説明

チタン酸ランタン粒子の製造方法、チタン酸ランタン粒子及びチタン酸ランタン粒子分散液

【課題】チタン酸ランタン粒子の平均粒径をより微細化する。
【解決手段】ランタン水酸化物粒子4とチタン酸化物粒子2とを純水6に懸濁させた懸濁水8であって、懸濁水8に溶存する夾雑アニオンの量が、チタン酸化物粒子2中のチタンに対するモル比で0.3以下に抑えられた懸濁水8を水熱処理することを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸ランタン粒子の製造方法、チタン酸ランタン粒子及びチタン酸ランタン粒子分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明なプラスチックやガラス等の基材の表面、透明樹脂フィルムや透明樹脂シート、あるいは透明樹脂成形体の高屈折率化を図るために、バインダーとなる樹脂に屈折率の高い無機酸化物の微粒子を混合して複合樹脂組成物を形成する場合がある。そして、その従来技術としては、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されたものがある。
従来、上記無機酸化物の微粒子として、例えば酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化タンタル等の金属酸化物の微粒子を用いる場合があった。
【0003】
金属酸化物の一つであるチタン酸ランタン(以下、「LaTiO」とも表記する。)の微粒子は、例えば上記の金属酸化物の微粒子と比較して、可視光に対する吸収率が低く(つまり、可視光に対して透明性が高く)、かつ屈折率が高いという特徴を有している。なお、チタン酸ランタンの屈折率は、2.1である。
このチタン酸ランタンの結晶は、酸化ランタンと酸化チタンとの混合物を1200℃以上の高温で焼成することによって得られる場合がある。従来、こうして得られたチタン酸ランタンの結晶を粉砕等の方法で微粉化することにより、チタン酸ランタンの微粒子を得る方法があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−155496号公報
【特許文献2】特開2008−308386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法(例えば、上記した結晶の粉砕)を用いて製造されたチタン酸ランタンの微粒子については、その微粒子の粒径が粗大であるといった課題がある。
そこで、本発明のいくつかの態様は、このような事情に鑑みてなされたものであって、平均粒径をより微細化できるチタン酸ランタン粒子の製造方法、平均粒径がより微細化されたチタン酸ランタン粒子及び微細化されたチタン酸ランタン粒子が非水溶媒に分散されたチタン酸ランタン粒子分散液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、ランタン水酸化物粒子とチタン酸化物粒子とを純水に懸濁させた懸濁水であって、前記懸濁水に溶存する夾雑アニオンの量が、前記チタン酸化物粒子中のチタンに対するモル比で0.3以下に抑えられた前記懸濁水を水熱処理すること、を含むことを特徴とするチタン酸ランタン粒子の製造方法である。
上記態様によれば、常温常圧ではそれぞれ非水溶性であるランタン水酸化物粒子とチタン酸化物粒子とを高温高圧水に溶解させることができる。このため、ランタン水酸化物粒子とチタン酸化物粒子とを高温高圧水中で反応させることができ、チタン酸ランタン粒子を製造することができる。さらに、夾雑アニオンの量は懸濁水に含まれているチタン酸化物粒子中のチタンに対するモル比で0.3以下であり、この量は高温高圧水中におけるチタン酸化物粒子の溶解を阻害せず、ランタン水酸化物と夾雑アニオンとの間の副反応が抑制される程度の量である。このため、高温高圧水中でのランタン水酸化物粒子とチタン酸化物粒子とのを反応を妨げることなくチタン酸ランタン粒子を選択的に製造することができる。ここで、「水熱処理」とは、密閉容器の中に試料と水を入れて高温高圧条件下で反応を促す処理方法をいう。また、「夾雑アニオン」とは、目的合成物であるチタン酸ランタンと水の構成元素であるランタン、チタン、酸素、水素以外の元素を含むアニオン種をいう。また、「懸濁」とは、溶媒に不溶な微粒子が溶媒中を浮遊している状態をいう。
【0007】
また、本発明の他の態様は、前記水熱処理することは、超臨界水を用いることとしても良い。
上記態様によれば、超臨界水を用いなかった場合と比較して、さらに微細で結晶欠陥の少ないチタン酸ランタン粒子を製造することができる。また、チタン酸ランタン粒子を製造する速度、即ち合成速度も向上させることができる。ここで、「超臨界水」とは、超臨界状態にある水、即ち水の臨界点を越えた状態にある水を言い、詳しくは、臨界温度、即ち374.1℃以上の温度で、かつ水の臨界圧力、即ち22.04MPa以上の圧力下にある状態の水を言う。
【0008】
また、本発明の他の態様は、前記超臨界水を用いた水熱処理することの前に、前記懸濁水にカルボキシル基を有する非水溶性の有機分子を添加する工程、をさらに含むこととしても良い。
上記態様によれば、常温常圧では非水溶性であるカルボン酸(つまり、カルボキシル基を有する有機分子)を超臨界水に溶解させることができる。このため、カルボン酸とチタン酸ランタン粒子とを超臨界水中で反応させることができ、カルボキシル基を介して有機分子を修飾させた、微細なチタン酸ランタン粒子を製造することができる。
【0009】
また、本発明の他の態様は、前記懸濁水のpHは、6以上8以下であることとしても良い。
上記態様によれば、懸濁水は概ね中性であり、懸濁水が酸性あるいはアルカリ性である場合と比較して、水熱処理時に有機分子が酸成分あるいはアルカリ成分によって分解される程度を低減することができる。このため、有機分子を修飾させた、微細なチタン酸ランタン粒子を効率良く製造することができる。
【0010】
また、本発明の他の態様は、前記ランタン水酸化物粒子の平均粒径は、0.2μm以下であることとしても良い。
上記態様によれば、ランタン水酸化物粒子の平均粒径が0.2μmよりも大きい場合と比較して、ランタン水酸化物粒子をより確実に、即ち容器内に残留させることなく高温高圧水に溶解させることができる。このため、結晶欠陥が少なく微細なチタン酸ランタン粒子を製造することができる。ここで、「平均粒径」とは、粒子直径の分布における平均中心値をいう。
【0011】
また、本発明の他の態様は、前記チタン酸化物粒子の平均粒径は、0.1μm以下であることとしても良い。
上記態様によれば、チタン酸化物粒子の平均粒径が0.1μmよりも大きい場合と比較して、チタン酸化物粒子をより確実に、即ち容器内に残留させることなく高温高圧水に溶解させることができる。このため、結晶欠陥が少なく微細なチタン酸ランタン粒子を製造することができる。
【0012】
また、本発明の別の態様は、上記態様に記載の製造方法で製造されたチタン酸ランタン粒子である。
上記態様によれば、チタン酸ランタン粒子の表面がカルボキシル基を介して有機分子が修飾されているので、透明なプラスチックやガラス等の基材の表面、透明樹脂フィルムや透明樹脂シート、あるいは透明樹脂成形体に混合することによって高屈折率化が図ることができる。
【0013】
また、本発明の別の態様は、上記態様に記載の製造方法で製造されたチタン酸ランタン粒子が非水溶媒に分散されたチタン酸ランタン粒子分散液である。
上記態様によれば、チタン酸ランタン粒子の表面がカルボキシル基を介して有機分子が修飾されているので、非水溶媒に容易に分散し、レンズやフィルターなどの光学コーティングに好適な、微細なチタン酸ランタン粒子分散液を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るLaTiO粒子の製造方法を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係るLLT粒子の製造における温度領域を示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る製造方法で製造したLaTiO粒子のX線回折パターン。
【図4】本発明の実施形態に係る製造方法で製造したLaTiO粒子の透過電子顕微鏡写真。
【図5】比較例として製造したLaTi粒子のX線回折パターン。
【図6】LaTiO粒子を製造する際に用いたTiO粒子の平均粒径を示す図。
【図7】LaTiO粒子を製造する際に用いたLa(OH)粒子の平均粒径を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。具体的には、まず本実施形態に係るLaTiO粒子100の製造方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。次に、具体的検証として、本実施形態に係る製造方法で製造したLaTiO粒子100の結晶構造及び平均粒径について、図5に示す比較例と共に図3及び図4を参照しながら説明する。次に、本実施形態に係る製造方法において、原材料として用いられたチタン酸化物粒子2及びランタン水酸化物粒子4の粒径分布について、図6及び図7を参照しながら説明する。最後に、本実施形態に係る製造方法で製造したLaTiO粒子100を用いた応用例について説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その重複する説明は省略する場合もある。
【0016】
[LaTiO粒子100の製造方法について]
図1(a)〜(f)は、本実施形態に係るLaTiO粒子100の製造方法を示す図である。
本実施形態に係る製造方法では、図1(a)及び図1(b)に示すように、まずチタン酸化物粒子2とランタン水酸化物粒子4とを用意する。
チタン酸化物粒子2は、例えば平均粒径が0.1μm以下の二酸化チタン(以下、「TiO」とも表記する。)である。また、ランタン水酸化物粒子4は、例えば平均粒径が0.2μm以下の水酸化ランタン(以下、「La(OH)」とも表記する。)である。なお、本実施形態では、アナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型のTiO結晶をそれぞれ用いることができる。また、チタン水酸化物を用いることもできる。
【0017】
次に、図1(c)に示すように、チタン酸化物粒子2とランタン水酸化物粒子4とを純水6に懸濁させ、懸濁水8を作製する。この懸濁水8は、例えば、純水6にチタン酸化物粒子2とランタン水酸化物粒子4とをそれぞれ0.1mol/l(以下、mol/lを「M」とも表記する。)添加した後、15分間以上超音波撹拌することで作製される。こうして作製された懸濁水8に含まれる夾雑アニオンの量は、チタン酸化物粒子2中のチタンに対するモル比で0.3以下に抑えられている。
【0018】
次に、作製した懸濁水8を水熱処理する。この水熱処理は、図1(d)に示すように、まず懸濁水8を耐圧容器10に入れる。この際、例えば耐圧容器10の内容量5ccに対して、懸濁水8を2.5cc程度入れる。
次に、この耐圧容器10を炉に入れ、図1(e)に示すように、耐圧容器10の温度を400℃まで急速に加熱する(図2を参照)。その後、この400℃を10分間維持する。なお、耐圧容器10の温度が室温程度から400℃に達するまでの時間は、例えば2分間程度である。また、この耐圧容器10は、耐熱耐食合金製の耐圧容器であり、例えばSUS316やハステロイで製造されている。
また、この水熱処理の工程において、超臨界状態の水、即ち超臨界水を用いることもできる。
【0019】
次に、炉から耐圧容器10を取り出し、図1(f)に示すように、耐圧容器10を急冷する。耐圧容器10を急冷するために、例えば耐圧容器10を水浴に浸漬する。
最後に、水熱処理した懸濁水12を耐圧容器10内から取り出し、製造したLaTiO粒子100を懸濁水12から分離する。この分離の際、例えば遠心分離機を用いて遠心分離することができる。なお、懸濁水12を耐圧容器10内から取り出す際、例えば耐圧容器10内をイオン交換水や蒸留水で濯ぎながら回収してもよい。
【0020】
以上のように、上記の製造方法によれば、ランタン水酸化物粒子4とチタン酸化物粒子2とを純水6に懸濁させた懸濁水8であって、懸濁水8に溶存する夾雑アニオンの量が、チタン酸化物粒子2中のチタンに対するモル比で0.3以下に抑えられた懸濁水8を水熱処理するので、常温常圧ではそれぞれ非水溶性であるランタン水酸化物粒子4とチタン酸化物粒子2とを高温高圧水に溶解させることができる。このため、ランタン水酸化物粒子4とチタン酸化物粒子2とを高温高圧水中で反応させることができ、LaTiO粒子100を製造することができる。さらに、夾雑アニオンの量は懸濁水8に含まれているチタン酸化物粒子2中のチタンに対するモル比で0.3以下であるため、チタン酸化物粒子2の高温高圧水中での溶解を阻害せず、ランタン水酸化物と夾雑アニオンとの間の副反応が抑制されるので、収率高くLaTiO粒子100を製造することができる。こうして製造されたLaTiO粒子100の平均粒径は、0.05μm程度である。
【0021】
また、従来の方法では、LaTiOの結晶を製造するために、1200℃以上の温度が必要であったが、上記の製造方法によれば、LaTiO粒子100のナノ粒子を400℃程度の温度で製造できるといった効果も奏する。ここで「ナノ粒子」とは、数〜数百nm程度の平均粒径を有する粒子をいう。
また、上記の製造方法により製造された微細なLaTiO粒子100は、より高い屈折率を有するので、透明なプラスチックやガラス等の基材の表面、透明樹脂フィルムや透明樹脂シート、あるいは透明樹脂成形体と混合することで、それらをより高屈折率化することができる。
【0022】
また、上記の製造方法により製造された微細なLaTiO粒子100は、高い硬度を有するので、高密度で高硬度の膜を形成することができる。このため、従来の真空蒸着などの気相法に代えて、このLaTiO粒子100を分散した分散液を湿式コーティングすることで、レンズやフィルターなどの表面にLaTiO層を光学コーティング膜として形成することができる。よって、大規模な設備を必要とする気相法と比較して、小規模な設備でレンズやフィルターなどの表面に光学コーティング膜を形成することができる。
【0023】
[具体的検証]
以下において、まず、本実施形態に係る製造方法で製造されたLaTiO粒子100の結晶構造及び平均粒径について、図3及び図4を参照しながら検証する。次に、比較のため、上記製造方法とは平均粒径の異なるLa(OH)粒子を用いて製造した微粒子の結晶構造について、図5を参照しながら検証する。
【0024】
(LaTiO粒子100の結晶構造及び平均粒径について)
図3は、本実施形態に係る製造方法で製造されたLaTiO粒子100のX線回折の結果(つまり、X線回折パターン)である。ここで、図5の縦軸は回折強度(単位は任意強度)を示し、その横軸は回折角(単位は2θ、度)を示す。
図3に示された回折線の位置と幅から、本実施形態に係る製造方法で製造された微粒子は、ペロブスカイト型の結晶構造を有するLaTiO粒子100であることが確認できた。そして、このLaTiO粒子100は単相で得られることも確認できた。さらに、このLaTiO粒子100の平均粒径は概ね0.05μmであることも確認できた。
【0025】
なお、図3において、●マークが付された回折線がLaTiO粒子100に起因する回折線である。また、LaTiO粒子100のICDD番号は01−075−0267である。ここで「ICDD番号」とは、国際回析データセンター(International Center for Diffraction Data、略してICDD)が発行した粉末データファイル(Powder Data File)において、各物質に対応付けられている番号をいう。
【0026】
また、LaTiO粒子100の平均粒径は、シェラー法を用いて算出された。ここで「シェラー法」とは、X線回折を利用した構造解析の手法の一つであり、回折線の幅からサンプル粒子の平均粒径を算出することができる手法の一つである。
図4は、本実施形態に係る製造方法で製造されたLaTiO粒子100の電子顕微鏡写真である。
図4に写っている微粒子は、十数個程度のLaTiO粒子100が凝集したものであり、個々のLaTiO粒子100の平均粒径は概ね0.05μmである。
【0027】
(LaTiO粒子100と比較するために製造された微粒子の結晶構造について)
図5は、本実施形態に係る製造方法において用いられたLa(OH)粒子と比較して、平均粒径が粗大なLa(OH)粒子を用いて製造した微粒子のX線回折パターンである。ここで「粗大」とは、数〜十数μmの平均粒径をいう。なお、図3の場合と同様に、図5の縦軸は回折強度を示し、その横軸は回折角(単位は2θ、度)を示す。
【0028】
図5に示された回折線の位置から、製造された微粒子はLaTi粒子であり、本実施形態に係る製造方法で製造されたLaTiO粒子100とは構成元素の比率、即ち組成比が異なることが確認できた。さらに、このLaTi粒子は、未反応のLa(OH)粒子、即ち残留La(OH)粒子との2相混合でしか得られないことも確認できた。なお、▼マークが付された回折線が残留La(OH)粒子に起因する回折線であり、マークが付されていない回折線がLaTi粒子に起因する回折線である。また、LaTi粒子のICDD番号は00−028−0517である。また、LaTiO粒子100に起因する回折線は観測されなかった。
上記の結果から、本実施形態に係る製造方法によれば、微細な(つまり、平均粒径の小さな)LaTiO粒子100を製造できることが確認できた。
【0029】
[TiO粒子とLa(OH)粒子の粒径分布について]
以下、TiO粒子とLa(OH)粒子の粒径分布について説明する。
図6は、本実施形態に係る製造方法において、原材料の一つとして用いられたTiO粒子の粒径分布を測定した結果である。ここで、図6の左の縦軸は累積量を示し、右の縦軸は頻度を示す(単位はそれぞれ%)。そして、図6の横軸は粒径を示す(単位はμm)。なお、図中の実線は累積量を示し、棒グラフは頻度を示している。
【0030】
図6に示すように、本実施形態において用いられたTiO粒子2の平均粒径は0.1μmであり、その最大粒径は0.3μmであった。なお、この粒径分布測定に用いたサンプルは、和光純薬製のアモルファスTiO粒子(公称粒径は50nm)の0.2M水分散液である。
図7は、本実施形態に係る製造方法において、原材料の一つとして用いられたLa(OH)粒子の粒径分布を測定した結果である。図7の左の縦軸は累積量を示し、右の縦軸は頻度を示す。そして、図7の横軸は粒径を示す(単位はμm)。なお、図中の○印が付された実線は累積量を示し、棒グラフは頻度を示している。
【0031】
図7に示すように、本実施形態において用いられたLa(OH)粒子の平均粒径は0.2μmであり、その最大粒径は0.5μmであった。なお、この粒径分布測定に用いたサンプルは、酢酸ランタン(La(CHCOO))水溶液と水酸化リチウム(LiOH)水溶液とを反応させて製造したものである。以下、その製造方法について簡単に説明する。
【0032】
まず、スターラーで撹拌されている0.1Mの酢酸ランタン水溶液10ml中に、0.3Mの水酸化リチウム水溶液10mlを滴下する。この滴下が終了した後、さらに20分間撹拌を続けて懸濁水を得る。次に、得られた懸濁水を遠心分離し、沈殿物を得る。次に、得られた沈殿物に純水25mlを加え、超音波分散させた後に、再び遠心分離する。これにより、得られた沈殿物は洗浄される。この洗浄工程を2回以上行い、La(OH)粒子4を含んだゼリー状の沈殿物を製造する。こうして製造されたLa(OH)粒子4を粒径分布測定する際のサンプルとした。
なお、上記のTiO粒子2とLa(OH)粒子4の粒径分布は、共に光学式粒度分布測定(島津SALD2200を使用)により求められた。
【0033】
[本実施形態に係る製造方法の変形例について]
以下、本実施形態に係るLaTiO粒子100の製造方法の変形例について説明する。
上記の製造方法では、チタン酸化物粒子2とランタン水酸化物粒子4とを純水6に懸濁させた懸濁水8を用いることについて説明したが、本実施形態に係る製造方法の内、超臨界水を用いた水熱処理を行う場合は、この懸濁水8にカルボキシル基を有する非水溶性の有機分子(つまり、カルボン酸)を添加した懸濁水(以下、「添加懸濁水」ともいう。)を用いることもできる。例えば、耐圧容器10に充填した懸濁水8にカルボン酸を添加して添加懸濁水を作製することもできるし、予め添加懸濁水を作製しておき、その後添加懸濁水を耐圧容器10に充填することもできる。充填する分量については、耐圧容器10の内容積5ccに対して、添加懸濁水(つまり、懸濁水8とカルボン酸液との混合液)を2.0〜2.5cc充填する。
【0034】
なお、添加するカルボン酸は、例えばデカン酸やオレイン酸である。カルボン酸の添加量は、LaTiO粒子100の表面を十分に被覆できる量とする。例えば、被覆されるLaTiO粒子100の形状を立方体と仮定すると、カルボン酸の添加量は、カルボン酸とチタンとのモル比(つまり、カルボン酸/チタン)で6以上である。なお、このカルボン酸は常温常圧では非水溶性であるので、夾雑アニオンとして働かない。
【0035】
また、添加懸濁水のpHは、6以上8以下であれば良い(つまり、添加懸濁水は概ね中性であれば良い)。
以上のように、本実施形態に係る製造方法において、この添加懸濁水を用いた場合には、カルボキシル基を介して有機分子を修飾させた、微細なLaTiO粒子100を製造することができる。
【0036】
なお、こうして製造された、有機分子で修飾された微細なLaTiO粒子100は非水溶媒に分散させることで、チタン酸ランタン粒子分散液とすることができる。
そして、この有機分子で修飾された微細なLaTiO粒子100は、より高い屈折率を有するので、例えば透明なプラスチックやガラス等の基材の表面、透明樹脂フィルムや透明樹脂シート、あるいは透明樹脂成形体と混合することで、それらをより高屈折率化することができる。
【符号の説明】
【0037】
2 チタン酸化物粒子、4 ランタン水酸化物粒子、6 純水、8 懸濁水、10 耐圧容器、12 懸濁水、100 チタン酸ランタン粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタン水酸化物粒子とチタン酸化物粒子とを純水に懸濁させた懸濁水であって、前記懸濁水に溶存する夾雑アニオンの量が、前記チタン酸化物粒子中のチタンに対するモル比で0.3以下に抑えられた前記懸濁水を水熱処理すること、を含むことを特徴とするチタン酸ランタン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記水熱処理することは、超臨界水を用いることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸ランタン粒子の製造方法。
【請求項3】
前記水熱処理することの前に、
前記懸濁水にカルボキシル基を有する非水溶性の有機分子を添加すること、をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のチタン酸ランタン粒子の製造方法。
【請求項4】
前記懸濁水のpHは、6以上8以下であることを特徴とする請求項3に記載のチタン酸ランタン粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ランタン水酸化物粒子の平均粒径は、0.2μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載のチタン酸ランタン粒子の製造方法。
【請求項6】
前記チタン酸化物粒子の平均粒径は、0.1μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載のチタン酸ランタン粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項3又は請求項4に記載の製造方法で製造されたチタン酸ランタン粒子。
【請求項8】
請求項7のチタン酸ランタン粒子が非水溶媒に分散されたチタン酸ランタン粒子分散液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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