説明

チップ形コンデンサ

【課題】コンデンサに振動が加わった際にリード線の破損を防止することができ、長年の使用に耐えられるチップ形コンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ素子5を有底筒状の外装ケース2内に収納し、外装ケース2の開口部3を封口部材4により封口するとともに、封口部材4から導出されるリード線6を有するコンデンサ本体1と、リード線6が挿通される貫通孔17が形成され、コンデンサ本体1のリード線導出側に取り付けられる絶縁部材9と、からなるチップ形コンデンサCにおいて、リード線6の絶縁部材9から導出される部位に複数の屈曲部が形成され、この複数の屈曲部を介してリード線6が実装基板24に対して接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線を有するコンデンサ本体と、前記リード線が挿通される貫通孔が形成された絶縁部材と、からなるチップ形コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチップ形コンデンサでは、絶縁板(絶縁部材)から導出されたリード線が、その基端部側で屈曲されてリード線が絶縁板の下面に沿って配置され、このリード線の先端部側が実装基板に固定される(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−332172号公報
【特許文献2】特開2006−286984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のチップ形コンデンサにあっては、コンデンサ本体と絶縁板(絶縁部材)とが互いにしっかりと固定されていないため、実装基板に振動が加わった際に、コンデンサ本体が振動されてしまう。そして、コンデンサ本体の振動は、実装基板にはんだ付けされてしっかりと固定されたリード線に伝わり、この振動に起因する応力がリード線の基部の1箇所の屈曲部に集中されるため、コンデンサの長年の使用により、このリード線の屈曲部から破損が生じてしまうという問題がある。
【0005】
また、環境問題の観点から、はんだにおける鉛フリー化が進められているが、この鉛フリーはんだの融点は、250℃以上と高温である。従来のコンデンサのように、リード線の、実装基板および絶縁部材に当接している部位を、鉛フリーはんだを用いて実装基板へ接続するために加熱すると、リード線と絶縁部材とが接しているために、熱が絶縁部材にまで拡散してしまう。このようにリード線およびはんだへの局所的な加熱が行えないために、より多くの熱量が必要となり、コンデンサおよび周辺部品への熱ストレスが大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
ここで、特許文献1に記載のコンデンサにおいては、絶縁板(絶縁部材)とリード端子(リード線)とが接触しているため、上記のとおり、実装基板にはんだ付けする際に、リード端子のみではなく、絶縁板にまで熱が拡散してしまう。
【0007】
また、特許文献2に記載のコンデンサにおいては、突起部を設けることにより接続電極(リード線)と絶縁板(絶縁部材)との接触を防ぎ、広い面積で接触することを防止している。しかしながら、接続電極は突起部と接触してしまうため、接続電極およびはんだを加熱した際に、突起部にまで熱が拡散してしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、コンデンサに振動が加わった際にリード線の破損を防止することができ、長年の使用に耐えられるチップ形コンデンサを提供することを目的とする。さらには、コンデンサや周辺部品への熱ストレスを低減したリフロー接続を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明のチップ形コンデンサは、
コンデンサ素子を有底筒状の外装ケース内に収納し、該外装ケースの開口部を封口部材により封口するとともに、該封口部材から導出されるリード線を有するコンデンサ本体と、該リード線が挿通される貫通孔が形成され、前記コンデンサ本体のリード線導出側に取り付けられる絶縁部材と、からなるチップ形コンデンサにおいて、
前記リード線の前記絶縁部材から導出される部位に複数の屈曲部が形成され、該複数の屈曲部を介して前記リード線が実装基板に接続されることを特徴としている。
この特徴によれば、複数の屈曲部を介してリード線の先端側の部位が実装基板に固定され、それ以外の部位は、実装基板に対する相対的な移動が許容されるため、リード線の柔軟性が確保されるとともに、リード線に加わる応力を緩和することができる。従って、コンデンサに振動が加わった際に、リード線全体に加わる応力が1箇所に集中せずに複数の屈曲部に分散されて加わり、各屈曲部に加わる応力が低減されて、リード線の破損を防止することができ、長年の使用に耐えられるようになる。
さらに、リード線の実装基板に接続される部位(リード線の先端側)を、絶縁部材から離間させると、コンデンサを実装基板へ接続する際の絶縁部材への熱の拡散が抑制され、リード線およびはんだをより少ない熱量で加熱することができ、コンデンサや周辺部品への熱ストレスが緩和される。
【0010】
本発明のチップ形コンデンサは、
前記リード線は、複数の屈曲部を設けることにより、前記リード線を前記絶縁部材の下面に沿うように配置した絶縁部材当接部位と、前記実装基板に沿うように配置した実装基板接続部位と、で構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、リード線が、絶縁部材の下面に沿うように配置した絶縁部材当接部位を有しているため、絶縁部材を支持し、さらにコンデンサの縦方向の振動に対する固定性が向上する。
【0011】
本発明のチップ形コンデンサは、
前記絶縁部材の下面には、凸状をなす複数の台部が設けられており、前記リード線は、前記台部から離間して配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、台部により絶縁部材の下面と実装基板との間に、リード線が配置される空間を確保することができ、かつリフロー方式のはんだ付けを行う際に、台部同士の間が熱風の通り道となり、リード線に熱風が当たり易くなり、リード線及びはんだをより少ない熱量で加熱することができるため、コンデンサや周辺部品への熱ストレスが緩和される。
【0012】
本発明のチップ形コンデンサは、
前記台部には、前記実装基板に接続される固定部が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、リード線のみならず、絶縁部材の固定部によってもコンデンサが実装基板に補強的に固定されるようになり、実装基板に対するコンデンサの固定強度が高まり、耐振動性が向上する。
【0013】
本発明のチップ形コンデンサは、
前記外装ケースの開口部近傍には、該外装ケースを前記封口部材により密閉するための加締部が凹設されており、該加締部に係合する凸部が前記絶縁部材に設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、外装ケースの加締部を利用して、コンデンサ本体と絶縁部材とを互いに固定することができ、コンデンサ本体と絶縁部材との間で生じるぐらつきが防止されるようになり、コンデンサに振動が加わった際に、リード線に加わる応力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1におけるコンデンサ本体とプレス治具を示す正面図である。
【図2】プレス治具によりリード線をプレス加工する状態を示す正面図である。
【図3】コンデンサ本体と絶縁部材とを示す縦断正面図である。
【図4】チップ形コンデンサを下面側から見た状態を示す斜視図である。
【図5】実装基板に取り付けられたチップ形コンデンサを示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るチップ形コンデンサを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0016】
実施例に係るチップ形コンデンサにつき、図1から図5を参照して説明する。図1の符号1は、本発明の適用されたコンデンサ本体1である。このコンデンサ本体1は、略有底円筒形状をなす外装ケース2を有し、外装ケース2の一端に開口部3が形成され、この開口部3を合成樹脂製の略円柱形状をなす封口部材4が閉塞している(図3参照)。なお、外装ケース2は、アルミニウム等の金属材料で形成されており、封口部材4は、樹脂ゴム等の弾性を有する弾性材料で形成されている。そして、外装ケース2の開口部3の近傍の側周面には、外装ケース2を封口部材4により密閉するための加締部7が全周に渡って凹設されている。
【0017】
図3に示すように、このコンデンサ本体1は、アルミニウムで形成された複数の電極箔をセパレータを介して巻回または積層したコンデンサ素子5を有しており、このコンデンサ素子5を電解液とともに外装ケース2に収納している。コンデンサ素子5には、陽極及び陰極の2本のリード線6が接続されている。前述した封口部材4には、2本のリード線6をそれぞれ導出できる導出孔8が形成されている。
【0018】
なお、封口部材4の導出孔8を介してリード線6が導出される側が、コンデンサ本体1のリード線導出側となっており、このコンデンサ本体1のリード線導出側に、後述するように、絶縁部材9が取り付けられるようになっており(図3参照)、コンデンサ本体1と絶縁部材9とによりチップ形コンデンサCが構成される(図4参照)。
【0019】
図1及び図2に示すように、コンデンサ本体1のリード線6は、先ず、プレス治具10により成型される。なお、プレス治具10は、内型11と外型12とを有している。このプレス治具10には、封口部材4から導出されたリード線6のそれぞれの基部の外側にノッチ部13を形成するノッチ形成部14と、リード線6の中央部に内側に屈曲するクランク部15を形成するクランク形成部16とが設けられている。
【0020】
そして、図2に示すように、プレス治具10の内型11及び外型12によりリード線6がプレスされることで、リード線6のそれぞれの基部の外側にノッチ部13が形成され、また、リード線6のそれぞれの中央部に内側に屈曲するクランク部15が形成される。
【0021】
図3に示すように、絶縁部材9は、断面視が略凹字形状をなし、平面視で方形状をなす箱部材となっており、絶縁性を有する合成樹脂等の材質で形成されている。この絶縁部材9は、リード線6が挿通される貫通孔17が中央に形成された平面視で略四角形状をなす下面板部18と、この下面板部18の側周から立設された4方の側周板部19とを有している。各側周板部19の中央部には、切欠部20が形成されている。
【0022】
また、側周板部19の内面同士の幅は、コンデンサ本体1の外装ケース2の外径よりも若干小さくなっており、切欠部20が形成されることで側周板部19が外方に撓み易くなっており、コンデンサ本体1の端部を側周板部19同士の間に嵌め込み易くなっている。さらに、側周板部19の内面には、外装ケース2の加締部7に係合される略半球形状をなす凸部21が周方向に複数突設されている。
【0023】
図5に示すように、コンデンサ本体1に絶縁部材9が取り付けられる際に、リード線6は、絶縁部材9の下面板部18の貫通孔17にそれぞれ挿通される。そして、各リード線6は、前述したプレス治具10により形成されたノッチ部13から外方側に屈曲され、リード線6の基部が絶縁部材9の下面に沿うように接触されて絶縁部材当接部位25を構成するとともに、リード線6の中央部のクランク部15よりも先端側の部位が絶縁部材9の下面から離間され実装基板24に沿うように配置されて実装基板接続部位26を構成する。ここで、絶縁基板当接部位25実装基板24との間には間隙が形成され、また、リード線6の実装基板接続部位26と絶縁部材9との間にも間隙が形成される。
【0024】
リード線6の基部のノッチ部13に形成された1箇所の屈曲部位が、第1屈曲部を形成し、リード線6の中央部のクランク部15に形成された2箇所の屈曲部位が、第2屈曲部を形成している。
【0025】
図4に示すように、絶縁部材9の下面の四隅には、下方に突出された凸状をなす台部22が形成されている。各台部22は、互いに離間して配置されており、この台部22同士の間に、これら台部22から離間された状態でリード線6が導出されている。また、各台部22には、はんだ付けが可能な金属固定板23が(固定部)取り付けられている。
【0026】
図5に示すように、チップ形コンデンサCを実装基板24にはんだ付けする際には、リフロー方式ではんだ付けを行うようになっており、リード線6の先端側の部位(実装基板接続部位26)及び絶縁部材9の台部22の金属固定板23を、はんだペーストを介して実装基板24に接触させる。そして、熱風を吹きつけることで、リード線6の先端側の部位がはんだ付けされるとともに、絶縁部材9の台部22の金属固定板23がはんだ付けされる。
【0027】
その際、リード線6の先端側の部位(実装基板接続部位26)が、実装基板24に対して固定的に接続されることで、第2屈曲部を節としてコンデンサ本体1と実装基板24の相対移動が許容されるため、リード線6の柔軟性が確保されるとともに、リード線6に加わる応力を緩和することができる。従って、コンデンサCに振動が加わった際に、リード線6全体に加わる応力が第1屈曲部の1箇所に集中せずに、クランク部15の第2屈曲部にも分散されて加わり、各屈曲部に加わる応力が低減されて、リード線6の破損及びはんだ付け部の破損を防止することができ、長年の使用に耐えられるようになる。
【0028】
また、リード線6が、絶縁部材の下面に沿うように配置した絶縁部材当接部位を有しているため、絶縁部材を支持し、さらにコンデンサの縦方向の振動に対する固定性が向上する。
【0029】
また、台部22により絶縁部材9の下面と実装基板24との間に、リード線6が配置される空間を確保することができ、かつリフロー方式のはんだ付けを行う際に、台部22同士の間が熱風の通り道となり、リード線6に熱風が当たり易くなり、リード線6及びはんだをより少ない熱量で加熱することができ、コンデンサや周辺部品への熱ストレスが緩和される。
【0030】
また、絶縁部材9の台部22には、実装基板24に接続される金属固定板23が設けられることで、リード線6のみならず、絶縁部材9の金属固定板23によってもコンデンサCが実装基板24に補強的に固定されるようになり、実装基板24に対するコンデンサCの固定強度が高まり、耐振動性が向上する。
【0031】
また、外装ケース2の加締部7に係合する凸部21が絶縁部材9に設けられることで、外装ケース2の加締部7を利用して、コンデンサ本体1と絶縁部材9とを互いに固定することができ、コンデンサ本体1と絶縁部材9との間で生じるぐらつきが防止されるようになり、コンデンサCに振動が加わった際に、リード線6に加わる応力を低減させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0033】
例えば、前記実施例では、リード線6に対して、その基部のノッチ部13と中央部のクランク部15との3箇所の屈曲部位が形成されているが、リード線6に対してそれ以上の箇所の屈曲部を形成するようにしてもよい。
【0034】
また、前記実施例では、リード線6の実装基板接続部位26を、実装基板24と平行に配置しているが、これに限らず、実装基板24に対して所定角度をもって配置してもよい。例えば、リード線6の実装基板接続部位26の先端側をコンデンサの上方向に実装基板24から離間させるよう、所定角度をもって配置してもよく、また、リード線6の実装基板接続部位26の基部側をコンデンサの上方向に実装基板24から離間させるよう、所定角度をもって配置させても良い。リード線6の実装基板接続部位26を実装基板24に対して所定角度を持って配置し、部分的に実装基板接続部位26と実装基板24との間に部分的に間隙が形成され、この間隙にリフローはんだが回りこみむため接続性が向上する。
【符号の説明】
【0035】
1 コンデンサ本体
2 外装ケース
3 開口部
4 封口部材
5 コンデンサ素子
6 リード線
7 加締部
8 導出孔
9 絶縁部材
10 プレス治具
11 内型
12 外型
13 ノッチ部(第1屈曲部)
14 ノッチ形成部
15 クランク部(第2屈曲部)
16 クランク形成部
17 貫通孔
18 下面板部
19 側周板部
20 切欠部
21 凸部
22 台部
23 金属固定板(固定部)
24 実装基板
25 絶縁部材当接部位
26 実装基板接続部位
C コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子を有底筒状の外装ケース内に収納し、該外装ケースの開口部を封口部材により封口するとともに、該封口部材から導出されるリード線を有するコンデンサ本体と、該リード線が挿通される貫通孔が形成され、前記コンデンサ本体のリード線導出側に取り付けられる絶縁部材と、からなるチップ形コンデンサにおいて、
前記リード線の前記絶縁部材から導出される部位に複数の屈曲部が形成され、該複数の屈曲部を介して前記リード線が実装基板に接続されることを特徴とするチップ形コンデンサ。
【請求項2】
前記リード線は、複数の屈曲部を設けることにより、前記リード線を前記絶縁部材の下面に沿うように配置した絶縁部材当接部位と、前記実装基板に沿うように配置した実装基板接続部位と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のチップ形コンデンサ。
【請求項3】
前記絶縁部材の下面には、凸状をなす複数の台部が設けられており、前記リード線は、前記台部から離間して配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のチップ形コンデンサ。
【請求項4】
前記台部には、前記実装基板に接続される固定部が設けられることを特徴とする請求項3に記載のチップ形コンデンサ。
【請求項5】
前記外装ケースの開口部近傍には、該外装ケースを前記封口部材により密閉するための加締部が凹設されており、該加締部に係合する凸部が前記絶縁部材に設けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のチップ形コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77783(P2013−77783A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218309(P2011−218309)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)