、駆動スプロケット11(図3参照)に設けた図示せぬシャーピンが破断しない予め設定した安全な張力まで、搬送チェーンに作用している張力が増大したことを検出できる。
【0059】
そのため、バネ27のバネ力Kとしては、駆動スプロケット11(図3参照)に設けた図示せぬシャーピンが破断しない予め設定した安全な張力を規定するバネ力として設定しておくことができる。バネ27のバネ力Kに打ち勝って、検出用スプロケット20の回転軸20aが下方向に向かって移動を行い、その移動量が所定の移動量となったことを、近接センサ34によって検出することができる。
【0060】
検出用スプロケット20の回転軸20aが移動した下方向への移動量が、所定量以上となったことを近接センサ34が検出すると、駆動スプロケット11(図1参照)を駆動している駆動モータ15(図1参照)の駆動を停止させ、警報音等を発生させることができる。これにより、駆動スプロケット11(図1参照)に設けたシャーピンが破断する前に、駆動モータ15(図1参照)の駆動を停止させることができる。
【0061】
回転軸20aが下方向へ移動した移動量、即ち、回転軸支持台25の下方向への移動量を近接センサ34で検出する構成を説明したが、近接センサ34を用いる代わりに光電センサ、リミットスイッチ、レーザセンサ等を用いることができる。これらの各センサのうちで汚れにも比較的強く、センサとしての単価がレーザセンサに比べて安く、しかもミリ単位の検出が可能な近接センサ34を用いておくことが望ましい構成となっている。
【産業上の利用可能性】
【0062】
リング状のチェーン要素を交互に交差させて無端状に連結した搬送チェーンに作用する張力、特に、搬送チェーンに作用する過剰な張力を検出するのに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・チェーン搬送装置、2・・・駆動部、3・・・従動部、5・・・下り傾斜領域、6・・・検出装置、7・・・搬送チェーン、8・・・第1チェーン要素、8a・・・連結端、9・・・第2チェーン要素、11・・・駆動スプロケット、20・・・検出用スプロケット、20a・・・回転軸、21・・・スプロケット歯、22・・・当たりコマ、22a・・・当たり面、25・・・回転軸支持台、26・・・検出装置台、27・・・バネ、33・・・近接ドッグ、34・・・近接センサ、F・・・第1チェーン要素からの押圧力、f1・・・鉛直方向の押圧力成分、K・・・バネ力、50・・・ウインチドラム、51・・・チェーン、52・・・検出アーム、56・・・スイッチ、60・・・搬送チェーン、61・・・駆動スプロケット、62、63・・・面板、64・・・シャーピン、64a・・・小径部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過負荷防止用のシャーピンを有する駆動スプロケットを備えた駆動部と、
従動スプロケットを備えた従動部と、
複数のリング状の第1チェーン要素と複数のリング状の第2チェーン要素とを交互に交差させて無端状に連結し、前記駆動部と前記従動部間に掛け回された搬送チェーンと、
前記従動部を上流側とし前記駆動部を下流側として、前記従動部と前記駆動部との間に形成した搬送領域と、を備えたチェーン搬送装置において、
前記搬送領域の終端から前記駆動部にかけて、前記搬送チェーンが斜め下方に向かって移動する下り傾斜領域と、
前記下り傾斜領域において前記搬送チェーンの張力負荷を検出する検出装置と、を設け、
前記下り傾斜領域において、前記第1チェーン要素の連結端が鉛直方向を向いて前記第2チェーン要素の連結端に連結し、
前記検出装置は、水平方向に配した回転軸回りに自由回転する検出用スプロケットと、前記検出用スプロケットの回転軸を上方に付勢するバネと、前記回転軸の下方向への移動量を検出する検出センサと、を有し、
前記検出用スプロケットが、前記下り傾斜領域における前記搬送チェーンの下面側に配されてなり、
前記検出用スプロケットは、隣接する前記第2チェーン要素間において、鉛直方向を向いた前記第1チェーン要素の左右両面を両側から案内する一対のスプロケット歯と、前記第1チェーン要素の移動方向側における前記連結端の下端部側に摺接する当たりコマとを有し、
複数設けられた前記一対のスプロケット歯は、前記検出用スプロケットの周方向に等間隔に配され、
複数設けられた前記当たりコマは、前記周方向で隣接する前記一対のスプロケット歯間において、前記検出用スプロケットの周方向に等間隔に配され、
前記バネが、検出基準となる前記搬送チェーンの張力負荷を設定してなることを特徴とするチェーン搬送装置。
【請求項2】
前記当たりコマにおける前記連結端の下端部側に摺接する当たり面が、傾斜面として形成されてなることを特徴とする請求項1記載のチェーン搬送装置。
【請求項3】
前記当たりコマが、前記検出用スプロケットの外周面に対して取付取り外し自在に構成されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のチェーン搬送装置。
【請求項4】
前記検出センサが、近接センサであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のチェーン搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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