チップ着脱式盛上げタップ
【課題】取付ねじの緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップを提供する。
【解決手段】シャンク12の先端部とチップ14の下端部との当接面28、30は、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部28a、30aと、その傾斜面28a、30aに連続して軸心C方向に延伸する垂直面部28b、30bとを、備えたものであることから、めねじの形成加工に際して十分な耐久性を保証できると共に取付ねじ22が緩むのを好適に抑制できる。
【解決手段】シャンク12の先端部とチップ14の下端部との当接面28、30は、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部28a、30aと、その傾斜面28a、30aに連続して軸心C方向に延伸する垂直面部28b、30bとを、備えたものであることから、めねじの形成加工に際して十分な耐久性を保証できると共に取付ねじ22が緩むのを好適に抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ着脱式盛上げタップに関し、特に、取付ねじの緩みを抑制すると共に耐久性を向上させるための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の機能を有する交換刃(チップ)がシャンクの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのシャンクと共に軸心まわりに回転駆動されることにより前記交換刃によって所定の加工を行う先端刃交換式工具が知られている。斯かる先端刃交換式工具の一例として、下穴にねじ込まれることによりめねじを形成するタップ部が、シャンクの先端に取付ねじにより取り付けられて成るチップ着脱式タップが提案されている。例えば、特許文献1に記載されたオイルホール付きチップ着脱式タップがそれである。斯かる技術によれば、タップ部が破損した際にそのタップ部のみを交換すればよく、シャンクの再使用が可能であることから、ランニングコストが低減できると共に廃棄物の発生を抑えることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−254427
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述したような従来のチップ着脱式タップにおいては、前記めねじの形成加工における正回転時すなわち前記タップ部を下穴にねじ入れる加工を行う際のトルクが比較的大きいため、継続使用によりその耐久性が低下するおそれがあった。また、前記めねじの形成加工における逆回転時すなわち前記タップ部を下穴からねじ戻す加工を行う際に、ガタが出る等して前記取付ねじが緩むおそれがあった。これらの不具合は、下穴の表層部にねじ山が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成する盛上げタップにおいて特に顕著である。このため、取付ねじの緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップの開発が求められていた。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、取付ねじの緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、下穴の表層部にねじ山が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するチップが、シャンクの先端部に取付ねじにより同軸に固定されて成るチップ着脱式盛上げタップであって、前記シャンクの先端部とチップとの当接面は、軸心に垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部と、その傾斜面部に連続して軸心方向に延伸する垂直面部とを、備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、下穴の表層部にねじ山が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するチップが、シャンクの先端部に取付ねじにより同軸に固定されて成るチップ着脱式盛上げタップであって、前記シャンクの先端部とチップとの当接面は、軸心に垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部と、その傾斜面部に連続して軸心方向に延伸する垂直面部とを、備えたものであることから、前記めねじの形成加工に際して十分な耐久性を保証できると共に取付ねじが緩むのを好適に抑制できる。すなわち、取付ねじの緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップを提供することができる。
【0008】
ここで、好適には、前記傾斜面部は、前記めねじの形成において前記チップを前記下穴からねじ戻す際、前記シャンクの先端部側の当接面が前記チップ側の当接面を押すような相対位置関係とされたものである。このようにすれば、前記めねじの形成における逆回転時に前記取付ねじが緩むのを好適に抑制することができる。
【0009】
また、好適には、前記垂直面部は、前記めねじの形成において前記チップを前記下穴にねじ入れる際、前記シャンクの先端部側の当接面が前記チップ側の当接面を押すような相対位置関係とされたものである。このようにすれば、前記めねじの形成における正回転時に十分な耐久性を保証することができる。
【0010】
また、好適には、前記傾斜面部は、軸心に垂直な平面に対して20〜40°の角度を成すものである。このようにすれば、前記めねじの形成における逆回転時に前記取付ねじが緩むのを好適に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明に用いる図面に関して、各部の寸法比等は必ずしも正確には描かれていない。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例であるチップ着脱式盛上げタップ10(以下、単にタップ10という)の構成を説明する正面図である。また、図2は、そのタップ10の一部を軸心を含む平面で切断して示す断面図である。これら図1及び図2に示すように、本実施例のタップ10は、円柱形状(円筒形状)のシャンク12と、そのシャンク12の先端部に一体的に取り付けられて使用されるチップ14とを、備えて構成されている。このチップ14の外周部には、加工すべきめねじに対応するねじ山(おねじ)16が形成されており、対象となる下穴の表層部にそのねじ山16が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するタップ部(盛上げタップ)として機能する。
【0013】
図2に示すように、上記チップ14の軸心には取付穴18が貫通して形成されている。また、上記シャンク12の先端部の軸心にはねじ穴20が形成されており、取付ねじ22が上記チップ14の取付穴18を貫通してシャンク12のねじ穴20に螺合されることにより、そのチップ14がシャンク12に着脱可能に一体的に固定されるようになっている。ここで、図1に示すように本実施例のチップ着脱式盛上げタップ10は右ねじ形成用のタップであり、上記ねじ穴20及び取付ねじ22は、加工に際しての抵抗で締り勝手となるように右ねじとされている。また、上記取付ねじ22の頭部24はテーパ形状の皿頭で、上記取付穴18の開口部に収容穴として設けられたテーパ穴部26内に完全に収容されるようになっており、止り穴に対しても上記チップ14により穴底の近傍までめねじを加工できるとともに、テーパ形状の頭部24とテーパ穴部26との係合によりチップ14は取付ねじ22、更にはシャンク12と同軸(同心)に位置決めされて固定されるようになっている。
【0014】
以上のように構成されたタップ10では、塑性変形によるめねじの形成(盛上げ)加工が行われる。すなわち、めねじの形成対象となる下穴に対して前記シャンク12がそのシャンク12側から見て右まわりに回転駆動されつつ軸方向へリード送りされることにより、そのシャンク12の先端部に同軸に固定された前記チップ14がその下穴内にねじ込まれ、そのチップ14の外周部に形成されたねじ山16がその下穴の表層部(内周面)に食い込んで塑性変形させることにより対象となるめねじがその下穴に形成される。このような盛上げタップ10による加工は、展延性に優れた材料におけるめねじの形成に好適に適用されるものであり、切りくずを出さずに精度の高いめねじを形成することができるという利点がある反面、そのめねじの形成において前記タップ10に比較的大きなトルクがかかるものである。
【0015】
図3は、本実施例のタップ10における前記シャンク12の先端部とチップ14との当接部分について詳しく説明する斜視図であり、簡略化のために前記チップ14に形成されたねじ山16を省略すると共に全体を模式的に示している。この図3に示すように、本実施例のタップ10において前記シャンク12の先端部とチップ14の下端部とは、それぞれに相対向するように形成された一対の当接面すなわちシャンク側当接面28及びチップ側当接面30(以下、特に区別しない場合には当接面28、30という)が互いに当接させられた状態で、前記取付ねじ22により相互に固定されている。また、図3に示すように、この当接面28、30は、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部28a、30aと、その傾斜面28a、30aに連続して軸心C方向に延伸する垂直面部28b、30bとを、それぞれ互いに当接させられるように備えている。また、本実施例のタップ10では、図3に示すように、軸心Cを中心として180°の回転対称となるように一対の傾斜面部28a、30a及び垂直面部28b、30bが前記シャンク12の先端部及びチップ14の下端部それぞれに形成されている。
【0016】
ここで、上記傾斜面部28a、30aは、前記タップ10によるめねじの形成において前記チップ14を加工対象となる下穴からねじ戻す際、上記シャンク側当接面28における傾斜面部28aが上記チップ側傾斜面30における傾斜面部30aを押すような相対位置関係とされたものである。すなわち、右ねじを形成するために対象となる下穴に右まわりにねじ込まれる(左まわりにねじ戻される)本実施例のタップ10において、上記傾斜面部28a、30aは、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の右まわりの上り坂となるように形成されたものである。また、この傾斜面部28a、30aは、好適には、軸心Cに垂直な平面に対して20〜40°の角度(例えば30°)を成すように構成されたものである。なお、この軸心Cに垂直な平面に対する傾斜面部28a、30aの角度が20°未満である場合には、前記チップ14を加工対象となる下穴からねじ戻す際において上記シャンク側当接面28における傾斜面部28aが上記チップ側傾斜面30における傾斜面部30aを押す力が小さくなる一方、40°より大きい場合には軸心方向(長手方向)の寸法が大きくなり過ぎて強度が低下することが考えられる。
【0017】
また、前記垂直面部28b、30bは、前記タップ10によるめねじの形成において前記チップ14を加工対象となる下穴にねじ入れる際、前記シャンク側当接面28における垂直面部28bが前記チップ側当接面30における垂直面部30bを押すような相対位置関係とされたものである。すなわち、右ねじを形成するために対象となる下穴に右まわりにねじ込まれる本実施例のタップ10において、前記シャンク側当接面28における垂直面部28bは、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の時計回りの方向側に形成されたものである。また、前記チップ側当接面30における垂直面部30bは、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の反時計回りの方向側に形成されたものである。
【0018】
なお、以上の説明では、図1に示すように右ねじを形成するために対象となる下穴に右まわりにねじ込まれるタップ10に本発明が適用された例を説明したが、左ねじを形成するために対象となる下穴に左まわりにねじ込まれるタップにも本発明は好適に適用される。図4は、前記タップ10と同様の構成を備えた左ねじ加工用のチップ着脱式盛上げタップ10′における前記シャンク12の先端部とチップ14との当接部分について詳しく説明する斜視図であり、前述の図3に相当するものである。この図4に示すように、左ねじを形成するために対象となる下穴に左まわりにねじ込まれるタップ10′では、前記シャンク側当接面28′及びチップ側当接面30′が、前記右ねじ加工用の前記タップ10におけるシャンク側当接面28及びチップ側当接面30に対して左右対称となるように形成される。すなわち、上記傾斜面部28a′、30a′は、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の左まわりの上り坂となるように形成されたものである。また、前記シャンク側当接面28′における垂直面部28b′は、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の反時計回りの方向側に形成されたものである。また、前記チップ側当接面30′における垂直面部30b′は、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の時計回りの方向側に形成されたものである。
【0019】
このように、本実施例によれば、下穴の表層部にねじ山16が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するチップ14が、シャンク12の先端部に取付ねじ22により同軸に固定されて成るチップ着脱式盛上げタップ10であって、前記シャンク12の先端部とチップ14の下端部との当接面28、30は、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部28a、30aと、その傾斜面28a、30aに連続して軸心C方向に延伸する垂直面部28b、30bとを、備えたものであることから、前記めねじの形成加工に際して十分な耐久性を保証できると共に取付ねじ22が緩むのを好適に抑制できる。すなわち、取付ねじ22の緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップ10を提供することができる。
【0020】
また、前記傾斜面部28a、30aは、前記めねじの形成において前記チップ14を前記下穴からねじ戻す際、前記シャンク側当接面28が前記チップ側当接面30を押すような相対位置関係とされたものであるため、前記めねじの形成における逆回転時に前記取付ねじ22が緩むのを好適に抑制することができる。
【0021】
また、前記垂直面部28b、30bは、前記めねじの形成において前記チップ14を前記下穴にねじ入れる際、前記シャンク側当接面28が前記チップ側当接面30を押すような相対位置関係とされたものであるため、前記めねじの形成における正回転時に十分な耐久性を保証することができる。
【0022】
また、前記傾斜面部28a、30aは、軸心Cに垂直な平面に対して20〜40°の角度を成すものであるため、前記めねじの形成における逆回転時に前記取付ねじ22が緩むのを好適に抑制することができる。
【0023】
続いて、本発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】
図5は、本発明の他の実施例であるチップ着脱式盛上げタップ50(以下、単にタップ50という)の構成を説明する正面図である。この図5に示すように、本実施例のタップ50は、図1乃至図4を用いて前述したタップ10と同様のシャンク12及びチップ14を備えて構成されたものであり、それらシャンク12とチップ14との当接部分における構成が前記タップ10とは異なる。以下、図6乃至図11を用いて、本実施例のタップ50におけるシャンク12とチップ14との当接部分の構成を詳しく説明する。
【0025】
図6は、上記タップ50におけるシャンク12とチップ14との当接部分の構成を詳しく説明するために、そのタップ50からチップ14を取り外した状態におけるシャンク12の先端部を示す正面図である。また、図7は、図6のシャンク12を矢印VIIの方向から見た側面図であり、図8は、図6のシャンク12を矢印VIIIの方向から見た平面図である。これらの図に示すように、本実施例のタップ50に備えられたシャンク12における前記チップ14との当接部は、そのチップ14側へ突出して設けられた突出部52と、そのシャンク12側へ陥没して設けられた陥没部54と、それら突出部52及び陥没部54に連続して設けられた、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す一対の傾斜面部56とを、備えている。この傾斜面部56は、好適には、前記タップ10における傾斜面部28a、30aと同様に、軸心Cに垂直な平面に対して20〜40°の角度を成すものである。また、上記突出部52における一対の側壁(外壁)52aは、上記傾斜面部56に連続して軸心C方向に延伸するように設けられている。また、上記陥没部54における一対の側壁(内壁)54aも同様に、上記傾斜面部56に連続して軸心C方向に延伸するように設けられている。すなわち、本実施例においては、上記突出部52の側面52a及び陥没部54の側面54aが上記傾斜面部56に連続して軸心C方向に延伸する垂直面部として機能する。
【0026】
図9は、前記タップ50におけるシャンク12とチップ14との当接部分の構成を詳しく説明するために、そのタップ50からシャンク12を取り外した状態におけるチップ14の下端部を示す正面図である。また、図10は、図9のチップ14を矢印Xの方向から見た側面図であり、図11は、図9のチップ14を矢印XIの方向から見た底面図である。これらの図に示すように、本実施例のタップ50に備えられたチップ14における前記シャンク12との当接部は、上記シャンク12における陥没部54に対応してそのシャンク12側へ突出して設けられた突出部58と、上記シャンク12における突出部52に対応して上記チップ14側へ陥没して設けられた陥没部60と、上記シャンク12における傾斜面部56と相対向するように上記突出部58及び陥没部60に連続して設けられた、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す一対の傾斜面部62とを、備えている。上記突出部58における一対の側壁(外壁)58aは、上記傾斜面部62に連続して軸心C方向に延伸するように設けられている。また、上記陥没部60における一対の側壁(内壁)60aも同様に、上記傾斜面部62に連続して軸心C方向に延伸するように設けられている。すなわち、本実施例においては、上記突出部58の側面58a及び陥没部60の側面60aが上記傾斜面部62に連続して軸心C方向に延伸する垂直面部として機能する。
【0027】
このように、本実施例によれば、前記シャンク12の先端部とチップ14との当接面は、軸心に垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部56、62と、その傾斜面部56、62に連続して軸心C方向に延伸する垂直面部としての突出部の側面52a、58a及び陥没部の側面54a、60aを、備えたものであることから、前記めねじの形成加工に際して十分な耐久性を保証できると共に取付ねじ22が緩むのを好適に抑制できる。すなわち、取付ねじ22の緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップ50を提供することができる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0029】
例えば、前述の実施例において、前記タップ10等における前記シャンク12とチップ14との当接面は、それぞれに対応する当接面が形成されて全面にて当接するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、斯かるシャンク12とチップ14との当接面はその一部が非接触とされた状態でそれらシャンク12及びチップ14が相互に固定されるものであってもよい。すなわち、軸心方向乃至周方向に所定の遊びを備えたものであっても本発明の一応の効果を奏する。
【0030】
また、前述の実施例では、ストレートシャンク12を備えたタップ10等について説明したが、例えばテーパシャンク等の他の態様のシャンクを備えた盛上げタップにも本発明は好適に適用される。更に、斯かるシャンクは自動工具交換装置により主軸等に自動的に着脱されるものでも良い等、種々の態様が可能である。
【0031】
また、本発明とは直接関係ないが、シャンク側の切りくず排出用の溝の長さを可及的に短くした切削タップ、或いは切りくず排出溝が比較的浅いリーマ等は、盛上げタップに比較して切削トルク乃至戻しトルクは十分に小さいものの、本発明と同様の構成を適用することが可能である。
【0032】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例であるチップ着脱式盛上げタップの構成を説明する正面図である。
【図2】図1のチップ着脱式盛上げタップの一部を軸心を含む平面で切断して示す断面図である。
【図3】図1のチップ着脱式盛上げタップにおけるシャンクの先端部とチップとの当接部分について詳しく説明する斜視図である。
【図4】図1のチップ着脱式盛上げタップと同様の構成を備えた左ねじ加工用のチップ着脱式盛上げタップにおけるシャンクの先端部とチップとの当接部分について詳しく説明する斜視図である。
【図5】本発明の他の実施例であるチップ着脱式盛上げタップの構成を説明する正面図である。
【図6】図5のチップ着脱式盛上げタップにおけるシャンクとチップとの当接部分の構成を詳しく説明するために、そのタップからチップを取り外した状態におけるシャンクの先端部を示す正面図である。
【図7】図6のシャンクを矢印VIIの方向から見た側面図である。
【図8】図6のシャンクを矢印VIIIの方向から見た平面図である。
【図9】図5のチップ着脱式盛上げタップにおけるシャンクとチップとの当接部分の構成を詳しく説明するために、そのタップからシャンクを取り外した状態におけるチップの下端部を示す正面図である。
【図10】図9のチップを矢印Xの方向から見た側面図である。
【図11】図9のチップを矢印XIの方向から見た平面図である。
【符号の説明】
【0034】
10、10′、50:チップ着脱式盛上げタップ
12:シャンク
14:チップ
16:ねじ山
22:取付ねじ
28、28′:シャンク側当接面
30、30′:チップ側当接面
28a、30a、28a′、30a′:傾斜面部
28b、30b、28b′、30b′:垂直面部
52a、58a:突出部の側面(垂直面部)
54a、60a:陥没部の側面(垂直面部)
56、62:傾斜面部
C:軸心
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ着脱式盛上げタップに関し、特に、取付ねじの緩みを抑制すると共に耐久性を向上させるための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の機能を有する交換刃(チップ)がシャンクの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのシャンクと共に軸心まわりに回転駆動されることにより前記交換刃によって所定の加工を行う先端刃交換式工具が知られている。斯かる先端刃交換式工具の一例として、下穴にねじ込まれることによりめねじを形成するタップ部が、シャンクの先端に取付ねじにより取り付けられて成るチップ着脱式タップが提案されている。例えば、特許文献1に記載されたオイルホール付きチップ着脱式タップがそれである。斯かる技術によれば、タップ部が破損した際にそのタップ部のみを交換すればよく、シャンクの再使用が可能であることから、ランニングコストが低減できると共に廃棄物の発生を抑えることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−254427
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述したような従来のチップ着脱式タップにおいては、前記めねじの形成加工における正回転時すなわち前記タップ部を下穴にねじ入れる加工を行う際のトルクが比較的大きいため、継続使用によりその耐久性が低下するおそれがあった。また、前記めねじの形成加工における逆回転時すなわち前記タップ部を下穴からねじ戻す加工を行う際に、ガタが出る等して前記取付ねじが緩むおそれがあった。これらの不具合は、下穴の表層部にねじ山が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成する盛上げタップにおいて特に顕著である。このため、取付ねじの緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップの開発が求められていた。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、取付ねじの緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、下穴の表層部にねじ山が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するチップが、シャンクの先端部に取付ねじにより同軸に固定されて成るチップ着脱式盛上げタップであって、前記シャンクの先端部とチップとの当接面は、軸心に垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部と、その傾斜面部に連続して軸心方向に延伸する垂直面部とを、備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、下穴の表層部にねじ山が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するチップが、シャンクの先端部に取付ねじにより同軸に固定されて成るチップ着脱式盛上げタップであって、前記シャンクの先端部とチップとの当接面は、軸心に垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部と、その傾斜面部に連続して軸心方向に延伸する垂直面部とを、備えたものであることから、前記めねじの形成加工に際して十分な耐久性を保証できると共に取付ねじが緩むのを好適に抑制できる。すなわち、取付ねじの緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップを提供することができる。
【0008】
ここで、好適には、前記傾斜面部は、前記めねじの形成において前記チップを前記下穴からねじ戻す際、前記シャンクの先端部側の当接面が前記チップ側の当接面を押すような相対位置関係とされたものである。このようにすれば、前記めねじの形成における逆回転時に前記取付ねじが緩むのを好適に抑制することができる。
【0009】
また、好適には、前記垂直面部は、前記めねじの形成において前記チップを前記下穴にねじ入れる際、前記シャンクの先端部側の当接面が前記チップ側の当接面を押すような相対位置関係とされたものである。このようにすれば、前記めねじの形成における正回転時に十分な耐久性を保証することができる。
【0010】
また、好適には、前記傾斜面部は、軸心に垂直な平面に対して20〜40°の角度を成すものである。このようにすれば、前記めねじの形成における逆回転時に前記取付ねじが緩むのを好適に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明に用いる図面に関して、各部の寸法比等は必ずしも正確には描かれていない。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例であるチップ着脱式盛上げタップ10(以下、単にタップ10という)の構成を説明する正面図である。また、図2は、そのタップ10の一部を軸心を含む平面で切断して示す断面図である。これら図1及び図2に示すように、本実施例のタップ10は、円柱形状(円筒形状)のシャンク12と、そのシャンク12の先端部に一体的に取り付けられて使用されるチップ14とを、備えて構成されている。このチップ14の外周部には、加工すべきめねじに対応するねじ山(おねじ)16が形成されており、対象となる下穴の表層部にそのねじ山16が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するタップ部(盛上げタップ)として機能する。
【0013】
図2に示すように、上記チップ14の軸心には取付穴18が貫通して形成されている。また、上記シャンク12の先端部の軸心にはねじ穴20が形成されており、取付ねじ22が上記チップ14の取付穴18を貫通してシャンク12のねじ穴20に螺合されることにより、そのチップ14がシャンク12に着脱可能に一体的に固定されるようになっている。ここで、図1に示すように本実施例のチップ着脱式盛上げタップ10は右ねじ形成用のタップであり、上記ねじ穴20及び取付ねじ22は、加工に際しての抵抗で締り勝手となるように右ねじとされている。また、上記取付ねじ22の頭部24はテーパ形状の皿頭で、上記取付穴18の開口部に収容穴として設けられたテーパ穴部26内に完全に収容されるようになっており、止り穴に対しても上記チップ14により穴底の近傍までめねじを加工できるとともに、テーパ形状の頭部24とテーパ穴部26との係合によりチップ14は取付ねじ22、更にはシャンク12と同軸(同心)に位置決めされて固定されるようになっている。
【0014】
以上のように構成されたタップ10では、塑性変形によるめねじの形成(盛上げ)加工が行われる。すなわち、めねじの形成対象となる下穴に対して前記シャンク12がそのシャンク12側から見て右まわりに回転駆動されつつ軸方向へリード送りされることにより、そのシャンク12の先端部に同軸に固定された前記チップ14がその下穴内にねじ込まれ、そのチップ14の外周部に形成されたねじ山16がその下穴の表層部(内周面)に食い込んで塑性変形させることにより対象となるめねじがその下穴に形成される。このような盛上げタップ10による加工は、展延性に優れた材料におけるめねじの形成に好適に適用されるものであり、切りくずを出さずに精度の高いめねじを形成することができるという利点がある反面、そのめねじの形成において前記タップ10に比較的大きなトルクがかかるものである。
【0015】
図3は、本実施例のタップ10における前記シャンク12の先端部とチップ14との当接部分について詳しく説明する斜視図であり、簡略化のために前記チップ14に形成されたねじ山16を省略すると共に全体を模式的に示している。この図3に示すように、本実施例のタップ10において前記シャンク12の先端部とチップ14の下端部とは、それぞれに相対向するように形成された一対の当接面すなわちシャンク側当接面28及びチップ側当接面30(以下、特に区別しない場合には当接面28、30という)が互いに当接させられた状態で、前記取付ねじ22により相互に固定されている。また、図3に示すように、この当接面28、30は、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部28a、30aと、その傾斜面28a、30aに連続して軸心C方向に延伸する垂直面部28b、30bとを、それぞれ互いに当接させられるように備えている。また、本実施例のタップ10では、図3に示すように、軸心Cを中心として180°の回転対称となるように一対の傾斜面部28a、30a及び垂直面部28b、30bが前記シャンク12の先端部及びチップ14の下端部それぞれに形成されている。
【0016】
ここで、上記傾斜面部28a、30aは、前記タップ10によるめねじの形成において前記チップ14を加工対象となる下穴からねじ戻す際、上記シャンク側当接面28における傾斜面部28aが上記チップ側傾斜面30における傾斜面部30aを押すような相対位置関係とされたものである。すなわち、右ねじを形成するために対象となる下穴に右まわりにねじ込まれる(左まわりにねじ戻される)本実施例のタップ10において、上記傾斜面部28a、30aは、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の右まわりの上り坂となるように形成されたものである。また、この傾斜面部28a、30aは、好適には、軸心Cに垂直な平面に対して20〜40°の角度(例えば30°)を成すように構成されたものである。なお、この軸心Cに垂直な平面に対する傾斜面部28a、30aの角度が20°未満である場合には、前記チップ14を加工対象となる下穴からねじ戻す際において上記シャンク側当接面28における傾斜面部28aが上記チップ側傾斜面30における傾斜面部30aを押す力が小さくなる一方、40°より大きい場合には軸心方向(長手方向)の寸法が大きくなり過ぎて強度が低下することが考えられる。
【0017】
また、前記垂直面部28b、30bは、前記タップ10によるめねじの形成において前記チップ14を加工対象となる下穴にねじ入れる際、前記シャンク側当接面28における垂直面部28bが前記チップ側当接面30における垂直面部30bを押すような相対位置関係とされたものである。すなわち、右ねじを形成するために対象となる下穴に右まわりにねじ込まれる本実施例のタップ10において、前記シャンク側当接面28における垂直面部28bは、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の時計回りの方向側に形成されたものである。また、前記チップ側当接面30における垂直面部30bは、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の反時計回りの方向側に形成されたものである。
【0018】
なお、以上の説明では、図1に示すように右ねじを形成するために対象となる下穴に右まわりにねじ込まれるタップ10に本発明が適用された例を説明したが、左ねじを形成するために対象となる下穴に左まわりにねじ込まれるタップにも本発明は好適に適用される。図4は、前記タップ10と同様の構成を備えた左ねじ加工用のチップ着脱式盛上げタップ10′における前記シャンク12の先端部とチップ14との当接部分について詳しく説明する斜視図であり、前述の図3に相当するものである。この図4に示すように、左ねじを形成するために対象となる下穴に左まわりにねじ込まれるタップ10′では、前記シャンク側当接面28′及びチップ側当接面30′が、前記右ねじ加工用の前記タップ10におけるシャンク側当接面28及びチップ側当接面30に対して左右対称となるように形成される。すなわち、上記傾斜面部28a′、30a′は、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の左まわりの上り坂となるように形成されたものである。また、前記シャンク側当接面28′における垂直面部28b′は、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の反時計回りの方向側に形成されたものである。また、前記チップ側当接面30′における垂直面部30b′は、前記シャンク12側からチップ14側へ見た場合の時計回りの方向側に形成されたものである。
【0019】
このように、本実施例によれば、下穴の表層部にねじ山16が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するチップ14が、シャンク12の先端部に取付ねじ22により同軸に固定されて成るチップ着脱式盛上げタップ10であって、前記シャンク12の先端部とチップ14の下端部との当接面28、30は、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部28a、30aと、その傾斜面28a、30aに連続して軸心C方向に延伸する垂直面部28b、30bとを、備えたものであることから、前記めねじの形成加工に際して十分な耐久性を保証できると共に取付ねじ22が緩むのを好適に抑制できる。すなわち、取付ねじ22の緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップ10を提供することができる。
【0020】
また、前記傾斜面部28a、30aは、前記めねじの形成において前記チップ14を前記下穴からねじ戻す際、前記シャンク側当接面28が前記チップ側当接面30を押すような相対位置関係とされたものであるため、前記めねじの形成における逆回転時に前記取付ねじ22が緩むのを好適に抑制することができる。
【0021】
また、前記垂直面部28b、30bは、前記めねじの形成において前記チップ14を前記下穴にねじ入れる際、前記シャンク側当接面28が前記チップ側当接面30を押すような相対位置関係とされたものであるため、前記めねじの形成における正回転時に十分な耐久性を保証することができる。
【0022】
また、前記傾斜面部28a、30aは、軸心Cに垂直な平面に対して20〜40°の角度を成すものであるため、前記めねじの形成における逆回転時に前記取付ねじ22が緩むのを好適に抑制することができる。
【0023】
続いて、本発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】
図5は、本発明の他の実施例であるチップ着脱式盛上げタップ50(以下、単にタップ50という)の構成を説明する正面図である。この図5に示すように、本実施例のタップ50は、図1乃至図4を用いて前述したタップ10と同様のシャンク12及びチップ14を備えて構成されたものであり、それらシャンク12とチップ14との当接部分における構成が前記タップ10とは異なる。以下、図6乃至図11を用いて、本実施例のタップ50におけるシャンク12とチップ14との当接部分の構成を詳しく説明する。
【0025】
図6は、上記タップ50におけるシャンク12とチップ14との当接部分の構成を詳しく説明するために、そのタップ50からチップ14を取り外した状態におけるシャンク12の先端部を示す正面図である。また、図7は、図6のシャンク12を矢印VIIの方向から見た側面図であり、図8は、図6のシャンク12を矢印VIIIの方向から見た平面図である。これらの図に示すように、本実施例のタップ50に備えられたシャンク12における前記チップ14との当接部は、そのチップ14側へ突出して設けられた突出部52と、そのシャンク12側へ陥没して設けられた陥没部54と、それら突出部52及び陥没部54に連続して設けられた、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す一対の傾斜面部56とを、備えている。この傾斜面部56は、好適には、前記タップ10における傾斜面部28a、30aと同様に、軸心Cに垂直な平面に対して20〜40°の角度を成すものである。また、上記突出部52における一対の側壁(外壁)52aは、上記傾斜面部56に連続して軸心C方向に延伸するように設けられている。また、上記陥没部54における一対の側壁(内壁)54aも同様に、上記傾斜面部56に連続して軸心C方向に延伸するように設けられている。すなわち、本実施例においては、上記突出部52の側面52a及び陥没部54の側面54aが上記傾斜面部56に連続して軸心C方向に延伸する垂直面部として機能する。
【0026】
図9は、前記タップ50におけるシャンク12とチップ14との当接部分の構成を詳しく説明するために、そのタップ50からシャンク12を取り外した状態におけるチップ14の下端部を示す正面図である。また、図10は、図9のチップ14を矢印Xの方向から見た側面図であり、図11は、図9のチップ14を矢印XIの方向から見た底面図である。これらの図に示すように、本実施例のタップ50に備えられたチップ14における前記シャンク12との当接部は、上記シャンク12における陥没部54に対応してそのシャンク12側へ突出して設けられた突出部58と、上記シャンク12における突出部52に対応して上記チップ14側へ陥没して設けられた陥没部60と、上記シャンク12における傾斜面部56と相対向するように上記突出部58及び陥没部60に連続して設けられた、軸心Cに垂直な平面に対して所定の角度を成す一対の傾斜面部62とを、備えている。上記突出部58における一対の側壁(外壁)58aは、上記傾斜面部62に連続して軸心C方向に延伸するように設けられている。また、上記陥没部60における一対の側壁(内壁)60aも同様に、上記傾斜面部62に連続して軸心C方向に延伸するように設けられている。すなわち、本実施例においては、上記突出部58の側面58a及び陥没部60の側面60aが上記傾斜面部62に連続して軸心C方向に延伸する垂直面部として機能する。
【0027】
このように、本実施例によれば、前記シャンク12の先端部とチップ14との当接面は、軸心に垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部56、62と、その傾斜面部56、62に連続して軸心C方向に延伸する垂直面部としての突出部の側面52a、58a及び陥没部の側面54a、60aを、備えたものであることから、前記めねじの形成加工に際して十分な耐久性を保証できると共に取付ねじ22が緩むのを好適に抑制できる。すなわち、取付ねじ22の緩みを抑制すると共に耐久性に優れたチップ着脱式盛上げタップ50を提供することができる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0029】
例えば、前述の実施例において、前記タップ10等における前記シャンク12とチップ14との当接面は、それぞれに対応する当接面が形成されて全面にて当接するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、斯かるシャンク12とチップ14との当接面はその一部が非接触とされた状態でそれらシャンク12及びチップ14が相互に固定されるものであってもよい。すなわち、軸心方向乃至周方向に所定の遊びを備えたものであっても本発明の一応の効果を奏する。
【0030】
また、前述の実施例では、ストレートシャンク12を備えたタップ10等について説明したが、例えばテーパシャンク等の他の態様のシャンクを備えた盛上げタップにも本発明は好適に適用される。更に、斯かるシャンクは自動工具交換装置により主軸等に自動的に着脱されるものでも良い等、種々の態様が可能である。
【0031】
また、本発明とは直接関係ないが、シャンク側の切りくず排出用の溝の長さを可及的に短くした切削タップ、或いは切りくず排出溝が比較的浅いリーマ等は、盛上げタップに比較して切削トルク乃至戻しトルクは十分に小さいものの、本発明と同様の構成を適用することが可能である。
【0032】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例であるチップ着脱式盛上げタップの構成を説明する正面図である。
【図2】図1のチップ着脱式盛上げタップの一部を軸心を含む平面で切断して示す断面図である。
【図3】図1のチップ着脱式盛上げタップにおけるシャンクの先端部とチップとの当接部分について詳しく説明する斜視図である。
【図4】図1のチップ着脱式盛上げタップと同様の構成を備えた左ねじ加工用のチップ着脱式盛上げタップにおけるシャンクの先端部とチップとの当接部分について詳しく説明する斜視図である。
【図5】本発明の他の実施例であるチップ着脱式盛上げタップの構成を説明する正面図である。
【図6】図5のチップ着脱式盛上げタップにおけるシャンクとチップとの当接部分の構成を詳しく説明するために、そのタップからチップを取り外した状態におけるシャンクの先端部を示す正面図である。
【図7】図6のシャンクを矢印VIIの方向から見た側面図である。
【図8】図6のシャンクを矢印VIIIの方向から見た平面図である。
【図9】図5のチップ着脱式盛上げタップにおけるシャンクとチップとの当接部分の構成を詳しく説明するために、そのタップからシャンクを取り外した状態におけるチップの下端部を示す正面図である。
【図10】図9のチップを矢印Xの方向から見た側面図である。
【図11】図9のチップを矢印XIの方向から見た平面図である。
【符号の説明】
【0034】
10、10′、50:チップ着脱式盛上げタップ
12:シャンク
14:チップ
16:ねじ山
22:取付ねじ
28、28′:シャンク側当接面
30、30′:チップ側当接面
28a、30a、28a′、30a′:傾斜面部
28b、30b、28b′、30b′:垂直面部
52a、58a:突出部の側面(垂直面部)
54a、60a:陥没部の側面(垂直面部)
56、62:傾斜面部
C:軸心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下穴の表層部にねじ山が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するチップが、シャンクの先端部に取付ねじにより同軸に固定されて成るチップ着脱式盛上げタップであって、
前記シャンクの先端部とチップとの当接面は、
軸心に垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部と、
該傾斜面部に連続して軸心方向に延伸する垂直面部と
を、備えたものであることを特徴とするチップ着脱式盛上げタップ。
【請求項2】
前記傾斜面部は、前記めねじの形成において前記チップを前記下穴からねじ戻す際、前記シャンクの先端部側の当接面が前記チップ側の当接面を押すような相対位置関係とされたものである請求項1に記載のチップ着脱式盛上げタップ。
【請求項3】
前記垂直面部は、前記めねじの形成において前記チップを前記下穴にねじ入れる際、前記シャンクの先端部側の当接面が前記チップ側の当接面を押すような相対位置関係とされたものである請求項1又は2に記載のチップ着脱式盛上げタップ。
【請求項4】
前記傾斜面部は、軸心に垂直な平面に対して20〜40°の角度を成すものである請求項1から3の何れか1項に記載のチップ着脱式盛上げタップ。
【請求項1】
下穴の表層部にねじ山が食い込んで塑性変形させることによりめねじを形成するチップが、シャンクの先端部に取付ねじにより同軸に固定されて成るチップ着脱式盛上げタップであって、
前記シャンクの先端部とチップとの当接面は、
軸心に垂直な平面に対して所定の角度を成す傾斜面部と、
該傾斜面部に連続して軸心方向に延伸する垂直面部と
を、備えたものであることを特徴とするチップ着脱式盛上げタップ。
【請求項2】
前記傾斜面部は、前記めねじの形成において前記チップを前記下穴からねじ戻す際、前記シャンクの先端部側の当接面が前記チップ側の当接面を押すような相対位置関係とされたものである請求項1に記載のチップ着脱式盛上げタップ。
【請求項3】
前記垂直面部は、前記めねじの形成において前記チップを前記下穴にねじ入れる際、前記シャンクの先端部側の当接面が前記チップ側の当接面を押すような相対位置関係とされたものである請求項1又は2に記載のチップ着脱式盛上げタップ。
【請求項4】
前記傾斜面部は、軸心に垂直な平面に対して20〜40°の角度を成すものである請求項1から3の何れか1項に記載のチップ着脱式盛上げタップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−149207(P2010−149207A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328289(P2008−328289)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
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