説明

テレビジョン受像機の性能評価システム

【課題】性能評価の関わる検査を簡素化することで、TV生産工場での生産ラインにおけるテレビジョン受像機の生産性をさらに向上させること。
【解決手段】TV標準試験信号供給装置10により供給される所定帯域(60GHz帯)の地上波及び衛星波に相当するTV標準試験用信号が、該TV標準試験信号供給装置10に接続される送信手段である送信器30により無線送信されると、テレビジョン受像機60のTVアンテナ端子61に接続されている受信手段である受信器40により受信され、テレビジョン受像機60側でTV標準試験用信号に応じた少なくとも映像の表示状態が確認されることで、テレビジョン受像機60の性能評価が行われるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン受像機のTV生産工場での生産ラインにおける性能評価に適したテレビジョン受像機の性能評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、TV生産工場での生産ラインにおいて、テレビジョン受像機を出荷するに際しては、梱包する前にテレビジョン受像機の映像出力あるいは音声出力についての性能評価に関わる検査が行われる。この性能評価に関わる検査は、作業者が所定の映像をディスプレイに表示させるとともに、手動にてリモコンの操作ボタンを操作し、表示パターンの輝度や色合いあるいは音量等を適宜変化させ、その変化態様を監視し、出力の動作が正常であるか異常であるかを確認することにより行われる。
【0003】
ところが、このような性能評価に関わる検査を行うに際しては、作業者がリモコンを手動にて操作しチャンネルを切り替えたり、リモコンの操作ボタンを操作して映像出力の輝度や色合い、あるいは、音声出力の音量を適宜変化させる必要があるため、作業者の作業工数が増加してしまう。
【0004】
このような不具合を解消するようにしたものとして、特許文献1では、工場集中システムから送出されるテレビジョン放送信号の出力設定用の操作信号を含むキャプション信号に基づいて映像出力あるいは音声出力の出力設定を変化させるようにした出力設定制御方法を提案している。
【特許文献1】特開2002−238063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、テレビジョン放送信号の出力設定用の操作信号を含むキャプション信号に基づいて映像出力あるいは音声出力の出力設定を変化させることにより、自動的に表示パターンの切り替えや色合い、輝度あるいは音量等の出力設定が変えられるため、作業者によるリモコン装置における手動での操作が排除され、性能評価の関わる検査を行うに際しての作業者の作業工数が軽減されるようになっている。
【0006】
ところが、このような性能評価の関わる検査を行う方法では、テレビジョン放送信号に相当するTV標準試験用信号をテレビジョン受像機に入力する場合、TV標準試験用信号の配線ケーブルを個々のテレビジョン受像機のアンテナ端子に接続する必要がある。
【0007】
このように、個々のテレビジョン受像機のアンテナ端子にTV標準試験用信号の配線ケーブルを接続するようにすると、1日の生産台数分に応じた性能評価の工数に、TV標準試験用信号の配線ケーブルの接続の工数が加わるため、作業者の作業工数がTV標準試験用信号の配線ケーブルの接続に関わる工数分だけ増加することになる。
【0008】
その結果、作業者の負担が増加してしまうばかりか、性能評価の関わる検査に必要以上の時間がかかることから、TV生産工場での生産ラインにおけるテレビジョン受像機の生産性をさらに向上させる上で妨げとなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、性能評価の関わる検査を簡素化することで、TV生産工場での生産ラインにおけるテレビジョン受像機の生産性をさらに向上させることができるテレビジョン受像機の性能評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のテレビジョン受像機の性能評価システムは、所定帯域の地上波及び衛星波に相当するTV標準試験用信号を供給するTV標準試験信号供給装置と、該TV標準試験信号供給装置に接続され、前記TV標準試験用信号を無線送信する送信手段と、テレビジョン受像機のTVアンテナ端子に接続され、前記送信手段からのTV標準試験信号を受信する受信手段とを備え、前記テレビジョン受像機側で前記TV標準試験用信号に応じた少なくとも映像の表示状態を確認することにより前記テレビジョン受像機の性能評価が行われることを特徴とする。
また、前記送信手段は、前記性能評価の検査工程に配置され、前記受信手段は、ベルトコンベアによって搬送される、前記テレビジョン受像機を載置するパレット上に固定され、前記テレビジョン受像機が前記ベルトコンベアによって前記検査工程まで搬送されると、前記受信手段が前記送信手段と対向して前記TV標準試験用信号を受信するようにすることができる。
また、前記送信手段は、前記性能評価の検査工程に配置されるとともに、所定の電波放射角度が持たされており、前記受信手段は、ベルトコンベアによって搬送される、前記テレビジョン受像機を載置するパレット上に固定され、前記テレビジョン受像機が前記ベルトコンベアによって前記検査工程まで搬送されると、前記受信手段が前記送信手段からの前記TV標準試験用信号を受信するようにすることができる。
また、前記送信手段は、前記ベルトコンベアの上方に配置されるようにすることができる。
本発明のテレビジョン受像機の性能評価システムでは、TV標準試験信号供給装置により供給される所定帯域の地上波及び衛星波に相当するTV標準試験用信号が、該TV標準試験信号供給装置に接続される送信手段により無線送信されると、テレビジョン受像機のTVアンテナ端子に接続されている受信手段により受信され、テレビジョン受像機側でTV標準試験用信号に応じた少なくとも映像の表示状態が確認されることで、テレビジョン受像機の性能評価が行われる。
この場合、性能評価の検査工程において、TV標準試験信号供給装置からの地上波及び衛星波に相当するTV標準試験用信号を供給する配線ケーブルをテレビジョン受像機のTVアンテナ端子に接続する作業が不要となり、地上波及び衛星波における性能評価が効率よく行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のテレビジョン受像機の性能評価システムによれば、性能評価の検査工程において、TV標準試験信号供給装置からの地上波及び衛星波に相当するTV標準試験用信号を供給する配線ケーブルをテレビジョン受像機のTVアンテナ端子に接続する作業を不要とし、地上波及び衛星波における性能評価が効率よく行われるようにしたので、性能評価の関わる検査を簡素化することができ、TV生産工場での生産ラインにおけるテレビジョン受像機の生産性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例の詳細について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本発明のテレビジョン受像機の性能評価システムをテレビジョン受像機のTV生産工場での生産ラインに適用した場合の第1実施形態を説明するための図である。
【0014】
同図に示すように、テレビジョン受像機の性能評価システムは、TV(テレビジョン)標準試験信号供給装置10と、分配器(又は分岐器)20と、送信器30と、受信器40とを備えている。
【0015】
TV標準試験信号供給装置10は、地上波発生器11、衛星波発生器12、多重化器13を有している。
【0016】
地上波発生器11は、ケーブル13dを介して多重化器13に接続され、アナログ放送波及びデジタル放送波に相当するTV標準試験用信号を発生してケーブル13dに出力する。衛星波発生器12は、ケーブル13eを介して多重化器13に接続され、BS(放送衛星)/CS(通信衛星)110゜のデジタル放送波に相当するTV標準試験用信号を発生してケーブル13eに出力する。
【0017】
多重化器13は、同軸ケーブル13fを介して分配器(又は分岐器)20に接続され、地上波発生器11及び衛星波発生器12によって発生されたTV標準試験用信号を多重化して同軸ケーブル13fに出力する。
【0018】
分配器(又は分岐器)20は、同軸ケーブル13g,13hを介してそれぞれの送信器30に接続され、同軸ケーブル13fを介して取り込んだ多重化器13により多重化されたTV標準試験用信号を、同軸ケーブル13g,13hを介してそれぞれの送信器30に分配する。また、分配器(又は分岐器)20には、インピーダンス整合のためのダミー抵抗21が接続されている。
【0019】
送信器30は、パレット50上に載置されたテレビジョン受像機60を矢印方向に搬送するベルトコンベア70の図示しない枠体に固定され、分配器20によって分配されたTV標準試験用信号を送信する。なお、図中、送信器30が2個となっているが、これは性能評価の検査工程が2カ所ある場合を想定したものである。よって、性能評価の検査工程が1カ所である場合は送信器30が1個となり、性能評価の検査工程が複数カ所である場合は送信器30が複数個となる。
【0020】
受信器40は、テレビジョン受像機60を載置するパレット50上に固定されている。また、受信器40の配線ケーブル41は、テレビジョン受像機60がパレット50に載置されるとき、すなわち送信器30が配置されている性能評価の検査工程の前段階でテレビジョン受像機60のTVアンテナ端子61に予め接続されるようになっている。
【0021】
ここで、パレット50上に載置されたテレビジョン受像機60がベルトコンベア70によって搬送されると、パレット50上に固定されている受信器40が送信器30と対向することになる。このときの送信器30と受信器40との間隔は、たとえば複数の検査工程の配置関係に応じて適宜設定することができる。
【0022】
ただし、複数の検査工程が密集している場合、送信器30と受信器40との間隔はできる限り狭い方が好ましい(たとえば10cm程度)。これにより、送信器30からの電波出力を必要最小限とすることができ、複数の検査工程が密集していても、送信器30からの電波が他の検査工程でのテレビジョン受像機60に悪影響を与えることがなくなる。
【0023】
次に、図2により、図1のTV標準試験信号供給装置10の詳細について説明する。ここで、図2は、TV標準試験信号供給装置10の内部構成を示すブロック図である。
【0024】
同図に示すように、TV標準試験信号供給装置10の地上波発生器11には、地上波アナログ変調部11a〜11cと、地上波デジタル変調部11a〜11fとが設けられている。
【0025】
これらの地上波アナログ変調部11a〜11c及び地上波デジタル変調部11a〜11fは、それぞれ異なるテストチャンネルである、a−1ch,a−2ch,・・・a−nchとb−1ch,b−2ch,・・・b−nchとを有しており、それぞれのテストチャンネルに、評価や試験に必要な異なる映像や音声に変調がかけられてTV標準試験用信号として出力されるようになっている。
【0026】
なお、これらのテストチャンネルa−1ch,a−2ch,・・・a−nchとb−1ch,b−2ch,・・・b−nchは、テレビジョン受像機60側のそれぞれのチャンネルに相当するものであり、リモコンによってチャンネルを変えることにより、それぞれ該当するチャンネルにテストチャンネルの映像が映し出される。
【0027】
また、TV標準試験信号供給装置10の衛星波発生器12には、BSデジタル変調部12a〜12cと、CS110゜デジタル変調部12d〜12fとが設けられている。これらのBSデジタル変調部12a〜12c及びCS110゜デジタル変調部12d〜12fは、上記同様に、それぞれ異なるテストチャンネルである、c−1ch,c−2ch,・・・c−nchとd−1ch,d−2ch,・・・d−nchとを有しており、それぞれのテストチャンネルに、評価や試験に必要な異なる映像や音声に変調がかけられてTV標準試験用信号として出力されるようになっている。
【0028】
なお、これらのテストチャンネルc−1ch,c−2ch,・・・c−nchとd−1ch,d−2ch,・・・d−nchは、上記同様に、テレビジョン受像機60側のそれぞれのチャンネルに相当するものであり、リモコンによってチャンネルを変えることにより、それぞれ該当するチャンネルにテストチャンネルの映像が映し出される。
【0029】
ここで、これらの複数のテストチャンネルでの変調においては、60GHz帯が用いられるようになっている。すなわち、ミリ波帯(周波数30〜300GHz、波長1〜10mmの電波)は、携帯電話や無線LANに比べて周波数が高く、広帯域伝送や機器の小型化が可能となるという特徴がある。
【0030】
中でも、60GHz帯はこの特徴に加えて酸素による吸収減衰が大きいため、遠くまで到達せず、しかも干渉が起こりにくいという特性がある。また、60GHz帯の周波数は、使用周波数帯域幅(59GHzを超え66GHz以下)により7GHzの広帯域を使用でき、空中線電力(10mW以下)の条件の元、免許を要しない特定無線局(特定省電力無線局)として電波法で認められている。
【0031】
さらには、伝送速度の基準を決める送信機の伝送帯域幅は、最大2.5GHzまで許容でき、ギガビット伝送が可能な周波数帯域であるため、この広帯域特性により地上波アナログ放送、地上波デジタル放送、BS/CS110°放送を多重化して一度に伝送することが可能となる。
【0032】
この特性を生かして、TV生産工場での生産性の向上のため、上述した性能評価の検査工程でのTVアンテナ端子61への配線ケーブル41の接続をなくし、無線化することにより生産性を向上させることが可能となる。
【0033】
また、60GHzの周波数帯域は世界的にも無線の免許を必要としない周波数帯域として確保されているため、日本のみでなく海外での使用も可能である。ちなみに、米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)では57G〜64GHzという7GHzもの周波数帯域を、免許を申請せずに使ってよい免許不要の帯域として割り当てたことがある。欧州では、FCCに対し上限が66MHz(案)周波数帯域となっている。
【0034】
また、TV標準試験信号供給装置10の多重化器13には、チャンネルミキサー13a,13bと、地上波・BS/CS110゜ミキサー13cとが設けられている。
【0035】
チャンネルミキサー13aは、地上波アナログ変調部11a〜11c及び地上波デジタル変調部11a〜11fによって変調がかけられたそれぞれのTV標準試験用信号をミキシングしてケーブル13dに出力する。
【0036】
チャンネルミキサー13bは、BSデジタル変調部12a〜12c及びCS110゜デジタル変調部12d〜12fによって変調がかけられたそれぞれのTV標準試験用信号をミキシングしてケーブル13eに出力する。
【0037】
地上波・BS/CS110゜ミキサー13cは、チャンネルミキサー13a及びチャンネルミキサー13bによってミキシングされたそれぞれのTV標準試験用信号をさらにミキシングして同軸ケーブル13fに出力する。
【0038】
次に、図3により、図1のテレビジョン受像機60について説明する。ここで、図3は、テレビジョン受像機60の構成の概略を示すブロック図である。
【0039】
同図に示すように、テレビジョン受像機60は、TVアンテナ端子61,61a,61bと、アナログチューナ62と、デジタルチューナ63と、アナログ信号処理部64と、デジタル信号処理部65と、映像信号処理部66と、画像表示部67と、スピーカ68と、制御部69と、受光部69aを有している
【0040】
TVアンテナ端子61には、上述した受信器40からの配線ケーブル41が接続されるようになっている。また、TVアンテナ端子61はたとえばスルーアウトであり、TVアンテナ端子61に入力されたTV標準試験用信号がTVアンテナ端子61aからTVアンテナ端子61bに出力されるようになっている。
【0041】
アナログチューナ62は、TVアンテナ端子61から取り込まれた信号から、地上波アナログ変調部11a〜11cによって変調がかけられたTV標準試験用信号の選局処理等を行う。
【0042】
デジタルチューナ63は、TVアンテナ端子61bから取り込まれた信号から、地上波デジタル変調部11a〜11f、BSデジタル変調部12a〜12c及びCS110゜デジタル変調部12d〜12fによって変調がかけられたTV標準試験用信号の選局処理等を行う。
【0043】
アナログ信号処理部64は、アナログチューナ62によって選局されたTV標準試験用信号に対する信号処理により、映像信号及び音声信号を出力する。
【0044】
デジタル信号処理部65は、デジタルチューナ63によって選局されたTV標準試験用信号に対する信号処理により、映像信号及び音声信号を出力する。
【0045】
映像信号処理部66は、アナログ信号処理部64又はデジタル信号処理部65からの映像信号及び音声信号に対する信号処理により、映像出力用信号及び音声出力用信号を出力する。画像表示部67は、映像信号処理部66からの映像出力用信号に基づき、映像を表示する。
【0046】
スピーカ68は、映像信号処理部66からの音声出力用信号に基づき、音声を出力する。制御部69は、たとえば受光部69aを介して得られるリモコン信号等に基づいて、各部の動作を制御する。受光部69aは、図示しないリモコンからの選局信号等を受光する。
【0047】
次に、図4のフローチャート等を参照し、TV生産工場での生産ラインにおけるテレビジョン受像機60のテレビジョン受像機の性能評価方法について説明する。
【0048】
まず、TV標準試験信号供給装置10によりTV標準試験用信号を生成して出力する(ステップS1)。この場合、上述したように、地上波発生器11の地上波アナログ変調部11a〜11c及び地上波デジタル変調部11a〜11fによる、それぞれ異なるテストチャンネルである、a−1ch,a−2ch,・・・a−nchとb−1ch,b−2ch,・・・b−nchに、評価や試験に必要な異なる映像や音声に変調がかけられる。
【0049】
また、衛星波発生器12のBSデジタル変調部12a〜12c及びCS110゜デジタル変調部12d〜12fによる、それぞれ異なるテストチャンネルである、c−1ch,c−2ch,・・・c−nchとd−1ch,d−2ch,・・・d−nchに、評価や試験に必要な異なる映像や音声に変調がかけられる。
【0050】
ここで、これらの複数のテストチャンネルでの変調においては、上述したように、60GHz帯が用いられる。
【0051】
次いで、上述した地上波・BS/CS110゜ミキサー13cにより、チャンネルミキサー13a及びチャンネルミキサー13bによってミキシングされたそれぞれのTV標準試験用信号がさらにミキシングされて同軸ケーブル13fに出力される。
【0052】
そして、同軸ケーブル13fに出力されたTV標準試験用信号は、分配器20により、同軸ケーブル13g,13hに分配された後、性能評価の検査工程に配置されている送信器30から送信される(ステップS2)。
【0053】
このとき、パレット50上に載置されたテレビジョン受像機60がベルトコンベア70によって性能評価の検査工程まで搬送されてくると、パレット50上に固定されている受信器40により、送信器30から送信されたTV標準試験用信号が受信される(ステップS3)。
【0054】
そして、作業員は、図示しないリモコンを操作し、テレビジョン受像機60のチャンネルを順次切り替えることで、地上波及び衛星波における性能評価を行うことができる(ステップS4)。
【0055】
ここで、受信器40は、上述したように、テレビジョン受像機60がパレット50に載置されるとき、すなわち送信器30が配置されている性能評価の検査工程の前段階でテレビジョン受像機60のTVアンテナ端子61に配線ケーブル41を介して予め接続されている。
【0056】
そのため、性能評価の検査工程においては、配線ケーブル41をテレビジョン受像機60のTVアンテナ端子61に接続する作業が不要となることから、地上波及び衛星波における性能評価を効率よく行うことができる。
【0057】
このように、第1実施形態では、TV標準試験信号供給装置10により供給される所定帯域(60GHz帯)の地上波及び衛星波に相当するTV標準試験用信号が、該TV標準試験信号供給装置10に接続される送信手段である送信器30により無線送信されると、テレビジョン受像機60のTVアンテナ端子61に接続されている受信手段である受信器40により受信され、テレビジョン受像機60側でTV標準試験用信号に応じた少なくとも映像の表示状態が確認されることで、テレビジョン受像機60の性能評価が行われるようにした。
【0058】
この場合、性能評価の検査工程において、TV標準試験信号供給装置10からの地上波及び衛星波に相当するTV標準試験用信号を供給する配線ケーブルをテレビジョン受像機60のTVアンテナ端子61に接続する作業が不要となり、地上波及び衛星波における性能評価が効率よく行われることから、性能評価の関わる検査を簡素化することができ、TV生産工場での生産ラインにおけるテレビジョン受像機60の生産性をさらに向上させることができる。
【0059】
すなわち、従来では、個々のテレビジョン受像機60のアンテナ端子61にTV標準試験用信号の配線ケーブルを接続する必要があり、1日の生産台数分に応じた性能評価の工数に、TV標準試験用信号の配線ケーブルの接続の工数が加わるため、作業者の作業工数がTV標準試験用信号の配線ケーブルの接続に関わる工数分だけ増加することになっていたが、本実施形態のように、送信器30により無線送信されるTV標準試験用信号をテレビジョン受像機60のTVアンテナ端子61に接続されている受信器40により受信するようにすることで、TVアンテナ端子61へのTV標準試験用信号を供給する配線ケーブルの接続を不要とすることができる。
【0060】
ちなみに、図1のテレビジョン受像機60の性能評価システムにより、実際に、地上波デジタル、BS/CS110°デジタル放送に相当するTV標準試験用信号を送受信した実験結果では、MER(Modulation Error Ratio)の劣化は6〜8dB程度であり、受信時の映像評価には問題のない充分なレベルであった。
【0061】
また、アナログ放送に相当するTV標準試験用信号を送受信した場合でのCN比(Carrier Noise Ratio)の劣化についても、受信時の映像評価には問題のない充分なレベルであった。
【0062】
また、第1実施形態で使用するTV標準試験用信号の伝送帯域幅は、最大2.5GHzまで許容可能であるため、VHF帯から衛星帯までカバーすることが可能である。ただし、本システムでは、送受信に必要なパイロット信号との関係で、海外の衛星帯で2.1GHzを超えて送受信する場合、地上波と衛星波とに別々に偏波をもたせ、同時に送受信することで、TV標準試験用信号の送受信が可能となる。また、同じ帯域の異なった放送方式のTV標準試験用信号も偏波を持たせることにより同時に送受信することが可能である。
【0063】
また、第1実施形態では、TV標準試験用信号が送信器30により無線送信されるため、生産ラインのレイアウト変更時では送信器30の移動のみで、容易に対応することができるとともに、テレビジョン受像機60の搬送方向に対する考慮も不要となり、自由度の高い室内のレイアウト設計が可能となる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、図5を参照し、本発明のテレビジョン受像機の性能評価システムをテレビジョン受像機のTV生産工場での生産ラインに適用した場合の第2実施形態について説明する。
【0065】
ここで、図5は、図1のテレビジョン受像機の性能評価システムの構成を変えた場合を示す図である。なお、以下に説明する図において、図1と共通する部分には同一符号を付し、重複する説明は適宜行うものとする。
【0066】
同図に示すように、第2実施形態では、送信器30がベルトコンベア70の上方、すなわちパレット50上のテレビジョン受像機60の頭上に配置されている。その他の構成は、図1とほぼ同じである。
【0067】
また、第2実施形態での送信器30には、所定の電波放射角度が持たされている。これにより、配線ケーブル41を介してテレビジョン受像機60のTVアンテナ端子61に予め接続されている受信器40との距離を、たとえば2mないし3mから10m程度まで広げることが可能となる。
【0068】
このような構成では、上述の図4で説明したように、TV標準試験信号供給装置10によりTV標準試験用信号が生成されて出力されると、地上波・BS/CS110゜ミキサー13cにより、チャンネルミキサー13a及びチャンネルミキサー13bによってミキシングされたそれぞれのTV標準試験用信号がさらにミキシングされて同軸ケーブル13fに出力される。
【0069】
そして、同軸ケーブル13fに出力されたTV標準試験用信号が、分配器20により同軸ケーブル13gに分配された後、ベルトコンベア70によって搬送されるパレット50上のテレビジョン受像機60の頭上に配置されている送信器30から送信されると、パレット50上に固定されている受信器40により、送信器30から送信されたTV標準試験用信号が受信される。
【0070】
そして、作業員は、上述したように、図示しないリモコンを操作し、テレビジョン受像機60のチャンネルを順次切り替えることで、地上波及び衛星波における性能評価を行うことができる。
【0071】
このように、第2実施形態では、第1実施形態における作用効果に加え、所定の電波放射角度が持たされている送信器30がベルトコンベア70の上方、すなわちパレット50上のテレビジョン受像機60の頭上に配置されているため、送信器30からのTV標準試験用信号が複数の受信器40により受信されることになることから、性能評価の検査工程が複数カ所である場合でも、送信器30の数を必要最小限とすることができるとした作用効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0072】
信号を受信するテレビジョン受像機以外の受信装置の性能評価を行うシステムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のテレビジョン受像機の性能評価システムをテレビジョン受像機のTV生産工場での生産ラインに適用した場合の第1実施形態を説明するための図である。
【図2】図1のTV標準試験信号供給装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図1のテレビジョン受像機の構成の概略を示すブロック図である。
【図4】図1のTV生産工場での生産ラインにおけるテレビジョン受像機のテレビジョン受像機の性能評価方法について説明するためのフローチャートである。
【図5】図1のテレビジョン受像機の性能評価システムの構成を変えた場合の第2実施形態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0074】
10 TV標準試験信号供給装置
11 地上波発生器
11a〜11c 地上波アナログ変調部
11d〜11f 地上波デジタル変調部
12 衛星波発生器
12a〜12c BSデジタル変調部
12d〜12f CS110゜デジタル変調部
13 多重化器
13a,13b チャンネルミキサー
13c 地上波・BS/CS110゜ミキサー
13d,13e ケーブル
13f,13g 同軸ケーブル
20 分配器(又は分岐器)
21 ダミー抵抗
30 送信器
40 受信器
41 配線ケーブル
50 パレット
60 テレビジョン受像機
61,61a,61b TVアンテナ端子
62 アナログチューナ
63 デジタルチューナ
64 アナログ信号処理部
65 デジタル信号処理部
66 映像信号処理部
67 画像表示部
68 スピーカ
69 制御部
69a 受光部
70 ベルトコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定帯域の地上波及び衛星波に相当するTV標準試験用信号を供給するTV標準試験信号供給装置と、
該TV標準試験信号供給装置に接続され、前記TV標準試験用信号を無線送信する送信手段と、
テレビジョン受像機のTVアンテナ端子に接続され、前記送信手段からのTV標準試験信号を受信する受信手段とを備え、
前記テレビジョン受像機側で前記TV標準試験用信号に応じた少なくとも映像の表示状態を確認することにより前記テレビジョン受像機の性能評価が行われる
ことを特徴とするテレビジョン受像機の性能評価システム。
【請求項2】
前記送信手段は、前記性能評価の検査工程に配置され、
前記受信手段は、ベルトコンベアによって搬送される、前記テレビジョン受像機を載置するパレット上に固定され、
前記テレビジョン受像機が前記ベルトコンベアによって前記検査工程まで搬送されると、前記受信手段が前記送信手段と対向して前記TV標準試験用信号を受信する
ことを特徴とする請求項1に記載のテレビジョン受像機の性能評価システム。
【請求項3】
前記送信手段は、前記性能評価の検査工程に配置されるとともに、所定の電波放射角度が持たされており、
前記受信手段は、ベルトコンベアによって搬送される、前記テレビジョン受像機を載置するパレット上に固定され、
前記テレビジョン受像機が前記ベルトコンベアによって前記検査工程まで搬送されると、前記受信手段が前記送信手段からの前記TV標準試験用信号を受信する
ことを特徴とする請求項1に記載のテレビジョン受像機の性能評価システム。
【請求項4】
前記送信手段は、前記ベルトコンベアの上方に配置されることを特徴とする請求項3に記載のテレビジョン受像機の性能評価システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−130336(P2010−130336A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302693(P2008−302693)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(592180339)営電株式会社 (6)
【Fターム(参考)】