説明

チオール化抗酸化物質を含む脂質製剤

【課題】
【解決手段】本発明は、i)脂質マトリックスと、ii)少なくとも1つのチオール化抗酸化物質と、iii)任意で少なくとも1つの生理活性物質と、iv)任意で少なくとも1つのキレート剤とを含む製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂質製剤に関し、特に対象への投与に適した脂質製剤に関する。本発明は、より詳細には、非ラメラ相を形成し、酸化分解が安定性に関する重要な要因である脂質組成物に関する。制御放出性の脂質製剤が特に好適である。
【背景技術】
【0002】
調剤、栄養素、ビタミン等を含む多くの生理活性物質は、「機能発現枠(functional window)」を有している。即ち、これらの作用物質が何らかの生物学的効果をもたらすことが確認できる濃度範囲が存在する。適切な身体部分における濃度(例えば、局所的な濃度、または血清濃度として表される濃度)がある一定のレベルを下回ると、その作用物質はいかなる有益な効果も発揮しなくなる。同様に、上限濃度レベルが通常存在し、そのレベルよりも濃度を高くしたとしてもさらなるメリットは得られない。場合によっては、特定レベルを超えて濃度を高めると、望ましくない影響や、あるいは危険な影響すら及ぼすことがある。
【0003】
生理活性物質のいくつかは、生物学的半減期が長く、かつ/または機能発現枠が広いため、時として、機能的な生物学的濃度をかなりの期間(例えば、6時間から数日間)に渡って維持するように投与され得る。また、別の場合においては、クリアランス速度が速く、かつ/または機能発現枠が狭いため、生物学的濃度をこの枠の範囲内に維持するためには、少量ずつの定期的(また、さらには継続的)な投与が要求される。これは、非経口経路での投与(例えば、腸管外投与)が望ましい場合には、特に困難となり得る。さらに、インプラント(例えば、代替関節または口腔インプラント)のフィッティング等のようないくつかの状況においては、所望の作用領域が、繰り返される投与に対しアクセス可能な状態を維持できないこともある。このような場合には、1回の投与で活性が必要とされる全期間にわたって治療レベルにあるように活性物質を供給しなければならない。
【0004】
生理活性物質を持続放出させるために、様々な方法が用いられ、また提案されてきた。そのような方法としては、被覆錠剤等の緩効性の経口投与組成物、貼付剤等の徐々に吸収されるように設計された製剤や、皮下挿入される「スティック(sticks)」または小型の注射器型装置等の緩効性のインプラントが挙げられる。
【0005】
生理活性物質の徐放に用いる一方法として提案されているのが、いわゆる「デポー(depot)」注射である。この方法では、何時間または何日という期間に渡って活性物質の徐放をもたらす担体と共に生理活性物質が配合される。多くの場合、これらは活性物質を放出するために体内で徐々に分散する分解マトリックスに基づいている。
【0006】
デポー注射の確立された方法のうち最も一般的なものは、ポリマーデポーシステム(polymeric depot system)に依拠している。これは、ポリ(乳酸)(PLA)及び/またはポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)等の生分解性ポリマーであることが一般的であり、有機溶媒中の溶液、開始剤と混合されたプレポリマー、封入されたポリマー粒子、またはポリマー微小球の形態であり得る。ポリマーまたはポリマー粒子は活性物質を封じ込めており、ゆっくりと拡散することで、及び/またはマトリクッスが吸収されるにつれて徐々に分解され活性物質を放出する。そのようなシステムの例としては、米国特許第4938763号(特許文献1)、米国特許第5480656号(特許文献2)、及び米国特許第6113943号(特許文献3)に記載のものが挙げられ、最高で数ヶ月間という期間に渡り活性物質を送達することができる。しかしながら、これらのシステムには、製造の煩雑性や(特に微小球の)滅菌の困難性を含む多くの制限がある。注射部位で放出される乳酸及び/またはグリコール酸に起因する局部的な炎症も顕著な欠点である。粉末状の前駆物質から注入量を調製する手順は、多くの場合非常に煩雑であり、またこの手順は患者のそば(point of care)で投与直前に行う必要がある。
【0007】
薬剤送達の観点から、ポリマーデポー組成物には比較的少量の薬物しか含有することができず、また「突発(burst)/遅延(lag)」放出プロファイルを持つという欠点もある。ポリマーマトリックス、特にそれが溶液またはプレポリマーとして適用された場合、その性質から、組成物が投与された時に、薬剤の放出が先ず突発的に起こる。この後、放出の少ない期間が続き、その間にマトリックスの分解が始まる。その後、最終的には所望の持続的なプロファイルまで放出速度が上昇する。この突発/遅延放出プロファイルによって、活性物質の生体内濃度は、投与直後に機能発現枠を超えて一気に上昇し、持続的な機能性濃度に達する前に、遅延期間で機能発現枠の下限を経て低下する。この突発/遅延放出プロファイルは、機能性及び毒性の観点から明らかに望ましいものではなく、また危険であり得る。これは、「ピーク」時点での逆効果の危険性のために、提供され得る平衡濃度をも制限し得る。
【0008】
非常に効果的な非ポリマーのデポーシステムが国際公開第2005/117830号(特許文献4)に開示されており、ジアシル脂質またはトコフェロール、リン脂質、及び含酸素有機溶媒の組み合わせを組み合わせることで制御放出マトリックスが提供されている。そのようなシステムには、水性の環境にさらされると低粘度から高粘度に遷移することや、生体適合性及び生分解性の組成物から長期に渡って活性物質を徐放させるのが容易であることを含む相当な利点がある。この文献の開示は、参考として本願に組み込まれている。
【0009】
先に説明したもの等の脂質系システムは、脂質、溶媒や他の添加剤を含む使用成分、及びそれらの割合を適切に選択することで、他の目的にも用いることができる。そのようなシステムは、標準的な投与方法では溶解させるのが困難な特定の活性物質を溶解及び送達できるという利点がある(例えば、国際公開第2005/046642号(特許文献5))。さらに、組成物を生体付着性となるように選択することができるため、長期に渡って体表面に活性物質を送達することを可能にする(例えば、国際公開第2006/075123号(特許文献6))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4938763号明細書
【特許文献2】米国特許第5480656号明細書
【特許文献3】米国特許第6113943号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/117830号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005/046642号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/075123号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の送達システムの成分は生体許容性が高い。実際に、これらの多くは内因性脂質であり、活性医薬成分(API)が欠如している場合であっても有用となり得る。これは、いかなるAPIによるいかなる作用とは別に、皮膚または粘膜の表面が組成物自体によって和らげられる、及び/または保護され得る上記のもの等の生体付着性の製剤に特に当てはまる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来周知の脂質の制御放出性の製剤の1つの限界は、多くの活性物質や脂質成分それ自体までもが酸化分解し易い点である。様々な抗酸化物質化合物がこの酸化分解をある程度防ぐことが知られているが、これらのなかで脂質系システムと親和性があるものは少ない。従って、親和性があり、かつ活性物質(API等)及び/または少なくとも1つの脂質成分の酸化分解を防ぐ抗酸化物質/脂質の組み合わせを提供することには相当な利点があるだろう。
【0013】
本発明者らは、チオール含有抗酸化物質がまれにみるほど脂質製剤によく適しており、そのような製剤をより長期間に渡って保存すること、及び/またはこれまでテストされた他の種類の抗酸化物質よりもそのような製剤の作用の持続期間を長くすることを可能にすることを突き止めた。
【0014】
従って、第1の態様において、本発明は
i)脂質マトリックスと、
ii)少なくとも1つのチオール化抗酸化物質と、
iii)任意で、及び好ましくは、少なくとも1つの生理活性物質と、
iv)任意で少なくとも1つのキレート剤とを含む製剤を提供する。
【0015】
下記で説明するように、前記脂質マトリックスは、少なくとも1つのリン脂質と、少なくとも1つのジアシルグリセロールと、少なくとも1つの含酸素有機溶媒と、任意で少なくとも1つのフラグメンテーション剤(fragmentation agent)とを含むことが好ましい。低粘度の混合物とするために、任意の生理活性物質(iii)が残りの成分に溶解されているか、または分散されていることが好ましい。
【0016】
脂質製剤と併用した場合に、チオール化抗酸化物質が効率性の面で驚くべき利点をもたらすことは、本発明者らが知る限りこれまで提言されていない。
【0017】
従って、他の態様において、本発明は、脂質マトリックスと、少なくとも1つの生理活性物質とを含む製剤における酸化分解を低減する方法であって、前記方法は少なくとも1つのチオール化抗酸化物質と任意で少なくとも1つのキレート剤を添加することを含む方法も提供する。この態様の様々な実施形態は、製剤の態様を基準に説明する。
【0018】
さらに他の態様において、本発明は、脂質マトリックスと、少なくとも1つの生理活性物質とを含む製剤における酸化分解の低減へのチオール化抗酸化物質の使用も提供する。この態様の様々な実施形態は、製剤の態様を基準に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、過酸化水素を用いたストレス試験における、本発明の脂質製剤中のブプレノルフィン(BUP)の酸化分解を防ぐMTGの濃度の効果を示す。
【図2】図2は、本発明の製剤中のMTGの濃度の関数として、70℃で1ヶ月後(加速安定性試験)のBUP(HPLC)の回収率を示す。
【図3】図3は、異なる抗酸化物質を含む製剤において、25℃/相対湿度60%で7日間保存した後に分析したグルカゴン(GLU)の含有量を、当初(時間0)のGLUの含有量に対する%としてグラフ化したものを示す。
【図4】図4は、異なる抗酸化物質を含む製剤において、25℃/相対湿度60%で7日間保存した後にGLU製剤中で検出した分解生成物の量(全面積に対する%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
全ての態様において、本発明は、製剤全体のうちの少なくとも1つの成分の酸化分解を低減するために、チオール化抗酸化物質を脂質マトリックスに含有させることに関する。本発明ではどのような脂質系マトリックスを用いてもよく、チオール化抗酸化物質の有効性は、本明細書に記載の方法を用い、かつ実施例を特に参照することで、容易に、かつ日常的に検査することができる。
【0021】
脂質マトリックスは、(API等の生理活性物質を含むか、または含まない)生体付着性の製剤、及び/または制御放出性の製剤に特に有用であるため、生理活性物質(記載したように、APIを含む)が、脂質マトリックス及びチオール化抗酸化物質と共に配合され、脂質マトリックスの性質や製剤の相挙動によって制御される長い期間に対象に送達される。全ての場合において、本発明に従って処方された脂質マトリックスが投与後に相変化することが有利である。特に、脂質マトリックスが投与前はラメラ相またはL2相等の低粘度相であり、投与後は液晶相またはL3相等の非ラメラ相を生成することが好ましい。相挙動を以下でさらに説明し、本発明の全ての態様に該当する。
【0022】
組成の観点から、本発明の脂質マトリックスの生体適合性が高いと有利になるため、それらは好ましくは許容性が十分な成分を高い割合で含むべきである。一実施形態において、例えば、脂質マトリックスに含まれるモノアシル脂質(例えば、グリセロールモノオレエート)は、これらが通例ジアシル脂質よりも許容性が低いため、10%未満である。
【0023】
1つの好ましい脂質マトリックスは、
a)少なくとも1つの中性脂質(例えば、ジアシル脂質またはトコフェロール)、好ましくは少なくとも1つのジアシルグリセロール及び/またはトコフェロールと、
b)少なくとも1つのリン脂質と、
c)少なくとも1つの含酸素有機溶媒と、
d)任意で少なくとも1つのフラグメンテーション剤とを含む。
【0024】
そのようなマトリックスは、概して成分の許容性が対象にとって非常に高く、さらには所望の相挙動をもたらすために、成分及びその割合を選択できるという点で相当に有利である。
【0025】
そのような好適なシステムは、例えば、参考として本願に組み込まれている国際公開2005/117830号で詳細に記載されており、前記公報に含まれる実施例で示されている。特に、成分(a)、(b)、及び(c)の詳細ならびに割合は、以下、及び国際公開2005/117830号の9〜17頁に記載のものに対応している。
【0026】
この好ましい脂質系の制御放出性マトリックスにおいて、成分aとbとの重量比(a:b)は5:95〜95:5であり得る。好ましい比率は、一般的に90:10〜20:80であり、より好ましくは85:15〜30:70であろう。a:bの最も好ましい比率は、均等に近い比率、とりわけ35:65〜65:35であり、より好ましくは42:58〜58:42である。
【0027】
本発明のどの実施形態においても、特に、好ましい脂質マトリックスに関する実施形態において、投与を容易なものとするために製剤が低粘度であり、かつ投与後に相変化することが好ましい。これは、製剤が投与後により粘性を帯びるように、及び/またはより生体粘着性となるようにする。そのような相変化は、多くの要因によって生じ得るが、最も一般的には溶媒の喪失、及び/または水の吸収によって生じ、これらのメカニズムの一方または双方は、水性流体にさらされることによって生じ得る。
【0028】
そのため、本発明の製剤では、全ての態様において、少なくとも1つの非ラメラ相の状態の脂質マトリックス、または水性流体にさらされると少なくとも1つの非ラメラ相を生成し得る脂質マトリックスが用いられ得る。本明細書で説明するように、脂質系の制御放出性マトリックスがバルク秩序相または微粒子秩序相(bulk or particulate ordered phase)を形成することが好ましい。
【0029】
本発明の全ての態様において、製剤が、投与の前は低粘度の混合物であることが好ましい。本明細書では、「低粘度の混合物」という用語を、直ちに対象に投与することができ、特に標準的な注射器と注射針との仕組みを用いて直ちに投与することができる混合物を表わすために使用されている。これは、例えば、1mLの使い捨て注射器から19awg、好ましくは22awg(または23ゲージ)の針を介して手圧によって投与されることができることによって示され得る。特に好ましい実施形態において、低粘度の混合物は、0.22μmのシリンジフィルター等の標準的な除菌膜を通過可能な混合物であるべきである。他の好ましい実施形態においては、好適な粘度の同様な機能的定義を、圧縮ポンプ、または従来の噴霧機器を用いた加圧式噴霧装置を用いて噴霧可能な製剤の粘度と定義することができる。好適な粘度の代表的な範囲は、例えば、20℃で0.1〜5000mPas、好ましくは1〜1000mPasである。
【0030】
本明細書で示すように、低粘度の溶媒を少量加えることによって、粘度に非常に大きな変化をもたらすことができることが観察された。例えば、ある製剤では、好適な溶媒を5%加えるだけで粘度を100倍下げることができ、10%加えれば粘度を最高で10000倍下げることができる。
【0031】
低粘度の混合物の特に好ましい例としては、分子溶液、ならびに/もしくはL2相及び/またはL3相等の等方性相が挙げられる。上記のように、L3相とは、相互結合されたシート(interconnected sheets)の非ラメラ相であり、ある相構造を有するものの、液晶相の長距離秩序が欠如している。一般的に、粘性が高い液晶相とは異なり、L3相は粘度が低い。L3相と分子溶液との混合物、及び/または1つ以上の成分のバルク分子性溶液(bulk molecular solution)に懸濁されたL3相の粒子も間違いなく好適である。L2相は、いわゆる「逆ミセル」相またはマイクロエマルジョンである。最も好ましい低粘度の混合物は、分子溶液、L3相、及びこれらの混合物である。膨潤L2相(swollen L2 phase)の場合を除き、L2相は好適性が低い。本明細書を通して用いられるL2相は、粘度低減効果のある溶媒(例えば、成分c)を10重量%を超えて含有する「膨潤」L2相であることが好ましい。これは、溶媒を含有しない、または溶媒の量が少ない、もしくは、本明細書で規定する(概して酸素を含有する)低粘度の溶媒に関連する粘度の低下をもたらさない溶媒(または混合物)を含有する「凝縮(concentrated)」または「非膨潤」L2相とは対照的である。
【0032】
水性の環境にさらされた後で、本発明の全ての態様の製剤はバルク秩序層または微粒子秩序相を生成することが好ましい。本明細書では、そのような相を概して「非ラメラ」と記載している。両親媒性物質/水、両親媒性物質/油、および両親媒性物質/油/水の相図における非ラメラ領域の形成は、周知の現象である。このような相には、キュービックP相、キュービックD相、キュービックG相、およびヘキサゴナル相等、分子レベルでは流体であるが、著しい長距離秩序を示す液晶相と、非ラメラであるが液晶相の長距離秩序を欠く二分子層シートの多重相互結合両連続ネットワークを含むL3相とが含まれる。前記両親媒性物質シートの曲率に応じて、これらの相は、正(平均曲率が非極性領域を指向する)または逆(平均曲率が極性領域を指向する)と表現され得る。
【0033】
非ラメラ液晶相およびL3相は、熱力学的に安定なシステムである。すなわち、これらは単に、層や非ラメラ相等に分離及び/または再構成される準安定な状態にあるのではなく、熱力学的に安定な脂質/溶媒混合物の形態である。バルク液晶相は粘性が高いため、とりわけ腸管外投与後に長期に渡って制御放出が望まれるデポー組成物の形成に有利である。L3相及びL2相や分散された非ラメラ相の微粒子は一般的に粘度が低いため、より短い期間に渡る制御放出、ならびに体内及び体外双方の表面での局所的な放出により適している。
【0034】
本発明の好ましい一実施形態において、製剤は水性流体、特に体液にさらされると非ラメラのバルク相を形成する。これは該して生体内で起こる。非ラメラのバルク相は、活性物質の「貯蔵所」として作用し、場合によってはそれを長期間に渡って放出する作用の長い製剤を形成するのに特に適している。本明細書で説明するように、比較的少量のフラグメンテーション剤(ポリソルベート80等)を加えることでこの期間を制御し得る。非ラメラのバルク相には0〜5%のフラグメンテーション剤が一般的である。
【0035】
別の一実施形態において、製剤は水性流体、特に体液にさらされると自然に粒子(コロイド粒子等)を生成する。これは該して生体内で起こる。作用がより短いデポー組成物を生成するために断片化組成物(fragmenting composition)を用いてもよく、または活性物質がより迅速に送達されるよう制御するために短い間断片化組成物を用いてもよい。本明細書で説明するように、断片化されたかまたは微粒子の非ラメラ相は、一般的にフラグメンテーション剤(ポリソルベート80等)を高い割合で含む組成物から生成される。微粒子の非ラメラ相には、5〜30%のフラグメンテーション剤が一般的である。全ての実施形態において、本明細書で説明する全てのフラグメンテーション剤が適している。
【0036】
本明細書に示す成分「(a)」は、極性の「頭部(head)」基と、さらに非極性の「尾部(tail)」基を含む中性脂質成分である。該して、脂質の頭部と尾部とはエステル部分によって接合されているが、この接合はエーテル、アミド、炭素−炭素結合、または他の接合によるものであってもよい。好ましい極性の頭部基は非イオン系であり、グリセロール、ジグリセロールや糖部分(イノシトール系部分及びグリセロール系部分)等のポリオール;酢酸エステルまたはコハク酸エステル等のポリオールのエステルが挙げられる。好ましい極性基はグリセロール及びジグリセロールであり、特にグリセロールである。
【0037】
好ましい一態様において、成分(a)は、2つの非極性の「尾部」基を有するジアシル脂質である。これは、モノアシル(「溶解(リゾ)」)脂質を用いる場合に概して好ましい。何故ならそれらは一般的に生体内での許容性があまりよくないためである。2つの非極性基は、炭素原子の数が同じであっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して飽和または不飽和であってもよい。非極性基の例としては、長鎖カルボン酸のエステルとして通常存在するC6−C32のアルキル基及びアルケニル基が挙げられる。多くの場合、これらは、炭素鎖における炭素原子の数と不飽和の数とを参照して説明される。従って、CX:Zは、Xの炭素原子とZの不飽和を有する炭化水素鎖を示す。例としては、カプロイル(C6:0)基、カプリロイル(C8:0)基、カプリル(C10:0)基、ラウロイル(C12:0)基、ミリストイル(C14:0)基、パルミトイル(C16:0)基、フィタノイル(phytanoly)(C16:0)基、パルミトレオイル(C16:1)基、ステアロイル(C18:1)基、オレオイル (C18:1)基、エライドイル(C18:1)基、リノレオイル(C18:2)基、リノレンオイル(C18:3)基、アラキドノイル(C20:4)基、ベヘノイル(C22:0)基、及びリグノセロイル(C24:9)基が特に挙げられる。このように、代表的な非極性鎖は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチン酸、パルミチン酸、フィタン酸、パルミトール酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸、もしくは対応するアルコールを含む脂肪酸の天然エステル脂質に基づいている。好ましい非極性鎖は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸であり、特にオレイン酸である。
【0038】
成分(a)の全てまたはその一部としてジアシル脂質を用いる場合、それは合成されたものであっても、植物油等の精製及び/または化学修飾された自然源に由来するものであってもよい。任意数のジアシル脂質の混合物を成分(a)として用いてもよい。この成分がジアシルグリセロール(DAG)の少なくとも一部、特にグリセロールジオレアート(GDO)を含むことが最も好ましい。好適な一実施形態において、成分(a)は本質的にDAGからなる。これらは単一のDAGであってもよいし、またはDAGの混合物であってもよい。極めて好ましい例は、GDOを少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、さらには実質的に100%含むDAGである。
【0039】
成分(a)の全てまたはその一部として用いるのに極めて好ましい代替または追加の化合物の種類は、トコフェロールである。本明細書において、「トコフェロール」という用語は、通常ビタミンEとして知られる非イオン性脂質であるトコフェロール、及び/または好適な塩、及び/またはその類似体を示すために使用されている。好適な類似体は、前記相挙動、無毒性、及び水性流体にさらされることによる相変化といった本発明の組成物の特徴をもたらす類似体である。このような類似体は、通常、純粋化合物である液晶相構造を水中で形成しない。これらのトコフェロールの中で最も好ましいものは、下記に示す構造を有するトコフェロールそのものである。このトコフェロールが自然源から精製される場合は特に、トコフェロール以外の「混入物質」が若干の割合で存在する場合があるが、これは、前記の有利な相挙動または無毒性に変化をもたらす程でないことは明らかである。典型的には、トコフェロールに含まれる非トコフェロール類似体化合物は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは2重量%以下である。
【0040】
【化1】

【0041】
本発明のさらに有利な実施形態において、成分(a)は、本質的にトコフェロール、特に、上に示したトコフェロールからなる。
【0042】
成分(a)の構成成分の好ましい組み合わせは、少なくとも1つのDAG(例えば、GDO)と少なくとも1つのトコフェロールの混合物である。そのような混合物は、重量比で2:98〜98:2のトコフェロール:GDO、例えば10:90〜90:10のトコフェロール:GDO、とりわけ20:80〜80:20のこれらの化合物を含む。トコフェロールとその他のDAGからなる同様の混合物もまた好適である。
【0043】
本発明における成分「(b)」は、少なくとも1つのリン脂質である。成分(a)と同様に、この成分は、極性の頭部基と、少なくとも1つの非極性の尾部基を含む。成分(a)と成分(b)との違いは、主に極性基にある。よって、成分(a)に関して先に考察した脂肪酸または対応するアルコールから、前記非極性部を適切に生じさせてもよい。通常、これは、リン脂質が2つの非極性基を含むが、この成分の構成成分の1つ以上が1つの非極性部分を有していてもよい場合である。非極性基が2つ以上存在する場合、これらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0044】
好ましいリン脂質の極性の「頭部」基としては、ホスホコリン、ホスホエタノールアミン、ホスホセリンやホスホイノシトールが挙げられる。ホスホコリンが最も好ましいため、ホスファチジルコリン(PC)が成分(b)の好ましい構成成分となる。よって、好ましい実施形態において、成分(b)は少なくとも50%のPC、好ましくは少なくとも70%のPC、最も好ましくは少なくとも80%のPCからなる。成分(b)は本質的にPCのみから構成されていてもよい。
【0045】
リン脂質部は、いかなるジアシル脂質部よりも好適に、自然源から得られる。好適なリン脂質源としては、卵、心臓(例えば、ウシの心臓)、脳、肝臓(例えば、ウシの肝臓)、及び大豆を含む植物源が挙げられる。このような材料源は、成分(b)の構成成分を1つ以上供給し得るが、前記構成成分は、リン脂質のいかなる混合物を含んでいてもよい。
【0046】
本発明の製剤は、活性物質を制御放出するために対象に投与されるため、成分(a)及び(b)は生体適合性であることが好ましい。この点で、モノ−アシル溶解(溶解(リゾ))化合物よりも、例えば、ジアシル脂質及びリン脂質を用いることが好ましい。注目すべき例外は、上記のようにトコフェロールである。トコフェロールは1つのアルキル鎖しか有していないが、従来の意味での「溶解(リゾ)」脂質ではなく、本明細書で用いている「溶解(リゾ)」脂質または「モノアシル」脂質には含まれない。許容性が十分な必須のビタミンとしてのトコフェロールの性質はそれを生体適合性を高いものにしている。
【0047】
成分(a)及び(b)の特に好ましい2つの組み合わせは、GDOとPC、及びトコフェロールとPC、特にGDO/トコフェロールが30〜90重量%、PCが10〜60重量%、溶媒(特に、エタノール、ベンジルアルコール、n−メチルピロリドン(NMP)、及び/またはイソプロパノール)が1〜30重量%の範囲のものである。
【0048】
両親媒性の成分(a)及び(b)に加えて、本発明の好ましい脂質マトリックスはさらに他の両親媒性成分を含んでもよいが、それらの濃度は比較的低いことが好ましい。本発明の一実施形態において、前製剤は(成分(a)及び(b)の重量の)10重量%までの荷電両親媒性物質、特に、脂肪酸またはアニオン系リン脂質等のアニオン系両親媒性物質を含有する。この目的に好適な脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、フィタン酸、パルミトール酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、もしくはリグノセリン酸、またはこれらに対応するアルコールが挙げられる。好ましい脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸であり、特にオレイン酸である。好ましいアニオン系リン脂質としては、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)やホスファチジン酸(PA)が挙げられる。好ましいリン脂質としては、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)、大豆に由来するホスファチジルグリセロール、及び卵に由来するホスファチジルグリセロールが挙げられ、特にDOPG及びPOPGである。これらの成分を、カチオン性のペプチド活性物質(下記参照)と組み合わせて使用することが特に有利である。アニオン性の脂質とカチオン性のペプチドを組み合わせることにより、特に有益な緩効性の組成物が得られると考えられる。これは、生体内に存在する分解酵素からペプチドを保護する働きが増すことに部分的に起因している可能性がある。
【0049】
脂質系の制御放出性マトリックスの任意であるが好ましい成分「(c)」は含酸素有機溶媒である。製剤は水性流体、特に(例えば、生体内の)体液に接触させて用いられるため、この溶媒は、対象にとって許容性のあるものであり、かつ水性流体と混合可能であり、及び/または前製剤から水性流体中に拡散もしくは溶解可能であることが望ましい。よって、少なくとも中程度の水溶性を有する溶媒が好ましい。
【0050】
成分(c)としての使用に適した代表的な溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類(ラクトン類を含む)、エーテル類、アミド類、及びスルホキシド類から選択される少なくとも1つの溶媒が挙げられる。好適なアルコール類の例としては、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、及びグリセロールホルマールが挙げられる。ジオール及びポリオールよりも、モノオールのほうが好ましい。ジオールまたはポリオールを用いる場合、少なくとも等量のモノオールまたはその他の好ましい溶媒と併用することが好ましい。ケトン類の例としては、アセトン及び炭酸プロピレンが挙げられる。好適なエーテル類としては、ジエチルエーテル、グリコフロール(glycofurol)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルイソバーバイド(dimethylisobarbide)、及びポリエチレングリコールが挙げられる。好適なエステル類としては、酢酸エチル、安息香酸ベンジル、及び酢酸イソプロピルが挙げられ、硫化ジメチルが好適な硫化物溶媒として挙げられる。好適なアミド類としては、NMP、2−ピロリドン、及びジメチルアセトアミド(DMA)が挙げられ、スルホキシドとしてはジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。好適性の低い溶媒としては、ジメチルイソソルバイド、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジグリム、及び乳酸エチルが挙げられる。
【0051】
溶媒成分(c)は、通常、デポー組成物が生体内で形成される際に、少なくとも部分的に失われるか、または蒸発するか、もしくは周囲の空気及び/または組織から水を吸収することによって希釈される。したがって、成分(c)は、少なくともある程度は水混和性または水分散性であり、かつ少なくとも水吸収を妨げる程には水をはじかないことが好ましい。この点に関しても、炭素原子の数が比較的少ない(例えば、炭素数10まで、好ましくは炭素数8までの)含酸素溶媒が好ましい。多くの酸素が存在する場合、溶媒が、より多くの炭素原子数を有すると、水中で可溶性を維持しやすいことは明らかである。このため、ヘテロ原子(例えば、N、O、好ましくは酸素)に対する炭素の比率は、しばしば1:1〜6:1程度、好ましくは2:1〜4:1程度となる。これらの好ましい範囲の一つに該当しない比率を有する溶媒を使用する場合、この溶媒を75%以下、好ましくは50%以下として好ましい溶媒(エタノール等)と併用することが好ましい。この溶媒は、例えば、液晶デポー形成の速度を制御するため、前製剤からの溶媒の蒸発速度を低減させるために用いてもよい。
【0052】
本発明の製剤、及び脂質系の制御放出性マトリックスに成分(c)が存在する場合、その量は、全ての成分からなる低粘度の混合物(例えば、分子溶液、上記参照)をもたらすのに少なくとも十分な量であり、成分のどのような特定の組み合わせの場合でも、本願開示を参酌して標準的な方法によって容易に決定される。相挙動自体は、目視観察等の方法を、偏光顕微鏡、核磁気共鳴や極低温透過電子顕微鏡(cryo-TEM)と組み合わせて溶液、L2相、またはL3相、もしくは液晶相を観察して分析することができる。粘度は、標準的な手段により直接測定することができる。上記のように、適切な実用粘度とは、注射器で効果的に用いることができ、特に除菌膜を通ることができるものである。本明細書で示すように、これは容易に測定できる。含まれる成分(c)の最大量は、製剤の厳密な用途によって異なるが、低粘度の混合物(例えば、分子溶液、上記参照)及び/または粘度が十分低い溶液を形成する量であれば、該して望ましい特性がもたらされる。不必要に大量の溶媒を対象に投与することは該して望ましくないので、成分(c)の量は、低粘度の混合物を形成するの要する最少量の10倍以下(例えば3倍)、好ましくは5倍以下、最も好ましくはその量の2倍以下に通常制限される。しかしながら、本発明の組成物は、即時投与組成物(immediate dosage composition)で許容され得る量よりも多い量の溶媒を含み得る。これは、活性物質がゆっくりと放出されるプロセス(例えば、本明細書に記載の液晶相のシェルの形成)も、溶媒が組成物から出てくることを妨げる役割を果たすからである。その結果、溶媒は瞬時よりも、ある程度の時間(例えば、分または時間単位)に渡って放出されるため、体にとってより許容性のあるものとすることができる。
【0053】
粘度は、組成物を注射または噴霧によって投与する上で非常に大きな要因であるため、溶媒自体も非常に低粘度のものであることが好ましい。「低粘度」溶媒成分(c)(単一の溶媒または混合物)の粘度は一般的に、20℃で18mPas以下であるべきである。これは、20℃で15mPas以下であることが好ましく、10mPas以下であることがより好ましく、7mPas以下であることが最も好ましい。さらに、溶媒は、マトリックス及び混合物中の他のいかなる成分(例えば、活性成分)の粘度を低減するのに適したものであるべきである。エタノールはこれら全ての面で適しているため、特に好ましい。
【0054】
非腸管外(例えば局所)への適用、特に体表面に適用する場合は溶媒をより高い割合で用いてもよく、その場合、溶媒は体内に吸収されるよりも蒸発によって失われる。そのように適用される場合、とりわけ、結果として得られる非腸管外組成物が非常に層の薄いものであることが望まれる場合、最小量の100倍までの溶媒を用いてもよい(例えば、組成物の95重量%まで、好ましくは80重量%まで、より好ましくは50重量%まで)。
【0055】
一般的な指針として、成分cの重量は、典型的には、(a)−(b)−(c)((d)が存在する場合はそれも含む)の溶液の総重量の0.5〜50%程度である。この割合は、(とりわけ注射可能な組成物の場合)2〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。
【0056】
本発明の製剤は、一般的には有意量の水を含有してはいない。脂質組成物から微量の水を全て除去することは本質的に不可能であるため、これは、容易に除去できない最低限の微量の水のみが存在することを示唆するものと解釈されたい。このような量は、概して、前製剤の1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満である。好ましい一態様において、本発明の製剤は、グリセロール、エチレングリコール、またはプロピレングリコールを含有せず、直前に述べたように、ほんの微量の水のみを含有する。あるいは、プロピレングリコールが唯一の溶媒、または溶媒の一成分として存在してもよい。
【0057】
本発明のある実施形態では、より高い割合の水を許容し得る。これは、水が、溶媒成分の一部として、更なる水混和性成分(c)(単一の溶媒または混合物)との組み合わせで存在する場合である。この実施形態においては、成分(c)も少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも7重量%存在し、成分(c)が水混和性であり、結果として得られる前製剤が非粘性を維持し、よって液晶相を形成しないという条件を満たす限りにおいて、水は、20重量%まで、好ましくは10重量%まで存在してもよい。該して、有機溶媒成分(c)と水との重量比は20:80〜80:20、好ましくは30:70〜30:70、より好ましくは35:65〜65:35である。一実施形態において、割合は少なくとも50%が溶媒である。本発明のこの態様において水と共に用いるのに最も適した溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、NMP、アセトン、及び酢酸エチルが挙げられる。
【0058】
任意であるが好ましいフラグメンテーション剤成分(d)としては、選択された成分(a)及び(b)((c)が存在する場合はそれも含む)と共にフラグメンテーション剤としての役割を果たすことのできる両親媒性物質であればどのようなものでもその役割を果たすことができる。フラグメンテーション剤は、成分(a)及び(b)を含む組成物が、本明細書に記載の構造化粒子を(自己分散により、もしくはシャリングまたは超音波処理等のエネルギー入力により)形成することを可能にする(純粋または混合の)薬剤である。特に好適な粒子は、例えば、非ラメラ、特に液晶、L2、またはL3である。非ラメラ相については、上記でより詳細に説明した。
【0059】
数多くの様々な分子種が本発明におけるフラグメンテーション剤として好適である。それらとしては以下が挙げられる。
【0060】
1)ポリマー薬剤:ポロキサマー(好ましくは、プルロニック(登録商標)F127、プルロニック(登録商標)F68、プルロニック(登録商標)F108、プルロニック(登録商標)L44)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンn−ブチルメタクリレートブロック共重合体(NOF社製PUREBRIGHT MB−37−50T及びPUREBRIGHT MB−37−100T等)、PEG化されたソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、特にポリソルベート80)、PEG化された界面活性剤(例えば、BASF社製ソルトールHS15)、PEG化されたヒマシ油誘導体(例えば、クレモフォールEL、クレモフォールRH40)、PEG化された脂肪酸(例えば、PEGオレイン酸エステル)、PEG化されたリン脂質(DOPE−PEG(2000)、DOPE−PEG(5000)、及びDSPE−PEG(5000)を含む)、ポリグリセリン(PG)−リン脂質(例えば、NOF社製SUNBRIGHT DSPE−PG8G等のDSPE−PG、DOPE−PG等)、PEG化されたオリゴアルキルソルビトール(PEG−60ソルビトールテトラオレイン酸エステル、例えば、ニッコー化学研究所製GO−460V)、PEG化されたグリセリル脂肪酸エステル(例えば、ニッコー化学研究所製TMGO−15)、d−アルファトコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(ビタミンE TPGS(イーストマン))等のPEG化されたトコフェロール、及び、PEG化されたアルキルエステル;
2)ポリオール界面活性剤:糖由来アルキルエステル(スクロースラウリン酸エステルやスクロースオレイン酸エステル等)、糖由来アルキルエーテル(例えば、オクチルグルコシド);
3)タンパク質:カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、リゾチームを含む;
4)アニオン性界面活性剤:脂肪酸のカルボン酸エステル(とりわけ、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム)、アルキル界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等);及び、
5)カチオン性界面活性剤:アルキルアンモニウム塩(ドデシルトリメチルアンモニウム臭化物(DTAB)、セチルトリメチルアンモニウム臭化物(CTAB)、及び、オレイルアンモニウム塩化物を含む)。
【0061】
本発明では、一般的に上記(3)に記載したもの等のタンパク質のフラグメンテーション剤の好適性が低い。上記の種類(1)にもこの目的に非常に好適なフラグメンテーション剤が含まれる。
【0062】
成分(d)の大半は、過剰な水に接触すると通常のミセル(L1)相を形成する。しかしながら、それらの成分はフラグメンテーション剤としての役割を果たすためにミセルを形成する必要はない。当業者は、フラグメンテーション剤が効果的に機能しているかを適切な組成物を調製し、本明細書の実施例で説明されている簡単な試験を行い、かつ開示が参考として本願に組み込まれている国際公開2006/013369(特に実施例)も参照することで容易にテストすることができる。
【0063】
成分(d)が存在する場合、成分(a)、(b)、及び(d)は通常、下記の割合で存在する(ここで、a、b、及びdは、それぞれ、成分(a)、(b)、及び(d)の重量である);d/(a+b+d)=0.01〜0.3。この範囲内にある組成物は、エネルギー入力を伴うかまたは伴わない分散の後で自己分散するか、もしくは安定的な粒子を形成する傾向が高い。特に、自己分散性及び最大粒径の制御をもたらすことが望ましい場合は、(a)、(b)、及び(d)の割合が、a/(a+b+d)としたときに0.25(例えば、0.35)〜0.80(例えば0.75)であることが好ましく、より好ましくは0.35(例えば、0.4)〜0.75(例えば、0.65)であり、d/(a+b+d)としたときに0.03〜0.25(例えば、0.2)であることが好ましい(ここで、a、b、及びdは、それぞれ成分(a)、(b)、及び(d)の重量である)。
【0064】
一実施形態において、界面活性剤は上記種類1、3、4、または5ののうちの1つであり、最も好ましくはポリマー界面活性剤である。
【0065】
本明細書で明確に、または暗に任意のものとして示した成分の全てと同様に、成分(c)及び(d)はそれぞれ独立して存在していてもよいし、欠如していてもよい。
【0066】
本発明の主要な成分の1つがチオール化抗酸化物質である。本質的に全ての有機分子と同様に、脂質及び生理活性物質は酸化に対して熱力学的に不安定である。その結果、API等の生理活性物質を含むものを含む多くの脂質製剤は保存の際に、特に酸化によって分解し易い。
【0067】
残念ながら、多くの一般的な抗酸化物質は脂質システムとの親和性が高くない。実際に、本発明者らは、これまでのシステムで一般的に用いられてきた抗酸化物質のいくつかが、脂質システム中の活性物質の分解を促進させ得ることを思いがけず突き止めた。これは、特にペプチド活性物質に当てはまる。そのため、本発明者らは、脂質系のマトリックスシステムと共に用いる可能性を秘めた様々な抗酸化物質化合物及び種類を分析し、抗酸化物質の1つの特定種類がこれらのシステムで用いるのに非常に良く適していることを思いがけず発見した。
【0068】
本発明者らは、チオール化抗酸化物質、特にモノ−チオグリセロール(MTG)、及びN−アセチルシステイン等のシステイン類似体が脂質系システムにおいて非常に効果的であることを目下突き止めた。従って本発明では抗酸化物質成分はチオール化抗酸化物質、好ましくはチオール化糖、チオール化アミノ酸、チオール化アミノエステル、またはチオール化ポリオールである。モノ−チオグリセロール、N−アセチルシステイン、またはシステインが好ましいチオール化抗酸化物質である。
【0069】
抗酸化物質成分は、概して、組成物(製剤)全体の0.01〜2.0重量%の範囲で含まれる。これは最も好ましくは0.05〜1.0%であり、とりわけ上記及び下記の他の好ましい成分及び範囲と組み合わせて、抗酸化物質(特にMTG)が0.2〜0.5%前後であることが特に好ましい。
【0070】
チオール化抗酸化物質一般、特にMTGの効用性の理由は分かっていない。理論にとらわれることなく、MTGは、既成のメカニズムによれば効果的な連鎖破壊供給抗酸化物質(chain-breaking donating antioxidant)であるため、ペルオキシル基(ROO・)が失活させられると考えられる。チオール化抗酸化物質によってそれらがクエンチングされることで、さらなる酸化分解の周期が断絶される。MTGやN―アセチルシステイン等のチオール類はまた、それらの酸化形態から特定の成分を再生し得る。
【0071】
下記の実施例で示す数多くの異なる抗酸化物質を用いた安定性のデータは、チオール化抗酸化物質が他の抗酸化物質よりも生理活性物質の酸化分解を驚くほどより効果的に抑制することを示している。この効果の概略は、実施例、下記に示す表、及び添付の図面に示されている。
【0072】
本発明者らは、チオール化抗酸化物質化合物とキレート剤との組み合わせが、本発明の脂質系組成物を安定させる上で非常に効果的な連係をもたらすことをさらに突き止めた。従って、本発明の全ての態様において、抗酸化物質成分はキレート化剤によって補完され得る。好適なキレート剤としては、多価酸類、ポリアミド類、ポリアミン類やポリエーテル類等の多座(二座を含む)配位子が挙げられる。当業者には多くの金属キレート配位子が知られており、それらは本発明で用いるのに適している。好ましいキレート剤としては、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ならびにEDTAの対応するナトリウム塩、二ナトリウム塩、及び二ナトリウムカルシウム塩が挙げられる。クエン酸、及びその生体許容性の塩(例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、及び/またはマグネシウム塩)もキレート化剤としての役割を果たすことができ、本発明の方法でキレート剤として用いることができる。必要なキレート化剤の量はかなり少なくてもよいため、クエン酸は、脂溶性酸効果(下記参照)を有するのに必要な濃度に等しい、またはそれ以下の濃度でキレート化剤として作用し得る。他の実施形態においては、クエン酸を本発明の前製剤から除外してもよい。
【0073】
理論にとらわれることなく、キレート剤の金属をキレート化する性質は、チオール化抗酸化物質の連続鎖破壊供給抗酸化物質としての特性を補完する役割を果たし、それによって酸化ラジカル種の形成を低減し、形成されたものをクエンチングする役割を共に果たす。
【0074】
キレート剤は、該して、組成物(製剤)全体の0.005〜1.0重量%の範囲で含まれる。これは、最も好ましくは0.01〜0.8%であり、0.02〜0.5%前後のキレート剤を、特に上記の他の好ましい成分及び範囲と組み合わせることが特に好ましい。
【0075】
本発明の有用な実施形態では、記載したように抗酸化物質と、キレート剤と、体液と接触すると非ラメラ相の粒子を形成する脂質組成物とを組み合わせる。そのような組成物は、概して、ポリソルベート80(P80)等のフラグメンテーション剤、及び本明細書で説明した一般的な脂質成分を含む。MTG、EDTA、GDO、PC、及びP80は、エタノール及び/またはプロピレングリコール等の任意の有機溶媒と共に非常に好ましい組み合わせを形成する。クエン酸の添加、またはEDTAの代わりにクエン酸を用いることも有用な実施形態である。各成分の好適な量は本明細書で説明したものである。
【0076】
本発明の製剤の任意の成分は生理活性物質である。一実施形態において、チオール化抗酸化物質によって安定化された脂質マトリックスは、付加的な生理活性物質を全く含むことなく、特に、それらの、例えば粘膜表面等の生体表面における鎮静化及び/または保護特性のために、活性医薬成分(API)を全く含むことなく用いられる。しかしながら、他の及び好ましい実施形態においては、1つ以上の生理活性物質が製剤に含まれる。
【0077】
本明細書で使用されているように、「生理活性物質」(同義で「活性物質」としても本明細書で記載される)という用語は、タンパク質、薬剤、抗原、栄養素、化粧料、芳香剤、調味料、診断剤、調合薬、ビタミン、または食じ剤等の望ましい生物学的効果または生理効果を有するあらゆる化合物であって、機能レベル(局所組成物の場合は局所濃度を含む)で、生体内濃度をもたらすのに十分なレベルで配合される。ある状況下では、脂質マトリックスi)の1つ以上の成分(例えば、成分(a)、(b)、(c)、及び/または(d))も活性物質であり得るが、任意の生理活性物質(iii)がこれら成分の1つではない(例えば、脂質マトリックスの成分ではない)ことが好ましい。最も好ましい活性物質は薬物、ワクチン、及び診断剤を含む医薬品(例えば、API)である。
【0078】
本発明によって送達され、かつそれに配合し得る薬剤としては、細胞や受容体、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、内分泌及びホルモン系、血管系、シナプス部位(synoptic site)、神経効果器接合部、免疫系、生殖器系、骨格系、オータコイド系、消化器系及び排泄系、ヒスタミン系、ならびに中枢神経系に作用する薬剤が挙げられる。
【0079】
本発明の組成物に配合してもよい薬剤の例としては、β−ラクタムまたは大環状ペプチド抗生物質等の抗菌剤、ポリエンマクロライド(例えば、アンホテリシンB)またはアゾール抗真菌剤等の抗真菌剤、ヌクレオシド類似体、パクリタクセル、及びその誘導体、ドセタキセル及びその誘導体等の抗癌剤及び/または抗ウイルス剤、非ステロイド性抗炎症剤やコルチコステロイド等の抗炎症剤、コレステロール低下剤や血圧低下剤を含む心血管薬、鎮痛薬、セロトニン(Seritonin)取り込み抑制剤を含む抗精神病薬及び抗うつ薬、プロスタグランジン及びその誘導体、ワクチン、ならびに骨調整剤(bone modulator)が挙げられるが、これらに限定されない。診断剤としては、X線、超音波、及びMRIの造影促進剤を含む放射性核種標識化合物ならびに造影剤が挙げられる。栄養素としては、ビタミン、補酵素、栄養補助食品等が挙げられる。
【0080】
特に好適な活性物質としては、迅速な分解または排出によって体内での滞留時間が通常短いもの、経口生体利用効率に乏しいもので、特に酸化分解され易いものが挙げられる。このような活性物質としては、ペプチド、タンパク質、及び核酸系の活性物質、ホルモン、ならびに天然または変性型のその他の自然発生の活性物質が挙げられる。本発明の非常に好ましい実施形態において、そのような薬剤は、例えば、本明細書に記載の好ましい脂質マトリックスから形成される脂質デポー組成物の形態で投与される。このように、活性物質は、クリアランス速度が速いにも関わらず、数日間、数週間、または数ヶ月間に渡り得る期間の間、持続的なレベルで提供され、酸化分解が効果的に防がれるため長期間望ましい投与量で維持することができる。これは、同じ期間の間に毎日複数回投与することよりも投与量の安定性、及び患者コンプライアンスの面で明らかな利点を提供する。従って、好ましい一実施形態において、活性物質の生物学的半減期(血流に入ってから)は1日未満、好ましくは12時間未満であり、より好ましくは6時間未満である。いくつかの場合では、これは少ない場合だと1〜3時間以下である。好適な薬剤は注射によって得られる生体利用効率に比べて経口生体利用効率に乏しいものであり、その場合、活性物質はさらに、または代替的に0.1%未満、とりわけ経口製剤の場合では0.05%未満の生体利用効率を有する。
【0081】
ペプチド及びタンパク質系の活性物質としては、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)及びその断片、アンギオテンシン及びその関連ペプチド、抗体及びその断片、抗原及びその断片、心房性ナトリウム利尿ペプチド、生体付着性ペプチド、ブラジキニン及びその関連ペプチド、カルシトニン及びその関連ペプチド、細胞表面受容体タンパク質断片、走化性ペプチド、シクロスポリン、サイトカイン、ダイノルフィン及びその関連ペプチド、エンドルフィン及びP−リドトロピン(P-lidotropin)断片、エンケファリン及びその関連タンパク質、酵素阻害剤、免疫刺激ペプチド及びポリアミノ酸、フィブロネクチン断片及びその関連ペプチド、胃腸ペプチド、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト及びアンタゴニスト、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド1及び2(GLP−1及びGLP−2)(他のペプチドGLP−1及びGLP−2受容体アゴニストも含む)、成長ホルモン放出ペプチド、免疫刺激ペプチド、インスリン及びインスリン様成長因子、インターロイキン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及びその関連ペプチド、メラニン細胞刺激ホルモン及びその関連ペプチド、核局在化シグナル関連ペプチド、ニューロテンシン及びその関連ペプチド、神経伝達ペプチド、オピオイドペプチド、オキシトシン、バソプレシン及びその関連ペプチド、副甲状腺ホルモン及びその断片、プロテインキナーゼ及びその関連ペプチド、ソマトスタチン及びその関連ペプチド、サブスタンスP及びその関連ペプチド、トランスホーミング増殖因子(TGF)及びその関連ペプチド、腫瘍壊死因子断片、トキシン及びトキソイド、ならびにアンジオスタチンを含む抗癌ペプチド、血圧降下ペプチド、抗血液凝固ペプチド、及び抗菌ペプチド等の機能性ペプチドからなる群から選択されるヒト用及び動物用薬剤;免疫グロブリン、アンジオゲニン、骨形態形成タンパク質、ケモカイン、コロニー刺激因子(CSF)、サイトカイン、成長因子、インターフェロン(I型及びII型)、インターロイキン、レプチン、白血病抑制因子、幹細胞因子、トランスホーミング増殖因子、ならびに腫瘍壊死因子等のタンパク質からなる群から選択されるヒト用及び動物用薬剤が挙げられる。
【0082】
本発明のデポー組成物のさらなる顕著な利点は、繰り返し投薬を行う必要なしに活性物質が長期間に渡って徐々に放出されるという点である。従って、患者コンプライアンスが困難で信頼できない状況、または精神安定剤、治療枠の狭い薬剤、及び小児またはその生活スタイルが確実な投与方式になじまない人に投与されるもの等のレベル投与(level dosage)が非常に重要な状況に本発明の組成物は非常に好適である。本発明の組成物は、繰り返し投与する不便さが、APIのもたらす利益に勝ってしまうことのある「生活スタイル」APIにも有用である。この態様によって特段の利点がもたらされるAPIの特定種類としては、避妊薬、ホルモン(避妊ホルモン、及び成長ホルモン等の特に小児に用いられるホルモンを含む)、抗中毒薬、ビタミンまたはミネラルサプリメント等の栄養補給食品、抗うつ剤、ならびに鎮痙薬が挙げられる。
【0083】
カチオン性のペプチドは、特に、製剤の脂質マトリックス部の一部が脂肪酸またはアニオン性のリン脂質等のアニオン性の両親媒性物質を含む実施形態で用いるのに適している。この実施形態において、好ましいペプチドとしては、カルシトニン、オキシトシン、インターフェロンベータ及びガンマ、インターロイキン4、5、7、及び8、ならびに等電点がpH7を超える、特にpH8を超える他のペプチドが挙げられる。
【0084】
本発明で用いられる抗酸化物質は若干還元性があるため、本発明の方法で用いられる活性物質は、還元による永続的な不活性化(permanent inactivation)を受け易いものではないことが好ましい。よって、例えば、ペプチド活性物質は、還元され易くないものであることが好ましい。一般的に、1つ以上の二硫化結合を形成するペプチド(タンパク質を含む)は、還元によって不活性化され易い場合があるため、好適性が低い。しかしながら、ある場合では、生体内での標準的な酸化環境にさらされると必要な架橋が自然に再形成され、そのような場合ではペプチド剤は本発明で用いるのに依然として適している。
【0085】
活性物質が存在する場合、本発明に配合される活性物質の量は、機能性投与量(functional dose)及び投与の際に形成される組成物が徐放を提供する期間によって異なる。通常、特定の薬剤のために処方された投与量は、通常の1日の投与量を製剤が放出を提供する日数で乗じたものと大体等しい。この量は、それが概して用いられる最大の投与量であるため、治療開始時に投与量が多いことによる逆効果を考慮に入れて調整することができる。どのような場合にも適した正確な量は、本願開示を参酌して好適な実験によって容易に決定することができる。
【0086】
一実施形態において、本発明の前製剤は腸管外的に投与される。この投与は一般的には血管内法ではなく、皮下腔内または筋肉内、もしくは皮下への投与であることが好ましい。一般的には、投与は注射によるものであり、本明細書では注射という用語は、製剤を、針、カテーテル、または針無し注射器等によって皮膚または粘膜表面を通過させるあらゆる方法を示すのに使用されている。
【0087】
腸管外(特に皮下)デポー前駆体製剤において、好ましい活性物質は全身投与に適したもの、例えば、抗菌剤(アミカシン、モノサイクリン、及びドキシサイクリンを含む)、局所及び全身用の鎮痛薬(ブピバカイン、トラマドール、フェンタニール、モルヒネ、ヒドロモルホン、メタドン、ブプレノルフィン、オキシコドン、コデイン、アスピリン、アセトアミノフェンを含む)、NSAIDS(イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン(keterofene)、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、及びサリチルアミドやジフルーニサルといったサリチル酸(salysylic acid)等)、Cox1またはCox2抑制剤(セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ等)、抗がん剤(オクトレオチド、ランレオチド、ブセレリン、リュープロレリン(luproreline)、ゴセレリン、トリプトレリン、アボレリン、デスロレリン、アバレリクス、デガレリクス、フルベストラント、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、ダルベポエチンアルファ、エポエチンアルファ、ベータ、及びデルタ、ドセタキセル、ならびにパクリタキセルを含む)、抗精神病薬(ブロムペリドール、リスペリドン、オランザピン、イロペリドン、パリペリドン、ピポチアジン、及びズクロペンチキソール等)、抗ウイルス物質、鎮痙薬(例えば、チアガビン、トピラマート、またはガバペンチン)またはニコチン、ホルモン(テストステロン、及びウンデカ酸テストステロン、メドロキシプロゲステロン、エストラジオール等)、成長ホルモン(ヒト成長ホルモン等)、ならびに成長因子(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)が挙げられる。グルカゴン等のペプチド活性物質及びブプレノルフィン等のアヘン活性物質は、本発明の全ての実施形態において特に好ましい活性物質である。
【0088】
別の実施形態において、本発明の製剤は、活性物質が体表面でゆっくりと放出される非腸管外デポーを形成し得る。この実施形態では、本発明の製剤及び/またはそれから形成される(好ましくは非ラメラ、例えば液晶状の)デポー組成物が好ましくは生体付着性であるべきことがとりわけ重要である。即ち、組成物は、それらが適用されるか、及び/またはそれらが適宜形成される表面を被覆すべきであり、この表面が空気または液体の流れにさらされても、及び/またはこの表面がこすられたとしてもそれらはそこにとどまるべきである。形成されたデポー組成物は、特に好ましくは水洗いに対して安定性を有しているべきである。例えば、少量のデポー前駆体が体表面に適用され、一分間当たりその体積の500倍の水の流れに5分間さらされる。この処理の後、失われた活性物質が50%未満であれば、組成物は生体付着性であると考えられる。この消失のレベルは、組成物が1分間当たりにその体積の好ましくは1000倍、より好ましくは10000倍に等しい水で5分間、または好ましくは10分間流される場合と合致することが好ましい。
【0089】
本発明の非腸管外組成物は、液晶相構造を形成するのに要する水の一部または全てを、それらが接触する生体表面から吸収し得るが、周囲の空気からそれ以外の水も幾分か吸収し得る。特に、表面積の大きい薄層が形成された場合では、水に対する組成物の親和性は、それが空気中の水と接触することで液晶相構造を形成するのに十分であり得る。従って、本明細書で言及する「水性流体」とは、この実施形態では少なくとも部分的にはある程度の水分を含む空気のことである。
【0090】
一般的に、非腸管外デポー組成物は、本明細書に記載の製剤を体表面に、あるいは自然または人工的に生成された体腔に、及び/またはインプラントの表面に局所的に適用することにより生成される。この適用は、噴霧、浸漬、洗浄等による液体の直接適用、パッドまたはボールローラーからの適用、腔内注射(例えば、針を用いるか、または用いない開腔への注射)、塗布、投下(特に眼への投下)、及び類似の方法によるものであってもよい。非常に効果的な方法は、エアゾール噴霧またはポンプ噴霧であり、これには前製剤の粘度が可能な限り低いことが要求されるため、本発明の好ましい脂質組成物には非常に好適である。しかしながら、全身薬を例えば経粘膜的に、または経皮的に投与するのに非腸管外デポーを用いてもよい。
【0091】
非腸管外デポーは、表面、特に、体、または体部、もしくは流体と接触するインプラントや材料の表面に適用して用いることもできる。従って、インプラント、カテーテル、ステント等のデバイスを、例えば、本発明の製剤に浸漬させる、または本発明の製剤をそれらに噴霧して処理することで、感染の導入を低減する丈夫な層が形成される。この態様には抗感染薬が特に好適である。
【0092】
本発明の製剤に含まれ得るさらに有利な成分は、脂溶性酸である。この任意の「脂溶性酸」成分は、一般的には低分子量の化合物であり、水性媒体(例えば水中で)酸性溶液を形成し得る。この成分を本明細書では「酸」と言及しており、またそれは水性溶液中で酸として作用するが、この成分は該して本発明の前製剤では典型的な酸として作用しない。何故なら、これらが脂質系であるために、該して非水性だからである。一実施形態において、そのような脂溶性酸の分子量は、500amu未満、例えば300amu未満及び200amu未満である。有機酸及び鉱酸、とりわけ上記のように低分子量のものが本発明の目的に有用な脂溶性酸である。脂溶性酸は、概してpKaが5未満、例えば4.7未満及び4.5未満のものである。脂溶性酸は、選択されたマトリックスシステムに必要とされる水準で溶解するのに適したものでもなければならない。マトリックスは概して疎水性または両親媒性であることから、本明細書では好適な酸を「脂溶性」と言及している。多くの場合、脂溶性酸は腸管外薬剤放出システムの一部として投与されるため、適切な量で生体適合性があることも必要である。好適な脂溶性酸としては、クエン酸、安息香酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、またはトルエンスルホン酸)、及びヒドロハリック酸(例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、またはヨウ化水素酸)から選択されるものが挙げられる。様々な実施形態において、脂溶性酸は、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、及びHC1である。クエン酸及び安息香酸が非常に好ましく、PC(大豆及び/またはDOPC)、GDO、エタノール、及び任意でPGと組み合わせて用いることが好ましい。この併用は、本明細書で上記した成分比で行ってもよい。
【0093】
本発明の別の一実施形態では、脂溶性酸はヒドロハリック酸(例えば、HC1ではなく、HBrではなく、及び/またはHIではない)ではない。この実施形態では、脂溶性酸は、ある実施形態では安息香酸、クエン酸、またはスルホン酸であり得る。
【0094】
本発明のさらに別の実施形態では、脂溶性酸は、1つ以上の酢酸またはアスコルビン酸ではない。一実施形態では、脂溶性酸はクエン酸であり得る。別の実施形態では、脂溶性酸はクエン酸以外の酸である。
【0095】
一般的に、酸官能性は、本発明で用いる有機脂溶性酸における唯一の、または主要な官能基であるため、脂溶性酸は任意で脂肪酸(C6以上の炭素鎖を有するもの)、アミノ酸、または多価酸、とりわけEDTA等のキレート多価酸でない。従って、脂溶性酸は一実施形態では、例えば、有する酸基が1つ以上であるが、一般的には5つ以下、多くの場合4つ以下、そして通例3つ以下の有機酸であり得る。そのため、一価酸、二価酸、または三価酸が好ましい。
【0096】
本明細書では脂溶性酸を「酸」と言及しており、また一態様ではそれらは少なくとも遊離酸の形態の酸からなるように処方されている。しかしながら、別の態様においては、脂溶性酸は本明細書に記載の対応する酸の塩であってもよく、対イオンは、アルカリ金属陽イオンまたはアルカリ土類金属陽イオン、アンモニウムイオン、もしくは置換アンモニウムイオン等の生体的に許容されるイオンである。そのようなイオンの混合物も好適である。対応する一実施形態において、対イオンは、ペプチド活性物質(例えば、グルカゴンイオン)等の活性物質の陽イオン、または活性物質の陽イオンを含むイオンの混合物である。
【0097】
理論にとらわれることなく、脂溶性酸のイオンは、活性物質成分を安定化させる役割を果たすと考えられる。一般的に、組成物は本質的に水を含んでおらず、pHの基準となる水性水素イオン濃度を直接的に利用することはできないので、脂溶性酸はこれらのシステムにおいて付加的な効果がなければならない。酸成分の存在下では、活性物質成分をより高い濃度で配合することができること、及び/または活性物質成分が本発明の組成物中でより安定することが確かに観察された。この文脈において、安定性とは組成物の物理的な安定性ならびに活性物質の化学的安定性のことである。
【0098】
いくつかの実施形態において、脂溶性酸は、チオール化抗酸化物質と併用することで活性物質の安定化の上で非常に有益となり得る。
【0099】
本発明の全ての態様において、脂溶性酸が存在する場合、脂溶性酸は、活性物質と脂溶性酸とのモル比で1:1〜1:5000、例えば1:100〜1:1000、好ましくは1:100〜1:300、または1:1〜1:30、好ましくは1:1〜1:20、最も好ましくは1:2〜1:10で存在する。典型的な脂溶性酸は、典型的なペプチド活性物質よりも分子量が低いため、脂溶性酸の重量比は比較的小さくてもよい。例えば、低分子量のpH調整剤(例えば、500amu未満)を含む場合、組成物の0.01〜5%、例えば0.05〜2%が脂溶性酸であり得る。酸成分が欠如しているか、またはクエン酸が製剤全体の0.2〜2重量%で存在しているかのいずれかが一般的である。
【0100】
重量の観点から、脂溶性酸の量は用いられる脂溶性酸及び活性物質の分子量によって異なり、本明細書で示したモル比から算出することができる。例えば、分子量が3000〜4000amuのペプチド活性物質と分子量が150〜250amuの酸成分が含まれる場合、製剤における脂溶性酸の重量は、酸と活性物質との比で1:1〜30:1前後であり得る。これは通常1:1〜20:1、より好ましくは5:1〜15:1である。
【0101】
本発明の一実施形態において、脂溶性酸は、ペプチド活性物質等の活性物質の凝集を制限するように作用し得る。MTG等のチオール系の抗酸化物質は、クエン酸及び安息香酸を含む典型的な酸との併用において特に効果的である。本明細書で示すようにこれら2つの成分を使用した場合、それらから相乗効果が得られ得る。特に、それぞれの成分の抗酸化効果及び抗凝集効果は、本明細書で規定するように脂質ビヒクル中で活性物質を保存する上で相乗的に作用し得る。さらに、EDTA等のキレート剤の金属キレート効果は、ラジカルの生成及び/または伝搬を妨げることで、チオール系の抗酸化物質及び/または脂溶性酸と相乗的に作用して活性物質及び/または脂質を保存し得る。
【0102】
本発明の製剤に付与された抗酸化性は、実用上の製剤にとって2つ主要な利点がある。第1に、長期に渡って活性物質を放出するように処方された組成物は、放出の期間にその活性物質が酸化されなければ(例えば、活性物質の用量の少なくとも一部が、製剤の投与時に形成される構造内に閉じ込められたままになる)より効率的にかつ効果的に放出を行う。第二に、抗酸化性によって製剤は搬送及び保存に対してより大きな安定性を持つことになるため有利である。大量に生産される、梱包される、搬送される、保存される、及び/または配送されるいかなる製剤も、安定した所定の寿命を有している必要がある。これは、好ましくは少なくとも1ヶ月、より好ましくは少なくとも3ヶ月、最も好ましくは少なくとも6ヶ月であるべきである。多くの場合、これは、投与の少し前または直前に成分を組み合わせるように、成分を別々の形態で提供することによってのみ得られる。この手順は煩雑であり、また多くの場合、医師またはユーザーが組成物を調製する上でさらなる負担となる。
【0103】
本発明の製剤は、全ての態様においてそのまま投与可能な形態であることが好ましく、室温及び/または4℃で少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間、より好ましくは少なくとも6ヶ月間その状態で安定していることが好ましい。安定とは、脂質マトリックス部及び存在するどの活性物質も特定の条件下で、所定の期間保存した後に有効な生理活性物質の当初のレベルの含有量の少なくとも80%が有効な状態で残るように、酸化に対して安定性があるべきである。これは、保存前に存在する生理活性物質の少なくとも90%であることが好ましく、より好ましくは少なくとも95%である。
【0104】
次に本発明を以下の非限定的な実施例と添付の図面を参照してさらに説明する。
【0105】
図1:過酸化水素を用いたストレス試験における、本発明の脂質製剤中のブプレノルフィン(BUP)の酸化分解を防ぐMTGの濃度の効果を示す。
【0106】
図2:本発明の製剤中のMTGの濃度の関数として、70℃で1ヶ月後(加速安定性試験)のBUP(HPLC)の回収率を示す。
【0107】
図3:異なる抗酸化物質を含む製剤において、25℃/相対湿度60%で7日間保存した後に分析したグルカゴン(GLU)の含有量を、当初(時間0)のGLUの含有量に対する%としてグラフ化したものを示す。
【0108】
図4:異なる抗酸化物質を含む製剤において、25℃/相対湿度60%で7日間保存した後にGLU製剤中で検出した分解生成物の量(全面積に対する%)を示す。
実施例
以下の略語を実施例で用いる。
【0109】
【表1】

【実施例1】
【0110】
<ブプレノルフィン(BUP)の脂質製剤における異なる抗酸化物質の効果>
抗酸化物質も含むBUPの脂質製剤を以下のように調製した。先ず、SPC/GDO/EtOH/抗酸化物質を必要な割合で含む液体脂質原料液(または、抗酸化物質を含まない参考の原料液)を、全ての成分をガラス製のバイアルに入れて秤量し、その後、約8時間、または完全に均質な液体が得られるまで転倒回転させて混合して得た。その後、全ての場合でBUP(粉末)を、その名目濃度が7.9重量%となるように加えた。それぞれの製剤の最終的な名目組成を表1に示す。加えた抗酸化物質の量は、従来、医薬品において一般的に用いられているものに対応する量であった。
【0111】
【表2】

【0112】
4つの異なる抗酸化物質の効果を評価するために、以下のストレス試験を行った(表1)。製剤1mLあたり20μLのH22(30%)を加えて酸化分解を誘発させ、その後、製剤を室温(暗がり)で48時間平衡させた。製剤中のBUP及び全ての酸化分解生成物(DP)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(逆相カラム)を用いて288nmで紫外線検出することにより分析した。BUPの相対保持時間(RR)を1に設定したところ、主な酸化DPのRRは1.053であった。
【0113】
表2に示すように、全ての抗酸化物質は、参考の製剤と比べるとある程度の効果を有していた。しかしながら、脂質製剤中のBUPの酸化分解を防止する上でMTGが明らかに優れていた。
【0114】
【表3】

【実施例2】
【0115】
<濃度の違いによるMTGの効果>
濃度の違いによるMTGの保護効果を、実施例1に係るストレス試験を行って評価した。簡単に説明すると、名目組成がBUP/SPC/GDO/EtOH=7.9/41.1/41.1/10.0重量%であるBUPの脂質製剤に、MTGを0〜1.0重量%の濃度で添加した。結果として得られた製剤に、製剤1mLあたり20μLのH22(30%)を加え、その後、室温(暗がり)で48時間平衡した。その後、これらの製剤を実施例1で説明したようにHPLCを用いて評価し、主な酸化分解生成物(DP)のピークの相対面積%(相対保持(RR)=1.053)を測定した。図1に示すように、既に濃度の低いMTGには大きな保護効果があった。
【実施例3】
【0116】
<加速安定性分析におけるBUPの安定性への濃度の違いによるMTGの効果>
MTGの濃度が異なる(0〜1.0重量%)BUP(名目濃度7.9重量%)の脂質製剤を、実施例1及び2で説明したように調製した。製剤をガラス製のバイアルに充填し、バイアルの上部にできた空間を窒素でフラッシングし、テフロン加工されたゴム栓と引き離しタイプのアルミ栓でバイアルに蓋をした。その後、実施例1及び2で説明したHPLC分析を行う前に、前記バイアルを70℃に維持した加熱キャビネットに搬送し、そこで1ヶ月間保存した。図2に示すように、低濃度のMTGを加えることで、保存したサンプルからのBUPの回収率が増加した。
【実施例4】
【0117】
<N−アセチルシステイン(N−AcCys)を含む脂質製剤>
SPC/GDO/EtOH(42.5/42.5/15重量%)を含む液体脂質製剤を、全ての成分をガラス製のバイアルに入れて秤量し、その後、室温で4時間転倒混合して調製した。透明で均質な脂質製剤に、N−AcCysを0.25重量%の濃度で加え、その後さらに12時間混合した。結果として得られた製剤は透明であり、かつ均質であった。
【実施例5】
【0118】
<抗酸化物質試験>
メチオニン残渣(Met(O)27グルカゴンとする)の酸化に起因するグルカゴンの分解を防ぐため、本発明の組成物に抗酸化物質を含有させてもよい。最も好適な抗酸化物質を突き止めるために、様々な一般的な、及びあまり一般的でない抗酸化物質を、本発明のペプチド/脂質システムでテストした。
【0119】
この探索的安定性分析で用いるサンプルの名目組成を表3に示す。なお、それぞれの製剤中の抗酸化物質の含有量は、参考の製剤(229番及び234番)を除き、トコフェロール(α−TOC)、パルミチン酸アスコビル(AscPalm)、及びモノ−チオグリセロール(MTG)がそれぞれ0.3重量%であり、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)が0.1重量%であった。MTGを含むサンプルは233番及び235番であった。
【0120】
【表4】

【0121】
上記の数多くの異なる抗酸化物質を用いた安定性データは、MTGが他の脂溶性抗酸化物質に比べて、グルカゴンの酸化分解の抑制がより効果的であることを示す。この効果の概略は上記の表に示されており、以下の図を参照して説明する。
【0122】
図3において、25℃/相対湿度60%で7日間保存した後に分析したGLUの含有量を、当初(時間0)のGLUの成分に対する%でグラフ化している。MTGが、酸化を防ぐのに最も優れており、これとBHTのみがコントロールの(抗酸化物質を含まない)組成よりも優れていることが分かる。α−トコフェロール及びAscPalmは、これらの試験でグルカゴンを分解した。
【0123】
図4に、GLUに対応するピークと比較した場合の、検出した、相対保持がRR<1及びRR>1のそれぞれの分解生成物の量(全面積に対する%)を示す。分析が正常相(NP)HPLCカラムに基づくものであるため、RR<1の分解生成物は、GLUと比べてより疎水性であり、それに対してRR>1の分解生成物はより親水性である。
【0124】
検出したRR>1の分解生成物の主要部は、酸化グルカゴン(Met(O)27グルカゴン)により構成されている。MTGは、Met(O)27グルカゴンの形成を防止する上で最も効率的であることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)脂質マトリックスと、
ii)少なくとも1つのチオール化抗酸化物質と、
iii)任意で少なくとも1つの生理活性物質と、
iv)任意で少なくとも1つのキレート剤とを含む製剤。
【請求項2】
前記脂質マトリックスは、
a)少なくとも1つのジアシルグリセロール及び/またはトコフェロールと、
b)少なくとも1つのリン脂質と、
c)少なくとも1つの含酸素有機溶媒と、
d)任意で少なくとも1つのフラグメンテーション剤とを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記脂質マトリックスは、少なくとも1つの非ラメラ相の形態であるか、または水性流体にさらされると少なくとも1つの非ラメラ相を生成する、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記チオール化抗酸化物質は、チオール化糖、チオール化アミノ酸、チオール化アミノエステル、またはチオール化ポリオールである、請求項1から3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
前記チオール化抗酸化物質は、モノチオグリセロール、システイン、及びN−アセチルシステインから選択される、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記生理活性物質が存在し、前記生理活性物質は酸化分解し易い物質である、請求項1から5のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
前記生理活性物質は、少なくとも1つの活性医薬成分である、請求項1から6のいずれかに記載の製剤。
【請求項8】
キレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
脂溶性酸をさらに含む、請求項1から8のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
脂質マトリックスと、少なくとも1つの生理活性物質とを含む製剤における酸化分解を低減する方法であって、前記方法は少なくとも1つのチオール化抗酸化物質と任意で少なくとも1つのキレート剤を添加することを含む方法。
【請求項11】
脂質マトリックスと、少なくとも1つの生理活性物質とを含む製剤における酸化分解の低減へのチオール化抗酸化物質の使用。
【請求項12】
前記チオール化抗酸化物質を、EDTA等のキレート剤と組み合わせて用いる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記チオール化抗酸化物質を、少なくとも1つの脂溶性酸と組み合わせて用いる、請求項11または12に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−500787(P2012−500787A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523452(P2011−523452)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002054
【国際公開番号】WO2010/020794
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505345749)カムルス エービー (17)
【Fターム(参考)】