チップアンテナ、アンテナ装置および通信機器
【課題】小型化および広周波数帯域化に適したチップアンテナ、アンテナ装置および通信機器を提供する。
【解決手段】線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体の前記長手方向に垂直な断面における外径Rと内径rとの比r/Rは0.1以上であることを特徴とする。また、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体はY型フェライトの焼結体であることを特徴とする。
【解決手段】線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体の前記長手方向に垂直な断面における外径Rと内径rとの比r/Rは0.1以上であることを特徴とする。また、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体はY型フェライトの焼結体であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を備えた電子機器、特に携帯電話、携帯端末装置などの通信機器に用いるチップアンテナに関し、さらにはチップアンテナを用いたアンテナ装置及びこれらを搭載した通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や無線LAN等の通信機器はその使用周波数帯域は数百MHzから数GHzに及び、該帯域で広帯域かつ高効率であることが求められている。したがって、それに使用されるアンテナも当該帯域で高利得で機能することを前提としたうえで、その使用形態から特に小型かつ低背であることが要求される。さらに、近年開始された地上デジタル放送では、全チャンネルに対応する場合、使用するアンテナとして例えば日本国内のテレビ放送帯域における470MHz〜770MHzといった広い周波数帯域をカバーする必要がある。また、デジタル放送としては例えば韓国では180MHz〜210MHz帯、欧州では470MHz〜890MHz帯を使用する。したがって、これら180MHz以上の周波数帯域で使用可能で、かつ携帯端末等の通信機器に搭載可能な小型のアンテナが望まれる。
【0003】
従来、移動体通信用に適した小型のアンテナとして、誘電体セラミックスを用いたチップアンテナが供されてきた(例えば特許文献1)。周波数を一定とすれば、より誘電率の高い誘電体を用いることにより、チップアンテナの小型化を図ることができる。特許文献1では、ミアンダ電極を設けることで波長短縮を図っている。また、比誘電率εrの他、比透磁率μrの大きい磁性体を用いて、1/(εr・μr)1/2倍に波長短縮することにより小型化を図ったアンテナも提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、テレビやラジオに使われている受信用アンテナとして、例えば小型液晶テレビなどでは金属棒を用いたホイップアンテナが一般的に用いられ、この方式はテレビ機能搭載携帯電話にも使われ始めている。さらに別の例として、携帯電話で用いられるイヤホンの一部である電線をラジオやテレビ受信用アンテナとして利用される場合もある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−145123号公報
【特許文献2】特開昭49−40046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記誘電体チップアンテナは、小型・低背化を図る上では有利であるが、広帯域化に対しては以下のような問題がある。例えば電極としてヘリカル型放射電極を用いる場合、巻線数が多くなると線間容量が増加し、Q値が高くなる。その結果帯域幅が狭くなってしまい、広帯域幅が要求される地上デジタル放送等の用途には適用するのが困難となる。また、ヘリカル電極に限らず、ミアンダ電極等のパターン電極を形成する場合や、基体内部、外部に電極部分が多い場合などは、電極間に容量を形成してしまい、やはり帯域幅を十分にとることができないという問題があった。特許文献2のように磁性材料を利用したアンテナであっても、容量成分の形成を抑え、かつインダクタンス成分を有効に生み出す構造としなければ、アンテナの小型化や広帯域化を十分に図ることはできない。
【0007】
さらに上記のホイップアンテナは大きいため携帯電話等の小型機器に収納するための複雑な機構を必要とし、また端末が落下した際に折れ易いといった問題があった。また、上記のイヤホン型アンテナでは、ラジオやテレビの視聴の際に着脱を繰り返すことによりアンテナの信頼性が低下する他、アンテナ部である電線が人体に接触することにより、利得や感度の著しい劣化が生じるといった問題があった。
【0008】
そこで本発明では、小型化および広周波数帯域化に適したチップアンテナ、アンテナ装置および通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のチップアンテナは、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体の前記長手方向に垂直な断面における外径Rと内径rとの比r/Rが0.1以上であることを特徴とする。磁性基体の長手方向とは、直方体状、円柱状等であればその最大辺方向、円柱軸方向であり、円弧状等であればその円弧に沿う方向である。かかる方向に線状の導体が貫通していることで、容量成分が形成されにくく、また磁性体部分をインダクタンス成分として有効に機能させることができるため、アンテナの広帯域化、小型化に寄与する。また、磁性基体の前記長手方向に垂直な断面における外径Rと内径rとの比r/Rが0.1以上であることにより、高い平均利得を発揮する。前記比r/Rは0.5以下であることがより好ましい。ここで、外形、貫通孔形が四角形の角形の場合、外径、内径とは四角形の一辺を指し、外形、貫通孔形が円形の場合は、外径、貫通孔の直径が前記外径、内径に相当する。即ち、最小径部分を内径とする。さらに、前記チップアンテナは、直線状の導体が磁性基体を貫通していることが好ましい。かかる構成では、基体内において実質的に該導体が対向する部分が形成されないため、特に容量成分が形成されにくく、また磁性体部分をインダクタンス成分として有効に機能させることができるため、アンテナの広帯域化、小型化に寄与する。
【0010】
本発明の他のチップアンテナは、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体の前記長手方向に垂直な断面における前記磁性基体の断面積Sに対する前記導体の断面積sの比s/Sが0.029以上であることを特徴とする。該構成によれば、アンテナ内部損失を低く抑えることができる。さらに、共振周端数のずれを抑制するためには前記比s/Sは0.125以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の他のチップアンテナは、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、平均利得の全面平均がー7dBi以上である帯域幅が220MHz以上であることを特徴とする。かかる構成のチップアンテナを用いれば、一つのチップアンテナで広帯域をカバーすることができ、例えば470〜770MHzの広い周波数帯域を使用する地上デジタル放送も2個以下のチップアンテナでカバーすることができる。
【0012】
本発明の他のチップアンテナは、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体はY型フェライトの焼結体であることを特徴とする。Y型フェライトは、高周波領域まで透磁率を維持し、かつ損失係数も低いので、Y型フェライトの焼結体を用いることは高周波帯域まで機能するチップアンテナを構成するうえで有利である。なお、Y型フェライトの磁性基体は、Y型フェライト単相に限らず、Z型やW型等他の相を含有するものも含む。さらに、前記Y型フェライトの焼結体密度は4.8×103kg/m3以上であることが好ましい。該構成によれば落下等大きな衝撃が加わりやすい携帯機器に好適である。さらに、前記Y型フェライトの1GHzにおける初透磁率が2以上で、損失係数が0.05以下であることが好ましい。該フェライトを用いることによって高周波帯域でのアンテナ特性の向上を図ることができる。
【0013】
さらに、前記チップアンテナにおいて、前記磁性基体は、長さが30mm以下、幅が10mm以下、高さが5mm以下であることが好ましい。磁性基体を用いた本発明に係るチップアンテナは、小型化に有利であり、数百MHzの周波数帯域で使用する場合でも小さい寸法を維持できる。磁性基体の長さを30mm以下、幅を10mm以下、高さを5mm以下とすることによって、携帯電話等の実装空間の限られた携帯機器等に好適なチップアンテナとなる。
【0014】
さらに、前記チップアンテナにおいて、前記磁性基体は直方体形状を有し、該直方体形状の長手方向に垂直な方向に位置する角の部分に面取りが設けられていることが好ましい。安定な実装に有利な直方体形状を採用しつつ、直方体形状の長手方向に垂直な方向に位置する角、すなわち長手方向に延びている角の部分に面取りを設けることにより、チッピングの発生を抑え、品質の高いチップアンテナを提供することができる。
【0015】
さらに、前記チップアンテナは、ケースに収容されていることが好ましい。該構成によれば、取扱い時に他の部材が接触する危険を低減するとともに、外力にも強くなるため、信頼性が高くなる。さらに、前記ケースは、その外側面に導体部材が設けられていることが好ましい。該導体部材とチップアンテナを実装する基板等の導体部分とをハンダ等により接合して、ケースごとチップアンテナを基板等に固定することができる。該導体部材は、少なくとも前記チップアンテナの一端と電気的に接続されていることがより好ましい。基板等とチップアンテナとの電気的接合と機械的接合を兼ねることができる。
【0016】
また、本発明のアンテナ装置は、前記チップアンテナを用い、前記導体の一端は開放端を構成し、他端は給電回路に接続されていることを特徴とする。容量成分の少ない前記チップアンテナを用いてアンテナ装置を構成することにより、広帯域なアンテナ装置を得ることが可能である。
【0017】
さらに、前記アンテナ装置において、前記チップアンテナを実装する基板を有し、前記基板には接地電極と該接地電極に離間して固定電極が形成されており、前記導体の前記一端は前記固定電極に接続されていることが好ましい。該構成では、接地電極と固定電極との間に容量成分を形成して容量の調整を行うことができる。これは、チップアンテナ自体の容量成分を調整する方法に比べて、簡易に容量成分の調整を行うことができる。前記アンテナ装置において、平均利得の全面平均が−7dBi以上である帯域幅が220MHz以上であることが好ましい。かかる広帯域特性を有するアンテナ装置は、使用周波数帯域の広い用途、例えば地上デジタル放送に好適である。すなわち、470〜770MHzの周波数帯域において、前記帯域幅を有するものであれば、地上デジタル放送の使用帯域を2個以下のアンテナ装置でカバーすることができる。なお、平均利得の全面平均とは、XY平面、YZ平面およびZX平面での平均利得の平均を取ったものをいう。
【0018】
さらに、前記チップアンテナと前記給電回路との間に、アンテナ装置の共振周波数を調整する整合回路を備え、前記整合回路を切り換えることによって共振周波数を移動させることが好ましい。かかる構成によれば、一つのチップアンテナが持つ周波数特性では満足しきれない広い周波数帯域で機能するアンテナ装置を実現することができる。しかも、チップアンテナの数を必要以上に増やすことなく、広帯域をカバーすることができる。さらに、470〜770MHzの周波数帯域で平均利得の全面平均で−7dBi以上を得ることが好ましい。インピーダンスマッチングのための整合回路に共振周波数の調整機能を持たせることによって、チップアンテナの数を増やすことなく、国内の地上デジタル放送のような470〜770MHz帯を使用する用途に、アンテナ装置を適用することが可能となる。
【0019】
また、本発明の他のアンテナ装置は、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナと、前記チップアンテナを実装する基板とを有し、前記導体の両端が前記磁性基体から突出しており、前記導体の両端部は前記磁性基体の外で屈曲されて前記基板に形成された電極部に接続されていることを特徴とする。該構成によれば、基体に別途電極を形成したり、接続する基板側に別途処置を施す必要がないため、接続工程が簡易なものとなる。
【0020】
また、本発明の他のアンテナ装置として、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナと、前記チップアンテナを実装する基板とを有し、前記導体の両端が前記磁性基体から突出しており、前記基板には切り欠き部または開口部を設け、前記チップアンテナの基体は前記切り欠き部または開口部に挿入され、前記導体の両端部が前記基板に形成された電極部に接続されている構成としてもよい。かかる構成では、基板の切り欠き部または開口部に基体の一部が入るため、実装後の基体の高さを低くすることができるため、アンテナ装置の低背化に寄与する。また、導体を屈曲させずに基板側の電極に接続できるため、工程が簡略化される。
【0021】
さらに、前記アンテナ装置は地上デジタル放送用アンテナ装置であることが好ましい。本発明に係る前記のアンテナ装置は、小型化、広帯域化が図られるので、例えば470〜770kHzの帯域のように広い周波数帯域を用いる地上デジタル放送に好適である。
【0022】
また、本発明の通信機器は、前記アンテナ装置を搭載したことを特徴とする。前記アンテナ装置は、広帯域で機能するため、それを用いた通信機器も広帯域で使用することが可能である。特に、前記アンテナ装置を搭載した地上デジタル放送用の携帯端末や携帯電話、デジタルラジオなどの通信機器を構成すると、該機器の携帯性、信頼性の向上に寄与する。
【0023】
なお、前記チップアンテナ、前記アンテナ装置および前記通信機器の構成は適宜組み合わせることも可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型化および広周波数帯域化に適したチップアンテナを提供することができる。特に、チップアンテナの磁性基体として高透磁率、低損失係数のY型フェライトを用いた場合には、高周波帯域で高利得を得る点でも有利なチップアンテナを提供することができる。さらに、本発明に係るチップアンテナを用いることにより、使用可能な周波数帯域の広いアンテナ装置、通信機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について具体的な実施形態を示しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、同一部材については同一の符号を付してある。
【0026】
図1に、本発明に係るチップアンテナの実施形態の一例を示す。図1のチップアンテナは、基体として磁性体セラミックスを用いた磁性体チップアンテナである。該チップアンテナは基板に実装して用いることができる。図1の(a)は斜視図、(b)は長手方向に沿って導体を含んだ断面図、(c)は長手方向に垂直な方向での断面図である。線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通している。図1では、線状の導体2は直線状である。すなわち、直線状の導体は、直方体の側面や円柱の外周面など、導体を囲むように位置する基体外側の面に沿うように延設され、磁性基体の長手方向両端面間を貫通している。図1の構成では、前記導体の両端、すなわち導体の一端3と他端4が磁性基体1から突出している。前記導体の一端3は開放端を構成し、他端4は給電回路等の制御回路(図示せず)に接続されて、アンテナ装置が構成される。磁性基体1の内部には、導体部分としては直線状の中実の導体2が存在するだけなので、容量成分の低減に理想的な構造となる。放射導体として機能する直線状の導体が一本貫通している構造なので、該導体は基体内部で実質的に対向する部分を持たないので、容量成分の低減に特に有効なのである。かかる観点からは、磁性基体を貫通する導体は一本のみが好ましい。ただし、間隔を十分に取るなどして容量成分の影響が小さい場合などは、一本の貫通導体のほかにさらに別の導体が貫通した、または埋設された構成とすることも可能である。図14に、図8に示す構成のアンテナ装置を用いてアンテナ内部損失と共振周波数の誘電率依存性を評価した結果を示す。ここでアンテナ内部損失とは、基体の材料損失と導体損失の合計値をアンテナ利得として換算した値である。磁性基体1の寸法は長さ30mm、幅3mm、高さ3mm、初透磁率は3、損失係数は0.05とし、磁性基体1の中心を貫通する導体は0.5mm角の銅である。また、磁性基体1と接地電極9との間隔は11mmである。整合回路には図15に示したものを用い、キャパシタC1は0.5pF、インダクタL1は56nH、インダクタL3は15nHとしている。図14に示すように、アンテナの内部損失は比誘電率に対してほとんど変化していない。これは、本発明に係る構造は容量成分を形成しにくいため、比誘電率が多少大きくなってもアンテナの内部損失の増加が抑制されるためと考えられる。損失の観点からは、比誘電率は低いことが好ましいが、本発明に係る構造ではアンテナの内部損失が比誘電率の影響を受けにくい、すなわち比誘電率に対してかなり不感である。したがって、例えば図14に示すように共振周波数のばらつきを抑えるために、誘電率の大きい材料を用いることもできる。この場合、比誘電率は8以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
【0027】
また、導体2が磁性基体1を貫通している構造なので、導体が貫通してない場合に比べて、磁性基体内で同じ導体長を確保した場合に、チップアンテナ全体の小型化を図ることができる。さらに、導体2が磁性基体1を貫通しているので、導体2の両端で、他の回路素子や電極との電気的接続が可能であり、設計自由度が高い。直線状の導体は、直方体の側面や円柱の外周面など、導体を囲むように位置する基体外側の面からの距離を一定に保ちつつ基体を貫通していることが好ましい。図1に示した構成では、導体2は磁性基体1の長手方向に、該磁性基体の中央で貫通している。すなわち、磁性基体1の長手方向に垂直な断面において、導体2は中央に位置している。また、図12に示すように、チップアンテナの構成として、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているものであれば、直方体に限らず、円弧状(アーチ形状)としてもよい。図12の(a)は斜視図、(b)は導体の部分を含む断面図、(c)は基板に実装した状態基板の面方向からみた正面図である。線状の導体が磁性基体の長手方向に沿っている構成では、基体の中で、導体はコイルやミアンダ電極を構成しない。長手方向に対して屈曲部を持たないことが好ましい。図12の構成では、円弧状の基体1を円弧に沿って線状の導体2が貫通している。すなわち、線状の導体は、直方体の側面や円柱の外周面など、導体を囲むように位置する基体外側の面に沿うように延設され、基体長手方向の両端面間を貫通している。この場合導体を囲むように位置する基体外側の面からの距離を一定に保ちつつ基体を貫通していることが好ましい。図12では、導体は円弧状基体の断面の中心に位置するようにしてある。図12の構成では、導体の両端、すなわち導体の一端3と他端4が磁性基体1から突出している。磁性基体と導体が円弧状になっている以外の部分は図1の場合と同様にしてアンテナ装置や通信機器が構成される。図12の(c)で、導体の一端3と他端4は磁性基体1から離間した部分で屈曲して、基板8上の固定電極および給電電極(図示せず)に固定されている。導体を磁性基体から離間した部分で屈曲させることで、屈曲に伴う導体および磁性基体の損傷を防ぐとともに、容量成分の低減にも有利な構造となる。
【0028】
広帯域化のためにはアンテナのQ値を下げることが必要となるが、Q値はインダクタンスをL、容量をCとすると(C/L)1/2で表されるため、Lを上げる一方、Cを下げる必要がある。基体として誘電体を用いた場合、インダクタンスLを上げるためには導体の巻き線数を増やす必要があるが、巻線数の増加は線間容量の増加を招くため、アンテナのQ値を効果的に下げることができない。これに対して、本発明においては、基体として磁性基体を用いるため、巻線数の増加によらず透磁率でインダクタンスLを上げることができる。したがって巻線数の増加による線間容量の増加を回避して、Q値を下げることができ、アンテナの広帯域化を図ることができる。特に、本発明では、上述のように容量成分の低減に効果的な、直線状の導体が磁性基体を貫通する構成を採用するので、チップアンテナの広帯域化に特に顕著な効果を発揮するのである。この場合、磁路は導体2を周回するように磁性基体内に形成されるため、閉磁路を構成する。該構成で得られるインダクタンス成分Lは導体2を覆う磁性基体部分の長さや断面積に依存する。したがって、直線状導体が磁性基体1を貫通しない場合は、インダクタンス成分Lに寄与しない部分が増えてしまい、不必要にチップアンテナが大型化してしまう。これに対して、導体2が磁性基体1を貫通する構成とすることによって、効率よくL成分を確保し、チップアンテナの小型化を図ることができる。
【0029】
磁性基体1の外部での導体の取り回しは、磁性基体1に印刷電極を形成することで行い、ハンダ付けによる固定も当該印刷電極で行うことも可能であるが、製造工程を簡略化し、かつ容量の増加を抑える観点からは、導体2の突出した端部を用いてハンダ付け等のための取り回しを行うことが好ましい。なお、印刷電極で磁性基体の外部での取り回しを行う場合には、該印刷電極は、その面積および対向部分を可能な限り小さくすることが望ましい。図1の構成のように導体2の両端が突出している場合は、導体2の一端(以下、第1の端部ともいう)と他端(以下、第2の端部ともいう)の2箇所でチップアンテナ10のハンダ固定を行うことができるので、安定な実装が可能となる。かかる構成では、実装のために別途基体に電極を設ける必要がなく、アンテナ装置を構成する際の工程の簡略化が図られる。突出した端部は必ずしも直線上でなくてもよく、図2の実施形態のように屈曲していてもよい。図2に示す構成では、基板に実装しやすいように、導体2の磁性基体1の両側に突出した部分は、磁性基体1から離間した部分で屈曲してあり、その先端部分は磁性基体1の一端面である底面と平行に、より具体的には略同一面上に位置するようにしてある。磁性基体の両側に突出した導体部分を略90°屈曲して、基板に設けられたスルーホールに挿入してハンダ付けしてもよい。なお、より強固な固定のためにチップアンテナの磁性基体に前記導体とは別にハンダ付け等による固定用の電極を設け、該電極を用いてチップアンテナを固定したアンテナ装置を構成することも可能である。
【0030】
突出した端部で導体の取り回しを行う場合は、いずれの場合でも、磁性基体1の表面に電極を形成する必要がないため、容量成分の増加を抑えることができる。突出している部分が直線状である図1の構成では、直線上の導体2は磁性基体の内部および表面において対向する部分を持たないので、容量成分の低減に特に効果的である。
【0031】
導体の材質は、特に限定するものではないが、例えば、Cu、Ag、Ni、Pt、Au、Al等の金属の他、42アロイ、コバール、リン青銅、黄銅、コルソン系銅合金等の合金を用いることができる。このうちCu等の硬度の低い導体材料は、両端を屈曲して用いる場合に適し、42アロイ、コバール、リン青銅、コルソン系銅合金など硬度の高い導体材料は磁性基体を強固に支持する場合や両端を屈曲せず直線状のまま使用する場合に適する。また、導体にはポリウレタンやエナメル等の絶縁被覆を設けてもよい。体積抵抗率の高い、例えば1×105Ω・m以上の磁性基体を用いることで絶縁を確保することも可能であるが、絶縁被覆を設けることによって、特に高い絶縁性が得られる。この場合絶縁被覆の厚さは25μm以下が好ましい。これが厚くなりすぎると磁性基体と導体との隙間が大きくなり、インダクタンス成分が減少する。
【0032】
磁性基体の形状は、特に限定するものではないが直方体、円柱等をとることができる。安定な実装を実現する上では直方体の形状が好ましい。また、直方体形状の場合には、長手方向に垂直な方向に位置する角の部分に面取りを設けることが好ましい。直方体形状は安定な実装に有利であるが、角の部分にはチッピングが発生しやすい。これに対して、面取りを設けることによって、磁束が漏れにくくなるほか、チッピング等の不具合も防止できる。直方体形状の長手方向に垂直な方向に位置する角は、長手方向に延びている角の部分として4箇所存在する。面取り部分はこのうちの少なくと1箇所にあればその効果が発揮されるが、信頼性の観点からは4箇所とも面取り部分が設けられていることが好ましい。また、磁性基体の長手方向の端部の角にも面取り部分を設けてもよい。面取りの仕方は、直線状におとす方法であってもよいし、アールすなわち円弧形状を設ける方法でもよい。また、面取りは、研削等の機械加工、バレル研磨、面取り部分を設けた金型による成形等によって設けることができる。但し、磁性基体への新たな欠陥導入の防止および工程の簡略化の観点からは、面取り部分を設けた金型による成形、特に押出し成形によって面取り部分を形成することが好ましい。かかる場合、面取り部分が焼結肌で構成されるため欠陥が発生しにくい。面取りの幅d(磁性基体の側面において面取り部分によって失われている長さ)は、その実質的な効果を発揮するためには0.2mm以上であることが好ましい。一方、面取りが大きくなると直方体形状であっても安定な実装が困難になるので1mm以下(磁性基体の幅または高さの1/3以下)が好ましい。磁性基体の長さ、幅、高さは、これらが大きくなると共振周波数は低下する。基体の長さは30mm以下、幅は10mm以下、高さは5mm以下が好ましい。基体の寸法が前記範囲を超えると表面実装型チップアンテナとしては大型化してしまう。例えば、地上デジタル放送帯域である470〜770MHzに使用できるよう、共振周波数を550MHz付近にするためには、磁性基体の長さは25〜30mm、幅は3〜5mm、高さは3〜5mmがより好ましい。また図12に示すように、例えばアーチ形状などの曲面を持つ形状で構成される基体でも良い。この場合には、さらにデザイン性の向上のみならず、端末落下の際などにアンテナの基体に加わる衝撃にたいする耐衝撃性向上の効果も得られる。これは、一般的にアンテナは端末の端部に搭載されるため、アーチ形状の外側の曲面を端部方向に向けることによって外力に対する耐性が高くなるからである。さらに、アーチ形アンテナの他の効果として、次のような効果も発揮する。アンテナと周囲の金属部分(スピーカ、レシーバや液晶表示素子など)との間隔を大きくすることにより、アンテナから放射される電磁波の一部が金属部分に流れ難くなるため、アンテナの利得や感度が向上すると共に、金属部分からの電磁波放射が抑制されるため指向性の乱れも低減できる。
【0033】
また、導体の断面形状も特に限定するものではないが、例えば円形、長方形、正方形等の形状のものを用いることができる。すなわち、ワイヤ状、テープ状のものを用いることができる。導体の断面形状と磁性基体の断面形状を略相似とし、導体をとりまく磁性基体の厚さを一定にすると、均一性の高い磁路が形成されるので好ましい。ここで断面とは前記磁性基体の長手方向に垂直な断面を指す。例えば、直方体、円柱の磁性基体の長手方向に直線状の導体が貫通している場合は、該長手方向に垂直な断面では、導体を磁性基体が取り囲む断面となる。また、磁性基体が円弧状(アーチ形状)等のように曲線状である場合は、円弧の周方向に垂直、すなわち円弧の径方向で切る断面である。この場合も、導体を磁性基体が取り囲む断面となる。なお、磁性基体の断面積は、導体が配置されている貫通孔の部分を除いた断面積である。ここで、磁性基体の断面における磁性基体の外径をR、内径をrとしたときの、r/Rに対するチップアンテナの平均利得の変化を図24に示す。図24では導体が角柱型、円柱型の電極の場合、すなわち貫通孔の断面形状が四角形、円形の場合について示してある。外形、貫通孔形が四角形の角形の場合、外径、内径とは四角形の一辺を指し、外形、貫通孔形が円形の場合は、外径、貫通孔の直径が前記外径、内径に相当する。また、磁性基体1の寸法は長さ30mm、幅3mm、高さ3mm、初透磁率は3、損失係数は0.02としている。r/Rが大きくなると平均利得は一定値となるが、r/Rを0.1以上とすることで、平均利得を前記一定値から0.2dBi以内の範囲に抑えることができる。より好ましくはr/Rを0.15以上とすることで、平均利得を前記一定値から0.1dBi以内の範囲に抑えることができる。さらに好ましくはr/Rは0.2以上である。また、また、導体の断面形状の大きさとアンテナ内部損失との関係を、導体が四角形である場合r/Rを0.5以下が好ましい。r/Rが大きくなりすぎると磁性基体の部分が相対的に薄くなり、チップアンテナの強度が低下する他、磁性基体の体積が低下するので磁性体チップアンテナの性能を充分に維持することが困難になる。例を図16に示す。導体の断面形状を変えた以外は、図14に示すアンテナ内部損失等の誘電率依存性を評価した場合と同様である。図16の例では磁性基体の断面は3×3mmの正方形であり、正方形の導体の幅を変えて断面積を変えている。導体の幅、断面積が大きくなって磁性基体の断面積Sに対する導体の断面積sの比s/Sが大きくなると、アンテナ内部損失が低化し、導体の幅が0.5mm以上、断面積が0.25mm2以上となって断面積比s/Sが0.029以上となるとほぼ一定となる。したがって、磁性基体の断面積Sに対する導体の断面積sの比s/Sが0.029以上(導体の幅が0.5mm以上、断面積0.25mm2以上)であることが好ましい。この場合、磁性基体の幅Wに対する導体幅wの比w/Wは0.17以上である。導体の幅が0.7mm以上、断面積が0.49mm2以上となって、断面積比s/Sが0.058以上(w/Wが0.23以上)になるとアンテナ内部損失が0.5dB以下となるため、断面積比s/S、導体の幅、断面積または幅の比w/Wが前記条件を満たすことがさらに好ましい。一方、w/Wは1未満であるが、導体の幅が大きくなると磁路が狭くなりインダクタンス成分が低下し、共振周波数も高くなる。導体の幅が1.0mmを超え、磁性基体の厚さが1.0mm未満となり、w/Wが0.33を超え、断面積比s/Sが0.125を超えると、共振周波数は地上デジタル放送帯域470〜770MHzの中心から10%を超えてずれるようになる。したがって、この場合幅wは1.0mm以下(断面積1.0mm2以下)、すなわち断面積比は0.125以下(w/Wで0.33以下)が好ましい。ここでWは磁性基体の長手方向に直角な方向の最小寸法であり、wは導体の長手方向に直角な方向の最小寸法である。すなわち断面が正方形であればその一辺の長さである。
【0034】
図1に示す直線状の導体が磁性基体を貫通している構成についてさらに詳述する。かかる構成は、磁性基体と導体を一体で形成してもよい。例えば、特許文献1に開示されているような方法、すなわち磁性体の粉末の中に導線を配した状態で圧縮成形し、その後焼結する方法で形成することができる。焼結には、通常の加熱焼結の他、加熱方法としてマイクロ波焼結を採用すると加熱時間も短いため、導体と磁性粉末との反応を抑えることができる。また、磁性基体と導体を一体で形成する方法として、グリーンシートを積層する積層プロセスを採用することもできる。磁性体粉末と結合剤、可塑剤の混合物をドクターブレード法等でシート成形してグリーンシートを得て、該グリーンシートを積層して積層体を得る。該積層体の中心部分に位置することとなるグリーンシートにAg、Ag−Pd、Pt等の導体ペーストを直線状に印刷しておくことによって、直線状の導体が貫通している磁性基体を得ることができる。ただし、この場合は、前記直線状の導体と導通をとり、磁性基体の外部に導体を引き回すために、印刷、焼き付け等によって磁性基体の表面に表面電極を形成する必要がある。
【0035】
一方、磁性基体と導体を別体として形成してもよい。この場合、チップアンテナは、磁性基体に貫通孔が設けられ、該貫通孔の中に導体が設けられている構成となる。磁性基体と導体を別体として形成する場合は、磁性基体と導体との反応の影響を排除できるとともに、設計の自由度および導体部分の精度を高めることができる。この場合、磁性基体がフェライト焼結体であれば、該磁性基体は通常の粉末冶金的手法で作製すればよい。磁性基体に貫通孔を設ける方法としては、焼結体に機械加工で貫通孔を形成する方法、圧縮成形法または押出し成形法により貫通孔を有する成形体を成形し、焼結する方法、などがある。長尺のものを作製する場合は、貫通孔同士を対置させつつ短尺のものを複数積み重ねてもよい。図12に示すような曲面で構成された基体についても、圧縮成形法あるいは押出し成形法により製作することができる。また焼結体で加工する他、成形体の状態で加工、整形してもよい。
【0036】
貫通孔の断面形状は特に限定するものではないが、例えば、円形、四角形などとすればよい。導体の挿入を容易にし、磁性基体と導体との隙間を小さくするためには、貫通孔の断面形状は、導体の断面形状と相似の形状にするとよい。磁性基体と導体との間には隙間があってもよいが、隙間の存在はインダクタンス成分のロスにつながるので、該隙間は磁性基体の厚さに対して十分小さいことが望ましい。該隙間は片側で50μm以下であることが好ましい。好ましくは、貫通孔の断面形状と導体の断面形状が、導体を挿入可能な範囲で略同一であることが好ましい。かかる点は貫通孔の形成方法によらない。貫通孔の断面形状が円形の場合、円筒度(最大径と最小径の差)は50μm以下が好ましい。磁性基体の貫通孔に導体を挿入する場合、これが大きくなると、真円として設定した径に対して最小径が小さくなり導体の挿入が困難になるため、余裕を持って大きめに径を設定する必要が生じる。かかる場合は隙間が多くなってしまいインダクタンス成分のロスにつながる。より好ましくは、10μm以下である。一方、直線状の導体が磁性基体を貫通する構造の場合、磁性基体の貫通孔は導体を挿入するために真直度(貫通孔長手方向における貫通孔断面のずれ幅)は貫通孔の直径以下であることが好ましい。
【0037】
図1に示す直線状の導体が磁性基体を貫通している構成を、磁性基体と導体を別体で形成し、実現する一例を図3に示す。図3に示す例は、直方体状の磁性基体が複数の部材で構成され、貫通孔が前記複数の部材の構設によって形成されている実施形態である。図3の(a)では、磁性基体は、導体を挿入するために溝が設けられた磁性部材12と、該溝を挟んで該磁性部材12と貼り合わせるための磁性部材11で構成されている。磁性部材12の溝に導体2を挿入し、さらに磁性部材11を貼り合わせて固定してチップアンテナとする(図3(b))。磁性部材12と磁性部材11を貼り合わせた後に、形成された貫通孔に導体を挿入してもよい。いずれも、磁性部材12と磁性部材11を貼り合わせることによって、貫通孔が形成されることになる。溝は例えばダイシング加工を用いれば、精度よく形成することができる。図3の例では、簡単な溝加工と部材の貼り合わせで基体を組み上げるので、貫通孔を極めて簡易に形成することができる。溝の断面形状は、導体の挿入が可能になるように導体の断面形状に応じたものにする。すなわち、溝の深さは、導体が溝の上面からはみださないように設定する。図3の例では、磁性部材の一方に溝を設けてあるが、両方の磁性部材に溝を設け、その溝を対向させて貼り合わせることによって、貫通孔を形成してもよい。この場合は、挿入する導体が両方の磁性部材の位置決めする機能も発揮する。
【0038】
図4は、磁性基体が複数の部材で構成され、貫通孔が前記複数の部材の構設によって形成されている他の実施形態である。図4は長手方向に垂直な方向の断面図である。磁性基体は直方体状をなし、磁性部材15を磁性部材13および14で挟むことで構成されている。磁性部材13、14および15はともに直方体である。2つの磁性部材15が所定の間隔を持つことで貫通孔が形成され、2つの磁性部材15の間隔および厚みで貫通孔の形状、大きさが決定される。具体的な組立手順は、例えば磁性部材14上で導体2を挟んで磁性部材15を配置し、さらに磁性部材13を被せ、磁性部材14と導体2を磁性部材13と14で挟んだ状態でこれらを固定すればよい。図4の構成は、溝加工を必要とせず、簡単な加工だけで磁性部材を作製し、貫通孔を形成することができるので、チップアンテナの簡易な製造に適する。
【0039】
磁性基体と導体、磁性部材と磁性部材は、クランプ等を用いて固定することも可能であるが、確実に固定するためには固着することが好ましい。例えば、磁性基体と導体との固着であれば、磁性基体と導体隙間に接着剤を塗布して固着すればよい。磁性部材同士の固着は、貼り合わせ面に塗布して接着する。接着剤が厚くなると磁気ギャップが大きくなるため、接着剤の厚さは50μm以下が好ましい。より好ましくは10μm以下である。磁気的なギャップの形成を抑えるためには、貼り合わせ面以外の部分に接着剤を塗布して固着してもよい。例えば側面で、磁性部材の貼り合わせ部分を跨ぐように接着剤を塗布する。接着剤は熱硬化性、紫外線硬化性等の樹脂や無機接着剤などを用いることができる。樹脂には酸化物磁性体などの磁性体フィラーを含有させてもよい。接着剤は、チップアンテナをハンダ固定する場合を考慮して、耐熱性の高いものを用いることが好ましい。特に、チップアンテナ全体が加熱されるリフローを適用する場合は、300℃以上の耐熱性があることが好ましい。なお、磁性基体と導体との隙間が小さく、磁性基体の貫通孔に設けられた導体の動きが磁性基体で十分に拘束される場合は、磁性基体と導体との間に必ずしも固定手段を講ずる必要はない。
【0040】
次に、直線状の導体が磁性基体を貫通している構成を、磁性基体と導体を別体で形成して実現する他の例を図19に示す。図19の(a)は長手方向に沿って導体を含んだ断面図、(b)は長手方向に垂直な方向での断面図である。図19に示す例は、直方体状の磁性基体33は一体の部材で構成されており、該磁性基体33の貫通孔に断面円形の導体34が挿入されて貫通している実施形態である。磁性基体として一体の部材を用いる場合は、接合部分を持たないため、チップアンテナの機械的強度を確保する上で有利な構成である。かかる磁性基体としては、押出し成形によって得られたものが好適である。押出し成形によれば、長尺の磁性基体、特に長手方向に貫通孔を有する磁性基体を作製することが可能である。押出し成形では、混練した原料を連続的に押出すため、造粒粉を圧縮成形する場合のように、焼結体において造粒粉同士の境界の痕跡が残らない。したがって、例えば本発明で用いる長尺の、かつ貫通孔を有する磁性基体であっても、高い機械的強度を具備することが可能である。特に、貫通孔を押出し成形時に形成してから焼結することが可能であるため、磁性基体の貫通孔の内壁面を焼結肌で構成し、欠陥の発生を抑制することができる。該構成は、落下の衝撃など大きな外力が加わる可能性の高い携帯電話などの携帯機器に用いる場合に好適である。押出し成形は、図19(b)に示す形状に対応した断面形状の成形体を連続的に押出して行われ、該成形体は所定の長さに切断して焼結される。図19に示す例は、直方体形状の長手方向に垂直な方向に位置する角に面取り部分としてアールを設けた構成であり、面取りの幅はdで示してある。前記構成は成形の際、金型の角にアールを設けることによって作製される。
【0041】
次に、図20に本発明に係るチップアンテナの他の実施形態を図に示す。図20に示す例は、ケースに収容されているチップアンテナである。図20の(a)は、樹脂製のケース30および前記ケース30に収容されたチップアンテナの平面図を示している。図の(b)は図20の(a)におけるAの方向から見た側面図、図20の(c)は図20の(a)におけるB−B’線での断面図である。ケース30はチップアンテナを収容可能な空間を深さ方向に有し、両側面には、側面上面から略中央にかけて、断面が円形の導体36をケース内部からケース外部へと導出可能となるようにスリットが設けられている。なお、スリットのかわりに貫通孔を設けてもよい。また、前記スリットまたは貫通孔は、必ずしも両側面に設ける必要はなく片側の側面に設けてもよい。チップアンテナはケース内側端面間に拘束される。また、各チップアンテナの長手方向の二点においてチップアンテナの長手方向に直角方向の動きを拘束する突起部31をケース内壁に設けてある。図19の例では、前記突起部31は、深さ方向に柱状に形成されており、チップアンテナを線で拘束する。柱状の突起部の断面形状は特に限定するものではないが、例えば三角形状、半円状等とすればよい。突起部は点状の突起として、点で拘束しても良い。また、突起部を設けるかわりに、チップアンテナの形状と略同一の空間を設け、該空間にチップアンテナを嵌挿してチップアンテナの動きを拘束してもよい。ケースの深さは、特に限定するものではないが、磁性基体35を保護する観点からは、磁性基体の厚さよりも大きく、磁性基体がケース上面から突出しないことが好ましい。チップアンテナは、接着剤でケースに固定しても良い。
【0042】
図21に、チップアンテナが、ケースに収容されている別の実施形態を示す。突起部38の構成は図20に示す実施形態と同様である。図21の(b)および(c)はそれぞれ図21(a)のC1およびC2の点線部分の断面図である。図21に示す実施形態では、ケース37の外側面に導体部材が設けられている。具体的には、ケース37の両側面の中央下端から底面側端部にかけて導体部材39Bが設けられている。該導体部材を用いて基板等の導体部分とケースとを接合し、チップアンテナを固定することができる。図21に示す構成では、導体部材39Bはケース側面からさらにケース内部に延設され、ケース内部で導体部材39Aを形成している。すなわち、導体39Aと39Bは一体であり、電気的に導通が取られている。導体部材39Aと39Bの末端は樹脂ケースの内部に内挿されている。かかるケースは、例えばリン青銅製の導体部材を樹脂モールドすることで形成すればよい。図21に示す例では、ケース外面に設けられた導体部材39Bに導通する導体部材39Aを、ケース内部の底面の両端に設け、該導体部材39Aにチップアンテナの導体をハンダ接合(図示せず)により接続している。かかる構成では、前記導体部材39Bを用いて、チップアンテナの固定と、チップアンテナと他の回路等との電気的な接続を行うことができる。なお、図21に示す例では、導体部材39Bはケース37の外側の面に沿うように設けられているが、該導体部材は電極ピン構造としてケースから突出する形態としてもよい。
【0043】
また、導体部材39Aの替わりに、上方からスリットを設けた金属板をケース底面から立設し、該金属板が前記スリットにおいて磁性基体から突出した線状の導体を挟持する構成とすることもできる。この場合該金属板は前記導体部材39Bと一体のものとするか、電気的に接合しておくことが好ましい。前記スリットの幅を前記線状の導体の幅または径よりも小さくしておけば、チップアンテナの固定と電気的接続を行うことができる。スリットの幅が深さ方向に漸減するようにしてもよい。また、スリットの上端の幅を導体が挿入される中間部分の幅よりも小さくして、線状の導体を掛止する構成にしてもよい。なお、ケース内部の導体部材39Aは必ずしも必要とするものではなく、側面や底面などケースの外側面に導体部材が設けられていれば、基板等の導体部分と接合してケースに収容されたチップアンテナを実装することが可能である。かかる場合は、磁性基体から突出した導体部をケースの外まで延出させ、ケース外の電極等に電気的接続を行えばよい。また、ケース上部には、蓋部材を設けてもよい。蓋部材は接着剤で接着固定してもよいし、蓋部材はケースに掛止される構成を用いてもよい。蓋部材を設けることにより、チップアンテナ全体を保護することができる。また、上述の突起部の形成に加えて、または替えて前記蓋部材を用いてチップアンテナの動きを拘束しても良い。上述の例は、ケースを用いてチップアンテナを固定、保護する例であるが、ケースを用いる替わりに、チップアンテナを樹脂でモールドした構成としてもよい。
【0044】
前記の磁性基体としては、Ni−Zn系フェライト、Li系フェライトに代表されるスピネル型フェライト、プラーナと呼ばれるZ型、Y型等の六方晶フェライト、これらフェライト材料を含む複合材等を用いることができるが、フェライトの焼結体であることが好ましく、特にY型フェライトの焼結体を用いることが好ましい。フェライトの焼結体は体積抵抗率が高く、導体との絶縁を図るうえで有利である。体積抵抗率の高いフェライト焼結体を用いれば、導体との間に絶縁被覆を必要としなくなる。Y型フェライトは、1GHz以上の高周波まで透磁率が維持される点、1GHzまでの周波数帯域で磁気損失が小さい点から、400MHzを超える高周波数帯域の用途、例えば470〜770MHzの周波数帯域を使用する地上デジタル放送用のチップアンテナに好適である。かかる場合、Y型フェライトの焼結体を磁性基体として用いればよい。Y型フェライトの焼結体は、Y型フェライト単相に限らず、Z型やW型等他の相を含有するものであってもよい。焼結体は、焼結後で磁性部材として十分な寸法精度を有していれば加工を必要としないが、貼り合わせ面は、研磨加工を施し、平坦度を確保することが望ましい。
【0045】
前記Y型フェライトの1GHzにおける初透磁率を2以上で、損失係数を0.05以下とすると、広帯域、高利得のチップアンテナを得る上で有利である。初透磁率が低くなりすぎると、広帯域化を図ることが困難となる。また、損失係数、すなわち磁気損失が大きくなるとチップアンテナの利得が低下する。図17に、図8に示す構成のアンテナ装置を用いてアンテナ内部損失の損失係数tanδ依存性を評価した結果を示す。磁性基体1の寸法等、損失係数以外の条件は上述のアンテナ内部損失等の誘電率依存性を評価した場合と同様である。また、比較のために導体幅が0.8mmで、巻き数12のヘリカル構造の電極を有するチップアンテナを用いた場合(構造b)の評価結果も併せて示してある。図17に示すように、損失係数が小さいほどアンテナ内部損失が小さくなるが、同じ損失係数で比較すると、本発明に係る構造の場合(構造a)は、ヘリカル構造の電極を有する場合よりもアンテナ内部損失が大幅に抑制されている。例えば損失係数tanδが0.05以下とすれば、アンテナ内部損失を0.5dB以下の低い水準とすることができる。アンテナ内部損失の0.5dBは、送信電力の10%程度に相当し、基体のみの損失として許容できる十分な水準である。また、初透磁率を変化させた場合のアンテナ内部損失の損失係数tanδ依存性を図18に示す。初透磁率が大きくなるとアンテナ内部損失は大きくなる傾向を示すが、初透磁率が2〜3の範囲では、損失係数tanδを0.05以下とすればアンテナ内部損失を0.5dB以下とすることができる。さらに、損失係数を0.04以下とすれば初透磁率4以下までアンテナ内部損失を0.5dB以下とすることができ、損失係数を0.03以下とすれば初透磁率5以下までアンテナ内部損失を0.5dB以下とすることも可能である。チップアンテナとして−7dBi以上の平均利得を得るためには、損失係数は0.05以下が好ましい。損失係数を0.03以下と低くすることによって、特に利得の高いチップアンテナを得ることができる。損失係数は周端数が高くなるにつれて大きくなる。したがって、前記Y型フェライトの1GHzにおける初透磁率を2以上で、損失係数を0.05以下とすれば、数百MHz、すなわち1GHzまでの周端数帯域全体にわたって平均利得に優れたチップアンテナを提供することができるが、使用される各帯域において損失係数等が前記範囲を満たしていれば高利得のチップアンテナを提供することは可能である。例えば470MHz、770MHzおいて初透磁率が2以上で、損失係数が0.05以下であれば、470〜770MHz帯を使用する地上デジタル放送に適用することが可能である。さらに、180MHzにおいて初透磁率が2以上で、損失係数が0.05以下であれば、180MHz以上の帯域、例えば180〜210MHz帯を使用する地上デジタル放送に適用することが可能である。
【0046】
Y型フェライトついてさらに説明する。Y型フェライトとは、代表的には例えばBa2Co2Fe12O22(いわゆるCo2Y)の化学式で表される六方晶系のソフトフェライトである。前記Y型フェライトは、M1O(M1はBa、Srのうちの少なくとも一種)、CoOおよびFe2O3を主成分とし、前記化学式のBaをSrで置換したものも含む。BaとSrはイオン半径の大きさが比較的近いため、BaをSrで置換したものもBaを用いた場合と同様にY型フェライトを構成し、また類似した特性を示し、これらはいずれも高周波帯域まで透磁率を維持する。これらの比率は、Y型フェライトを主相とできるものであればよいが、例えばBaOは20〜23mol%、CoOは17〜21mol%、残部Fe2O3であることが好ましく、BaOは20〜20.5mol%、CoOは20〜20.5mol%、残部Fe2O3であることがさらに望ましい。Y型フェライトを主相とするとは、X線回折におけるピークのうち、Y型フェライトのメインピ−ク強度が最大であることをいう。Y型フェライトはY型単相であることが好ましいが、Z型、W型など他の六方晶フェライトやBaFe2O4等の異相が生成する場合がある。したがって、Y型フェライトは、これらの異相を含むことも許容する。ただし、透磁率を高周波まで維持すること、低損失であることを実現するためにはY型フェライトの比率は85%以上であることが好ましく、より好ましくは92%以上である。ここでY型フェライトの比率とは、本発明のフェライトを構成する各相のX線回折におけるメインピーク(最もピーク強度の高いピーク)の強度の和に対するY型フェライトのメインピ−ク強度の割合である。
【0047】
前記Y型フェライトは、さらにCu、Znを微量に含有することが好ましい。従来から、Y型フェライトとしてCoの代わりにCuやZnを用いたCu2Y、Zn2Yなどが知られている。このCu、Znの置換は主としてAgとの同時焼成を目的とした低温焼結化、透磁率の向上を目的とするものであるが、Coに対するCu或いはZnの置換量は数十%以上と多く、この場合体積抵抗率が低くなり、また損失係数、誘電率も大きくなりやすい。これに対して、本発明の場合は、Cu、Znを微量に含有させる。Cu、Znを微量に含有させることによって、損失係数を低く抑え、また体積抵抗率を高く維持しつつ、焼結体密度を向上させることができる。また、Cu、Znの微量添加によって、透磁率も向上する。Cuの含有量をCuO換算で0.1〜1.5重量部、Znの含有量をZnO換算で0.1〜1.0重量部とすることで、4.8×103kg/m3以上の焼結体密度を得ることができる。特にCu、Znの含有量を前記微量の範囲とすることで、周波数1GHzにおける損失係数tanδを0.05以下とし、さらには体積抵抗率を1×105Ω・m以上を確保することも可能となる。Cu、Znの含有量はより好ましくは酸化物換算で0.1〜0.6重量部であり、該範囲とすることで、体積抵抗率を1×106Ω・m以上とすることができる。高密度を有する磁性基体は、携帯電話等の通信機器に用いられるチップアンテナの強度向上に寄与する。また、チップアンテナを構成する場合、体積抵抗率が、1×105Ω・m未満となるとアンテナ利得の低下への影響が大きくなるため、1×105Ω・m以上であることが好ましく、特に好ましくは1×106Ω・m以上である。なお、これらCuとZnは複合で含有してもよい。
【0048】
また、Cu、Znの他に、Si、Na、Li、Mn等を含有させることもできる。Siは焼結体密度・透磁率向上の効果をもたらすが、SiO2換算で0.1重量部未満では実質的な効果が発揮されず、その含有量が多くなると損失係数が大きくなってしまうため、0.1〜0.4質量部であることが好ましい。また、Naは損失係数低下の効果を示すが、Na2CO3換算で0.1重量部未満では、実質的効果が発揮されず、0.4質量部超では体積抵抗率が低下する。したがって、Na2CO3換算で0.1〜0.4質量部であることが好ましい。さらに、Liは焼結体密度向上・透磁率向上の効果を示すが、その含有量がLi2CO3換算で0.1重量部未満では実質的な効果が発揮されず、0.6質量部超では、透磁率および体積抵抗率が低下する。したがって、Li2CO3換算で0.1〜0.6質量部が好ましい。さらに、Mnは、損失係数の低下に効果があるが、0.1未満では実質的な効果を発揮されず、1.0質量部超では体積抵抗率が低下する。したがって、Mn3O4換算で0.1〜1.0質量部であることが好ましい。
【0049】
また、不可避不純物として、0.001質量%以下のB、0.005質量%以下のNa、0.01質量%以下のSi、0.005質量%以下のP、0.05質量%以下のS、0.001質量%以下のCaを含んでも良い。
【0050】
磁性基体をY型フェライトの焼結体で構成する場合、該Y型フェライトは従来からソフトフェライトの製造に適用されている粉末冶金的手法で製造することができる。所望の割合となるように秤量されたBaCO3、Co3O4、Fe2O3などの主原料およびCuO、ZnOなどの微量成分を混合する。なお、CuO、ZnOなどの微量成分は、仮焼後の粉砕工程において、添加してもよい。混合方法は、特に限定するものではないが、例えばボールミル等を用いて、純水を媒体として湿式混合(例えば4〜20時間)する。得られた混合紛を電気炉、ロータリーキルンなどを用いて所定の温度で仮焼することにより仮焼粉を得る。仮焼温度、保持時間は、それぞれ900〜1300℃、1〜3時間が好ましい。仮焼温度、保持時間がそれらを下回ると反応の進行が十分でなく、逆にそれらを上回ると粉砕効率が落ちる。仮焼雰囲気は、大気中または酸素中などの酸素存在下であることが好ましい。得られた仮焼粉はアトライタ、ボールミルなどを用いて湿式粉砕し、PVAなどのバインダーを添加した後、スプレイドライヤ等によって造粒することにより造粒紛を得る。粉砕粉の平均粒径は0.5〜5μmが好ましい。得られた造粒粉をプレス機により成形してから、電気炉などを用いて例えば1200℃の温度にて酸素雰囲気中で1〜5時間焼成を行い六方晶フェライトを得る。焼成温度は1100〜1300℃が好ましい。1100℃未満であると焼結が十分に進行せず高い焼結体密度が得られず、1300℃を超えると粗大粒が発生するなど過焼結となる。また、焼結は、これが短いと焼結が十分進行せず、逆に長いと過焼結となりやすいので1〜5時間とすることが望ましい。また、焼結は高い焼結体密度を得るためには酸素存在下で行なうことが好ましく、酸素中で行なうことがより好ましい。得られた焼結体は、必要に応じて切断、研磨、溝加工等の加工を施す。
【0051】
次にアンテナ装置について説明する。図1のチップアンテナを用いる場合であれば、前記導体の一端3は開放端を構成し、他端4は給電回路等の制御回路(図示せず)に接続されて、アンテナ装置が構成される。開放端側となる導体の一端は必ずしも電極等に固定する必要はないが、安定な実装や共振周波数の調整のためには、開放端側も電極等に固定することが好ましい。図5は、図2のチップアンテナを基板に実装したアンテナ装置の実施形態の例を示す図であり、(a)は基板の面に垂直な方向から見た上面図、(b)は基板の面に平行な方向から見た背面図である。図5の(b)では基板上の電極の図示は省略してある。アンテナ装置は、直線状の導体が磁性基体1を貫通し、前記導体の両端、すなわち導体の一端3と導体の他端4が前記磁性基体から突出しているチップアンテナと、前記チップアンテナを実装する基板8を有する。導体の両端部は前記磁性基体の外で屈曲されて基板8に形成された電極部である固定電極5および給電電極6にハンダ接合されている。給電電極は給電回路等に接続されている。チップアンテナ10は、導体2の長手方向が基板平面に平行になるように配置されているため、低背かつ安定な実装を可能にしている。この点は、後述する他の実施形態のアンテナ装置においても同じである。チップアンテナ10は、導体の両端がハンダ固定されているので強固に固定されているが、さらに接着剤等を用いて固定してもよい。図5の構成では、導体の両端を屈曲させて基板側の電極との接触を図っているが、導体の両端を屈曲させずに、基板側の固定電極5と給電電極6を厚くして接触を図ってもよい。アンテナ装置は、受信アンテナ、送信アンテナ、送受信アンテナのいずれの態様でも用いることができる。
【0052】
図6には、本発明のアンテナ装置の他の実施形態を示す。図6は、図1のチップアンテナを基板に実装したアンテナ装置の例を示す図であり、(a)は基板の面に垂直な方向から見た上面図、(b)は基板の面に平行な方向から見た背面図である。図6の(b)では基板上の電極の図示は省略してある。図6に示すアンテナ装置は、直線状の導体が磁性基体1を貫通し、前記導体の両端、すなわち導体の一端3と導体の他端4が前記磁性基体から突出しているチップアンテナと、前記チップアンテナを実装する基板8を有する。さらに、基板8には切り欠き部21が設けられており、チップアンテナの基体は前記切り欠き部に挿入され、導体の両端(導体の一端3、導体の他端4)が前記基板に形成された電極部にハンダ接合で接続されている。導体2の両端は屈曲させて用いることも可能であるが、直線状のままとすることが好ましい。図6の例では、突出した導体2の両端は直線状のままとしてある。基板に切り欠き部を設けた図6の実施形態では、突出した導体2の両端が直線状のままでチップアンテナを実装することが可能であるので、導体2の両端を屈曲させる工程を省略し、製造工程を簡略化できる。また、背面図(b)からも明らかなように、基体の厚さ方向の一部を基板の切り欠き部に納めることができるため、アンテナ装置の低背化を図ることができる。この場合は、導体2は、チップアンテナの支持に十分な強度、硬度を有するものを用いる。材質としては例えば42アロイ、コバール、リン青銅、コルソン系銅合金などを用いればよい。なお、図6の実施形態では基体を挿入する部分を基板端部に設けて切り欠き部を構成しているが、基板に開口部、すなわち穴を設けて、該部分を基体を挿入する部分としてもよい。かかる場合も、切り欠きを設ける場合と同様の効果が得られる。
【0053】
次に、本発明のアンテナ装置の別の実施形態について図7を用いて説明する。図7に示すアンテナ装置は、図2に示すチップアンテナと前記チップアンテナを実装する基板8を有している。基板8には接地電極9と該接地電極に離間して固定用電極5が形成されており、チップアンテナ10の導体の一端3は前記固定電極5に接続されている。また、導体の他端4は給電電極にハンダ接合されており、給電電極は給電回路等に接続されている。固定用電極5はチップアンテナ10の導体の長手方向に垂直な方向に延出し、その端部と接地電極9の端部とは平行線をなし、所定の間隔を隔てて対向している。図7の実施形態では、チップアンテナ10、固定用電極5、接地電極9および給電電極6が口の字状に配置されている。チップアンテナ10の開放端側の固定用電極5を接地電極9に離間して形成した構成とすることで、これらの間に容量成分を形成する。本発明に係るチップアンテナは容量成分を大幅に抑えた構造を有するが、所望のアンテナ特性に対して容量成分が不足する場合には、前記方法により容量成分を付加することによってアンテナ特性の調整を行う。チップアンテナ自体の容量成分を調整する方法に比べて、上記方法は簡易に容量成分の調整を行うことができる。アンテナの共振周波数を調整する具体例として、固定用電極5と接地電極9との間に少なくとも一つのコンデンサとスイッチを接続して切り換える、あるいは可変容量ダイオード(バラクタ・ダイオード)を接続し、この印加電圧によって静電容量を変えながら所定の共振周波数まで調整するなどの方法を用いることができる。
【0054】
本発明に係るチップアンテナは磁性体を基体しているため波長短縮効果が大きく、小型化しやすく、高周波でもアンテナ帯域を広くとりやすい。したがって、前記チップアンテナは地上波デジタル放送に使用される180MHz以上、さらには400MHz以上の周波数帯域に用いるチップアンテナとして好適である。本発明に係るチップアンテナを用いてアンテナ装置を構成することによって、アンテナ装置の動作周波数帯域の広帯域化を図ることができる。平均利得−7dBi以上の帯域幅220MHz以上を得ることも可能である。また、共振周波数を適正化するなどして、300MHz以上の帯域幅を得ることも可能である。400MHz以上の高周波帯域で、かかる広帯域特性を有するアンテナ装置は、使用周波数帯域の広い用途、例えば国内の地上デジタル放送に好適である。470〜770MHzの周波数帯域を使用する地上デジタル放送のように、アンテナ装置の帯域幅に対して使用する帯域幅が広い場合は、帯域の異なるアンテナ装置を複数用いて使用帯域全体をカバーするようにすればよい。複数のアンテナ装置を用いると実装面積、実装空間が増加してしまうが、アンテナ装置の帯域幅が広ければアンテナ装置の数を減らすことができる。アンテナ装置が3個以上になると実装面積、実装空間が大幅に増加してしまう。したがって、携帯機器など実装面積等が限られている場合にはアンテナ装置の数は2個以下、より好ましくは1個である。上述のような帯域幅を有するアンテナ装置を用いれば、2個以下のアンテナ装置で470〜770MHzの周波数帯域をカバーすることも可能である。アンテナ装置の平均利得としては、−7dBi以上が好ましく、より好ましくは−5dBi以上である。
【0055】
一方、広い周波数帯域をカバーするためには、図8に示すようにチップアンテナと給電回路の間に、アンテナ装置の共振周波数を調整する整合回路22を設け、該整合回路22の切り換えによってアンテナ装置の共振周波数を移動させ、動作帯域を換えてもよい。インピーダンスマッチングのための整合回路にアンテナ装置の共振周波数の調整機能を持たせる。整合回路22は例えば、図9に示すようなものを用いる。図9の例では、一端を接地したキャパシタC1、インダクタL1の他端の間にインダクタL2を接続して整合回路を構成している。キャパシタC1の他端にチップアンテナの導体を接続し、インダクタL2の他端に給電回路を接続する。インダクタL2のインダクタンス値が異なる複数の整合回路を設け、これらを切り換えられるようにしておく。前記複数の整合回路のうち一つは、インダクタL2のインダクタンス値がゼロ、すなわちインダクタL2を備えない整合回路であってもよい。さらに、整合回路の切り換え方法としては、半導体を用いたスイッチやダイオードを使う方法が、回路の小型集積化や低損失の面で適する。図22には整合回路の切り換えを行う回路の例を示す。制御電圧(Control Voltage)を調整することで、高周波帯域用の整合回路と低周波帯域用の整合回路とを切り換える。図22の例では、制御電圧が0Vのとき低周波用整合回路、制御電圧が+1.5Vのときは高周波帯域用の整合回路に切り換えられる。かかる複数の整合回路を切り換えることによって、一つのアンテナ装置で、共振周波数、すなわち帯域の異なる複数の状態を実現する。また、整合回路全体の切り換えに限らず、インダクタL2など特定の回路素子のみを切り換えてもよい。整合回路を切り換えることによって、少なくとも470〜770MHzの周波数帯域で−7dBi以上を得るようにすれば、地上デジタル放送に特に好適なアンテナ装置となる。より好ましくは−5dBi以上である。整合回路の切り換えの数が増えれば、それだけ多くの実装面積、部品点数を必要とし、制御も複雑となるため、整合回路を用いる場合はその数は2以下とし、切り換えの数は1とすることが好ましい。平均利得の全面平均が−7dBi以上である帯域幅が220MHz以上であるアンテナ装置に、上記の整合回路による切り換え機能を付与すれば、470〜770MHzの周波数帯域を切り換えの数を1としてカバーすることができる。
【0056】
前記チップアンテナおよびそれを用いて構成した前記アンテナ装置は、通信機器に用いられる。例えば、前記チップアンテナおよびアンテナ装置は、携帯電話、無線LAN、パーソナルコンピュータ、地上デジタル放送関連機器等の通信機器に用いることができ、これらの機器を用いた通信における広帯域化に寄与する。地上デジタル放送は使用周波数帯域が広いため、本発明に係るアンテナ装置を用いた通信機器は、該用途に好適である。特に、本発明のアンテナ装置を用いることで、実装面積、実装空間の増加を抑えることができるので、地上デジタル放送を送受信する携帯電話、携帯端末等に好適である。図10、図11はそれぞれ通信機器として携帯電話を用いた例を示している。開いた状態の携帯電話の外観を示す図10(b)および図11(b)では、内蔵されたチップアンテナの位置を点線で示している。図10(a)、図11(a)の断面図に示すように、携帯電話25は、チップアンテナ10が基板27に取付けられ、無線モジュール26に接続されている。尚、チップアンテナ10の配置は図10、あるいは図11の形態に限られるものではない。チップアンテナ10は、操作ユニット24の逆端部側に配置してもよいし、表示ユニット23に配置してもよい。また、アーチ形状のチップアンテナを用いた場合の例を図13に示す。図13では、内蔵されていているチップアンテナ28とレシーバ29の位置を点線で示してある。図13に示す構成では、アーチ形状のチップアンテナは携帯電話25の表示ユニット23の先端に配置されており、アーチ形状の外側の曲面は表示ユニットの先端形状に合わせて配置してある。該構成では、直方体状のチップアンテナを用いた場合に比べて、レシーバとの距離を大きく取ることができる。また、携帯電話の幅を一定とすると、直方体のチップアンテナに比べてチップアンテナの長さを大きく取ることができる。
【0057】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
主成分であるFe2O3、BaO(BaCO3を使用)、CoO(Co3O4を使用)を60mol%、20mol%、20mol%のモル比とし、この主成分100重量部に対して表1に示すCuOまたはZnOを添加し、水を媒体として湿式ボールミルにて16時間混合した(No1〜12)。また、No13の材料として、主成分であるFe2O3、BaO(BaCO3を使用)、CoO(Co3O4を使用)を70.6mol%、17.6mol%、11.8mol%のモル比とし、水を媒体として湿式ボールミルにて16時間混合した。
【0059】
次に、この混合粉を乾燥後、No1〜12の材料については大気中1000℃で2時間、No13の材料については大気中1100℃で2時間、仮焼した。この仮焼粉を、水を媒体とした湿式ボールミルにて18時間粉砕した。得られた粉砕粉にバインダー(PVA)を1%添加し、造粒した。造粒後リング状および直方体状に圧縮成形し、その後、No1〜12の材料については酸素雰囲気中で1200℃で3時間、No13の試料については酸素雰囲気中で1300℃で3時間焼結した。得られた外径7.0mm、内径3.5mm、高さ3.0mmのリング状焼結体の焼結密度と25℃における初透磁率μおよび損失係数tanδを測定した。
【0060】
体積抵抗率、焼結体密度、周波数1GHzでの初透磁率μi、損失係数tanδの評価結果を表1に、周波数180MHz、470MHz、770MHzでの初透磁率μi、損失係数tanδの評価結果を表2に示す。なお、密度測定は、水中置換法により測定し、初透磁率μおよび損失係数tanδは、インピーダンス・ゲインフェイズ・アナライザー(Yokogawa・Hewlett・Packard社製4291B)を用いて測定した。また、一部の試料については前記インピーダンス・ゲインフェイズ・アナライザーを用いて誘電率の測定も行なった。なお、誘電率とは比誘電率である。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
X線回折を行なった結果No1〜12の材料においては、メインピーク強度が最も大きい構成相はY型フェライトであり、Y型フェライトが主相であった。一方、No13の材料は、メインピーク強度が最も大きい構成相はZ型フェライトであり、Z相が主相であった。表1に示すように、CuOを0.1〜1.5wt%添加したものと、ZnOを0.1〜1.0wt%添加したY型フェライトで、1GHzでの初透磁率2以上、損失係数0.05以下、下が得られている。また、体積抵抗率も1×105Ω・m以上、焼結体密度も4.8×103kg/m3以上と、ともに良好な値が得られている。このうち特に、CuOを0.6〜1.0添加したものは、2.7以上の高初透磁率、0.03以下の低損失係数、4.84×103kg/m3以上の高密度が得られている。一方、Z相が主相であるNo13の材料では、特に損失係数が大きくなっているとともに焼結体密度も低い。なお、No4の試料について比誘電率を測定したところ比誘電率は14であった。また、表2に示すようにCuO添加量が0.1〜2.0wt%の範囲に入るものは、470MHz〜770MHzの周波数帯域で初透磁率2以上、損失係数0.05以下となり、470MHz〜770MHzの周波数帯域のチップアンテナに適用可能である。なお、180MHzでは、Cuを添加した材料、Znを添加した材料いずれも初透磁率2以上、損失係数0.05以下を示しており、180MHz以上の周波数帯域のチップアンテナに適用可能である。Y型フェライトの焼結体は、1GHzに限らず470〜770MHz程度の周波数帯においてもZ型フェライトに比べて損失係数が小さく、チップアンテナの材料として優れていることがわかる。
【0064】
上記No4の材料の焼結体を用いて図3に示すチップアンテナを以下のように作製した(アンテナ1)。焼結体から機械加工により30×3×1.25mmと30×3×1.75mmの直方体の磁性部材を得た。30×3×1.75mmの磁性部材には、30×3mmの面の幅方向中央に、幅0.5mm、深さ0.5mmの溝を長手方向に形成した。該溝に、導体として0.5mm角、長さ40mmの銅線を挿入した後、30×3×1.25mmの磁性部材をエポキシ系接着剤(アレムコ社製アレムコボンド570)で接着した。接着剤は磁性部材の貼り合わせ面に塗布した。前記の磁性部材の構設によって縦0.5、横0.5mmの貫通孔が形成され、接着によって得られた基体は30×3×3mmである。突出した導体の両端は基体の外で屈曲させ、図2に示す導体形状とした。また、誘電体チップアンテナの場合と比較するため、以下のようにして誘電体チップアンテナを作製した。誘電率21の誘電体の焼結体から機械加工により30×3×3mmの直方体の部材を得た。その表面にAg−Ptペーストの印刷、焼き付けにより、電極幅が0.8mmで、表3に示す巻き数のヘリカル構造の電極を形成し、チップアンテナを作製した(アンテナ2)。
【0065】
給電電極を形成した基板に前記アンテナ1および2それぞれ実装し、電極の一端を給電電極に接続してアンテナ装置を構成した(それぞれアンテナ装置1および2とする)。アンテナ装置1は、図8に示す構成のアンテナ装置とした。すなわちプリント基板に、給電電極、接地電極、該接地電極に離間して固定電極を形成した。固定電極の幅は4mm、長さは13mmとした。該固定電極の長手方向端部と接地電極とのギャップは1mmである。接地電極はチップアンテナの全体に対向するように形成し、チップアンテナのとの間隔は11mmとした。整合回路として図9に示したものと同じ構成のものを設けた。C1を1pF、L1を12nH、L2を18nHとした。上記アンテナ装置は測定用アンテナ(図8のアンテナ装置の右側に設置(図示せず))から3m離し、50Ωの同軸ケーブルを介してネットワークアナライザを用いたアンテナ利得評価装置に接続して、アンテナ特性(アンテナ利得、共振周波数(利得最大を示す周波数))を評価した。なお、図8のチップアンテナの長手方向をX、それに直角な方向をY、それらに垂直な方向すなわち基板の面に垂直な方向をZとした。ZX面(H平面)の垂直偏波での測定結果を表3に示す。平均利得帯域幅および最大利得帯域幅は、それぞれ平均利得および最大利得が所定の値以上である周波数帯域幅である。表3には−7dBi以上の帯域幅と−5dBi以上の帯域幅を示した。表3に示すように、誘電率が20を超える誘電体を用いたアンテナ装置2に比べて、誘電率が20以下で、さらに1GHzにおける初透磁率が2以上、かつ損失係数が0.05以下のY型フェライトを用いたアンテナ装置1は、帯域幅が大幅に向上しており、かかるY型フェライトをアンテナ装置に用いる効果が確認できる。アンテナ装置1の−7dBi以上の平均利得の帯域幅は260MHz以上を示している。なお、表3では470〜770MHzでの評価結果を示してあるが、−7dBi以上及び−5dBi以上の領域は470MHz未満の領域にも及んでおり、実際の帯域幅は表3に示す帯域幅よりも広いものである。
【0066】
次に、上記アンテナ装置1のチップアンテナの磁性基体と、対向する接地電極との間隔を4mm、6mm、8mm、11mmと変化させてアンテナ特性を評価した。その時の整合回路のL1、L2、C1は22nH、27nH、0.5pF(4mm)、27nH、27nH、0.5pF(6mm)、27nH、27nH、0.5pF(8mm)、27nH、22nH、0.5pF(11mm)とした。チップアンテナの磁性基体と、対向する接地電極との間隔を4mm、6mm、8mm、11mmと大きくなるにつれて平均利得の最大値は−3.7dB、−1.7dBi、−1.8dBi、−2.0dBiとなり、特に6mm以上とすると高い平均利得が得られることがわかった。
【0067】
【表3】
【0068】
(実施例2)
次に、アンテナ1を用いた別のアンテナ装置3を構成し、同じNo4の材料を用いて作製したヘリカル電極構造のアンテナ装置4と比較評価した。アンテナ装置3は、アンテナ1を用いて図8に示す構成で作製した。プリント基板に、給電電極、接地電極、該接地電極に離間して固定電極を形成した。固定電極の幅は3.5mm、長さは13mmとした。該固定電極の長手方向端部と接地電極とのギャップは1mmである。接地電極はチップアンテナの全体に対向するように形成し、チップアンテナのとの間隔は11mmとした。整合回路として低域用と高域用の2種類の整合回路を設けた。整合回路の構成は図9に示したものと同じで、低域用はC1を1pF、L1を12nH、L2を18nHとし、高域用は、C1を1pF、L1を12nH、L2を0nH(インダクタを接続せず)とした。インダクタL2の他端に相当する部分は、50Ωの同軸ケーブルを介してネットワークアナライザを用いたアンテナ利得評価装置に接続して給電を行った。一方、アンテナ装置4は、No4の材料を用いて作製した。ヘリカル電極の巻き数を12回とした以外は、アンテナ装置2の場合と同様にしてチップアンテナを作製した。アンテナ装置4の基板上の配置はアンテナ装置3の場合と同様である。チップアンテナと接地電極との間隔は11mmとした。ただし、固定電極は設けず、また整合回路を付加していない。これらアンテナ装置3、4を測定用アンテナ(図8のアンテナ装置の右側に設置(図示せず))から3m離し、前記アンテナ利得評価装置を用いてアンテナ特性(平均利得、共振周波数)を評価した。整合回路を切り換えて評価した結果を表4に示す。なお、表4の中の平均利得帯域幅は、上記表3の場合と同様平均利得が−7dBi以上の場合と−5dBi以上の場合の周波数帯域幅である。表4にはZX面(H平面)の垂直偏波の平均利得、およびXY面(E2平面)、YZ(E1平面)、ZX面(H平面)の3全面で平均した平均利得の評価結果を示してある。
【0069】
表4に示すように、アンテナ1を用いたアンテナ装置4の−7dBi以上の帯域幅は、整合回路によらずZX面で250MHz以上、全面での平均においても220MHz以上を示している。すなわち、整合回路を切り換えることによって、470〜770MHzの周波数帯域で、全面平均の平均利得において−7dBi以上が得られることがわかる。具体的には、表4の結果では、アンテナ1を用いたアンテナ装置4の−5dBi以上の帯域幅は、整合回路によらず全面での平均においても180MHz以上が得られている。したがって、全面平均の平均利得における目標値を−5dBiとした場合であっても、整合回路を切り換えることによって、470〜770MHzの周波数帯域を満足している。なお、表4には470〜770MHzでの評価結果を示してあるが、−7dBi以上の領域は470MHz未満の領域或いは770MHz超の領域にも及んでおり、実際の帯域幅は表4に示す帯域幅よりも広いものである。例えば、アンテナ装置3において、高域用整合回路を用いたものは770MHzにおいても全平均の平均利得は−2.0dBiを示し、低域用整合回路を用いたものは、470MHzにおいても全平均の平均利得も−3.4dBiという高利得を示している。したがって、整合回路の調整によって共振周波数を制御することによって、一つのチップアンテナで整合回路の切り換え無しで470〜770MHzの周波数帯域を満たすことも可能である。
【0070】
【表4】
【0071】
(実施例3)
次に、アンテナ1を用いて図8に示す構成でアンテナ装置5を作製した。プリント基板に、給電電極、接地電極、該接地電極に離間して固定電極を形成した。固定電極の幅は3.5mm、長さは13mmとした。該固定電極の長手方向端部と接地電極とのギャップは1mmである。ただし、接地電極はチップアンテナ全体に対向せず、固定電極に対向する部分に形成した。整合回路として低域用、高域用の2種類の整合回路を設けた。整合回路の構成は図9に示したものと同様で、低域用はC1を0.5pF、L1を15nH、L2を15nHとし、高域用はC1を0.5pF、L1のかわりにC2を配置して2pF、L2を0nH(インダクタを接続せず)とした。このアンテナ装置を携帯電話に実装した。実装場所は、概略図11に示すように、携帯電話の表示ユニットの先端とした。チップアンテナは表示ユニットの先端線に平行になるように、かつスピーカ等からなるレシーバからの12mmの間隔を確保するように配置した。アンテナ特性の評価のために、インダクタL2の他端に相当する部分は、50Ωの同軸ケーブルを介してネットワークアナライザを用いたアンテナ利得評価装置に接続して給電を行った。整合回路を切り換えて、評価した結果を表5に示す。表5には全面で平均した平均利得の評価結果を示してある。携帯電話に実装した状態でも、整合回路によらず帯域幅は220MHz以上を確保できた。また、整合回路を切り換えることによって、470〜770MHzの帯域において、−7dBiを満足した。なお、表5には470〜770MHzでの評価結果を示してあるが、低域側の−7dBi以上の領域は470MHz未満或いは770MHz以上の帯域にも及んでいる。また、−5dBi以上の領域も470MHz未満にも及んでいる。すなわち、実際の帯域幅は表5に示す帯域幅よりも広いものである。したがって、低域用の整合回路および高域用の整合回路を微調整することによって、470〜770MHzを越える周波数帯域おいて−5dBi以上を満たすことも可能である。また、レシーバとチップアンテナの間隔を変化させたところ、該間隔を大きくすることによって利得が向上し、帯域幅が広がる傾向を示した。該間隔が4mmを下回ると帯域幅の低下が大きくなり、4mm以上が好ましいことがわかった。
【0072】
【表5】
【0073】
(実施例4)
表1のNo4の材料と同様に、主成分であるFe2O3、BaO(BaCO3を使用)、CoO(Co3O4を使用)を60mol%、20mol%、20mol%のモル比とし、この主成分100重量部に対してCuO0.6重量部を添加し、水を媒体として湿式ボールミルにて混合した。次に、この混合粉を乾燥後、大気中1100℃で1.5時間仮焼した。この仮焼粉を、水を媒体とした湿式ボールミルにて10時間粉砕した。得られた粉砕粉に水、バインダ、潤滑剤および可塑剤を添加して、押出し成形を行った。得られた成形体は乾燥後、大気中1150℃で3時間焼結し、30mm×3mm×3mmの直方体形状の焼結体を得た。該焼結体の中心には、直径約0.6mmの円形断面の貫通孔が長手方向に形成され、該長手方向に垂直な方向に位置する4つの角の部分には、面取り幅0.5mmのアールが形成された。また、複数の焼結体について貫通孔の円筒度(最大径と最小径の差)を測定したところずれも10μm以下であった。また、押出し成形の条件を変えて円筒度が48〜149μmのものを作製したところ、導体を挿入することが困難であった。この場合、貫通孔は正方形断面の一辺の方に長く、それに直角な方向の一辺の方に短くなっているものが多かった。
【0074】
得られた焼結体を磁性基体として用い、直径0.6mmの銅線を挿入、貫通させチップアンテナを構成した。貫通孔の最大直径と銅線の径との差は22〜45μmであった。さらに該チップアンテナを用いて図8に示す構成でアンテナ装置6を作製した。幅40mmのプリント基板に、給電電極、接地電極、該接地電極に離間して固定電極を形成した。接地電極は、プリント基板の表、裏ともチップアンテナを実装する先端側から15mm以上離間している領域に形成した。固定電極5の幅は3.5mm、給電電極6の幅は1mm、長さは13mmとした。該固定電極の長手方向端部と接地電極とのギャップは1mmである。固定電極5の幅を固定電極6の幅よりも広くした理由は、固定電極5の端部と接地電極との静電容量を大きくすることにより、アンテナ共振周波数を低くし小形化するためである。接地電極はチップアンテナの全体に対向するように形成し、チップアンテナのとの間隔は11mmとした。整合回路として低域用と高域用の2種類の整合回路を設けた。整合回路の構成は図15に示したものと同じで、C1を0.5pF、L1を68nH、L3を18nHとした。実施例2と同様にして、アンテナ特性を評価した。全面で平均した平均利得の評価結果を図23に示すが、−7dB以上の帯域幅が330MHz(475〜800MHz)、−5dB以上の帯域幅が275MHz(503〜778MHz)となり、広帯域のアンテナ装置が得られたことがわかる。前記330MHzの帯域幅は、一つのアンテナ装置で整合回路等を調整することにより、整合回路の切り換えがなくても470〜770MHzの帯域をカバーすることが可能であることを示す。
【0075】
次に、押出し成形で作製した焼結体を加工して、三点曲げの抗折強度を測定した。また、実施例1で作製したNo4の材料の焼結体についても同様に加工して併せて抗折強度を測定した。試験片は10個とし、抗折強度はその平均をとった。実施例1で作製した焼結体の抗折強度は200MPa、押出し成形で作製した焼結体の抗折強度は217MPaであり、約10%強度が向上していた。すなわち押出し成形を適用して得られた磁性基体を用いることにより、チップアンテナの機械的強度の向上が図れることがわかる。抗折強度が210MPa以上の磁性基体は高い衝撃が加わる携帯機器に用いる場合に有利である。また、焼結体の炭素量は実施例1で作製した焼結体、押出し成形で作製した焼結体とも0.01質量%であり、同レベルであった。
【0076】
前記押出し成形で作製した焼結体と実施例1で作製したNo4の材料の焼結体の破面をSEMで観察したところ、前者では径の大きな空孔が多く、後者では微細孔が多かった。そして、1μm以上の空孔は1mm2当たりそれぞれ約1800個、約9000個であった。さらに前記焼結体を鏡面研磨した後エッチングして光学顕微鏡にて組織を観察した。200μmに相当する線上に存在する粒子数Nをカウントして、200μmをNで除して焼結体の平均結晶粒径を算出したところ、押出し成形で作製した焼結体の平均結晶粒径は2.5μm、実施例1で作製したNo4の材料の焼結体の平均結晶粒径は2.0μmであった。すなわち平均結晶粒径を2.8μm以下、1μm以上の空孔が面積1mm2当たり2%以上とすることで、上述のように機械的強度に優れるチップアンテナを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図5】本発明の実施形態のアンテナ装置を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態のアンテナ装置を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態のアンテナ装置を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態のアンテナ装置を示す図である。
【図9】本発明のアンテナ装置の実施形態に用いる整合回路の例を示す図である。
【図10】本発明の通信機器の実施形態である携帯電話を示す図である。
【図11】本発明の通信機器の他の実施形態である携帯電話を示す図である。
【図12】本発明の本発明の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図13】本発明の通信機器の他の実施形態である携帯電話を示す図である。
【図14】比誘電率とアンテナ内部損失の関係を示す図である。
【図15】整合回路の例を示す図である。
【図16】アンテナ内部損失と共振周波数の導体幅依存性を示す図である。
【図17】本発明の実施形態に係る構造(構造a)と比較構造(構造b)における、アンテナ内部損失と損失係数tanδの関係を示す図である。
【図18】アンテナ内部損失と損失係数tanδの関係を示す図である。
【図19】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図20】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図21】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図22】整合回路の切り換えを行う回路の例を示す図である。
【図23】本発明に係るアンテナ装置のアンテナ特性を示した図である。
【図24】磁性基体の内外形比と平均利得の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1、33、35:磁性基体 2、34、36:導体 3:導体の一端 4:導体の他端
5:固定電極 6:給電電極 7:給電回路 8:基板 9:接地電極
10:チップアンテナ 11、12、13、14、15:磁性部材 21:切り欠き部
22:整合回路 23:表示ユニット 24:操作ユニット 25:携帯電話
26:無線モジュール 27:基板 28:チップアンテナ 29:レシーバ
30、37:ケース 31、38:突起部 39A、39B:導体部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を備えた電子機器、特に携帯電話、携帯端末装置などの通信機器に用いるチップアンテナに関し、さらにはチップアンテナを用いたアンテナ装置及びこれらを搭載した通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や無線LAN等の通信機器はその使用周波数帯域は数百MHzから数GHzに及び、該帯域で広帯域かつ高効率であることが求められている。したがって、それに使用されるアンテナも当該帯域で高利得で機能することを前提としたうえで、その使用形態から特に小型かつ低背であることが要求される。さらに、近年開始された地上デジタル放送では、全チャンネルに対応する場合、使用するアンテナとして例えば日本国内のテレビ放送帯域における470MHz〜770MHzといった広い周波数帯域をカバーする必要がある。また、デジタル放送としては例えば韓国では180MHz〜210MHz帯、欧州では470MHz〜890MHz帯を使用する。したがって、これら180MHz以上の周波数帯域で使用可能で、かつ携帯端末等の通信機器に搭載可能な小型のアンテナが望まれる。
【0003】
従来、移動体通信用に適した小型のアンテナとして、誘電体セラミックスを用いたチップアンテナが供されてきた(例えば特許文献1)。周波数を一定とすれば、より誘電率の高い誘電体を用いることにより、チップアンテナの小型化を図ることができる。特許文献1では、ミアンダ電極を設けることで波長短縮を図っている。また、比誘電率εrの他、比透磁率μrの大きい磁性体を用いて、1/(εr・μr)1/2倍に波長短縮することにより小型化を図ったアンテナも提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、テレビやラジオに使われている受信用アンテナとして、例えば小型液晶テレビなどでは金属棒を用いたホイップアンテナが一般的に用いられ、この方式はテレビ機能搭載携帯電話にも使われ始めている。さらに別の例として、携帯電話で用いられるイヤホンの一部である電線をラジオやテレビ受信用アンテナとして利用される場合もある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−145123号公報
【特許文献2】特開昭49−40046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記誘電体チップアンテナは、小型・低背化を図る上では有利であるが、広帯域化に対しては以下のような問題がある。例えば電極としてヘリカル型放射電極を用いる場合、巻線数が多くなると線間容量が増加し、Q値が高くなる。その結果帯域幅が狭くなってしまい、広帯域幅が要求される地上デジタル放送等の用途には適用するのが困難となる。また、ヘリカル電極に限らず、ミアンダ電極等のパターン電極を形成する場合や、基体内部、外部に電極部分が多い場合などは、電極間に容量を形成してしまい、やはり帯域幅を十分にとることができないという問題があった。特許文献2のように磁性材料を利用したアンテナであっても、容量成分の形成を抑え、かつインダクタンス成分を有効に生み出す構造としなければ、アンテナの小型化や広帯域化を十分に図ることはできない。
【0007】
さらに上記のホイップアンテナは大きいため携帯電話等の小型機器に収納するための複雑な機構を必要とし、また端末が落下した際に折れ易いといった問題があった。また、上記のイヤホン型アンテナでは、ラジオやテレビの視聴の際に着脱を繰り返すことによりアンテナの信頼性が低下する他、アンテナ部である電線が人体に接触することにより、利得や感度の著しい劣化が生じるといった問題があった。
【0008】
そこで本発明では、小型化および広周波数帯域化に適したチップアンテナ、アンテナ装置および通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のチップアンテナは、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体の前記長手方向に垂直な断面における外径Rと内径rとの比r/Rが0.1以上であることを特徴とする。磁性基体の長手方向とは、直方体状、円柱状等であればその最大辺方向、円柱軸方向であり、円弧状等であればその円弧に沿う方向である。かかる方向に線状の導体が貫通していることで、容量成分が形成されにくく、また磁性体部分をインダクタンス成分として有効に機能させることができるため、アンテナの広帯域化、小型化に寄与する。また、磁性基体の前記長手方向に垂直な断面における外径Rと内径rとの比r/Rが0.1以上であることにより、高い平均利得を発揮する。前記比r/Rは0.5以下であることがより好ましい。ここで、外形、貫通孔形が四角形の角形の場合、外径、内径とは四角形の一辺を指し、外形、貫通孔形が円形の場合は、外径、貫通孔の直径が前記外径、内径に相当する。即ち、最小径部分を内径とする。さらに、前記チップアンテナは、直線状の導体が磁性基体を貫通していることが好ましい。かかる構成では、基体内において実質的に該導体が対向する部分が形成されないため、特に容量成分が形成されにくく、また磁性体部分をインダクタンス成分として有効に機能させることができるため、アンテナの広帯域化、小型化に寄与する。
【0010】
本発明の他のチップアンテナは、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体の前記長手方向に垂直な断面における前記磁性基体の断面積Sに対する前記導体の断面積sの比s/Sが0.029以上であることを特徴とする。該構成によれば、アンテナ内部損失を低く抑えることができる。さらに、共振周端数のずれを抑制するためには前記比s/Sは0.125以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の他のチップアンテナは、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、平均利得の全面平均がー7dBi以上である帯域幅が220MHz以上であることを特徴とする。かかる構成のチップアンテナを用いれば、一つのチップアンテナで広帯域をカバーすることができ、例えば470〜770MHzの広い周波数帯域を使用する地上デジタル放送も2個以下のチップアンテナでカバーすることができる。
【0012】
本発明の他のチップアンテナは、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナであって、前記磁性基体はY型フェライトの焼結体であることを特徴とする。Y型フェライトは、高周波領域まで透磁率を維持し、かつ損失係数も低いので、Y型フェライトの焼結体を用いることは高周波帯域まで機能するチップアンテナを構成するうえで有利である。なお、Y型フェライトの磁性基体は、Y型フェライト単相に限らず、Z型やW型等他の相を含有するものも含む。さらに、前記Y型フェライトの焼結体密度は4.8×103kg/m3以上であることが好ましい。該構成によれば落下等大きな衝撃が加わりやすい携帯機器に好適である。さらに、前記Y型フェライトの1GHzにおける初透磁率が2以上で、損失係数が0.05以下であることが好ましい。該フェライトを用いることによって高周波帯域でのアンテナ特性の向上を図ることができる。
【0013】
さらに、前記チップアンテナにおいて、前記磁性基体は、長さが30mm以下、幅が10mm以下、高さが5mm以下であることが好ましい。磁性基体を用いた本発明に係るチップアンテナは、小型化に有利であり、数百MHzの周波数帯域で使用する場合でも小さい寸法を維持できる。磁性基体の長さを30mm以下、幅を10mm以下、高さを5mm以下とすることによって、携帯電話等の実装空間の限られた携帯機器等に好適なチップアンテナとなる。
【0014】
さらに、前記チップアンテナにおいて、前記磁性基体は直方体形状を有し、該直方体形状の長手方向に垂直な方向に位置する角の部分に面取りが設けられていることが好ましい。安定な実装に有利な直方体形状を採用しつつ、直方体形状の長手方向に垂直な方向に位置する角、すなわち長手方向に延びている角の部分に面取りを設けることにより、チッピングの発生を抑え、品質の高いチップアンテナを提供することができる。
【0015】
さらに、前記チップアンテナは、ケースに収容されていることが好ましい。該構成によれば、取扱い時に他の部材が接触する危険を低減するとともに、外力にも強くなるため、信頼性が高くなる。さらに、前記ケースは、その外側面に導体部材が設けられていることが好ましい。該導体部材とチップアンテナを実装する基板等の導体部分とをハンダ等により接合して、ケースごとチップアンテナを基板等に固定することができる。該導体部材は、少なくとも前記チップアンテナの一端と電気的に接続されていることがより好ましい。基板等とチップアンテナとの電気的接合と機械的接合を兼ねることができる。
【0016】
また、本発明のアンテナ装置は、前記チップアンテナを用い、前記導体の一端は開放端を構成し、他端は給電回路に接続されていることを特徴とする。容量成分の少ない前記チップアンテナを用いてアンテナ装置を構成することにより、広帯域なアンテナ装置を得ることが可能である。
【0017】
さらに、前記アンテナ装置において、前記チップアンテナを実装する基板を有し、前記基板には接地電極と該接地電極に離間して固定電極が形成されており、前記導体の前記一端は前記固定電極に接続されていることが好ましい。該構成では、接地電極と固定電極との間に容量成分を形成して容量の調整を行うことができる。これは、チップアンテナ自体の容量成分を調整する方法に比べて、簡易に容量成分の調整を行うことができる。前記アンテナ装置において、平均利得の全面平均が−7dBi以上である帯域幅が220MHz以上であることが好ましい。かかる広帯域特性を有するアンテナ装置は、使用周波数帯域の広い用途、例えば地上デジタル放送に好適である。すなわち、470〜770MHzの周波数帯域において、前記帯域幅を有するものであれば、地上デジタル放送の使用帯域を2個以下のアンテナ装置でカバーすることができる。なお、平均利得の全面平均とは、XY平面、YZ平面およびZX平面での平均利得の平均を取ったものをいう。
【0018】
さらに、前記チップアンテナと前記給電回路との間に、アンテナ装置の共振周波数を調整する整合回路を備え、前記整合回路を切り換えることによって共振周波数を移動させることが好ましい。かかる構成によれば、一つのチップアンテナが持つ周波数特性では満足しきれない広い周波数帯域で機能するアンテナ装置を実現することができる。しかも、チップアンテナの数を必要以上に増やすことなく、広帯域をカバーすることができる。さらに、470〜770MHzの周波数帯域で平均利得の全面平均で−7dBi以上を得ることが好ましい。インピーダンスマッチングのための整合回路に共振周波数の調整機能を持たせることによって、チップアンテナの数を増やすことなく、国内の地上デジタル放送のような470〜770MHz帯を使用する用途に、アンテナ装置を適用することが可能となる。
【0019】
また、本発明の他のアンテナ装置は、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナと、前記チップアンテナを実装する基板とを有し、前記導体の両端が前記磁性基体から突出しており、前記導体の両端部は前記磁性基体の外で屈曲されて前記基板に形成された電極部に接続されていることを特徴とする。該構成によれば、基体に別途電極を形成したり、接続する基板側に別途処置を施す必要がないため、接続工程が簡易なものとなる。
【0020】
また、本発明の他のアンテナ装置として、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナと、前記チップアンテナを実装する基板とを有し、前記導体の両端が前記磁性基体から突出しており、前記基板には切り欠き部または開口部を設け、前記チップアンテナの基体は前記切り欠き部または開口部に挿入され、前記導体の両端部が前記基板に形成された電極部に接続されている構成としてもよい。かかる構成では、基板の切り欠き部または開口部に基体の一部が入るため、実装後の基体の高さを低くすることができるため、アンテナ装置の低背化に寄与する。また、導体を屈曲させずに基板側の電極に接続できるため、工程が簡略化される。
【0021】
さらに、前記アンテナ装置は地上デジタル放送用アンテナ装置であることが好ましい。本発明に係る前記のアンテナ装置は、小型化、広帯域化が図られるので、例えば470〜770kHzの帯域のように広い周波数帯域を用いる地上デジタル放送に好適である。
【0022】
また、本発明の通信機器は、前記アンテナ装置を搭載したことを特徴とする。前記アンテナ装置は、広帯域で機能するため、それを用いた通信機器も広帯域で使用することが可能である。特に、前記アンテナ装置を搭載した地上デジタル放送用の携帯端末や携帯電話、デジタルラジオなどの通信機器を構成すると、該機器の携帯性、信頼性の向上に寄与する。
【0023】
なお、前記チップアンテナ、前記アンテナ装置および前記通信機器の構成は適宜組み合わせることも可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型化および広周波数帯域化に適したチップアンテナを提供することができる。特に、チップアンテナの磁性基体として高透磁率、低損失係数のY型フェライトを用いた場合には、高周波帯域で高利得を得る点でも有利なチップアンテナを提供することができる。さらに、本発明に係るチップアンテナを用いることにより、使用可能な周波数帯域の広いアンテナ装置、通信機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について具体的な実施形態を示しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、同一部材については同一の符号を付してある。
【0026】
図1に、本発明に係るチップアンテナの実施形態の一例を示す。図1のチップアンテナは、基体として磁性体セラミックスを用いた磁性体チップアンテナである。該チップアンテナは基板に実装して用いることができる。図1の(a)は斜視図、(b)は長手方向に沿って導体を含んだ断面図、(c)は長手方向に垂直な方向での断面図である。線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通している。図1では、線状の導体2は直線状である。すなわち、直線状の導体は、直方体の側面や円柱の外周面など、導体を囲むように位置する基体外側の面に沿うように延設され、磁性基体の長手方向両端面間を貫通している。図1の構成では、前記導体の両端、すなわち導体の一端3と他端4が磁性基体1から突出している。前記導体の一端3は開放端を構成し、他端4は給電回路等の制御回路(図示せず)に接続されて、アンテナ装置が構成される。磁性基体1の内部には、導体部分としては直線状の中実の導体2が存在するだけなので、容量成分の低減に理想的な構造となる。放射導体として機能する直線状の導体が一本貫通している構造なので、該導体は基体内部で実質的に対向する部分を持たないので、容量成分の低減に特に有効なのである。かかる観点からは、磁性基体を貫通する導体は一本のみが好ましい。ただし、間隔を十分に取るなどして容量成分の影響が小さい場合などは、一本の貫通導体のほかにさらに別の導体が貫通した、または埋設された構成とすることも可能である。図14に、図8に示す構成のアンテナ装置を用いてアンテナ内部損失と共振周波数の誘電率依存性を評価した結果を示す。ここでアンテナ内部損失とは、基体の材料損失と導体損失の合計値をアンテナ利得として換算した値である。磁性基体1の寸法は長さ30mm、幅3mm、高さ3mm、初透磁率は3、損失係数は0.05とし、磁性基体1の中心を貫通する導体は0.5mm角の銅である。また、磁性基体1と接地電極9との間隔は11mmである。整合回路には図15に示したものを用い、キャパシタC1は0.5pF、インダクタL1は56nH、インダクタL3は15nHとしている。図14に示すように、アンテナの内部損失は比誘電率に対してほとんど変化していない。これは、本発明に係る構造は容量成分を形成しにくいため、比誘電率が多少大きくなってもアンテナの内部損失の増加が抑制されるためと考えられる。損失の観点からは、比誘電率は低いことが好ましいが、本発明に係る構造ではアンテナの内部損失が比誘電率の影響を受けにくい、すなわち比誘電率に対してかなり不感である。したがって、例えば図14に示すように共振周波数のばらつきを抑えるために、誘電率の大きい材料を用いることもできる。この場合、比誘電率は8以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
【0027】
また、導体2が磁性基体1を貫通している構造なので、導体が貫通してない場合に比べて、磁性基体内で同じ導体長を確保した場合に、チップアンテナ全体の小型化を図ることができる。さらに、導体2が磁性基体1を貫通しているので、導体2の両端で、他の回路素子や電極との電気的接続が可能であり、設計自由度が高い。直線状の導体は、直方体の側面や円柱の外周面など、導体を囲むように位置する基体外側の面からの距離を一定に保ちつつ基体を貫通していることが好ましい。図1に示した構成では、導体2は磁性基体1の長手方向に、該磁性基体の中央で貫通している。すなわち、磁性基体1の長手方向に垂直な断面において、導体2は中央に位置している。また、図12に示すように、チップアンテナの構成として、線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているものであれば、直方体に限らず、円弧状(アーチ形状)としてもよい。図12の(a)は斜視図、(b)は導体の部分を含む断面図、(c)は基板に実装した状態基板の面方向からみた正面図である。線状の導体が磁性基体の長手方向に沿っている構成では、基体の中で、導体はコイルやミアンダ電極を構成しない。長手方向に対して屈曲部を持たないことが好ましい。図12の構成では、円弧状の基体1を円弧に沿って線状の導体2が貫通している。すなわち、線状の導体は、直方体の側面や円柱の外周面など、導体を囲むように位置する基体外側の面に沿うように延設され、基体長手方向の両端面間を貫通している。この場合導体を囲むように位置する基体外側の面からの距離を一定に保ちつつ基体を貫通していることが好ましい。図12では、導体は円弧状基体の断面の中心に位置するようにしてある。図12の構成では、導体の両端、すなわち導体の一端3と他端4が磁性基体1から突出している。磁性基体と導体が円弧状になっている以外の部分は図1の場合と同様にしてアンテナ装置や通信機器が構成される。図12の(c)で、導体の一端3と他端4は磁性基体1から離間した部分で屈曲して、基板8上の固定電極および給電電極(図示せず)に固定されている。導体を磁性基体から離間した部分で屈曲させることで、屈曲に伴う導体および磁性基体の損傷を防ぐとともに、容量成分の低減にも有利な構造となる。
【0028】
広帯域化のためにはアンテナのQ値を下げることが必要となるが、Q値はインダクタンスをL、容量をCとすると(C/L)1/2で表されるため、Lを上げる一方、Cを下げる必要がある。基体として誘電体を用いた場合、インダクタンスLを上げるためには導体の巻き線数を増やす必要があるが、巻線数の増加は線間容量の増加を招くため、アンテナのQ値を効果的に下げることができない。これに対して、本発明においては、基体として磁性基体を用いるため、巻線数の増加によらず透磁率でインダクタンスLを上げることができる。したがって巻線数の増加による線間容量の増加を回避して、Q値を下げることができ、アンテナの広帯域化を図ることができる。特に、本発明では、上述のように容量成分の低減に効果的な、直線状の導体が磁性基体を貫通する構成を採用するので、チップアンテナの広帯域化に特に顕著な効果を発揮するのである。この場合、磁路は導体2を周回するように磁性基体内に形成されるため、閉磁路を構成する。該構成で得られるインダクタンス成分Lは導体2を覆う磁性基体部分の長さや断面積に依存する。したがって、直線状導体が磁性基体1を貫通しない場合は、インダクタンス成分Lに寄与しない部分が増えてしまい、不必要にチップアンテナが大型化してしまう。これに対して、導体2が磁性基体1を貫通する構成とすることによって、効率よくL成分を確保し、チップアンテナの小型化を図ることができる。
【0029】
磁性基体1の外部での導体の取り回しは、磁性基体1に印刷電極を形成することで行い、ハンダ付けによる固定も当該印刷電極で行うことも可能であるが、製造工程を簡略化し、かつ容量の増加を抑える観点からは、導体2の突出した端部を用いてハンダ付け等のための取り回しを行うことが好ましい。なお、印刷電極で磁性基体の外部での取り回しを行う場合には、該印刷電極は、その面積および対向部分を可能な限り小さくすることが望ましい。図1の構成のように導体2の両端が突出している場合は、導体2の一端(以下、第1の端部ともいう)と他端(以下、第2の端部ともいう)の2箇所でチップアンテナ10のハンダ固定を行うことができるので、安定な実装が可能となる。かかる構成では、実装のために別途基体に電極を設ける必要がなく、アンテナ装置を構成する際の工程の簡略化が図られる。突出した端部は必ずしも直線上でなくてもよく、図2の実施形態のように屈曲していてもよい。図2に示す構成では、基板に実装しやすいように、導体2の磁性基体1の両側に突出した部分は、磁性基体1から離間した部分で屈曲してあり、その先端部分は磁性基体1の一端面である底面と平行に、より具体的には略同一面上に位置するようにしてある。磁性基体の両側に突出した導体部分を略90°屈曲して、基板に設けられたスルーホールに挿入してハンダ付けしてもよい。なお、より強固な固定のためにチップアンテナの磁性基体に前記導体とは別にハンダ付け等による固定用の電極を設け、該電極を用いてチップアンテナを固定したアンテナ装置を構成することも可能である。
【0030】
突出した端部で導体の取り回しを行う場合は、いずれの場合でも、磁性基体1の表面に電極を形成する必要がないため、容量成分の増加を抑えることができる。突出している部分が直線状である図1の構成では、直線上の導体2は磁性基体の内部および表面において対向する部分を持たないので、容量成分の低減に特に効果的である。
【0031】
導体の材質は、特に限定するものではないが、例えば、Cu、Ag、Ni、Pt、Au、Al等の金属の他、42アロイ、コバール、リン青銅、黄銅、コルソン系銅合金等の合金を用いることができる。このうちCu等の硬度の低い導体材料は、両端を屈曲して用いる場合に適し、42アロイ、コバール、リン青銅、コルソン系銅合金など硬度の高い導体材料は磁性基体を強固に支持する場合や両端を屈曲せず直線状のまま使用する場合に適する。また、導体にはポリウレタンやエナメル等の絶縁被覆を設けてもよい。体積抵抗率の高い、例えば1×105Ω・m以上の磁性基体を用いることで絶縁を確保することも可能であるが、絶縁被覆を設けることによって、特に高い絶縁性が得られる。この場合絶縁被覆の厚さは25μm以下が好ましい。これが厚くなりすぎると磁性基体と導体との隙間が大きくなり、インダクタンス成分が減少する。
【0032】
磁性基体の形状は、特に限定するものではないが直方体、円柱等をとることができる。安定な実装を実現する上では直方体の形状が好ましい。また、直方体形状の場合には、長手方向に垂直な方向に位置する角の部分に面取りを設けることが好ましい。直方体形状は安定な実装に有利であるが、角の部分にはチッピングが発生しやすい。これに対して、面取りを設けることによって、磁束が漏れにくくなるほか、チッピング等の不具合も防止できる。直方体形状の長手方向に垂直な方向に位置する角は、長手方向に延びている角の部分として4箇所存在する。面取り部分はこのうちの少なくと1箇所にあればその効果が発揮されるが、信頼性の観点からは4箇所とも面取り部分が設けられていることが好ましい。また、磁性基体の長手方向の端部の角にも面取り部分を設けてもよい。面取りの仕方は、直線状におとす方法であってもよいし、アールすなわち円弧形状を設ける方法でもよい。また、面取りは、研削等の機械加工、バレル研磨、面取り部分を設けた金型による成形等によって設けることができる。但し、磁性基体への新たな欠陥導入の防止および工程の簡略化の観点からは、面取り部分を設けた金型による成形、特に押出し成形によって面取り部分を形成することが好ましい。かかる場合、面取り部分が焼結肌で構成されるため欠陥が発生しにくい。面取りの幅d(磁性基体の側面において面取り部分によって失われている長さ)は、その実質的な効果を発揮するためには0.2mm以上であることが好ましい。一方、面取りが大きくなると直方体形状であっても安定な実装が困難になるので1mm以下(磁性基体の幅または高さの1/3以下)が好ましい。磁性基体の長さ、幅、高さは、これらが大きくなると共振周波数は低下する。基体の長さは30mm以下、幅は10mm以下、高さは5mm以下が好ましい。基体の寸法が前記範囲を超えると表面実装型チップアンテナとしては大型化してしまう。例えば、地上デジタル放送帯域である470〜770MHzに使用できるよう、共振周波数を550MHz付近にするためには、磁性基体の長さは25〜30mm、幅は3〜5mm、高さは3〜5mmがより好ましい。また図12に示すように、例えばアーチ形状などの曲面を持つ形状で構成される基体でも良い。この場合には、さらにデザイン性の向上のみならず、端末落下の際などにアンテナの基体に加わる衝撃にたいする耐衝撃性向上の効果も得られる。これは、一般的にアンテナは端末の端部に搭載されるため、アーチ形状の外側の曲面を端部方向に向けることによって外力に対する耐性が高くなるからである。さらに、アーチ形アンテナの他の効果として、次のような効果も発揮する。アンテナと周囲の金属部分(スピーカ、レシーバや液晶表示素子など)との間隔を大きくすることにより、アンテナから放射される電磁波の一部が金属部分に流れ難くなるため、アンテナの利得や感度が向上すると共に、金属部分からの電磁波放射が抑制されるため指向性の乱れも低減できる。
【0033】
また、導体の断面形状も特に限定するものではないが、例えば円形、長方形、正方形等の形状のものを用いることができる。すなわち、ワイヤ状、テープ状のものを用いることができる。導体の断面形状と磁性基体の断面形状を略相似とし、導体をとりまく磁性基体の厚さを一定にすると、均一性の高い磁路が形成されるので好ましい。ここで断面とは前記磁性基体の長手方向に垂直な断面を指す。例えば、直方体、円柱の磁性基体の長手方向に直線状の導体が貫通している場合は、該長手方向に垂直な断面では、導体を磁性基体が取り囲む断面となる。また、磁性基体が円弧状(アーチ形状)等のように曲線状である場合は、円弧の周方向に垂直、すなわち円弧の径方向で切る断面である。この場合も、導体を磁性基体が取り囲む断面となる。なお、磁性基体の断面積は、導体が配置されている貫通孔の部分を除いた断面積である。ここで、磁性基体の断面における磁性基体の外径をR、内径をrとしたときの、r/Rに対するチップアンテナの平均利得の変化を図24に示す。図24では導体が角柱型、円柱型の電極の場合、すなわち貫通孔の断面形状が四角形、円形の場合について示してある。外形、貫通孔形が四角形の角形の場合、外径、内径とは四角形の一辺を指し、外形、貫通孔形が円形の場合は、外径、貫通孔の直径が前記外径、内径に相当する。また、磁性基体1の寸法は長さ30mm、幅3mm、高さ3mm、初透磁率は3、損失係数は0.02としている。r/Rが大きくなると平均利得は一定値となるが、r/Rを0.1以上とすることで、平均利得を前記一定値から0.2dBi以内の範囲に抑えることができる。より好ましくはr/Rを0.15以上とすることで、平均利得を前記一定値から0.1dBi以内の範囲に抑えることができる。さらに好ましくはr/Rは0.2以上である。また、また、導体の断面形状の大きさとアンテナ内部損失との関係を、導体が四角形である場合r/Rを0.5以下が好ましい。r/Rが大きくなりすぎると磁性基体の部分が相対的に薄くなり、チップアンテナの強度が低下する他、磁性基体の体積が低下するので磁性体チップアンテナの性能を充分に維持することが困難になる。例を図16に示す。導体の断面形状を変えた以外は、図14に示すアンテナ内部損失等の誘電率依存性を評価した場合と同様である。図16の例では磁性基体の断面は3×3mmの正方形であり、正方形の導体の幅を変えて断面積を変えている。導体の幅、断面積が大きくなって磁性基体の断面積Sに対する導体の断面積sの比s/Sが大きくなると、アンテナ内部損失が低化し、導体の幅が0.5mm以上、断面積が0.25mm2以上となって断面積比s/Sが0.029以上となるとほぼ一定となる。したがって、磁性基体の断面積Sに対する導体の断面積sの比s/Sが0.029以上(導体の幅が0.5mm以上、断面積0.25mm2以上)であることが好ましい。この場合、磁性基体の幅Wに対する導体幅wの比w/Wは0.17以上である。導体の幅が0.7mm以上、断面積が0.49mm2以上となって、断面積比s/Sが0.058以上(w/Wが0.23以上)になるとアンテナ内部損失が0.5dB以下となるため、断面積比s/S、導体の幅、断面積または幅の比w/Wが前記条件を満たすことがさらに好ましい。一方、w/Wは1未満であるが、導体の幅が大きくなると磁路が狭くなりインダクタンス成分が低下し、共振周波数も高くなる。導体の幅が1.0mmを超え、磁性基体の厚さが1.0mm未満となり、w/Wが0.33を超え、断面積比s/Sが0.125を超えると、共振周波数は地上デジタル放送帯域470〜770MHzの中心から10%を超えてずれるようになる。したがって、この場合幅wは1.0mm以下(断面積1.0mm2以下)、すなわち断面積比は0.125以下(w/Wで0.33以下)が好ましい。ここでWは磁性基体の長手方向に直角な方向の最小寸法であり、wは導体の長手方向に直角な方向の最小寸法である。すなわち断面が正方形であればその一辺の長さである。
【0034】
図1に示す直線状の導体が磁性基体を貫通している構成についてさらに詳述する。かかる構成は、磁性基体と導体を一体で形成してもよい。例えば、特許文献1に開示されているような方法、すなわち磁性体の粉末の中に導線を配した状態で圧縮成形し、その後焼結する方法で形成することができる。焼結には、通常の加熱焼結の他、加熱方法としてマイクロ波焼結を採用すると加熱時間も短いため、導体と磁性粉末との反応を抑えることができる。また、磁性基体と導体を一体で形成する方法として、グリーンシートを積層する積層プロセスを採用することもできる。磁性体粉末と結合剤、可塑剤の混合物をドクターブレード法等でシート成形してグリーンシートを得て、該グリーンシートを積層して積層体を得る。該積層体の中心部分に位置することとなるグリーンシートにAg、Ag−Pd、Pt等の導体ペーストを直線状に印刷しておくことによって、直線状の導体が貫通している磁性基体を得ることができる。ただし、この場合は、前記直線状の導体と導通をとり、磁性基体の外部に導体を引き回すために、印刷、焼き付け等によって磁性基体の表面に表面電極を形成する必要がある。
【0035】
一方、磁性基体と導体を別体として形成してもよい。この場合、チップアンテナは、磁性基体に貫通孔が設けられ、該貫通孔の中に導体が設けられている構成となる。磁性基体と導体を別体として形成する場合は、磁性基体と導体との反応の影響を排除できるとともに、設計の自由度および導体部分の精度を高めることができる。この場合、磁性基体がフェライト焼結体であれば、該磁性基体は通常の粉末冶金的手法で作製すればよい。磁性基体に貫通孔を設ける方法としては、焼結体に機械加工で貫通孔を形成する方法、圧縮成形法または押出し成形法により貫通孔を有する成形体を成形し、焼結する方法、などがある。長尺のものを作製する場合は、貫通孔同士を対置させつつ短尺のものを複数積み重ねてもよい。図12に示すような曲面で構成された基体についても、圧縮成形法あるいは押出し成形法により製作することができる。また焼結体で加工する他、成形体の状態で加工、整形してもよい。
【0036】
貫通孔の断面形状は特に限定するものではないが、例えば、円形、四角形などとすればよい。導体の挿入を容易にし、磁性基体と導体との隙間を小さくするためには、貫通孔の断面形状は、導体の断面形状と相似の形状にするとよい。磁性基体と導体との間には隙間があってもよいが、隙間の存在はインダクタンス成分のロスにつながるので、該隙間は磁性基体の厚さに対して十分小さいことが望ましい。該隙間は片側で50μm以下であることが好ましい。好ましくは、貫通孔の断面形状と導体の断面形状が、導体を挿入可能な範囲で略同一であることが好ましい。かかる点は貫通孔の形成方法によらない。貫通孔の断面形状が円形の場合、円筒度(最大径と最小径の差)は50μm以下が好ましい。磁性基体の貫通孔に導体を挿入する場合、これが大きくなると、真円として設定した径に対して最小径が小さくなり導体の挿入が困難になるため、余裕を持って大きめに径を設定する必要が生じる。かかる場合は隙間が多くなってしまいインダクタンス成分のロスにつながる。より好ましくは、10μm以下である。一方、直線状の導体が磁性基体を貫通する構造の場合、磁性基体の貫通孔は導体を挿入するために真直度(貫通孔長手方向における貫通孔断面のずれ幅)は貫通孔の直径以下であることが好ましい。
【0037】
図1に示す直線状の導体が磁性基体を貫通している構成を、磁性基体と導体を別体で形成し、実現する一例を図3に示す。図3に示す例は、直方体状の磁性基体が複数の部材で構成され、貫通孔が前記複数の部材の構設によって形成されている実施形態である。図3の(a)では、磁性基体は、導体を挿入するために溝が設けられた磁性部材12と、該溝を挟んで該磁性部材12と貼り合わせるための磁性部材11で構成されている。磁性部材12の溝に導体2を挿入し、さらに磁性部材11を貼り合わせて固定してチップアンテナとする(図3(b))。磁性部材12と磁性部材11を貼り合わせた後に、形成された貫通孔に導体を挿入してもよい。いずれも、磁性部材12と磁性部材11を貼り合わせることによって、貫通孔が形成されることになる。溝は例えばダイシング加工を用いれば、精度よく形成することができる。図3の例では、簡単な溝加工と部材の貼り合わせで基体を組み上げるので、貫通孔を極めて簡易に形成することができる。溝の断面形状は、導体の挿入が可能になるように導体の断面形状に応じたものにする。すなわち、溝の深さは、導体が溝の上面からはみださないように設定する。図3の例では、磁性部材の一方に溝を設けてあるが、両方の磁性部材に溝を設け、その溝を対向させて貼り合わせることによって、貫通孔を形成してもよい。この場合は、挿入する導体が両方の磁性部材の位置決めする機能も発揮する。
【0038】
図4は、磁性基体が複数の部材で構成され、貫通孔が前記複数の部材の構設によって形成されている他の実施形態である。図4は長手方向に垂直な方向の断面図である。磁性基体は直方体状をなし、磁性部材15を磁性部材13および14で挟むことで構成されている。磁性部材13、14および15はともに直方体である。2つの磁性部材15が所定の間隔を持つことで貫通孔が形成され、2つの磁性部材15の間隔および厚みで貫通孔の形状、大きさが決定される。具体的な組立手順は、例えば磁性部材14上で導体2を挟んで磁性部材15を配置し、さらに磁性部材13を被せ、磁性部材14と導体2を磁性部材13と14で挟んだ状態でこれらを固定すればよい。図4の構成は、溝加工を必要とせず、簡単な加工だけで磁性部材を作製し、貫通孔を形成することができるので、チップアンテナの簡易な製造に適する。
【0039】
磁性基体と導体、磁性部材と磁性部材は、クランプ等を用いて固定することも可能であるが、確実に固定するためには固着することが好ましい。例えば、磁性基体と導体との固着であれば、磁性基体と導体隙間に接着剤を塗布して固着すればよい。磁性部材同士の固着は、貼り合わせ面に塗布して接着する。接着剤が厚くなると磁気ギャップが大きくなるため、接着剤の厚さは50μm以下が好ましい。より好ましくは10μm以下である。磁気的なギャップの形成を抑えるためには、貼り合わせ面以外の部分に接着剤を塗布して固着してもよい。例えば側面で、磁性部材の貼り合わせ部分を跨ぐように接着剤を塗布する。接着剤は熱硬化性、紫外線硬化性等の樹脂や無機接着剤などを用いることができる。樹脂には酸化物磁性体などの磁性体フィラーを含有させてもよい。接着剤は、チップアンテナをハンダ固定する場合を考慮して、耐熱性の高いものを用いることが好ましい。特に、チップアンテナ全体が加熱されるリフローを適用する場合は、300℃以上の耐熱性があることが好ましい。なお、磁性基体と導体との隙間が小さく、磁性基体の貫通孔に設けられた導体の動きが磁性基体で十分に拘束される場合は、磁性基体と導体との間に必ずしも固定手段を講ずる必要はない。
【0040】
次に、直線状の導体が磁性基体を貫通している構成を、磁性基体と導体を別体で形成して実現する他の例を図19に示す。図19の(a)は長手方向に沿って導体を含んだ断面図、(b)は長手方向に垂直な方向での断面図である。図19に示す例は、直方体状の磁性基体33は一体の部材で構成されており、該磁性基体33の貫通孔に断面円形の導体34が挿入されて貫通している実施形態である。磁性基体として一体の部材を用いる場合は、接合部分を持たないため、チップアンテナの機械的強度を確保する上で有利な構成である。かかる磁性基体としては、押出し成形によって得られたものが好適である。押出し成形によれば、長尺の磁性基体、特に長手方向に貫通孔を有する磁性基体を作製することが可能である。押出し成形では、混練した原料を連続的に押出すため、造粒粉を圧縮成形する場合のように、焼結体において造粒粉同士の境界の痕跡が残らない。したがって、例えば本発明で用いる長尺の、かつ貫通孔を有する磁性基体であっても、高い機械的強度を具備することが可能である。特に、貫通孔を押出し成形時に形成してから焼結することが可能であるため、磁性基体の貫通孔の内壁面を焼結肌で構成し、欠陥の発生を抑制することができる。該構成は、落下の衝撃など大きな外力が加わる可能性の高い携帯電話などの携帯機器に用いる場合に好適である。押出し成形は、図19(b)に示す形状に対応した断面形状の成形体を連続的に押出して行われ、該成形体は所定の長さに切断して焼結される。図19に示す例は、直方体形状の長手方向に垂直な方向に位置する角に面取り部分としてアールを設けた構成であり、面取りの幅はdで示してある。前記構成は成形の際、金型の角にアールを設けることによって作製される。
【0041】
次に、図20に本発明に係るチップアンテナの他の実施形態を図に示す。図20に示す例は、ケースに収容されているチップアンテナである。図20の(a)は、樹脂製のケース30および前記ケース30に収容されたチップアンテナの平面図を示している。図の(b)は図20の(a)におけるAの方向から見た側面図、図20の(c)は図20の(a)におけるB−B’線での断面図である。ケース30はチップアンテナを収容可能な空間を深さ方向に有し、両側面には、側面上面から略中央にかけて、断面が円形の導体36をケース内部からケース外部へと導出可能となるようにスリットが設けられている。なお、スリットのかわりに貫通孔を設けてもよい。また、前記スリットまたは貫通孔は、必ずしも両側面に設ける必要はなく片側の側面に設けてもよい。チップアンテナはケース内側端面間に拘束される。また、各チップアンテナの長手方向の二点においてチップアンテナの長手方向に直角方向の動きを拘束する突起部31をケース内壁に設けてある。図19の例では、前記突起部31は、深さ方向に柱状に形成されており、チップアンテナを線で拘束する。柱状の突起部の断面形状は特に限定するものではないが、例えば三角形状、半円状等とすればよい。突起部は点状の突起として、点で拘束しても良い。また、突起部を設けるかわりに、チップアンテナの形状と略同一の空間を設け、該空間にチップアンテナを嵌挿してチップアンテナの動きを拘束してもよい。ケースの深さは、特に限定するものではないが、磁性基体35を保護する観点からは、磁性基体の厚さよりも大きく、磁性基体がケース上面から突出しないことが好ましい。チップアンテナは、接着剤でケースに固定しても良い。
【0042】
図21に、チップアンテナが、ケースに収容されている別の実施形態を示す。突起部38の構成は図20に示す実施形態と同様である。図21の(b)および(c)はそれぞれ図21(a)のC1およびC2の点線部分の断面図である。図21に示す実施形態では、ケース37の外側面に導体部材が設けられている。具体的には、ケース37の両側面の中央下端から底面側端部にかけて導体部材39Bが設けられている。該導体部材を用いて基板等の導体部分とケースとを接合し、チップアンテナを固定することができる。図21に示す構成では、導体部材39Bはケース側面からさらにケース内部に延設され、ケース内部で導体部材39Aを形成している。すなわち、導体39Aと39Bは一体であり、電気的に導通が取られている。導体部材39Aと39Bの末端は樹脂ケースの内部に内挿されている。かかるケースは、例えばリン青銅製の導体部材を樹脂モールドすることで形成すればよい。図21に示す例では、ケース外面に設けられた導体部材39Bに導通する導体部材39Aを、ケース内部の底面の両端に設け、該導体部材39Aにチップアンテナの導体をハンダ接合(図示せず)により接続している。かかる構成では、前記導体部材39Bを用いて、チップアンテナの固定と、チップアンテナと他の回路等との電気的な接続を行うことができる。なお、図21に示す例では、導体部材39Bはケース37の外側の面に沿うように設けられているが、該導体部材は電極ピン構造としてケースから突出する形態としてもよい。
【0043】
また、導体部材39Aの替わりに、上方からスリットを設けた金属板をケース底面から立設し、該金属板が前記スリットにおいて磁性基体から突出した線状の導体を挟持する構成とすることもできる。この場合該金属板は前記導体部材39Bと一体のものとするか、電気的に接合しておくことが好ましい。前記スリットの幅を前記線状の導体の幅または径よりも小さくしておけば、チップアンテナの固定と電気的接続を行うことができる。スリットの幅が深さ方向に漸減するようにしてもよい。また、スリットの上端の幅を導体が挿入される中間部分の幅よりも小さくして、線状の導体を掛止する構成にしてもよい。なお、ケース内部の導体部材39Aは必ずしも必要とするものではなく、側面や底面などケースの外側面に導体部材が設けられていれば、基板等の導体部分と接合してケースに収容されたチップアンテナを実装することが可能である。かかる場合は、磁性基体から突出した導体部をケースの外まで延出させ、ケース外の電極等に電気的接続を行えばよい。また、ケース上部には、蓋部材を設けてもよい。蓋部材は接着剤で接着固定してもよいし、蓋部材はケースに掛止される構成を用いてもよい。蓋部材を設けることにより、チップアンテナ全体を保護することができる。また、上述の突起部の形成に加えて、または替えて前記蓋部材を用いてチップアンテナの動きを拘束しても良い。上述の例は、ケースを用いてチップアンテナを固定、保護する例であるが、ケースを用いる替わりに、チップアンテナを樹脂でモールドした構成としてもよい。
【0044】
前記の磁性基体としては、Ni−Zn系フェライト、Li系フェライトに代表されるスピネル型フェライト、プラーナと呼ばれるZ型、Y型等の六方晶フェライト、これらフェライト材料を含む複合材等を用いることができるが、フェライトの焼結体であることが好ましく、特にY型フェライトの焼結体を用いることが好ましい。フェライトの焼結体は体積抵抗率が高く、導体との絶縁を図るうえで有利である。体積抵抗率の高いフェライト焼結体を用いれば、導体との間に絶縁被覆を必要としなくなる。Y型フェライトは、1GHz以上の高周波まで透磁率が維持される点、1GHzまでの周波数帯域で磁気損失が小さい点から、400MHzを超える高周波数帯域の用途、例えば470〜770MHzの周波数帯域を使用する地上デジタル放送用のチップアンテナに好適である。かかる場合、Y型フェライトの焼結体を磁性基体として用いればよい。Y型フェライトの焼結体は、Y型フェライト単相に限らず、Z型やW型等他の相を含有するものであってもよい。焼結体は、焼結後で磁性部材として十分な寸法精度を有していれば加工を必要としないが、貼り合わせ面は、研磨加工を施し、平坦度を確保することが望ましい。
【0045】
前記Y型フェライトの1GHzにおける初透磁率を2以上で、損失係数を0.05以下とすると、広帯域、高利得のチップアンテナを得る上で有利である。初透磁率が低くなりすぎると、広帯域化を図ることが困難となる。また、損失係数、すなわち磁気損失が大きくなるとチップアンテナの利得が低下する。図17に、図8に示す構成のアンテナ装置を用いてアンテナ内部損失の損失係数tanδ依存性を評価した結果を示す。磁性基体1の寸法等、損失係数以外の条件は上述のアンテナ内部損失等の誘電率依存性を評価した場合と同様である。また、比較のために導体幅が0.8mmで、巻き数12のヘリカル構造の電極を有するチップアンテナを用いた場合(構造b)の評価結果も併せて示してある。図17に示すように、損失係数が小さいほどアンテナ内部損失が小さくなるが、同じ損失係数で比較すると、本発明に係る構造の場合(構造a)は、ヘリカル構造の電極を有する場合よりもアンテナ内部損失が大幅に抑制されている。例えば損失係数tanδが0.05以下とすれば、アンテナ内部損失を0.5dB以下の低い水準とすることができる。アンテナ内部損失の0.5dBは、送信電力の10%程度に相当し、基体のみの損失として許容できる十分な水準である。また、初透磁率を変化させた場合のアンテナ内部損失の損失係数tanδ依存性を図18に示す。初透磁率が大きくなるとアンテナ内部損失は大きくなる傾向を示すが、初透磁率が2〜3の範囲では、損失係数tanδを0.05以下とすればアンテナ内部損失を0.5dB以下とすることができる。さらに、損失係数を0.04以下とすれば初透磁率4以下までアンテナ内部損失を0.5dB以下とすることができ、損失係数を0.03以下とすれば初透磁率5以下までアンテナ内部損失を0.5dB以下とすることも可能である。チップアンテナとして−7dBi以上の平均利得を得るためには、損失係数は0.05以下が好ましい。損失係数を0.03以下と低くすることによって、特に利得の高いチップアンテナを得ることができる。損失係数は周端数が高くなるにつれて大きくなる。したがって、前記Y型フェライトの1GHzにおける初透磁率を2以上で、損失係数を0.05以下とすれば、数百MHz、すなわち1GHzまでの周端数帯域全体にわたって平均利得に優れたチップアンテナを提供することができるが、使用される各帯域において損失係数等が前記範囲を満たしていれば高利得のチップアンテナを提供することは可能である。例えば470MHz、770MHzおいて初透磁率が2以上で、損失係数が0.05以下であれば、470〜770MHz帯を使用する地上デジタル放送に適用することが可能である。さらに、180MHzにおいて初透磁率が2以上で、損失係数が0.05以下であれば、180MHz以上の帯域、例えば180〜210MHz帯を使用する地上デジタル放送に適用することが可能である。
【0046】
Y型フェライトついてさらに説明する。Y型フェライトとは、代表的には例えばBa2Co2Fe12O22(いわゆるCo2Y)の化学式で表される六方晶系のソフトフェライトである。前記Y型フェライトは、M1O(M1はBa、Srのうちの少なくとも一種)、CoOおよびFe2O3を主成分とし、前記化学式のBaをSrで置換したものも含む。BaとSrはイオン半径の大きさが比較的近いため、BaをSrで置換したものもBaを用いた場合と同様にY型フェライトを構成し、また類似した特性を示し、これらはいずれも高周波帯域まで透磁率を維持する。これらの比率は、Y型フェライトを主相とできるものであればよいが、例えばBaOは20〜23mol%、CoOは17〜21mol%、残部Fe2O3であることが好ましく、BaOは20〜20.5mol%、CoOは20〜20.5mol%、残部Fe2O3であることがさらに望ましい。Y型フェライトを主相とするとは、X線回折におけるピークのうち、Y型フェライトのメインピ−ク強度が最大であることをいう。Y型フェライトはY型単相であることが好ましいが、Z型、W型など他の六方晶フェライトやBaFe2O4等の異相が生成する場合がある。したがって、Y型フェライトは、これらの異相を含むことも許容する。ただし、透磁率を高周波まで維持すること、低損失であることを実現するためにはY型フェライトの比率は85%以上であることが好ましく、より好ましくは92%以上である。ここでY型フェライトの比率とは、本発明のフェライトを構成する各相のX線回折におけるメインピーク(最もピーク強度の高いピーク)の強度の和に対するY型フェライトのメインピ−ク強度の割合である。
【0047】
前記Y型フェライトは、さらにCu、Znを微量に含有することが好ましい。従来から、Y型フェライトとしてCoの代わりにCuやZnを用いたCu2Y、Zn2Yなどが知られている。このCu、Znの置換は主としてAgとの同時焼成を目的とした低温焼結化、透磁率の向上を目的とするものであるが、Coに対するCu或いはZnの置換量は数十%以上と多く、この場合体積抵抗率が低くなり、また損失係数、誘電率も大きくなりやすい。これに対して、本発明の場合は、Cu、Znを微量に含有させる。Cu、Znを微量に含有させることによって、損失係数を低く抑え、また体積抵抗率を高く維持しつつ、焼結体密度を向上させることができる。また、Cu、Znの微量添加によって、透磁率も向上する。Cuの含有量をCuO換算で0.1〜1.5重量部、Znの含有量をZnO換算で0.1〜1.0重量部とすることで、4.8×103kg/m3以上の焼結体密度を得ることができる。特にCu、Znの含有量を前記微量の範囲とすることで、周波数1GHzにおける損失係数tanδを0.05以下とし、さらには体積抵抗率を1×105Ω・m以上を確保することも可能となる。Cu、Znの含有量はより好ましくは酸化物換算で0.1〜0.6重量部であり、該範囲とすることで、体積抵抗率を1×106Ω・m以上とすることができる。高密度を有する磁性基体は、携帯電話等の通信機器に用いられるチップアンテナの強度向上に寄与する。また、チップアンテナを構成する場合、体積抵抗率が、1×105Ω・m未満となるとアンテナ利得の低下への影響が大きくなるため、1×105Ω・m以上であることが好ましく、特に好ましくは1×106Ω・m以上である。なお、これらCuとZnは複合で含有してもよい。
【0048】
また、Cu、Znの他に、Si、Na、Li、Mn等を含有させることもできる。Siは焼結体密度・透磁率向上の効果をもたらすが、SiO2換算で0.1重量部未満では実質的な効果が発揮されず、その含有量が多くなると損失係数が大きくなってしまうため、0.1〜0.4質量部であることが好ましい。また、Naは損失係数低下の効果を示すが、Na2CO3換算で0.1重量部未満では、実質的効果が発揮されず、0.4質量部超では体積抵抗率が低下する。したがって、Na2CO3換算で0.1〜0.4質量部であることが好ましい。さらに、Liは焼結体密度向上・透磁率向上の効果を示すが、その含有量がLi2CO3換算で0.1重量部未満では実質的な効果が発揮されず、0.6質量部超では、透磁率および体積抵抗率が低下する。したがって、Li2CO3換算で0.1〜0.6質量部が好ましい。さらに、Mnは、損失係数の低下に効果があるが、0.1未満では実質的な効果を発揮されず、1.0質量部超では体積抵抗率が低下する。したがって、Mn3O4換算で0.1〜1.0質量部であることが好ましい。
【0049】
また、不可避不純物として、0.001質量%以下のB、0.005質量%以下のNa、0.01質量%以下のSi、0.005質量%以下のP、0.05質量%以下のS、0.001質量%以下のCaを含んでも良い。
【0050】
磁性基体をY型フェライトの焼結体で構成する場合、該Y型フェライトは従来からソフトフェライトの製造に適用されている粉末冶金的手法で製造することができる。所望の割合となるように秤量されたBaCO3、Co3O4、Fe2O3などの主原料およびCuO、ZnOなどの微量成分を混合する。なお、CuO、ZnOなどの微量成分は、仮焼後の粉砕工程において、添加してもよい。混合方法は、特に限定するものではないが、例えばボールミル等を用いて、純水を媒体として湿式混合(例えば4〜20時間)する。得られた混合紛を電気炉、ロータリーキルンなどを用いて所定の温度で仮焼することにより仮焼粉を得る。仮焼温度、保持時間は、それぞれ900〜1300℃、1〜3時間が好ましい。仮焼温度、保持時間がそれらを下回ると反応の進行が十分でなく、逆にそれらを上回ると粉砕効率が落ちる。仮焼雰囲気は、大気中または酸素中などの酸素存在下であることが好ましい。得られた仮焼粉はアトライタ、ボールミルなどを用いて湿式粉砕し、PVAなどのバインダーを添加した後、スプレイドライヤ等によって造粒することにより造粒紛を得る。粉砕粉の平均粒径は0.5〜5μmが好ましい。得られた造粒粉をプレス機により成形してから、電気炉などを用いて例えば1200℃の温度にて酸素雰囲気中で1〜5時間焼成を行い六方晶フェライトを得る。焼成温度は1100〜1300℃が好ましい。1100℃未満であると焼結が十分に進行せず高い焼結体密度が得られず、1300℃を超えると粗大粒が発生するなど過焼結となる。また、焼結は、これが短いと焼結が十分進行せず、逆に長いと過焼結となりやすいので1〜5時間とすることが望ましい。また、焼結は高い焼結体密度を得るためには酸素存在下で行なうことが好ましく、酸素中で行なうことがより好ましい。得られた焼結体は、必要に応じて切断、研磨、溝加工等の加工を施す。
【0051】
次にアンテナ装置について説明する。図1のチップアンテナを用いる場合であれば、前記導体の一端3は開放端を構成し、他端4は給電回路等の制御回路(図示せず)に接続されて、アンテナ装置が構成される。開放端側となる導体の一端は必ずしも電極等に固定する必要はないが、安定な実装や共振周波数の調整のためには、開放端側も電極等に固定することが好ましい。図5は、図2のチップアンテナを基板に実装したアンテナ装置の実施形態の例を示す図であり、(a)は基板の面に垂直な方向から見た上面図、(b)は基板の面に平行な方向から見た背面図である。図5の(b)では基板上の電極の図示は省略してある。アンテナ装置は、直線状の導体が磁性基体1を貫通し、前記導体の両端、すなわち導体の一端3と導体の他端4が前記磁性基体から突出しているチップアンテナと、前記チップアンテナを実装する基板8を有する。導体の両端部は前記磁性基体の外で屈曲されて基板8に形成された電極部である固定電極5および給電電極6にハンダ接合されている。給電電極は給電回路等に接続されている。チップアンテナ10は、導体2の長手方向が基板平面に平行になるように配置されているため、低背かつ安定な実装を可能にしている。この点は、後述する他の実施形態のアンテナ装置においても同じである。チップアンテナ10は、導体の両端がハンダ固定されているので強固に固定されているが、さらに接着剤等を用いて固定してもよい。図5の構成では、導体の両端を屈曲させて基板側の電極との接触を図っているが、導体の両端を屈曲させずに、基板側の固定電極5と給電電極6を厚くして接触を図ってもよい。アンテナ装置は、受信アンテナ、送信アンテナ、送受信アンテナのいずれの態様でも用いることができる。
【0052】
図6には、本発明のアンテナ装置の他の実施形態を示す。図6は、図1のチップアンテナを基板に実装したアンテナ装置の例を示す図であり、(a)は基板の面に垂直な方向から見た上面図、(b)は基板の面に平行な方向から見た背面図である。図6の(b)では基板上の電極の図示は省略してある。図6に示すアンテナ装置は、直線状の導体が磁性基体1を貫通し、前記導体の両端、すなわち導体の一端3と導体の他端4が前記磁性基体から突出しているチップアンテナと、前記チップアンテナを実装する基板8を有する。さらに、基板8には切り欠き部21が設けられており、チップアンテナの基体は前記切り欠き部に挿入され、導体の両端(導体の一端3、導体の他端4)が前記基板に形成された電極部にハンダ接合で接続されている。導体2の両端は屈曲させて用いることも可能であるが、直線状のままとすることが好ましい。図6の例では、突出した導体2の両端は直線状のままとしてある。基板に切り欠き部を設けた図6の実施形態では、突出した導体2の両端が直線状のままでチップアンテナを実装することが可能であるので、導体2の両端を屈曲させる工程を省略し、製造工程を簡略化できる。また、背面図(b)からも明らかなように、基体の厚さ方向の一部を基板の切り欠き部に納めることができるため、アンテナ装置の低背化を図ることができる。この場合は、導体2は、チップアンテナの支持に十分な強度、硬度を有するものを用いる。材質としては例えば42アロイ、コバール、リン青銅、コルソン系銅合金などを用いればよい。なお、図6の実施形態では基体を挿入する部分を基板端部に設けて切り欠き部を構成しているが、基板に開口部、すなわち穴を設けて、該部分を基体を挿入する部分としてもよい。かかる場合も、切り欠きを設ける場合と同様の効果が得られる。
【0053】
次に、本発明のアンテナ装置の別の実施形態について図7を用いて説明する。図7に示すアンテナ装置は、図2に示すチップアンテナと前記チップアンテナを実装する基板8を有している。基板8には接地電極9と該接地電極に離間して固定用電極5が形成されており、チップアンテナ10の導体の一端3は前記固定電極5に接続されている。また、導体の他端4は給電電極にハンダ接合されており、給電電極は給電回路等に接続されている。固定用電極5はチップアンテナ10の導体の長手方向に垂直な方向に延出し、その端部と接地電極9の端部とは平行線をなし、所定の間隔を隔てて対向している。図7の実施形態では、チップアンテナ10、固定用電極5、接地電極9および給電電極6が口の字状に配置されている。チップアンテナ10の開放端側の固定用電極5を接地電極9に離間して形成した構成とすることで、これらの間に容量成分を形成する。本発明に係るチップアンテナは容量成分を大幅に抑えた構造を有するが、所望のアンテナ特性に対して容量成分が不足する場合には、前記方法により容量成分を付加することによってアンテナ特性の調整を行う。チップアンテナ自体の容量成分を調整する方法に比べて、上記方法は簡易に容量成分の調整を行うことができる。アンテナの共振周波数を調整する具体例として、固定用電極5と接地電極9との間に少なくとも一つのコンデンサとスイッチを接続して切り換える、あるいは可変容量ダイオード(バラクタ・ダイオード)を接続し、この印加電圧によって静電容量を変えながら所定の共振周波数まで調整するなどの方法を用いることができる。
【0054】
本発明に係るチップアンテナは磁性体を基体しているため波長短縮効果が大きく、小型化しやすく、高周波でもアンテナ帯域を広くとりやすい。したがって、前記チップアンテナは地上波デジタル放送に使用される180MHz以上、さらには400MHz以上の周波数帯域に用いるチップアンテナとして好適である。本発明に係るチップアンテナを用いてアンテナ装置を構成することによって、アンテナ装置の動作周波数帯域の広帯域化を図ることができる。平均利得−7dBi以上の帯域幅220MHz以上を得ることも可能である。また、共振周波数を適正化するなどして、300MHz以上の帯域幅を得ることも可能である。400MHz以上の高周波帯域で、かかる広帯域特性を有するアンテナ装置は、使用周波数帯域の広い用途、例えば国内の地上デジタル放送に好適である。470〜770MHzの周波数帯域を使用する地上デジタル放送のように、アンテナ装置の帯域幅に対して使用する帯域幅が広い場合は、帯域の異なるアンテナ装置を複数用いて使用帯域全体をカバーするようにすればよい。複数のアンテナ装置を用いると実装面積、実装空間が増加してしまうが、アンテナ装置の帯域幅が広ければアンテナ装置の数を減らすことができる。アンテナ装置が3個以上になると実装面積、実装空間が大幅に増加してしまう。したがって、携帯機器など実装面積等が限られている場合にはアンテナ装置の数は2個以下、より好ましくは1個である。上述のような帯域幅を有するアンテナ装置を用いれば、2個以下のアンテナ装置で470〜770MHzの周波数帯域をカバーすることも可能である。アンテナ装置の平均利得としては、−7dBi以上が好ましく、より好ましくは−5dBi以上である。
【0055】
一方、広い周波数帯域をカバーするためには、図8に示すようにチップアンテナと給電回路の間に、アンテナ装置の共振周波数を調整する整合回路22を設け、該整合回路22の切り換えによってアンテナ装置の共振周波数を移動させ、動作帯域を換えてもよい。インピーダンスマッチングのための整合回路にアンテナ装置の共振周波数の調整機能を持たせる。整合回路22は例えば、図9に示すようなものを用いる。図9の例では、一端を接地したキャパシタC1、インダクタL1の他端の間にインダクタL2を接続して整合回路を構成している。キャパシタC1の他端にチップアンテナの導体を接続し、インダクタL2の他端に給電回路を接続する。インダクタL2のインダクタンス値が異なる複数の整合回路を設け、これらを切り換えられるようにしておく。前記複数の整合回路のうち一つは、インダクタL2のインダクタンス値がゼロ、すなわちインダクタL2を備えない整合回路であってもよい。さらに、整合回路の切り換え方法としては、半導体を用いたスイッチやダイオードを使う方法が、回路の小型集積化や低損失の面で適する。図22には整合回路の切り換えを行う回路の例を示す。制御電圧(Control Voltage)を調整することで、高周波帯域用の整合回路と低周波帯域用の整合回路とを切り換える。図22の例では、制御電圧が0Vのとき低周波用整合回路、制御電圧が+1.5Vのときは高周波帯域用の整合回路に切り換えられる。かかる複数の整合回路を切り換えることによって、一つのアンテナ装置で、共振周波数、すなわち帯域の異なる複数の状態を実現する。また、整合回路全体の切り換えに限らず、インダクタL2など特定の回路素子のみを切り換えてもよい。整合回路を切り換えることによって、少なくとも470〜770MHzの周波数帯域で−7dBi以上を得るようにすれば、地上デジタル放送に特に好適なアンテナ装置となる。より好ましくは−5dBi以上である。整合回路の切り換えの数が増えれば、それだけ多くの実装面積、部品点数を必要とし、制御も複雑となるため、整合回路を用いる場合はその数は2以下とし、切り換えの数は1とすることが好ましい。平均利得の全面平均が−7dBi以上である帯域幅が220MHz以上であるアンテナ装置に、上記の整合回路による切り換え機能を付与すれば、470〜770MHzの周波数帯域を切り換えの数を1としてカバーすることができる。
【0056】
前記チップアンテナおよびそれを用いて構成した前記アンテナ装置は、通信機器に用いられる。例えば、前記チップアンテナおよびアンテナ装置は、携帯電話、無線LAN、パーソナルコンピュータ、地上デジタル放送関連機器等の通信機器に用いることができ、これらの機器を用いた通信における広帯域化に寄与する。地上デジタル放送は使用周波数帯域が広いため、本発明に係るアンテナ装置を用いた通信機器は、該用途に好適である。特に、本発明のアンテナ装置を用いることで、実装面積、実装空間の増加を抑えることができるので、地上デジタル放送を送受信する携帯電話、携帯端末等に好適である。図10、図11はそれぞれ通信機器として携帯電話を用いた例を示している。開いた状態の携帯電話の外観を示す図10(b)および図11(b)では、内蔵されたチップアンテナの位置を点線で示している。図10(a)、図11(a)の断面図に示すように、携帯電話25は、チップアンテナ10が基板27に取付けられ、無線モジュール26に接続されている。尚、チップアンテナ10の配置は図10、あるいは図11の形態に限られるものではない。チップアンテナ10は、操作ユニット24の逆端部側に配置してもよいし、表示ユニット23に配置してもよい。また、アーチ形状のチップアンテナを用いた場合の例を図13に示す。図13では、内蔵されていているチップアンテナ28とレシーバ29の位置を点線で示してある。図13に示す構成では、アーチ形状のチップアンテナは携帯電話25の表示ユニット23の先端に配置されており、アーチ形状の外側の曲面は表示ユニットの先端形状に合わせて配置してある。該構成では、直方体状のチップアンテナを用いた場合に比べて、レシーバとの距離を大きく取ることができる。また、携帯電話の幅を一定とすると、直方体のチップアンテナに比べてチップアンテナの長さを大きく取ることができる。
【0057】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
主成分であるFe2O3、BaO(BaCO3を使用)、CoO(Co3O4を使用)を60mol%、20mol%、20mol%のモル比とし、この主成分100重量部に対して表1に示すCuOまたはZnOを添加し、水を媒体として湿式ボールミルにて16時間混合した(No1〜12)。また、No13の材料として、主成分であるFe2O3、BaO(BaCO3を使用)、CoO(Co3O4を使用)を70.6mol%、17.6mol%、11.8mol%のモル比とし、水を媒体として湿式ボールミルにて16時間混合した。
【0059】
次に、この混合粉を乾燥後、No1〜12の材料については大気中1000℃で2時間、No13の材料については大気中1100℃で2時間、仮焼した。この仮焼粉を、水を媒体とした湿式ボールミルにて18時間粉砕した。得られた粉砕粉にバインダー(PVA)を1%添加し、造粒した。造粒後リング状および直方体状に圧縮成形し、その後、No1〜12の材料については酸素雰囲気中で1200℃で3時間、No13の試料については酸素雰囲気中で1300℃で3時間焼結した。得られた外径7.0mm、内径3.5mm、高さ3.0mmのリング状焼結体の焼結密度と25℃における初透磁率μおよび損失係数tanδを測定した。
【0060】
体積抵抗率、焼結体密度、周波数1GHzでの初透磁率μi、損失係数tanδの評価結果を表1に、周波数180MHz、470MHz、770MHzでの初透磁率μi、損失係数tanδの評価結果を表2に示す。なお、密度測定は、水中置換法により測定し、初透磁率μおよび損失係数tanδは、インピーダンス・ゲインフェイズ・アナライザー(Yokogawa・Hewlett・Packard社製4291B)を用いて測定した。また、一部の試料については前記インピーダンス・ゲインフェイズ・アナライザーを用いて誘電率の測定も行なった。なお、誘電率とは比誘電率である。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
X線回折を行なった結果No1〜12の材料においては、メインピーク強度が最も大きい構成相はY型フェライトであり、Y型フェライトが主相であった。一方、No13の材料は、メインピーク強度が最も大きい構成相はZ型フェライトであり、Z相が主相であった。表1に示すように、CuOを0.1〜1.5wt%添加したものと、ZnOを0.1〜1.0wt%添加したY型フェライトで、1GHzでの初透磁率2以上、損失係数0.05以下、下が得られている。また、体積抵抗率も1×105Ω・m以上、焼結体密度も4.8×103kg/m3以上と、ともに良好な値が得られている。このうち特に、CuOを0.6〜1.0添加したものは、2.7以上の高初透磁率、0.03以下の低損失係数、4.84×103kg/m3以上の高密度が得られている。一方、Z相が主相であるNo13の材料では、特に損失係数が大きくなっているとともに焼結体密度も低い。なお、No4の試料について比誘電率を測定したところ比誘電率は14であった。また、表2に示すようにCuO添加量が0.1〜2.0wt%の範囲に入るものは、470MHz〜770MHzの周波数帯域で初透磁率2以上、損失係数0.05以下となり、470MHz〜770MHzの周波数帯域のチップアンテナに適用可能である。なお、180MHzでは、Cuを添加した材料、Znを添加した材料いずれも初透磁率2以上、損失係数0.05以下を示しており、180MHz以上の周波数帯域のチップアンテナに適用可能である。Y型フェライトの焼結体は、1GHzに限らず470〜770MHz程度の周波数帯においてもZ型フェライトに比べて損失係数が小さく、チップアンテナの材料として優れていることがわかる。
【0064】
上記No4の材料の焼結体を用いて図3に示すチップアンテナを以下のように作製した(アンテナ1)。焼結体から機械加工により30×3×1.25mmと30×3×1.75mmの直方体の磁性部材を得た。30×3×1.75mmの磁性部材には、30×3mmの面の幅方向中央に、幅0.5mm、深さ0.5mmの溝を長手方向に形成した。該溝に、導体として0.5mm角、長さ40mmの銅線を挿入した後、30×3×1.25mmの磁性部材をエポキシ系接着剤(アレムコ社製アレムコボンド570)で接着した。接着剤は磁性部材の貼り合わせ面に塗布した。前記の磁性部材の構設によって縦0.5、横0.5mmの貫通孔が形成され、接着によって得られた基体は30×3×3mmである。突出した導体の両端は基体の外で屈曲させ、図2に示す導体形状とした。また、誘電体チップアンテナの場合と比較するため、以下のようにして誘電体チップアンテナを作製した。誘電率21の誘電体の焼結体から機械加工により30×3×3mmの直方体の部材を得た。その表面にAg−Ptペーストの印刷、焼き付けにより、電極幅が0.8mmで、表3に示す巻き数のヘリカル構造の電極を形成し、チップアンテナを作製した(アンテナ2)。
【0065】
給電電極を形成した基板に前記アンテナ1および2それぞれ実装し、電極の一端を給電電極に接続してアンテナ装置を構成した(それぞれアンテナ装置1および2とする)。アンテナ装置1は、図8に示す構成のアンテナ装置とした。すなわちプリント基板に、給電電極、接地電極、該接地電極に離間して固定電極を形成した。固定電極の幅は4mm、長さは13mmとした。該固定電極の長手方向端部と接地電極とのギャップは1mmである。接地電極はチップアンテナの全体に対向するように形成し、チップアンテナのとの間隔は11mmとした。整合回路として図9に示したものと同じ構成のものを設けた。C1を1pF、L1を12nH、L2を18nHとした。上記アンテナ装置は測定用アンテナ(図8のアンテナ装置の右側に設置(図示せず))から3m離し、50Ωの同軸ケーブルを介してネットワークアナライザを用いたアンテナ利得評価装置に接続して、アンテナ特性(アンテナ利得、共振周波数(利得最大を示す周波数))を評価した。なお、図8のチップアンテナの長手方向をX、それに直角な方向をY、それらに垂直な方向すなわち基板の面に垂直な方向をZとした。ZX面(H平面)の垂直偏波での測定結果を表3に示す。平均利得帯域幅および最大利得帯域幅は、それぞれ平均利得および最大利得が所定の値以上である周波数帯域幅である。表3には−7dBi以上の帯域幅と−5dBi以上の帯域幅を示した。表3に示すように、誘電率が20を超える誘電体を用いたアンテナ装置2に比べて、誘電率が20以下で、さらに1GHzにおける初透磁率が2以上、かつ損失係数が0.05以下のY型フェライトを用いたアンテナ装置1は、帯域幅が大幅に向上しており、かかるY型フェライトをアンテナ装置に用いる効果が確認できる。アンテナ装置1の−7dBi以上の平均利得の帯域幅は260MHz以上を示している。なお、表3では470〜770MHzでの評価結果を示してあるが、−7dBi以上及び−5dBi以上の領域は470MHz未満の領域にも及んでおり、実際の帯域幅は表3に示す帯域幅よりも広いものである。
【0066】
次に、上記アンテナ装置1のチップアンテナの磁性基体と、対向する接地電極との間隔を4mm、6mm、8mm、11mmと変化させてアンテナ特性を評価した。その時の整合回路のL1、L2、C1は22nH、27nH、0.5pF(4mm)、27nH、27nH、0.5pF(6mm)、27nH、27nH、0.5pF(8mm)、27nH、22nH、0.5pF(11mm)とした。チップアンテナの磁性基体と、対向する接地電極との間隔を4mm、6mm、8mm、11mmと大きくなるにつれて平均利得の最大値は−3.7dB、−1.7dBi、−1.8dBi、−2.0dBiとなり、特に6mm以上とすると高い平均利得が得られることがわかった。
【0067】
【表3】
【0068】
(実施例2)
次に、アンテナ1を用いた別のアンテナ装置3を構成し、同じNo4の材料を用いて作製したヘリカル電極構造のアンテナ装置4と比較評価した。アンテナ装置3は、アンテナ1を用いて図8に示す構成で作製した。プリント基板に、給電電極、接地電極、該接地電極に離間して固定電極を形成した。固定電極の幅は3.5mm、長さは13mmとした。該固定電極の長手方向端部と接地電極とのギャップは1mmである。接地電極はチップアンテナの全体に対向するように形成し、チップアンテナのとの間隔は11mmとした。整合回路として低域用と高域用の2種類の整合回路を設けた。整合回路の構成は図9に示したものと同じで、低域用はC1を1pF、L1を12nH、L2を18nHとし、高域用は、C1を1pF、L1を12nH、L2を0nH(インダクタを接続せず)とした。インダクタL2の他端に相当する部分は、50Ωの同軸ケーブルを介してネットワークアナライザを用いたアンテナ利得評価装置に接続して給電を行った。一方、アンテナ装置4は、No4の材料を用いて作製した。ヘリカル電極の巻き数を12回とした以外は、アンテナ装置2の場合と同様にしてチップアンテナを作製した。アンテナ装置4の基板上の配置はアンテナ装置3の場合と同様である。チップアンテナと接地電極との間隔は11mmとした。ただし、固定電極は設けず、また整合回路を付加していない。これらアンテナ装置3、4を測定用アンテナ(図8のアンテナ装置の右側に設置(図示せず))から3m離し、前記アンテナ利得評価装置を用いてアンテナ特性(平均利得、共振周波数)を評価した。整合回路を切り換えて評価した結果を表4に示す。なお、表4の中の平均利得帯域幅は、上記表3の場合と同様平均利得が−7dBi以上の場合と−5dBi以上の場合の周波数帯域幅である。表4にはZX面(H平面)の垂直偏波の平均利得、およびXY面(E2平面)、YZ(E1平面)、ZX面(H平面)の3全面で平均した平均利得の評価結果を示してある。
【0069】
表4に示すように、アンテナ1を用いたアンテナ装置4の−7dBi以上の帯域幅は、整合回路によらずZX面で250MHz以上、全面での平均においても220MHz以上を示している。すなわち、整合回路を切り換えることによって、470〜770MHzの周波数帯域で、全面平均の平均利得において−7dBi以上が得られることがわかる。具体的には、表4の結果では、アンテナ1を用いたアンテナ装置4の−5dBi以上の帯域幅は、整合回路によらず全面での平均においても180MHz以上が得られている。したがって、全面平均の平均利得における目標値を−5dBiとした場合であっても、整合回路を切り換えることによって、470〜770MHzの周波数帯域を満足している。なお、表4には470〜770MHzでの評価結果を示してあるが、−7dBi以上の領域は470MHz未満の領域或いは770MHz超の領域にも及んでおり、実際の帯域幅は表4に示す帯域幅よりも広いものである。例えば、アンテナ装置3において、高域用整合回路を用いたものは770MHzにおいても全平均の平均利得は−2.0dBiを示し、低域用整合回路を用いたものは、470MHzにおいても全平均の平均利得も−3.4dBiという高利得を示している。したがって、整合回路の調整によって共振周波数を制御することによって、一つのチップアンテナで整合回路の切り換え無しで470〜770MHzの周波数帯域を満たすことも可能である。
【0070】
【表4】
【0071】
(実施例3)
次に、アンテナ1を用いて図8に示す構成でアンテナ装置5を作製した。プリント基板に、給電電極、接地電極、該接地電極に離間して固定電極を形成した。固定電極の幅は3.5mm、長さは13mmとした。該固定電極の長手方向端部と接地電極とのギャップは1mmである。ただし、接地電極はチップアンテナ全体に対向せず、固定電極に対向する部分に形成した。整合回路として低域用、高域用の2種類の整合回路を設けた。整合回路の構成は図9に示したものと同様で、低域用はC1を0.5pF、L1を15nH、L2を15nHとし、高域用はC1を0.5pF、L1のかわりにC2を配置して2pF、L2を0nH(インダクタを接続せず)とした。このアンテナ装置を携帯電話に実装した。実装場所は、概略図11に示すように、携帯電話の表示ユニットの先端とした。チップアンテナは表示ユニットの先端線に平行になるように、かつスピーカ等からなるレシーバからの12mmの間隔を確保するように配置した。アンテナ特性の評価のために、インダクタL2の他端に相当する部分は、50Ωの同軸ケーブルを介してネットワークアナライザを用いたアンテナ利得評価装置に接続して給電を行った。整合回路を切り換えて、評価した結果を表5に示す。表5には全面で平均した平均利得の評価結果を示してある。携帯電話に実装した状態でも、整合回路によらず帯域幅は220MHz以上を確保できた。また、整合回路を切り換えることによって、470〜770MHzの帯域において、−7dBiを満足した。なお、表5には470〜770MHzでの評価結果を示してあるが、低域側の−7dBi以上の領域は470MHz未満或いは770MHz以上の帯域にも及んでいる。また、−5dBi以上の領域も470MHz未満にも及んでいる。すなわち、実際の帯域幅は表5に示す帯域幅よりも広いものである。したがって、低域用の整合回路および高域用の整合回路を微調整することによって、470〜770MHzを越える周波数帯域おいて−5dBi以上を満たすことも可能である。また、レシーバとチップアンテナの間隔を変化させたところ、該間隔を大きくすることによって利得が向上し、帯域幅が広がる傾向を示した。該間隔が4mmを下回ると帯域幅の低下が大きくなり、4mm以上が好ましいことがわかった。
【0072】
【表5】
【0073】
(実施例4)
表1のNo4の材料と同様に、主成分であるFe2O3、BaO(BaCO3を使用)、CoO(Co3O4を使用)を60mol%、20mol%、20mol%のモル比とし、この主成分100重量部に対してCuO0.6重量部を添加し、水を媒体として湿式ボールミルにて混合した。次に、この混合粉を乾燥後、大気中1100℃で1.5時間仮焼した。この仮焼粉を、水を媒体とした湿式ボールミルにて10時間粉砕した。得られた粉砕粉に水、バインダ、潤滑剤および可塑剤を添加して、押出し成形を行った。得られた成形体は乾燥後、大気中1150℃で3時間焼結し、30mm×3mm×3mmの直方体形状の焼結体を得た。該焼結体の中心には、直径約0.6mmの円形断面の貫通孔が長手方向に形成され、該長手方向に垂直な方向に位置する4つの角の部分には、面取り幅0.5mmのアールが形成された。また、複数の焼結体について貫通孔の円筒度(最大径と最小径の差)を測定したところずれも10μm以下であった。また、押出し成形の条件を変えて円筒度が48〜149μmのものを作製したところ、導体を挿入することが困難であった。この場合、貫通孔は正方形断面の一辺の方に長く、それに直角な方向の一辺の方に短くなっているものが多かった。
【0074】
得られた焼結体を磁性基体として用い、直径0.6mmの銅線を挿入、貫通させチップアンテナを構成した。貫通孔の最大直径と銅線の径との差は22〜45μmであった。さらに該チップアンテナを用いて図8に示す構成でアンテナ装置6を作製した。幅40mmのプリント基板に、給電電極、接地電極、該接地電極に離間して固定電極を形成した。接地電極は、プリント基板の表、裏ともチップアンテナを実装する先端側から15mm以上離間している領域に形成した。固定電極5の幅は3.5mm、給電電極6の幅は1mm、長さは13mmとした。該固定電極の長手方向端部と接地電極とのギャップは1mmである。固定電極5の幅を固定電極6の幅よりも広くした理由は、固定電極5の端部と接地電極との静電容量を大きくすることにより、アンテナ共振周波数を低くし小形化するためである。接地電極はチップアンテナの全体に対向するように形成し、チップアンテナのとの間隔は11mmとした。整合回路として低域用と高域用の2種類の整合回路を設けた。整合回路の構成は図15に示したものと同じで、C1を0.5pF、L1を68nH、L3を18nHとした。実施例2と同様にして、アンテナ特性を評価した。全面で平均した平均利得の評価結果を図23に示すが、−7dB以上の帯域幅が330MHz(475〜800MHz)、−5dB以上の帯域幅が275MHz(503〜778MHz)となり、広帯域のアンテナ装置が得られたことがわかる。前記330MHzの帯域幅は、一つのアンテナ装置で整合回路等を調整することにより、整合回路の切り換えがなくても470〜770MHzの帯域をカバーすることが可能であることを示す。
【0075】
次に、押出し成形で作製した焼結体を加工して、三点曲げの抗折強度を測定した。また、実施例1で作製したNo4の材料の焼結体についても同様に加工して併せて抗折強度を測定した。試験片は10個とし、抗折強度はその平均をとった。実施例1で作製した焼結体の抗折強度は200MPa、押出し成形で作製した焼結体の抗折強度は217MPaであり、約10%強度が向上していた。すなわち押出し成形を適用して得られた磁性基体を用いることにより、チップアンテナの機械的強度の向上が図れることがわかる。抗折強度が210MPa以上の磁性基体は高い衝撃が加わる携帯機器に用いる場合に有利である。また、焼結体の炭素量は実施例1で作製した焼結体、押出し成形で作製した焼結体とも0.01質量%であり、同レベルであった。
【0076】
前記押出し成形で作製した焼結体と実施例1で作製したNo4の材料の焼結体の破面をSEMで観察したところ、前者では径の大きな空孔が多く、後者では微細孔が多かった。そして、1μm以上の空孔は1mm2当たりそれぞれ約1800個、約9000個であった。さらに前記焼結体を鏡面研磨した後エッチングして光学顕微鏡にて組織を観察した。200μmに相当する線上に存在する粒子数Nをカウントして、200μmをNで除して焼結体の平均結晶粒径を算出したところ、押出し成形で作製した焼結体の平均結晶粒径は2.5μm、実施例1で作製したNo4の材料の焼結体の平均結晶粒径は2.0μmであった。すなわち平均結晶粒径を2.8μm以下、1μm以上の空孔が面積1mm2当たり2%以上とすることで、上述のように機械的強度に優れるチップアンテナを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図5】本発明の実施形態のアンテナ装置を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態のアンテナ装置を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態のアンテナ装置を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態のアンテナ装置を示す図である。
【図9】本発明のアンテナ装置の実施形態に用いる整合回路の例を示す図である。
【図10】本発明の通信機器の実施形態である携帯電話を示す図である。
【図11】本発明の通信機器の他の実施形態である携帯電話を示す図である。
【図12】本発明の本発明の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図13】本発明の通信機器の他の実施形態である携帯電話を示す図である。
【図14】比誘電率とアンテナ内部損失の関係を示す図である。
【図15】整合回路の例を示す図である。
【図16】アンテナ内部損失と共振周波数の導体幅依存性を示す図である。
【図17】本発明の実施形態に係る構造(構造a)と比較構造(構造b)における、アンテナ内部損失と損失係数tanδの関係を示す図である。
【図18】アンテナ内部損失と損失係数tanδの関係を示す図である。
【図19】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図20】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図21】本発明の他の実施形態のチップアンテナを示す図である。
【図22】整合回路の切り換えを行う回路の例を示す図である。
【図23】本発明に係るアンテナ装置のアンテナ特性を示した図である。
【図24】磁性基体の内外形比と平均利得の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1、33、35:磁性基体 2、34、36:導体 3:導体の一端 4:導体の他端
5:固定電極 6:給電電極 7:給電回路 8:基板 9:接地電極
10:チップアンテナ 11、12、13、14、15:磁性部材 21:切り欠き部
22:整合回路 23:表示ユニット 24:操作ユニット 25:携帯電話
26:無線モジュール 27:基板 28:チップアンテナ 29:レシーバ
30、37:ケース 31、38:突起部 39A、39B:導体部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナ
と、前記チップアンテナを実装する基板とを有し、前記導体の両端が前記磁性基体から突
出しており、前記基板には切り欠き部または開口部を設け、前記チップアンテナの基体は
前記切り欠き部または開口部に挿入され、前記導体の両端部が前記基板に形成された電極
部に接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記磁性基体は、Y型フェライトの焼結体であることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記磁性基体は、長さが30mm以下、幅が10mm以下、高さが5mm以下であるこ
とを特徴とする請求項1または2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記磁性基体から突出した線状の導体の両端は、屈曲していないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記導体の材質は、42アロイ、コバール、リン青銅、コルソン系銅合金などの材料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のアンテナ装置を用いた地上デジタル放送用のアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のアンテナ装置を搭載した通信機器。
【請求項1】
線状の導体が磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通しているチップアンテナ
と、前記チップアンテナを実装する基板とを有し、前記導体の両端が前記磁性基体から突
出しており、前記基板には切り欠き部または開口部を設け、前記チップアンテナの基体は
前記切り欠き部または開口部に挿入され、前記導体の両端部が前記基板に形成された電極
部に接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記磁性基体は、Y型フェライトの焼結体であることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記磁性基体は、長さが30mm以下、幅が10mm以下、高さが5mm以下であるこ
とを特徴とする請求項1または2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記磁性基体から突出した線状の導体の両端は、屈曲していないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記導体の材質は、42アロイ、コバール、リン青銅、コルソン系銅合金などの材料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のアンテナ装置を用いた地上デジタル放送用のアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のアンテナ装置を搭載した通信機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−71874(P2009−71874A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332257(P2008−332257)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【分割の表示】特願2006−171428(P2006−171428)の分割
【原出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【分割の表示】特願2006−171428(P2006−171428)の分割
【原出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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