説明

チップ型抵抗器およびその製造方法

【課題】本発明は、低抵抗値であっても、プリント基板に実装する電極間隔が広いチップ型抵抗器およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明のチップ型抵抗器は、金属板で構成した抵抗体11と、前記抵抗体11の第1の平面11aにその一端部12aの下面が接合された第1の電極12と、前記抵抗体11の第1の平面11aと反対の面である第2の平面11bにその上面が接合された第2の電極13とを備え、前記第1の電極12の他端部12bを下方に折り曲げ、さらにその先端部12cを、前記第1の電極12の下面と前記第2の電極13の下面が同一平面上に位置するように折り曲げたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の電流値検出等に使用されるチップ型抵抗器およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のチップ型抵抗器は、図6に示すように、金属板で構成された抵抗素子1の表面にニッケルからなるアンダーコート2と錫からなるオーバーコート3をそれぞれめっきで被覆し、抵抗素子1中央部に位置するアンダーコート2、オーバーコート3をワイヤブラシ等で規定の距離を剥ぎ取ることにより、互いに分離した電極4を形成するとともに抵抗値の調整をしていた。なお、露出した抵抗素子1中央部を覆うように保護膜5を形成していた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−20802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のチップ型抵抗器においては、分離した電極4の間隔により抵抗値を決定しているが、低い抵抗値を得ようとした場合、その電極4の間隔を狭くする必要がある。しかしながら、電極4の間隔を狭くすると製品をプリント基板に実装する際、実装用のはんだによって電極4間がショートする恐れがあるため、電極4の間隔を狭くすることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題を解決するもので、例えば1mΩ以下の低抵抗値であっても、プリント基板に実装する電極間隔が広いチップ型抵抗器およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、金属板で構成した抵抗体と、前記抵抗体の第1の平面にその一端部の下面が接合された第1の電極と、前記抵抗体の第1の平面と反対の面である第2の平面にその上面が接合された第2の電極とを備え、前記第1の電極の他端部を下方に折り曲げ、さらにその先端部を、前記第1の電極の下面と前記第2の電極の下面が同一平面上に位置するように折り曲げたもので、この構成によれば、第1、第2の電極の間隔を抵抗体の厚みによって狭くすることができるため、抵抗値を低くすることができ、さらに、第1の電極の他端部を下方に折り曲げるようにしているため、プリント基板に実装される第1の電極と第2の電極の間隔を広くすることができるという作用効果が得られるものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、金属板で構成した抵抗体の第1の平面に、第1の電極の一端部の下面を接合する工程と、前記抵抗体の第1の平面と反対の面である第2の平面に第2の電極の上面を接合する工程と、前記第1の電極の他端部を下方に折り曲げ、さらにその先端部を、前記第1の電極の下面と前記第2の電極の下面が同一平面上に位置するように折り曲げる工程とを備えたもので、この製造方法によれば、第1、第2の電極の間隔を抵抗体の厚みによって狭くすることができるため、抵抗値を低くすることができ、さらに、第1の電極の他端部を下方に折り曲げているため、プリント基板に実装される第1の電極と第2の電極の間隔を広くすることができるという作用効果が得られるものである。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、第1の電極の一端部と、この第1の電極の一端部に接合された抵抗体の一部を除去することにより抵抗値調整をするようにしたもので、この製造方法によれば、抵抗体の強度を低くすることなく、容易に抵抗値の調整ができるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明のチップ型抵抗器は、抵抗体の第1の平面にその一端部の下面が接合された第1の電極と、前記抵抗体の第1の平面と反対の面である第2の平面にその上面が接合された第2の電極を備えるようにしているため、その接合された第1、第2の電極の間隔を抵抗体の厚みによって狭くすることにより抵抗値を低くしており、さらに、第1の電極の他端部を下方に折り曲げるようにしているため、プリント基板に実装される第1の電極と第2の電極の間隔を広くすることができる。この結果、プリント基板に実装する際、実装用のはんだにより電極間がショートすることなく、かつ抵抗値を低くすることができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態におけるチップ型抵抗器の断面図
【図2】同チップ型抵抗器の主要部の斜視図
【図3】同チップ型抵抗器の製造方法を示す図
【図4】同チップ型抵抗器の製造方法を示す図
【図5】同チップ型抵抗器の製造方法を示す図
【図6】従来のチップ型抵抗器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態におけるチップ型抵抗器について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態におけるチップ型抵抗器の断面図、図2は同チップ型抵抗器の主要部の斜視図である。
【0015】
本発明の一実施の形態におけるチップ型抵抗器は、図1、図2に示すように、金属板で構成された抵抗体11と、前記抵抗体11の第1の平面11aに形成され、下方に折り曲げられた第1の電極12と、前記抵抗体11の第2の平面11bに形成された第2の電極13と、前記抵抗体11の周囲を覆うように形成された保護膜14とを備えているものである。なお、図2では保護膜14を省略している。
【0016】
上記構成において、前記抵抗体11は、ニクロム、銅ニッケル、マンガニン等からなる金属板で構成されている。そして、前記抵抗体11の厚み方向に対向する主面である第1の平面11aと第2の平面11bを有している。
【0017】
また、前記第1の電極12、第2の電極13は、抵抗体11とは別体の導電体で形成され、前記抵抗体11より導電率の低い銅等の金属で構成されている。
【0018】
さらに、第1の電極12は、その一端部12aの下面が抵抗体11の第1の平面11aに接合され、第2の電極13は、その上面に前記抵抗体11の第1の平面11aと反対の面である第2の平面11bに接合されている。そして、前記第1の電極12は他端部12bを下方に折り曲げ、さらにその先端部12cを、前記第2の電極13下面と同一平面上に位置するように折り曲げられている。
【0019】
なお、抵抗体11と第1の電極12の一端部12aとが接合された部分を抵抗体11と第1の電極12を同時に切削等で除去することで、抵抗値が調整されている。
【0020】
そして、前記保護膜14は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の絶縁材からなり、抵抗体11と第1の電極12で囲まれた部分、第1、第2の電極12、13の上面に形成されているものである。
【0021】
そしてまた、保護膜14から露出し、同一平面上に位置する第1の電極12の先端部12cと第2の電極13のそれぞれには、電気めっき又はディップにてすずめっきが施されることによってめっき層15が形成されているもので、これにより、チップ型抵抗器は実装用基板に実装されるものである。なお、このめっき層15と前記第1の電極12、前記第2の電極13との間には必要に応じてニッケルめっき、銅めっき、金めっきを形成してもよい。
【0022】
次に、本発明の一実施の形態におけるチップ型抵抗器の製造方法について、図3〜図5を用いて説明する。なお、図3、図4(a)は上面図、図4(b)〜(d)、図5は斜視図を示している。
【0023】
まず、図3(a)に示すように、銅で構成された帯状の導電体16と、前記導電体16よりも幅が狭くなるように調整された、帯状の抵抗板17をクラッド接合等で接合して接合体18を形成する。このとき、導電体16の上面の端部に抵抗板17を接合するようにする。なお、前記導電体16は、第2の電極13となり、前記抵抗板17は、抵抗体11となる。また、前記抵抗板17にはニクロム、銅ニッケル、マンガニン等からなる材料を用いる。さらに、前記導電体16の全表面、または前記導電体16と前記抵抗板17が接する面に、すずめっきを形成してもよい。これにより、両者を強固に接続することができる。そしてまた、導電体16と抵抗板17をより強固に接合する場合には、すずめっきではなく、銀めっき、金めっき、またはニッケルめっきを導電体16に形成するようにしてもよいものである。
【0024】
次に、図3(b)に示すように、接合体18の抵抗板17、導電体16にプレス加工等を施すことにより第1スリット19aを形成する。また、第1スリット19aの幅(抵抗板17、導電体16の幅)は、目的の抵抗値によって調整するものであり、抵抗板17と導電体16の部分で異なっていてもよいものである。
【0025】
次に、図3(c)に示すように、銅で構成され、図3(a)(b)で示した導電体16とは別の導電体20にプレス加工等を施し、第2スリット19bを形成する。なお、第2スリット19bが形成された別の導電体20は、第1の電極12となる。このとき、第2スリット19bの幅と第1スリット19aの幅を同じにし、第2スリット19bの間隔と第1スリット19aの間隔を同じにして、抵抗体11、第2の電極13の幅と第1の電極12の幅が略同一になるようにする。
【0026】
次に、図3(d)に示すように、接合体18と、第2スリット19bが形成された別の導電体20を重ね、抵抗体11となる部分の上面と第1の電極12となる部分を加熱するような方法、例えばレーザー溶接、電気溶接等で接合を行う。このとき、第1の電極12となる部分は、第2の電極13が接合された抵抗体11となる部分の反対の面に重ねるものである。また、第1の電極12の全表面、または第1の電極12の抵抗体11となる部分との接合面に銀めっき、金めっき、銅めっき、またはニッケルめっきを形成するようにしてもよいものである。
【0027】
次に、図4(a)に示すように、第2スリット19bに対応する別の導電体20をプレス加工等により切断し、その後、第1スリット19aに対応する導電体16をプレス加工等により切断し、抵抗体11の上面(第1の平面11a)に第1の電極12の一端部12a、抵抗体11の裏面(第2の平面11b)に第2の電極13が接合された個片を複数得る。なお、個片をA−A方向から見た斜視図を図4(b)に示す。
【0028】
次に、図4(c)に示すように、第1の電極12の他端部12bを下方に折り曲げ、さらにその先端部12cを、第2の電極13の下面と同一平面上に位置するように折り曲げる。なお、この実施の形態では抵抗体11と第1の電極12との接合後に第1の電極12の曲げ加工を行ったが、あらかじめ曲げ加工を行った第1の電極12と抵抗体11を接合してもよい。
【0029】
次に、図4(d)に示すように、第1の電極12と第2の電極13の抵抗体11を挟んだ両側の間の抵抗値を測定しながら、抵抗体11と第1の電極12の一端部12aが接合された部分の端部21を研磨等の方法で同時に除去し、抵抗値を調整する。すなわち、抵抗体11と第1の電極12の長さを短くするようにし、抵抗体11における第1の電極12と第2の電極13間の電流が流れる面積を小さくして抵抗値を高くするようにしている。なお、抵抗値は、抵抗体11と第1の電極12が接合された部分に切削等で、切削溝22を入れることによって調整することも可能であるが、この場合は、抵抗体11の強度が悪化する可能性がある。
【0030】
次に、図5(a)に示すように、前記抵抗体11の周囲に、エポキシ樹脂、液晶ポリマー等の絶縁材で構成された保護膜14を形成する。このとき、第1の電極12と第2の電極13の両端面および裏面を露出するようにする。また、保護膜14としては液状の樹脂をポッティング、またはディップ等することにより形成してもよいものである。
【0031】
次に、図5(b)に示すように、保護膜14から露出した第1の電極12と第2の電極13の端部の不要部分をプレス加工等することにより切断する。
【0032】
最後に、図5(c)に示すように、前記第1の電極12と前記第2の電極13の周囲に電気めっき又はディップにてすずめっきを施してめっき層15を形成し、これにより、図1、図2に示すチップ型抵抗器が得られる。なお、このめっき層15と前記第1の電極12と前記第2の電極13との間には必要に応じてニッケルめっき、銅めっき、金めっきを形成してもよい。なお、図5(c)のB−B線で、チップ抵抗器を反転した図を図5(d)に示す。図5(d)から分かるように、第1の電極12と第2の電極13に設けられためっき層15と実装用はんだによって、チップ型抵抗器は実装用基板に実装されるものである。
【0033】
上記した本発明の一実施の形態におけるチップ型抵抗器においては、抵抗体11の第1の平面11aにその一端部12aの下面が接合された第1の電極12と、前記抵抗体11の第1の平面11aと反対の面である第2の平面11bにその上面が接合された第2の電極13を備えるようにしているため、その接合された第1、第2の電極12、13の間隔を抵抗体11の厚みによって狭くすることによって、抵抗値を低くすることができ、さらに、第1の電極12の他端部12bを下方に折り曲げるようにしているため、プリント基板に実装される第1の電極12と第2の電極13の間隔を広くすることができる。この結果、プリント基板に実装する際、実装用のはんだにより第1、第2の電極12、13間がショートすることなく、抵抗値を低くすることができるという効果が得られるものである。
【0034】
すなわち、電流が抵抗体11の厚み方向に流れるため、電流の流れる距離を短くすることができ、これにより、1mΩ以下の低い抵抗値が得られる。また、第1、第2の電極12、13の実装部分(下面)を抵抗体11の長さ方向に離れるように構成できるため、電極12、13間の間隔を広くすることができ、これにより、製品をプリント基板に実装する際、実装用のはんだによって電極12、13間がショートする可能性を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るチップ型抵抗器は、低抵抗値であっても、プリント基板に実装する電極間隔が広いという効果を有するものであり、特に各種電子機器の電流値検出等に使用されるチップ型抵抗器等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0036】
11 抵抗体
11a 抵抗体の第1の平面
11b 抵抗体の第2の平面
12 第1の電極
12a 第1の電極の一端部
12b 第1の電極の他端部
12c 第1の電極の他端部の先端部
13 第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板で構成した抵抗体と、前記抵抗体の第1の平面にその一端部の下面が接合された第1の電極と、前記抵抗体の第1の平面と反対の面である第2の平面にその上面が接合された第2の電極とを備え、前記第1の電極の他端部を下方に折り曲げ、さらにその先端部を、前記第1の電極の下面と前記第2の電極の下面が同一平面上に位置するように折り曲げたチップ型抵抗器。
【請求項2】
金属板で構成した抵抗体の第1の平面に、第1の電極の一端部の下面を接合する工程と、前記抵抗体の第1の平面と反対の面である第2の平面に第2の電極の上面を接合する工程と、前記第1の電極の他端部を下方に折り曲げ、さらにその先端部を、前記第1の電極の下面と前記第2の電極の下面が同一平面上に位置するように折り曲げる工程とを備えたチップ型抵抗器の製造方法。
【請求項3】
第1の電極の一端部と、この第1の電極の一端部に接合された抵抗体の一部を除去することにより抵抗値調整をするようにした請求項1記載のチップ型抵抗器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227360(P2012−227360A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93742(P2011−93742)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】