説明

テルル含有結晶性材料

【課題】Te含有ナノクリスタライトの前駆体であるテルル含有リン化合物とその製法、およびTe含有ナノクリスタライトの製法を提供する。
【解決手段】Te含有ナノクリスタライトの前駆体である、下式で表される化合物は、ホスフィン、又はアルキルホスホラストリアミドとテルルの接触により製造される。


ただし、Z、Z’、Z’’の一つは独立的にアミド基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であり、Z、Z’、Z’’の少なくとも一つはアミド基である。また温配位Te含有ナノクリスタライトは、前駆体を溶解の後成長およびアニールを制御することによって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルル含有結晶性材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルク エキシトン ボーア半径より小さな半径を有する半導体ナノクリスタライトまたは微結晶は、分子とバルク形物質との中間種類の材料を構成する。電子と正孔の両者を全3次元へ量子閉じ込めると、クリスタライトのサイズが減少するするとともに材料の効果的なバンドギャップの増加が導かれる。したがって、ナノクリスタライトの光学的な吸収および放射の両者は、クリスタライトのサイズが小さくなると、ブルー(すなわち、高エネルギー)へシフトする。
【0003】
バベンディ(Bawendi)とその協力者は、温配位溶媒に注入された有機金属試薬を熱分解することにより、単分散半導体ナノクリスタライトの調製方法を記載している(J. Am. Chem. Soc., 115: 8706 (1993))。この文献は、一時的な個別の核生成を認め、ナノクリスタライトを肉眼的な量で一定量成長させる。粒子径分布はサイズ選択沈降によって改良できる。ナノクリスタライトのサイズの分布が狭いと、粒子の細いスペクトル幅放射を可能とする。これらの技術は、セレン含有II−VI半導体ナノクリスタライトの製造において優れた結果をもたらすことができる。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、テルル化物半導体ナノクリスタライトの合成方法を提供するものである。ナノクリスタライトは高量子効率を有し、さらに狭い粒子径分布を備えることが可能である。テルル化物半導体は、それらのセレン化物や硫化物の類似物よりも相対的に小さなバンドギャップを有し、II−VIホトルミネッセンス ナノクリスタライトを用いて可能な色の範囲をさらに遠赤外線スペクトルまで拡張することができる。特に、カドミウムテルル化物ナノクリスタライトは十分に長い波長において放射でき、全血診断用マルチカラー検出計画に好適に用いることができるが、その際少なくとも630nmの放射波長が好ましい。
【0005】
第1の態様において、本発明はコアMTe(ここで、Mはカドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀またはそれらの混合物である)を含むナノクリスタライトを特徴づける。コアはコア表面に保護膜(オーバーコート)を備えることができる。保護膜は、コアとは相違する組成を有する半導体でありえる。
【0006】
その他の態様において、本発明は少なくとも20%の量子効率でホトルミネッセンスを示すことができるMTeを含むナノクリスタライトを特徴付ける。
【0007】
別の態様において、本発明は、M含有化合物(ここで、Mはカドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀またはそれらの混合物である)および次式
【0008】
【化1】

【0009】
で表されるTe化合物(ここで、Z,Z’,Z’’の少なくとも一つはアミド基である)を注入することによって、ナノクリスタライトを製造する方法を特徴づける。好ましくは、Z,Z’,Z’’の二つはそれぞれ独立にアミド基であり、さらにZ,Z’,Z’’の三つはそれぞれ独立にアミド基であることが望ましい。混合物を加熱して、ナノクリスタライトを成長させる。加熱は、成長が制御できるような方法で制御する。M含有化合物とTe含有化合物は予め混合でき、またはMおよびTeは単一分子の異なる位置に取り入れてもよい。M含有化合物とTe含有化合物は、連続であるいは同時に注入してもよい。追加のM含有化合物、追加のTe含有化合物またはそれらの混合物は、加熱中に混合物に添加できる。保護膜は、ナノクリスタライト表面に成長させることが可能である。ナノクリスタライトは、サイズ選択沈降によって分離できる。アミンは、サイズ選択沈降中にその混合物中に添加できる。Te含有化合物は、トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィンテルル化物を含んでいてもよい。Te含有化合物は、少なくとも200℃、好ましくは250℃、さらに好ましくは280℃の沸点を、1気圧において有することができる。
【0010】
その他の態様において、本発明は次式
【0011】
【化2】

【0012】
で表されるTe含有化合物(ここで、Z,Z’,Z’’の少なくとも一つはアミド基である)、およびTeと接触するP(Z)(Z’)(Z’’)を含むTe含有化合物を調製する方法を特徴付ける。
【0013】
ナノクリスタライトは、少なくとも30%、40%、50%、60%または70%の放射の量子効率を有することが可能である。量子効率は75%、80%、90%、95%または99%程度でありえる。量子効率は20〜99%、好ましくは30〜99%、更に好ましくは40〜95%、最も好ましくは70〜95%でありえる。ナノクリスタライトは、平均直径からわずか15%RMS偏差、好ましくは10%RMS偏差以下、および更に好ましくは5%RMS偏差以下よりも少ない偏差を有するサイズ選択集団のメンバーでありえる。CdTeナノクリスタライトはホトルミネッセンスを示すことができ、580〜770nm、好ましくは550〜780nm、更に好ましくは435〜800nmの放射波長を有することが可能である。ナノクリスタライトは、単一モノクリスタライトに対し、70nm以下、好ましくは45nm以下、更に好ましくは20nm以下、最も好ましくは15nm以下の最大値の半分における最大幅(FWHM)でホトルミネッセンスを示すことができる。
【0014】
本発明の一以上の実施態様についての詳細は、添付図面および下記の説明に示す。本発明のその他の特徴、目的および効果は、詳細な説明、図面および請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(a)は本発明の方法を示す図式である。図1(b)はCdTeナノクリスタル合成用の二つの前駆体構造を示す図面である。
【図2】図2(a)−2(c)はTOPTeとHPPTTeとから調製されたCdTeナノクリスタルのUV/可視光線吸収スペクトルとX線回折スペクトルを示すグラフである。
【図3】図3(a)、3(b)はナノクリスタライト合成中のUV/可視光線吸収スペクトルの展開を示すグラフである。
【図4】図4はナノクリスタライト合成中のホトルミネッセンスの進化を示すグラフである。
【図5】図5はCdTe用の被爆吸収スペクトルを示すグラフである。
【図6】図6は空気に曝されたナノクリスタライト希薄溶液のホトルミネッセンスの進化を示すグラフである。
【図7】図7は空気の存在しない環境下におけるナノクリスタライト希薄溶液のホトルミネッセンスの進化を示すグラフである。
【図8】図8は空気および窒素の存在下で貯蔵されたCdTeナノクリスタライトの強調した寿命を示すグラフである。
【図9】図9は温度の関数としてホトルミネッセンスの進化を示すグラフである。
【図10】図10はテルル化物半導体ナノクリスタライトのTEM像である。
【図11】図11は種々のナノクリスタライト合成用のサイズヒストグラムを示す一連のグラフである。
【図12】図12はCdTeナノクリスタライト用の直径に関するホトルミネッセンスの従属性を示すグラフである。
【図13】図13は3サイズのCdTeナノクリスタライト用のX線回折スペクトルを示すグラフである。
【図14】図14は種々のバルクII−VI半導体のバンドギャップを示すグラフである。
【図15】図15は一連のサイズのCdTeナノクリスタライトの放射スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
テルル含有ナノクリスタライトは、M含有化合物およびTe含有化合物を温配位溶媒に注入し、その後ナノクリスタライトを成長、アニールすることによって製造できる。ナノクリスタライトは、CdTe、ZnTe,MgTe,HgTeまたはそれらの合金を含みえる。前駆体組成と化学量論を適宜選択することにより、70%程度の量子効率を有するテルル化物半導体ホトルミネッセンス ナノクリスタライトを製造できる。
【0017】
改良テルル化物ナノクリスタライトは、米国特許出願番号08/969,302(1997年11月13日出願)に記載のものから、前駆体化合物および前駆体化学量論を変更することによって製造できる。カドミウムテルル化物ナノクリスタライトであって、米国特許出願番号08/969,302に記載に基づいて前駆体としてジメチルカドミウム(MeCd)とトリオクチルホスフィンテルル化物(TOPTe)を用いて得られたものは、量子効率が1%より少なくて十分なホトルミネッセンスを示さない。アミノ基を含むTe含有化合物を用いて製造されたテルル化物含有ナノクリスタライトは、コロイダルCdTeナノクリスタライトに対して報告された20%の量子効率よりも3倍も大きな70%ほどの量子効率を有するものを調製できる(J. Phys. Chem. 1993 (97): 11999−12003)。ナノクリスタライトの量子効率は、コアナノクリスタライトを第2の半導体材料で被覆することにより更に高めることができる(例えば、ZnSまたはZnSe被覆CdTeコア)。
【0018】
テルル含有ナノクリスタライトは、高温コロイド成長法、好ましくはその後のサイズ選択沈降を利用して得られる。高温コロイド成長法は、M含有化合物とTe含有化合物の適当な組み合わせを温配位溶媒中に急速注入して一時的な個別的な均質な核を形成させ、核の成長を制御してナノクリスタライトとすることにより達成しえる。試薬を温反応溶媒中に注入すると、均質な核形成の短いバーストが生じる。この一時的な個別的核形成は、注入による試薬濃度の急速な上昇によって達成され、突然過飽和が生じ、これは核形成と信じられ、その後最初に形成された核の成長が続く。核形成および室温試薬の導入と関係する突然の温度低下による試薬の部分的な消耗は、その後の核形成を防止する。
【0019】
溶液は、その後徐々に加熱して溶液温度を再度確立してもよい。温和な再加熱は、ナノクリスタライトの成長とアニールを考慮しなければならない。小クリスタライトの表面自由エネルギーが大きいと、大クリスタライトよりも溶媒中における溶解に関して安定がなくなる。安定性グラジェントの真の結果は、小粒子から大粒子表面への物質の遅い拡散である(オストワルド熟成)。さらに、配位溶媒中に残存する試薬は成長に寄与するであろう;この効果は、成長中に追加試薬を溶液中に加えることによって促進されるであろう。この種の成長と熟成は、初期に高度の多分散である系から高度の単分散コロイド懸濁液を生ずる。核形成に続く、配位溶媒中のナノクリスタライトの遅い成長とアニールのプロセスは、均一な表面被覆と普通のコア構造を与える。サンプル中のクリスタライトの平均径とサイズ分布の双方は、成長温度に従属する。安定成長の維持に求められる成長温度は、平均結晶径が増加すると増加する。サイズ分布が鋭利であると、温度を上昇させて安定成長を維持してもよい。成長期間は、高温にすることにより、または付加的な前駆体材料を加えることによって顕著に短縮できる。全プロセスは、図1(a)に示される。
【0020】
反応の成長段階におけるサイズ分布は、粒子の吸収線幅をモニターすることによって評価できる。粒子の吸収スペクトル変化に対応する反応温度を修正すると、成長の際のシャープな粒子径分布を維持できる。反応物を結晶またはクリスタル成長中に核形成溶液に加えて、大きなクリスタルを成長させてもよい。ナノクリスタライトのホトルミネッセンス(PL)スペクトルは、550〜780nmの最大放射波長で連続的に同調され、CdSeコアを有するナノクリスタライトに対し利用可能な波長を補足する。最大放射波長は、ナノクリスタライトの特別平均径の成長を停止させることによって同調できる。粒子径分布は、さらにサイズ選択沈降によって再調整してもよい。
【0021】
M含有化合物は、アルキルM化合物などの有機金属化合物でありえる。たとえば、M含有化合物はMRQ(ここで、MはCd,Zn,Hg,またはMgであり、RおよびQはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基またはシクリアルケニル基である)でありえる。好ましい例としては、ジアルキルCd,ジアルキルZn,ジアルキルHgまたはジアルキルMgである。
【0022】
Te含有化合物は、安定なホスフィンテルル化物、好ましくはトリスアミドホスフィンテルル化物でありえる。Te含有化合物は次の式で表される:
【0023】
【化3】

【0024】
Z,Z’,Z’’の少なくとも一つはアミド基でありえる。好ましくは、Z,Z’,Z’’の二つはアミド基である。Z,Z’,Z’’の残りの基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基またはそれらの誘導体でありえる。更に好ましくは、Z,Z’,Z’’の各々はアミド基である。Z,Z’,Z’’の各々は式−N(A)(A’)(ここで、AとA’の各々は独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基またはそれらの誘導体である)で表される。好ましくはZ,Z’,Z’’の各々はジアルキルアミド基である。各アルキル基は低級アルキル基でありえる。Te含有化合物は少なくとも200℃の沸点を有する。好ましいTe含有化合物はヘキサプロピルホスホラストリアミド テルル化物(HPPTTe)である。HPPTTeは、トリオクチルホスフィン テルル化物(TOPTe)から調製されたナノクリスタライトと比較すると、予測できない高量子効率ナノクリスタライトを生ずる。HPPTTeとTOPTeの構造を図1(b)に示す。
【0025】
あるいは、MとTeとを含む単一化合物は、M含有化合物とTe含有化合物の双方として使用しえる。かかる化合物の例としては、Te含有化合物(ここで、Z,Z’,Z’’の一つはジアルキルM成分を含む)である。
【0026】
アルキル基としては、炭素数1〜100、好ましくは炭素数1〜30の分岐または非分岐の飽和炭化水素基、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、オクチル基、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、エイコシル基、テトラコシル基など、同様にシクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基を挙げることができる。「低級アルキル基」は、炭素数1〜20、好ましくは2〜8のアルキル基をいう。
【0027】
アルケニル基としては、少なくとも一つの炭素炭素二重結合を含む炭素数2〜100の分岐または非分岐の炭化水素基、たとえば、エテニル基、n−プロペニル基、イソプロペニル基,n−ブテニル基、イソブテニル基、t−ブテニル基、オクテニル基、デセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、エイコセニル基、テトラコセニル基などを挙げることができる。「低級アルケニル基」は、少なくとも一つの−C=C−を含む、炭素数2〜20、好ましくは2〜8のアルケニル基をいう。
【0028】
アルキルまたはアルケニル鎖は、−O−、−S−、−M−および−NR−(ここで、Rは水素原子、低級アルキル基または低級アルケニル基である)よりなる群から選ばれた1〜6の結合を任意に含むことができる。
【0029】
アリール基としては、1以上の縮合環(ここで、少なくとも一つの環は本質的に芳香族であり、その他の記載がない限り、任意に1以上の次の置換基:ヒドロキシ基、シアノ基、アルキル基、アルコシ基、チオアルキル基、ハロゲン、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、およびジアルキルアミノ基で置換可能である)からなる1価の芳香族炭化水素基である。
【0030】
シクロアルキル基としては、1以上の環(ここで、その他の記載がない限り、任意に1以上の次の置換基:ヒドロキシ基、シアノ基、アルキル基、アルコシ基、チオアルキル基、ハロゲン、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、およびジアルキルアミノ基で置換可能である)からなる1価の飽和炭素環基である。
【0031】
シクロアルケニル基としては、1以上の環(ここで、その他の記載がない限り、任意に1以上の次の置換基:ヒドロキシ基、シアノ基、アルキル基、アルコシ基、チオアルキル基、ハロゲン、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、およびジアルキルアミノ基で置換可能である)からなり、1以上の炭素炭素二重結合を含む1価の不飽和炭素環基である。
【0032】
ナノクリスタライトの絶対量子効率は70%ほどであった。15のナノクリスタライトサンプルの平均量子効率は60±5%で、この方法の再現精度を証明した。図2は(a)TOPTeと(b)HPPTTeを用いて調製されたCdTeのUV/可視光線吸収スペクトルを示す。各反応の初期吸収スペクトルは質的に類似特性を示す。核形成はサイズの二項分布を生じ、小さな種はすばやく大きなナノクリスタライト用の原料に溶解する。290℃で3時間撹拌後、各反応は実際上同じ吸収スペクトルを有する。吸収スペクトロスコピーでモニターすると、両反応は同一のようである。しかしながら、TOPTeで合成されたCdTeの量子効率はたかだか1%であるのに対し、HPPTTeで製造されたCdTeの量子効率は55%である。
【0033】
いかなる特別な説明で結び付けられることを望むものではなく、HPPTTe中のアミド基の強い電子ドナー特性はナノクリスタル特性の改善に少なくとも部分的に寄与すると信じられる。1または2のアミド基を有するTe含有化合物は、トリアルキルホスフィンテルル化物化合物に比較し、テルル化物ナノクリスタライトに顕著に改良された量子効率をあたることができる。好適なTe含有化合物は反応温度で安定であるべきである(たとえば、少なくとも200℃の沸点を有する)。
【0034】
図2(a),2(b)のスペクトルの交換性は、UV/可視光線吸収スペクトルスコピーがPL強度を説明する相違に鋭敏ではないことを示唆する。同様に、TEMとXRD分析は、図2(c)のXRDスペクトルで示されるように二種間の実質的な相違を表さない。
【0035】
ナノクリスタライトは、半導体材料の被覆により保護膜を形成できる。たとえば、ZnS、ZnSeまたはCdSe保護膜はCdTeナノクリスタライト上に成長しえる。
【0036】
テルル化物ナノクリスタライトは、多くの適用に好適であり、たとえば米国特許出願番号09/156,863(1998年9月18日出願)、09/160,454(1998年9月24日出願)、09/160,458(1998年9月24日出願)、および09/350,956(1999年7月9日出願)に記載された例を挙げられる。特に、CdTeナノクリスタライトを用いて構成された米国特許09/350,956の実施例3に記載されたような光放射装置は、極めて強い赤色光線を生み出す。
【実施例】
【0037】
CdTeナノクリスタライトの合成
特に記載がない場合には、全ての反応は、グローブボックスまたは標準的なシシュレンク(Schlenk)技術を利用して乾燥窒素雰囲気中で行った。サイズ選択沈降に用いたHPLCグレード溶媒は、窒素で5分間バブリングして溶解酸素を除去した。トリオクチルホスフィン(TOP,95%)は、フルカ(Fluka)から受け取ってそのまま用いた。テルルショット(99.999%、低酸化)は、アルファ/アエサー(Alfa/Aesar)から受け取ってそのまま用いた。ヘキサ−n−プロピル ホスホラス トリアミド(HPPT、97%、Lancaster)は、真空蒸留し、0.55Torrにおいて83−103℃で沸騰するフラクションを回収した。トリオクチルホスフィン酸化物(TOPO、90%、Strem)を真空(〜0.5Torr)で1時間乾燥した。ジメチルカドミウム(99+%、Strem)を真空移動で精製した。
【0038】
ヘキサプロピルホスホラストリアミドテルル化物(HPPTTe)のストック溶液は、6.38gのテルルショットを45.00gのHPPTに加え、溶解するまで(1−2日)撹拌して調製した。20gのTOPOは180℃において1時間真空(〜0.5Torr)乾燥し、窒素で充填し、350℃に加熱した。窒素雰囲気グローブボックスにおいて、50μLのCdMe(0.69mmol)、0.35mLのHPPTTeストック(0.35mmol)および12mLのTOPを含む溶液を十分に混合し、注射器に投入した。この溶液は激しく撹拌するTOPOに滑らかに注入する(〜0.5秒)と、TOPOは直ちに赤変し、270℃に冷却した。反応溶液を注入の20秒以内にサンプリングすると、初期UV/可視光線スペクトルは、サイズの二項分布、すなわち435と560nmに吸収特徴を示した。その後の吸収スペクトルは高エネルギーピーク、すなわち最初の吸収はいまは580nmにピークを有するが、の証拠を示さなかった。温度を290℃に上げ、サンプルを所定波長に成長させた。その後フラスコを〜60℃に冷却し、10mLのブタノールと混合した。この溶液は、量子効率を顕著に減少させることなく、少なくとも6ヶ月(窒素下)貯蔵できる。
【0039】
ナノクリスタライトは、アセトニトリルを用いる修正サイズ選択沈降により空気中で単離した。上記のように調製された反応溶液を追加の10mLのブタノールと混合した。アセトニトリルを、混合物が混濁するまで加えた。数分間静置すると、溶液は二相に分離した。無色親水性相をその後除去し、廃棄した。澄んだ赤色親油性相を、ブタノールの初期容積の約1/3と混合した。混濁するまでアセトニトリルを加え、さらに相を分離するプロセスは、粉末または極めて濃厚なオイルが得られるまで繰り返した。この方法で単離した新たに調製されたCdTeナノクリスタライトは、ヘキサンに適度に溶解し、テトラハイドロフラン(THF)によく溶解する。少量のTOP(〜1容量%)を加えると、サイズ選択材料のルミネッセンス強度の保持を助けた。粗CdTeの製造量は、乾燥粉末で50mg(小サイズ)から75mg(大サイズ)の範囲であった。
【0040】
CdTeナノクリスタライトは、カルコゲニド含有化合物として1Mヘキサプロピル ホスホラス トリアミド テルル化物(HPPTTe)溶液を用いる方法で合成した。使用前にHPPTを蒸留すると、サンプルの量子効率を顕著に増加させることを見出した。真空移動によりCdMeを精製すると、0.2μmPTFEメンブランろ過よりもより矛盾のない結果を生じた。同様に、カドミウムの多い調製物はよりよい結果を与えることが見出された。このサンプルの条件に対する最適なCd:Te注入溶液比は、経験的に2:1と決定した。図3はCdTe合成中における種々の時間のUV/可視光線吸収スペクトルを示す。図3(a)は合成の初期段階を強調する。図3の下部スペクトルは、温度が280℃になった時に注入10秒後に採取したのであるが、反応溶液はサイズの二項分布を含むことを示す。2.23eV(566nm)と2.84eV(437nm)において十分に特定された特徴が明らかに見える。435nm付近で吸収する種は、注入を200℃以下で行うことにより合成できる。これらは、ナノクリスタライト様吸収を示す小さなナノクリスタライトであり、410nm吸収CdSeと等価な435nm吸収CdTe種のように見える。反応二分後435nm吸収CdTe種の濃度は大きく減少し、7分においてこの種は少しも存在しなかった。これらの435nm吸収CdTe種は成長するように見えなかった。類似初期条件下で行われた反応中の435と550nm間ではスペクトル上の特徴は観察されなかった。その代わり、435nm吸収CdTe種は、大きなナノクリスタライトの吸収が成長し、鋭利となったので、溶解したように見えた。小粒子を犠牲にした大粒子の成長はオストワルド熟成機構であり、異なる粒子径(〜35Å対〜15Å)を与えることが予測される。この機構の観察は、この場合溶解種が435nm吸収CdTe種であることを除いては、注目すべきではないであろう。この族のその他の半導体材料、CdSとCdSe、は成長パターンにおいて類似挙動を示さないであろう。
【0041】
ナノクリスタライトの特徴
ヘキサン中のCdTeナノクリスタライトのUV/可視光線吸収スペクトロスコピーは、HP8453ダイオード アレイ スペクトロメーターで1nmの解像力で行った。蛍光測定は、SPEXフルオロログ−2 スペクトロフルオロメーターであって、500nmでブレーズされた2400グルーブ/インチ回折格子を備える二つの二重モノクロメーターおよび光電子増倍管(R928)検出器を備えるものを用いて行った。CdTeサンプルは1cm石英キュベット中のヘキサンまたは〜1%TOPを有するTHFのいずれかに溶解し、第1の特徴の吸光度9.3より小さくなるまで希釈した。スペクトルは前面配置で得られ、光学素子と検出器の波長従属性を、好適な補正係数ファイル(MCOR1097.SPT)で掛けて修正した。
【0042】
図3(b)はCdTeの単一合成から採取した分割量の吸収スペクトルを示す。十分に合成された最初の吸収スペクトル状態は全スペクトルにおいて見え、成長が制御されることが示される。図4は、同じ反応に対する対応するホトルミネッセンス(PL)放射スペクトルを示す。スペクトルは、反応中の各種の点において放射強度を正確に反映するように、ローダミン640(量子効率=100%)のメタノール溶液に対して標準化され、それらの関係は挿入された図4(b)にプロットされている。3つの特徴は図4で目立っている。最初に、量子効率は時間中改良された。この結果はアニール効果の重要性を示唆する。小ナノクリスタライトに対し、粒子成長から熱アニールを分離することは実験的に困難である。第2に、全ての放射はバンドエッジで生じた。サイズ範囲に対し低エネルギー(または深いトラップ)光線が検出されなかった。スペクトルウインドウは、深いトラップ放射を観察することなく、CCD検出器を用いて1.18eV(1050nm)まで調べた。より重大にとらえると、〜35Å程度の小さいCdTeサンプルは深いトラップ放射を示さなかったが、類似サイズのCdSとCdSeルミネッセンススペクトルは通常少なくとも20%の深いトラップ放射を含んでいる。放射の第3のアスペクトは、量子効率の単純な本当の大きさである。図4を構成するために用いられたナノクリスタルは55%に達するが、70%程度のサンプルも調製された。
【0043】
図5は、この方法で製造されたCdTeサイズの範囲を示す吸収スペクトルを表す。二つの極限間のサイズ/エネルギーが得られる。出発材料の濃度および/または反応温度を少し調整することで、低直径限界を現在の値〜44Åよりも小さくさせるべきである。
【0044】
CdTeナノクリスタライトの希釈溶液の凝集およびPL強度に関する安定性は、CdTeナノクリスタライトが空気の影響を受けやすいので、CdSeのそれらよりも定性的に小さかった。図6は、放射が空気中で時間とともに減少するとき、53Å直径CdTeの希釈ヘキサン溶液のPLを示す。図6の挿入図では、全実験中の時間に対する強度をプロットする。放射強度は、2.5時間後に実際上零である。この点において、溶液も同様に全く混濁している。比較実験を窒素下で行い、その結果を図7に示す。39時間後においても、蛍光強度は初期値の丁度半分まで落ちていただけである。同様に、12時間後空気のない溶液は極めて混濁した。PL強度の溶液相「寿命」は、図8で比較される。ここで示された結果は、CdTeナノクリスタライトの使用可能な寿命が、特に希釈溶液中において、ナノクリスタライトを不活性雰囲気中で保持することにより大きく延長できることを示す。サイズ選択沈降中に、たとえば、空気中でより濃縮された溶液を操作する間、PLは大きく減少するようには見えない。窒素雰囲気またはその他の不活性ガス中でナノクリスタライトを長期に貯蔵すると、量子効率を維持できる。
【0045】
CdTeナノクリスタライトのPLは温度従属性である。合成された50Å直径CdTeナノクリスタルの成長溶液を含む反応装置は、蛍光メーターサンプルチャンバー中に組立てられ、窒素源に取り付けられた。系の温度を10分間平衡にした後、スペクトルを得た。図9は、温度範囲に関するナノクリスタライトのPLスペクトルを示す。図9中のヒステリシスは、実験の後半に起きた成長および/または分解によるものと信じられる。
【0046】
透過型電子顕微鏡(TEM)は、CdTeナノクリスタルサンプルのサイズ、形および分布に関する目に見える情報を提供する。測定の大きな集団を集めると、統計的に有益なデータが確保された。200kVで働くJEOL2000FX透過型電子顕微鏡は、CdTeナノクリスタライトの高解像画像を得るために使われた。無定形炭素(Ladd)の超光被覆を備える400メッシュ銅グリッドは支持体として役立った。CdTeナノクリスタライト溶液は、アセトニトリルで一度サイズを選択し、粉末を一度メタノールで洗浄し、THFに溶解し、最初の状態において吸収が1cmキュベット中で0.3−0.6の間になるまで希釈することにより調製した。この溶液の一滴を炭素グリッド上に置き、10秒後に余剰溶液をテッシューで吸い上げた。回折パターン中の(111)格子間隔、最大強度リングを画像化する間、対物レンズアパーチャーを用いてコントラストを改善した。測定は、210,000−410,000倍率で画像をえた。顕微鏡の倍率の読みは、X線回折(3.742Å)で測定された(111)面のd間隔を用いて修正した。装置倍率の読みは、この範囲では体系的に小さいことが見出された;ここに与えられた全ての測定は1.15倍して正確な値を反映させる。
【0047】
CdTeサンプルは、米国特許出願番号08/969,302に記載されたように、アセトニトリルで一度サイズ選択を注意深く行った。粉末をメタノールで一度洗浄した後、THFに溶解させた。溶液濃度は、炭素支持体上にナノクリスタライトの亜単層保護膜を析出させるように調整した。THFから調製されたTEMサンプルは、数領域の密に凝集した粒子を含んでおり、ヘキサンまたはピリジンからレイアウトされたものよりも優れている。図10は平均サイズ110±12ÅサンプルのCdTeナノクリスタライトの明視TEM画像を示す。この図は、全サンプルの代表例である。大部分のナノクリスタライトはほぼ同じサイズ、同じ球形状である。しかしながら、サイズ分布があり、ナノクリスタライトのなかには明確な長球形状なものもあった。CdSeの場合のように、長球ナノクリスタライトの集団は大きさが増加することが見出された。図10の挿入図は、(111)面を表す格子縞が見えるように志向性である近接するナノクリスタライトを示す。
【0048】
それぞれの測定されたCdTeサイズに対し、少なくとも250ナノクリスタライトは、大部分の場合約500であるが、平均直径を決定するために測定された。図11は、8の異なるサイズに対して得られたヒストグラムを示す。これらの方法で調製されたナノクリスタライトの標準偏差(10−14%)は、ベストCdSeサンプル(<5%)と比較して大きい。図12は、最初の吸収状態の直径と波長との関係をプロットしたものである。線はデータに最も合う第3次オーダー多項式をグラフで表す。
【0049】
粉末X線回折(XRD)パターンは、CdTeクリスタル構造のタイプと性質に関する最も完全な情報を提供した。粉末サンプル中のナノクリスタライトのランダム配向は、全ての可能なクリスタルの方向がプローブされることを補償した。サイズの評価は、粒子直径が、X線コヒーレンス長に対し、ピーク幅と逆比例の関係にあるので、同様に可能であった。
【0050】
300ミリアンペア束、60kVで働くCuアノードを備える理学300ロタフレックス(Rotaflex)回折計を用いて、粉末XRDパターンを得た。サンプルは、CdTeをアセトニトリルで一度サイズ選択し、粉末をメタノールで3度洗浄し、最少量のTHFに溶解させて極めて濃縮溶液を得て、かかる溶液をシリコン(001)支持体上にキャストし、さらに溶媒を蒸発させることによって調製した。THFに溶解しない粉末は真空で乾燥し、RTVシリコン接着剤を用いてシリコン支持体に貼り付けた。
【0051】
図13はHPPTTeを用いて製造した3つの異なるサイズのCdTeサンプルの実験XRDパターンを示す。ピーク位置は、バルク立方体CdTeのそれぞれであって、図13の下の棒スペクトルで表されるピークとマッチする。立方体CdTeは、高温核形成と成長のため達成された熱力学的に安定なバルク相である。前記低温合成法は、CdTeの安定でないウルツ鉱相を生み出した。34°の割り当てられていないピークは、ウルツ鉱構造中の(103)方向と等価性を高揚する積層欠陥によるものと信じられる。粒子直径は、シェラー(Scherrer)式を用いて評価された:
L=0.888(λ)/[Δ(2θ)cos(θ)]
ここで、LはX線のコヒーレンス長(シェラー長として公知である)、λはX線の波長、Δ(2θ)はラジアンのFWHMであり、θは入射角である。コヒーレンス長Lは、粒子の容積平均による実際の次元に関係する数学的な構成である。球の直径Dに対し、関係は次のように表される:
D=(4/3)L。
【0052】
これらの式および(111)反射のFWHMを用いると、TEM(47,56,92Å)で得られたものよりも若干小さいサイズ(45,54,81Å)が得られる。シェラー法は実際にX線のコヒーレンス長を測定するので、クリスタルの不完全性が計算されたサイズを実際のサイズよりも小さくしてしまうであろう。XRDサイズがTEMサイズに近いということは、サンプルが、少なくとも<111>方向において、極めて結晶性であることを意味する。
【0053】
CdTeナノクリスタライトのオーバーコート
非被覆または「裸の」CdTeナノクリスタライトからの高量子効率についてまたはそれ自体極めて重要であるけれども、その後の保護シェル成長の試みに関する結果にも影響を与える。(CdSe)ZnSと(CdSe)CdS研究からの経験的な観察によれば、このオーバーコートプロセスが出発材料の量子効率について一般に増加効果を与えることが示され、最も輝度の高い(コア)シェルサンプルは一般に最も輝度の高いナノクリスタルコアから生じる。半導体バンドオフセットは、ポテンシャルシェル材料が電子と正孔との双方にエネルギーバリアーを提供できるかどうか決定するために比較すべきである。ナノクリスタライト用に信頼できる値が公表されていないので、バルク値は一般的なガイドとして用いることができる。図14はII−VI亜鉛、カドミウム半導体用の真空レベルに対するバンド位置を示す。ZnSとZnSeは好適なシェル材料候補であるといえる。ZnSまたはZnSeシェルのCdTeコアへの成長は、加工と操作中により強固であるコンポジット材料を提供する。(CdTe)ZnSと(CdTe)ZnSeオーバーコートナノクリスタライトは、1ステップと2ステップ合成法の双方で合成された。
【0054】
オーバーコートナノクリスタライトの1ステップ合成法
CdTeナノクリスタライトは、上記のように合成された。コアが所定のサイズに達すると、温度を200℃に低下させた。各CdTeサンプル用に所定厚さのZnSシェルを成長させるために必要なZnとS前駆体の量は、次のように決定された。最初に、CdTeナノクリスタライトの平均半径はTEMまたはSAXS測定から評価された。次に、所定厚みのシェルを形成するために必要なZnSとCdTeとの比率は、コア容積の比率に対するシェル容積の比率に基づいて計算したが、球状コア、シェルと仮定し、CdTeとZnSのバルク格子パラメーターを用いた。等モル量のジエチル亜鉛(ZnEt)とヘキサメチルジシラシアン((TMS)S)は5−10mLのトリオクチルホスフィン(TOP)に加えた。ZnとSの前駆体溶液は、5−10分間、撹拌CdTe反応溶液に滴下した。滴下が完了した後、混合物を90℃に冷却し、数時間撹拌した。10mLのブタノールを混合物に加えて、室温に冷却した際のTOPOの固化を防止した。オーバーコート粒子を成長溶液中に貯蔵して、ナノクリスタライト表面のTOPOによる不動態化の維持を確保した。(CdTe)ZnSeは、同様にセレン源として作用するビス(トリメチルシリル)セレニド((TMS)Se)を用いて合成した。ZnSとZnSeのオーバーコートの双方に対し、PLの量子効率は0−20%増加した。
【0055】
オーバーコートナノクリスタライトの2ステップ合成法
CdTeナノクリスタライトは、上記のように合成した。ナノクリスタライトの量は、質量および/または光学吸収により決定した。20gのTOPOを真空(0.5Torr)で1時間乾燥し、その後窒素下で60℃まで冷却した。CdTeナノクリスタライトをヘキサンまたはTHFに分散し、TOPOと混合し、その後溶媒を真空で除去した。所定厚みのZnSシェルを成長させるために要するZnとSの前駆体の量は次にように決定した。最初に、CdTeナノクリスタライト平均半径をTEMまたはSAXA測定から評価した。次に、シェルの形成に必要なCdTeに対するZnSの比率は、コア容積の比率に対するシェル容積の比率に基づいて計算したが、球状コアとシェルと仮定し、CdTeとZnSのバルク格子パラメーターを用いた。等モル量のジエチル亜鉛(ZnEt)とヘキサメチルジシラシアン((TMS)S)は5−10mLのトリオクチルホスフィン(TOP)に加えた。ZnとSの前駆体溶液は、5−10分間、撹拌CdTe反応溶液に滴下した。滴下が完了した後、混合物を90℃に冷却し、数時間撹拌した。10mLのブタノールを混合物に加えて、室温に冷却した際のTOPOの固化を防止した。オーバーコート粒子を成長溶液中で貯蔵して、ナノクリスタライト表面のTOPOによる不動態化の維持を確保した。(CdTe)ZnSeは、同様にセレン源として作用するビス(トリメチルシリル)セレニド((TMS)Se)を用いて合成した。ZnSとZnSeのオーバーコートの双方に対し、PLの量子効率は0−20%増加した。
【0056】
CdTeナノクリスタライト用のその他のサイズ選択法
第2のサイズ選択沈降法では、狭いサイズ分布が得られる。たとえば、10%RMS偏差より少ないサイズ分布が調製できる。CdTeナノクリスタルは、修正サイズ選択沈降により空気中で単離される。上記のようなCdTeナノクリスタルの合成後、フラスコを〜60℃に冷却し、10mLのトリオクチルアミンと10mLのテトラハイドロフラン(THF)と混合する。メタノールまたはアセトニトリルは、混合物が混濁するまで混合溶液に加えた。サイズ選択CdTeナノクリスタルは、遠心分離後沈降粉末として得ることができる。サイズ選択化CdTeナノクリスタルはヘキサンに適度に溶解し、THFに極めてよく溶解する。トリオクチルアミンは、サイズ選択工程中にPLの高量子効率を維持するため、さらには相分離を抑制するために加える。ナノクリスタル表面のエッチングを避けるために、サイズ選択工程前に直ちに使用すべきである。サイズ選択後、PLスペクトルの代表的なFWHMは35nmである。20nm程度のFWHMを有するスペクトルが得られる。
【0057】
CdTeナノクリスタルのホトルミネッセンス
図15はCdTeナノクリスタライトの代表的な室温ホトルミネッセンス(PL)スペクトルを示すが、580nmから770nmにわたる光スペクトルをスパンするものである。これらのサンプルのPL量子効率は、CdTeナノクリスタライトは最も高い量子効率を有する約640nmで放射するが、40%から65%の範囲である。量子効率は、CdTeナノクリスタライトのサイズが平均サイズよりも小さくまたは大きくなると低くなる。各スペクトルの最大値の半分における全幅(FWHM)は、サイズ選択工程前は、45nmから70nmの範囲である。サイズ選択後、各放射スペクトルFWHMは35nmに低下する。図15に示されるスペクトルは、4.0nm、4.5nm、4.8nm、5.2nm、5.8nm、6.2nm、7.7nm、9.1nm、11.9nmの直径を有するCdTeナノクリスタライトを用いて得られた。
【0058】
本発明の多くの実施態様が記載された。それにもかかわらず、種々の修正が本発明の精神と範囲から逸脱しないようになされることが理解されるであろう。たとえば、ここで記載された方法と生成物は主にCdTeナノクリスタライトに関するものであった。しかしながら、当業者にはこれらの方法と生成物はZnTe、MgTe、HgTe、これらテルル化物の全合金の形成に拡大しえる。したがって、その他の実施態様は次の請求項は範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式で表されるTe含有化合物:
【化1】

ただし、Z、Z’、Z’’の一つは独立的にアミド基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であり、Z、Z’、Z’’の少なくとも一つはアミド基である。
【請求項2】
Z、Z’、Z’’の各々はジアルキルアミド基である請求項1記載のTe含有化合物。
【請求項3】
P(Z)(Z’)(Z’’)とTeとを接触させることを含むTe含有化合物を製造する方法、ただし、Z、Z’、Z’’の一つは独立的にアミド基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であり、Z、Z’、Z’’の少なくとも一つはアミド基である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−148797(P2011−148797A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19862(P2011−19862)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【分割の表示】特願2001−512953(P2001−512953)の分割
【原出願日】平成12年7月26日(2000.7.26)
【出願人】(500219537)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】77 Massachusetts Avenue, Cambridge, Massachussetts 02139,U.S.A
【Fターム(参考)】