説明

ティシュペーパー収納箱及びティシュペーパー製品

【課題】ティシュペーパー製品における紙粉発生を抑制する。
【解決手段】ティシュペーパー収納箱の上面取り出し口に設けた、スリット孔を有するシート材を、帯電防止剤を含むものとすることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパー収納箱及びティシュペーパー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
上面に取り出し口を供えるティシュペーパー収納箱にポップアップ形式で折り畳んだティシュペーパーの束を収納したティシュペーパー製品はよく知られている。
このようなティシュペーパー製品では、ティシュペーパーの使用用途、例えば、肌清拭用途、衛生用途などに鑑みて、日々紙粉低減の努力がなされている。
紙粉対策としては、例えば、ドライヤーから紙を剥ぎ取る工程においては、クレーピングドクターで剥ぎ取る際等に必然的に発生するため、ライン上に設置した集塵装置により吸引する等して紙粉を回収して、製品への混入を最小限にするよう対策をしている。
【特許文献1】特開平11−130167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、製造工程における紙粉をすべて回収することは困難であるとともに、取り出し時のティシュペーパーと収納箱との摩擦や、物理的衝撃により紙粉が新たに発生することがある。特に、ふわりタイプともよばれる、柔らかさ及び嵩高さを重視したものについては、取り出し時における紙粉発生が顕著であった。
ここで、本発明者らは、このティシュペーパー製品における紙粉発生原因の一つに収納箱のスリット部分からティシュペーパーを取り出す際の摩擦によってシートが帯電し、この帯電によっていっそうティシュペーパーからの紙粉剥離が促進されることを知見し、改善の余地があることを知見した。
そこで、本発明の主たる課題は、取り出し口に貼付されたフィルムシートに起因する紙粉発生を改善したティシュペーパー収納箱及びティシュペーパー製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
上面に箱長手方向に細長い窓を有し、この窓が箱上面の内側面に貼着されたスリットを有するシートによって被覆されているティシュペーパー収納箱 において、
前記シートに帯電防止剤が内添又は外添されていることを特徴とするティシュペーパー収納箱。
【0005】
<請求項2記載の発明>
前記シートが、樹脂性フィルムシートである請求項1記載のティシュペーパー収納箱。
【0006】
<請求項3記載の発明>
前記シートのJIS K 7194に基づく表面固有抵抗の値が1×1010〜1×1014Ωの範囲にある請求項1又は2記載のティシュペーパー収納箱。
【0007】
<請求項4記載の発明>
帯電防止剤が、界面活性剤を主成分とするものである、請求項1〜3の何れか1項に記載のティシュペーパー収納箱。
【0008】
<請求項5記載の発明>
前記シートが、室温25.2℃、湿度24.0%の環境下で、スリットからティシュペーパーを連続で10組取り出したときの静電気量が−0.15〜0.15kVである請求項1〜4の何れか1項に記載のティシュペーパー収納箱。
【0009】
<請求項6記載の発明>
請求項1〜5の何れか1項に記載のティシュペーパー収納箱に、複数枚のティシュペーパーがポップアップ方式で折り畳まれてなるティシュペーパー束が収納されていることを特徴とするティシュペーパー製品。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり、本発明によれば、取り出し口に貼付されたフィルムシートに起因する紙粉発生が改善されたティシュペーパー収納箱及びティシュペーパー製品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次いで、本発明の実施の形態を図面の例を参照しながら以下に詳述する。
図1は、本実施形態にかかるティシュペーパー収納箱である。
このティシュペーパー収納箱は、箱1の上面に形成された窓1Aがスリット2Aを有するシート2により内側から覆われている。
収納箱の具体的な大きさは、収納するティシュペーパーの枚数、特性、例えば、ふんわりとした厚み重視型とするか、薄型とするか、又は1プライとするか2プライとするか等により適宜変更することができるが、概ね、高さの外寸が50.0〜65.0mm、長さの外寸が240±25mm、幅の外寸が115±25mmである。
窓1Aは、箱1の上面にミシン目などの切りこみ目が予め形成され、その切りこみ目で囲まれる部分を剥ぎ取ることにより、形成される公知の構成を採る。
【0012】
シート2は、窓1Aのサイズより大きく、例えば図示のように方形とし、箱の上面に内側よりホットメルト接着剤やその他既知の接着剤により接着されている。
このシート2の坪量は10〜35g/m2であるのがよい。坪量が10g/m2未満では、強度的に不足し、ティシュペーパー3の取り出し時において裂けあるいは破断の確率が高くなる。逆に、35g/m2を超えると、強度の問題はないものの、コスト高となるばかりでなく、取り出し時のノイズが大きくなる。
シート2にはスリット2Aが形成されているが、このスリット2Aは、シート2を箱1の上面内側へ接着した状態において、窓1Aの幅方向中央部に箱1の長手方向に沿うように形成されている。スリット2Aの長さは、図示例のように窓1Aの長手方向全長より短く、概ね窓長手方向全長の75〜98%とするのが好適であるが、窓1Aの長手方向全長と同じでもよいし、シート2の横方向長さより短い条件の下で、窓1Aの長手方向全長より長くあってもよい。スリットの具体的な長さLは、175mm〜185mmが望ましい。
【0013】
ここで、本形態のティシュペーパー収納箱では、特徴的に、このシートに帯電防止剤が内添又は外添されている。
帯電防止剤が内添又は外添されるシートは、ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、ポリエチレンテフタレート、ポリスチレン等のプラスチックシート、これらを混抄させた不織布、例えばポリエチレンとポリプロピレンを混抄させた不織布、前述の各種ポリエチレンに用途に応じて、例えばフィルムにコシを持たせる目的で、ポリエチレンテフタレートやポリプロピレンを配合したPE/PET、PE/PPなど用いることができる。
不織布とするならば、エアースルー不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布等とすることができる。さらに、シートは、合成紙であってもよい。合成紙とするなら、その合成繊維又は化学繊維素材としては、レーヨン、アセテート、ビニルアセテートが好適である。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等も使用可能である。
【0014】
帯電防止剤としては、この主のシートに用いられる既知の帯電防止剤が問題なく用いられる。例えば、界面活性剤を主成分とするものや炭素や電気伝導度の大きい金属酸化物等の導電体を主成分とするものが用いられる。炭素等の導電体を主成分とするものは帯電防止の点では有利であるがコストが高いため、本発明においては界面活性剤を主成分とするもののほうが用いやすい。
界面活性剤としては、「アニオン系」、「カチオン系」、「ノニオン系」、「両性イオン系」のものが用いられる。これら界面活性剤はフィルム表面で親油基を内部に向け、親水基を表面に向けた形で存在し、空気中の水分が親水基に吸着することで導電層を形成し、静電気を漏洩(放電)させることよって帯電が防止される。
界面活性剤を主成分とする帯電防止剤の具体例としては、例えば、エレクトロストリッパー(花王株式会社製)等が挙げられるが、その他、既知の帯電防止剤を用い得る。
【0015】
帯電防止剤の添加方法は、特に限定されないが、例えば、内添するのであれば「練り込み」、外添するのであれば「塗布」、「浸漬」、「吹き付け」、「蒸着」等の方法が採用できる。中でも、シート生地に「練り込み」する内添方式とすると、シート内での帯電防止剤の分散性が良好で効果の持続性が高く、また製造工程を増やさないためコストの点から最も望ましい。
ここで、帯電防止剤の「練り込み」とは、押出機で樹脂を溶融させ混練する時点で、あらかじめシート原料に粉体である帯電防止剤を適当量混ぜ混んでおいたマスターバッチを一緒に混練して帯電防止フィルムを生産する形態をいう。
また、界面活性剤を主成分とする練り込みタイプの帯電防止剤のしくみについて説明すると、シート内に練り込まれた界面活性剤は、シート基材と適度な相溶性を保ちつつ経時とともにフィルム表面にブリード(移行)して親油基を内部に向け、親水基を表面に向けた形で存在するようになる。そして、この状態となると空気中の水分が親水基に吸着されて導電層を形成して電荷が漏洩しやすくなり、電荷の発生を抑制して効果を発揮する。
【0016】
帯電防止剤の添加量は、シートの種類や後述する表面固有抵抗に応じて適宜調整すればよい。例えば、界面活性剤を主成分とする練り込みタイプの帯電防止剤であれば、所望の帯電防止効果のための適当なブリード量から添加量を定めればよい。より具体例を示せば、ポリエチレンフィルムシートに対して、ノニオン系界面活性剤であるグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする帯電防止剤を練りこむ例であれば、概ね当該有効成分が500〜2000ppmとなるように含有せしめる。2000ppm以上添加した場合、ブリードした界面活性剤に吸着する空気中の水分が過剰となり、フィルム表面にべたつきが発生するため、好ましくない。また、コストアップともなる。500ppm以下だと充分な静電気の漏洩(放電)が行われず、帯電するため、充分な紙粉低減効果が得られない。なお、高湿な夏季と乾燥する冬季とで帯電具合が相違することから、季節に応じて適宜変更するのがよい。
【0017】
一方、本発明においては帯電防止フィルムとして市販されているフィルムシートをそのまま用いることも可能である。この帯電防止フィルムの具体例としては、ガードエース(積水フィルム株式会社製)、STAT−A(株式会社テクノスタット社製)等のほか、既知の帯電防止機能を有するフィルムシートを用い得る。
他方、前記シートは、室温25.2℃、湿度24.0%の環境下で、スリットからティシュペーパーを連続で10組取り出したときの静電気量が−0.15〜0.15kVであるのが望ましい。この範囲であれば、好適に紙粉発生が低減できる。
なお、静電気量は、静電気測定器(例えば、KASUGA製KSD−6110)を用いれば、測定することが可能である。
【0018】
また、本発明におけるシートの好適な表面固有抵抗を示せば、JIS K 7194に基づく測定方法で、1×1010〜1×1014Ωである。従って、シートに帯電防止剤を添加するにあたっては、当該表面固有抵抗値となるように添加するのが望ましい。既知の帯電防止フィルムシートを用いる場合も同様である。なお、1×1014Ωを超えると帯電しやすく十分な紙粉低減効果が得られない。1×1010Ω未満であると過度でありコスト等の点から好ましくない。
【0019】
一方、上述のティシュペーパー収納箱には、二枚重ねで一組としたティシュペーパーを、いわゆるポップアップ方式で折り畳んで、例えば150組300枚〜200組400枚程度を収納する。収納するティシュペーパーについては既知のものでよい。また、ポップアップ方式での折り畳みについては、既知の技術であるので詳述はしない。
【実施例1】
【0020】
帯電防止剤を含むフィルム(実施例)と帯電防止剤を含まないフィルム(比較例)についてティシュ取り出し時における静電気量の相違について試験した。
試験は、上述の実施例にかかるフィルムを窓に取り付けたティシュペーパー収納箱と比較例にかかるフィルムを窓に取り付けたティシュペーパー収納箱をそれぞれ作成し、各例にかかるティシュペーパー収納箱内にポップアップ形式で折り畳んだ150組300枚のティシュペーパー束を収納し、室温25.2℃、湿度24.0%の環境下で、ティシュペーパー収納箱内に収めたティシュを10組連続で取出したときの、シートに帯電する静電気量を静電気測定器(KASUGA製KSD−6110)で測定することで行った。
測定箇所はフィルムのスリット端の二箇所とし、測定はそれぞれの箇所について6回行った。結果は下記表1のとおりである。
なお、実施例にかかるフィルムは帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステルを2000ppm内添した、低密度ポリエチレンシートを用いた。
【0021】
【表1】

【0022】
表1から明らかであるように、帯電防止剤による帯電防止効果は、ティシュペーパー引き出し時の摩擦による帯電を効果的に防止していることが確認できた。
なお、フィルムに付着している紙粉を目視にて確認したところ、実施例に係るフィルムについては、紙粉の付着は確認できなかったが、比較例にかかるフィルムについては紙粉の付着が確認された。
【実施例2】
【0023】
次いで、本発明の実施例1〜3として、帯電防止剤を含むシートを用いたティシュペーパー収納箱を作成した。比較例1及び2として従来の帯電防止剤を内添していない低密度ポリエチレンシートを用いたティシュペーパー収納箱を作成し、これら五つの例について紙粉発生量について測定した。測定方法は、下記のとおりである。結果及び用いたフィルム素材については、表2に示す。
<紙粉発生量>
各例にかかるティシュペーパー収納箱内にポップアップ形式で折り畳んだ160組320枚のふわりタイプのティシュペーパー束を収納し、室温25.2℃、湿度24.0%の環境下で、ティシュペーパー収納箱内に収めたティシュペーパー連続してすべて取り出す操作を密封容器内で行い、容器内に飛散した紙粉および箱内に溜まった紙粉量を測定した。これを15回繰り返して平均値を算出した。
【0024】
【表2】

【0025】
表2から明らかとなるように、本発明の実施例は紙粉発生量が著しく低いことが確認できる。してみると、本発明によって紙粉の発生が低減できることが知見されたといえる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、例えば、ティシュペーパー収納箱の他、シートに形成したスリット孔から紙製品を順次取り出す形態の収納箱に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態にかかるティシュペーパー製品の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1…収納箱、1A…窓、2…シート、2A…スリット、3…ティシュペーパー、L…スリット長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に箱長手方向に細長い窓を有し、この窓が箱上面の内側面に貼着されたスリットを有するシートによって被覆されているティシュペーパー収納箱において、
前記シートに帯電防止剤が内添又は外添されていることを特徴とするティシュペーパー収納箱。
【請求項2】
前記シートが、樹脂性フィルムシートである請求項1記載のティシュペーパー収納箱。
【請求項3】
前記シートのJIS K 7194に基づく表面固有抵抗の値が1×1010〜1×1014Ωの範囲にある請求項1又は2記載のティシュペーパー収納箱。
【請求項4】
帯電防止剤が、界面活性剤を主成分とするものである、請求項1〜3の何れか1項に記載のティシュペーパー収納箱。
【請求項5】
前記シートが、室温25.2℃、湿度24.0%の環境下で、スリットからティシュペーパーを連続で10組取り出したときの静電気量が−0.15〜0.15kVである請求項1〜4の何れか1項に記載のティシュペーパー収納箱。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のティシュペーパー収納箱に、複数枚のティシュペーパーがポップアップ方式で折り畳まれてなるティシュペーパー束が収納されていることを特徴とするティシュペーパー製品。

【図1】
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【公開番号】特開2008−81124(P2008−81124A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259750(P2006−259750)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】