説明

テストインジケータ

【課題】従来のようなセンターピニオン、クラウンギアによる機械的な誤差の影響を排除して高精度化したテストインジケータを提供すること。
【解決手段】揺動自在な測定子3と、測定子3と連結する第1のアーム5と、セクタギア61を有する第2のアーム6と、セクタギア61と噛合するピニオン71と、このピニオン71の回転量を検出するロータリーエンコーダ8と、表示ユニットと、検出されるピニオン71の回転量を測定子3の揺動量に変換して表示ユニットに表示する演算表示部とを備える。ロータリーエンコーダ8は、ピニオン71と同軸上に設けられたロータ7とステータ45とを含む。従来のクラウンギアに相当する部分に、ロータ7が配置されているので、従来のようなクラウンギア、センターピニオンが不要となり、これらの噛み合い誤差の影響を排除でき、高精度化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストインジケータに関し、詳しくは、被測定物との接触部を有し、揺動自在に支持された測定子と、先端部に測定子が連結され、基端部にセクタギアが設けられたアームとを備えたテストインジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定子に連結されたアームの揺動量を、てこの原理によって拡大し、指針の回転量として表示するテストインジケータが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなテストインジケータによれば、微かな測定子の揺動量も、指針の大きな変位量として検出することができる。
具体的には、特許文献1に記載のテストインジケータは、図4に示されるように、測定子3と、第1のアーム5と、第2のアーム6と、指針23とを備えている。なお、図4 は、本体ケースやカバー等を省略し、主要部のみを表示する。
【0003】
第1のアーム5には、先端部分に被測定物との接触部31を有する測定子3が連結さ れ、その連結部分に第1の軸部51が設けられ、図示しない本体ケースの軸受部に揺動自在に支持されている。また、図示しない本体ケースには、第1のアーム5の揺動量を拡大する第2のアーム6と、この第2のアーム6の揺動を指針23に伝達するためのピニオン71およびクラウンギア21とが設けられている。
第2のアーム6は、第1のアーム5に隣接して配置され、その中間部分に形成された第2の軸部62で揺動自在に支持されている。また、ピニオン71、クラウンギア21は、一体化されて回転自在に取り付けられている。
【0004】
また、第1のアーム5には、第1の軸部51に対して測定子3とは反対側に、第1のアーム5の揺動に応じて移動する移動面52および移動面53が形成されている。
第2のアーム6には、第1のアーム5に形成された移動面52,53の各々に対応して接触し、かつ第1のアーム5の揺動を第2のアーム6に伝達する伝達ピン63,64が設けられている。さらに、第2のアーム6の端部には、ピニオン71に噛合するセクタギア61が設けられている。
【0005】
このような構造において、測定子3の揺動量を指針23の回転量に変換する機構を以下に説明する。
測定子3が、U方向に揺動すると、第1のアーム5は、第1の軸部51を中心として、図4中、反時計回りに回動し、これに伴い、移動面53が、下方に移動する。この移動面53の下方への移動によって、第2のアーム6の伝達ピン64も、下方に押し下げられ、これに伴い、第2のアーム6は第2の軸部62を中心として、反時計回りに回動する。この際、測定子3のU方向への揺動量よりも、第2のアーム5の伝達ピン64の移動量の方が大きく、さらに、この伝達ピン64の移動量よりもセクタギア61の移動量の方が大きいので、測定子3の揺動量が拡大してセクタギア61の移動量に変換される。
そして、第2のアーム6の反時計回りの回動に伴って、セクタギア61を介して、ピニオン71が時計回りに回転される。さらに、クラウンギア21を介して、指針23と一体で設けられたセンターピニオン22が回転され、回転軸24を介して指針23も回転される。このようにして、測定子3の揺動量が指針23の回転量として表示される。
【0006】
一方、測定子3がD方向に揺動すると、第1のアーム5が第1の軸部51を中心とし て、図4中、時計回りに回動し、今度は、移動面52が上方に移動する。これに伴い、第2のアーム6の伝達ピン63は、上方に押し上げられ、第2のアーム6は第2の軸部62を中心として、測定子3のU方向の揺動と同様に反時計回りに回動する。
すなわち、測定子3の揺動方向によらず、常に指針23の回転は同一方向となるように構成されている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−109401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載のテストインジケータでは、その表示値にセンターピニオン、クラウンギアによる機械的な誤差が影響し、このような影響を排除して高精度化することが困難だった。
【0009】
本発明の目的は、従来のようなセンターピニオン、クラウンギアによる機械的な誤差の影響を排除して高精度化したテストインジケータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のテストインジケータは、本体ケースと、この本体ケースに揺動自在に支持さ れ、被測定物との接触部を有する測定子と、先端部に測定子が連結され、基端部にセクタギアが設けられたアームと、セクタギアと噛合して測定子の揺動に伴って回転されるピニオンと、このピニオンの回転量を検出するロータリーエンコーダと、表示手段と、ロータリーエンコーダによって検出されるピニオンの回転量を測定子の揺動量に変換して表示手段に表示する制御手段とを備え、ロータリーエンコーダは、ピニオンと同軸上に設けられたロータと、本体ケースにロータと所定の隙間を介して対向配置されたステータとを含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、ロータリーエンコーダは、ロータの回転量を電気信号に変換して出力可能なものが好ましい。そして、表示手段としては、ロータリーエンコーダから出力された電気信号をデジタル表示可能なものが好ましい。
本発明によれば、測定子の揺動が、アームおよびアームの基端部に設けられたセクタギアを介して、ピニオンの回転に機械的に変換される。このピニオンの回転量をロータリーエンコーダが検出する。そして、制御手段が検出されたピニオンの回転量を測定子の揺動量に変換して、表示手段に表示する。
このように、従来のクラウンギアに相当する部分に、ロータが配置されているので、従来のようなクラウンギア、センターピニオンが不要となり、クラウンギア、センターピニオンの噛み合い誤差を排除でき、高精度化が可能となる。
【0012】
本発明のテストインジケータでは、表示手段は、表示用ケースと、デジタル表示部を有する表示基板とから構成され、当該表示基板とステータとが一体の基板として形成されていることが好ましい。
本発明によれば、表示基板とステータとを一体の基板として形成することで、部品点数を削減することができる。また、ステータを本体ケースに対して位置決めすれば、表示基板を別途位置決めする必要がなくなり、組み立て作業の効率化が図れる。さらに、ステータで取得されたロータの回転量の情報を、表示手段に伝達する伝達経路が必要となるが、この伝達経路を一体化された基板上に形成することによって、組立時に、伝達経路のための配線等の作業が省けて、組立作業が簡単になる。
【0013】
本発明のテストインジケータでは、ステータで取得されたロータの回転量の最大値を記憶するピークホールド回路を備え、表示手段に測定子の揺動量の最大値を表示することが好ましい。
本発明によれば、ロータの回転量の最大値がピークホールド回路で記憶され、表示手段に測定子の揺動量の最大値が自動的に表示されるので、使用上の利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のテストインジケータの外観を示す斜視図である。図2は、テストインジケータの内部構造を部分的に示す斜視図である。
テストインジケータは、図1に示すように、本体ケース1と、カバー2と、本体ケース1に揺動可能に支持される測定子3と、この測定子3の揺動量をデジタル表示する表示手段としての表示ユニット4とを備えている。
【0015】
測定子3は、本体ケース1に形成された挿入穴11から露出した状態で、本体ケース1の一対の軸受部12,13に形成された各軸受部材14によって軸支されている。
表示ユニット4は、扁平な円盤状に形成され、本体ケース1に固定された表示用ケース41と、この表示用ケース41内に収納された表示基板42とから構成される。表示基板42の基板上には、デジタル表示部43が形成され、表示用ケース41の上面に開口された表示窓44から当該デジタル表示部43が視認可能になっている。表示用ケース41の上面には、デジタル表示部43と並んで、2つのスイッチ54,55が配置されている。2つのスイッチ54,55のうちスイッチ54は、電源オンオフスイッチ、スイッチ55は、後述するピークホールドスイッチとして機能する。
【0016】
次に、テストインジケータの内部構造について、図2に基づいて説明する。
本体ケース1の内部には、測定子3を連結する第1のアーム5と、この第1のアーム5に対して測定子3とは反対側に隣接され端部にセクタギア61を有する第2のアーム6 と、セクタギア61と噛合するピニオン71と、このピニオン71の回転量を電気信号として検出可能なロータリーエンコーダ8とが収納されている。このうち、第1のアーム 5、第2のアーム6は、本発明のアームを構成する。なお、測定子3、第1のアーム5、第2のアーム6については、従来例と同様の構成であり、かつ、同様の動作をするものであり、これらの詳細な説明は省略する。
【0017】
本実施形態における従来例との相違点は、従来例では、ピニオン71と一体形成されたクラウンギアおよびセンターピニオンが配置されていたのに対して、本実施形態では、クラウンギアおよびセンターピニオンの代わりにロータリーエンコーダ8が配置されている点である。
このロータリーエンコーダ8は、一対のロータ7およびステータ45を含んで構成されており、ロータ7の一回転以内の絶対角度を検出するABS(アブソリュート)型ロータリーエンコーダである。
【0018】
ロータ7は、ピニオン71と一体化され、本体ケース1に軸支されている。また、ロータ7は、小円板状に形成され、第2のアーム6のセクタギア61によってピニオン71を介して回転可能に構成されている。
ステータ45は、ロータ7と所定の隙間を有して当該ロータ7に対向する位置に配置されている。また、ステータ45は、前述した表示ユニット4の表示基板42と一体の基板として形成されている。すなわち、ステータ45および表示基板42は、互いに直交して形成され、全体略T字形の断面形状を有する。一方、従来のテストインジケータでは、指針用の目盛板がクラウンギアに対して直行するように配置されている。従って、本実施形態のテストインジケータの表示基板42をステータ45(ロータ7)に対して直交するように配置することで、指針を収納する従来の表示用ケースをそのまま本実施形態の表示用ケースとして利用できる。
【0019】
これらのロータ7およびステータ45の互いに対向する各面には、ロータ7の回転位置を検出するための図示しないパターンがそれぞれ形成され、これらのパターンによって、ステータ45は、ロータ7の一回転につき一周期の変化を示す位相信号を出力する。そして、ロータ7は測定子3の揺動に応じて回転するので、ステータ45から出力される位相信号は、測定子3の一揺動によって一周期の変化を示すようになっている。なお、図2中では、見易いようにロータ7とステータ45とのギャップを広くして描いている。
【0020】
このような構成において、測定子3の接触部31を被測定体に当接させて、測定子3が被測定体の表面形状に応じて揺動すると、測定子3の揺動が、第1,第2のアーム5,6およびセクタギア61を介して、ピニオン71の回転に機械的に変換される。そして、ピニオン71の回転量がロータリーエンコーダ8で検出され、検出された電気信号に基づいて測定子3の揺動量が表示基板42のデジタル表示部43に表示される。
【0021】
従って、従来のクラウンギアに相当する部分に、ロータ7が配置されているので、従来のようなクラウンギア、センターピニオンが不要となり、クラウンギア、センターピニオンの噛み合い誤差の影響を排除でき、高精度化が可能となる。
また、表示基板42とステータ45とが、一体の基板として形成されているので、部品点数を削減することができる。また、ステータを本体ケースに対して位置決めすれば、表示基板を別途位置決めする必要がなくなり、組み立て作業の効率化が図れる。さらに、ステータ45で検出された電気信号を表示基板42まで伝達するための伝達経路を一体化された基板上に形成することができ、組立時に、伝達経路のための配線等の作業を省くことができ、組立作業が簡単になる。
【0022】
また、本実施形態のテストインジケータは、図3に示すように、ステータで取得されたロータの回転量の最大値を記憶するピークホールド回路48を備えている。
図3は、テストインジケータのピークホールド回路48の構成を説明するブロック図である。図3に示すように、テストインジケータは、ロータリーエンコーダ8と、制御手段としての演算制御部47と、演算制御プログラム格納部49と、記憶手段としてのデータ格納部50と、ステータ45によって検出された測定子3の揺動量をデジタル表示する液晶表示器などからなるデジタル表示部43と、ピークホールド用のスイッチ55とを備えている。これらのうち演算制御プログラム格納部49およびデータ格納部50から、本発明のピークホールド回路48が構成される。なお、演算制御部47およびピークホールド回路48は、デジタル表示部43とともに表示基板42上に配置されている。
【0023】
演算制御部47は、演算制御プログラム格納部49に格納されている各種プログラムに基づいて、ロータリーエンコーダ8からの電気信号を取り込み、デジタル表示部43を制御する機能を備える。すなわち、演算制御部47は、ピークホールド用のスイッチ55が押されていない状態では、ロータリーエンコーダ8で検出されたピニオン71の回転量を測定子3の揺動量に変換してデジタル表示部43に更新表示させる。
一方、ピークホールド用のスイッチ55が押されると、演算制御部47は、検出されたピニオン71の回転量データをデータ格納部50に記憶させるとともに、その回転量データをデジタル表示部43に表示させる。そして、演算制御部47は、次に検出された回転量データを、データ格納部50に記憶させて、先に記憶させた回転量データと比較する。その結果、先に記憶させた回転量データの方が大きい場合には、デジタル表示部43のデジタル表示は更新されない。新しく記憶させた回転量データの方が大きい場合には、デジタル表示部43のデジタル表示が更新表示される。このような演算制御部47による表示方法は、再度、ピークホールド用のスイッチ55が押されるまで繰り返される。なお、データ格納部50には、検出された回転量データを最新のものから順番に複数個、ここで は、3〜5個の回転量データが記憶できるようになっている。
このような構成において、デジタル表示部43に測定子3の揺動量の最大値を常時、自動的に表示させることができる。従って、使用上の利便性が向上する。
【0024】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、第1のアーム5および第2のアーム6から本発明のアームが構成されると説明したが、これに限らず、アームが単数で構成されていてもよく、本発明のアームとしては、少なくとも、先端部に測定子が連結され、基端部にセクタギアが設けられたものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、被測定物との接触部を有し、揺動自在に支持された測定子と、先端部に測定子が連結されたアームを備えた、てこ式ダイヤルゲージ等のテストインジケータに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るテストインジケータを示す斜視図。
【図2】前記テストインジケータの内部構成を示す斜視図。
【図3】前記テストインジケータのピークホールド回路構成を説明するブロック図。
【図4】従来例のテストインジケータを示す斜視図。
【符号の説明】
【0027】
1…本体ケース
3…測定子
4…表示ユニット(表示手段)
5…第1のアーム
6…第2のアーム
7…ロータ
8…ロータリーエンコーダ
31…接触部
41…表示用ケース
42…表示基板
43…デジタル表示部
45…ステータ
47…演算制御部(制御手段)
48…ピークホールド回路
61…セクタギア
71…ピニオン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
この本体ケースに揺動自在に支持され、被測定物との接触部を有する測定子と、
先端部に前記測定子が連結され、基端部にセクタギアが設けられたアームと、
前記セクタギアと噛合して前記測定子の揺動に伴って回転されるピニオンと、
このピニオンの回転量を検出するロータリーエンコーダと、
表示手段と、
前記ロータリーエンコーダによって検出される前記ピニオンの回転量を前記測定子の揺動量に変換して前記表示手段に表示する制御手段とを備え、
前記ロータリーエンコーダは、前記ピニオンと同軸上に設けられたロータと、前記本体ケースに前記ロータと所定の隙間を介して対向配置されたステータとを含むことを特徴とするテストインジケータ。
【請求項2】
請求項1に記載のテストインジケータにおいて、
前記表示手段は、表示用ケースと、デジタル表示部を有する表示基板とから構成され、
当該表示基板と前記ステータとが一体の基板として形成されていることを特徴とするテストインジケータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のテストインジケータにおいて、
前記ステータで取得された前記ロータの回転量の最大値を記憶するピークホールド回路を備え、
前記表示手段に前記測定子の揺動量の最大値を表示することを特徴とするテストインジケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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