説明

チャバザイト型ゼオライト及びその製造方法

【課題】
本発明の課題は、触媒担体や吸着剤の基材として実用的な特性、耐久性及び耐熱性が期待され、かつ経済合理性のあるチャバザイト型ゼオライトを提供することに係る。
【解決手段】
SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径が1.5μm以上のチャバザイト型ゼオライトは耐久性及び耐熱性が高い。その様なチャバザイト型ゼオライトは構造指向剤と水のSiOに対するモル比が、
0.05≦構造指向剤/SiO<0.13
5≦HO/SiO<30
である原料組成物を、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオンの存在下で結晶化させることによって製造できる。その構造指向剤としては、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム塩が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高シリカかつ大結晶を有するチャバザイト型ゼオライト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チャバザイト型ゼオライトは、3.8×3.8オングストロームの酸素8員環から構成される3次元細孔構造を有するゼオライトであり、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)において、結晶構造の詳細が同定されたゼオライトとして、CHAという構造コードで命名かつ分類されている(非特許文献1)。
【0003】
チャバザイト型ゼオライトは天然に産出するゼオライトとして知られており、典型的にはCa2+[Si24Al1272]の組成を有する(非特許文献2)。合成ゼオライトとしての例は、特許文献1にゼオライトD、特許文献2にゼオライトRとして、SiO/Al比が3.45〜4.9のチャバザイト型ゼオライトが開示されている。
【0004】
特許文献3及び特許文献4にはSiO/Al比が5〜50の、いわゆる高シリカチャバザイト型ゼオライトとその合成方法が、SSZ−13として開示されている。
また特許文献5には、SiO/Al比が20〜50で結晶径が0.5μm以下のチャバザイト型ゼオライトが、SSZ−62として開示されている。更にフッ素を添加することによりSiO/Al比が100以上のチャバザイト型ゼオライトが合成できることが、特許文献6及び非特許文献3に開示されている。
【0005】
合成ゼオライトはその結晶構造により、規則的でかつ一定の大きさの細孔を有し、この細孔構造を利用して、乾燥剤、極性や分子径の差異を利用した各種の無機又は有機分子の吸着剤、固体酸触媒などとして工業的に用いられている。例えばチャバザイト型ゼオライトもアルコールなどの含酸素有機化合物を低級オレフィンへと化学変換する触媒としての利用が知られている(特許文献6及び特許文献7)。他にも1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)と1−クロロ−2,2−ジフルオロエチレン(HCFC1122)の混合物からHFA134aを精製する吸着分離剤(特許文献8)、プロピレンとプロパンの混合物からプロピレンを吸着させてプロパンと分離する吸着分離剤(特許文献9)、窒素との混合ガスから酸素、二酸化炭素またはヘリウムを分離する吸着分離剤(特許文献10)、メチルアミン類を合成する触媒(特許文献11)、エタンのアンモ酸化によりアセトニトリルを製造する触媒(特許文献12)、自動車排ガス中における窒素酸化物の炭化水素による選択還元触媒(特許文献13)、生理用品を構成する繊維部材における臭気吸収剤(特許文献14)等への利用が開示されている。
【0006】
このようにチャバザイト型ゼオライトは多様な用途、特に吸着剤や触媒担体としての利用が期待されているものであるが、工業的に使用するためには吸着剤あるいは触媒担体としての耐久性、例えば加熱再生工程を含む吸脱着プロセスでは繰り返し加熱されることによっても吸着性能が低下しないこと、或いは排ガス浄化に利用される触媒では高温下で触媒性能が維持される熱的な耐久性が必要である。そのため、従来では得られなかった、より優れた耐久性及び耐熱性を有するチャバザイト型ゼオライトが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許868,846号
【特許文献2】米国特許3,030,181号
【特許文献3】米国特許4,544,538号
【特許文献4】米国特許4,665,110号
【特許文献5】米国特許6,709,644号
【特許文献6】特表2007−534582号公報
【特許文献7】特開昭60−92221号公報
【特許文献8】特開平5−78266号公報
【特許文献9】米国特許6,488,741号
【特許文献10】特表2005−503260号公報
【特許文献11】特開平8−59566号公報
【特許文献12】特開平9−124578号公報
【特許文献13】特表2001−525241号公報
【特許文献14】特表2002−512083号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES,Fifth Revised Edition,p.102(2001)
【非特許文献2】Nature,Vol.181,p.1794(1957)
【非特許文献3】Chem.Commun,p.1881(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、触媒担体や吸着剤の基材として高い耐久性、耐熱性のあるチャバザイト型ゼオライト及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、チャバザイト型ゼオライトの耐久性向上及びその製造方法について鋭意検討を重ねた結果、SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径1.5μm以上のチャバザイト型ゼオライトでは、耐久性(耐熱性)が高く、その様なチャバザイト型ゼオライトが従来とは異なる条件で製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、下記(1)〜(3)に存する。
【0012】
(1)SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径が1.5μm以上であることを特徴とするチャバザイト型ゼオライト。
【0013】
(2)原料組成物における構造指向剤と水のSiOに対するモル比が、
0.05≦構造指向剤/SiO<0.13
5≦HO/SiO<30
である原料組成物を、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオンの存在下において結晶化させること、及び、その構造指向剤が、N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩;及びN,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムイオン、N−アルキル−3−キヌクリジノールイオン、またはN,N,N−トリアルキルエキソアミノノルボルナンをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする(1)に記載のチャバザイト型ゼオライトの製造方法。
【0014】
(3)その構造指向剤が、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムハロゲン化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムメチルカーボネート塩及びN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする(2)に記載のチャバザイト型ゼオライトの製造方法。
【0015】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、SiO/Alモル比が15以上50以下の高シリカチャバザイトである。SiO/Alモル比が15より小さい場合には吸着剤あるいは触媒担体に有用な耐久性が得られ難く、50より大きい場合には、吸着剤あるいは触媒担体に有用な固体酸性が不十分となる。
【0016】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは平均粒子径が1.5μm以上であることが必須である。合成ゼオライトの工業的な製造技術、及びその吸着剤や触媒担体としての利用の観点から、平均粒子径としては1.5μm以上10μm以下が好ましい。従来報告されている1.5μm未満の結晶粒子、特に1.0μm未満の結晶粒子では吸着剤あるいは触媒担体に用いた場合、耐久性、耐熱性が低くなる。
【0017】
本発明における平均粒子径は、レーザー回折散乱法による粒子径分布測定(体積分布)で得られる10%粒子径や50%粒子径、又は走査電子顕微鏡(SEM)による観察によって評価できる。
【0018】
レーザー回折散乱法ではゼオライトを水中に分散させて、超音波式ホモジナイザーで結晶粒子の分散状態を均一化にする処理を施した後に測定することで、再現性良く定量化することができる。
【0019】
また本発明のチャバザイト型ゼオライトは菱面がはっきりと観察できる結晶粒子形態を有しているため、例えば、5000倍の倍率で撮影した1つあるいは複数のSEM写真において任意に選択した50個の結晶粒子を測った粒子径を加重平均することによって、粒子径を評価することもできる。本発明のチャバザイト型ゼオライトは単分散しているため、レーザー回折散乱法による粒子径分布測定で得られた10%粒子径と良い相関が得られる。
【0020】
次に本発明のチャバザイト型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0021】
本発明のチャバザイト型ゼオライトの原料は、シリカ源、アルミニウム源、アルカリ源、構造指向剤(これ以降、“SDA”と称する。)と水から基本的に構成される。また、種晶などの結晶化促進作用を有する成分を添加しても良い。
【0022】
シリカ源として、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを、アルミナ源として、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、金属アルミニウムなどを用いることができ、他の成分と十分均一に混合できる形態のものが望ましい。
【0023】
アルカリ源は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、アルミン酸塩及び珪酸塩中のアルカリ成分、アルミノシリケートゲル中のアルカリ成分などを用いることができる。
【0024】
SDAとしては、トリアルキルアダマンタンアンモニウムをカチオンとする水酸化物塩、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩、及び、N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン、N−アルキル−3キヌクリジノールイオン、N,N,N−トリアルキル−エキソアミノノルボルナンをカチオンとする水酸化物塩、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することができる。
【0025】
特に、SDAとして、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物(これ以降、“TMADAOH”と略記する。)、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムハロゲン化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムメチルカーボネート塩及びN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を使用する事が可能である。
【0026】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、SDA/SiO比が0.05以上0.13未満、HO/SiO比が5以上30未満で製造することができる。
【0027】
SDA/SiO比が0.13以上では、従来の様に結晶の平均粒子径が1.5μm以下のチャバザイト型ゼオライトしか得られない。またSDAは高価であるため、経済合理性にも欠ける。一方、SDA/SiO比が0.05未満では、チャバザイト型ゼオライトの結晶化が不十分となり、副生物(不純物)が生成する。
【0028】
O/SiO比が30以上であると、収量が低くなり不経済である。一方、5未満では、原料組成物の粘度が増大し流動性が無くなるため、工業的な製造が困難となる。またいずれの場合にも副生物(不純物、未反応物の残存)が発生し易い。
【0029】
本発明の原料組成物のSiO/Al比としては、16以上100以下が好ましい。16より小さい、あるいは100より大きいと、SiO/Al比が15以上50以下のチャバザイト型ゼオライトの合成が困難である。
【0030】
水酸イオン量の指標であるOH/SiO比は0.1以上0.9未満が好ましい。より好ましくは0.15〜0.5である。0.1未満であるとゼオライトの結晶化が進行し難く、また0.9以上の場合はシリカ成分の溶解が促進されるため、本発明に係るSiO/Al比と粒子径を有するチャバザイト型ゼオライトが得られ難い。
【0031】
また本発明のチャバザイト型ゼオライトの製造には、鉱化作用を有するアルカリ金属イオンとして、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種を存在させて結晶化させる。これらのアルカリ金属イオンが含まれない場合、SDA/SiO比が0.13未満において結晶化の進行が不十分となり、また副生物(不純物結晶)が生成する。更には本発明に係る平均粒子径が1.5μm以上のチャバザイト型ゼオライトが得られ難い。また経済合理性の観点からもKイオンが好ましい。
【0032】
水、シリカ原料、アルミナ原料、アルカリ成分、及びSDAから成る原料組成物を密閉式圧力容器中で、100〜200℃の任意の温度で、十分な時間をかけて結晶化させることによりチャバザイト型ゼオライトを製造することができる。結晶化の際、静置した状態でも良いが、原料組成物は攪拌混合された状態が好ましい。結晶化終了後、十分放冷し、固液分離、十分量の純水で洗浄し、100〜150℃の任意の温度で乾燥して本発明に係るチャバザイト型ゼオライトが得られる。
【0033】
得られたチャバザイト型ゼオライトはそのまま吸着剤、触媒担体あるいはイオン交換体として使用することができる。また、得られたチャバザイト型ゼオライトは細孔内にSDA及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方を含有しており、必要に応じてこれらを除去した後に使用することもできる。SDA及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方の除去処理は、酸性溶液やSDA分解成分を含んだ薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いた交換処理、熱分解処理を採用することができ、これらの処理を組合せても良い。更には、ゼオライトのイオン交換能を利用してH型やNH型に変換して用いることもでき、その方法は公知の技術を採用することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、触媒担体や吸着剤の基材としての耐久性及び耐熱性が高い。更には耐久性、耐熱性の高いチャバザイト型ゼオライトを高価な有機構造指向剤の使用量が少ない条件で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ゼオライト3のSEM写真
【図2】比較ゼオライト1のSEM写真
【実施例】
【0036】
以下の実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1(ゼオライト1の製造)
N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物13%水溶液(これ以降、“TMADAOH13%水溶液” と称する。)21.3gに、純水17.4g、水酸化カリウム48%水溶液3.5g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル7.7gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.036Al:0.11TMADAOH:0.04NaO:0.13KO:18HOとした。
【0038】
原料組成物をステンレス製オートクレーブに装填し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が18.7であった。このチャバザイト型ゼオライトに純水を加え固形分1%のスラリーとし、超音波分散を2分間施した後にレーザー回折散乱法による粒子径分布測定(体積平均)を行ったところ、10%粒子径が1.35μm、50%粒子径が1.93μmであった。また、5000倍の倍率で撮影したSEM写真から任意の50個の結晶粒子を選択し、その各粒子径を平均して得た粒子径(これ以降、“SEM径”と称する。)は1.64μmであった。このチャバザイト型ゼオライトをゼオライト1とした。
【0039】
実施例2(ゼオライト2の製造)
シリカ原料に無定形シリカ粉末、アルミナ原料に水酸化アルミニウムを用いた以外は、実施例1と同様な方法で実施した。
【0040】
TMADAOH13%水溶液22.1gに、純水18.4g、水酸化ナトリウム48%水溶液0.8g、水酸化ナトリウム48%水溶液3.6g、水酸化アルミニウム0.6g、東ソーシリカ製の無定形シリカ粉末(商品名:ニップシールVN−3)8.1gを加えよく混合した。
【0041】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が19.5であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が1.41μm、50%粒子径が1.99μmであった。また、SEM径は1.65μmであった。このチャバザイト型ゼオライトをゼオライト2とした。
【0042】
実施例3(ゼオライト3の製造)
TMADAOH13%水溶液19.0gに、純水21.4g、水酸化カリウム48%水溶液1.7g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル7.9gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.036Al:0.10TMADAOH:0.04NaO:0.06KO:18HOとした。
【0043】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が23.7であった。
【0044】
以下の表1に、チャバザイト型ゼオライトのX線回折パターン(米国特許4,544,538号)と実施例3で得られた生成物のX線回折パターンの比較を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が1.83μm、50%粒子径が3.09μmであった。また、SEM径は1.93μmであった。このチャバザイト型ゼオライトをゼオライト3とした。
【0047】
実施例4(ゼオライト4の製造)
TMADAOH13%水溶液16.0gに、純水24.7g、水酸化カリウム48%水溶液1.3g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル8.0gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.036Al:0.08TMADAOH:0.04NaO:0.04KO:18HOとした。
【0048】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が25.2であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が2.21μm、50%粒子径が4.48μmであった。また、SEM径は2.08μmであった。このチャバザイト型ゼオライトをゼオライト4とした。
【0049】
実施例5(ゼオライト5の製造)
TMADAOH13%水溶液19.0gに、純水21.3g、水酸化カリウム48%水溶液2.0g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル7.7gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.021Al:0.10TMADAOH:0.04NaO:0.04KO:18HOとした。
【0050】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で70時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が38.0であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が2.02μm、50%粒子径が3.75μmであった。また、SEM径は2.01μmであった。このチャバザイト型ゼオライトをゼオライト5とした。
【0051】
実施例6(ゼオライト6の製造)
TMADAOH13%水溶液18.9gに、純水20.7g、水酸化カリウム48%水溶液2.8g、脱Na処理を行った無定形アルミノシリケートゲル7.6gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.034Al:0.10TMADAOH:0.10KO:18HOとした。
【0052】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で70時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が25.4であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が1.98μm、50%粒子径が3.48μmであった。また、SEM径は1.92μmであった。このチャバザイト型ゼオライトをゼオライト6とした。
【0053】
実施例7(ゼオライト7の製造)
TMADAOH13%水溶液18.5gに、純水19.6g、水酸化セシウム50%水溶液4.3g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル7.7gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.036Al:0.10TMADAOH:0.04NaO:0.06CsO:18HOとした。
【0054】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で182時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が22.9であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が2.17μm、50%粒子径が4.22μmであった。また、SEM径は2.03μmであった。このチャバザイト型ゼオライトをゼオライト7とした。
【0055】
実施例8(ゼオライト8の製造)
N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム臭化物(これ以降、“TMADABr”と略記する。)25%水溶液10.6gに、純水29.7g、水酸化カリウム48%水溶液1.7g、水酸化ナトリウム48%水溶液0.1g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル7.9gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.034Al:0.08TMADABr:0.05NaO:0.06KO:18HOとした。
【0056】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で70時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が25.8であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が2.29μm、50%粒子径が5.78μmであった。また、SEM径は1.85μmであった。このチャバザイト型ゼオライトをゼオライト8とした。
【0057】
比較例1(比較ゼオライト1の製造)
米国特許4,665,110号に開示されている方法を参照して、チャバザイト型ゼオライトを合成した。
【0058】
TMADAOH13%水溶液17.9gに、純水27.2g、水酸化ナトリウム48%水溶液0.9g、水酸化アルミニウム0.29g、東ソーシリカ製の無定形シリカ粉末(商品名:ニップシールVN−3)3.7gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.036Al:0.20TMADAOH:0.10NaO:44HOとした。
【0059】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が22.3であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が0.71μm、50%粒子径が1.25μmであった。また、SEM径は0.48μmであった。このチャバザイト型ゼオライトを比較ゼオライト1とした。
【0060】
比較例2(比較ゼオライト2の製造)
TMADAOH13%水溶液24.8gに、純水18.5g、水酸化ナトリウム48%水溶液1.2g、水酸化アルミニウム0.40g、東ソーシリカ製の無定形シリカ粉末(商品名:ニップシールVN−3)5.1gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.036Al:0.20TMADAOH:0.10NaO:30HOとした。
【0061】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折から、生成物はアモルファスのみであった。
【0062】
比較例3(比較ゼオライト3の製造)
TMADAOH13%水溶液24.6gに、純水14.7g、水酸化ナトリウム48%水溶液3.1g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル7.7gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.035Al:0.13TMADAOH:0.20NaO:18HOとした。
【0063】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が18.5であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が0.65μm、50%粒子径が1.26μmであった。また、SEM径は0.39μmであった。このチャバザイト型ゼオライトを比較ゼオライト3とした。
【0064】
比較例4(比較ゼオライト4の製造)
TMADAOH13%水溶液21.5gに、純水18.1g、水酸化ナトリウム48%水溶液2.6g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル7.8gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.035Al:0.11TMADAOH:0.17NaO:18HOとした。
【0065】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折から、生成物はモルデナイト型ゼオライトのみであった。
【0066】
比較例5(比較ゼオライト5の製造)
TMADAOH13%水溶液22.0gに、純水18.6g、水酸化ナトリウム48%水溶液1.6g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル7.8gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.035Al:0.11TMADAOH:0.12NaO:18HOとした。
【0067】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が24.2であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が0.23μm、50%粒子径が0.38μmであった。また、SEM径は0.18μmであった。このチャバザイト型ゼオライトを比較ゼオライト5とした。
【0068】
比較例6(比較ゼオライト6の製造)
TMADAOH13%水溶液19.1gに、純水21.8g、水酸化ナトリウム48%水溶液1.2g、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムから調製した無定形アルミノシリケートゲル8.0gを加えよく混合した。原料組成物はSiO:0.036Al:0.10TMADAOH:0.10NaO:18HOとした。
【0069】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライトで、SiO/Al比が24.4であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様に粒子径分布測定を行ったところ、10%粒子径が0.33μm、50%粒子径が1.49μmであった。また、SEM径は0.32μmであった。このチャバザイト型ゼオライトを比較ゼオライト6とした。
【0070】
以下の表2に、実施例1〜8及び比較例1〜6の原料組成物と生成物を示し、表3にその生成物のSiO/Al比、粒子径分布測定から得た粒子径、および及びSEM写真から定量した粒子径を示す。
【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
実施例9(ゼオライトの耐熱水性試験)
ゼオライト3及び比較ゼオライト1の乾燥粉末を空気流通下600℃で2時間焼成した後に、各々を加圧成形後、粉砕して12〜20メッシュに整粒した。整粒したゼオライト3mlを常圧固定床流通式反応管に充填し、水分を10体積%含有させた空気を300ml/minで流通しながら、900℃で1時間及び16時間の2水準で処理した。ゼオライトの耐熱性は、耐熱水処理後の結晶化度で評価した。結晶化度は粉末X線回折を測定し、表1に示すd=4.25の回折ピークにおいて、耐熱水処理前を100としたピーク強度比として算出した。表4に各耐熱水処理後の結晶化度(%)を示した。本願のチャバザイト型ゼオライトは従来のチャバザイト型ゼオライトに比して結晶化度の残存率が高く、耐熱性に優れていることが示された。
【0074】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の高シリカかつ大結晶を有するチャバザイト型ゼオライトは自動車用排ガスの除去に使用することが期待されており、そのチャバザイト型ゼオライトは、本発明の製造方法により製造する事が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径が1.5μm以上であることを特徴とするチャバザイト型ゼオライト。
【請求項2】
原料組成物における構造指向剤と水のSiOに対するモル比が、
0.05≦構造指向剤/SiO<0.13
5≦HO/SiO<30
である原料組成物を、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオンの存在下において結晶化させること、及びその構造指向剤が、N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩;及びN,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムイオン、N−アルキル−3−キヌクリジノールイオン、またはN,N,N−トリアルキルエキソアミノノルボルナンをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のチャバザイト型ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
その構造指向剤が、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムハロゲン化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムメチルカーボネート塩及びN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載のチャバザイト型ゼオライトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−168269(P2010−168269A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285460(P2009−285460)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】