説明

チューブ構造体及び流動体吐出ポンプ

【課題】柔軟な部材で形成されたチューブ本体にポンプヘッドを装着する場合に、チューブ本体に変形痕が形成されないチューブ構造体を提供すること。
【解決手段】開口する一端部と、前記一端部から内容物を充填させることのできる、内部圧力に応じて変形可能な部材で形成されたチューブ本体と、そのチューブ本体の他端部に形成された肩部と、その肩部の中心部から突出形成された、ポンプヘッドを装着させる頸部とを有するチューブ構造体であって、前記肩部におけるチューブ本体の内部に面する内面が、前記頸部に前記ポンプヘッドを螺合により装着する際に、前記一端部からチューブ本体内に挿入される治具とが係合する係合部を備え、前記頸部は、その外周面に、この頸部に前記ポンプヘッドを螺合により装着した後にこのポンプヘッドの逆回転を防止する逆回転防止部を備えてなることを特徴とするチューブ構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チューブ構造体及び流動体吐出ポンプに関し、特に詳しくは、従来における流動体吐出ポンプに生じていた容器本体に傷やしわ等の変形がなく、また、製造後であって消費者が入手する以前にポンプヘッドが容器本体から分離したか否かを容易に判別することのできる流動体吐出ポンプ、及びそのような流動体吐出ポンプを製造するのに好適なチューブ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「液体内容物を収納する袋体2に、・・・収納体7と、・・・ポンプ機構9と、・・・箱体11とを具備してなる液体内容物吐出容器において、・・・前記ポンプ機構9が、前記蓋体8を前記一対の箱構成体12の外部上方において前記蓋体装着部4に装着自在とされていることを特徴とする液体内容物吐出容器」が記載されている。
この特許文献1に開示されている液体内容物吐出容器においては、収納体7に取り付けられた口部体6に、ポンプ機構9が、取り付けられる構造を有する(特許文献1の段落番号0025参照)。特許文献1の記述によると、「収納体7を箱体11内に収納する場合には、・・・前記切欠部13aにより形成される孔13bと周溝12bとが嵌合されるとともに、口部体6の被係止板部5aのうち下側の2条が立上り壁部17の内面に係止されて当該口部体6が確実に固定され、収納体7が箱体11内で正立状態に収納される。そして、係止壁部10の上方に突出した口部体6の取出口3からポンプ機構9のチューブ9bを挿入して、蓋体8を蓋体操着部4に装着することにより、収容体7、ポンプ機構9、箱体11の組立が完了し、直ちに液体内容物を吐出操作可能となる」(特許文献1の段落番号0025及び図2参照)。
特許文献1に記載の液体内容物吐出容器においては、口部体6の外周面に設けられた雄ねじ4aに、蓋体8の雌ねじ部を螺合することにより、ポンプ機構9が口部体6に装着されるようになっていることからすると、この液体内容物吐出容器においては、蓋体8の雌ねじ部を口部体6の雄ねじ4aを螺合するに際に、蓋体8の回転により口部体6が回転しないようにするために箱体11が必須の要素となっている。換言すると、箱体11を必要とすることなく、口部体6に蓋体8を螺合する仕組みは、この特許文献1には、記載されていない。
【0003】
特許文献1に開示されているような箱体11を使用せずに、口部体6に蓋体8を螺合するためには、口部体6を何らかの方法で固定する必要がある。口部体6が取り付けられている収納体7を固定して口部体6に蓋体8を螺合すると、口部体6が収納体7に装着されている部分にねじれが生じてしまい、口部体6が収納体7に取り付けられている部分が破損する懸念があり、またこの懸念が実現しないとしても、螺合により回転する蓋体8により口部体6も一緒に回転してしまい、収容体7の表面に変形によるしわが形成される懸念もある。収容体7の表面に破損やしわ等の傷があると、この液体内容物吐出容器を工場出荷してから後に消費者が入手するまでの間、あるいは消費者が入手してから以降において、収容体7におけるしわが例えば傷にまで発展する等して、この液体内容物吐出容器が使用に耐えない状況に陥る懸念がある。
また、特許文献1に記載されているように、口部体6に蓋体8を螺合により装着していると、液体内容物吐出容器を工場出荷した後から消費者入手までの間に口部体6から蓋体8が逆回転により取り外されてしまう可能性、あるいは口部体6から蓋体8が外れてしまう可能性がある。液体内容物吐出容器を工場出荷後から消費者入手までの間に口部体6から蓋体8が逆回転により脱離する懸念は、この液体内容物吐出容器を製造する者による製品品質の保証を確保することができなくなるという重大な懸念に結びつく。
【0004】
【特許文献1】特開平7−223689
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、柔軟な部材で形成されたチューブ本体に他端部に設けられている頸部に、ポンプヘッドを、螺合により装着する場合に、特許文献1に記載されているような箱体を使用することなく、チューブ本体にしわや捩れ等の変形痕、螺合に際する応力により発生するであろう傷等が形成されず、また、螺合により頸部に装着したポンプヘッドが装着後に螺合の緩みやポンプヘッドの脱離を生じることのないチューブ構造体を提供することであり、他の課題は、前記チューブ構造体を利用して製造されることができ、特許文献1に記載されていた箱体等の部品を必要としないが故に部品点数が少なくて、ポンプヘッドを容易に取り外されることがなく、しかも容器本体に、頸部にポンプヘッドを取り付ける際の螺合に起因する傷やしわの生じていない流動体吐出ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として請求項1は、
開口する一端部と、前記一端部から内容物を充填させることのできる、内部圧力に応じて変形可能な部材で形成されたチューブ本体と、そのチューブ本体の他端部に形成された肩部と、その肩部の中心部から突出形成された、ポンプヘッドを装着させる頸部とを有するチューブ構造体であって、
前記肩部におけるチューブ本体の内部に面する内面が、前記頸部に前記ポンプヘッドを螺合により装着する際に、前記一端部からチューブ本体内に挿入される治具とが係合する係合部を備え、
前記頸部は、その外周面に、この頸部に前記ポンプヘッドを螺合により装着した後にこのポンプヘッドの逆回転を防止する逆回転防止部を備えてなることを特徴とするチューブ構造体であり、
請求項2は、
前記請求項1に記載されたチューブ構造体におけるチューブ本体の一端部が閉鎖されて成る容器本体と、
前記容器本体における頸部に装着されたポンプヘッドとを有することを特徴とする流動体吐出ポンプである。
【発明の効果】
【0007】
この発明におけるチューブ構造体においては、その頸部にポンプヘッドを螺合により装着する場合、このチューブ構造体における一端部の開口から、チューブ本体内に、治具が挿入される。チューブ本体内に挿入された治具と係合部とが係合する。次いで、頸部にポンプヘッドを螺合する。チューブ本体は前記治具と係合部とが係合し合っているので、ポンプヘッドの螺合によりポンプヘッドが回転してもチューブ本体は前記治具により回転阻止されて回転することがない。つまり、チューブ本体は前記治具により回転不能に固定されているので、ポンプヘッドの頸部への螺合が確固となり、しかもポンプヘッドの回転によりチューブ本体が回転することによりチューブ本体にねじれや歪みを生じることがない。
したがって、この発明によると、ポンプヘッドを頸部に螺合することに起因して従来において生じていたチューブ本体における傷、しわ、筋目等の変形のないチューブ構造体を、提供することができる。
この発明によると、この発明に係るチューブ構造体を利用して流動体吐出ポンプが形成される。つまり、前記流動体吐出ポンプは、チューブ構造体における例えば一端開口から内容物を充填した後にその一端開口を閉鎖することにより容器本体が形成されてなるとともに、チューブ構造体における頸部にポンプヘッドが装着されて成る。この頸部には、逆回転防止部があるので、容易にポンプヘッドを頸部から離脱させることができなくなる。また、この流動体吐出ポンプを出荷後に、前記逆回転防止部を破壊するなどして無理にポンプヘッドを頸部から離脱させ、次いで頸部にポンプヘッドを再び装着して新品を偽装したとしても、逆回転防止部とポンプヘッドとの間でガタツキが発生しているから、容易にその偽装を発見することができる。このことは、逆回転防止部とポンプヘッドとの間でガタツキなく頸部にポンプヘッドが装着されていることが、この流動体吐出ポンプの「バージン性」を保証していることになる。また、容器本体には傷、しわ、筋目等の変形がないので、この流動体吐出ポンプを使用している期間中に、これら変形が原因となって流動体吐出ポンプの容器本体が裂けたり、穴があいたり等の損傷がなく、したがって商品寿命が長くなる。
故に、この発明によると、容器本体、つまりチューブ構造体におけるチューブ本体に変形がなく、逆回転防止部により頸部にポンプヘッドをガタツキなく装着することができるというチューブ構造体の性質をもっぱら利用することにより、部品点数が少なくて、ポンプヘッドを容易に取り外されることがなく、しかも容器本体に、頸部にポンプヘッドを取り付ける際の螺合に起因する傷やしわが生じず、したがって製品寿命の長い流動体吐出ポンプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の流動体吐出ポンプは容器本体とポンプヘッドとを備えて成る。
【0009】
前記容器本体は、胴部、頸部及び肩部から成る。胴部はその内部に流動体を収容することのできる部位であり、頸部は後述のポンプヘッドが装着される部位であり、更に肩部はその内面に後述の係合部が設けられる部位である。容器本体は、前記頸部の一端部に外側に張り出すように前記肩部が設けられ、かつ前記肩部の前記頸部とは反対側の縁辺部から前記胴部が延在して成る。ここで、肩部の内面とは、頸部を上方に、かつ胴部を下方に配置した場合における、肩部の内側面、すなわち胴部及び肩部で形成される容器本体の内部空間における天井面を示す。
この容器本体は、本願発明のチューブ構造体におけるチューブ本体の一端部を閉鎖してなる構造を有する。また、この発明に係る流動体吐出ポンプは、この発明に係るチューブ構造体を用いて形成されることができる。以下においては、チューブ構造体の説明と共に流動体吐出ポンプを説明することになる。
【0010】
容器本体の胴部は、大気圧よりも低い内部圧でその体積が減ずるように変形する材料から成る態様を採用することができ、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等の材料から成るのが好ましい。これは、容器本体を形成するのに採用されるチューブ構造体におけるチューブ本体の材料もまた、大気圧よりも低い内部圧でその体積が減ずるように変形する材料で形成されることができ、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等の材料で形成されるのが好ましいことを、意味する。
一方、容器本体の肩部及び頸部は、胴部に比べて変形し難いのが好ましい。なぜならば、肩部の内壁面には係合部が設けられ、かつ頸部にはポンプヘッドが装着されるので、仮に肩部及び頸部が前記胴部と同様に変形し易い場合には、ポンプヘッドを容器本体に装着する際に、ポンプヘッドの螺合による回転力で肩部又は頸部が変形して、ポンプヘッドが頸部に完全に装着されることができなくなり、例えば装着されたとしても装着具合に不具合を生じさせることがあるからである。
容器本体を形成するためのチューブ構造体に着目すると、チューブ構造体におけるチューブ本体の他端部には前記肩部が形成され、その肩部は、開口する一端部とは反対側に位置する他端部の端面部として形成され、ポンプヘッドを装着するための頸部が、前記肩部の中央からチューブ本体とは反対側の方向に延在するように形成される。
【0011】
前記チューブ本体は、ポンプヘッドが螺合により頸部に装着され、かつチューブ本体の内部に流動体が充填されるまでは、チューブ本体の一端が開口している。
【0012】
また、前記チューブ本体の形状は、このチューブ本体における頸部にポンプヘッドを装着する際に、前記チューブ本体の一端部に形成される開口から治具を挿入することができる限り制限されず、例えば円筒形状又は多角筒形状等が好ましく、更に好ましくは、流動体をチューブ本体内に充填した後に胴部のチューブ本体の一端部に形成されている開口を溶着等により封止するので、円筒形状であるとチューブ本体の一端部の封止する箇所が複数にならないので良い。前記チューブ本体の一端部開口を閉鎖すると前記容器本体の形状が形成される。
【0013】
この発明のチューブ構造体におけるチューブ本体、及び流動体吐出ポンプにおける容器本体は、逆回転防止部及び係合部を備えて成る。チューブ本体の一端開口を閉鎖すると、前記したようにチューブ本体から容器本体が形成されるのであるから、容器本体における頸部には係合部を備えることは、いうまでもない。
【0014】
前記逆回転防止部は、前記チューブ本体の他端部に形成された頸部、換言すると容器本体の頸部に設けられ、頸部に螺合により装着した前記ポンプヘッドが容易に逆回転することができないようにする。
【0015】
また、前記係合部は、前記チューブ本体の他端部に形成される他端面の内面、換言すると容器本体の肩部の内面に設けられており、前記チューブ本体における頸部に前記ポンプヘッドを装着する際に、前記チューブ本体内に挿入される治具と該係合部とが係合される。
【0016】
前記治具は、前記チューブ本体の他端部、つまり開口する一端部とは反対側の端部における肩部に形成されている頸部にポンプヘッドを装着する際に、チューブ本体の一端部の開口から挿入され、前記係合部と係合する。前記治具は、チューブ本体内に挿入することができ、かつ係合部と係合することができればよく、例えば金属製の棒状部材等で形成された支持部と、前記係合部に係合する係合作用部とを有する。前記係合作用部は前記係合部と係合することができる限り様々の構造が採用されることができる。チューブ本体又は容器本体における頸部にポンプヘッドを螺合装着する際に、治具と係合部とが係合しているので、ポンプヘッドの螺合による回転によってもチューブ容器本体又は容器本体がねじれたりすることなく、頸部にポンプヘッドを確固と装着することができる。
【0017】
前記ポンプヘッドは、チューブ本体又は容器本体の頸部に液密に取り付けられている。また、このポンプヘッドは押圧部、ポンプ部及び蓋体から成る。この発明の流動体吐出ポンプは、押圧部の往復動によって、容器本体内に収容されている流動体を容器本体内に挿入されるポンプ部内に充填し、かつポンプヘッド外に吐出することができる。蓋体は、容器本体を封止し、かつ容器本体内に挿入されるポンプ部の案内をすることができる。更に、蓋体には、その内側に例えば雌ねじ等の、ポンプヘッドが容器本体の頸部に螺合により装着できるような手段例えば螺合手段が設けられる。
【0018】
ここで、この発明の流動体吐出ポンプにおける容器本体及び治具の一例について、図1〜3を用いて説明する。また、ポンプヘッド及びこの発明の流動体吐出ポンプの作用の実施態様については、図4を用いて後述する。
【0019】
図1は、この発明の一例であるチューブ構造体におけるチューブ本体と、このチューブ本体内に挿入された治具とを示す一部断面図である、図2は、この発明の一例であるチューブ構造体の他端部における端面の内面を示す一部切欠斜視図である。図3は、この発明の他の例であるチューブ構造体の他端部における端面の内面を示す一部切欠斜視図である。図4は、この発明の一例である流動体吐出ポンプを示す一部切欠正面図である。
図4に示されるように、この発明の流動体吐出ポンプ1は、容器本体2及びポンプヘッド3を備えて成る。図4に示される流動体吐出ポンプ1を製造するには、その製造過程において、図1に示されるように、チューブ構造体2Aにポンプヘッド3を螺合により装着する際に、治具7が使用される。
図4に示される容器本体2は、頸部4、肩部5及び胴部6を有する。この容器本体2は、図1に示されるチューブ本体6Aの一端開口(図1には示されていない。)を閉鎖することにより、形成されることができる。したがって、チューブ本体2Aは一端部が開口しているに対し、容器本体2は一端部が閉鎖されている点においてチューブ本体2Aと容器本体2とが相違するのであって、その他の構造についてはチューブ本体2Aと容器本体2とは同一である。図1及び図4に示されるように、ポンプヘッド3は、押圧部8、ポンプ部9及び蓋体10を備えて成る。
【0020】
前記容器本体2(図4参照)及びチューブ本体2A(図1参照)の頸部4の外周面には、逆回転防止部11が設けられ、肩部5の内側面、すなわち内面12には係合部13が設けられている。
【0021】
図2及び図4に示されるように、逆回転防止部11として頸部4の外周面に形成された複数の歯列を採用することができる。他方、蓋体10の内周面には、前記逆回転防止部11としての複数の歯列と噛み合う複数の爪14が形成される。この逆回転防止部11としての複数の歯列と蓋体10の内周面に形成された複数の爪14とでラチェット機構が形成される。したがって、前記爪14は、容易に前記歯列の歯を乗り越えて次の歯と乗り越えた歯との間の位置に落ち着くが、蓋体10を逆方向に回そうとすると、爪14が前記歯に食い込むので、蓋体10が逆回転させることができなくなる。
このように、この発明の流動体吐出ポンプの逆回転防止部としてラチェット機構を採用すると、容器本体にポンプヘッドが一度装着されるとポンプヘッドを容器本体から容易に脱離させることができなくなる。もしも無理に蓋体10を逆回転させると、前記逆回転防止部としての歯が潰れてしまう。逆回転防止部11としてつぶれた歯に対して前記爪14が噛み合うように、蓋体10を前記頸部4に螺合すると、頸部4に螺合装着された蓋体10の装着状態にガタツキが生じてしまう。そうすると、頸部4に装着されている蓋体10の装着状態にガタツキがあることによって、この流動体吐出ポンプ1においてポンプヘッド3又は蓋体10が頸部4から取り外されたことがあると、判別することができる。したがって、この流動体吐出ポンプ1が工場出荷後から需要者の入手までの間、あるいは工場出荷後からこの流動体吐出ポンプを使いきるまで、この流動体吐出ポンプ1におけるポンプヘッド3又は蓋体10が頸部4から脱着されてはならないという要請がある場合には、この逆回転防止部11の存在により、蓋体10又はポンプヘッド3の装着状態にガタツキあるか否かを判定することにより、この流動体吐出ポンプ1のバージン性を判定することができ、ガタツキがあると判定されるときには、以後この流動体吐出ポンプ1の使用を控えるといった対策をとることができる。
【0022】
図1に示されるように、前記治具7には、前記係合部13に係合するように係合作用部例えば溝部15が設けられている。治具7における溝部15と係合部13とが係合しているので、チューブ本体6Aを、治具7に対して回転不能に固定することができる。そうすると、回転不能に治具7で固定されたチューブ本体6Aにおける頸部4に、ポンプヘッド3を回転させることにより、ポンプヘッド3を螺合装着させることができ、又はポンプヘッド3を回転させないまま治具7を回転させることにより、ポンプヘッド3を頸部4に螺合装着させることができる。
【0023】
ポンプヘッド3は、押圧部8が図1において上下に往復動することにより、ポンプ部9が容器本体2内に収容されている流動体をポンプ部9内に充填し、さらに吐出することができる構造であり、容器本体2を封止する蓋体10の内周面と容器本体2の頸部4周側面とには、螺合によって容器本体2とポンプヘッド3とが装着できるねじが設けられている。
【0024】
図2及び3には、この発明のチューブ構造体2Aにおけるチューブ本体6Aが、頸部4を下方に配置した状態で示されている。図2及び3に示される頸部4には、逆回転防止部11として、図1と同様に、容器本体2の開口部近傍の外壁面に複数の歯からなる歯列が設けられている。前記係合部13の一例として、図2では、チューブ本体2Aの軸線に直交する方向に沿って肩部5の内面12から垂直に切り立った係合面16及び該係合面16から肩部5の内面12に向って傾斜する傾斜面17が形成されている。図2に示されるような凸形状の係合部13を設けた場合には、該係合部13と係合できるように治具7は、係合作用部として、図1に示される溝部15を有する。これに対して、図3に示されるように係合面16が内面12に沈み込んで成る係合部13の実施態様も採用することができる。図3に示されるような凹形状の係合部13を設けた場合には、該係合部13と係合できるように治具は凸形状の山部を係合作用部として有することになる。
【0025】
この発明のチューブ構造体2Aに採用することのできる係合部の形状は、チューブ本体6A内に挿入される治具と係合部とが係合することができる限り、図2及び3に示す態様に限定されず、例えば、肩部の内面から切り立った板体として形成されてもよく、又は肩部の内面に放射状等に配設された複数の溝を設けてもよい。また、係合部が設けられる数は、チューブ本体を形成する際の効率化、延いては容器本体を形成する際の効率化、チューブ本体の構造の簡素化、延いては容器本体の構造の簡素化等の観点から、1〜10個程度が好ましい。この係合部により、チューブ本体の固定又は回動させる等の操作が容易になるので、チューブ本体における頸部にポンプヘッドを装着する際に、チューブ本体を機械的に把持する必要がなく、変形し易いチューブ本体が潰れる又は捩れる等の状態を防ぐことができ、例えばチューブ本体に潰れた又は捩れた痕が残存してしまった場合、そのような痕が容器本体に残留することになり、そうするとこの発明の流動体吐出ポンプの商品としての価値の低下、その傷等の痕跡による容器本体の破損に繋がる等の不都合を防ぐことができる。
【0026】
この発明の流動体吐出ポンプは、上述のように治具をチューブ本体内に挿入することにより例えばチューブ本体の回動を防止しつつ頸部にポンプヘッドを螺合により装着し、次いでチューブ本体の一端部における開口から内容物を充填した後にそのチューブ本体の一端部における開口を閉鎖することにより、製造される。かくして、ポンプヘッドと容器本体とを確固とした装着状態にすることができ、しかも傷等の存在しない容器本体を備えると共に逆回転の防止された状態で頸部にポンプヘッドが装着されてなる製品として、大量生産に適している。
【0027】
この発明の流動体吐出ポンプにおいては、容器本体内に充填される流動体としては、化粧品等の中高粘度を有する流動体が好ましい。
【0028】
チューブ本体の一端部開口が封止されて成る容器本体を備えた、この発明の流動体吐出ポンプの一例が図4に示されている。
【0029】
図4において、押圧部8とポンプ部9とは圧入により接続されており、この発明の流動体吐出ポンプのポンプ部には公知のポンプ機構を用いることができる。この発明の流動体吐出ポンプに用いることのできるポンプ部は、押圧部の往復動により容器本体内に収容されている流動体を吐出することができればよい。
【0030】
なおこの発明においては、押圧部が往動するとは、この流動体吐出ポンプを静止した状態、つまり初期状態における押圧部の位置から容器本体に向かって移動する動きを示し、押圧部が復動するとは、往動した位置から流動体吐出ポンプの初期状態における押圧部の位置に戻るように容器本体から離れる方向に移動する動きを示す。
【0031】
前記蓋体は、容器本体を封止すると共にポンプ部を容器本体内に案内する。図4では、前記蓋体10は容器本体2の頸部4に螺合により装着されている。また蓋体10は、容器本体を封止することができるように有底形状を有している。
【0032】
前記ポンプ部9は吸引開口部18、シリンダ支持部19、ボール弁20、付勢部材21、シール部22、細径シリンダ23及び太径シリンダ24を有する。
【0033】
前記シリンダ支持部19は、一端部に環状で外側に張り出すように形成された鍔部25と、他端部に形成された吸引開口部18と、吸引開口部18近傍が縮径して形成された弁座26とを有する。このシリンダ支持部19は、パッキン27と前記鍔部25と前記蓋体10とを容器本体2の開口部に積接させることにより、容器本体2にガタつきなく一体的かつ液密に結合される。
【0034】
前記吸引開口部18は、容器本体2内の流動体をシリンダ支持部19内に送出することができる。
【0035】
細径シリンダ23は、その一端部つまり図4における下端部に、コイルスプリング等の付勢部材21が装着され、細径シリンダ23を押し上げるように付勢する。細径シリンダ23の下端部は太径の外周面を有し、この太径の外周面がシリンダ支持部19における内周面に摺動可能に接触する。この細径シリンダ23の下端部には一端開口部28及び第1開口部29が設けられ、この一端開口部28及び第1開口部29を通じて、この細径シリンダ23の下端よりも下方に位置するシリンダ支持部19内の流動体が、細径シリンダ23の外側とシリンダ支持部19の内周面との間に流通することができるようになっている。この細径シリンダ23の前記第1開口部29の上部に位置する周側面には、第2開口部30が開設され、この第2開口部30を通じて、細径シリンダ23の外側とシリンダ支持部19の内周面との間に存在する流動体が、細径シリンダ23の内部に流入することができるようになっている。
【0036】
前記シリンダ支持部19内の前記弁座26近傍にはリブ台座31が形成される。このリブ台座31には、前記付勢部材21の端部が取り付けられる。このリブ台座31と弁座26との軸線方向距離はボール弁20の直径よりも大きく設計されていて、押圧部8が復動することにより容器本体2内の流動体をシリンダ支持部19内に吸引するときに、ボール弁20が前記リブ台座31と弁座26とで形成される空間内で遊動する程度の「遊び」が形成され、押圧部8が往動するときにはボール弁20がシリンダ支持部19内の流動体の重みにより弁座26に押しつけられるようになっている。なお、押圧部8が初期状態であるとき、つまり押圧部8を押圧しない状態であるとき、ボール弁20は、自重により弁座26に液密に着座している。
【0037】
シリンダ支持部19の内部には、初期状態において細径シリンダ23の前記第2開口部30を閉塞するように、シール部22が装着される。このシール部22は、この流動体吐出ポンプ1の初期状態では前記第2開口部30を閉鎖しているが、細径シリンダ23が下降すると第2開口部30を開放状態にしつつ、シリンダ支持部19の内部を下降するように、シリンダ支持部19の内部に装着される。
【0038】
更に言うと、前記シール部22は、略円筒形状に形成されており、シール部22の内周面は細径シリンダ23の略円錐台の外周面を囲繞し密着するように形成され、シール部22の外周面は凹形状に形成されている。前記シール部22は、弁作用を有していて、流動体吐出ポンプ1が図1のように静置状態にあるときは、シール部22の内周面が細径シリンダ23の略円錐台の外周面に密着し、前記押圧部8の往動が起こり細径シリンダ23が上流側に移動したときは、シール部22の内周面が細径シリンダ23の略円錐台の外周面から離れて流動体の流通が起こる。前記シール部22の凹形状の外周面は、シリンダ支持部19の内周面を摺動する。
【0039】
細径シリンダ23の一端すなわち図1における上端は、太径シリンダ24の下端開口部から挿入される。細径シリンダ23の上端には他端開口部32が設けられ、太径シリンダ24の内部空間と細径シリンダ23の内部空間とが連通している。
【0040】
太径シリンダ24の下端部は、蓋体10を挿通しており、また太径シリンダ24の下端部の直径が前記蓋体10の挿通される孔の直径よりも大きく、シリンダ支持部19の内周面に摺動できるように形成されているので、この太径シリンダ24は、蓋体10から押圧部8側に抜け出ることがない。
【0041】
このようにして形成されるポンプ部9は、流動体吐出ポンプ1の初期状態においては、付勢部材21の付勢力により、細径シリンダ23の略円錐台の外周面にシール部22の内周面を液密に押しつけ、しかも、太径シリンダ24の下端部近傍が蓋体8で係止される状態となるように太径シリンダ24を押圧部8側に付勢している。したがって、太径シリンダ24の上端に結合される押圧部8は、前記付勢部材21の弾性力により、往復動することができる。また、押圧部8には、流動体の流路が挿通しており、ポンプ部9に接続される側の反対側に、流動体を吐出することのできる吐出口33が開口している。
【0042】
以下に、この発明の流動体吐出ポンプの作用を説明する。
【0043】
この発明の流動体吐出ポンプが静置されている、すなわち初期状態においては、図4に示されるように、前記ポンプ部9内のボール弁20は前記シリンダ支持部19の弁座26に載置されている。前記シール部22は、前記シール部の内周面が前記細径シリンダの略円錐台の外周面に密着している。また、図1に示される初期状態においては、上流ボール弁体と下流ボール弁体で挟まれる太径シリンダ、細径シリンダ及び円筒本体部の内部空間内に既に流動体が充填されているものとする。なお、可動部を複数回にわたって上下動をさせると、前記内部空間内に流動体を容易に充填することができる。
【0044】
押圧部8を下降させることにより、吐出口33から流動体を吐出する。初期状態にある押圧部8が押し下げられ、つまり往動する。押圧部8が往動すると、太径シリンダ24及び細径シリンダ23が一体となって下降し、これによって付勢部材21が縮み始め、液圧によりボール弁20が弁座26に押しつけられることにより容器本体2内の流動体がポンプ部9内に侵入不可能となる。前記シール部22の内周面が前記細径シリンダ23の略円錐台の外周面から離脱し、前記ボール弁20と細径シリンダ23の下端部との間の内部空間容積が減少するので、減少した内部空間容積分の流動体が流出しようとする。よって、前記ボール弁20と細径シリンダ23の下端部との間の内部空間に充填されていた流動体が、前記一端開口部28、前記第1開口部29、前記第2開口部30、前記他端開口部32及び太径シリンダ24を通って吐出口33から吐出される。
【0045】
前記押圧部8が往動して、押圧部8の下降できる限界位置まで往動した状態に達すると、それ以上の流動体の吐出は起こらない。
【0046】
押圧部8が復動、すなわち図4においては上方に移動しつつある状態では、ポンプ部9の内部空間の容積が増大しつつあるのでその内部空間が陰圧になり、この陰圧により、ボール弁20が弁座26から離れて遊動する。このとき、ポンプ部9の内部空間内に、容器本体2内の流動体が吸引開口部18から吸引される。
【0047】
押圧部8が完全に復動し終わると、図4に示されるような、流動体吐出ポンプ1の初期状態に戻る。この状態では、流動体が前記ボール弁20と前記細径シリンダ23の下端部との間に充填されている。
【0048】
この発明に係る流動体吐出ポンプにおいては、ポンプ部から吐出される流動体を吐出口から流動体吐出ポンプ外に吐出する。この流動体の吐出口からの吐出は、押圧部の往復動に伴ってポンプ部が動作することで生じる。図示しないが、この発明の流動体吐出ポンプは、例えば押圧部の往復動によって流動体吐出後に吐出口から液だれが生じる可能性のある、吐出されかけの流動体を吸引する液だれ防止機構を設ける等の適宜の設計変更を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、この発明の一例であるチューブ構造体におけるチューブ本体と、このチューブ本体内に挿入された治具とを示す一部断面図である。
【図2】図2は、この発明の一例であるチューブ構造体の他端部における端面の内面を示す一部切欠斜視図である。
【図3】図3は、この発明の他の例であるチューブ構造体の他端部における端面の内面を示す一部切欠斜視図である。
【図4】図4は、この発明の一例である流動体吐出ポンプを示す一部切欠正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 流動体吐出ポンプ
2 容器本体
2A チューブ構造体
3 ポンプヘッド
4 頸部
5 肩部
6 胴部
6A チューブ本体
7 治具
8 押圧部
9 ポンプ部
10 蓋体
11 逆回転防止部
12 内壁面
13 係合部
14 爪
15 溝部
16 係合面
17 傾斜面
18 吸引開口部
19 シリンダ支持部
20 ボール弁
21 付勢部材
22 シール部
23 細径シリンダ
24 太径シリンダ
25 鍔部
26 弁座
27 パッキン
28 一端開口部
29 第1開口部
30 第2開口部
31 リブ台座
32 他端開口部
33 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口する一端部と、前記一端部から内容物を充填させることのできる、内部圧力に応じて変形可能な部材で形成されたチューブ本体と、そのチューブ本体の他端部に形成された肩部と、その肩部の中心部から突出形成された、ポンプヘッドを装着させる頸部とを有するチューブ構造体であって、
前記肩部におけるチューブ本体の内部に面する内面が、前記頸部に前記ポンプヘッドを螺合により装着する際に、前記一端部からチューブ本体内に挿入される治具とが係合する係合部を備え、
前記頸部は、その外周面に、この頸部に前記ポンプヘッドを螺合により装着した後にこのポンプヘッドの逆回転を防止する逆回転防止部を備えてなることを特徴とするチューブ構造体。
【請求項2】
前記請求項1に記載されたチューブ構造体におけるチューブ本体の一端部が閉鎖されて成る容器本体と、
前記容器本体における頸部に装着されたポンプヘッドとを有することを特徴とする流動体吐出ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−46177(P2009−46177A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215287(P2007−215287)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(591038668)プレスコ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】