説明

テルペン並びにその血中濃度定量方法及び薬物動態解析方法

【課題】 血液中に低濃度で存在するテルペンの血中濃度を高精度で定量できるテルペンの血中濃度定量方法及びこれを用いたテルペンの薬剤動態解析方法、並びにこの薬剤動態解析方法により薬物動態が解析されたテルペンを提供すること。
【解決手段】 血液に含まれるテルペンを質量分析計で検出して、血液におけるテルペンの血中濃度を定量することを特徴とするテルペンの血中濃度定量方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルペン並びにその血中濃度定量方法及び薬物動態解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物中に含まれるトリテルペン等のテルペンは、その多くが種々の生理活性を有することが知られている。例えば、乾燥したバナバ葉を熱水抽出又はアルコール抽出して得られるバナバエキス中に含まれる、コロソリン酸及びこれと構造活性連関を有するトリテルペンについて、これまでに、ラット、マウス、イヌ及びヒトにおけるin vivoでの血糖値降下作用や、骨格筋細胞に対するin vitroでのGLUT4の取り込み促進作用などが研究され、血糖値降下剤や、抗肥満剤として利用できる可能性が示唆されている(特許文献1)。
【0003】
このような生理活性を有する薬物については、生体に投与されたときの薬物動態を詳細に解析することが重要である。薬物動態の解析においては、生体内に取り込まれた薬物について、吸収、分布、代謝及び排泄の過程について調べられる。そのために、投与された薬物の血中濃度推移、血中濃度半減期、排泄速度等が測定される。この薬物動態の解析によって、例えば、薬物が吸収されてから排泄されるまでの過程における、酸化、還元、加水分解や、グルクロン酸結合に代表される共役といった、薬物の構造の変化が明らかにされる。
【0004】
そして、薬物動態を解析することで、生理活性に関係する部位や官能基、立体構造等を特定することができれば、多数の天然のテルペンの中から有用なものを見出すことが容易になるばかりでなく、アルコキシ化、配糖化、ハロゲン化、ケトン化及びジケトン化等による天然のテルペンの誘導体化や、植物培養、液培養、遺伝子操作等の手法により、天然のテルペンよりもさらに薬効を強化した薬物の開発が容易になることが期待される。
【特許文献1】特開2000−169384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなテルペンの薬物動態については、これまで十分に解析されていなかった。これは、テルペンの薬物動態の正確な解析のためには、pg/mL〜ng/mLオーダーの極めて低い濃度領域にある血中濃度を定量する必要があるが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のような従来の手法のみでは、このような低濃度で存在するテルペンの検出自体が困難であり、テルペンの血中濃度を高精度で定量できる方法が確立されていなかったためであると考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、血液中に低濃度で存在するテルペンの血中濃度を高精度で定量できるテルペンの血中濃度定量方法及びこれを用いたテルペンの薬剤動態解析方法、並びにこの薬剤動態解析方法により薬物動態が解析されたテルペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、質量分析計を用いてテルペンを検出することにより、HPLC等のみでは検出できないような低濃度の血中のテルペンを検出できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、血液に含まれるテルペンを質量分析計で検出して、血液におけるテルペンの血中濃度を定量することを特徴とするテルペンの血中濃度定量方法である。
【0009】
本発明の血中濃度定量方法においては、質量分析計を採用したことにより、血液中に極めて低い濃度で存在するテルペンの血中濃度を高精度で定量できる。
【0010】
上記質量分析計としては、四重極質量分析計が、血中濃度定量の精度が特に高くできるため好ましい。
【0011】
上記の血中濃度定量方法においては、血液を液体クロマトグラフィーで分画して得た分画成分に含まれるテルペンを、質量分析計で検出することが好ましい。これにより、血液中の混在成分の影響を受けにくくなり、検出感度をより高めることができる。さらに、液体クロマトグラフィーによる分画は、血液を遠心分離して得た血清からの有機溶媒による抽出物について行うことがより好ましい。
【0012】
上記テルペンとしては、特に、コロソリン酸又はコロソリン酸類縁体であることが好ましく、さらに、コロソリン酸類縁体としては、マスリン酸、ウルソール酸、アンシアチコ酸、オレアノール酸、トルメンティック酸及び2α,19α−ジヒドロキシ−3−オキソ−ウルス−12−エン−28−オイック酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のトリテルペンであることが好ましい。
【0013】
また、上記テルペンは、バナバ、シソ、ビワ又はグアバから得られるトリテルペンであることが好ましい。これら植物には薬学的に有用なトリテルペンが豊富に含まれている。
【0014】
本発明はまた、生体に投与されたテルペンの血中濃度を、上記本発明のテルペンの血中濃度定量方法で経時的に定量することを特徴とするテルペンの薬物動態解析方法である。
【0015】
この薬物動態解析方法においては、上記本発明のテルペンの血中濃度定量方法を採用することにより、テルペンが血液中に極めて低い濃度で存在する場合でも、高精度でテルペンの薬物動態を解析することが可能である。
【0016】
本発明はさらに、上記本発明のテルペンの薬物動態解析方法によって、生体に投与されたときの薬物動態が解析されたものであることを特徴とするテルペンである。この本発明のテルペンは、上記本発明の薬物動態解析方法によって高精度にその薬物動態が解析されていることによって、投与量の最適化等を行うことが容易であり、経口投与等したときの安全性が高い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、血液中に極めて低い濃度で存在するテルペンの血中濃度を高精度で定量できるテルペンの血中濃度定量方法及びこれを用いたテルペンの薬剤動態解析方法、並びにこの薬剤動態解析方法により薬物動態が解析されたテルペンが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明においては、テルペンを含有する血液におけるテルペンの血中濃度を、質量分析計で分析して定量する。
【0019】
質量分析計としては、四重極質量分析計が好ましい。四重極質量分析計においては、棒状の4本の電極が互いに等しい距離をとって配置されており、これら電極で囲まれた空間に、試料のイオンがイオン化室から投入される。4本の電極には直流電圧に高周波を重畳した信号が印加されており、投入されたイオンは、これら電極の間を、マシューの式に沿った振動モード振動しながら飛行するが、直流電圧の大きさと高周波の振幅の大きさに応じて、特定の質量を有するイオンのみが電極間の空間を通過することができる。そして、通過したイオンの強度をイオン検出器で検出することで、試料中に含まれる特定の質量を有する成分の量を定量することができる。
【0020】
質量分析計においては、血液を液体クロマトグラフィーで分画して得た分画成分を分析試料として分析することが好ましい。すなわち、血液を液体クロマトグラフィーで分画するとともに、分画された成分について連続的に質量分析計で分析を行うことが好ましい。このような分析は、LC/MSやLC/MS/MSのような、液体クロマトグラフィーと質量分析計とを組み合わせた公知の分析装置を用いて好適に行うことができる。
【0021】
テルペンの血中濃度の定量は、分析対象とするテルペンの分子量に相当するピークの強度と、試料中のテルペンの濃度との関係について予め検量線を作成しておき、この検量線に基づいて行う。検量線は、例えば、所定の濃度でテルペンを含有するように調製した濃度既知の試料について質量分析計による分析を行い、テルペンの分子量に相当するピークの強度と、各試料におけるテルペンの濃度との関係をプロットし、得られたプロットについて直線回帰することで、作成できる。
【0022】
上記プロットで直線関係が得られ、検量線が作成できるような濃度領域において、テルペンの血中濃度を高精度で定量できる。具体的には、例えば、コロソリン酸又はコロソリン酸類縁体の場合、1ng/mL以上程度の濃度領域において、その血中濃度を定量できる。特に、1〜60ng/mL程度の極めて低い濃度の領域については、従来の液体クロマトグラフィーのみによる分析では検出が困難であったが、質量分析計を用いることで、このような低濃度でも血中濃度を高精度で定量することが可能になった。
【0023】
上記の液体クロマトグラフィーにおいては、ODSや、ポリマー系等の逆相系のカラムを用いることが好ましい。そして、逆相系のカラムを用いる場合、移動相としては、メタノール/水混合液系等、液体クロマトグラフィーにおいて通常用いられている溶媒の中から、分析対象とするテルペンや、カラムの種類等に応じて適宜選択して用いることができる。
【0024】
液体クロマトグラフィーで血液を分画する際には、血液を遠心分離して得た血清からの有機溶媒による抽出物を、液体クロマトグラフィーに注入することが好ましい。これにより、血液が除タンパクされて、液体クロマトグラフィーによる分画を、安定して高い分解能で行うことができる。上記有機溶媒としては、アセトニトリル等を好適に用いることができる。
【0025】
本発明は、テルペンとして、コロソリン酸又はコロソリン酸類縁体の血中濃度の定量に有用なものである。上記コロソリン酸類縁体としては、特に、マスリン酸、ウルソール酸、アンシアチコ酸、オレアノール酸、トルメンティック酸及び2α,19α−ジヒドロキシ−3−オキソ−ウルス−12−エン−28−オイック酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のトリテルペンが好ましい。
【0026】
あるいは、インスリン初期分泌促進剤や糖依存性インスリン初期分泌促進剤等としての活性おいて、上記のようなトリテルペンと構造活性連関部位を共有するトリテルペンの定量にも好適に用いることができる。構造活性連関部位を共有するトリテルペンは、2位及び3位のうち少なくとも一方に水酸基を有するものであり、好ましくは、更に、29位及び30位のうち少なくとも一方に水酸基を、28位にカルボキシル基を有するものである。このようなトリテルペンとしては、ウルサン型ペンタサイクリックトリテルペン、オレアナン型ペンタサイクリックトリテルペン等が挙げられる。
【0027】
ウルサン型ペンタサイクリックトリテルペンの具体例としては、デスフォンテニック酸(Desfontainic acid)、2α,19α−ジヒドロキシ−3−オキソ−1,12−ウルサジエン−28−オイック酸(2α,19α−Dihydroxy−3−oxo−1,12−ursadien−28−oic acid)、2ξ,20β−ジヒドロキシ−3−オキソ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2ξ,20β−Dihydroxy−3−oxo−12−ursen−28−oic acid)、2α,3α−ジヒドロキシ−12,20(30)−ウルスジエン−28−オイック酸(2α,3α−Dihydroxy−12,20(30)−ursadien−28−oic acid)、2α,3β−ジヒドロキシ−12,20(30)−ウルサジエン−28−オイック酸(2α,3β−Dihydroxy−12,20(30)−ursadien−28−oic acid)、2β,3β−ジヒドロキシ−12−ウルスエン−23−オイック酸(2β,3β−Dihydroxy−12−ursen−23−oic acid)、2α,3α−ジヒドロキシ−12−ウルスエン−23−オイック酸(2α,3α−Dihydroxy−12−ursen−23−oic acid)、1α,2α,3β,19α,23−ペンタヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(1α,2α,3β,19α,23−Pentahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3β,7α,19α,23−ペンタヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,7α,19α,23−Pentahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、1β,2α,3α,19α−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(1β,2α,3α,19α−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、1β,2α,3β,19α−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(1β,2α,3β,19α−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、1β,2β,3β,19α−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(1β,2β,3β,19α−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3β,6β,19α−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,6β,19α−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3β,6β,23−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,6β,23−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3β,7α,19α−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,7α,19α−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3α,7β,19α−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3α,7β,19α−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3β,13β,23−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,13β,23−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3α,19α,23−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3α,19α,23−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3β,19α,23−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,19α,23−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3α,19α,24−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3α,19α,24−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3β,19α,24−テトラヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,19α,24−Tetrahydroxy−12−ursen−28−oic acid)、2α,3β,23−トリヒドロキシ−11−オキソ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,23−Trihydroxy−11−oxo−12−ursen−28−oic acid)、2α,3β,24−トリヒドロキシ−12,20(30)−ウルサジエン−28−オイック酸(2α,3β,24−Trihydroxy−12,20(30)−ursadien−28−oic acid)、2α,3β,27−トリヒドロキシ−28−ウルサノイック酸(2α,3β,27−Trihydroxy−28−ursanoic acid)、2α,3β,19α−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−23−28−ジオイック酸(2α,3β,19α−Trihydroxy−12−ursene−23,28−dioic acid)、2α,3β,19α−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−24−28−ジオイック酸(2α,3β,19α−Trihydroxy−12−ursene−24,28−dioic acid)、1β,2β,3β−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−23−オイック酸(1β,2β,3β−Trihydroxy−12−ursene−23−oic acid)、2α,3β,6β−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,6β−Trihydroxy−12−ursene−28−oic acid)、2α,3α,19α−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3α,19α−Trihydroxy−12−ursene−28−oic acid)、2α,3β,19α−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,19α−Trihydroxy−12−ursene−28−oic acid)、2α,3α,23−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3α,23−Trihydroxy−12−ursene−28−oic acid)、2α,3β,23−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,23−Trihydroxy−12−ursene−28−oic acid)、2α,3α,24−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3α,24−Trihydroxy−12−ursene−28−oic acid)、2α,3β,24−トリヒドロキシ−12−ウルスエン−28−オイック酸(2α,3β,24−Trihydroxy−12−ursene−28−oic acid)、2α,3β,27−ウルサントリオール(2α,3β,27−Ursanetriol)、12−ウルスエン−1β,2α,3β,11α,20β−ペントール(12−Ursene−1β,2α,3β,11α,20β−pentol)、12−ウルスエン−1β,2α,3β,11α−テトロール(12−Ursene−1β,2α,3β,11α−tetrol)、12−ウルスエン−2α,3β,11α,20β−テトロール(12−Ursene−2α,3β,11α,20β−tetrol)、12−ウルスエン−2α,3β,11α−トリオール(12−Ursene−2α,3β,11α−triol)等が挙げられる。
【0028】
オレアナン型ペンタサイクリックトリテルペンの具体例としては、2α,3β−ジヒドロキシ−12,18−オレアナジエン−24,28−ジオイック酸(2α,3β−Dihydroxy−12,18−oleanadiene−24,28−dioic acid)、2α,3β−ジヒドロキシ−12−オレアネン−23,28−ジオイック酸(2α,3β−Dihydroxy−12−oleanene−23,28−dioic acid)、2β,3β−ジヒドロキシ−12−オレアネン−23,28−ジオイック酸(2β,3β−Dihydroxy−12−oleanene−23,28−dioic acid)、2β,3β−ジヒドロキシ−12−オレアネン−28,30−ジオイック酸(2β,3β−Dihydroxy−12−oleanene−28,30−dioic acid)、2β,3β−ジヒドロキシ−12−オレアネン−23−オイック酸(2β,3β−Dihydroxy−12−oleanene−23−oic acid)、2β,3β−ジヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2β,3β−Dihydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3α−ジヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3α−Dihydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3β−ジヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β−Dihydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3β−ジヒドロキシ−13(18)−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β−Dihydroxy−13(18)−oleanene−28−oic acid)、12β,13β−エポキシ−2α,3β,21β,22β−テトラヒドロキシ−30−オレアノール酸(12β,13β−Epoxy−2α,3β,21β,22β−tetrahydroxy−30−oleanoic acid)、13,28−エポキシ−2α,3β,16α,22β−テトラヒドロキシ−30−オレアノール酸(13,28−Epoxy−2α,3β,16α,22β−tetrahydroxy−30−oleanoic acid)、13β,28−エポキシ−2α,3β,16α,22β−テトラヒドロキシ−30−オレアノール酸(13β,28−Epoxy−2α,3β,16α,22β−tetrahydroxy−30−oleanoic acid)、12−オレアネン−2α,3α−ジオール(12−Oleanene−2α,3α−diol)、12−オレアネン−2α,3β−ジオール(12−Oleanene−2α,3β−diol)、13(18)−オレアネン−2α,3α−ジオール(13(18)−Oleanene−2α,3α−diol)、13(18)−オレアネン−2β,3β−ジオール(13(18)−Oleanene−2β,3β−diol)、18−オレアネン−2α,3β−ジオール(18−Oleanene−2α,3β−diol)、18−オレアネン−2α,3α−ジオール(18−Oleanene−2α,3α−diol)、13−オレアネン−2α,3β,16β,21β,22α,28−ヘキソール(12−Oleanene−2α,3β,16β,21β,22α,28−hexol)、12−オレアネン−1β,2α,3β,11α−テトロール(12−Oleanene−1β,2α,3β,11α−tetrol)、12−オレアネン−2β,3β,23,28−テトロール(12−Oleanene−2β,3β,23,28−tetrol)、12−オレアネン−2α,3β,11α−トリオール(12−Oleanene−2α,3β,11α−triol)、12−オレアネン−2β,3β,28−トリオール(12−Oleanene−2β,3β,28−triol)、12−オレアネン−2α,3β,23−トリオール(12−Oleanene−2α,3β,23−triol)、13(18)−オレアネン−2α,3β,11α−トリオール(13(18)−Oleanene−2α,3β,11α−triol)、2β,3β,6β,16α,23−ペンタヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2β,3β,6β,16α,23−Pentahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2β,3β,16β,21β,23−ペンタヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2β,3β,16β,21β,23−Pentahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2β,3β,16α,23,24−ペンタヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2β,3β,16α,23,24−Pentahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2β,3β,13β,16α−テトラヒドロキシ−23,28−オレアナンジオイック酸(2β,3β,13β,16α−Tetrahydroxy−23,28−oleananedoic acid)、2β,3β,16β,21β−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−24,28−ジオイック酸(2β,3β,16β,21β−Tetrahydroxy−12−oleanene−24,28−dioic acid)、2β,3β,16α,23−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−24,28−ジオイック酸(2β,3β,16α,23−Tetrahydroxy−12−oleanene−24,28−dioic acid)、2β,3β,22β,27−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−23,28−ジオイック酸(2β,3β,22β,27−Tetrahydroxy−12−oleanene−23,28−dioic acid)、2α,3β,6β,23−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β,6β,23−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2β,3β,6α,23−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2β,3β,6α,23−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2β,3β,6β,23−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2β,3β,6β,23−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2β,3β,16β,21β−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2β,3β,16β,21β−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2β,3β,16α,23−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2β,3β,16α,23−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3β,19α,23−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β,19α,23−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3β,19β,23−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β,19β,23−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3β,19α,24−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β,19α,24−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3β,21β,23−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β,21β,23−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3β,23,24−テトラヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β,23,24−Tetrahydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2β,3β,23−トリヒドロキシ−5,12−オレアナジエン−28−オイック酸(2β,3β,23−Trihydroxy−5,12−oleanadien−28−oic acid)、2α,3α,24−トリヒドロキシ−11,13(18)−オレアナジエン−28−オイック酸(2α,3α,24−Trihydroxy−11,13(18)−oleanadien−28−oic acid)、2α,3β,13β−トリヒドロキシ−28−オレアノール酸(2α,3β,13β−Trihydroxy−28−oleanoic acid)、2β,3β,16α−トリヒドロキシ−12−オレアネン−23,28−ジオイック酸(2β,3β,16α−Trihydroxy−12−oleanene−23,28−dioic acid)、2α,3β,18β−トリヒドロキシ−12−オレアネン−23,28−ジオイック酸(2α,3β,18β−Trihydroxy−12−oleanene−23,28−dioic acid)、2α,3β,19α−トリヒドロキシ−12−オレアネン−23,28−ジオイック酸(2α,3β,19α−Trihydroxy−12−oleanene−23,28−dioic acid)、2α,3β,19β−トリヒドロキシ−12−オレアネン−23,28−ジオイック酸(2α,3β,19β−Trihydroxy−12−oleanene−23,28−dioic acid)、2α,3β,19α−トリヒドロキシ−12−オレアネン−24,28−ジオイック酸(2α,3β,19α−Trihydroxy−12−oleanene−24,28−dioic acid)、2α,3β,19β−トリヒドロキシ−12−オレアネン−24,28−ジオイック酸(2α,3β,19β−Trihydroxy−12−oleanene−24,28−dioic acid)、2β,3β,23−トリヒドロキシ−12−オレアネン−28,30−ジオイック酸(2α,3β,23−Trihydroxy−12−oleanene−28,30−dioic acid)、2β,3β,27−トリヒドロキシ−12−オレアネン−23,28−ジオイック酸(2α,3β,27−Trihydroxy−12−oleanene−23,28−dioic acid)、2α,3β,18β−トリヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β,18β−Trihydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3β,19α−トリヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β,19α−Trihydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3β,19α−トリヒドロキシ−12−オレアネン−29−オイック酸(2α,3β,19α−Trihydroxy−12−oleanene−29−oic acid)、2α,3β,21β−トリヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3β,21β−Trihydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3α,23−トリヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3α,23−Trihydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3α,24−トリヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3α,24−Trihydroxy−12−oleanene−28−oic acid)、2α,3α,30−トリヒドロキシ−12−オレアネン−28−オイック酸(2α,3α,30−Trihydroxy−12−oleanene−28−oic acid)等が挙げられる。
【0029】
さらには、上記の各種トリテルペンの水酸基をハロゲン化炭化水素(CHBr,CH(CHBr等)と反応させる等して得られるエーテル体、2位及び/又は3位の水酸基を選択的に酸化して得られるケトン体若しくはジケトン体等の誘導体についても、本発明の血中濃度定量方法を適用可能である。
【0030】
本発明また、バナバ、シソ、ビワ又はグアバから得られるトリテルペンの血中濃度の定量に有用なものである。さらに、これらの植物を用いた植物培養、遺伝子操作、半合成などから得られたトリテルペンについても本発明の適用が可能である。
【0031】
血中濃度の定量や薬物動態の解析のために用いるテルペンは、上記の植物等から抽出して得ることができる。以下に、バナバ葉からトリテルペンを得る場合についての好適な前処理及び抽出の方法について説明する。
【0032】
バナバからトリテルペンを抽出する前に、原料となるバナバについて、熱水抽出等の前処理を行う。原料となるバナバ葉は、バナバから採取されたままの状態でも抽出は可能であるが、効率的に抽出するために、前処理の際に細かく刻んでおくことが好ましい。この場合、刻む程度はその後の抽出工程の設備に応じて適宜決定すればよいが、例えば、1mm角以上程度のサイズにバナバ葉を刻むことが望ましい。1mm角よりも小さく刻むと、抽出工程において目詰まりを起こしやすくなる傾向にある。
【0033】
刻んだバナバ葉を、まず、バナバ葉1kgに対し2リッター以上の水に浸漬する。この際、水の温度を10〜60℃として、24時間以上浸漬させる操作を、水を入れ替えながら3回以上繰り返す。続いて、熱湯への浸漬や、煮沸、蒸気との接触等により、3〜5回水を入れ替えながら繰り返し熱水抽出する。熱水抽出は、圧力釜等を用いて1〜3atmに加圧しながら、100℃以上の温度で行うことが好ましく、抽出時間は3〜10分程度がよい。抽出時間が長いと、前処理の段階でコロソリン酸が失われてしまう場合がある。
【0034】
熱水抽出の後、更に、水50%アルコール50%の溶媒を用いて、溶媒の温度を好ましくは0〜100℃として抽出する。
【0035】
以上の前処理工程を経たバナバ葉を、乾燥工程において、天日若しくは乾燥機にて乾燥する。このとき、遠心分離機でバナバに付着した水分を取り除いた後、乾燥することが望ましい。乾燥は30〜60℃の温風、若しくは冷気風であるが出来るだけ湿度の低い空気風を吹き付けて行う。
【0036】
次に、乾燥したバナバ葉から、n−ヘキサンで一時間、精製水で一時間、熱環流抽出を行った後、エタノールで一時間熱還流抽出を行う。抽出物をろ過し、減圧濃縮を行いさらに濃縮乾固させる。
【0037】
主としてエタノール抽出物から、白色のエキスが得られる。このエキスには、コロソリン酸、マスリン酸、トリメンティック酸、ウルソール酸、オレアノール酸、α―アミリン酸、β―アミリン酸、アシアティック酸、18β―グリチルレチン酸、タンニン類、葉緑素類、ヘミセルロースなどが含まれる。そして、エキス中、コロソリン酸は、3〜50重量%程度含まれる。エキスはペースト状の液体か、又は粉末状の固体である。エキスは、室温若しくは冷蔵庫で、遮光しながら乾燥状態で保管することが望ましい。
【0038】
上記エキスを、更に精製することで、コロソリン酸等を単離することができる。例えば、エキスを水で懸濁した懸濁液に、へキサンまたはエーテルを加えて吸引ろ過を行い、可溶水画分、可溶有機溶媒画分および不溶画分に分ける。そして、不溶画分を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ジクロロメタン/メタノール混合溶媒)で、コロソリン酸を含有するフラクションを得、これをイオン交換樹脂に通した後、更に、ODSカラムを用いた逆相HPLC(移動相:85%メタノール/0.05%トリフルオロ酢酸、流速:6mL/min、検出波長:210nm)で分取して、コロソリン酸を得ることができる。
【0039】
本発明の薬物動態解析方法においては、生体に投与されたテルペンの血中濃度を、上記のテルペンの血中濃度定量方法で経時的に定量することで、テルペンの薬物動態を解析する。例えば、テルペンを投与された生体の血液におけるテルペンの血中濃度を、テルペンの生体への投与後、30〜60分程度の間隔をおいて定量することで、テルペンの血液中への吸収等について詳細に解析することが可能である。本発明の薬物動態解析方法は、特に、生体にテルペンを経口投与した場合の薬物動態に対して好適である。
【0040】
この薬物動態解析方法は、特に、ヒト、イヌ、ネズミ等の哺乳類に投与したテルペンの薬物動態解析について好適に適用することができる。
【0041】
例えば、トリテルペンの1種であるコロソリン酸(分子式:C3048O、分子量:472)について、上記の方法でイヌに投与したときの薬物動態を解析したところ、生体に投与されたコロソリン酸が、修飾反応を受けることなく血液中に取り込まれていることが初めて明らかとなった。
【0042】
本発明のテルペンは、上記のテルペンの薬物動態解析方法によって、生体に投与されたときの薬物動態が解析されたものであることを特徴とするものである。この本発明のテルペンは、例えば、上記本発明の薬物動態解析方法によって高精度にその薬物動態が解析されていることによって、投与量の最適化等を行うことが容易であり、経口投与等したときの安全性が高い。そして、本発明のテルペンは、例えば、インスリン初期分泌促進剤、糖依存性インスリン初期分泌促進剤として、抗糖尿病、抗肥満剤、中性脂肪抑制、コレステロール値低下などに好適に用いることができる。
【0043】
テルペンの使用方法は特に限定されるものではなく、栄養補助食品や、飲料、麺類、乾燥食品、菓子類、パン、酒類、油脂、調味料等の一般食品飲料へ添加してもよいし、薬品として粉末、錠剤、液体、ペースト状の形態や、噴霧器、タバコなどで気化された状態で用いてもよい。
【0044】
テルペンが水溶性であることが求められる場合は、配糖体等の水溶性の誘導体に誘導体化してもよいし、植物から抽出されたときに混在するタンニン類、繊維素、葉緑素等との混合物の状態で用いてもよい。あるいは、水、アルコール等を溶媒とするテルペンの溶液を、デンプン、難消化性デキストリン等と混合した混合物から、溶媒を除去して得られる固形物の状態で用いてもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0046】
<コロソリン酸標品のLC/MS/MSによる分析>
液体クロマトグラフィー/タンデム四重極質量分析装置(LC/MS/MS)である、アプライバイオシステムズ社(米国)製の「API3000(製品名)」を用いて、トリテルペンの1種でるコロソリン酸標品の分析を行った。
【0047】
まず、コロソリン酸のアセトニトリル/ギ酸溶液(100ng/mL)を試料として、これを上記LC/MS/MS装置に注入し、コロソリン酸のMSスペクトル(図1)を得た。このとき、イオン化はエレクトロスプレーイオン化法(ESI)で行った。図1に示すように、コロソリン酸の分子量に相当するm/z=472の位置にピークが認められたことから、このLC/MS/MS装置によって、コロソリン酸の検出が可能であることが確認された。
【0048】
また、同様の分析を、コロソリン酸濃度が1ng/mL及び10ng/mLの試料についても行い、得られたMSスペクトルにおけるm/z=472のピーク(以下、「親ピーク」という。)のピーク強度をコロソリン酸濃度に対してプロットし、このプロットから直線回帰することによって、コロソリン酸の検量線が得られた。図2に得られたプロット及び検量線を示す。このことから、親ピークの強度を測定することによって、コロソリン酸の濃度の定量が可能であることが確認された。
【0049】
<血液中のコロソリン酸の検量線作成>
イヌ(ビーグル犬)から採取した血液に、10ng/mLの濃度になるようにコロソリン酸を加え、この血液500μLを遠心分離機で遠心分離(3000rpm、20分)して、血清を得た。続いて、この血清100μLにアセトニトリルを400μL加え、ボルテックスミキサーで攪拌した後、遠心分離(15000rpm、10分)して、除タンパクを行った。次に、アセトニトリル層に窒素ガス流を吹き付けて濃縮した後、酢酸エチル300μLで液液抽出し、酢酸エチル層を乾固させた。乾固後に残った固形物を溶出溶媒(95%メタノール水)100μLに溶かした溶液を、LC/MS/MS分析用の試料とした。
【0050】
上記で得た試料、及び、コロソリン酸の濃度のみ異なるように同様に調製した他の試料について、LC/MS/MSによる分析を行い、図3に示す検量線を得た。この結果から、図3の検量線に基づいて、血液中のコロソリン酸について、1〜100ng/mL程度の濃度の範囲において、その血中濃度が定量可能であることが確認された。
【0051】
<コロソリン酸血中濃度の経時変化>
(実施例1)
前日より絶食させたイヌ(ビーグル犬)に、20mg/kgのコロソリン酸及び2g/kgのブドウ糖を経口投与し、投与前、投与後30分、60分、90分、120分、180分及び240分後のそれぞれの時点においてイヌから採取した血液について、上述の血液中のコロソリン酸の検量線作成の場合と同様にしてLC/MS/MSで分析して、血中濃度の経時的を測定した。
【0052】
図4に、上記測定結果を示す。図4において、(a)は投与前、(b)は30分後、(d)は60分後、(e)は90分後、(f)は120分後、(g)は180分後、(h)は240分後に得たグラフである。なお、図4中、横軸はLC部分における保持時間を示し、縦軸はMSにおけるm/z=472のピークのピーク強度を示す。図4に示すように、コロソリン酸のピーク(リテンションタイム12分付近)は、(c)の投与後90分後から血中に検出され、(f)の180分後に最大となった後減少に転じた。コロソリン酸の血中濃度の最大値は、20μg/mLであった。
【0053】
以上の結果より、コロソリン酸のようなトリテルペンは、生体に投与された後、分解したり、修飾されたりすることなく、そのまま体内に取り込まれることがわかった。このことは、ペプチドをはじめとするタンパク質系の糖依存性インスリン初期分泌促進剤のほとんどが消化分解されてしまうのとは対照的である。コロソリン酸の分子量は472であるが、この程度の分子量の化合物の場合、分解等されずにそのまま吸収されるか否かの予想は一般に困難であるが、上記のようにLC/MS/MSを用いて分析することで、上記の様なコロソリン酸の薬物動態が初めて確認できた。
【0054】
(比較例1)
実施例1と同様にしてイヌから採取した血液を遠心分離(3000rpm、20分)して得た血清2mLを、マイクロチューブに200μLずつ取り分け、それぞれに4倍量(800μL)のアセトニトリルを加えて除タンパクし、遠心分離(15000RPM、5分、4℃)後、上澄みを一本のサンプル瓶内に集め、アセトニトリルを全て蒸発させて、濃縮物を得た。続いて、この濃縮物を500μLの95体積%メタノール水(HPLCの展開溶媒と同様のもの)に溶かて調製した試料について、HPLCによる分析を行った。なお、HPLCによる分析は以下の条件で行った。
・カラム:Shodex Asahipak ODP−50(ポリマー系) 6D(250×10.0mm I.D.)
・流速:1.0 mL/min.
・検出:UV吸収(210nm)
【0055】
しかし、コロソリン酸投与後の血液から得た何れの試料についても、コロソリン酸に相当するピーク(リテンションタイム12分付近)は認められなかった。
【0056】
以上の結果から、比較例1のようにHPLCのみではコロソリン酸の血中濃度を定量することが不可能で、その薬物動態を全く解析できないのに対して、実施例1のように質量分析計を用いて分析することで、生体に投与されたコロソリン酸の血中濃度を高精度で定量し、その薬物動態を解析することが可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】コロソリン酸のMSスペクトルを示すグラフである。
【図2】コロソリン酸のLC/MS/MSによる分析におけるピーク面積と濃度との関係を表すグラフである。
【図3】コロソリン酸のLC/MS/MSによる分析におけるピーク面積と濃度との関係を表すグラフである。
【図4】実施例1における、コロソリン酸に由来するピーク強度の経時変化を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液に含まれるテルペンを質量分析計で検出して、前記血液におけるテルペンの血中濃度を定量することを特徴とするテルペンの血中濃度定量方法。
【請求項2】
前記質量分析計が四重極質量分析計であることを特徴とする請求項1記載のテルペンの血中濃度定量方法。
【請求項3】
前記血液を液体クロマトグラフィーで分画して得た分画成分に含まれるテルペンを、前記質量分析計で検出することを特徴とする請求項1又は2記載のテルペンの血中濃度定量方法。
【請求項4】
前記血液を遠心分離して得た血清からの有機溶媒による抽出物を、前記液体クロマトグラフィーで分画することを特徴とする請求項3記載のテルペンの血中濃度定量方法。
【請求項5】
前記テルペンが、コロソリン酸又はコロソリン酸類縁体であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載のテルペンの血中濃度定量方法。
【請求項6】
前記コロソリン酸類縁体が、マスリン酸、ウルソール酸、アンシアチコ酸、オレアノール酸、トルメンティック酸及び2α,19α−ジヒドロキシ−3−オキソ−ウルス−12−エン−28−オイック酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のトリテルペンであることを特徴とする請求項5記載のテルペンの血中濃度定量方法。
【請求項7】
前記テルペンが、バナバ、シソ、ビワ又はグアバから得られるトリテルペンであることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載のテルペンの血中濃度定量方法。
【請求項8】
テルペンを投与した生体の血液における前記テルペンの血中濃度を、請求項1〜7の何れか一項記載のテルペンの血中濃度定量方法で経時的に定量することを特徴とするテルペンの薬物動態解析方法。
【請求項9】
請求項8記載のテルペンの薬物動態解析方法によって、生体に投与されたときの薬物動態が解析されたものであることを特徴とするテルペン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−170905(P2006−170905A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366471(P2004−366471)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(598169491)株式会社ユース・テクノコーポレーション (9)
【Fターム(参考)】