説明

チタン酸バリウム粉末の製造方法及びチタン酸バリウム粉末

【課題】本発明はチタン酸バリウム粉末の製造方法及びそれによるチタン酸バリウム粉末に関する 。
【解決手段】本発明によるチタン酸バリウム粉末の製造方法は、比表面積が90m/g以上である二酸化チタン(TiO)粉末と比表面積が40m/g以上である炭酸バリウム(BaCO)粉末を準備する段階と、二酸化チタン粉末、上記炭酸バリウム粉末、溶媒、及び分散剤を比表面積が50m/g以上になるように混合する段階と、重量減少率が90%以上である温度で減圧して1次熱処理する段階と、850℃以下の温度で2次熱処理する段階と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸バリウム粉末の製造方法及びこれを用いて製造されたチタン酸バリウム粉末に関し、より詳しくは、微粒の原材料を適用して混合/粉砕などの工程によって均一な粒度分布を有するチタン酸バリウム粉末の製造方法及びこれを用いて製造されたチタン酸バリウム粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の誘電体材料として、ペロブスカイト(Perovskite)構造を有する酸化物(例えば、BaTiOなどの材料)が使われている。
【0003】
誘電体材料としてペロブスカイト構造を有する酸化物を使用する電子部品の一例としては、積層セラミックコンデンサ(MLCC;Multi Layered Ceramic Condenser)がある。
【0004】
最近、電子部品の高性能化及び高集積化が進行するにつれて、積層セラミックコンデンサのような電子部品の誘電体層の内部電極の薄層化及び高層化が要求されている。
【0005】
誘電体層が薄層化される場合、主成分であるチタン酸バリウムの粒径が大きいと誘電体グリーンシートが緻密化されず、表面粗度が高くてショート(Short)率が高くなり、絶縁抵抗などの信頼性が低下する。
【0006】
従って、主成分であるチタン酸バリウムの高結晶微粒子化が要求される。
【0007】
積層セラミックコンデンサ用チタン酸バリウム粉末の製造方法としては、シュウ酸塩法、水熱合成法、及び固相合成法がある。
【0008】
シュウ酸塩法の場合、原料であるシュウ酸塩バリウムチタニル(Barium Titanyl Oxalate)の熱分解を経てチタン酸バリウムを合成する方法であり、結晶性が高いチタン酸バリウムの合成のために高温で熱処理する必要がある。そのため、結晶性が高く、且つ粒度分布が均一な微粒のチタン酸バリウムの製造には限界がある。
【0009】
水熱合成法の場合、液相から粒子を析出させる方法であり、粒子結晶内の水酸基の欠陥が含まれて最終焼結体の密度が低く、高価な設備が必要となり、製造単価が高くなる。
【0010】
一方、固相合成法の場合、炭酸バリウムと二酸化チタンを混合し、高温熱処理を通じて反応させてチタン酸バリウムを製造する方法であり、低コストでの大量生産が可能であるが、この場合、チタン酸バリウム粉末の製造において粉末の粒度制御が難しいという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、固相合成法を適用してチタン酸バリウム粉末の低コスト化、大量生産を可能にすると共に、微粒の原材料を適用して混合/粉砕などの工程を経て従来技術より低温で均一な粒度分布を有するチタン酸バリウム粒子を製造することができるチタン酸バリウム粉末の製造方法及びこれを用いて製造されたチタン酸バリウム粉末を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−290944号公報
【特許文献2】特開2008−222522号公報
【0013】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末の製造方法は、比表面積が90m/g以上である二酸化チタン(TiO)粉末と比表面積が40m/g以上である炭酸バリウム(BaCO)粉末を準備する段階と、上記二酸化チタン粉末、炭酸バリウム粉末、溶媒、及び分散剤を混合して混合粉末の比表面積が50m/g以上になるようにする段階と、上記混合粉末の重量減少率が90%以上になる温度で減圧して1次熱処理する段階と、850℃以下の温度で2次熱処理する段階と、を含む。
【0014】
上記2次熱処理により製造されたチタン酸バリウム粉末の平均粒径は100nm以下であることができる。
上記2次熱処理により製造されたチタン酸バリウム粉末のC/A軸比は1.0以上であることができる。
【0015】
上記チタン酸バリウム粉末の粒径は75nmから100nmであることができる。
【0016】
上記チタン酸バリウム粉末のC/A軸比は1.008以上であることができる。
【0017】
上記混合段階では、上記混合粉末の比表面積が70m/g以上になるように混合できる。
【0018】
上記混合段階は、0.1mm以下のビーズ(bead)を使用してビーズミル(bead mill)方式で混合されることができる。
【0019】
上記分散剤は、アンモニウムポリカルボキシレート(Ammonium polycarboxylate)系分散剤及びアンモニウムポリアクリレート(Ammonium polyacrylate)系分散剤からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0020】
上記1次熱処理の温度は650℃から800℃であることができる。
【0021】
上記1次熱処理段階では100Pa以下の圧力に減圧して熱処理することができる。
【0022】
上記2次熱処理温度は750℃から850℃であることができる。
【0023】
上記1次熱処理により製造されたチタン酸バリウム粉末の比表面積は30m/g以上であることができる。
【0024】
本発明の他の実施形態により製造されたチタン酸バリウム粉末は、固相合成法により製造され、粉末の平均粒径は100nm以下であり、C/A軸比は1.0以上であることができる。
【0025】
粉末の平均粒径は75nmから100nmであることができる。
【0026】
粒度分布はD99/D50<2の条件を満たすことができる。
【0027】
上記チタン酸バリウム粉末のC/A軸比は1.008以上であることができる。
〔発明の効果〕
【0028】
本発明の一実施形態によると、固相合成法を適用してチタン酸バリウム粉末の低コスト化、大量生産を可能にすると共に、微粒の原材料を適用して混合/粉砕などの工程によって従来技術より低温で均一な粒度分布を有するチタン酸バリウム粒子を製造することができるチタン酸バリウム粉末の製造方法及びこれを用いて製造されたチタン酸バリウム粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末の製造方法を示す工程フローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態による二酸化チタンと炭酸バリウム混合粉末の温度による重量減少率を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態による1次熱処理段階後、粉末のXRD(X-ray diffraction)回折パターン状を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態により製造されたチタン酸バリウム粉末を示すSEM(scanning electron microscope)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるように好ましい実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明するにあたり、関連する公知機能または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明にする場合にはその詳細な説明を省略する。
【0031】
また、類似する機能及び作用をする部分については図面全体にわたって同一符号を使用する。
【0032】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を‘含む’ということは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことがあるということを意味する。
【0033】
以下、図1から図4を参照して本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末の製造方法及びこれによるチタン酸バリウム粉末について説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末の製造方法を示す工程フローチャートであり、図2は、本発明の一実施形態による二酸化チタンと炭酸バリウム混合粉末の温度による重量減少率を示すグラフであり、図3は、本発明の一実施形態による1次熱処理段階後、粉末のXRD回折パターン状を示すグラフであり、図4は、本発明の一実施形態により製造されたチタン酸バリウム粉末を示すSEM写真である。
【0035】
本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末の製造方法を示す工程フローチャートを示す図1を参照すると、本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末の製造方法は、比表面積が90m/g以上である二酸化チタン粉末と比表面積が40m/g以上である炭酸バリウムを準備する段階(S100)と、上記二酸化チタン粉末と炭酸バリウム粉末を比表面積が50m/gになるように混合し、好ましくは70m/gになるように混合する段階(S110)と、上記二酸化チタン粉末と上記炭酸バリウム粉末の混合粉末の重量減少率が90%以上である温度で減圧して1次熱処理する段階(S120)と、850℃以下の温度で2次熱処理する段階(S130)と、を含む。
【0036】
チタン酸バリウム粉末を製造するために固相合成法を用い、上記固相合成法によって、二酸化チタン(TiO)粉末と炭酸バリウム(BaCO)を準備する(S100)。二酸化チタン(TiO)粉末は、比表面積が90m/g以上であってもよく、上記炭酸バリウム粉末(BaCO)は比表面積が40m/g以上であってもよい。
【0037】
粒度分布が均一な高結晶性チタン酸バリウム系化合物を製造するために比表面積が大きい物質を原材料として使用することができる。比表面積が大きい物質であるほど、粒度は小さいため、チタン酸バリウム合成工程における反応温度を下げることができる。
【0038】
二酸化チタン(TiO)粉末と炭酸バリウム(BaCO)粉末を用いてチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を製造するために、Ba/Tiモル比が0.99から1.01になるように二酸化チタン粉末とチタン酸バリウム粉末を混合することができる。
【0039】
用意した二酸化チタン粉末、炭酸バリウム粉末、溶媒、及び分散剤を混合して混合粉末の比表面積が50m/gになるように混合することができ、好ましくは、70m/gになるように混合することができる(S110)。
【0040】
比表面積が90m/g以上である二酸化チタン粉末と比表面積が40m/g以上である炭酸バリウム粉末に溶媒及び分散剤を添加して混合する。
【0041】
分散剤は、微粒の原材料粉末を溶媒内部に均等に分散させるためのものであり、これに制限されるものではない。上記分散剤は、アンモニウムポリカルボキシレート系分散剤及びアンモニウムポリアクリレート系分散剤からなる群から選択された一つ以上が使われることができる。本発明の場合、分散剤によって原材料粉末が溶媒内部に均等に分散された状態で合成が行われるため、未反応物無しで反応させることができる。
【0042】
二酸化チタン粉末、炭酸バリウム粉末、溶媒、及び分散剤はこれに制限されることではないが、ビーズミル(bead mill)方式によって混合されることができる。
【0043】
上記混合粉末の比表面積を大きくするにあたり、十分な分散及び粉砕を行うために0.1mm以下のビーズ(bead)を使用してミリング(milling )しながら混合が行われることができる。そして、周速6m/s以上の速度で分散させ、混合粉末の比表面積が50m/g以上になるよう、好ましくは、70m/g以上になるように混合されることができる。
【0044】
混合粉末は、比表面積が50m/g以上になり、好ましくは、70m/g以上となるため、それに応じて反応温度が下がることがある。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態による二酸化チタン粉末と炭酸バリウムの混合粉末の重量減少率を示すグラフであり、重量減少率は、二酸化チタン粉末と炭酸バリウム粉末がチタン酸バリウム粉末で合成された程度を示す。
【0046】
即ち、重量減少率が100%であれば、全ての酸化チタン粉末と炭酸バリウム粉末が反応し、チタン酸バリウム粉末として合成されたことを示す。
【0047】
チタン酸バリウム粉末を合成するために、続いて、混合粉末を重量減少率が90%以上である温度で減圧して1次熱処理工程を進行する(S120)。1次熱処理工程によって二酸化チタン粒子表面にチタン酸バリウム相を形成してチタン酸バリウムシード(seed)粒子を生成させることができる。
【0048】
1次熱処理工程の後、1次熱処理工程より高い温度で2次熱処理してチタン酸バリウムシード粒子を所望の大きさまで成長させることができる。
【0049】
重量減少率は、混合粉末の比表面積に応じて異なる値を有することができる。粉末の比表面積が大きいほど、混合粉末の反応性は良くなるため、100%重量減少が行われる温度が下がることがある。
【0050】
図2を参照すると、本発明の一実施形態によると、比表面積が50m/g以上、好ましくは、70m/g以上である混合粉末を合成するため、100%重量減少が行われる温度は800℃、90%重量減少が行われる温度は650℃であることができる。
【0051】
1次熱処理工程でチタン酸バリウムを合成するにあたり、重量減少率が90%未満である温度で1次熱処理工程が行われると、未反応物が多く残留するようになるため、重量減少率が90%以上となる温度で1次熱処理工程が行われることができる。
【0052】
そして、本発明の一実施形態によると、混合粉末の比表面積が50m/g以上、好ましくは、70m/g以上となり、反応性に優れているため重量減少率が90%以上になる温度は略650℃から750℃程度になることができる。
【0053】
これによって、90%以上の温度で1次熱処理工程が進行されるために650℃から750℃の温度で1次熱処理工程が進行されることができる。
【0054】
重量減少率が90%未満である温度で1次熱処理が行われる場合、未反応物が多く残留した状態で2次熱処理を経てチタン酸バリウム粒子が成長するようになる。これにより、チタン酸バリウム粒子の成長が均一に行われず、結晶性の高いチタン酸バリウム粉末を合成することが難しくなるため、均一な粒度分布を有するチタン酸バリウム粒子を繰り返し合成するのが難しくなる。
【0055】
従って、重量減少率が90%以上である650℃から750℃の温度で1次熱処理工程が行われることが好ましい。
【0056】
本発明の一実施形態によると、1次熱処理工程により製造されたチタン酸バリウムシード粒子の比表面積は、30m/g以上であり、チタン酸バリウムシード粒子の粒径は20nmから30nmであることができる。
【0057】
1次熱処理工程は、重量減少率が90%以上である温度で減圧して進行されるため、二酸化チタン粒子と炭酸バリウム粒子は完全に反応することができる。そのため、2次熱処理工程に加わる反応物からは未反応二酸化チタンと炭酸バリウム相が検出されなくなる。
【0058】
図3を参照すると、1次熱処理工程後の反応物のXRD回折パターン状を確認することができる。θは、格子面に入射される角度を示す値であり、2θ値によるピーク(peak)値を確認し、どのような物質があるのかを確認することができる。
【0059】
1次熱処理工程後、反応物の場合、2θが25゜から30゜の範囲でピークが現れる場合、炭酸バリウム粒子が残存することを意味し、2θが30から35゜の範囲でピークが現れる場合、チタン酸バリウム粒子が含まれていることを意味する。
【0060】
本発明の一実施形態によると、チタン酸バリウムシード粒子の生成を制御するために100Pa以下の圧力で1次熱処理工程が行われることができる。減圧下で工程が進行されることにより、二酸化チタン表面にチタン酸バリウム相が生成される温度が大気圧の温度より約50℃から100℃低下されることがある。これにより、二酸化チタン粒子の粒子成長の抑制が容易になる。
【0061】
図3を参照すると、1次熱処理工程後、反応物には2θが25゜から30゜の範囲でピークが現れないため、最初に添加された炭酸バリウム粉末が存在せず、2θが30゜から35゜の範囲でピークが現れるため、チタン酸バリウム粉末が合成されることが分かる。
【0062】
即ち、1次熱処理を経て反応に加わった二酸化チタン粉末と炭酸バリウム粉末は、全てチタン酸バリウムに合成されることが分かる。
【0063】
1次熱処理工程を終えた後、850℃以下の温度で2次熱処理が行われることができる(S130)。2次熱処理工程によって、1次熱処理工程で製造されたチタン酸バリウムシード粒子を成長させることができる。
【0064】
2次熱処理工程において熱処理温度が850℃を越える場合、チタン酸バリウム粒子が不均一に粒子成長するため、100nm以下の微粒の均一な粉末を再現するように合成することができない。
【0065】
従って、本発明の一実施形態によると、850℃以下の温度で2次熱処理を進行して微粒の均一なチタン酸バリウム粉末を製造することができる。
【0066】
2次熱処理工程により製造されたチタン酸バリウム粉末をビーズミル工程によって未粉砕することができる。
【0067】
図4は、本発明の一実施形態により製造されたチタン酸バリウム粉末を示すSEM写真である。
【0068】
本発明の一実施形態により製造されたチタン酸バリウム粉末は、850℃以下の温度で熱処理されるため、チタン酸バリウム粒子は均一に成長することができ、100nm以下の粒径を有するチタン酸バリウム粒子を製造することができる。
【0069】
従来の固相合成法の場合、粒径の制御が難しいため、微粒の均一な大きさを有する粒子の合成が難しかった。
【0070】
しかし、本発明の一実施形態によると、比表面積が大きい二酸化チタン粉末と炭酸バリウム粉末を使用し、その後、混合工程によって50m/g以上、好ましくは、70m/g以上の比表面積を有する混合粉末を使用するため、粒子の反応性を高めることができる。
【0071】
特に、1次熱処理工程において粒子の重量減少率が90%以上になる温度が650℃から750℃であるため、650℃から750℃の低温でも二酸化チタン粉末と炭酸バリウム粉末が全て反応し、チタン酸バリウムシード粒子として合成されるようにすることができる。
【0072】
1次熱処理工程によって未反応物無しでチタン酸バリウムシード粒子を合成することができるため、2次熱処理工程によってチタン酸バリウム粉末粒子を成長させるにあたり、850℃以下の温度でも粒子の成長が可能になる。それによって、75nmから100nmの粒径を有するチタン酸バリウム粉末を合成することができる。
【0073】
また、本発明の一実施形態によると、850℃以下の温度で粒子が成長されるため、平均粒径が均一なチタン酸バリウム粉末を合成することができる。
【0074】
製造されたチタン酸バリウム粉末のBET法により比表面積を測定が可能であり、XRDにより構造を解析してC/A軸比を算出することができ、SEM写真を通じて粒度分布を確認することができる。代表的に、SEM写真分析によりD99/D50の割合で粒度分布を分析することができ、X線によるリートベルト(rietveld)構造分析によりチタン酸分末のC軸とA軸の比であるC/A値分析が可能である。
【0075】
D50直径及びD99直径は、各々、累積粒度分布の微粒側から累積50%及び累積99%の粒径を意味する。本発明の一実施形態によると、粒度分布は、累積99%粒径/累積50%粒径の値で示すことができ、D99/D50<2の条件を満たすことができる。これにより、粒度分布が均一かつ均等なチタン酸バリウム粉末を合成することができる。
【0076】
本発明の一実施形態により製造されたチタン酸バリウム粉末の場合、C軸とA軸の比であるC/A値が1.0以上であることができる。C/A値は、製造されたチタン酸バリウム粉末の正方性を示す指標として粒子の結晶性を示す。
【0077】
本発明の一実施形態によると、重量減少率が90%以上である温度で1次熱処理が進行されて未反応物無しで20nmから30nmサイズを有するチタン酸バリウムシード粒子を製造し、850℃以下の温度で2次熱処理が進行されて低温で粒子の成長が行われることができるため、粒子の結晶性が良くなる。
【0078】
これにより、本発明では、C/A値が1.0以上であるチタン酸バリウム粉末を製造することができ、より好ましくは、1.008以上のC/A値を有するチタン酸バリウム粉末を製造することができる。
【0079】
本発明の一実施形態によると、微粒の原料を適用して従来技術より低温でチタン酸バリウム粉末を合成することができる。これにより、D99/D50<2の均一な粒度分布を有するチタン酸バリウム粉末を合成することができ、C/A軸比が1.0以上、好ましくは1.008以上である結晶性に優れたチタン酸バリウム粉末を合成することができる。
【0080】
そして、本発明の一実施形態によると、重量減少率が90%以上である温度で1次熱処理工程が進行されるため、未反応物が残存しなくなり、850℃以下の温度で2次熱処理が進行されるため、結晶性に優れた粒子の再現性のある製造が可能になる。
【0081】
また、本発明の一実施形態により製造されたチタン酸バリウム粉末の粒径は、100nm以下の粒径を有することができ、結晶性に優れるため、積層電子部品に適用すると、誘電体層の表面粗度が小さくなって均一な表面を有する誘電体層を製造することができる。これにより、ショートや絶縁抵抗不良を防止することができる。
【0082】
このようなチタン酸バリウム粉末を使用して製造された誘電体層の場合、組織が緻密で、焼成後の粒径が安定して製品の信頼性を向上させることができ、かつ有効な焼成温度範囲が広くなる。
[実施例]
【0083】
本発明の一実施例によってチタン酸バリウム粉末を製造するために、まず、比表面積が90m/gである二酸化チタンと、比表面積が40m/gである炭酸バリウムを用意した。Ba/Tiモル比が1.002になるように称量し、称量された混合粉末100重量部に対して200重量部の溶媒と4重量部の分散剤を添加して混合した。
【0084】
この時、混合された粉末を0.05mmのビーズを使用してビーズミル工程によって分散させてスプレードライヤー(Spary Dryer)で乾燥させた。
【0085】
この時、乾燥された混合粉末をBET方式で測定した比表面積は77m/gであった。そして、上記混合粉末のTG-DTA(示差熱-熱重量同時測定)分析結果、チタン酸バリウム粉末と二酸化チタン粉末が100%反応し、チタン酸バリウム粉末に混合される温度は820℃であった。
【0086】
上記混合700℃で1時間の間100Pa下で1次熱処理工程を進行させたところ、この際に生成されたチタン酸バリウムシード粒子の比表面積は36m/gであった。そして、810℃で3時間の間2次熱処理し、比表面積8.9m/gのチタン酸バリウム粉末を合成した。
【0087】
2段階熱処理工程によるチタン酸バリウム粉末の比表面積をBET法により測定し、XRD分析によりX線によるリートベルト(Rietveld)構造を分析して、C/A軸比を算出し、SEM写真を通じて粒度分布を確認した。
【0088】
本発明の実施例によって合成されたチタン酸バリウム粉末のD50直径は、100nmであり、D99直径は195nmであった。D99/D50が2未満の粒度が均一なチタン酸バリウム粉末を製造することができた。
【0089】
そして、C/A軸比は1.0086であり、優れた結晶性を有するチタン酸バリウム粉末が合成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が90m/g以上である二酸化チタン(TiO)粉末と比表面積が40m/g以上である炭酸バリウム(BaCO)粉末を準備する段階と、
前記二酸化チタン粉末、前記炭酸バリウム粉末、溶媒、及び分散剤を混合して混合粉末の比表面積が50m/g以上になるようにする段階と、
前記混合粉末の重量減少率が90%以上になる温度で減圧して1次熱処理する段階と、
850℃以下の温度で2次熱処理する段階と、
を含むチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項2】
前記2次熱処理により製造されたチタン酸バリウム粉末の平均粒径は100nm以下である請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項3】
前記2次熱処理により製造されたチタン酸バリウム粉末のC/A軸比は1.0以上である請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項4】
前記チタン酸バリウム粉末の粒径は75nmから100nmである請求項2に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項5】
前記チタン酸バリウム粉末のC/A軸比は1.008以上である請求項3に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項6】
前記混合段階では、前記混合粉末の比表面積が70m/g以上になるように混合する請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項7】
前記混合段階は、0.1mm以下のビーズを使用してビーズミル方式で混合される請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項8】
前記分散剤は、アンモニウムポリカルボキシレート系分散剤及びアンモニウムポリアクリレート系分散剤からなる群から選択された一つ以上である請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項9】
前記1次熱処理の温度は、650℃から800℃である請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項10】
前記1次熱処理段階では、100Pa以下の圧力に減圧して熱処理する請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項11】
前記2次熱処理温度は750ないし850℃である請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項12】
前記1次熱処理により製造されたチタン酸バリウム粉末の比表面積は30m/g以上である請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項13】
固相合成法により製造され、粉末の平均粒径は100nm以下であり、C/A軸比は1.0以上であるチタン酸バリウム粉末。
【請求項14】
粉末の平均粒径は75nmないし100nmである請求項13に記載のチタン酸バリウム粉末。
【請求項15】
粒度分布はD99/D50<2の条件を満たす請求項13に記載のチタン酸バリウム粉末。
【請求項16】
C/A軸比は1.008以上である請求項13に記載のチタン酸バリウム粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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