説明

チタン−アルミニウム混合酸化物粉末

1質量%未満の酸化アルミニウムの割合又は5質量%未満の二酸化チタンの割合を有し、二酸化チタン及び酸化アルミニウムの割合の合計が少なくとも99.7質量%である、チタン−アルミニウム混合酸化物粉末。前記粉末は、混合酸化物のうち量的により多い成分の揮発性の出発化合物を一次空気を用いて、かつ、混合酸化物のうち量的により少ない成分の揮発性の出発化合物を不活性ガスを用いて混合室中に移送し、そして混合室中で水素と混合した前記混合物を反応室中へと燃焼させることにより製造される。前記粉末は、触媒担体として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン−アルミニウム混合酸化物粉末、この製造及びこの使用に関する。
【0002】
DE-A-3611449には、酸化アルミニウム又は二酸化チタンを5〜95質量%含有するチタン−アルミニウム混合酸化物粉末が開示されている。混合酸化物粉末は、無水四塩化ジルコニウムが混合室中に不活性ガスを用いて移送され、水素及び四塩化チタンとここで混合され、かつこの混合物が反応室中で燃焼される火炎加水分解プロセスにより得られる。
【0003】
EP-A-595078からは、酸化アルミニウム1〜30質量%を含有し、かつ10〜150m2/gのBET表面積及びルチル含有率20〜90%を有するチタン−アルミニウム混合酸化物粉末が公知である。これは、揮発性の塩化アルミニウムを水素、空気及び揮発性の四塩化チタンを、バーナーの混合室中で混合し、かつこの混合物を燃焼させることにより製造される。
【0004】
DE-A-3633030からは、酸化アルミニウム20〜70質量%を含有し、かつ二酸化チタンが主としてルチル相で存在するチタン−アルミニウム混合酸化物粉末が公知である。これは、揮発性の塩化アルミニウム及び揮発性の四塩化チタンの混合物を水素/酸素火炎中で燃焼させることにより製造される。
【0005】
EP-A-1138632には、酸化アルミニウムドープさせた二酸化チタン粉末が記載されていて、前記粉末は、0.00001〜20質量%の酸化アルミニウムの割合を有してよい。これは、水性のアルミニウム塩溶液のエアロゾルを、四塩化チタン、水素及び空気からなる火炎加水分解のガス混合物と均質に混合し、次いでこの混合物を燃焼させることにより得られる。この方法の不利な点は、エアロゾルと一緒に導入される水の少なくとも部分量が四塩化チタンと反応し、二酸化チタンを形成することである。結果として、一方では、均一な生成物が得られない可能性があり、他方では、二酸化チタンの形成は、ケーキングを生じ、これによりこの反応器のしばしばの洗浄を必要とする。
【0006】
上述した方法を用いると、1質量%未満の酸化アルミニウム含有率又は5質量%未満の二酸化チタン含有率を有するチタン−アルミニウム混合酸化物粉末を得ることは不可能である。
【0007】
本発明の主題は、触媒担体としての使用に適したチタン−アルミニウム混合酸化物粉末を提供することである。
【0008】
本発明の更なる主題は、チタン−アルミニウム混合酸化物粉末の製造方法を提供することである。
【0009】
本発明は、チタン−アルミニウム混合酸化物粉末であって、酸化アルミニウムの割合が1質量%未満であるか又は二酸化チタンの割合が5質量%未満であり、二酸化チタン及び酸化アルミニウムの割合の合計が少なくとも99.7質量%であり、この割合が、それぞれの場合にこの粉末の全体量に対する、チタン−アルミニウム混合酸化物粉末を提供する。
【0010】
本発明によるチタン−アルミニウム混合酸化物粉末は、一次粒子のアグレゲートの形で存在する。この一次粒子は、非孔質である。この一次粒子の表面はヒドロキシ基を示す。
【0011】
「混合酸化物粉末」との用語は、一次粒子又はアグレゲートのレベルでの酸化アルミニウム及び二酸化チタンの混和が理解される粉末であるとして理解されるべきである。この一次粒子は、Al−O−Ti結合を示す。加えて、酸化アルミニウムの領域もまた、二酸化チタンの他に前記一次粒子中に存在できる。
【0012】
本発明によるチタン−アルミニウム混合酸化物粉末は、有利には、0.05〜0.8質量%の酸化アルミニウムの割合及び99.2〜99.95質量%の二酸化チタンの割合を有することができる。
【0013】
更に、0.05〜4質量%の二酸化チタンの割合及び96〜99.95質量%の酸化アルミニウムの割合を有する本発明によるチタン−アルミニウム混合酸化物粉末が有利であってよい。
【0014】
二酸化チタン及び酸化アルミニウムの割合の合計は、本発明によるチタン−アルミニウム混合酸化物粉末中で少なくとも99.7質量%である。前記粉末は、0.3質量%までの不純物を含有してよい。不純物の割合は一般的には、0.1質量%よりも少なく、従って二酸化チタン及び酸化アルミニウムの割合の合計は少なくとも99.9質量%である。不純物は、供給材料から又は製造方法から生じてよい。塩化物が一般的に主たる不純物である。
【0015】
本発明によるチタン−アルミニウム混合酸化物粉末中のルチルの割合は限定されない。二酸化チタンの量に対して、少なくとも10質量%の割合が有利であり、少なくとも20質量%の割合が特に有利である。
【0016】
DIN 66131に従って決定された、本発明によるチタン−アルミニウム混合酸化物粉末のBET表面積は限定されない。このBET表面積は、有利には10〜200m2/g、特に有利には40〜120m2/gであってよい。
【0017】
本発明はまた、本発明によるチタン−アルミニウム混合酸化物粉末の製造方法であって、
−混合酸化物のうち量的により多い成分のための出発化合物として、揮発性のチタン化合物又はアルミニウム化合物を、一次空気を用いて混合室中に移送し、
−場合により酸素で富化されかつ/又は予熱されていてよい一次空気を、第一の及び第二の混合酸化物成分の出発化合物の少なくとも50%がこの酸化物に変換され得るような量で導入し、これは少なくとも0.5のラムダ(Pr)値に相当し、かつ
−混合酸化物のうち量的により少ない成分のための出発化合物として、揮発性のアルミニウム化合物又はチタン化合物をも、混合酸化物のうち量的により多い成分のための出発化合物とは別個に、不活性のキャリアーガスを用いて混合室中に移送し、
−出発化合物の使用量を、混合酸化物粉末が、1質量%未満の酸化アルミニウムの割合又は5質量%未満の二酸化チタンの割合を有するように選択し、
−前記の揮発性のチタン化合物及びアルミニウム化合物とは別個に、水素を混合室中に導入し、そして前記の揮発性チタン化合物及びアルミニウム化合物の混合物、水素及び一次空気をバーナー中で点火し、そしてこの火炎を反応室中へと燃焼させ、
−次いで、固体をガス状物質から分離し、かつ
−この固体から次いで、250〜700℃の温度で蒸気を用いた処理により可能な限り塩化物を取り除き、かつ
−ラムダ(Pr)が1.0よりも小さい場合には、少なくとも1.0のラムダ(Pr+Sec)の値を生ずる量の二次空気を反応室中に供給し、かつ
−この際ガンマは≧1である、本発明によるチタン−アルミニウム混合酸化物粉末の製造方法をも提供する。
【0018】
本発明による方法の本質的な特徴は、混合酸化物のうち量的により多い成分のための出発化合物、及び全ての出発化合物を本発明による混合酸化物粉末に変換するために化学量論的に必要とされる空気の少なくとも50%が、一緒に混合室中に移送されることである。
【0019】
その他の本質的な特徴は、混合酸化物のうち量的により少ない成分のための出発化合物が、不活性ガスを用いて混合室中に移送されることである。
【0020】
混合室中に導入される空気が、出発化合物の本発明による混合酸化物粉末への完全な変換のために不十分である場合には、反応室中に二次空気が導入されることも本質的である。
【0021】
ガンマ値が、≧1、有利には1〜4であることも本質的である。異なるガンマ値は、(およそ)同じBET表面積及び変動可能なルチル含有量を有する本発明による混合酸化物粉末の製造を可能にする。より高いルチル含有量が、より高いガンマ値により得ることができる。
【0022】
図1は、本発明による方法の略図を示す。この図中で、a=量的により多い揮発性出発化合物;a1=一次空気;b=量的により少ない揮発性出発化合物;b1=不活性ガス;c=水素;d=二次空気;I=混合室;II=反応室を示す。
【0023】
揮発性のチタン化合物及びアルミニウム化合物は、加水分解又は酸化により相応する金属酸化物へと変換される。適した化合物は、ハロゲン化物、硝酸塩、アルコラート及び/又はカルボキシラートであってよい。
【0024】
この加水分解は、有利に使用される化合物、四塩化チタン及び塩化アルミニウムに基づいて次のように示されることができ、ここでは(大気)酸素と水素との反応から水が生じる:
TiCl4+2H2O→TiO2+4HCl;2AlCl3+3H2O→2Al23+6HCl。
【0025】
ガンマ及びラムダは次のように定義される:
ガンマ=供給されるH2/化学量論的に必要とされるH2
ラムダ=供給されるO2/化学量論的に必要とされるO2。ラムダはここでは、一次空気及び二次空気から導入される合計の酸素を含む。
【0026】
本発明による方法は、有利には、ラムダ(Pr)が0.7〜4であるように実施されてよい。
【0027】
ラムダ(Pr)が1未満であるかに関係無しに、二次空気は本発明による方法において反応室中に導入されてよい。有利には、ラムダ(Pr+Sec)は>1〜7である。
【0028】
本発明はまた、チタン−アルミニウム混合酸化物粉末の触媒担体としての使用をも提供する。
【0029】

例1:
TiCl4 600g/hを揮発させた。この蒸気を、一次空気(11Nm3/h)を用いて混合室中へと移送した。これとは別に、AlCl3 25g/hを揮発させ、同様に窒素を用いて混合室中へと移送した。四塩化チタン及び塩化アルミニウムとは別に、水素2.2Nm3/hを混合室中へと導入した。中央の管内では、この反応混合物をバーナー中へと供給し、そして点火した。この火炎は、水冷式反応室中へと燃焼した。更なる二次空気17Nm3/hを、反応室中へと供給した。生ずる粉末を下流のフィルタ内で分離し、次いで空気及び蒸気を用いて向流中で約700℃で処理した。
【0030】
例2〜5を、例1と同様に実施した。このそれぞれの量を表1に記した。
【0031】
例6:
AlCl3 1300g/hを揮発させた。この蒸気を、一次空気(1.35Nm3/h)を用いて混合室中へと移送した。これとは別に、TiCl4 10g/hを揮発させ、同様に窒素を用いて混合室中へと移送した。四塩化チタン及び塩化アルミニウムとは別に、水素0.538Nm3/hを混合室中へと導入した。中央の管内では、この反応混合物をバーナー中へと供給し、そして点火した。この火炎は、水冷式反応室中へと燃焼した。更なる二次空気17Nm3/hを、反応室中へと供給した。生じる粉末を下流のフィルタ内で分離し、次いで空気及び蒸気を用いて向流中で約700℃で処理した。
【0032】
例7及び8を、例6と同様に実施した。このそれぞれの量を表1に記した。
【0033】
表2は、熱負荷下での、Aeroxide(R) TiO2 P25、BET表面積45m2/g(Degussa)及び酸化アルミニウム試料(Alu 130,BET表面積130m2/g)と比較した、例2及び6からの本発明による粉末のBET表面積の挙動を示す。
【0034】
例2及び6は、酸化アルミニウム又は二酸化チタンの非常に少ない割合を有する本発明による粉末でさえも、熱負荷下でのBET表面積の安定性における増加を生じることを示す。
表1:使用した物質及び量;得られた粉末の物理化学的パラメーター
【表1】

【0035】
表2:熱処理下でのBET表面積の安定性
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明による方法の略図を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン−アルミニウム混合酸化物粉末において、酸化アルミニウムの割合が1質量%未満であるか又は二酸化チタンの割合が5質量%未満であり、二酸化チタン及び酸化アルミニウムの割合の合計が少なくとも99.7質量%であり、この割合が、それぞれの場合にこの粉末の全体量に対することを特徴とする、チタン−アルミニウム混合酸化物粉末。
【請求項2】
酸化アルミニウムの割合が0.05〜0.8質量%であり、かつ二酸化チタンの割合が99.2質量%〜99.95質量%であることを特徴とする、請求項1記載のチタン−アルミニウム混合酸化物粉末。
【請求項3】
二酸化チタンの割合が0.05〜4質量%であり、かつ酸化アルミニウムの割合が96〜99.95質量%であることを特徴とする、請求項1記載のチタン−アルミニウム混合酸化物粉末。
【請求項4】
二酸化チタン及び酸化アルミニウムの割合の合計が少なくとも99.9質量%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のチタン−アルミニウム混合酸化物粉末。
【請求項5】
ルチルの割合が、ルチル及びアナターゼの合計に対して、少なくとも10質量%であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のチタン−アルミニウム混合酸化物粉末。
【請求項6】
BET表面積が、10〜200m2/gであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のチタン−アルミニウム混合酸化物粉末。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載のチタン−アルミニウム混合酸化物粉末の製造方法において、
−混合酸化物のうち量的により多い成分のための出発化合物として、揮発性のチタン化合物又はアルミニウム化合物を、一次空気を用いて混合室中に移送し、
−場合により酸素で富化されかつ/又は予熱されていてよい一次空気を、第一の及び第二の混合酸化物成分の出発化合物の少なくとも50%がこの酸化物に変換され得るような量で導入し、これは少なくとも0.5のラムダ(Pr)値に相当し、かつ
−混合酸化物のうち量的により少ない成分のための出発化合物として、揮発性のアルミニウム化合物又はチタン化合物をも、混合酸化物のうち量的により多い成分のための出発化合物とは別個に、不活性のキャリアーガスを用いて混合室中に移送し、
−出発化合物の使用量を、混合酸化物粉末が、1質量%未満の酸化アルミニウムの割合又は5質量%未満の二酸化チタンの割合を有するように選択し、
−前記の揮発性のチタン化合物及びアルミニウム化合物とは別個に、水素を混合室中に導入し、そして前記の揮発性チタン化合物及びアルミニウム化合物の混合物、水素及び一次空気をバーナー中で点火し、そしてこの火炎を反応室中へと燃焼させ、
−次いで、固体をガス状物質から分離し、かつ
−この固体から次いで、250〜700℃の温度で蒸気を用いた処理により可能な限り塩化物を取り除き、かつ
−ラムダ(Pr)が1.0よりも小さい場合には、少なくとも1.0のラムダ(Pr+Sec)の値を生ずる量の二次空気を反応室中に供給し、かつ
−この際ガンマは≧1であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のチタン−アルミニウム混合酸化物粉末の製造方法。
【請求項8】
出発化合物が、四塩化チタン及び四塩化ジルコニウムであることを特徴とする、請求項7記載のチタン−ジルコニウム混合酸化物粉末の製造方法。
【請求項9】
ラムダ(Pr)が0.7〜4であることを特徴とする、請求項7又は8記載のチタン−ジルコニウム混合酸化物粉末の製造方法。
【請求項10】
ラムダ(Pr+Sec)が≧1〜7であることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載のチタン−ジルコニウム混合酸化物粉末の製造方法。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか1項記載のチタン−アルミニウム混合酸化物粉末の、触媒担体としての使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−525294(P2008−525294A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547481(P2007−547481)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056937
【国際公開番号】WO2006/067128
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】