説明

テレビ受信装置

【課題】屋内・室内の乱反射環境でも良好で常に安定したテレビ視聴が行えるアンテナ一体型のテレビ受信装置を提供すること。
【解決手段】シャーシ本体に取り付けられた水平方向の偏波を受信する2つ以上の水平偏波用アンテナと、シャーシ本体に取り付けられた垂直方向の偏波を受信する垂直偏波用アンテナと、2つ以上の水平偏波用アンテナと垂直偏波用アンテナが受信した3つ以上の信号を搬送波位相が重なるように位相調整し重み付けを行って合成する合成部と、合成部が合成した信号を復調する復調部を備え、2つ以上の水平偏波用アンテナは互いに指向性放射パターンが補完関係になるように配置されていることにより、垂直偏波および水平偏波、水平面のいずれの方向からの到来波も利用し合成活用することで、受信信号の信号対雑音比を積極的に高めることができ、より良好で安定したテレビ視聴を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋内・室内の乱反射環境にてテレビ放送を受信するテレビ受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日はテレビの視聴スタイルが様々になっている。そのため、屋外にアンテナを設置し、ケーブル敷設工事を行って設けた壁面アンテナ端子に、テレビ受信装置からのケーブルを繋ぎ込む通常の設置形態では、壁面アンテナ端子のある部屋で、しかも壁面アンテナ端子に近い場所にしかテレビ受信装置を設置できず、自由な視聴スタイルに対して強い制約条件となる。つまり屋内・室内にて、どこにでも持ち運べ、好きな所に置いたらすぐに使える、言わばフリースタイルのテレビ受信装置は、極めて魅力的である。
【0003】
従来の壁面アンテナ端子に制約を受けない屋内・室内用テレビ受信装置は、室内に設置したアンテナ、いわゆる室内アンテナで放送波を受信、アンテナ線にてテレビ受信装置に接続し、視聴するのが一般的である。
【0004】
図22において、従来のアンテナの第1の例は、図22(a)にように、アンテナ600の中に8の字型のアンテナ素子610とその背面に反射板620を有しており、小型ではあるが単一方向に指向性を絞り、アンテナ利得を得ることができるアンテナが開示されている(特許文献1)。そして、小型であることを活かして、当該アンテナ600を室内に設置し、ケーブルにてテレビ受信装置に接続、室内にて視聴する形態も開示されている。図22(b)のように、屋内・室内の受信においては、電波の建物への侵入透過損失によって、電界強度が低下して、良好な受信は難しい。そのため、テレビ受信装置650の前側方の近くの窓660から差し込む到来電波を狙って、アンテナ指向性の方向を前方600aないし側方600bの適切な向きに設置することで改善する方法が提案されている。
【0005】
図23において、従来のアンテナの第2の例は、図23(a)のように放物面状に見える構造体710を有し。図23(b)および図23(c)のように放物面状に見える構造体710の背面には、溝720が設けられており、図23(d)に正面図、図23(e)に側面図に示すようなアンテナエレメント730が収められており、通常のダイポールの8の字型の指向特性より側方の指向特性の窪みを軽減し、指向特性を逆に弱めた室内アンテナが開示されている(特許文献2)。指向特性を逆に弱めることで、特定の方向からの到来波に対し、アンテナの置く向きにより、受信状況が極端に悪くならないようにすることができる方法が提案されている。なお、併せて、特許文献2には、上述の変形ダイポールとロッドアンテナ740をスイッチ750で切り替え、置いた場所で受信状態の良好な方を用いる考えも開示されている。
【0006】
図24において、従来のアンテナの第3の例は、図24(a)のようにテレビ受信装置800が表示部810とキーボード820との一体型になっている。そして、図24(b)のようにキーボード820の内部に室内アンテナ821を内蔵している。室内アンテナ821は、テレビ受信装置800の本体に取り付けられている代わりに、室内アンテナ821の給電エレメントの前後にある無給電エレメントに装荷されたバラクタダイオードへの印加電圧を制御することで、アンテナ指向性の方向を適切に制御することができる(特許文献3)。当該方法は、アンテナとテレビ受信装置間のケーブルを省いて一体の構造にできるため、フリースタイルの観点では、機動性が高まって好ましい。
【0007】
図25において、従来のアンテナの第4の例は、図25のように矩形リング状に変形されたダイポール910と、L字型に変形されたモノポールアンテナ920を組み合わせ、良い方のアンテナを切り替え選択する、屋外・車載での移動環境用のダイバーシチアンテナが提案されている(特許文献4)。矩形リング状に変形されたダイポール910は、特許文献2と同様、水平偏波を受信しつつ、通常のダイポールの8の字型と異なり、ほぼ無指向性の指向特性を得ることができる。また、L字型に変形されたモノポールアンテナ920は、水平偏波成分だけでなく、垂直立ち上がり部分で垂直偏波成分も拾うことができる。移動環境では、各アンテナの受信信号レベルが異なる変動をすることを利用するダイバーシチ効果による改善が期待できるが、屋内・室内での半固定受信においては、このようなダイバーシチによる改善効果は期待できないが、特許文献2と同様、置いた場所で受信状態の良好な方を選択的に用いる考えは共通している。
【特許文献1】特開2008−118353号公報
【特許文献2】特許第2675973号公報
【特許文献3】特許第3847301号公報
【特許文献4】特許第3165465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般的に、屋内・室内に設置したアンテナによるテレビ受信においては、放送局方向に開口する窓が近くにある場合を除き、屋内・室内に侵入した電波は壁・天井・床や家具等で多重反射伝搬を経た結果、色々な方向から電波が到来し、しかも、反射によって偏波面が回転するので、特許文献1あるいは3のような前記従来の構成では、利得最大の単方向からの、しかも、特定の偏波面の到来波以外はうまく活かせず、受信状況を改善できないことが多い。一方、特許文献2あるいは4のような前記従来の構成では、エレメントを変形する等により指向性を広げた場合、あるいは、エレメントの変形や傾斜なども加えて垂直偏波・水平偏波の両方を受けられるようにした場合、色々な到来方向や偏波の電波を拾えるが、反面、任意の方向・任意の偏波におけるアンテナ利得は全体に低下してしまうために、結局、受信状況を改善できない。また、特許文献2あるいは4のように、複数のアンテナにおいて、良好な方のアンテナを選択切り替える前記従来の構成においても、半固定の使用スタイルでは、移動の場合とは違って、異なる変動を利用したダイバーシチとしての改善効果も期待できないため、様々な到来方向および偏波に到来波電力が分散している場合は、結局、すべてのアンテナの受信電力を有効に活かせないので、受信状況はあまり改善されない。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、屋内・室内の乱反射環境で、受信アンテナはテレビ受信装置に一体化しており、当該アンテナ付きテレビ受信装置を無造作にどこに置いても、水平偏波成分・垂直偏波成分のいずれの方向からの到来波の電力を効率的に活かし、良好で常に安定したテレビ視聴が行えるテレビ受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明のテレビ受信装置は、所定方向の偏波を送信する放送局からの放送波を屋内室内にて受信するテレビ受信装置であって、シャーシ本体と、シャーシ本体に取り付けられた水平方向の偏波を受信する2つ以上の水平偏波用アンテナと、シャーシ本体に取り付けられた垂直方向の偏波を受信する1つ以上の垂直偏波用アンテナと、2つ以上の水平偏波用アンテナと1つ以上の垂直偏波用アンテナが受信した3つ以上の信号を搬送波位相が重なるように位相調整し重み付けを行って合成する合成部と、合成部が合成した信号を復調する復調部を備え、2つ以上の水平偏波用アンテナは互いに指向性放射パターンが補完関係になるように配置されていることを特徴とする。
【0011】
本構成によって、水平偏波成分および垂直偏波成分のどちらに対しても、水平面のいずれの方向からの到来波も合成活用することで受信信号の信号対雑音比を積極的に高めることができ、より良好で安定したテレビ視聴を行える。
【発明の効果】
【0012】
本発明のテレビ受信装置によれば、屋内・室内の乱反射環境にて、アンテナ付きテレビ受信装置を無造作にどこに置いても、垂直偏波および水平偏波、水平面のいずれの方向からの到来波も利用し合成することで、受信信号の信号対雑音比を積極的に高めることができ、より良好で安定したテレビ視聴を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置のアンテナの構成について説明する。図1は、基本アンテナ構成図である。
【0015】
図1において、図1(a)はテレビ受信装置100の正面からの投影図、図1(b)はテレビ受信装置100の斜め後方からの投影図を示す。テレビ受信装置100は表示部150、支持体103、シャーシ本体102、さらに本実施例では、シャーシ本体102に取り付けられたアンテナ部190として、モノポールアンテナ191、ダイポールアンテナ192、スリーブアンテナ193の3つのアンテナで構成されている。
【0016】
アンテナ部190は、モノポールアンテナ191が水平面に対して鉛直になる配置、ダイポールアンテナ192が水平面に対しての平行な配置、スリーブアンテナ193が水平面に対して平行で、かつ、ダイポールアンテナ192と直交する配置となっており、アンテナ部190はこれら3つのアンテナのエレメントが互いに直交する配置となっている。なお、スリーブアンテナ193は、給電同軸線のλ/4長の中心導体と先端が開放となるλ/4長の同軸外皮導体からなる一種のダイポールアンテナである。
【0017】
次に、本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置のアンテナ指向性放射パターンについて説明する。図2は各アンテナの水平面の指向性放射パターン図、図3は重ね合わせた水平面指向性放射パターン図である。
【0018】
図2において、各々、図2(a)はモノポールアンテナ191の水平面における垂直偏波成分の指向性放射パターン、図2(b)はダイポールアンテナ192の水平面における水平偏波成分の指向性放射パターン、図2(c)はスリーブアンテナ193の水平面における水平偏波成分の指向性放射パターンを示した図である。
【0019】
図3は、図2の各指向性放射パターンを重ね合わせた図である。垂直偏波成分に関しては、点線で示したように、モノポールアンテナ191の円形放射パターンにより、どの方向からの信号も拾いうる。水平偏波成分に関しては、実線で示したように、ダイポールアンテナ192とスリーブアンテナ193の8の字の放射パターンが重なって、どの方向からの信号も拾いうる。
【0020】
最後に、本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置の回路構成について説明する。図4は基本回路構成図、図5は図4の中の最大比合成部の内部構成図である。
【0021】
図4のように、本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置100は、アンテナ部190(モノポールアンテナ191、ダイポールアンテナ192、スリーブアンテナ193)に接続された、低雑音増幅器111〜113、最大比合成部120、復調誤り訂正部130、映像音声復号部140、表示部150、スピーカ部160で構成されている。
【0022】
テレビ受信装置100は、アンテナ部190(191〜193)で受信した各々の信号を、各々低雑音増幅器111〜113で増幅し、最大比合成部120にて合成する。そして、テレビ受信装置100は合成した信号を復調誤り訂正部130にて復調処理および誤り訂正処理が施され受信情報データ列として取り出し、映像音声復号部140にて映像信号および音声信号として表示部150およびスピーカ部160に出力する。
【0023】
表示部150は、液晶表示器やプラズマ表示器等の表示デバイスとそのドライバ回路等で構成されており、受け取った映像信号から受信画像を描画表示する。スピーカ部160は、スピーカとその駆動増幅回路等で構成され、受け取った音声信号から音声を発生させる。なお、低雑音増幅器111〜113は、屋内・室内受信での放送電波の低電界強度環境およびアンテナ一体化に伴う種々の雑音電波混入に対し、アンテナ直下にて、低雑音指数の増幅器で受信電波を増幅することで感度改善を図るため好ましい構成であり、省略してアンテナと直結するものであっても構わない。
【0024】
更に、本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置の基本回路構成の中の最大比合成部120について詳細に説明する。
【0025】
図5のように、最大比合成部120は、フロントエンド部1211〜1213、アナログデジタル(A/D)変換部1221〜1223、パイロット抽出伝送路推定部1251〜1253、位相補正重み付け部1261〜1263、加算合成部127で構成されている。この最大比合成部120は、米国等のデジタルテレビ放送方式であるATSC方式に代表されるシングルキャリア方式の場合の構成の一例を示したものである。
【0026】
以下、ATSC方式の場合を例として動作を簡単に説明する。ATSC方式の場合の変調方式は、8値残留側波帯(VSB)振幅変調方式が用いられる。当該変調方式で変調され、アンテナ部190の各アンテナで受信したテレビ信号は、まず、フロントエンド部1211〜1213にて、目的信号を選局し適当なレベルまで増幅すると同時に低い周波数帯に変換される。そして、A/D変換部1221〜1223にてデジタル信号に変換される。ATSC方式の場合、搬送波信号が高いレベルで残存するので、この信号をパイロット信号として、位相補正重み付け部1261〜1263は各々の出力の位相が重なるように位相調整を行い、加算合成部127にて足し合わせ合成する。
【0027】
この際、パイロット信号である搬送波信号の信号対雑音比も併せてパイロット抽出伝送路推定部1251〜1253で検出し、その値に比例して、位相補正重み付け部1261〜1263は重み付けも併せて行い、加算合成部127にて足し合わせ合成することがより好ましい。
【0028】
なお、この重み付けに際して、信号対雑音比の代わりに、パイロット信号である搬送波信号のレベルを用いたり、あるいは、総信号のレベルを代わりに用いたりしても良い。さらには、ATSC信号は広帯域の信号であるので、マルチパス伝送路で周波数特性が乱れる線形歪を伴うことが多いが、特定の情報パターン等の信号特徴を用いて、伝送路特性の推定をパイロット抽出伝送路推定部1251〜1253では併せて行い、位相補正重み付け部1261〜1263では、上記、位相補正と重み付けと同時に、伝送路推定結果の逆数を掛けてマルチパス伝送路歪を補正して、加算合成部127で足し合わせ合成することが一層好ましい。このような構成処理を行うことで、最大比合成部120では、各々の入力信号をうまく補正調整して加算合成することで、信号対雑音比を積極的に高めた復調用の合成信号を得ることができる。
【0029】
かかる構成によれば、互いに直交するエレメント配置を有する少なくとも3つのアンテナ、すなわち、垂直偏波を受け水平面内無指向性のアンテナと、水平偏波を受け互いの最大利得方向が互いに直交する2つのアンテナと、これらのアンテナでの受信信号を各々の搬送波位相を互いに合わせ適切な重み付けを行う位相補正重み付け部を経て、加算合成部で足し合わせて合成した信号を受信信号として復調を行うことにより、垂直偏波および水平偏波、水平面のいずれの方向からの到来波も利用し合成することで、受信信号の信号対雑音比を積極的に高めることができ、屋内・室内受信において、置いた場所で最大限の受信感度を得て、より良好なテレビ視聴を行うことができる。
【0030】
なお、本実施の形態において、最大比合成部120を米国等のデジタルテレビ放送方式であるATSC方式に代表されるシングルキャリア方式の場合の構成としたが、日本や欧州等のデジタルテレビ放送方式であるISDB−T方式やDVB−T方式に代表される多数の副搬送波を用いた直交周波数多重(OFDM)方式の場合の構成としても良い。
【0031】
その場合は、図6のように、最大比合成部120は、フロントエンド部1211〜1213、アナログデジタル(A/D)変換部1221〜1223、ガードインターバル(GI)除去周波数制御部1231〜1233、高速フーリエ変換(FFT)部1241〜1243、パイロット抽出伝送路推定部1251〜1253、位相補正重み付け部1261〜1263、加算合成部127で構成されている。この最大比合成部120は、日本や欧州等のデジタルテレビ放送方式であるISDB−T方式やDVB−T方式に代表される多数の副搬送波を用いた直交周波数多重(OFDM)方式の場合の構成の一例を示したものである。
【0032】
フロントエンド部1211〜1213、アナログデジタル(A/D)変換部1221〜1223は、図5での説明と同様であるので省略する。デジタル信号になった各々受信信号は、GI除去周波数制御部1231〜1233にて、まず、ガードインターバル信号等を用いて、周波数ずれを補正し、また、適当なシンボルタイミングを検出し、ガードインターバル信号を除去し、FFT部1241〜1243に信号情報を整理調整して入力する。FFT部1241〜1243は、各々受信信号を副搬送波毎に分解して出力する。パイロット抽出伝送路推定部1251〜1253は、シンボル方向および副搬送波方向の両方向に規則的に送信側で予め挿入されたパイロット信号を抽出し、これらから内挿外挿することで、各副搬送波の振幅と位相を求め、同時にマルチパス伝送路での線形歪を受けた伝送路特性の推定を行う。位相補正重み付け部1261〜1263は、伝送路推定結果の逆数を掛けてマルチパス伝送路歪を補正(周波数等化)すると共に、各系統の対応副搬送波間で位相が重なるように位相調整を行い、加算合成部127にて副搬送波毎に足し合わせ合成する。この際、各副搬送波の信号対雑音比の値に比例して、位相補正重み付け部1261〜1263は重み付けも併せて行い、加算合成部127にて足し合わせ合成することがより好ましい。なお、この重み付けに際して、信号対雑音比の代わりに、各副搬送波のレベルを代わりに用いても良い。このような構成処理を行うことで、最大比合成部120では、各々の入力信号を副搬送波毎にうまく補正調整して加算合成することで、信号対雑音比を積極的に高めた復調用の合成信号を得ることができる。
【0033】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2のテレビ受信装置のアンテナ構成図である。併せて、図8は各アンテナの水平面指向性放射パターン図、図9は重ね合わせた水平面指向性放射パターン図、図10は基本回路構成図を示す。
【0034】
図7において、1911および1912はモノポールアンテナであって、実施の形態1の図1と異なっているのは、1本のスリーブアンテナ193の代わりに、可動できる2本のモノポールアンテナ1911および1912を配置したことであり、その他は実施の形態1の図1の説明と同様であるので説明を省略する。
【0035】
図8において、各々、図8(a)はモノポールアンテナ191の水平面における垂直偏波成分の指向性放射パターン、図8(b)はダイポールアンテナ192の水平面における水平偏波成分の指向性放射パターン、図8(c)はモノポールアンテナ1911の水平面における水平偏波成分の指向性放射パターン、図8(d)はモノポールアンテナ1912の水平面における水平偏波成分の指向性放射パターンを示した図である。モノポールアンテナ1911および1912は、水平面に平行性を保ちながら、左右に向きを振ると、図8(c)あるいは図8(d)に示すように、指向性放射パターンは左右に回転する。なお、モノポールアンテナ1911および1912をさらに上下に振った場合は、水平面の指向性放射パターンはほぼそのままに、垂直偏波成分をこれらのアンテナでも拾うことができるようになる。
【0036】
図9は、図8の各指向性放射パターンを重ね合わせて書いたものである。一般にテレビ放送においては、水平偏波にて送信されることが多く、この場合、2本に増やしたモノポールアンテナ1911および1912は、垂直に配置されたモノポールアンテナ191と直交性を保ち、水平面に対して平行に配置されるのが好ましい。ダイポールアンテナ192に対しても直交性を保って2本配置しても良いが、水平偏波成分に関して実線で示したように、モノポールアンテナ1911および1912をダイポールアンテナ192に対して水平面内、直交方向の左右に30°程度振ることで、ダイポールアンテナ192の8の字の放射パターンと合せて、水平偏波成分に関してより万遍無くどの方向からの信号も効率的に拾いうるようにできる。一部の放送局においては、垂直偏波にて送信されることがあるが、この場合、垂直偏波成分に関しては、点線で示したように、モノポールアンテナ191の円形放射パターンに加え、今度は、モノポールアンテナ1911および1912のどちらか片方ないしは両方をダイポールアンテナ192と直交を保ちながら上下に振ることで、垂直偏波成分をこれらのアンテナでも拾うことができ、より垂直偏波成分を拾うようにできる。
【0037】
また、アンテナ部190を構成するアンテナの内の1つ以上のアンテナを可動にすることで、ぎりぎりの受信感度場所において、たまたま受信しづらい場所にテレビ受信装置100を置いたとしても、シャーシ本体102そのものは動かさずして、可動できるアンテナ、すなわち、図7の例では、モノポールアンテナ1911あるいは1912を動かすことで、垂直偏波・水平偏波、指向性放射パターンの各アンテナでの分担を変えて、受信可能状態を探し出せる利点が生まれる。
【0038】
図10は対応する回路構成図を示したものであるが、実施の形態1の図4に比べ、最大比合成部120の前の系統数が増えるだけで、全く同様であるので説明を省略する。最大比合成部120の内部構成図に関しても、実施の形態1の図5あるいは図6の加算合成部127の前の系統数が増えるだけで、全く同様なので、構成図および説明を省略する。なお、アンテナ数、すなわち、系統数は、任意に増やすことができ、アンテナ部190を構成する各アンテナの偏波成分および指向特性のカバー範囲が、適度な重なりを有しつつも、万遍無く分散分担することで、数の増大と共に、より良いテレビ視聴が期待できる。
【0039】
かかる構成によれば、実施の形態1に加えて、本実施の形態においては、アンテナ数を増やし、放送局の水平偏波か垂直偏波かの送信波に合わせて、一部のアンテナを水平あるいは垂直方向に可動にすることで、垂直偏波および水平偏波、水平面のいずれの方向からの到来波もより効率よく利用し合成することで、受信信号の信号対雑音比をさらに高めることができ、屋内・室内受信において、置いた場所で最大限の受信感度を得て、より良好なテレビ視聴を行うことができる。加えて、可動アンテナを動かすことで、本体は好みの場所そのままで動かさずして、垂直偏波・水平偏波、指向性放射パターンの各アンテナでの分担を変えて、ぎりぎりの受信条件場所での受信可能状態を探し出せる利点が生まれる。
【0040】
なお、アンテナ数を直交関係を保ち、かつ、垂直偏波、水平偏波、水平面のいずれの方向もカバーできる最小の3個より増やすことで、冗長を活かして上記利点が生まれるが、可動できるアンテナは、1つ以上すべてまで、また、どのアンテナを可動にしても良い。アンテナの種別もさらに色々な種類のアンテナの適用が可能である。以下、いくつか例と利点を示す。
【0041】
図11において、テレビ受信装置100は、ホイップアンテナ1941および1942を有し、ホイップアンテナ1941および1942はエレメント長を3/4波長等より長くすることで受信性能を高めると共に、柔軟性のある材料を用いることで可動性も実現しやすい。エレメント長を長くしたホイップアンテナ1941および1942のアンテナ放射パターンは上下方向で抑圧される分、水平面での水平偏波の感度が良くなり、さらに、下方向に伸ばされていることより垂直偏波に対しても感度をもっている。
【0042】
図12において、テレビ受信装置100は、スリーブアンテナ1931および1932を有し、スリーブアンテナ1931および1932はモノポールやホイップ等とは異なり、シャーシをグランドとして使用しないので、シャーシ本体102に直接取り付けたアンテナで問題となりやすい、本体回路から種々発生する雑音信号を拾いにくく、より感度の良いテレビ受信装置を実現しやすい利点を生ずる。
【0043】
図13において、テレビ受信装置100は、ダイポールアンテナ1921および1922を有し、ダイポールアンテナ1921および1922はシャーシをグランドとして使用しない平衡型のアンテナを用いることで、シャーシ本体102に直接取り付けたアンテナで問題となりやすい、本体回路から種々発生する雑音信号を拾いにくく、より感度の良いテレビ受信装置を実現しやすい利点を生ずる。図14においては、さらに、ダイポールアンテナ1921および1922を上方、両肩部分に取り付けることで、本体回路から種々発生する雑音信号をより拾いにくく、さらに感度の良いテレビ受信装置を実現しやすい利点を生ずる。
【0044】
図15において、テレビ受信装置100は、V型ダイポールアンテナ1951および1952を有し、V型ダイポールアンテナ1951および1952を変形したV型ダイポールとすることで、ノイズを拾いにくくする利点に加え、指向特性を左右のV型ダイポールアンテナ1951および1952で振り分け、シャーシ本体102の外側方向へ指向性を振ることで、さらに感度の良いテレビ受信装置を実現できる利点を生ずる。
【0045】
図16において、テレビ受信装置100は、円形ループアンテナ1961および1962を有し、円形ループアンテナ1961および1962はシャーシをグランドとして使用しない平衡型のアンテナをより高い位置に設けることで、本体回路から種々発生する雑音信号をより拾いにくく、感度の良いテレビ受信装置を実現しやすい利点を生ずる。
【0046】
図17において、テレビ受信装置100は、矩形ループアンテナ1971および1972を有し、矩形ループアンテナ1971および1972が雑音に強い平衡型アンテナであることに加え、ユーザ使用上および美観上の難点となる、後方および上方への張り出しを少なく抑えることができる利点を生じる。なお、図17のように、給電点を下方に取るより、図18のように、給電点を上方に取ることで、アンテナ端子を互いに近い配置にでき、また、電流分布の腹となる給電点を高い位置にすることでより高い信号対雑音比を得る上で有利となる。矩形ループアンテナは、全長がほぼ波長λの線状エレメントで構成され、矩形ループ面の垂直方向に放射パターンをもち、矩形の長辺方向が上下であるために、上下方向の受信感度が抑圧される分、水平面の水平偏波の感度は良好である。
【0047】
図19において、オフセットダイポール1923は、図15における上部のダイポール192の給電位置を変形した場合で、水平偏波の指向性は通常のダイポールと同じである。また、オフセットダイポール1923の給電位置がモノポール191と大きく離れることで、ダイポールの平行給電線とモノポール191との干渉がなくなり円形の指向性が保たれる。したがって、図18の実施形態ではダイポールアンテナ190の給電位置とモノポールアンテナの給電位置は同一線上である制約があったが、本実施例ではテレビ本体の上部における給電位置の選択に自由度を与えることの利点を生ずる。
【0048】
図20において、モノポールアンテナ1913はシャーシ本体102の上端部に沿って先端を開放とした線状アンテナであり、シャーシ本体102と線状部に発生する垂直偏波を拾うことができ、その指向性は概ね円形である。また、ダイポールアンテナ192との干渉することなく本実施例ではテレビ本体の上部における給電位置の選択に自由度を与えることの利点を生ずる。
【0049】
(実施の形態3)
図21は、本発明の実施の形態3におけるテレビ受信装置のアンテナ構成図である。
【0050】
図21において、テレビ受信装置100は、アンテナ切り替え部170、外部アンテナ接続部180、アンテナケーブル200、室外アンテナ210、室内アンテナ220であり、実施の形態2と異なるのは、アンテナ切り替え部170を設けて、1つの系統(ここではモノポールアンテナ1911)の代わりに、外部アンテナ接続部180を介して、アンテナケーブル200を介して壁面アンテナ端子205に接続され室外アンテナ210に繋がる、あるいは、室内アンテナ220を繋いで使用する。その他は実施の形態1および2にて説明と同様なので省略する。
【0051】
かかる構成によれば、実施の形態1および2に加えて、本実施の形態においては、アンテナ切り替え部を設けて、1つの系統の代わりに、外部アンテナを接続できるようにしたことで、近くに屋外アンテナ端子がある場合や傍に室内アンテナを追加することで、実施の形態1で説明したように、直交配置である3本のアンテナで、垂直・水平偏波、水平面内全周の到来波電力を活かした上に、さらに、追加アンテナの信号を足し合わせて、受信信号の信号対雑音比をさらに高めて、より良好で安定なテレビ視聴を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明にかかるテレビ受信装置は、屋内・室内の乱反射環境にて、アンテナ付きテレビ受信装置を無造作にどこに置いても、垂直偏波および水平偏波、水平面のいずれの方向からの到来波も利用し合成することで、受信信号の信号対雑音比を積極的に高めることができ、より良好で安定したテレビ視聴を行えるので、屋内・室内用でフリースタイルに視聴するテレビ受信装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図2】本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置の各アンテナの水平面指向性放射パターン図
【図3】本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置の重ね合わせた水平面指向性放射パターン図
【図4】本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置の基本回路構成図
【図5】本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置の最大比合成部の内部構成図
【図6】本発明の実施の形態1におけるテレビ受信装置の最大比合成部の内部構成図
【図7】本発明の実施の形態2のテレビ受信装置のアンテナ構成図
【図8】本発明の実施の形態2におけるテレビ受信装置の各アンテナの水平面指向性放射パターン図
【図9】本発明の実施の形態2におけるテレビ受信装置の重ね合わせた水平面指向性放射パターン図
【図10】本発明の実施の形態2におけるテレビ受信装置の基本回路構成図
【図11】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図12】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図13】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図14】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図15】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図16】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図17】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図18】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図19】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図20】本発明の実施の形態2における他のテレビ受信装置の基本アンテナ構成図
【図21】本発明の実施の形態3におけるテレビ受信装置のアンテナ構成図
【図22】従来の第1のアンテナ構成図
【図23】従来の第2のアンテナ構成図
【図24】従来の第3のアンテナ構成図
【図25】従来の第4のアンテナ構成図
【符号の説明】
【0054】
100 テレビ受信装置
102 シャーシ本体
103 支持部
111〜113 低雑音増幅器
120 最大比合成部
1211〜1213 フロントエンド部
1221〜1223 アナログデジタル(A/D)変換部
1231〜1233 ガードインターバル(GI)除去周波数制御部
1241〜1243 高速フーリエ変換(FFT)部
1251〜1253 パイロット抽出伝送路推定部
1261〜1263 位相補正重み付け部
127 加算合成部
130 復調誤り訂正部
140 映像音声復号部
150 表示部
160 スピーカ部
170 アンテナ切替部
180 外部アンテナ接続部
190 アンテナ部
191、1911、1912 モノポールアンテナ
1913 L字型モノポールアンテナ
192、1921、1922 ダイポールアンテナ
1923 オフセットダイポール
193、1931、1932 スリーブアンテナ
1941、1942 ホイップアンテナ
1951、1952 V型ダイポールアンテナ
1961、1962 円形ループアンテナ
1971、1972 矩形ループアンテナ
200 アンテナケーブル
205 壁面アンテナ端子
210 室外アンテナ
220 室内アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の偏波を送信する放送局からの放送波を屋内室内にて受信するテレビ受信装置であって、
前記テレビ受信装置は、
シャーシ本体と、
前記シャーシ本体に取り付けられた水平方向の偏波を受信する2つ以上の水平偏波用アンテナと、
前記シャーシ本体に取り付けられた垂直方向の偏波を受信する1つ以上の垂直偏波用アンテナと、
前記2つ以上の水平偏波用アンテナと前記1つ以上の垂直偏波用アンテナが受信した3つ以上の信号を搬送波位相が重なるように位相調整し重み付けを行って合成する合成部と、
前記合成部が合成した信号を復調する復調部と
を備え、
前記2つ以上の水平偏波用アンテナは互いに指向性放射パターンが補完関係になるように配置されていることを特徴とするテレビ受信装置。
【請求項2】
水平偏波用アンテナは2つで構成され、
垂直偏波用アンテナは1つで構成され、
前記2つの水平偏波用アンテナと前記1つの垂直偏波用アンテナがすべて互いに直交する配置となっていることを特徴とする請求項1に記載のテレビ受信装置。
【請求項3】
2つ以上の水平偏波用アンテナの内の少なくとも1つ以上のアンテナが方向を可動できることを特徴とする請求項1に記載のテレビ受信装置。
【請求項4】
室外アンテナ、或いは、室内アンテナを接続する外部アンテナ接続端子と、
外部アンテナ接続端子とシャーシ本体に取り付けられたアンテナの内のいずれかのアンテナとを切替えるアンテナ切替部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のテレビ受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−94931(P2012−94931A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34955(P2009−34955)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】