説明

チャッキング装置、ブラシレスモータ、及びディスク駆動装置

【課題】シャフトの軸線と磁性部材の上面との直角度を高精度に保ち回転精度を向上させる。
【解決手段】シャフト41に固定され、中央に円孔を有する円板状のディスクを載置する載置面を有するディスク載置部42と、前記ディスク載置部の上側において、前記ディスクの内縁部を支持する支持面を有するディスク内縁支持部43と、前記シャフト41に固定された磁性部材44と、を備え、前記磁性部材は、中央に円孔を有する円板部441と、前記円板部441の内縁部から下方へのびて前記シャフト41に固定される円筒部442とを有し、前記円筒部442の径方向の厚みは、前記円板部441の軸方向の厚みよりも薄い。シャフト41と磁性部材44とを固定するときに、シャフト41及び磁性部材44にかかる荷重を小さくし、固定時にシャフト41の軸線9と磁性部材44の上面との直角度を高精度に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャッキング装置、ブラシレスモータ、及びディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置等のディスク駆動装置には、ディスクを回転させるためのブラシレスモータが搭載されている。ブラシレスモータは、回転部とともに回転するチャッキング装置を有する。ディスク駆動装置は、チャッキング装置とその上方に設けられたクランパとの間にディスクを保持しつつ、ブラシレスモータを駆動させることにより、ディスクを回転させる。
【0003】
このようなチャッキング装置には、シャフトに固定された移動規制部及びクランプマグネットを有するものがある。クランプマグネットは、例えば、クランパとの間に磁気的な吸引力を発生させ、クランパをチャッキング装置側に引き付ける役割を果たす。特開2008−210421号公報には、移動規制部を有する従来のチャッキング装置の一例が開示されている。
【特許文献1】特開2008−210421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャッキング装置において、移動規制部は、圧入等によりシャフトに固定される。しかしながら、シャフトと移動規制部とを圧入等により固定するときには、シャフト及び移動規制部の双方に大きな荷重を与えることとなる。このとき、シャフトの軸線と移動規制部の表面(上面)との直角度が悪くなる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、シャフトと移動規制部とを固定するときに、シャフト及び移動規制部にかかる荷重を小さくし、固定時にシャフトの軸線と移動規制部の表面との直角度を保つことができるチャッキング装置を提供することである。さらに、それを含んでなるブラシレスモータ、及びディスク駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、中心軸に沿って上下方向に配置されたシャフトと、前記シャフトに固定され、中央に円孔を有する円板状のディスクを載置する載置面を有するディスク載置部と、前記ディスク載置部の上側において、前記ディスクの内縁部を支持する支持面を有するディスク内縁支持部と、前記シャフトに固定された磁性部材と、を備え、前記磁性部材は、中央に円孔を有する円板部と、前記円板部の内縁部から下方へのびて前記シャフトに固定される円筒部とを有し、前記円筒部の径方向の厚みは、前記円板部の軸方向の厚みよりも薄いチャッキング装置である。
【0007】
本願の第2発明は、静止部と、前記静止部に対して前記中心軸を中心として回転自在に支持された回転部と、前記静止部と前記回転部との間に前記中心軸を中心とするトルクを発生させるトルク発生部と、前記回転部とともに回転する第1発明のチャッキング装置と、を備えたブラシレスモータである。
【0008】
本願の第3発明は、第2発明のブラシレスモータと、前記磁性部材との間の吸引力により前記ディスクを前記載置面側へ押圧するクランパと、前記チャッキング装置に保持されたディスクに対し、情報の読み出し及び書き込みの少なくとも一方を行う記録再生部と、を備えたディスク駆動装置である。
【発明の効果】
【0009】
本願の第1発明によれば、磁性部材の円筒部がシャフトに固定される。円筒部の径方向の厚みは円板部の軸方向の厚みよりも薄いため、シャフトに対して固定し易く、固定時に磁性部材及びシャフトにかける荷重を小さくできる。これにより、シャフトの軸線と磁性部材の上面との直角度を高精度に保つことができる。
【0010】
本願の第2発明によれば、シャフトの軸線と磁性部材の上面との直角度を高精度に保つことにより、ディスクの回転精度を向上させることができる。
【0011】
本願の第3発明によれば、シャフトの軸線と磁性部材の上面との直角度を保つことにより、ディスクの回転精度を向上させ、記録再生部における情報の読み出しや書き込みのエラーを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、チャッキング装置を概念的に示した図である。
【図2】図2は、ディスク駆動装置の縦断面図である。
【図3】図3は、ブラシレスモータの縦断面図である。
【図4】図4は、ディスクを保持した状態におけるチャッキング装置及びクランパの縦断面図である。
【図5】図5は、ヨークの縦断面図である。
【図6】図6は、ヨークの写真である。
【図7】図7は、ヨークの製造手順を示したフローチャートである。
【図8】図8は、ヨークの製造途中の様子を示した縦断面図である。
【図9】図9は、ヨークの製造途中の様子を示した縦断面図である。
【図10】図10は、ヨークの製造途中の様子を示した縦断面図である。
【図11】図11は、ヨークの製造途中の様子を示した縦断面図である。
【図12】図12は、ヨークの上面図である。
【図13】図13は、ヨークの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、例えば図1において、中心軸9に沿った方向を上下方向とし、ディスク載置部42に対してディスク内縁支持部43側(ターンテーブル42に対してコーン43側)を上として、各部材の形状や位置関係を説明する。ただし、これは、あくまで説明の便宜のために上下方向を定義したものであって、本発明のチャッキング装置、ブラシレスモータ、及びディスク駆動装置が実際の機器に搭載されたときの設置姿勢を限定するものではない。
【0014】
<1.一実施形態に係るチャッキング装置>
図1は、本発明の一実施形態に係るチャッキング装置4を概念的に示した図である。このチャッキング装置4は、中央に円孔を有する円板状のディスク90を保持するための装置である。図1に示したように、チャッキング装置4は、中心軸9に沿って上下方向に配置されたシャフト41と、ディスク90を載置する載置面42bを有するディスク載置部42と、ディスク載置部42の上側において、ディスク90の内縁部を支持する支持面43aを有するディスク内縁支持部43と、磁性部材44とを備えている。ディスク載置部42及び磁性部材44は、シャフト41に固定されている。
【0015】
磁性部材44は、中央に円孔を有する円板部441と、円板部441の内縁部から下方へのびてシャフト41に固定される円筒部442とを有する。磁性部材44の円筒部442の径方向の厚みd1は、円板部441の軸方向の厚みd2よりも小さい。このため、シャフト41に対して円筒部442を容易に固定できる。したがって、シャフト41と磁性部材44とを固定するときに、シャフト41及び磁性部材44にかかる荷重を小さくし、固定時にシャフト41の軸線と磁性部材44の円板部441の上面との直角度を高精度に保つことができる。
【0016】
<2.より具体的な実施形態>
<2−1.ディスク駆動装置の構成>
続いて、本発明のより具体的な実施形態について説明する。
【0017】
図2は、ディスク駆動装置1の縦断面図である。ディスク駆動装置1は、中心軸9を中心として光ディスク90(以下、単に「ディスク90」という)を回転させつつ、情報の読み出し又は書き込みを行う装置である。図2に示したように、ディスク駆動装置1は、主として、装置ハウジング11、トレイ12、ブラシレスモータ13、クランパ14、及び記録再生部15を備えている。
【0018】
装置ハウジング11は、トレイ12、ブラシレスモータ13、クランパ14、及び記録再生部15を内部に収容する筐体である。トレイ12は、装置ハウジング11の外部とブラシレスモータ13との間で、ディスク90を搬送するための機構である。ブラシレスモータ13は、装置ハウジング11の内部に設けられたシャーシ16に固定されている。また、ブラシレスモータ13は、その上部にディスク90を保持するチャッキング装置4を有する。トレイ12からチャッキング装置4へ移動されたディスク90は、チャッキング装置4とクランパ14との間に保持され、ブラシレスモータ13により中心軸9を中心として回転する。記録再生部15は、ブラシレスモータ13により回転するディスク90の記録面に沿って光ピックアップ部151を移動させて、情報の読み出し又は書き込みを行う。
【0019】
なお、記録再生部15の光ピックアップ部151は、情報の読み出し及び書き込みの双方を行うものであってもよい。
【0020】
<2−2.ブラシレスモータの構成>
続いて、上記のブラシレスモータ13の構成について説明する。図3は、ブラシレスモータ13の縦断面図である。図3に示したように、ブラシレスモータ13は、静止部2と、回転部3と、チャッキング装置4と、を備えている。静止部2は、ディスク駆動装置1のシャーシ16に固定されている。回転部3は、静止部2に対して回転自在に支持されている。チャッキング装置4は、回転部3の上側において、ディスク90を保持しつつ回転部3とともに回転する。
【0021】
静止部2は、主として、ベース部材21と、ベース部材21に固定された静止軸受ユニット22と、磁束発生部23とを有する。静止軸受ユニット22は、シャフト41を回転可能な状態で支持する機構である。磁束発生部23は、複数本のティース部23aを有するステータコア231と、各ティース部23aに巻回されたコイル232とを有する。
【0022】
回転部3は、主として、シャフト41と、ロータホルダ31と、ロータマグネット32とを有する。シャフト41は、中心軸9に沿って上下方向に配置された略円柱形状の部材である。ロータホルダ31は、シャフト41に固定されてシャフト41とともに回転する部材である。ロータマグネット32は、ロータホルダ31に固定されている。ロータマグネット32は、円環形状をなしており、その内周面は、ステータコア231のティース部23aの端面に対向する磁極面となっている。
【0023】
静止部2のコイル232に駆動電流を与えると、ステータコア231の複数のティース部23aに径方向の磁束が発生する。そして、ティース部23aとロータマグネット32との間の磁束の作用により周方向のトルクが発生し、静止部2に対して回転部3が中心軸9を中心として回転する。
【0024】
チャッキング装置4は、回転部3と共通のシャフト41を有する。また、チャッキング装置4は、ターンテーブル42、コーン43、ヨーク44、及びコイルばね45を有する。
【0025】
ターンテーブル42は、ディスク90を載置するための部材である。ターンテーブル42は、ロータホルダ31の上側においてシャフト41に固定される円板部421と、円板部421の径方向外側に位置する台部422とを有する。台部422の上面42aは、円板部421の上面よりも高い位置に形成されている。ターンテーブル42は、例えば、射出成型により得られた樹脂製の部材である。
【0026】
ターンテーブル42の台部422の上面42aには、円環形状のラバー部材423が固定されている。ディスク90は、その下面をラバー部材423の上面42bに接触させた状態で、ターンテーブル42上に載置される。すなわち、本実施形態では、ターンテーブル42とラバー部材423とが、一体としてディスク載置部を構成し、ラバー部材423の上面42bがディスク載置面となっている。
【0027】
コーン43は、ディスク90の中央に形成された円孔の縁、すなわちディスク90の内縁部、を支持するための部材である。コーン43は、ターンテーブル42の円板部421の上側において、シャフト41に対して軸方向に摺動可能な状態で取り付けられている。コーン43は、例えば、射出成型により得られた樹脂製の部材である。
【0028】
コーン43は、シャフト41の外周面に微小な隙間(例えば、数10μm程度)を介して対向する内周面を有する円環状の摺動部431と、摺動部431から径方向外側に広がる円板部432と、円板部432の外縁部から上方へのびる円筒部433と、円筒部433の上端部から径方向外側かつ下方へ向けて広がる爪部434と、を有している。コーン43の爪部434の外周面は、ディスク90の内縁部を支持する支持面43aとなっている。また、コーン43の円筒部433と爪部434との間には、コイルばね45の上端部に当接する複数のリブ435が形成されている。
【0029】
ヨーク44は、磁性体により形成された磁性部材である。ヨーク44は、コーン43の摺動部431の上側において、シャフト41に固定されている。ヨーク44は、中央に円孔を有する円板部441と、円板部441の内縁部から下方へのびる円筒部442とを有する。ヨーク44は、クランパ14に設けられたクランプマグネット144(図4参照)との間に磁気的な吸引力を発生させ、これにより、クランパ14をターンテーブル42側へ引き付ける役割を果たす。
【0030】
ヨーク44の詳細な形状等については、後述する。
【0031】
コイルばね45は、コーン43をヨーク44側へ付勢するための弾性部材である。コイルばね45は、軸方向に伸縮する姿勢で、かつ、自然長よりも圧縮された状態で、ターンテーブル42とコーン43との間に介挿されている。このため、コイルばね45は、コーン43に対して上向きの付勢力を与える。チャッキング装置4がディスク90を保持していないときには、図2に示したように、コイルばね45の付勢力によりコーン43がヨーク44に押し付けられ、コーン43の摺動部431の上面とヨーク44の円筒部442の下面とが当接した状態となる。
【0032】
図4は、ディスク90を保持した状態におけるチャッキング装置4及びクランパ14の縦断面図である。図4に示したように、クランパ14は、略円板形状の蓋部141と、蓋部141の中央から下方へ向けて突出した凸部142と、蓋部141の外縁部から径方向外側かつ下方へ向けて広がる袖部143と、を有する。また、蓋部141には、ヨーク44のほぼ上方にあたる位置に、クランプマグネット144が固定されている。
【0033】
ディスク90を保持するときには、クランプマグネット144とヨーク44との間に発生する磁気的な吸引力により、クランパ14がヨーク44側へ引き付けられる。そして、クランパ14の袖部143の下面がディスク90の上面に当接し、袖部143の下面とラバー部材423の上面42bとの間にディスク90が挟持される。このとき、コーン43の支持面43aは、ディスク90の円孔の径に応じた箇所でディスク90の内縁部に当接する。コーン43は、ディスク90の内縁部に押圧され、コイルばね45の付勢力に抗して下降する。
【0034】
コーン43の支持面43aは、ディスク90の内縁部に当接することにより、ディスク90の中心が中心軸9上に位置するように、ディスク90の径方向の位置を規制する。また、ラバー部材423の上面42a及びクランパ14の袖部143の下面は、それぞれ、ディスク90の下面及び上面に当接することにより、ディスク90の軸方向の位置及び姿勢を規制する。
【0035】
<2−3.ヨークの詳細な形状等>
続いて、上記のヨーク44の更に詳細な形状等について説明する。図5は、ヨーク44の縦断面図である。
【0036】
上述の通り、ヨーク44は、中央に円孔を有する円板部441と、円板部441の内縁部から下方へのびる円筒部442とを有する。ヨーク44は、円筒部442にシャフト41の上端部を圧入することにより、シャフト41に対して固定されている。本実施形態のヨーク44は、金属板に対してプレス成形を行うことにより得られるプレス成形品である。このため、本実施形態のヨーク44は、他の加工方法(例えば、焼結)により得られるものと比較して、安価に得ることができる。
【0037】
(a)円板部及び円筒部の厚みについて
図5に示したように、ヨーク44の円筒部442の径方向の厚みd1は、円板部441の軸方向の厚みd2よりも薄い。このため、プレス成形により円筒部442を容易に成形できる。また、径方向の厚みd1を比較的薄くしたことにより、円筒部442を高い寸法精度で成形できる。
【0038】
また、本実施形態のヨーク44は、円筒部442の径方向の厚みd1が、円板部441の軸方向の厚みd2よりも薄くしたことにより、シャフト41に対して圧入し易いものとなっている。すなわち、シャフト41及びヨーク44の双方に大きな荷重をかけることなく、シャフト41とヨーク44とを圧入により固定できる。したがって、圧入時にシャフト41又はヨーク44の変形を抑制し、シャフト41の軸線とヨーク44の円板部441の上面との直角度を高精度に保つことができる。ここで、直角度とは、データム直線又はデータム平面に対して直角な幾何学的直線又は幾何学的平面からの直角であるべき直線形体の狂いの小ささをいう。また、シャフト41の軸線と円板部441の上面との直角度を高精度に保つことにより、ブラシレスモータ13によるディスク90の回転精度を向上させ、記録再生部15における情報の読み出しや書き込みのエラーを低減させることができる。
【0039】
また、本実施形態のヨーク44は、円板部441の軸方向の厚みd2が、円筒部442の径方向の厚みd1よりも大きいことにより、クランパ14との間に高い磁気吸引力を発生させることができる。このため、本実施形態では、チャッキング装置4とクランパ14との間にディスク90を強固に保持できる。
【0040】
(b)円板部の外周面の形状について
ヨーク44の円板部441の外周面は、その上端から所定の高さ位置までに亘って形成された上部切断面44aと、当該所定の高さ位置から下端までに亘って形成された下部切断面44bと、を有する。これらの上部切断面44a及び下部切断面44bは、後述する打ち抜き加工時(ステップS4,S5)に形成される面である。図5に示したように、下部切断面44bの面粗度は、上部切断面44aの面粗度よりも大きい。すなわち、下部切断面44bは、上部切断面44aよりも粗い。
【0041】
上部切断面44aの上端部には、打ち抜き加工に起因する曲面部44c(いわゆる「ダレ」)が形成されている。また、下部切断面44bの下端部には、打ち抜き加工に起因する出張部44d(いわゆる「バリ」)が形成されている。出張部44dは、円板部441の下面より下方へ突出している。本実施形態では、このような曲面部44cが上面側に位置し、出張部44dが下面側に位置しているため、クランパ14の蓋部141の下面とヨーク44の円板部441の上面とを、良好に接近させることができる。
【0042】
図6は、後述する製造手順に従って製造されたヨーク44の写真である。図6では、円板部441の外周面に、上部切断面44aと、上部切断面44aよりも面粗度の大きい下部切断面44bとが形成されていることが分かる。また、上部切断面44aの上端部に曲面部44cが形成され、下部切断面44bの下端部に出張部44dが形成されていることも分かる。
【0043】
(c)内周面の形状について
図5に戻る。ヨーク44の内周面は、上端から所定の高さ位置までに亘って形成された上部内周面44eと、当該所定の高さ位置から下端までに亘って形成された下部内周面44fとを有する。上部内周面44eは、その内側にクランパ14の凸部142が挿入される空間を形成する。また、下部内周面44fは、圧入によりシャフト41の外周面に固定される面となる。
【0044】
本実施形態では、上部内周面44eの径d3は、クランパ14の凸部142との接触を避けるために十分な大きさに設定されている。一方、下部内周面44fの径d4は、シャフト41との圧入に適するように、上部内周面44eの径d3よりもやや小さく設定されている。
【0045】
また、ヨーク44の内周面の上端部には、上部内周面44eと円板部441の上面とを繋ぐ曲面部44gが形成されている。曲面部44gは、上方に向かってその内径が漸次に広がる形状を有する。このような曲面部44gにより、上部内周面44eの上端部が円板部441の上面よりも上方に突出することが防止される。したがって、クランパ14の蓋部141の下面と、ヨーク44の円板部441の上面とが、良好に面接触する。
【0046】
曲面部44gが大きすぎると、ヨーク44とクランパ14との接触面積が小さくなり、ヨーク44とクランパ14との吸着力が低下する虞がある。一方、曲面部44gが小さすぎると、曲面部44gにクランパ14の凸部142が接触してしまったときに、凸部142を損傷させる虞がある。このため、ヨーク44とクランパ14との接触面積を確保しつつ、クランパ14の凸部142の損傷を防止すべく、曲面部44gを適切な大きさに設定することが望ましい。具体的には、曲面部44gの径方向の寸法d5は、0.3mm以上かつ1.0mm以下の値に設定することが好ましく、0.7mm以上かつ0.9mm以下の値に設定すれば、より好ましい。また、曲面部44gの軸方向の寸法d6は、0.3mm以上かつ0.6mm以下の値に設定することが好ましく、0.5mm以上かつ0.6mm以下の値に設定すれば、より好ましい。
【0047】
また、ヨーク44の円筒部442の下面の内縁部には、面取り部44hが形成されている。面取り部44hは、下方へ向けて内径が漸次に広がるテーパ面となっている。ヨーク44の円筒部442にシャフト41を圧入するときには、この面取り部44hを利用して、円筒部442に対するシャフト41の径方向の位置を容易に定めることができる。また、面取り部44hがない場合に比べて、円筒部442にシャフト41を圧入する際の、両部材の損傷も抑制できる。
【0048】
<2−4.ヨークの製造手順>
上述の通り、ヨーク44は、金属板に対してプレス成形することにより得られる。以下では、プレス成形によるヨーク44の製造手順について、図7のフローチャート及び図8〜図11の縦断面図を参照しつつ、説明する。
【0049】
ヨーク44を製造するときには、まず、ヨーク44の母材となる金属板5に、中心孔51を形成する(ステップS1,図8の状態)。具体的には、金属板5を水平に支持し、金属板5に対して孔あけ用の工具61を上下に貫通させることにより、ヨーク44の内径(上記のd3及びd4)よりも小さい円孔を形成する。
【0050】
次に、バーリング加工を行い、金属板5に下方へ突出した円筒部442を形成する(ステップS2,図9の状態)。具体的には、バーリング加工用の略円柱形状の工具62を、中心孔51の上方から金属板5の上面に打ち付け、金属板5の中心孔51の周囲の部分を下方へ引き伸ばしつつ屈曲させることにより、円筒部442を形成する。
【0051】
図9に示したように、工具62の外周面は、上部外周面621と、上部外周面621よりも径の小さい下部外周面622とを有する。このため、バーリング加工により形成された円筒部442の内周面は、上部内周面44eと、上部内周面44eよりも径の小さい下部内周面44fとを有することとなる。
【0052】
続いて、円筒部442の下面に対して面打ちを行う(ステップS3,図10の状態)。ここでは、円筒部442の下面に対して、面打ち用の工具63を打ち付けることにより、円筒部442の軸方向の長さを調節する。
【0053】
図10に示したように、工具63の上面の中央部分には、円錐台状の突出部631が形成されている。突出部631の外周縁には、円筒部442の下面の内周縁に沿うテーパ面が形成されている。このため、面打ち後の円筒部442の下面の内縁部には、面取り部44hが形成されることとなる。
【0054】
その後、金属板5に対して第1及び第2の打ち抜きを行い、円板部441を形成する(ステップS4〜S5,図11の状態)。具体的には、打ち抜き用の工具(図示省略)を金属板5の上方から打ち付けることにより、金属板5の円板部441となる部分よりも径方向外側の部分52を取り除く。
【0055】
図12は、第1及び第2の打ち抜き後に得られるヨーク44の上面図である。上記の第1の打ち抜き及び第2の打ち抜きにおいては、それぞれ、周方向に異なる部位A1,A2の打ち抜きが行われる。このため、図12に示したように、ヨーク44の円板部441の外周面は、第1の打ち抜きにより形成された第1切断面44iと、第2の打ち抜きにより形成された第2切断面44jとを有することとなる。
【0056】
第1切断面44iと第2切断面44jとは、周方向に隣接する。また、第1切断面44iの少なくとも周方向の端部付近の径(中心軸9からの距離)r1は、第2切断面44jの径(中心軸9空の距離)r2よりも小さくなるように設定されている。このため、第1切断面44iと第2切断面44jとの境界に、第2切断面44jよりも径方向外側に突出した部分が形成されることが防止される。これにより、ヨーク44の円板部441の外周面が、コーン43の円筒部433の内周面に接触してしまうことを防止できる。
【0057】
<3.変形例>
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0058】
上記の実施形態では、シャフト41とヨーク44とが、圧入により固定されていたが、シャフト41とヨーク44とは、焼き嵌め等の他の方法により固定されていてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、クランパ14にクランプマグネット144が固定されていたが、クランプマグネット144は、ヨーク44側に設けられていてもよい。ただし、チャッキング装置4を小型化、軽量化、及び低価格化するという観点においては、上記の実施形態のように、クランパ14側にクランプマグネット144を設ける方が望ましい。
【0060】
また、上記の実施形態では、ターンテーブル42とコーン43とが別体の部材となっていたが、これらが一体の部材として構成されていてもよい。すなわち、ディスク90を載置する載置面を有するディスク載置部と、ディスク90の内縁部を支持する支持面を有するディスク内縁支持部とを有する単一の部材を用意し、その単一の部材を、上記のターンテーブル42及びコーン43に代えて使用してもよい。
【0061】
また、上記の図12では、第1切断面44iの全体が、第2切断面よりも径方向内側に位置していたが、図13のように、第1切断面44iのうち、第2切断面44jに隣接する端部付近のみが、第2切断面44jよりも径方向内側に位置するようになっていてもよい。
【0062】
また、上記の実施形態では、第1の打ち抜き(ステップS4)により第1切断面44iを形成した後に、第2の打ち抜き(ステップS5)により第2切断面44jを形成していたが、第1の打ち抜きと第2の打ち抜きとを同時に実行し、第1切断面44iと第2切断面44jとを同時に形成するようにしてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態では、光ディスク90用のチャッキング装置4、ブラシレスモータ13、及びディスク駆動装置1について説明したが、本発明は、磁気ディスク等の他のディスク用のチャッキング装置、ブラシレスモータ、及びディスク駆動装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ディスクを保持するチャッキング装置、当該チャッキング装置を備えたブラシレスモータ、及び、当該ブラシレスモータを備えたディスク駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 ディスク駆動装置
2 静止部
3 回転部
4 チャッキング装置
9 中心軸
13 ブラシレスモータ
14 クランパ
15 記録再生部
41 シャフト
42 ターンテーブル
43 コーン
44 ヨーク
44a 上部切断面
44b 下部切断面
44c 曲面部
44d 出張部
44e 上部内周面
44f 下部内周面
44g 曲面部
44h 面取り部
44i 第1切断面
44j 第2切断面
90 ディスク
144 クランプマグネット
423 ラバー部材
441 円板部
442 円筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って上下方向に配置されたシャフトと、
前記シャフトに固定され、中央に円孔を有する円板状のディスクを載置する載置面を有するディスク載置部と、
前記ディスク載置部の上側において、前記ディスクの内縁部を支持する支持面を有するディスク内縁支持部と、
前記シャフトに固定された磁性部材と、
を備え、
前記磁性部材は、中央に円孔を有する円板部と、前記円板部の内縁部から下方へのびて前記シャフトに固定される円筒部とを有し、
前記円筒部の径方向の厚みは、前記円板部の軸方向の厚みよりも薄いチャッキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のチャッキング装置において、
前記磁性部材は、プレス成形品であり、前記円板部の外周面の下端部から下方へ突出した出張り部を有するチャッキング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のチャッキング装置において、
前記磁性部材は、前記円板部の上面と前記円板部の内周面とを繋ぎ、上方に向かってその内径が漸次に広がる曲面部を有するチャッキング装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
前記磁性部材の内周面は、
上端から所定の高さ位置までに亘って形成された上部内周面と、
前記所定の高さ位置から下端までに亘って形成され、前記上部内周面よりも径の小さい下部内周面と、
を有するチャッキング装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
前記磁性部材は、前記円筒部の下端部の内縁部に形成された面取り部を有するチャッキング装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
前記磁性部材の前記円板部の外周面は、
第1切断面と、
前記第1切断面に周方向に隣接して成形された第2切断面と、
を有し、
前記第1切断面及び第2切断面の一方の少なくとも周方向の端部付近の径が、前記第1切断面及び前記第2切断面の他方の径よりも小さいチャッキング装置。
【請求項7】
静止部と、
前記静止部に対して前記中心軸を中心として回転自在に支持された回転部と、
前記静止部と前記回転部との間に前記中心軸を中心とするトルクを発生させるトルク発生部と、
前記回転部とともに回転する請求項1から請求項6までのいずれかに記載のチャッキング装置と、
を備えたブラシレスモータ。
【請求項8】
請求項7に記載のブラシレスモータと、
前記磁性部材との間の吸引力により前記ディスクを前記載置面側へ押圧するクランパと、
前記チャッキング装置に保持されたディスクに対し、情報の読み出し及び書き込みの少なくとも一方を行う記録再生部と、
を備えたディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図6】
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