説明

チューブ容器

【課題】内容物の使用開始前は完全な遮光性を維持し、内容物の使用開始後には該内容物の残量を容易に確認しうるチューブ容器を提供する。
【解決手段】チューブ容器1の胴部2を、シーラント層、ガスバリア層、易剥離層、外部層とをこの順で有し、易剥離層が外部層との間で易剥離性を有し、シーラント層、ガスバリア層、易剥離層が透明性を有し、外部層が遮光性を有する積層体で構成し、該胴部2に、前記外部層を貫通するハーフカット2aによって外部層の一部を所定の形状に囲繞してなる剥離領域2bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーム状製品の包装材として用いられるチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動性が低い練り歯磨きや洗髪用トリートメント剤、ハンドクリームなどのクリーム状製品の包装材として、チューブ容器が用いられており、最近では、内容物を押し出す口頸部を下にして立てて置く形態が増えてきている。係る形態は、チューブ容器の胴部を復元性を有する素材で形成し、押し出した内容物に相応する空気を吸引して内容物の使用開始前の形状を維持することにより、立てて置いた際のバランスを保つと同時に、内部に空間を形成して内容物が自然に下方に移動し、次に使用する際に内容物を押し出し易いように構成されている。
【0003】
一方、内容物が光によって劣化しやすい物品の場合、チューブ容器には遮光性を持たせる必要がある。このような遮光性を有する、即ち内部が見えないチューブ容器の場合、胴部が復元性を持たない従来のチューブ容器は、内容物を押し出した分だけ胴部が変形するため、変形の状態で内容物の残量が容易に判断されたが、上記したように、胴部が復元性を有し、常に使用開始前の形状を維持するようなチューブ容器の場合、内容物の残量が容易に確認できないという問題があった。
【0004】
そのため、内容物の残量を目視で容易に確認できるように、一部に透明な領域を設けたチューブ容器が提案されている(特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−112739号公報
【特許文献2】実開昭64−11913号公報
【特許文献3】特開平8−151058号公報
【特許文献4】特開平8−156190号公報
【特許文献5】特開2008−239174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜5に記載されたチューブ容器のように、例え小面積であっても、容器の一部に透明な領域を形成したチューブ容器を用いた製品を店舗などにおいて陳列した際に、係る領域を通して内容物に光が当たり、使用開始前に内容物が劣化する恐れがあった。
【0007】
本発明の課題は、内容物の使用開始前は完全な遮光性を維持し、内容物の使用開始後には該内容物の残量を容易に確認しうるチューブ容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、胴部と、前記胴部と接合された肩部及び口頸部を有する頭部と、を有するチューブ容器であって、
前記胴部が、シーラント層、ガスバリア層、易剥離層、外部層とをこの順で有する積層体からなり、前記易剥離層が外部層との間で易剥離性を有し、前記シーラント層、ガスバリア層、易剥離層が透明性を有し、前記外部層が遮光性を有し、前記外部層を貫通するハーフカットによって前記外部層の一部を所定の形状に囲繞してなる剥離領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、内容物の使用開始直前まで完全な遮光性を保つことができ、内容物の光による劣化を防止することができる。また、内容物の使用開始後は、剥離領域を剥離するだけで内容物の残量を目視で容易に確認することができる。さらに、易剥離層に再剥離性(再粘着性)を持たせておくことで、剥離領域の剥離後に再度胴部と接着させることで、内容物に光が当たり、劣化するのを防止することもできる。よって、本発明によれば、内容物の残量の確認と内容物の劣化防止とを同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のチューブ容器の一実施形態の外観を示す図である。
【図2】本発明のチューブ容器の胴部の部分断面図である。
【図3】本発明のチューブ容器の他の実施形態を示す図である。
【図4】本発明のチューブ容器の作製工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のチューブ容器を実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明のチューブ容器の一実施形態の外観を示す図であり、(a)は内容物の使用開始前であり、チューブ容器とキャップとを外した状態を示し、(b)は内容物の使用開始後であり、チューブ容器にキャップを嵌めて立てて置いた状態を示す。図中、1は本発明のチューブ容器、2はチューブ容器1の胴部、2aはハーフカット、2bは剥離領域、2cは窓部であり、3はチューブ容器1の頭部、3aは肩部、3bは口頸部である。また、4はキャップ、5は内容物である。
【0013】
本発明のチューブ容器1は、流動性が液体に比べて低いクリーム状製品の包装に用いられる包装材であって、略矩形状のチューブ用原反を丸めながら、側辺部同士を重ね合わせて接合し、筒状とした胴部2の一方の開口部に対して、肩部3aと口頸部3bとからなる頭部3の肩部3aを接合し、口頸部3bには別途形成されたキャップ4が嵌められる。他方の開口部は内容物を充填した後に原反同士を重ねて接合してなる。
【0014】
図1(b)に示すように、本発明のチューブ容器1は、キャップ4を下方に向けて立てて自立する形態に好ましく適用される。図1(a)に示すように、本発明のチューブ容器1には、胴部2にハーフカット2aによって囲繞された剥離領域2bが形成されており、係る剥離領域2bを剥離することによって、図1(b)に示すように窓部2bが形成される。窓部2bを構成する層は、後述するように全て透明性を有するため、該窓部2cを通して内容物5の残量を目視で確認することができる。
【0015】
図2は、図1(a)中のA−A’断面を模式的に示す図である。図中、11はシーラント層、12はガスバリア層、13は易剥離層、14は外部層であり、図1と同じ部材には同じ符号を付している。
【0016】
本発明のチューブ容器1の胴部2は、図2に示すように、シーラント層11、ガスバリア層12、易剥離層13、外部層14をこの順で有する。図1(a)に示したハーフカット2aは、外部層14のみを貫通しており、該ハーフカット2aによって囲繞された剥離領域2bを剥離すると、剥離領域2bとして外部層14のみが剥離され、外部層14が剥離された後の窓部2cに易剥離層13が露出するように構成されている。よって、本発明においては、外部層14が遮光性を有し、外部層14よりも内側に位置するシーラント層11、ガスバリア層12、易剥離層13が透明性を有している。以下に各層について説明する。
【0017】
〔シーラント層11〕
チューブ容器1の胴部2に成形しうる熱溶融性樹脂からなる。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などの未延伸フィルムまたは押し出し樹脂を好適に使用できる。また、シーラント層11はチューブ容器1の内側になるため、内容物が付着しにくい防汚加工を施しても良い。シーラント層11の厚さは通常、50〜150μm程度である。
【0018】
〔ガスバリア層12〕
内容物5の酸化、劣化、変質を防止するため、酸素、水蒸気の透過を防止するための層である。具体的には、厚さが9〜50μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに厚さが50〜5000Åの酸化ケイ素膜を真空蒸着法、化学気相法、コーティング法などにより設けたフィルムが好ましく用いられる。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体やナイロンなどのそれ自体でガスバリア性を有するフィルムが好ましくは5〜50μmの厚さで用いられる。
【0019】
〔易剥離層13〕
易剥離層13は、ガスバリア層12と外部層14とに接着性があり、且つ、外部層14とは易剥離性を有する必要があり、具体的には、LDPEに環状オレフィン系共重合体を混合してポリマーアロイ化した樹脂、ポリエチレン(PE)、EVA等のポリエチレン系樹脂にポリプロピレンやポリブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等のポリα−オレフィン、ポリスチレン、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムなどをブレンドしたものが用いられた樹脂や、該樹脂からなるフィルムを挙げることができる。
【0020】
本発明に係る易剥離層13は、使用開始前の保管や輸送時には外部層14が剥離せず、使用開始時に容易に剥離しうる程度の易剥離性が必要であり、好ましくは、剥離強度((株)東洋精機製作所、引張試験機ストログラフを用いて、チャック間距離50mm、引張速度300mm/分、幅15mmの条件でT型剥離試験を行い、ラミネート強度を測定する。)が4〜10Nである。また、厚さは15〜50μmが好ましい。
【0021】
本発明において、易剥離層13は外部層14に対して再剥離性(再粘着性)を有していることが好ましい。易剥離層13が再剥離性を有している場合には、一旦剥離した剥離領域2bを再び易剥離層13に接着させて、窓部2cを塞いで遮光することができる。よって、係る形態では内容物5の残量を確認する場合にのみ剥離領域2bを剥離し、確認後は再び剥離領域2bによって窓部2cを覆い、内容物5に光が当たるのを最小限に抑えて光による内容物5の劣化を防止することができる。このような易剥離層13に外部層14に対する再剥離性を持たせる構成としては、易剥離層13を外部層14に対して再剥離性を有するフィルムで構成する、或いは、易剥離層13として再剥離性接着剤をコーティング或いはラミネートして形成すればよい。尚、易剥離層13とガスバリア層12との接着性が不十分である場合には、易剥離層13とガスバリア層12とを両者に充分な接着性を有する接着剤を介して接着してもかまわない。
【0022】
〔外部層14〕
外部層14は単層或いは複層のいずれでも良いが、遮光性を有している必要がある。例えば、着色PEやアルミ蒸着フィルムなどを単層或いは複層でPEと組み合わせて用いることができる。着色PEとしては、厚さ50〜200μmの酸化チタンや炭酸カルシウムなどの白色顔料入りのPEが、アルミ蒸着フィルムとしては、厚さ9〜50μmのPETフィルムに厚さ10〜200nmのアルミニウムを蒸着したものが挙げられる。また、外部層14としては最外層や中間層の表面或いは裏面に適宜印刷を施したものも含まれる。
【0023】
図1(a)に示したチューブ容器1において、剥離領域2bの形状は特に限定されないが、内容物5の残量が確認しやすいように、図1(a)に示したような垂直方向に長尺の形状が好ましい。また、剥離領域2bは1箇所に限らず、2箇所以上設けてもかまわない。
【0024】
また、本発明に係る剥離領域2bを剥離する際に、剥離しやすいように、剥離領域2bの端部に剥離タブを取り付けておくことが好ましい。図3は、係る剥離タブを設けた実施形態であり、(a)は外観図、(b)は剥離タブと剥離領域を示す断面模式図である。図中、2dが剥離タブである。図3(a)に示すように、本例では剥離領域2bの長尺方向の一方の端部に剥離タブ2dが取り付けられており、図3(b)に示すように、剥離タブ2dの一部(紙面上の下半分)が剥離領域2bに接合され、残る部分(紙面上の上半分)が剥離領域2bの端部から突出して自由端となっている。よって、剥離領域2bを剥離する際には、剥離タブ2dの自由端を手で摘んで引っ張ることにより、ハーフカット2aで囲繞された剥離領域2bが容易に剥離される。
【0025】
尚、チューブ容器1を図1(b)に示すように立てて置いた場合、内容物5の上端は徐々に下降するため、剥離領域2bを上方側から徐々に剥離して内容物5の上端のみを確認することで、残った内容物5に光が照射されるのを最小限に抑えることができる。よって、剥離タブ2dも、図3(a)に示すように、容器を立てて置いた場合に剥離領域2bの上方側端部となる位置に取り付けることが好ましい。
【0026】
次に、本発明のチューブ容器1の製造方法について図4を用いて説明する。図4は、図3(a)のチューブ容器1の製造工程を示す図であり、図中、41はチューブ容器原反、2eはチューブ容器1の胴部2の開口部である。
【0027】
先ず、図2に示したように、シーラント層11、ガスバリア層12、易剥離層13、外部層14からなる積層体を形成する。積層順序としては、特に限定されず、用いる各層の構成によって適宜選択されるが、例えば、ガスバリア層12とシーラント層11とをドライラミネートし、次いで、易剥離層14の構成樹脂を介してガスバリア層12と外部層14とをサンドラミネートする。係る積層体を、図4(a)に示すように、所定の位置に外部層14を貫通するハーフカット加工を行ってハーフカット2aで囲繞された剥離領域2bを形成する。
【0028】
次いで、図4(b)に示すように、剥離領域2bの一端に剥離タブ2dを取り付ける。この時、図3(b)に示すように、剥離タブ2dの一部のみを剥離領域2bに溶着或いは接着剤を介して取り付け、残りは自由端としておく。
【0029】
次に、チューブ容器原反41の寸法に裁断した後、チューブ容器原反41をシーラント層が内側となるように円筒状に丸め、側辺部同士を重ね合わせて接合し、胴部2を形成する。尚、この状態では胴部2は両端が開放された筒状である。その後、図4(c)に示すように、この胴部2の一方の開口部に頭部3を取り付けてチューブ容器2とするが、胴部2と頭部3の接合には、例えば、胴部2を挿入した雄型マンドレルを、予め内部に溶融樹脂が吐出された雌型内にインサートして成形し、胴部2の一方の端部に口頸部3bと肩部3aとからなる頭部3を圧縮成形すると同時に接合する方法、或いは、胴部2を挿入した金型内にて、口頸部3bと肩部3aとからなる頭部3を合成樹脂の射出成形によって形成し、胴部2の一方の端部に口頸部3bと肩部3aとからなる頭部3を射出成形すると同時に接合する方法、等を利用することができる。こうして形成されたチューブ容器1にキャップを嵌め、チューブ容器1の胴部2の開口部2eから内容物を充填し、該開口部2eの内側のシーラント層同士を熱融着させて封止する。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
厚さ12μmのPETフィルムに真空蒸着法で厚さ300Åの酸化ケイ素薄膜を形成したガスバリア層の蒸着面にポリウレタン系接着剤(塗工量3.5g/m2)を介してシーラント層となる厚さ100μmのLLDPEフィルムをドライラミネートした。次いで、上記PETフィルム面に易剥離層としてLDPEに環状オレフィン系共重合体を混合してポリマーアロイ化した樹脂を厚さ30μmとなるように介して、厚さ150μmの乳白PEフィルムをサンドラミネートした。さらに、上記乳白PEフィルムの外側に厚さ80μmのPEを押し出しラミネートして、チューブ容器原反を形成した。
【0031】
得られた原反の外部層(最後に押し出しラミネートしたPE層)から易剥離層に達するように所定の位置に長さ90mm、幅5mm、両端部1mmRの形状に、ロータリーダイカッター法によりハーフカット加工を行った。次いで、図4(c)に示すように、開口部2eを有するチューブ容器1を形成し(剥離タブ2dは設けていない)、別途成形したキャップを嵌めて、白色の練り歯磨きを充填し、最後に開口部2eを封止した。
【0032】
ハーフカットで囲繞された剥離領域は端部を指で摘んで容易に剥離され、剥離後の窓部を通して内容物の残量を容易に確認することができた。外部層を剥離する際の剥離強度(5mm幅)は剥離強度2Nであった。これは、測定時の条件が15mm幅の場合の6Nに相当する。
【0033】
(実施例2)
実施例1において、乳白PEフィルムの外側にポリウレタン系接着剤(塗工量3.5g/m2)を介して厚さ12μmのアルミ蒸着PETフィルムのPET側をドライラミネートし、さらに上記アルミ蒸着面に厚さ80μmのPEを押し出しラミネートして、チューブ容器原反とする以外は、実施例1と同様にしてチューブ容器を形成し、内容物を充填した。
【0034】
本例においても、ハーフカットで囲繞された剥離領域は端部を指で摘んで容易に剥離され、剥離後の窓部を通して内容物の残量を容易に確認することができた。
【符号の説明】
【0035】
1:チューブ容器、2:胴部、2a:ハーフカット、2b:剥離領域、2c:窓部、2d:剥離タブ、2e:開口部、3:頭部、3a:肩部、3b:口頸部、4:キャップ、5:内容物、11:シーラント層、12:ガスバリア層、13:易剥離層、14:外部層、41:チューブ用原反

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と、前記胴部と接合された肩部及び口頸部を有する頭部と、を有するチューブ容器であって、
前記胴部が、シーラント層、ガスバリア層、易剥離層、外部層とをこの順で有する積層体からなり、前記易剥離層が外部層との間で易剥離性を有し、前記シーラント層、ガスバリア層、易剥離層が透明性を有し、前記外部層が遮光性を有し、前記外部層を貫通するハーフカットによって前記外部層の一部を所定の形状に囲繞してなる剥離領域を有することを特徴とするチューブ容器。
【請求項2】
前記易剥離層が前記外部層と再剥離性を有する請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記剥離領域の端部に、剥離タブが取り付けられている請求項1または2に記載のチューブ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−225227(P2011−225227A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94831(P2010−94831)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】