説明

チャネル情報圧縮装置及び方法、チャネル情報展開装置及び方法、コンピュータプログラム、受信機、送信機

【課題】チャネル情報の精度を良好に保ちながら情報圧縮を行うことを図る。
【解決手段】通信チャネルの状態を表すチャネル情報(CSI)を離散コサイン変換するDCT部41と、離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮する情報圧縮部42と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネル情報圧縮装置及び方法、チャネル情報展開装置及び方法、コンピュータプログラム、受信機、送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の無線通信システムにおいては、MIMO(Multiple Input Multiple Output)システムを採用することが検討されている。MIMOシステムでは、送信機が送信データに対して信号伝送路(通信チャネル)の状態を表すチャネル情報(CSI:Channel State Information)に基づいたプリコーディング(Precoding)を行うことにより、プリコーディングを行わない場合に比べて周波数利用効率を向上できることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、FDD(Frequency Division Duplex)の場合、一般的にチャネル情報は受信機で取得されるが、そのチャネル情報に基づいた送信データのプリコーディングを行う方法として以下の2通りの方法(1)、(2)が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
(1)受信機が取得したチャネル応答行列を送信機へ送信し、送信機が該チャネル応答行列に応じたプリコーディングを行う。
(2)複数のプリコーダー(Precoder)のインデックス(Index)を有するコードブック(Codebook)を送信機と受信機で共有し、受信機が取得したチャネル応答行列に応じたプリコーダーのインデックスを送信機へ送信し、送信機が該インデックスのプリコーダーを使用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. Vu, A. Paulraj,“MIMO Wireless Linear Precoding”, IEEE Signal Processing Magazine, Sep. 2007.
【非特許文献2】3GPP TS 36.211 V.8.7.0, May 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の方法(1)では、送信機は受信機で得られたチャネル応答行列を用いてプリコーディングを行うことができるが、受信機から送信機へ送るチャネル応答行列の情報量が多いため、その情報送信に使用する無線リソース量が多くなる。従来の方法(2)では、受信機から送信機へ送る情報量を削減できるが、コードブックで表すことのできるプリコーダーの種類が限られるので、受信機で得られたチャネル応答行列に的確なプリコーダーがない場合にはプリコーディング効果が薄れる。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、チャネル情報の精度を良好に保ちながら情報圧縮を行うことのできる、チャネル情報圧縮装置及び方法、コンピュータプログラム、受信機を提供することを課題とする。
また、本発明に係るチャネル情報圧縮装置及び方法、コンピュータプログラム、受信機に対応する、チャネル情報展開装置及び方法、コンピュータプログラム、送信機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るチャネル情報圧縮装置は、通信チャネルの状態を表すチャネル情報を離散コサイン変換する離散コサイン変換部と、前記離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮する情報圧縮部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記離散コサイン変換部は、同一通信チャネルの状態を表すチャネル情報から構成される変換単位で離散コサイン変換することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記チャネル情報は、マルチキャリア伝送方式のサブキャリア毎に取得されるものであり、前記離散コサイン変換部は、連続したサブキャリア又は等間隔で離れたサブキャリアのチャネル情報から構成される変換単位で離散コサイン変換することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記チャネル情報は、MIMOシステムの送受アンテナ間のチャネル応答行列であり、前記離散コサイン変換部は、マルチキャリア伝送方式を使用する前記MIMOシステムの各サブキャリアの前記チャネル応答行列の同じ要素から構成される変換単位で離散コサイン変換することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記チャネル情報は、一定間隔で取得されるものであり、前記離散コサイン変換部は、1つ又は連続する複数取得回数分のチャネル情報から構成される変換単位で離散コサイン変換することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記情報圧縮部は、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変更可能であり、前記チャネル情報圧縮装置は、前記通信チャネルを受信する受信機の移動速度に応じて、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変化させる制御部を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記情報圧縮部は、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変更可能であり、前記チャネル情報圧縮装置は、前記通信チャネルで伝送される情報を使用するアプリケーションの要求スループットに応じて、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変化させる制御部を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記情報圧縮部は、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変更可能であり、前記チャネル情報圧縮装置は、共用無線リソースを同時に利用する受信機の個数に応じて、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変化させる制御部を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記離散コサイン変換部は、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更可能であり、前記チャネル情報圧縮装置は、前記通信チャネルを受信する受信機の移動速度に応じて、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変化させる制御部を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記離散コサイン変換部は、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更可能であり、前記チャネル情報圧縮装置は、前記通信チャネルを受信する受信機のハードウェアリソースの使用上の制約に応じて、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変化させる制御部を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記受信機はソフトウェア無線受信機であり、前記制御部は、ソフトウェア無線に使用可能なメモリ量の制約に応じて、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変化させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記離散コサイン変換データの圧縮データを可変長符号化する、符号化単位の大きさを変更可能な可変長符号化部と、前記通信チャネルを受信する受信機の移動速度に応じて、前記符号化単位の大きさを変化させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記離散コサイン変換データの圧縮データを可変長符号化する、符号化単位の大きさを変更可能な可変長符号化部と、前記通信チャネルを受信する受信機のハードウェアリソースの使用上の制約に応じて、前記符号化単位の大きさを変化させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係るチャネル情報圧縮装置において、前記受信機はソフトウェア無線受信機であり、前記制御部は、ソフトウェア無線に使用可能なメモリ量の制約に応じて、前記符号化単位の大きさを変化させることを特徴とする。
【0021】
本発明に係るチャネル情報展開装置は、通信チャネルの状態を表すチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データを展開する情報展開部と、前記展開により得られた離散コサイン変換データを逆離散コサイン変換する逆離散コサイン変換部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明に係るチャネル情報展開装置において、前記情報展開部は、前記離散コサイン変換データの展開率を変更可能であり、前記チャネル情報展開装置は、前記圧縮データに係る制御情報に従って前記情報展開部を制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明に係るチャネル情報展開装置において、前記逆離散コサイン変換部は、前記逆離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更可能であり、前記チャネル情報展開装置は、前記離散コサイン変換データに係る制御情報に従って、前記逆離散コサイン変換部を制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明に係るチャネル情報展開装置において、通信チャネルの状態を表すチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データの可変長符号化データを可変長復号化する、符号化単位の大きさを変更可能な可変長復号化部と、前記可変長符号化データに係る制御情報に従って、前記可変長復号化部を制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明に係るチャネル情報圧縮方法は、通信チャネルの状態を表すチャネル情報を離散コサイン変換するステップと、前記離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮するステップと、を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明に係るチャネル情報展開方法は、通信チャネルの状態を表すチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データを展開するステップと、前記展開により得られた離散コサイン変換データを逆離散コサイン変換するステップと、を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明に係るコンピュータプログラムは、通信チャネルの状態を表すチャネル情報を離散コサイン変換するステップと、前記離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮するステップと、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
これにより、前述のチャネル情報圧縮装置がコンピュータを利用して実現できるようになる。
【0028】
本発明に係るコンピュータプログラムは、通信チャネルの状態を表すチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データを展開するステップと、前記展開により得られた離散コサイン変換データを逆離散コサイン変換するステップと、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
これにより、前述のチャネル情報展開装置がコンピュータを利用して実現できるようになる。
【0029】
本発明に係る受信機は、MIMOシステムの受信機において、前記MIMOシステムの送信機と自受信機との間のチャネル情報を離散コサイン変換する離散コサイン変換部と、前記離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮する情報圧縮部と、前記圧縮データを前記送信機へ送信する送信部と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明に係る送信機は、MIMOシステムの送信機において、自送信機と前記MIMOシステムの受信機との間のチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データを前記受信機から受信する受信部と、前記受信データを展開する情報展開部と、前記展開により得られた離散コサイン変換データを逆離散コサイン変換する逆離散コサイン変換部と、前記逆離散コサイン変換により取得されたチャネル情報を用いて、送信データのプリコーディングを行うプリコーディング部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、チャネル情報の精度を良好に保ちながら情報圧縮を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すチャネル情報圧縮部24の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すチャネル情報展開部14の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成を示す概略構成図である。この無線通信システムは、MIMO送信機1とMIMO受信機2を有し、MIMO送信機1からMIMO受信機2へMIMO伝送を行う。
【0034】
図1において、MIMO送信機1は、プリコーディング部11と送信部12と制御情報受信部13とチャネル情報展開部14を有する。プリコーディング部11は、チャネル情報(CSI)を用いて送信データのプリコーディングを行う。送信部12は、複数の送信アンテナを有し、プリコーディングされた送信データを複数の送信アンテナから送信する。制御情報受信部13は、MIMO受信機2から制御情報を受信する。この制御情報は、チャネル情報圧縮符号化データBと制御データCを有する。チャネル情報展開部14は、チャネル情報圧縮符号化データBと制御データCを用いてチャネル情報を取得する。チャネル情報展開部14は、取得したチャネル情報をプリコーディング部11へ供給する。
【0035】
MIMO受信機2は、受信部21とチャネル推定部22と受信処理部23とチャネル情報圧縮部24と制御情報送信部25と情報取得部26を有する。受信部21は、複数の受信アンテナを有し、MIMO送信機1の複数の送信アンテナから送信された信号を複数の受信アンテナで受信する。チャネル推定部22は、各受信アンテナの受信信号を用いてチャネル情報(CSI)を推定する。受信処理部23は、チャネル情報を用いて受信処理を行い、受信データを取得する。
【0036】
チャネル情報圧縮部24は、チャネル推定部22で推定されたチャネル情報からチャネル情報圧縮符号化データBを生成する。チャネル情報圧縮部24は、チャネル情報圧縮符号化データBと制御データCを制御情報送信部25へ出力する。制御情報送信部25は、チャネル情報圧縮符号化データBと制御データCをMIMO送信機1へ送信する。情報取得部26は、チャネル情報圧縮符号化データBの生成を制御するための制御用情報Aを取得する。情報取得部26は、制御用情報Aをチャネル情報圧縮部24へ供給する。
【0037】
図2は、図1に示すチャネル情報圧縮部24の構成を示すブロック図である。図3は、図1に示すチャネル情報展開部14の構成を示すブロック図である。
まず、図2を参照してチャネル情報圧縮部24を説明する。図2において、チャネル情報圧縮部24は、離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)部41と情報圧縮部42と可変長符号化部43と制御部44を有する。情報圧縮部42は、情報削除部45と量子化部46を有する。
【0038】
DCT部41には、チャネル推定部22からチャネル情報(CSI)が入力される。DCT部41は、チャネル情報を離散コサイン変換する。チャネル情報の離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データは、情報圧縮部42へ出力される。離散コサイン変換データは、各周波数成分の情報としてDCT係数を有する。
【0039】
情報圧縮部42は、離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮(情報のビット数の削減または情報の削除)する。この理由を説明する。通信チャネルの状態を表すチャネル情報は、離散コサイン変換の結果、低周波成分に情報が集中する。このため、高周波成分が削減または削除されても、チャネル情報の精度を良好に保つことができる。このことに着目し、本発明は、離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮するのである。
【0040】
情報圧縮部42では、情報削除部45と量子化部46によって離散コサイン変換データの情報圧縮が行われる。情報圧縮部42は、離散コサイン変換データを情報圧縮した圧縮データを可変長符号化部43へ出力する。可変長符号化部43は、情報圧縮部42から受け取った圧縮データを可変長符号化する。可変長符号化部43は、圧縮データの可変長符号化により得られたチャネル情報圧縮符号化データBを制御情報送信部25へ出力する。
【0041】
制御部44には、情報取得部2から制御用情報Aが入力される。制御部44は、制御用情報Aに基づいて、DCT部41、情報圧縮部42及び可変長符号化部43の動作を制御する。制御部44は、チャネル情報圧縮符号化データBに係る制御データCを制御情報送信部25へ出力する。
【0042】
次に、図3を参照してチャネル情報展開部14を説明する。図3において、チャネル情報展開部14は、可変長復号化部51と情報展開部52と逆離散コサイン変換(IDCT:Inverse Discrete Cosine Transform)部53と制御部54を有する。情報展開部52は、逆量子化部55と情報補完部56を有する。これら図3の各部は図2の各部に対応したものである。
【0043】
可変長復号化部51には、制御情報受信部13からチャネル情報圧縮符号化データBが入力される。可変長復号化部51は、チャネル情報圧縮符号化データBを可変長復号化する。可変長復号化部51は、チャネル情報圧縮符号化データBの可変長復号化により得られた圧縮データを情報展開部52へ出力する。
【0044】
情報展開部52は、可変長復号化部51から受け取った圧縮データを情報展開する。情報展開部52では、逆量子化部55と情報補完部56によって圧縮データの情報展開が行われる。情報展開部52は、圧縮データの情報展開により得られた離散コサイン変換データをIDCT部53へ出力する。IDCT部53は、離散コサイン変換データを逆離散コサイン変換する。IDCT部53は、逆離散コサイン変換により得られたチャネル情報(CSI)をプリコーディング部11へ出力する。
【0045】
制御部54には、制御情報受信部13から制御データCが入力される。制御部54は、制御データCに基づいて、可変長復号化部51、情報展開部52及びIDCT部53の動作を制御する。
【0046】
次に、本実施形態に係る離散コサイン変換処理及び逆離散コサイン変換処理、情報圧縮処理及び情報展開処理、可変長符号化処理及び可変長復号化処理、並びに制御処理について詳細に説明する。
【0047】
[離散コサイン変換処理及び逆離散コサイン変換処理、並びに制御処理]
DCT部41は、チャネル情報から離散コサイン変換の変換単位を生成し、該変換単位で離散コサイン変換を行う。以下、本実施形態に係る離散コサイン変換の変換単位を説明する。
【0048】
本実施形態では、チャネル情報は、MIMO送信機1の複数の送信アンテナとMIMO受信機2の複数の受信アンテナとの間のチャネル応答行列である。また、本実施形態に係る無線通信システムは、マルチキャリア伝送方式を使用する。マルチキャリア伝送方式としては、例えば、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が挙げられる。
【0049】
チャネル応答行列は、マルチキャリア伝送方式のサブキャリア毎に取得される。本実施形態では、各サブキャリアのチャネル応答行列の同じ要素から、離散コサイン変換の変換単位を構成する。例えば、1024個のサブキャリアが存在する場合、1024個のサブキャリアの各々に対応する1024個のチャネル応答行列がチャネル推定部22によって取得される。この1024個のチャネル応答行列において同じ要素(同じ行かつ同じ列の要素)から離散コサイン変換の変換単位を構成する。
【0050】
例えば、2行2列のチャネル応答行列の場合に、チャネル応答行列の各要素を1行1列の要素a_11、1行2列の要素a_12、2行1列の要素a_21、2行2列の要素a_22とする。この場合、各サブキャリアのチャネル応答行列から要素a_11を抽出し、要素a_11のみから第1の変換単位を構成する。さらに、各サブキャリアのチャネル応答行列から要素a_12を抽出し、要素a_12のみから第2の変換単位を構成する。さらに、各サブキャリアのチャネル応答行列から要素a_21を抽出し、要素a_21のみから第3の変換単位を構成する。さらに、各サブキャリアのチャネル応答行列から要素a_22を抽出し、要素a_22のみから第4の変換単位を構成する。DCT部41は、それら4つの変換単位(第1から第4の変換単位)を対象にして、変換単位毎に離散コサイン変換を行う。これにより、第1から第4の変換単位の各々に対応する4つの離散コサイン変換データが得られる。情報圧縮部42は、その離散コサイン変換データ毎に、離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮する。
【0051】
各サブキャリアのチャネル応答行列の同じ要素は、各サブキャリアにおける同一通信チャネルの状態を表す。同一通信チャネルであれば、サブキャリア間の状態変化はなだらかである(相関関係が高い)と考えることができる。従って、同一通信チャネルの状態を表す要素のみから構成される変換単位で離散コサイン変換することによって、離散コサイン変換データに含まれる低周波成分に情報が集中することが期待できる。これにより、離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮(情報のビット数の削減または情報の削除)しても、各サブキャリアのチャネル応答行列の精度を良好に保つことが可能となる。
【0052】
なお、全サブキャリアで変換単位を構成してもよく、或いは、一部のサブキャリアで変換単位を構成してもよい。一部のサブキャリアで変換単位を構成する場合、連続したサブキャリア又は等間隔で離れたサブキャリアで変換単位を構成することが、サブキャリア間の通信チャネル状態の相関関係を高く保つという観点から好ましい。
【0053】
また、チャネル応答行列は一定間隔で取得される。例えば、所定数(1又は複数)の伝送フレームごとにチャネル応答行列が取得される。従って、所定の取得回数分のチャネル応答行列から離散コサイン変換の変換単位を構成する。例えば、1取得回分のチャネル応答行列のみから変換単位を構成してもよく、或いは、複数取得回分のチャネル応答行列から変換単位を構成してもよい。複数取得回分のチャネル応答行列から変換単位を構成する場合、連続する複数取得回数分のチャネル応答行列から変換単位を構成することが、取得時点間の通信チャネル状態の相関関係を高く保つという観点から好ましい。
【0054】
また、DCT部41は、離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更可能に構成される。離散コサイン変換の変換単位の大きさは、制御部44から指示される。DCT部41は、制御部44からの指示(離散コサイン変換の変換単位の大きさ)に従って、離散コサイン変換の変換単位を生成する。離散コサイン変換の変換単位の大きさは、サブキャリア数、又は、チャネル応答行列の取得回数で指定される。例えば、離散コサイン変換の変換単位の大きさがサブキャリア数で指定される場合、DCT部41は、指定のサブキャリア数分のチャネル応答行列から、離散コサイン変換の変換単位を生成する。離散コサイン変換の変換単位の大きさがチャネル応答行列の取得回数で指定される場合、DCT部41は、指定の取得回数分のチャネル応答行列から、離散コサイン変換の変換単位を生成する。離散コサイン変換の変換単位の大きさがサブキャリア数及びチャネル応答行列の取得回数で指定される場合、DCT部41は、指定のサブキャリア数分のチャネル応答行列を指定の取得回数分を用いて、離散コサイン変換の変換単位を生成する。
【0055】
制御部44は、離散コサイン変換の変換単位の大きさを、離散コサイン変換データに係る制御データCとして制御情報送信部25へ出力する。図3のチャネル情報展開部14において、制御部54は、離散コサイン変換データに係る制御データCで指定される離散コサイン変換の変換単位の大きさを逆離散コサイン変換の変換単位の大きさとしてIDCT部53に指示する。IDCT部53は、指示された逆離散コサイン変換の変換単位の大きさで、逆離散コサイン変換を行う。なお、IDCT部53は、逆離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更可能に構成される。
【0056】
次に、離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更する方法について説明する。
制御部44は、情報取得部2から入力される制御用情報Aに基づいて、離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更する。以下、制御用情報Aの種類別に説明する。
【0057】
<制御用情報A:MIMO受信機2の移動速度>
制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度に応じて、離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更する。自MIMO受信機2の移動速度は、情報取得部26から制御用情報Aとして制御部44に供給される。制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度が基準速度以下である場合には、離散コサイン変換の変換単位の大きさを標準サイズとする。一方、制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度が基準速度超過である場合には、離散コサイン変換の変換単位の大きさを標準サイズよりも小さい縮小サイズとする。なお、離散コサイン変換の変換単位の大きさは、MIMO受信機2の移動速度に応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0058】
MIMO受信機2が移動すると、通常、チャネル応答行列は変化するが、その移動速度が速いとチャネル応答行列の変化速度も速くなると考えられる。そこで、MIMO受信機2の移動速度に応じて離散コサイン変換の変換単位の大きさを変化させることにより、チャネル応答行列をMIMO送信機1に供給する間隔を調整し、MIMO送信機1における送信データのプリコーディングをチャネル応答行列の変化速度に対応させるようにする。つまり、MIMO受信機2の移動速度が速い場合には、チャネル応答行列の変化速度も速いと考えられるので、離散コサイン変換の変換単位の大きさを小さくしてチャネル応答行列をMIMO送信機1に供給する間隔を短くし、MIMO送信機1における送信データのプリコーディングをチャネル応答行列の変化に追従させやすくする。一方、MIMO受信機2の移動速度が遅い場合には、チャネル応答行列の変化速度も遅いと考えられるので、頻繁にチャネル応答行列をMIMO送信機1に供給しなくても、MIMO送信機1における送信データのプリコーディングをチャネル応答行列の変化に追従させることができるため、離散コサイン変換の変換単位の大きさを大きくしてチャネル応答行列をMIMO送信機1に供給する間隔を長くし、チャネル応答行列の伝達に使用する無線リソース量の削減を図る。
【0059】
<制御用情報A:MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約>
制御部44は、自MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約に応じて、離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更する。自MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約は、情報取得部26から制御用情報Aとして制御部44に供給される。制御部44は、自MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約が基準以下(基準と同等か緩い)である場合には、離散コサイン変換の変換単位の大きさを標準サイズとする。一方、制御部44は、自MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約が基準超過(基準よりも厳しい)である場合には、離散コサイン変換の変換単位の大きさを標準サイズよりも小さい縮小サイズとする。なお、離散コサイン変換の変換単位の大きさは、MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約に応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0060】
MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約としては、例えば、メモリの使用量の制約が挙げられる。また、ソフトウェア無線受信機である場合には、ソフトウェア無線に使用可能なメモリ量の制約が挙げられる。
【0061】
[情報圧縮処理及び情報展開処理、並びに制御処理]
情報圧縮部42は、離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮(情報のビット数の削減または情報の削除)する。情報圧縮部42は、情報削除部45と量子化部46を有する。以下、本実施形態に係る情報圧縮方法を順次説明する。
【0062】
(第1の情報圧縮方法)
第1の情報圧縮方法では、離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報(DCT係数)を削除する。どの周波数成分の情報(どのDCT係数)を削除するのかは、固定的に定められていてもよく、或いは、制御部44が指定してもよい。
【0063】
本実施形態では、情報削除部45が第1の情報圧縮方法を行う。情報削除部45は、DCT部41から離散コサイン変換データを受け取ると、該離散コサイン変換データに含まれるDCT係数のうち、削除対象のDCT係数を削除し、残りのDCT係数を量子化部46へ出力する。
【0064】
以下、制御部44が削除対象のDCT係数を指定する場合を説明する。
制御部44が削除対象のDCT係数を指定する場合、制御部44は、DCT係数の削除個数を情報削除部45へ指示する。これにより、情報削除部45は、最も高い周波数成分のDCT係数から低い周波数成分のDCT係数の方へと順番に、削除個数分のDCT係数を削除する。制御部44は、DCT係数の削除個数を、チャネル情報圧縮符号化データBに係る制御データCとして制御情報送信部25へ出力する。
【0065】
図3のチャネル情報展開部14において、制御部54は、チャネル情報圧縮符号化データBに係る制御データCで指定されるDCT係数の削除個数を情報補完部56に指示する。情報補完部56は、逆量子化部55から離散コサイン変換データを受け取る。この離散コサイン変換データは、図2の情報削除部45によって削除対象DCT係数が削除されたものであり、不完全である。情報補完部56は、逆量子化部55から受け取った離散コサイン変換データに対し、制御部54から指示された削除個数分のDCT係数(最も高い周波数成分のDCT係数から低い周波数成分のDCT係数の方へと順番に削除個数分)を値「0」で補完する。情報補完部56は、DCT係数補完後の離散コサイン変換データをIDCT部53へ出力する。
【0066】
なお、どのDCT係数を削除するのかが固定的に定められている場合には、情報削除部45は固定的に定められている削除対象DCT係数を削除し、情報補完部56は固定的に定められている削除対象DCT係数を値「0」で補完する。
【0067】
次に、DCT係数の削除個数を変更する方法について説明する。
制御部44は、情報取得部2から入力される制御用情報Aに基づいて、DCT係数の削除個数を変更する。これにより、制御部44は、離散コサイン変換データの圧縮率を変化させる。以下、制御用情報Aの種類別に説明する。
【0068】
<制御用情報A:MIMO受信機2の移動速度>
制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度に応じて、DCT係数の削除個数を変更する。制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度が基準速度以下である場合には、DCT係数の削除個数を標準個数とする。一方、制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度が基準速度超過である場合には、DCT係数の削除個数を標準個数よりも多い拡大個数とする。なお、DCT係数の削除個数は、MIMO受信機2の移動速度に応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0069】
MIMO受信機2が移動すると、通常、チャネル応答行列は変化するが、その移動速度が速いとチャネル応答行列の変化速度も速くなると考えられる。そこで、MIMO受信機2の移動速度に応じて離散コサイン変換データの情報量を変化させることにより、MIMO送信機1に供給するチャネル応答行列の精度を調整し、MIMO送信機1における送信データのプリコーディングをチャネル応答行列の変化速度に対応させるようにする。つまり、MIMO受信機2の移動速度が速い場合には、チャネル応答行列の変化速度も速いと考えられるので、チャネル応答行列の精度を落としてもプリコーディング効果はあまり低下しないため、離散コサイン変換データの情報量を少なくすることによりチャネル応答行列の伝達に使用する無線リソース量の削減を図る。一方、MIMO受信機2の移動速度が遅い場合には、チャネル応答行列の変化速度も遅いと考えられるので、離散コサイン変換データの情報量を多くしてチャネル応答行列の精度を高くすることにより、プリコーディング効果の増大を図る。
【0070】
<制御用情報A:要求スループット>
制御部44は、MIMO伝送される情報を使用するアプリケーションの要求スループットに応じて、DCT係数の削除個数を変更する。制御部44は、要求スループットが基準値以下である場合には、DCT係数の削除個数を標準個数とする。一方、制御部44は、要求スループットが基準値超過である場合には、DCT係数の削除個数を標準個数よりも少ない縮小個数とする。この理由は、アプリケーションの要求スループットが大きい場合には、離散コサイン変換データの情報量を多くしてチャネル応答行列の精度を高くすることによりプリコーディング効果を高め、これによりスループットの増大が期待できるからである。なお、DCT係数の削除個数は、要求スループットに応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0071】
<制御用情報A:同時利用受信機数>
制御部44は、共用無線リソースを同時に利用する受信機の個数(同時利用受信機数)に応じて、DCT係数の削除個数を変更する。本実施形態では、共用無線リソースは、MIMO受信機2からMIMO送信機1への制御情報の送信に使用される無線リソースである。制御部44は、同時利用受信機数が基準値以下である場合には、DCT係数の削除個数を標準個数とする。一方、制御部44は、同時利用受信機数が基準値超過である場合には、DCT係数の削除個数を標準個数よりも多い拡大個数とする。これは、同時利用受信機数が多い場合には、共用無線リソースを節約するために、離散コサイン変換データの情報量を少なくするのである。なお、DCT係数の削除個数は、同時利用受信機数に応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0072】
(第2の情報圧縮方法)
第2の情報圧縮方法では、離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報(DCT係数)のビット数を削減する。どの周波数成分の情報(どのDCT係数)のビット数を削減するのかは、固定的に定められていてもよく、或いは、制御部44が指定してもよい。また、何ビット削減するのかは、固定的に定められていてもよく、或いは、制御部44が指定してもよい。
【0073】
本実施形態では、量子化部46が第2の情報圧縮方法を行う。量子化部46は、情報削除部45から離散コサイン変換データを受け取ると、該離散コサイン変換データに含まれるDCT係数のうち、ビット数削減対象のDCT係数のビット数を削減する。量子化部46は、該ビット数削減処理後の離散コサイン変換データ(圧縮データ)を可変長符号化部43へ出力する。
【0074】
以下、制御部44がビット数削減対象のDCT係数および何ビット削減するのかを指定する場合を説明する。
制御部44がビット数削減対象のDCT係数および何ビット削減するのかを指定する場合、制御部44は、DCT係数のビット数削減対象個数および削減ビット数を量子化部46へ指示する。これにより、量子化部46は、離散コサイン変換データ中の最も高い周波数成分のDCT係数から低い周波数成分のDCT係数の方へと順番に、ビット数削減対象個数分のDCT係数を選択する。そして、量子化部46は、選択したDCT係数のビット数を、削減ビット数だけ削減する処理(量子化ビット数の削減)を行う。制御部44は、DCT係数のビット数削減対象個数および削減ビット数を、チャネル情報圧縮符号化データBに係る制御データCとして制御情報送信部25へ出力する。
【0075】
図3のチャネル情報展開部14において、制御部54は、チャネル情報圧縮符号化データBに係る制御データCで指定されるDCT係数のビット数削減対象個数および削減ビット数を逆量子化部55に指示する。逆量子化部55は、可変長復号化部51から情報圧縮された離散コサイン変換データを受け取る。この離散コサイン変換データは、図2の量子化部46によってビット数削減対象DCT係数のビット数が削減ビット数だけ削減されており、不完全である。逆量子化部55は、可変長復号化部51から受け取った離散コサイン変換データに対し、制御部54から指示されたビット数削減対象個数分のDCT係数(離散コサイン変換データ中の最も高い周波数成分のDCT係数から低い周波数成分のDCT係数の方へと順番にビット数削減対象個数分)のビット数を削減ビット数だけ補完する処理(量子化ビット数の補完)を行う。逆量子化部55は、ビット補完後の離散コサイン変換データを情報補完部56へ出力する。
【0076】
なお、DCT係数のビット数削減対象個数のみが固定されていてもよく、或いは、削減ビット数のみが固定されていてもよい。どのDCT係数のビット数を削減するのかが固定的に定められている場合には、量子化部46は固定的に定められているビット数削減対象DCT係数のビット数を削減ビット数だけ削減し、逆量子化部55は固定的に定められているビット数削減対象DCT係数のビット数を削減ビット数だけ補完する。また、削減ビット数が固定的に定められている場合には、量子化部46はビット数削減対象DCT係数のビット数を固定的に定められている削減ビット数だけ削減し、逆量子化部55はビット数削減対象DCT係数のビット数を固定的に定められている削減ビット数だけ補完する。
【0077】
次に、DCT係数のビット数削減対象個数または削減ビット数を変更する方法について説明する。
制御部44は、情報取得部2から入力される制御用情報Aに基づいて、DCT係数のビット数削減対象個数または削減ビット数を変更する。これにより、制御部44は、離散コサイン変換データの圧縮率を変化させる。以下、制御用情報Aの種類別に説明する。
【0078】
<制御用情報A:MIMO受信機2の移動速度>
制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度に応じて、DCT係数のビット数削減対象個数または削減ビット数を変更する。制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度が基準速度以下である場合には、DCT係数のビット数削減対象個数および削減ビット数を各標準値とする。一方、制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度が基準速度超過である場合には、DCT係数のビット数削減対象個数または削減ビット数を各標準値よりも多い拡大値とする。なお、DCT係数のビット数削減対象個数および削減ビット数は、MIMO受信機2の移動速度に応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0079】
これにより、上述のDCT係数の削除個数の変更と同様に、MIMO受信機2の移動速度に応じて離散コサイン変換データの情報量を変化させることにより、MIMO送信機1に供給するチャネル応答行列の精度を調整し、MIMO送信機1における送信データのプリコーディングをチャネル応答行列の変化速度に対応させるようにする。
【0080】
<制御用情報A:要求スループット>
制御部44は、MIMO伝送される情報を使用するアプリケーションの要求スループットに応じて、DCT係数のビット数削減対象個数または削減ビット数を変更する。制御部44は、要求スループットが基準値以下である場合には、DCT係数のビット数削減対象個数および削減ビット数を各標準値とする。一方、制御部44は、要求スループットが基準値超過である場合には、DCT係数のビット数削減対象個数または削減ビット数を各標準値よりも少ない縮小値とする。なお、DCT係数のビット数削減対象個数および削減ビット数は、要求スループットに応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0081】
これにより、上述のDCT係数の削除個数の変更と同様に、アプリケーションの要求スループットが大きい場合には、離散コサイン変換データの情報量を多くしてチャネル応答行列の精度を高くすることによりプリコーディング効果を高め、スループットの増大を期待する。
【0082】
<制御用情報A:同時利用受信機数>
制御部44は、共用無線リソースを同時に利用する受信機の個数(同時利用受信機数)に応じて、DCT係数のビット数削減対象個数または削減ビット数を変更する。本実施形態では、共用無線リソースは、MIMO受信機2からMIMO送信機1への制御情報の送信に使用される無線リソースである。制御部44は、同時利用受信機数が基準値以下である場合には、DCT係数のビット数削減対象個数および削減ビット数を各標準値とする。一方、制御部44は、同時利用受信機数が基準値超過である場合には、DCT係数のビット数削減対象個数または削減ビット数を各標準値よりも多い拡大値とする。なお、DCT係数のビット数削減対象個数および削減ビット数は、同時利用受信機数に応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0083】
これにより、上述のDCT係数の削除個数の変更と同様に、同時利用受信機数が多い場合には、離散コサイン変換データの情報量を少なくして共用無線リソースを節約する。
【0084】
[可変長符号化処理及び可変長復号化処理、並びに制御処理]
可変長符号化部43は、可変長符号化の符号化単位の大きさを変更可能である。制御部44は、可変長符号化の符号化単位の大きさを可変長符号化部43へ指示する。これにより、可変長符号化部43は、制御部44から指示された符号化単位で、情報圧縮部42から受け取った圧縮データを可変長符号化する。制御部44は、可変長符号化の符号化単位の大きさを、チャネル情報圧縮符号化データBに係る制御データCとして制御情報送信部25へ出力する。
【0085】
図3のチャネル情報展開部14において、制御部54は、チャネル情報圧縮符号化データBに係る制御データCで指定される可変長符号化の符号化単位の大きさを可変長復号化部51に指示する。可変長復号化部51は、制御情報受信部13から受け取ったチャネル情報圧縮符号化データBを、制御部54から指示された符号化単位で可変長復号化する。可変長復号化部51は、可変長復号化により得られた圧縮データを情報展開部52へ出力する。
【0086】
次に、可変長符号化の符号化単位の大きさを変更する方法について説明する。
制御部44は、情報取得部2から入力される制御用情報Aに基づいて、可変長符号化の符号化単位の大きさを変更する。以下、制御用情報Aの種類別に説明する。
【0087】
<制御用情報A:MIMO受信機2の移動速度>
制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度に応じて、可変長符号化の符号化単位の大きさを変更する。制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度が基準速度以下である場合には、可変長符号化の符号化単位の大きさを標準サイズとする。一方、制御部44は、自MIMO受信機2の移動速度が基準速度超過である場合には、可変長符号化の符号化単位の大きさを標準サイズよりも小さい縮小サイズとする。なお、可変長符号化の符号化単位の大きさは、MIMO受信機2の移動速度に応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0088】
これにより、上述の離散コサイン変換の変換単位の大きさの変更と同様に、MIMO受信機2の移動速度に応じて可変長符号化の符号化単位の大きさを変化させることにより、チャネル応答行列をMIMO送信機1に供給する間隔を調整し、MIMO送信機1における送信データのプリコーディングをチャネル応答行列の変化速度に対応させるようにする。
【0089】
<制御用情報A:MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約>
制御部44は、自MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約に応じて、可変長符号化の符号化単位の大きさを変更する。自MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約は、情報取得部26から制御用情報Aとして制御部44に供給される。制御部44は、自MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約が基準以下(基準と同等か緩い)である場合には、可変長符号化の符号化単位の大きさを標準サイズとする。一方、制御部44は、自MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約が基準超過(基準よりも厳しい)である場合には、可変長符号化の符号化単位の大きさを標準サイズよりも小さい縮小サイズとする。なお、可変長符号化の符号化単位の大きさは、MIMO受信機2のハードウェアリソースの使用上の制約に応じて細かく段階的に変化させるようにしてもよい。
【0090】
上述した実施形態によれば、チャネル応答行列の精度を良好に保ちながら情報圧縮を行うことができる。これにより、MIMOシステムにおいて、MIMO受信機2で得られたチャネル応答行列に的確なプリコーディングをMIMO送信機1で行うことができると共に、MIMO受信機2からMIMO送信機1へ送るチャネル応答行列の情報量を削減することができるようになる。この結果、プリコーディング効果の確保と共に、チャネル応答行列の伝達に使用する無線リソース量の削減を図ることが可能になる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、図2のチャネル情報圧縮部24の情報圧縮部42において、情報削除部45または量子化部46のいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。この場合、図3のチャネル情報展開部14の情報展開部52においては、チャネル情報圧縮部24の情報圧縮部42に対応させて逆量子化部55または情報補完部56のいずれか一方のみを設ければよい。
【0092】
また、図2のチャネル情報圧縮部24の情報圧縮部42において、可変長符号化部43は設けなくてもよい。この場合、図3のチャネル情報展開部14においては、可変長復号化部43は設けなくてもよい。
【0093】
また、上述の実施形態では、MIMOシステムに適用し、チャネル情報はMIMOシステムの送受アンテナ間のチャネル応答行列であるとしたが、MIMOシステム以外の無線通信システムに適用し、通信チャネルの状態を表すチャネル情報を離散コサイン変換するようにしてもよい。また、上述の実施形態では、マルチキャリア伝送方式に適用したが、シングルキャリア伝送方式に適用してもよい。
【0094】
また、図2に示すチャネル情報圧縮部24の機能または図3に示すチャネル情報展開部14の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、チャネル情報圧縮処理またはチャネル情報展開処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0095】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0096】
1…MIMO送信機、2…MIMO受信機、11…プリコーディング部、12…送信部、13…制御情報受信部、14…チャネル情報展開部、21…受信部、22…チャネル推定部、23…受信処理部、24…チャネル情報圧縮部、25…制御情報送信部、26…情報取得部、41…DCT部、42…情報圧縮部、43…可変長符号化部、44…制御部、45…情報削除部、46…量子化部、51…可変長復号化部、52…情報展開部、53…IDCT部、54…制御部、55…逆量子化部、56…情報補完部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信チャネルの状態を表すチャネル情報を離散コサイン変換する離散コサイン変換部と、
前記離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮する情報圧縮部と、
を備えたことを特徴とするチャネル情報圧縮装置。
【請求項2】
前記離散コサイン変換部は、同一通信チャネルの状態を表すチャネル情報から構成される変換単位で離散コサイン変換することを特徴とする請求項1に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項3】
前記チャネル情報は、マルチキャリア伝送方式のサブキャリア毎に取得されるものであり、
前記離散コサイン変換部は、連続したサブキャリア又は等間隔で離れたサブキャリアのチャネル情報から構成される変換単位で離散コサイン変換することを特徴とする請求項2に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項4】
前記チャネル情報は、MIMOシステムの送受アンテナ間のチャネル応答行列であり、
前記離散コサイン変換部は、マルチキャリア伝送方式を使用する前記MIMOシステムの各サブキャリアの前記チャネル応答行列の同じ要素から構成される変換単位で離散コサイン変換することを特徴とする請求項1に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項5】
前記チャネル情報は、一定間隔で取得されるものであり、
前記離散コサイン変換部は、1つ又は連続する複数取得回数分のチャネル情報から構成される変換単位で離散コサイン変換することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項6】
前記情報圧縮部は、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変更可能であり、
前記チャネル情報圧縮装置は、
前記通信チャネルを受信する受信機の移動速度に応じて、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変化させる制御部を備えた、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項7】
前記情報圧縮部は、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変更可能であり、
前記チャネル情報圧縮装置は、
前記通信チャネルで伝送される情報を使用するアプリケーションの要求スループットに応じて、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変化させる制御部を備えた、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項8】
前記情報圧縮部は、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変更可能であり、
前記チャネル情報圧縮装置は、
共用無線リソースを同時に利用する受信機の個数に応じて、前記離散コサイン変換データの圧縮率を変化させる制御部を備えた、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項9】
前記離散コサイン変換部は、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更可能であり、
前記チャネル情報圧縮装置は、
前記通信チャネルを受信する受信機の移動速度に応じて、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変化させる制御部を備えた、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項10】
前記離散コサイン変換部は、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更可能であり、
前記チャネル情報圧縮装置は、
前記通信チャネルを受信する受信機のハードウェアリソースの使用上の制約に応じて、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変化させる制御部を備えた、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項11】
前記受信機はソフトウェア無線受信機であり、
前記制御部は、ソフトウェア無線に使用可能なメモリ量の制約に応じて、前記離散コサイン変換の変換単位の大きさを変化させることを特徴とする請求項10に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項12】
前記離散コサイン変換データの圧縮データを可変長符号化する、符号化単位の大きさを変更可能な可変長符号化部と、
前記通信チャネルを受信する受信機の移動速度に応じて、前記符号化単位の大きさを変化させる制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項13】
前記離散コサイン変換データの圧縮データを可変長符号化する、符号化単位の大きさを変更可能な可変長符号化部と、
前記通信チャネルを受信する受信機のハードウェアリソースの使用上の制約に応じて、前記符号化単位の大きさを変化させる制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項14】
前記受信機はソフトウェア無線受信機であり、
前記制御部は、ソフトウェア無線に使用可能なメモリ量の制約に応じて、前記符号化単位の大きさを変化させることを特徴とする請求項13に記載のチャネル情報圧縮装置。
【請求項15】
通信チャネルの状態を表すチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データを展開する情報展開部と、
前記展開により得られた離散コサイン変換データを逆離散コサイン変換する逆離散コサイン変換部と、
を備えたことを特徴とするチャネル情報展開装置。
【請求項16】
前記情報展開部は、前記離散コサイン変換データの展開率を変更可能であり、
前記チャネル情報展開装置は、前記圧縮データに係る制御情報に従って前記情報展開部を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項15に記載のチャネル情報展開装置。
【請求項17】
前記逆離散コサイン変換部は、前記逆離散コサイン変換の変換単位の大きさを変更可能であり、
前記チャネル情報展開装置は、前記離散コサイン変換データに係る制御情報に従って、前記逆離散コサイン変換部を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項15又は請求項16に記載のチャネル情報展開装置。
【請求項18】
通信チャネルの状態を表すチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データの可変長符号化データを可変長復号化する、符号化単位の大きさを変更可能な可変長復号化部と、
前記可変長符号化データに係る制御情報に従って、前記可変長復号化部を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項15から請求項17のいずれか1項に記載のチャネル情報展開装置。
【請求項19】
通信チャネルの状態を表すチャネル情報を離散コサイン変換するステップと、
前記離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮するステップと、
を含むことを特徴とするチャネル情報圧縮方法。
【請求項20】
通信チャネルの状態を表すチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データを展開するステップと、
前記展開により得られた離散コサイン変換データを逆離散コサイン変換するステップと、
を含むことを特徴とするチャネル情報展開方法。
【請求項21】
通信チャネルの状態を表すチャネル情報を離散コサイン変換するステップと、
前記離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮するステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項22】
通信チャネルの状態を表すチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データを展開するステップと、
前記展開により得られた離散コサイン変換データを逆離散コサイン変換するステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項23】
MIMOシステムの受信機において、
前記MIMOシステムの送信機と自受信機との間のチャネル情報を離散コサイン変換する離散コサイン変換部と、
前記離散コサイン変換により得られた離散コサイン変換データに含まれる高周波成分の情報を圧縮する情報圧縮部と、
前記圧縮データを前記送信機へ送信する送信部と、
を備えたことを特徴とする受信機。
【請求項24】
MIMOシステムの送信機において、
自送信機と前記MIMOシステムの受信機との間のチャネル情報の離散コサイン変換データの圧縮データを前記受信機から受信する受信部と、
前記受信データを展開する情報展開部と、
前記展開により得られた離散コサイン変換データを逆離散コサイン変換する逆離散コサイン変換部と、
前記逆離散コサイン変換により取得されたチャネル情報を用いて、送信データのプリコーディングを行うプリコーディング部と、
を備えたことを特徴とする送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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