説明

テルペン炭化水素類の製造方法

【課題】環境負荷が小さく、工業的に有利な方法でα−テルピネン等のテルペン炭化水素類を選択的に生成させる方法の提供。
【解決手段】リモネン又はその誘導体を、不活性ガス雰囲気下に、有機溶媒中でファージャサイト型アルミノシリケート又はモルデナイト型アルミノシリケートから選ばれるゼオライトと40℃以上で接触させて下記一般式(2)


(式中、Rは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、Rは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示す。前記アルキル基及びアルコキシ基は水素原子が置換されていてもよい)で表されるテルペン炭化水素類を選択的に生成させることを特徴するテルペン炭化水素類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α―テルピネン等のテルペン炭化水素類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α−テルピネンは、ショウズク油、シソ科の植物の精油に存在する。このα−テルピネンは抗感染作用、組織再生作用、抗炎症作用、鬱滞除去作用等に加えて静脈強壮作用の働きがあることが知られている。また、α−テルピネンは、環内に共役二重結合を有し、配位子として用いた場合には、面不斉が生じるため、不斉触媒としての用途も期待される。
α−テルピネンは、天然から抽出する方法や、化学的に合成する方法が知られている。化学的に合成する方法としては、例えば、α−ピネンを濃硫酸処理する方法、α−テルピネオールをシュウ酸によって脱水する方法、リナロール、ゲラニオールを濃ギ酸で処理する方法、リモネンを希硫酸と加熱処理する方法(例えば、非特許文献1参照。)等が知られている。
【0003】
また、下記特許文献1には、高温高圧状態の、亜臨界又は超臨界流体を反応溶媒として、ヘミテルペンアルコールから、1段階で製造する方法が提案されているが、α−テルピネンは副生成物である、という問題がある。
【0004】
また、下記非特許文献2には、下記式(R−1)で表わされるリモネンを合成ゼオライトと接触させる方法が開示されている。該非特許文献2の方法では、d−リモネンを、空気雰囲気下で、合成ゼオライトと水溶媒中で90〜100℃で反応を行うもので、また、該方法により得られるものは、下記一般式(R−2)〜(R−5)で表わされるテルペン炭化水素類であり、α−テルピネンについは全く得られていない。
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−281265号公報。
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「化学大辞典 6」, 発行所 共立出版株式会社, 発行日 1993年、201頁。
【非特許文献2】日本化学会誌, No.1, 1992年, 63〜67頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ゼオライトを触媒として用いて環境負荷の少ない環境調和型の有機合成反応を種々提案している。本発明者らは、更にゼオライトを触媒とする環境負荷の少ない有機合成反応の検討を行う中で、リモネン又はその誘導体を不活性ガス雰囲気下に、特定温度範囲で有機溶媒中で特定のゼオライトに接触させると、α−テルピネン等のテルペン炭化水素類が選択的に生成されることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
即ち、本発明の目的は環境負荷が小さく、工業的に有利な方法でα−テルピネン等のテルペン炭化水素類を選択的に生成させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記一般式(1)
【化2】



(式中、Rは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、Rは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示す。前記アルキル基及びアルコキシ基は水素原子が置換されていてもよい。)で表されるリモネン又はその誘導体を、不活性ガス雰囲気下に、有機溶媒中でファージャサイト型アルミノシリケート又はモルデナイト型アルミノシリケートから選ばれるゼオライトと40℃以上で接触させて下記一般式(2)
【化3】




(式中、R及びRは前記と同義。)で表されるテルペン炭化水素類を選択的に生成させることを特徴するテルペン炭化水素類の製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、触媒としてゼオライトを用いて接触させることにより、α−テルピネン等のテルペン炭化水素類を選択的に生成させることができることから、α−テルピネン等のテルペン炭化水素類の製造方法として工業的に有利な方法であり、しかも環境負荷も小さい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の製造方法は、下記一般式(1)
【化4】



(式中、Rは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、Rは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示す。前記アルキル基及びアルコキシ基は水素原子が置換されていてもよい。)で表されるリモネン又はその誘導体を、有機溶媒中でファージャサイト型アルミノシリケート又はモルデナイト型アルミノシリケートから選ばれるゼオライトと40℃以上で接触させて下記一般式(2)
【化5】




(式中、R及びRは前記と同義。)で表されるテルペン炭化水素類を選択的に生成させることを特徴とするものである。
【0012】
一般式(1)中のRは水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基である。
アルキル基としては、特に制限されるものではないが、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基等が挙がられる。 アルコキシ基としては、特に制限されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
これらのなかでも、Rとしてはアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0013】
また、前記アルキル基及びアルコキシ基は水素原子が置換されていてもよい。該置換基の種類としては特に制限されるものではないが、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。ここで、置換基としてのアルキル基及びアルコキシ基としては、前記Rとしてのアルキル基及びアルコキシ基と同様なものが挙げられる。また、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0014】
一般式(1)中のRは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜2のアルコキシ基が好ましい。より具体的には、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、また、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙がられる。
これらのなかでも、Rとしてはメチル基が特に好ましい。
【0015】
また、前記Rのアルキル基又はアルコキシ基は水素原子が置換されていてもよい。該置換基の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、ハロゲン原子が挙がられる。ここでハロゲン原子としては、前記Rの置換基としてのハロゲン原子と同様なものが挙がられる。
【0016】
一般式(2)中のRは、前記一般式(1)中のRに相当する基であり、その基の種類も前述したRの基と同じである。一般式(2)中のRは、前記一般式(1)中のRに相当する基であり、その基の種類も前述したRの基と同じである。
【0017】
本発明で用いられる一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体は、d−リモネン、1−リモネン、d/1−リモネン等又はその誘導体が挙がられる。これらのなかでも、d−リモネン又はその誘導体が好ましく、d−リモネンがより好ましい。
【0018】
一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体がd体である場合には、一般式(2)で表わされる(R)体のα−テルピネン又はその誘導体であるテルペン炭化水素類を得ることが出来る。
一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体がl体である場合には、一般式(2)で表わされる(S)体のα−テルピネン又はその誘導体であるテルペン炭化水素類を得ることが出来る。
一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体がd/lである場合には、一般式(2)で表わされるラセミ体のα−テルピネン又はその誘導体であるテルペン炭化水素類を得ることが出来る。
また、一般式(2)中のRがメチル基、水素原子以外の場合には、Rが結合した炭素原子は不斉炭素となるが、該不斉炭素は(R)体であっても(S)体であってもよい。
【0019】
本発明で触媒として使用するゼオライトは、フォージャサイト型アルミノシリケート又は/及びモルデナイト型アルミノシリケート(以下、ゼオライトと略記することがある)が用いられる。
【0020】
前記ファージャサイト型アルミノシリケートは、合成品に限らず天然品であっても差し支えないが、品質上の面からX型またはY型結晶系の合成ゼオライトが好適に用いられる。これらはアルカリ金属又はアルカリ土類金属で一部置換したものであってもよいが、無置換のもの、すなわち酸性(H型)フォージャサイト型アルミノシリケートがより好適に用いられる。かかるアルミノシリケートは結晶質であっても非結晶質であってもよい。
【0021】
また、前記モルデナイト型アルミノシリケートは、合成品に限らず天然品であっても差し支えないが、品質上の面から合成ゼオライトが好適に用いられる。これらはアルカリ金属又はアルカリ土類金属で一部置換したものであってもよいが、無置換のもの、すなわち酸性(H型)モルデナイト型アルミノシリケートがより好適に用いられる。かかるアルミノシリケートは、結晶質であっても非結晶質であってもよい。
【0022】
本発明で触媒として使用するゼオライトは、反応に使用する前に加熱処理等によりゼオライト中に存在する有機物を焼失させた活性化ゼオライトが好ましい。前記加熱処理としては、例えば、500℃で1時間以上、好ましくは2〜24時間程、より好ましくは5時間程度焼成すればよい。
【0023】
なお、該ゼオライトを再使用する場合には、再度、前記加熱処理を行えばよい。
【0024】
ゼオライトの添加量は、特に制限されないが、原料となる前記一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは5〜20質量部とすることが好ましい。
【0025】
反応は、例えば、原料となる前記一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体を溶媒に溶解させ、該溶液にゼオライトを粉末として添加し、攪拌することにより、前記一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体をゼオライトと接触させる方法が適用できる。かかる反応においては、ゼオライトは、原料を溶解させた溶液に添加することが好ましい。また、ゼオライトをカラムに充填し、原料となる前記一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体を溶解した溶液をポンプでカラムへ送液しカラム内を循環させながら反応を行ってもよい。
【0026】
原料となる前記一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体を溶解させる溶媒は、前記一般式(1)で表わされる化合物を溶解することができ、該一般式(1)で表わされる化合物と反応生成物に対して不活性な溶媒が用いられる。例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、アセトン、ジクロロメタン等が挙がられる。このうち、シクロヘキサンが好ましく用いられる。
【0027】
また、反応は不活性ガス雰囲気下で行われる。該不活性ガス雰囲気としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限されるものではないが、例えば窒素ガス雰囲気が好ましい。本発明では不活性ガス雰囲気中で反応を行うことにより、目的とする一般式(2)で表わされるテルペン炭化水素類の選択性を高め、未反応で残存する一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体も少なくすることが出来、効率的に反応を行うことができる。
【0028】
また、使用する不活性ガスは、塩化カルシウム管、更にはシクロヘキサン等の有機溶媒を通過させて水分を完全に除去したものを用いると、目的とする一般式(2)で表わされるテルペン炭化水素類の選択性をより高めた生成物を得ることができる観点から好ましい。
【0029】
本発明の製造方法において、前記一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体と、ゼオライトとの接触は40℃以上で行う。
本発明で接触させる温度を前記範囲とする理由は、接触させる温度が40℃未満では目的とする一般式(2)で表わされるテルペン炭化水素類の選択性が低くなり、また、未反応で残存する一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体の量も多くなるからである。
なお、本発明において、一般式(1)で表わされるリモネン又はその誘導体と、ゼオライトとの接触は40〜80℃で行うと、反応を効率的に行うことができるため、特に好ましい。
【0030】
また、反応は暗所下で行うことが好ましく、このようにすることで、反応中の副反応を抑えることができる。暗所での反応とは、反応容器を光から遮断して反応させることを意味する。
【0031】
反応時間は、反応が進行すれば特に制限されるものではないが、多くの場合、10分以上、好ましくは30分〜36時間程度である。反応終了は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより判断することが出来る。
【0032】
反応終了後、常法によりろ過することにより反応液からゼオライトを固液分離して回収し、ろ液から溶媒を減圧下に蒸留することで一般式(2)で表わされるテルペン炭化水素類を含む生成物を回収する。また、必要により、回収したゼオライトに対して有機溶媒により抽出処理を行い、抽出液から溶媒を除去して、前記ろ液から得られる生成物と合わせて、一般式(2)で表わされるテルペン炭化水素類を含む生成物としてもよい。前記抽出処理で用いることができる有機溶媒としては、反応生成物を溶解することができ、かつ化合物に対して不活性な溶媒であれば特に制限されるものではないが、例えばn−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、アセトン、ジクロロメタン等が挙がられる。
【0033】
また、副生物から目的とする一般式(2)で表わされるテルペン炭化水素類を分離する方法としては、例えば蒸留を行って分離する方法、シリカゲル等によるカラムクロマトグラフィー法により分離する方法、或いはHPLCにより分離する方法等を用いることができる。
【実施例】
【0034】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
酸性モルデナイト型アルミノシリケート(商品名 JRC-Z-HM20 東ソー社製)を電気炉を用いて500℃で空気中で15時間加熱処理して活性化し、次いで200℃まで冷却後、デシケーターで減圧し、室温に戻して活性化ゼオライトを調製した。
別途、50mlのメスフラスコにd−リモネン0.1116gを加え、次いでシクロヘキサンを50mlになるまで加え、d−リモネンを溶解したシクロヘキサン溶液を調製した。
前記で調製したd−リモネンを溶解したシクロヘキサン溶液の中、49mlをアルミ箔で外側を覆ったフラスコに移し、これに前記で調製した活性ゼオライトを2.047g加え、水の中を通過させた窒素ガスをフラスコに通気しながら、温度46℃で12時間攪拌下に反応を行った。
反応終了後、ゼオライトをろ過分離し、ろ液をガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)で分析し、ろ液中の成分を同定し、また、GCによって生成物を定量した。これらの結果から、得られた生成物は、d−リモネン(P1)以外に下記(P2)〜(P5)で表わされる化合物およびその他の化合物が含有されていることが確認された。
得られた生成物の割合を表1に示した。
【化6】

【0036】
(実施例2)
反応中に通気する窒素ガスを、シクロヘキサン溶液を通過させたものを使用した以外は、実施例1と同様に反応を行った。
また、反応終了後、ゼオライトをろ過分離し、ろ液を実施例1と同様にして分析した。 得られた生成物の割合を表1に示した。
【0037】
(実施例3)
ゼオライトの活性化を500℃で7時間空気中で行い、また、反応中に通気する窒素ガスを、塩化カルシウム管を通過させ、更にシクロヘキサン溶液を通過させものを用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。
また、反応終了後、ゼオライトをろ過分離し、ろ液を実施例1と同様にして分析した。 得られた生成物の割合を表1に示した。
【0038】
(実施例4)
ゼオライトの活性化を500℃で5時間空気中で行い、また、反応中に通気する窒素ガスを、塩化カルシウム管を通過させ、更にシクロヘキサン溶液を通過させものを用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。
また、反応終了後、ゼオライトをろ過分離し、ろ液を実施例1と同様にして分析した。 得られた生成物の割合を表1に示した。
【0039】
(実施例5)
ゼオライトの活性化を500℃で2時間空気中で行い、また、反応中に通気する窒素ガスを、塩化カルシウム管を通過させ、更にシクロヘキサン溶液を通過させものを用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。
また、反応終了後、ゼオライトをろ過分離し、ろ液を実施例1と同様にして分析した。 得られた生成物の割合を表1に示した。
【0040】
(比較例1)
反応温度を35℃とした以外は、実施例3と同様に反応を行った。
また、反応終了後、ゼオライトをろ過分離し、ろ液を実施例1と同様にして分析した。 得られた生成物の割合を表1に示した。
【0041】
(比較例2)
反応中に通気する窒素ガスを、水を通過させた空気を用いた以外は、実施例3と同様に反応を行った。
また、反応終了後、ゼオライトをろ過分離し、ろ液を実施例1と同様にして分析した。 得られた生成物の割合を表1に示した。
【0042】
【表1】


注1)「窒素(1」は、水中を通過させた窒素ガスを示す。「窒素(2」は、シクロヘキサン溶液中を通過させた窒素ガスを示す。「窒素(3」は、塩化カルシウム管を通過させた後、更にシクロヘキサン溶液中を通過させた窒素ガスを示す。「空気(4」は、水中を通過させた空気を示す。
注2)「基質1)」は、原料として用いたd−リモネンを示す。
注3)「ろ液の各成分の比率1)」は、GC分析でのピーク面積の比を示す。
【0043】
表1の結果より、反応終了後の反応液には、原料のd−リモネン以外に目的とするα−テルピネン(P1)が主成分として生成されていることが分かる。これに対して、比較例のものは、α−テルピネン(P1)も生成されるが、実施例のものと比べてα−テルピネン(P1)への選択率が低く、また、更に未反応原料も多く残存していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、触媒としてゼオライトを用いて接触させるだけで、α−テルピネン等のテルペン炭化水素類を選択的に生成させることができることから、α−テルピネン等のテルペン炭化水素類の製造方法として工業的に有利であり、しかも環境負荷も小さい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、Rは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示す。前記アルキル基及びアルコキシ基は水素原子が置換されていてもよい。)で表されるリモネン又はその誘導体を、不活性ガス雰囲気下に、有機溶媒中でファージャサイト型アルミノシリケート又はモルデナイト型アルミノシリケートから選ばれるゼオライトと40℃以上で接触させて下記一般式(2)
【化2】


(式中、R及びRは前記と同義。)で表されるテルペン炭化水素類を選択的に生成させることを特徴するテルペン炭化水素類の製造方法。
【請求項2】
前記ゼオライトが酸性モルデナイト型アルミノシリケートである請求項1記載のテルペン炭化水素類の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物がリモネンであり、選択的に生成させるテルペン炭化水素類がα−テルピネンであることを特徴とする請求項1又は2記載のテルペン炭化水素類の製造方法。

【公開番号】特開2011−162446(P2011−162446A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23672(P2010−23672)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】