説明

チューブ容器

【課題】広い面積に対して塗り易いばかりでなく、不均一な顎堤及び/又は口蓋に対しても空気等の包み込みが少なく、装着後の義歯を安定して維持することができる義歯安定剤用チューブ容器及びチューブ型義歯安定剤の提供。
【解決手段】
上記目的を達成するために、本発明の義歯安定剤を収容するためのチューブ容器においては、義歯安定剤の絞り出しノズル開口部の断面形状を、高さhが底辺の長さaの70%以下である扁平三角形又は扁平半円形であり且つ前記底辺が当該チューブ容器のエンドシール部のシール面に略平行としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して粘着性物質用のチューブ容器に関し、更に特定すると、入れ歯すなわち義歯安定剤用のチューブ容器及び当該義歯安定剤が充填されたチューブ型義歯安定剤に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯を安定させる補助として義歯安定剤が使用される場合が多い。義歯安定剤としては、ペースト状、パウダー状、テープ状、シート状等種々存在するが、近年においてはペースト状のものが比較的多く使用されて来ている。ペースト状のものにおいては、使用の簡便さからゴム状粘着性の義歯安定剤をチューブ容器に充填し且つ使用時にペースト状歯磨きのように絞り出して使用するものがある。
【0003】
このようなチューブ型義歯安定剤は、押し出し可能なチューブ容器を加圧することにより押し出される。押し出される義歯安定剤の形状はチューブ容器の口部の開口端又は開口端を形成するノズルの断面形状により決まる。
【0004】
このようなチューブ型義歯安定剤の例として、義歯安定剤を義歯床に塗り易く且つ義歯を口腔内に装着後に義歯安定剤が顎堤及び/又は口蓋に均一に広がるように、ノズルの断面形状を矩形形状としたものがある(特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、義歯床は必ずしも均一な平面ではなく、種々の窪みや凹部が設けられ、上記従来技術による矩形形状ノズルの場合には顎堤及び/又は口蓋の窪みや凹部の底まで義歯安定剤がまんべんなく行き届かず、極端な場合には義歯床と義歯安定剤との間に空気を包み込んだまま装着されてしまい、安定性の維持に欠け脱離し易いという問題があった。
【0005】
一方、一般的な粘性物質を充填したチューブ容器のノズル形状を、内容物の目的に応じて種々の形状としたものが提案されている(特許文献3)。しかしながら、当該チューブ容器は、義歯安定剤用として考えられたものではなく、義歯安定剤として使用した場合に適切ではない点が種々存在するという問題がある。
【特許文献1】特表2006−506282号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許EP 0178 377 A2公報
【特許文献3】米国特許5,823,387公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、義歯床面の広い面積に対して塗り易いばかりでなく、不均一な義歯床に対しても空気等の包み込みが少なく塗布することができ、義歯を口腔内に装着する際も空気を確実に排除して装着後の義歯を安定して維持することができる義歯安定剤用チューブ容器及びチューブ型義歯安定剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の義歯安定剤を収容するためのチューブ容器においては、義歯安定剤の絞り出し開口端の断面形状を、高さhが底辺の長さaの70%以下である扁平三角形又は扁平半円形であり且つ前記底辺が当該チューブ容器のエンドシール部のシール面に略平行としている。
【0008】
前記扁平三角形又は扁平半円形の高さhは底辺の長さaの70%乃至30%であるのが好ましく、扁平三角形のなす角はいずれもが30°以上であるのが好ましい。高さhが70%を超えると、内容物の義歯安定剤を薄く伸ばすことが困難になる。また、三角形の鋭角があまくなり、隙間への差し込みが難しくなる。更に塗布量が多くなってしまう。一方、高さhが30%より小さいと、内容物の義歯安定剤がノズルに詰まり易く、角の部分に溜まって固まってしまって衛生的でない。更に、容器の成形上困難でもある。更に、押し出し効率が低下し、設計的に効率が悪い。
【0009】
更に、ノズル部の開口端は、通常は義歯安定剤の押し出し方向に対して垂直とされるが、必ずしも垂直にする必要はなく、この開口端はノズル部の隙間への挿入或いは隙間への義歯安定剤の注入を容易にするために適宜傾斜を付けても良い。
【0010】
また、本発明のチューブ容器に充填される義歯安定剤の粘度及び稠度は以下のようなものが好ましい。本発明のチューブ容器に充填するのに好ましい義歯安定剤の粘度を判定するために、義歯安定剤を室温で軽く撹拌した後、ブルックフィールドB型粘度計DV−II+(スピンドル“C”、0.5rpm)によって粘度を測定した。本発明のチューブ容器は上記したように扁平な三角形又は半円形断面形状から押し出すので、粘度が高すぎると絞り出すのが困難になり、また、粘度が低すぎると粘着性物質としての必要な粘着力を発揮しない。また、温度によって粘度が大きく低下するのも好ましくない。このような観点から本発明に適すると判断した義歯安定剤の粘度を測定したところ、粘度としては上記測定方法において200万乃至500万cPsであるのが好ましく、250万乃至500万cPsが更に好ましいことが判明した。
【0011】
また、本発明のチューブ容器に充填するのに好ましい義歯安定剤の稠度を判定するために、歯科用ゴム質弾性印象材の稠度試験方法に準拠して以下のような試験を行った。義歯安定剤を円筒形押し出しポンプに充填した後、所定量をアクリル樹脂の板上に押し出した。1分30秒後に、アクリル樹脂板(質量38±2g)と1500gの錘を静かに垂直に載せた。その後、10分30秒後にアクリル樹脂板を取り除き、広がった義歯安定剤の平行切線間の最大部と最小部の寸法を測定した。この試験を3回行い、測定値の平均値を1mmの単位で表して稠度とした。稠度が小さすぎると義歯安定剤の伸びが悪く、義歯安定剤としてよく伸びて隙間を埋めるという目的に合致しなくなり且つ開口端ノズル形状を扁平三角形として伸びたときに空気を含まずうまく隙間を埋めるという本発明の効果が十分に得られなくなる。この試験の結果、本発明として好ましい義歯安定剤の稠度は25.0mm以上であると判定した。以上のような粘度及び稠度を有する義歯安定剤を本発明のチューブ容器と共に使用することにより、本発明のチューブ容器の効果を最も有効に発揮することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の義歯安定剤用のチューブ容器は、絞り出し開口端の断面形状が上記のような特定の扁平三角形状とされているので、押し出される義歯安定剤も同じ特定の扁平三角形の断面形状を有する。義歯安定剤が扁平三角形断面形状で押し出されて義歯床に塗布されることにより、義歯床表面に存在し得る種々の凹部或いは狭い窪みにも上記扁平三角形の頂点に相当する義歯安定剤部分が確実に押し込まれて凹部或いは窪み内或いは狭い溝等にも確実に充填され、内部に空気が残ることがない。更に、義歯安定剤と顎堤及び/又は口蓋との間に包み込まれがちな空気が扁平三角形又は扁平半円形の斜辺に沿って外方へと確実に排除され、義歯安定剤と顎堤及び/又は口蓋との間に空気が包み込まれて義歯の安定度が低下することがない。特に、本発明のような特定の扁平三角形状又は扁平半円形状は、義歯安定剤の広がり性及び上記の空気の包み込み防止性の両方に対して極めて優れた効果を発揮する。更に、本発明のように、開口端断面形状の三角形又は半円形の底辺をチューブ容器のエンドシール面と平行にすることにより、三角形又は半円形の向きをエンドシール面によって確実に判断することができる。すなわち、エンドシール面が義歯床面と平行になるようにして義歯床に沿ってチューブ容器から義歯安定剤を絞り出せば、確実に扁平三角形又は半円形の頂点が義歯床面に対向する一定の向きで塗ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、好ましい実施形態によって本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明によるチューブ容器の好ましい一実施形態の正面図である。チューブ容器1は、粘着性の義歯安定剤が充填される一般的な中空円筒状のチューブ本体部2と、面状にシールされたエンドシール部3と、チューブ本体部2の中空内部と連通していて義歯安定剤を絞り出すことができる開口部を有するノズル部4と、ノズル部4の開口部とチューブ本体部2の中空内部とを結合している口部5とから主として構成されている。
【0014】
図2はノズル部4及び口部5の拡大斜視図であり、図3はノズル部4及び口部5の拡大横断面図であり、図4はノズル部4及び口部5の拡大頂面図である。ノズル部4及び口部5は、図3に示されているように内部がチューブ本体2の中空内部と連通しており、ノズル部4の末端にノズル開口部が設けられている。ノズル開口部の断面は、図4に示されているように扁平な三角形状とされている。当該扁平三角形の形状は、三角形の高さhが底辺の長さaのおよそ48%とされている。本実施形態においては、高さhが底辺長さの約48%とされているが、70%以下の範囲で適宜決めることができ、70乃至30%であるのが好ましく、60乃至40%であるのが更に好ましく、50%近辺であるのが最も好ましい。この際、最小角は30°より大きいことが好ましい。更に、図4に示されているように、扁平三角形の向きは、三角形の底辺を含む面Cがエンドシール部4のシール面Dとほぼ平行になる向きとされている。三角形の向きをこのようにすることにより、使用者は、義歯安定剤を絞り出して義歯床に塗布するときに、エンドシール部4のシール面Dを義歯床面に平行にして義歯床に沿って沿うように絞り出すことにより、義歯安定剤は、その断面の扁平三角形の頂点が義歯床面に対向し且つ底辺をなす面が義歯床に平行に配向されとなるように確実に塗布することができる。義歯安定剤の量が減ってきた場合にも、エンドシール部3を当初のエンドシール面に平行になるように巻き込んで行くことにより、常に上記したほぼ一定の向きで義歯安定剤を塗布することができる。エンドシール部3を巻き込む代わりに、エンドシール面と平行になるような平面状の絞り出し具等を使用しても良い。
【0015】
図5は、本発明のもう一つ別の実施形態の義歯安定剤用チューブ容器のノズル部の拡大頂面図である。この実施形態は、ノズル開口部の断面が扁平な半円形とされており、それ以外の部分は図1乃至4に示した実施形態と同様である。
【0016】
以上に説明した本発明の義歯安定剤用チューブ容器或いは当該チューブ容器を使用したチューブ型義歯安定剤によれば、義歯安定剤が三角形状又は半円形状に押し出されたうえで拡開されて義歯床に塗布されることにより、義歯床表面に存在し得る種々の凹部にも三角形又は半円形の義歯安定剤の頂部が確実に押し込まれて凹部内に空気が残ることがない。更に、義歯安定剤と顎堤及び/又は口蓋との間に包み込まれがちな空気が、義歯を口腔内の顎堤及び/又は口蓋に押し付けることにより、三角形又は半円形の斜辺に沿って確実に排除され、義歯安定剤と義歯床との間に空気が包み込まれて義歯の安定度が低下することがない。更に、義歯安定剤は三角形又は半円形の頂点から徐々に押し付けられて義歯床に均一に広がることができ、優れた義歯安定性を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上、本発明の義歯安定剤用チューブ容器の一実施形態の構造、使用方法及び効果を説明したが、本発明の着想によるチューブ容器は、義歯安定剤に限らず、同様な方法で使用される粘着流動性のあらゆる物質用としても使用可能であることは理解できる。
【0018】
また、キャップについては特に言及しなかったが、現状の技術に基づいて考えられるあらゆる形態のキャップを適宜取り付けることができる。
更に、ノズル部或いはノズル部を含む首部分を別部品としてチューブ容器本体と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による義歯安定剤用チューブ容器全体の正面図である。
【図2】図2は、図1に示した義歯安定剤用チューブ容器のノズル部の拡大斜視図である。
【図3】図3は、図2に示した義歯安定剤用チューブ容器のノズル部の拡大横断面図である。
【図4】図4は、図2に示した義歯安定剤用チューブ容器のノズル部の拡大頂面図である。
【図5】図5は、本発明のもう一つ別の実施形態の義歯安定剤用チューブ容器のノズル部の拡大頂面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 チューブ容器、
2 チューブ容器本体、
3 エンドシール部、
4 ノズル部
5 口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
義歯安定剤を収容するためのチューブ容器であり、前記義歯安定剤の絞り出し開口端の断面形状が、高さhが底辺の長さaの70%以下である扁平三角形又は扁平半円形であり且つ前記底辺が当該チューブ容器のエンドシール部のシール面に略平行とされているチューブ容器。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブ容器であり、前記扁平三角形をなす角度のいずれもが30°以上であるチューブ容器。
【請求項3】
請求項1に記載のチューブ容器であり、前記扁平三角形又は扁平半円形の高さhが底辺の長さaの70%乃至30%であるチューブ容器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のチューブ容器であり、前記扁平三角形又は扁平半円形の各コーナーが円周状に丸められているチューブ容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のチューブ容器に義歯安定剤が充填されたチューブ型義歯安定剤。
【請求項6】
請求項5に記載のチューブ型義歯安定剤であって、
前記充填されている義歯安定剤の粘度が200万〜500万cPsであり、稠度が25.0mm以上であるチューブ型義歯安定剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate