説明

ツリープロテクタ

【課題】生産が容易であるとともに、生産コストが低いツリープロテクタを提供する。
【解決手段】透明または半透明の樹脂製シートからなるプロテクタ本体11の両側縁部を相互に接続して筒形状とするツリープロテクタ10で、プロテクタ本体11の両側縁部のうち、少なくともいずれか一方の縁部に、少なくとも1つの通気孔形成用切り欠き部16,17を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗木および林地植栽木の育成時に、成長を促進するとともに、鹿、兎、ネズミ等の獣害を防止するため、苗木に被せて使用するツリープロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ツリープロテクタとしては、例えば、透明または半透明の樹脂シートからなる筒状のツリープロテクタにおいて、外周面の下端縁から所定間隔をもった領域に、複数の通気孔を設けたことを特徴とするツリープロテクタがある(特許文献1参照)。
【0003】
前記ツリープロテクタは、ロール状に巻かれた樹脂製シートを所定の長さに切断して切り出した後、折曲線となる切込部2を形成するとともに、別工程において専用のプレス金型で通気孔8を打ち抜いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−231384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ツリープロテクタでは、通気孔8を設けたるための専用のプレス金型が必要であるとともに、別工程としてプレス加工を必要とするため、生産工数が多く、生産コストが高いという問題点があった。
本発明は前記問題点に鑑み、生産が容易であるとともに、生産コストが低いツリープロテクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るツリープロテクタは、前記課題を解決すべく、透明または半透明の樹脂製シートからなるプロテクタ本体の両側縁部を相互に接続して筒形状とするツリープロテクタであって、前記プロテクタ本体の両側縁部のうち、少なくともいずれか一方の縁部に、少なくとも1つの通気孔形成用切り欠き部を設けた構成としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロール状の樹脂シートからプロテクタ本体を切り出す際に、プロテクタ本体の縁部に通気孔形成用切り欠き部を同時に形成できる。このため、専用のプレス金型を必要とせず、生産工数が少なくなるので、生産コストの低いツリープロテクタが得られる。
【0008】
本発明の実施形態としては、プロテクタ本体の両側縁部に係合突部を千鳥状に配置するとともに、前記係合突部の先端縁部およびこれに対向する縁部のうち、少なくともいずれか一方の縁部に通気孔形成用切り欠き部を形成しておいてもよい。
本実施形態によれば、係合突部を相互に係合して筒形状にできるとともに、通気孔を形成できるので、現場における組立作業が容易である。
また、苗木が十分に成長した場合には、係属突部相互の係止状態を解除し、プロテクタ本体を展開して外すことにより、前記ツリープロテクタを再利用できる。
【0009】
本発明の別の実施形態としては、係合突部の基部に係止用切り欠き部を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、係合突部の基部に設けた係止用切り欠き部を相互に係合することにより、係合突部が相互に係合しやすく、外れにくいツリープロテクタが得られる。
また、係合状態が確実になるとともに、応力集中が生じにくくなり、耐久性に優れたツリープロテクタが得られる。
【0010】
本発明の異なる実施形態としては、プロテクタ本体の両側縁部を重ね合わせて接着一体化してもよい。なお、接着一体化は、例えば、接着剤で接着一体化してもよく、高周波溶着で接着一体化してもよいことは勿論である。
本実施形態によれば、接続方法において選択の自由度が広いツリープロテクタがえられる。
【0011】
本発明の新たな実施形態としては、プロテクタ本体の外表面に、複数本の折り曲げ用切り欠き溝を長手方向に沿って平行に所定のピッチで並設しておいてもよい。
本実施形態によれば、前記折り曲げ用切り欠き溝に沿ってプロテクタ本体を折り曲げることにより角柱形状のツリープロテクタが得られる。
【0012】
本発明の他の実施形態としては、プロテクタ本体に設けた折り曲げ用切り欠き溝を間にして設けた対の固定孔を、異なる高さ位置に配置しておいてもよい。
本実施形態によれば、前記固定孔に挿通した締結紐を傾いた状態で支持棒に締結することにより、締結力の分力によってプロテクタ本体が偏平になりにくい。
【0013】
本発明の別の実施形態としては、係合突部を相互に係合して形成した筒状のプロテクタ本体の外周面に、少なくとも1つの保持リングを嵌合しておいてもよい。
本実施形態によれば、前記保持リングを介して筒状の前記プロテクタ本体を支持棒に締結紐で固定できるので、固定孔を設ける必要がなくなるとともに、筒状のプロテクタ本体の強度が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは本発明に係るツリープロテクタの第1実施形態を示す斜視図、図1Bは図1Aの部分拡大斜視図である。
【図2】図1Aで図示した第1実施形態を背面側から見た斜視図である。
【図3】図1Aで図示したツリープロテクタを展開した状態を示す正面図である。
【図4】図3で図示したツリープロテクタのIV−IV線拡大図である。
【図5】本発明に係るツリープロテクタの第2実施形態を示す部分拡大図である。
【図6】本発明に係るツリープロテクタの第3実施形態の展開した状態を示す正面図である。
【図7】本発明に係るツリープロテクタの第4実施形態の展開した状態を示す正面図である。
【図8】本発明に係るツリープロテクタの第5実施形態を示す斜視図である。
【図9】図9A,9Bは図8に示した保持リングを示す平面図,正面図である。
【図10】図10A,10Bはツリープロテクタの第6実施形態を示す斜視図、部分拡大斜視図である。
【図11】図10で図示したツリープロテクタの展開した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るツリープロテクタの実施形態を図1ないし図11の添付図面に従って説明する。
第1実施形態に係るツリープロテクタ10は、図1ないし図4に示すように、透明あるいは半透明の長尺な樹脂製シート11からなる平面6角形の筒形状であり、そのプロテクタ本体11の両側縁部に沿って係合突部12を千鳥状に配置するとともに、前記係合突部12の両側基部に係止用円弧状切り欠き部13をそれぞれ設けてある。また、前記係合突部12の先端縁部に通気孔形成用切り欠き部16を形成してある一方、前記通気孔形成用縁部16に対向する縁部に通気孔形成用切り欠き部17を形成してある。
【0016】
前記プロテクタ本体11には、厚さ0.2mmないし1.5mm、好ましくは0.3mmないし0.7mmのPP(ポリプロピレン)あるいはPE(ポリエチレン)の樹脂製シートの表面に長手方向に沿って6本の折り曲げ用切り欠き溝14を所定のピッチで平行に設けてある。このため、前記折り曲げ用切り欠き溝14を設けることによって、現場における折り曲げ作業が容易かつ正確になり、作業効率が良い。なお、前記プロテクタ本体11は、植物の生長に役立つ光の波長だけを透過する充填剤を添加しておいてもよい。
【0017】
本実施形態では、平面6角形のツリープロテクタ10を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限らず、例えば、平面3角形、4角形、5角形、8角形であってもよい。また、折り曲げ用切り欠き溝を設けずに、平面円形となるように形成してもよい。
【0018】
さらに、前記プロテクタ本体11は折り曲げ用切り欠き溝14を間にして対となるように固定孔15を設けてある。前記固定孔15は同一高さに設けてあるので、結線作業が容易になるという利点がある。なお、固定孔15を設ける位置,個数は必要に応じて適宜、選択できることは勿論である。
【0019】
前記係止用円弧状切り欠き部13の中心は、前記プロテクタ本体11の外周縁部と係合突部12の外周縁部との交点よりも奥側にずらして設けてある。組み付け作業に手間がかからないように係合しやすくするとともに、外れにくくするためである。
【0020】
本実施形態では、係合突部12,12が相互に係合しても、平坦面を形成している。このため、相互に係合している係合突部12,12に曲げモーメントが連続して作用することがないので、耐久性に優れ、寿命が長いという利点がある。
【0021】
次に、本実施形態の現場における組立,使用方法について説明する。
まず、プロテクタ本体11を折り曲げ用切り欠き溝14に沿って内側に折り曲げて折り癖を付ける。そして、前記プロテクタ本体11の両側縁部に設けた係合突部12,12を相互に組み付けるとともに、前記係合突部12の基部に設けた係止用円弧状切り欠き部13を相互に係止する。これにより、通気孔形成用切り欠き部16,17で通気孔18を形成できるとともに、平面6角形の筒状のツリープロテクタ10が得られる。
一方、地面に植え付けた苗木(図示せず)に前記ツリープロテクタ10を被せ、苗木の外周を包囲する。そして、図1および図2に示すように、前記ツリープロテクタ10の両側に支持棒20,20を打ち込んだ後、対の固定孔15に締結紐21を挿通するとともに、前記支持棒20に縛り付けて前記ツリープロテクタ10を固定する。
【0022】
そして、鹿等の獣害を受けずに順調に時間が経過し、苗木が十分に成長した場合には、前記締結紐21を切断し、取り外すとともに、係合突部12,12の係合を外してツリープロテクタ10を展開する。ついで、支持棒20,20引き抜き、前記ツリープロテクタ10と共に再利用する。
【0023】
第2実施形態は、図5に示すように、係合突部12を半楕円形状とした場合である。
本実施形態によれば、前記係合突部12の外周が円弧状であるので、組立作業時に係合突部12,12が相互に引っ掛かりにくくなり、組立作業がより一層簡単になるという利点がある。
他は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、説明を省略する。
【0024】
第3実施形態は、図6に示すように、対の固定孔15を同一高さに設けず、設ける位置を上下にずらすように配置した場合である。
本実施形態によれば、ツリープロテクタ10の高さの異なる固定孔15,15に締結紐21を通して支持棒20に固定することにより、締結紐21の締結力の分力によってツリープロテクタ10が偏平になりにくいという利点がある。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0025】
第4実施形態は、図7に示すように、長さ方向に沿って2分割したプロテクタ本体19,19を組み付けてツリープロテクタ10を形成する場合である。
本実施形態によれば、同一平面形状の巾狭のプロテクタ本体19,19を組み付けてツリープロテクタ10を形成できる。このため、組立前のプロテクタ本体19の面積が小さくなり、運搬、特に、山間部の現場までの運搬が容易になるという利点がある。
他は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、説明を省略する。
【0026】
第5実施形態は、図8,9に示すように、前述の折り曲げ用切り欠き溝を設けていないプロテクタ本体11を巻き付け、係合突部12,12を相互に係合することにより、通気孔18を備えた平面略円形の筒状ツリープロテクタ10を形成する場合である。そして、前記ツリープロテクタ10には円環状の保持リング30を嵌合してある。
前記保持リング30は、前記ツリープロテクタ10を補強するとともに、前記ツリープロテクタ10を、締結紐21を介し、支持棒20,20に固定するためのものである。このため、前記保持リング30の上下端面に台形の係合用突起31,31を所定のピッチでそれぞれ突設してある。
他は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、同一部分には同一番号を附して説明を省略する。
本実施形態によれば、折り曲げ用切り欠き溝を設けないので、生産工数が少なく、生産性の高いツリープロテクタ10が得られる。
また、プロテクタ本体11に固定孔を設ける必要がなくなり、プレス金型が不要となるとともに、生産工数の少ないツリープロテクタ10が得られるという利点がある。
【0027】
なお、保持リング30は、平面円環状のものに限らず、例えば、平面3角形、4角形、6角形、8角形であってもよく、必要に応じて係合用突起を突設してもよい。
また、前記保持リング30には、少なくとも1つの係合用突起を突設してあればよく、上下に揃えて突設してもよく、あるいは、千鳥状に上下に突設してもよい。
【0028】
さらに、保持リング30は前述の形状に限らず、環状の保持リングであれば、例えば、狭いピッチで方形の係合用突起を上下に突設した環状体であってもよく、また、連続する波形形状の環状体であってもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るツリープロテクタは、図示された前述の実施形態の形状に限らないことは勿論である。特に、係止用切り欠き部は前述の円弧形状に限らず、多角形、例えば、6角形、8角形、12角形等からなる曲線であってもよい。
また、通気孔は前述の大きさ,位置に限らず、少なくとも1つあればよく、必要に応じて変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
10:ツリープロテクタ
11,19:プロテクタ本体
12:係合突部
13:係止用円弧状切り欠き部
14:折り曲げ用切り欠き溝
15:固定孔
16,17:通気孔形成用切り欠き部
18:通気孔
20:支持棒
21:締結紐
30:保持リング
31:係合用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明または半透明の樹脂製シートからなるプロテクタ本体の両側縁部を相互に接続して筒形状とするツリープロテクタであって、
前記プロテクタ本体の両側縁部のうち、少なくともいずれか一方の縁部に、少なくとも1つの通気孔形成用切り欠き部を設けたことを特徴とするツリープロテクタ。
【請求項2】
プロテクタ本体の両側縁部に係合突部を千鳥状に配置するとともに、前記係合突部の先端縁部およびこれに対向する縁部のうち、少なくともいずれか一方の縁部に通気孔形成用切り欠き部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のツリープロテクタ。
【請求項3】
係合突部の基部に係止用切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項2に記載のツリープロテクタ。
【請求項4】
プロテクタ本体の両側縁部を重ね合わせて接着一体化したことを特徴とする請求項1に記載のツリープロテクタ。
【請求項5】
プロテクタ本体の外表面に、複数本の折り曲げ用切り欠き溝を長手方向に沿って平行に所定のピッチで並設したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のツリープロテクタ。
【請求項6】
プロテクタ本体に設けた折り曲げ用切り欠き溝を間にして設けた対の固定孔を、異なる高さ位置に配置したことを特徴とする請求項5に記載のツリープロテクタ。
【請求項7】
係合突部を相互に係合して形成した筒状のプロテクタ本体の外周面に、少なくとも1つの保持リングを嵌合したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のツリープロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−94122(P2013−94122A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240143(P2011−240143)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(594161884)ハイトカルチャ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】