説明

チタン含有副生成物を回収するための方法

本発明は、二酸化チタンの製造から発生するチタン含有副生成物の、特に溶接電極用のコーティング材料を製造するため、または電気溶接、特にサブマージアーク溶接用に使用することができる溶接粉末、溶接粉末添加剤、もしくはフラックス添加剤を製造するための方法の過程における回収に関する。二酸化チタンの製造から発生するチタン含有副生成物の回収および使用を、経済的に見て効率的に可能にする解決策を提供するために、本発明は、製造工程または製造状況で副生成物または廃棄物として発生するチタン含有副生成物(すなわち、チタン、特に酸化チタン、を含む物質)が、コーティング材料の製造においてまたは電気溶接、特にサブマージアーク溶接用に使用することができる溶接粉末、溶接粉末添加剤、もしくはフラックス添加剤の製造において、溶接粉末、溶接粉末添加剤、またはフラックス添加剤に添加されるかまたはそれらと混合され、そして溶接粉末および/または溶接粉末添加剤および/またはフラックス添加剤へと加工されるということを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接電極をコーティングするためのコーティング材料を製造するための、または電気溶接、特にサブマージアーク溶接(Unterpulverschweissen)で使用することができる溶接粉末、溶接粉末添加剤またはフラックス添加剤を製造するためのプロセスに関する。
【0002】
本発明はさらに、二酸化チタンの調製で得られるチタン含有副生成物または廃棄物を利用するためのプロセスに関する。
【0003】
また本発明は、二酸化チタンの調製で得られるチタン含有副生成物または廃棄物の使用に、ならびに溶接粉末添加剤、溶接粉末、コーティング材料および溶接電極に関する。
【背景技術】
【0004】
二酸化チタン、特に二酸化チタン顔料の調製では、さらに使用することが困難でそれゆえ通常は廃棄物と考えられるチタン含有副生成物が、通常、得られる。例えばアスファルト充填剤として、ごみ処理場の被覆材(Deponieabdeckung)としてまたは溶鉱炉の中での添加剤としてのこれらのチタン含有副生成物または廃棄物のさらなる利用は知られているが、チタン含有副生成物または廃棄物のこのタイプの使用は、通常、不経済である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、経済的に有利な方法で、二酸化チタンの調製で得られるチタン含有副生成物または廃棄物の利用および使用を可能にする解決策を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明によれば、独立請求項の特徴によって成し遂げられる。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に示されている。
【0007】
溶接電極をコーティングするためのコーティング材料を製造するための、または電気溶接、特にサブマージアーク溶接で使用することができる溶接粉末、溶接粉末添加剤またはフラックス添加剤を製造するための本発明のプロセスは、二酸化チタン製造プロセス、特に二酸化チタン顔料製造プロセスの過程の中での製造工程におけるまたは製造段階における副生成物または廃棄物として得られるチタン含有の、特に二酸化チタン含有の、物質が、コーティング材料または溶接粉末および/もしくは溶接粉末添加剤および/もしくはフラックス添加剤の中へと添加され、かつ/または混合され、そして加工され、好ましくはさらに加工されて、そのコーティング材料または溶接粉末および/もしくは溶接粉末添加剤および/もしくはフラックス添加剤を与えることを特徴とする。
【0008】
二酸化チタンの調製で得られるチタン含有副生成物または廃棄物を利用するための本発明のプロセスは、そのチタン含有副生成物または廃棄物が、溶接電極をコーティングするためのコーティング材料として、または溶接プロセス、特にサブマージアーク溶接プロセスにおける添加剤として使用されることを特徴とする。
【0009】
二酸化チタンの調製で得られるチタン含有副生成物の使用は、このチタン含有副生成物が、溶接電極用のコーティング材料として、または溶接プロセスにおける、特にサブマージアーク溶接プロセスにおける添加剤として、ならびに/または溶接粉末および/もしくは溶接粉末添加剤および/もしくはフラックス添加剤の製造における酸化チタン含有、特に二酸化チタン含有、物質として使用されることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
溶接電極をコーティングするための、または溶接プロセス、特にサブマージアーク溶接プロセスにおける、または溶接粉末もしくは溶接粉末添加剤もしくはフラックス添加剤を製造するための、二酸化チタンの調製で得られる廃棄物またはチタン含有副生成物の使用により、このチタン含有副生成物または廃棄物を経済的に利用することが可能になる。このチタン含有副生成物または廃棄物は、溶接プロセスで必要とされる溶接粉末用の添加剤として、フラックス用添加剤として、または溶接電極をコーティングするための添加剤として、使用することができる。このチタン含有副生成物または廃棄物は、その組成の高い一貫性を持ち、そのため、このチタン含有副生成物または廃棄物は、溶接電極用コーティング材料として、または溶接プロセスへの添加剤として、または溶接粉末用の添加剤として特に良好に使用することができる。二酸化チタン(TiO)に加えて存在する随伴元素のタイプ、特にケイ素(Si)およびアルミニウム(A1)は、溶接での要求事項に非常に適合する。
【0011】
本発明の有利な実施形態では、当該チタン含有副生成物または廃棄物は二酸化チタンを含有する。このチタン含有副生成物または廃棄物中の二酸化チタンの存在により、特に電気溶接によって溶接される対象の材料の場合の、特に良好な機械的特性、特に、低温における高靭性、を成し遂げることが可能になる。二酸化チタンから、金属チタンは、例えば、サブマージアーク溶接において提供される電弧を介して、溶接されつつある材料へと侵入することができ、その結果として、第1に、溶接されつつある材料の良好な機械的特性および、第2に、狭い溶接継ぎ目での溶接の際の最初のスラグの容易な除去がもたらされうる。このようにして、非常に少ない欠陥しか有しない非常に滑らかな溶接ビーズ表面を成し遂げることができる。
【0012】
このチタン含有副生成物または廃棄物は、好ましくは10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%の二酸化チタン含有量を有する。コーティング材料としてまたは溶接粉末用の溶接粉末添加剤として使用するための当該チタン含有副生成物または廃棄物の二酸化チタン含有量は、本発明によれば、好ましくは10重量%超、特に20重量%超である。なぜなら、より低い二酸化チタン含有量は、溶接ビーズの形状および表面に、例えば溶接継ぎ目の靭性の低下の形で悪影響を与える可能性があり、または溶接ビーズ表面上のスラグは、苦労なくして除去することができないからである。
【0013】
さらには、2.0重量%未満、好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満、特に好ましくは0.05重量%未満の硫黄含有量を有するチタン含有副生成物または廃棄物が好ましい。チタン含有副生成物または廃棄物中の非常に低い硫黄含有量によって、コーティング材料としてのまたは溶接粉末添加剤としてのチタン含有副生成物または廃棄物の特性が改善されることが可能になる。硫黄含有量は、化学的処理または熱処理、例えばか焼によって低下させることができる。
【0014】
さらには、0.1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜25重量%の二酸化ケイ素含有量(SiO含有量)を有するチタン含有副生成物または廃棄物が好ましい。二酸化ケイ素は、粘度を調整するための酸性構成成分として働いて、ガラス状のスラグをもたらし、これはビーズ表面の良好な外観を与える。
【0015】
0.3重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に好ましくは0.02重量%未満の塩化物含有量を有するチタン含有副生成物または廃棄物が好ましい。
【0016】
0.1〜30重量%、好ましくは2.0〜20重量%、特に好ましくは3.0〜8.0重量%のマグネシウム含有量を有するチタン含有副生成物または廃棄物が好ましい。マグネシウムは、酸化マグネシウムまたは酸化物化合物の形態で存在することが好ましい。
【0017】
さらには、1〜30m/g、好ましくは1〜20m/g、特に好ましくは1〜15m/gのBET表面積を有するチタン含有副生成物または廃棄物が好ましい。
【0018】
酸化チタン鉄(Eisentitanoxide)および/またはチタン石(CaTiO(SiO))および/またはケイ酸チタンアルミニウム(Aluminiumtitan−Silikat)を含有するチタン含有副生成物または廃棄物が好ましい。
【0019】
本発明のさらなる有利な実施形態では、硫酸塩プロセスによる二酸化チタンの調製において溶解残渣(Aufschlussrueckstand)として得られるチタン含有副生成物または廃棄物が使用される。このチタン含有副生成物または廃棄物は、例えば、金紅石(Rutilit)の形態で存在することもできる。金紅石についての特性および製造プロセスは、独国特許第103 36 650(A1)号明細書に記載されている。溶解残渣は、硫酸塩プロセスによる二酸化チタンの調製において形成される。この硫酸塩プロセスでは、高濃度硫酸を用いたイルメナイト、チタン鉄鉱(TiFeO)またはチタンスラグの溶解によって溶解溶液が生成され、固形分が分離されることにより、特に濾過によって分離されることにより、固形分含有塊が、生成した溶解溶液から得られる。溶解残渣は、一般に、約30〜70重量%の二酸化チタンを含有し、これに、(主にチタン酸塩の形態で)マグネシウムおよび/またはアルミニウムおよび/または鉄および/またはカルシウムが付随する。溶解残渣の中の二酸化チタンのうちの少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%が、ルチル型であることが好ましい。これらの値は、単にルチルおよびアナターゼの全量に基づくもので、他の結晶変態およびX線非晶構成成分は考慮に入れない。この溶解残渣は、好ましくは、例えばMgTiおよび/またはMg0.75Ti2.25の形態のチタン酸マグネシウム、チタン酸鉄、例えばイルメナイト(FeTiO)、およびチタン酸カルシウム、例えばCaTiOをともに含有する。さらには、溶解残渣は、Feとして算出して、好ましくは0.5〜30重量%の量の、より好ましくは2〜15重量%の量の酸化鉄または酸化チタン鉄を含有することが好ましい。さらには、溶解残渣は、好ましくは、0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%のアルミニウム含有量(好ましくはAlとして)、および5〜40重量%、好ましくは15〜35重量%のケイ素含有量(好ましくはSiOとして)を有する。この溶解残渣は、濾過ケーキの形態で得られることが好ましく、その結果、大まかに微粉化された固形分が得られる。この溶解残渣は、より好ましくは、5〜12のpHに到達するまで中和剤としての塩基を濾過ケーキに加えることにより得られる。溶解残渣から硫酸塩を洗浄することで、低硫酸塩の、中和された、微粉化された物質が与えられる。最初に得られる濾過ケーキの洗浄は、公知の濾過装置、例えばロータリー真空フィルターまたはチャンバーフィルタープレスもしくはメンブランフィルタープレスを用いて実施することができる。このようにして得られる洗浄された溶解残渣は、少量の硫酸塩を含有する。中和剤の水溶液を用いて濾過ケーキを洗浄することによって、予めスラリー化することなく、濾過装置の中もしくは上で直接、濾過ケーキの中和を実施することも可能である。好適な中和剤は、すべての慣用的なアルカリ化合物、例えば固体の、または溶解したアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物である。アンモニウム化合物は、中和剤として特に有利である可能性がある。なぜなら、硫酸イオンまたは塩化物イオンなどのアニオンは、このようにして、後のか焼によって部分的にまたは完全に除去することができることができるからである。このようにして得られるチタン濃縮物は、乾燥されることが好ましい。乾燥は、当業者に公知のいずれかの方法および装置を使用して、例えば乾燥器の中で、バンド乾燥機、噴霧乾燥機またはスピンフラッシュドライヤーによって実施することができる。しかしながら、濾過ケーキを乾燥せず、代わりに最初に、任意に水のさらなる添加を活用して、濾過ケーキを、溶接粉末または溶接粉末添加剤にとって有益なさらなる添加剤、例えばCa含有化合物およびAl含有化合物、金属粉末、石灰またはフッ化物、例えばCaF、と混合することも有利である可能性がある。溶解残渣の粒子の少なくとも90%が90μm未満の直径を有することが好ましい。特に好ましい溶解残渣は、独国特許第197 25 021(A1)号明細書に記載されている充填剤である。
【0020】
本発明のさらなる有利な実施形態では、塩素化プロセスの後の塩化物プロセスによる二酸化チタンの調製で得られるチタン含有副生成物または廃棄物が使用される。塩素化プロセスは、塩化物プロセスの1つの工程または段階である。塩化物プロセスでは、濃縮チタン鉱またはルチルが、コークスと一緒に、特に耐塩素性の流動床炉中、約1000℃での塩素ガスおよびTiCl燃焼からの酸素含有ガスとの反応に供される。ここで、塩素は、この鉱石の酸化チタンおよび導入された炭素と反応し、ガス状の四塩化チタンおよび二酸化炭素を形成する。この反応器の床の主成分は、チタン含有原料、コークス(石油コークス)、および経時的に反応器の床に次第に蓄積するSiOであり、そのため、反応器の床(Bett)の一部は、定期的な間隔で反応器から除去される必要がある。チタン含有副生成物の形態の残渣は、塩素化プロセスの間に得られ、これらは、その組成のため、溶接電極をコーティングするためのコーティング材料用の添加剤として、または溶接粉末もしくは溶接粉末添加剤として、本発明に従って特に良好に使用することができる。さらには、塩素化炉から排出される微粉化された固形分(主にTiO、SiOおよびコークス)は、TiClおよび他の金属塩化物を除去した後、溶接における添加剤としての使用に回すことができる。可溶性の金属塩化物を除去するための洗浄が実施されることが好ましい。さらには、塩化物プロセスで得られる金属塩化物の中和生成物、特に水酸化物による中和生成物は、溶接における添加剤としての使用に回すことができる。なぜなら、これらは、まだかなりの量のチタン(Ti)を不純物として含有する可能性があるからである。水酸化物を酸化物へと変換するために、熱処理が実施されることが好ましい。
【0021】
チタン含有副生成物または廃棄物の特性を改善するために、硫酸塩プロセスまたは塩素化プロセスで得られるチタン含有副生成物または廃棄物は、洗浄により、可溶性アニオン、主に硫酸アニオンおよび塩化物アニオンが少なくとも部分的に除かれることが好ましい。洗浄に変わるものとして、硫酸塩プロセスで得られる可溶性アニオンまたは塩素化プロセスで得られる可溶性アニオンは、アンモニアによってそのチタン含有副生成物または廃棄物の中で中和されてもよく、得られたアンモニウム塩は、熱的に追い出すことができる。
【0022】
6〜8の範囲のpHへの中和を実施し、その後で中性の塩を洗浄することが可能である。しかしながら、この場合、特定量の硫酸塩または塩化物が固形分の中に残ることが多い。代替として、アルカリ化合物を使用する中和は、8を超える、好ましくは10を超えるpHへと実施することができる。硫酸塩または塩化物の残留含有量は、このようにして非常に低い値にすることができる。自身も溶接粉末用の添加剤として使用されるアルカリ物質を使用することが特に好ましい。例は、MgO、MgCO、Mg(OH)、ケイ酸ナトリウム、およびアルカリ反応を有しかつ難溶性の硫酸塩または塩化物をまったく形成しない類似の化合物である。
【0023】
可溶性のアニオンの洗い流しは、実施される濾過プロセスの後に、アルカリ溶液を用いる洗浄により実施されることが好ましい。アルカリ溶液として、MgO、Mg(OH)またはMgCOなどのマグネシウム化合物が好ましい。代替として、ケイ酸ナトリウムをアルカリ溶液として使用することも可能である。
【0024】
溶接電極用のコーティング材料として、もしくは溶接プロセスにおける添加剤として使用する前に、または溶接粉末もしくは溶接粉末添加剤もしくはフラックス添加剤の製造前もしくは製造中に、当該チタン含有副生成物または廃棄物はか焼されることが好ましい。
【0025】
溶接電極用のコーティング材料としてもしくは溶接プロセスにおける添加剤として使用する前に、または溶接粉末もしくは溶接粉末添加剤もしくはフラックス添加剤の製造前もしくは製造中に、このチタン含有副生成物または廃棄物のか焼が実施されない場合は、代替として、溶接電極用のコーティング材料としてもしくは溶接プロセスにおける添加剤として使用する前に、または溶接粉末もしくは溶接粉末添加剤もしくはフラックス添加剤の製造前もしくは製造中に、このチタン含有副生成物または廃棄物を鉱物系添加剤と混合することが可能である。
【0026】
さらには、好ましくは溶接電極用のコーティング材料としてもしくは溶接プロセスにおける添加剤として使用する前に、または溶接粉末もしくは溶接粉末添加剤もしくはフラックス添加剤の製造前もしくは製造中に、チタン含有副生成物または廃棄物が、イルメナイト、チタンスラグおよび/または鉄含有解離生成物と混合されることが好ましい。これによって、チタン含有副生成物または廃棄物の鉄含有量を増やすことが可能になる。これは、溶接プロセスのために使用されるべき溶接粉末または溶接粉末添加剤を製造するためにチタン含有副生成物または廃棄物が使用されるとき、特に有利である。
【0027】
本発明は、上記のプロセスによってチタン含有副生成物または廃棄物から製造された溶接粉末添加剤をさらに提供する。この溶接粉末添加剤の中に存在するチタン含有副生成物または廃棄物は、好ましくは酸化チタン鉄および/またはチタン石(CaTiO(SiO))および/またはケイ酸アルミニウムを含有し、そして、硫酸塩プロセスによる二酸化チタンの調製からの溶解残渣または二酸化チタンの調製における塩化物プロセスの中の塩素化のプロセス工程で得られる残渣であることが好ましい。
【0028】
チタン含有副生成物または廃棄物が、当該溶接粉末添加剤の中で、5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%の質量割合で存在することが好ましい。
【0029】
さらには、1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の酸化チタン水和物が、当該溶接粉末添加剤の中に存在することが好ましい。
【0030】
本発明は、上記の溶接粉末添加剤を含む溶接粉末をさらに提供する。
【0031】
本発明は、上記のプロセスによってチタン含有副生成物または廃棄物から製造された、溶接電極用のコーティング材料をさらに提供する。このコーティング材料の中に存在するチタン含有副生成物または廃棄物は、好ましくは酸化チタン鉄および/またはチタン石(CaTiO(SiO)および/またはケイ酸アルミニウムを含有し、そして、硫酸塩プロセスによる二酸化チタンの調製からの溶解残渣または二酸化チタンの調製における塩化物プロセスの中の塩素化のプロセス工程で得られる残渣であることが好ましい。
【0032】
チタン含有副生成物または廃棄物が、当該コーティング材料の中で、5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%の質量割合で存在することが好ましい。
【0033】
1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の酸化チタン水和物が、当該コーティング材料の中に存在することも好ましい。
【0034】
以降では、4つの実施例を用いて本発明を説明する。
【実施例】
【0035】
実施例1:
最初に、硫酸塩プロセスによる二酸化チタン製造からの溶解残渣を、濾過により、黒色溶液から分離する。このようにして得られる濾過ケーキを、その後、再懸濁し、水酸化ナトリウムによって中和し(pH=6〜9)、フィルタープレスを用いて再度濾過し、固形分に基づいて0.5重量%未満の硫酸塩含有量が得られるように、十分に洗浄する。このようにして得られる物質を、その後、懸濁し、得られる懸濁液を噴霧乾燥する。この物質のBET表面積は10.6m/gである。このようにして得られる、
48.2重量%のTiO
26.3重量%のSiO
7.7重量%のFe
3.2重量%のAl
2.3重量%のMgO
3.6重量%のCaO
を含有する前処理された溶解残渣を、TiO:CaO:Al:SiO:CaF=23:16:11:32:11の重量比が得られるように、従来のCaO、Al、SiOおよびCaF含有物質と混合する。このようにして得られる混合物は、低粘度、良好な濡れ挙動および電弧の良好な安定性を有する溶接粉末を与える。アルカリ金属化合物または金属などのさらなる添加剤が、所望の特定の特性に応じて、この溶接粉末に添加されてもよい。
【0036】
実施例2:
塩化物プロセスによる二酸化チタンの調製におけるチタン含有出発物質の連続塩素化のプロセス工程で得られ、反応器の床から取り出される固形分混合物を水酸化ナトリウムによって中和し(pH=8〜10)、フィルタープレスを用いて濾過し、十分に洗浄し、その後乾燥する。炭素含有分を排除するために、得られた物質をか焼工程にかける。これにより、
26重量%のTiO
54重量%のSiO
4重量%のFe
6重量%のMgO
を含む物質が得られ、この物質を、TiO:CaO:Al:SiO:CaF=23:16:11:32:11の重量比が得られるように、従来のCaO、Al、SiOおよびCaF含有物質と混合する。このようにして得られる混合物は、低粘度、良好な濡れ挙動および電弧の良好な安定性を有する溶接粉末を与える。アルカリ金属化合物または金属などのさらなる添加剤が、所望の特定の特性に応じて、この溶接粉末に添加されてもよい。
【0037】
実施例3:
独国特許第103 36 350(A1)号明細書の実施例1に記載されており、かつ、
53重量%のTiO
28重量%のSiO
5.9重量%のFe
6.1重量%のAl
2.4重量%のMgO
4.2重量%のCaO
を含む熱処理した溶解残渣を用い、この物質を、TiO:CaO:Al:SiO:CaF=23:16:11:32:11の重量比が得られるように、従来のCaO、Al、SiOおよびCaF含有物質と混合する。このようにして得られる混合物は、低粘度、良好な濡れ挙動および電弧の良好な安定性を有する溶接粉末を与える。アルカリ金属化合物または金属などのさらなる添加剤が、所望の特定の特性に応じて、この溶接粉末に添加されてもよい。
【0038】
実施例4:
硫酸塩プロセスによる二酸化チタン製造からの溶解残渣を、濾過により、黒色の溶液から新たに分離し,得られた濾過ケーキを、その後、再懸濁し、水酸化ナトリウムによって中和し(pH=6〜9)、フィルタープレスを用いて再度濾過し、固形分に基づいて0.7重量%の硫酸塩含有量が得られるように、十分に洗浄する。このようにして得られる物質を乾燥器の中で乾燥し、その後で得られ、かつ
59重量%のTiO
20重量%のSiO
13重量%のFe
を含む前処理された溶解残渣を、ルチル溶接電極を製造するための従来の材料、すなわちCaCO、SiO、Fe、TiO(天然のルチル)およびFe−Mn粉末と、以下の組成:
45重量%のTiO
20重量%のSiO
10重量%のFe
10重量%のCaCO
15重量%のFe−Mn粉末
を得るように混合する。ここで、溶解残渣の割合は、全量に基づいて25重量%である。ケイ酸ナトリウムを結合剤として使用する。このようにして得られる混合物は、良好な溶接挙動および電弧の良好な安定性を有する溶接粉末を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電極をコーティングするためのコーティング材料を製造するための、または電気溶接、特にサブマージアーク溶接で使用することができる溶接粉末、溶接粉末添加剤もしくはフラックス添加剤を製造するためのプロセスであって、二酸化チタン製造プロセス、特に二酸化チタン顔料製造プロセスの過程の中での製造工程におけるまたは製造段階における副生成物または廃棄物として得られるチタン含有の、特に二酸化チタン含有の、物質が、コーティング材料または溶接粉末および/もしくは溶接粉末添加剤および/もしくはフラックス添加剤の中へと添加され、かつ/または混合され、そして加工され、前記コーティング材料または前記溶接粉末および/もしくは前記溶接粉末添加剤および/もしくは前記フラックス添加剤を与えることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
二酸化チタンの調製で得られるチタン含有副生成物または廃棄物を利用するためのプロセスであって、前記チタン含有副生成物または廃棄物が、溶接電極をコーティングするためのコーティング材料として、または溶接プロセス、特にサブマージアーク溶接プロセスにおける添加剤として使用される、プロセス。
【請求項3】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は二酸化チタンを含有する、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%の二酸化チタン含有量を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、2.0重量%未満、好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満、特に好ましくは0.05重量%未満の硫黄含有量を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、0.1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜25重量%の二酸化ケイ素含有量を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、0.3重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に好ましくは0.02重量%未満の塩化物含有量を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、0.1〜30重量%、好ましくは2.0〜20重量%、特に好ましくは3.0〜8.0重量%のマグネシウム含有量を有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、1〜30m/g、好ましくは1〜20m/g、特に好ましくは5〜15m/gのBET表面積を有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、酸化チタン鉄および/またはチタン石(CaTiO(SiO))および/またはケイ酸チタンアルミニウムを含有する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
硫酸塩プロセスによる二酸化チタンの調製において溶解残渣として得られるチタン含有副生成物または廃棄物が使用される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
塩化物プロセスによる二酸化チタンの調製において塩素化プロセスの後に得られるチタン含有副生成物または廃棄物が使用される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記硫酸塩プロセスまたは前記塩素化プロセスで得られる前記副生成物または廃棄物は、洗浄により、可溶性アニオンが少なくとも部分的に除かれる、請求項11または請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記チタン含有副生成物または廃棄物はか焼される、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は鉱物系添加剤と混合される、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、イルメナイト、チタンスラグおよび/または鉄含有解離生成物と混合される、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
溶接電極用のコーティング材料として、または溶接プロセスにおける、特にサブマージアーク溶接プロセスにおける添加剤として、ならびに/または溶接粉末および/もしくは溶接粉末添加剤および/もしくはフラックス添加剤の製造における酸化チタン含有、特に二酸化チタン含有、物質としての、二酸化チタンの調製で得られるチタン含有副生成物または廃棄物の使用。
【請求項18】
チタン含有副生成物または廃棄物を使用して、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のプロセスによって製造される、溶接粉末添加剤。
【請求項19】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%の質量割合で存在する、請求項18に記載の溶接粉末添加剤。
【請求項20】
1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の酸化チタン水和物が前記溶接粉末添加剤の中に存在する、請求項18または請求項19に記載の溶接粉末添加剤。
【請求項21】
請求項18から請求項20のいずれか1項に記載の溶接粉末添加剤を含む、溶接粉末。
【請求項22】
チタン含有副生成物または廃棄物を使用して、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のプロセスによって製造される、溶接電極用のコーティング材料。
【請求項23】
前記チタン含有副生成物または廃棄物は、5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%の質量割合で存在する、請求項22に記載のコーティング材料。
【請求項24】
1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の酸化チタン水和物が、前記コーティング材料の中に存在する、請求項22または請求項23に記載のコーティング材料。
【請求項25】
金属コアと、コーティングとを有する溶接電極であって、前記コーティングは、請求項22から請求項24のいずれか1項に記載のコーティング材料によって形成されている、溶接電極。

【公表番号】特表2013−515617(P2013−515617A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546429(P2012−546429)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070766
【国際公開番号】WO2011/080253
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512169981)クレノックス ゲーエムベーハー (1)
【出願人】(512169992)
【Fターム(参考)】