説明

テンション調整機構及び媒体搬送装置と記録装置

【課題】ロール状の被搬送媒体を搬送する際のテンションを適切に調整することができるテンション調整機構及びそのテンション調整機構を備えた媒体搬送装置と記録装置を提供すること。
【解決手段】ロール状に巻回された被搬送媒体Rを搬送ローラ141により搬送する際に、前記被搬送媒体と前記搬送ローラとの間に、定慣性と定トルクを発生機構20、30により発生させて前記被搬送媒体のテンションを調整する。これにより、被搬送媒体の残量に関係無く一定の負荷を与えることができると共に、被搬送媒体がバックフィードしても被搬送媒体にテンションが掛かるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回された被搬送媒体を搬送ローラにより搬送する際の被搬送媒体に発生するテンションを調整するテンション調整機構及びそのテンション調整機構を備えた媒体搬送装置と記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の1つであるプリンタには、ロール状に巻回された用紙に記録することができる機能を有するものがある。このようなプリンタは、ロール紙ホルダにセットされたロール紙を紙送りローラにより引き出して搬送し、記録ヘッドにより記録するようになっている。そして、ロール紙ホルダと紙送りローラの間にトルク制御手段を設けて記録精度を高精度に維持するようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−239374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように従来のプリンタでは、ロール紙に働くテンションはトルク制御手段の位置によって決定されるため、バックフィードでロール紙が弛むとロール紙に働くテンションを一定に保つことができなくなる。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ロール状の被搬送媒体を搬送する際のテンションを適切に調整することができるテンション調整機構及びそのテンション調整機構を備えた媒体搬送装置と記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本発明のテンション調整機構では、ロール状に巻回された被搬送媒体を搬送ローラにより搬送する際に、前記被搬送媒体と前記搬送ローラとの間に、定慣性と定トルクを発生させて前記被搬送媒体のテンションを調整することを特徴としている。これにより、被搬送媒体の残量に関係無く一定の負荷を与えることができると共に、被搬送媒体がバックフィードしても被搬送媒体にテンションが掛かるようにすることができる。
【0007】
また、前記定慣性の発生機構は、上下動自在なフリーのローラと当該上下動の範囲内の下死点を有する上下動自在な錘とを有し、前記定トルクの発生機構は、トルクリミッタ付きのローラとその従動ローラとを有することを特徴としている。これにより、定慣性の発生機構と定トルクの発生機構の構成を簡易かつ低コストにて実現することができる。この構成では、前記フリーローラの質量をWf、前記定トルク発生機構のテンションをTt、前記錘の質量をWwとしたとき、Wf<Tt<Wf+Wwとなるようにする。
【0008】
また、前記定慣性及び前記定トルクの発生機構は、上限位置と下限位置の範囲内で上下動自在なフリーのローラを有し、前記被搬送媒体のテンションが最大値となるとき及び最小値となるときが、前記フリーローラが上限位置に位置したとき及び下限位置に位置したときであるように、前記フリーローラと前記搬送ローラとの間に架け渡される前記被搬送媒体と水平線との成す角度及び前記フリーローラの質量を設定することを特徴としている。これにより、定慣性の発生機構と定トルクの発生機構の構成を更に簡易かつ低コストにて実現することができる。
【0009】
上記目的達成のため、本発明の媒体搬送装置では、ロール状に巻回された被搬送媒体を搬送する媒体搬送装置であって、上記各テンション調整機構を備えたことを特徴としている。また、上記目的達成のため、本発明の記録装置では、ロール状に巻回された被記録媒体を搬送しつつ記録する記録装置であって、上記媒体搬送装置を備えたことを特徴としている。これにより、上記各作用効果を奏する媒体搬送装置又は記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成例を正面側から見た斜視図、図3は、それを背面側から見た斜視図、図4は、それの内部構造を示す斜視図である。このインクジェット式プリンタ100は、例えばJIS規格のA0判やJIS規格のB0判といった比較的大型のサイズのカット紙(被搬送媒体、被記録媒体)やそれらの用紙幅を有するロール紙(被搬送媒体、被記録媒体)Rにまで記録できる大型のプリンタである。このインクジェット式プリンタ100は、図1〜図4に示すように、直方体状のプリンタ本体部110と、このプリンタ本体部110を支えるプリンタ脚部120を備えている。
【0012】
プリンタ本体部110は、図1〜図4に示すように、上下2層に分かれており、図3に示すように、背面側の上下層の境界部分にはロール紙収納部130が配設されている。そして、図1〜図4に示すように、上層には本発明の特徴的な部分を含む給排紙部(媒体搬送装置)140と記録部150が配設されている。更に、図1〜図4に示すように、下層の中央には用紙吸引部160が配設され、前面側から見て下層の左側にはインク供給部170が配設され、前面側から見て下層の右側にはヘッド特性回復部180と駆動制御部190が上下に配設されている。そして、図1〜図4に示すように、駆動制御部190の下方であってプリンタ脚部120の脇には、廃インク回収部200が配設されている。
【0013】
プリンタ本体部110は、図1〜図3に示すように、給排紙部140と記録部150を覆うプラスチックあるいは板金でなる上部ハウジング111と、用紙吸引部160とインク供給部170とヘッド特性回復部180と駆動制御部190を覆うプラスチックあるいは板金でなる下部ハウジング112を備えている。そして、上部ハウジング111は、図2に示すように、中央前面から中央上面にかけて開放可能なようにプラスチックあるいは板金でなる本体カバー113が配設されている。また、下部ハウジング112は、図2に示すように、インク供給部170の前面が開放可能なようにプラスチックあるいは板金でなるインクカバー114が配設されている。
【0014】
本体カバー113は、図1及び図2に示すように、後部が上部ハウジング111に対して回動可能に支持されており、ユーザが前面に形成されている凹んだ指掛け部113aに指を入れて押し上げ、あるいは押し下げることにより開閉するようになっている。ユーザは、本体カバー113を開けることにより給排紙部140及び記録部150の上方を大きく開放することができるので、記録ヘッド152やキャリッジ153等のメンテナンス作業及び記録中や搬送中における紙ジャム等の用紙搬送エラーの解除作業等を容易に行うことができる。更に、本体カバー113は、図1及び図3に示すように、上面の一部に透明もしくは半透明のプラスチックでなる窓113bが設けられている。ユーザは、本体カバー113を開けなくても窓113bから内部を覗くことにより、記録状態や搬送状態を視認することができる。
【0015】
インクカバー114は、図1及び図2に示すように、両側部が下部ハウジング112に対してスライド可能に支持されており、ユーザが前面に形成されている凹んだ指掛け部114aに指を入れて押し上げ、あるいは押し下げることにより開閉するようになっている。ユーザは、インクカバー114を開けることによりインク供給部170の前面を大きく開放することができるので、インクカートリッジ10の交換作業等を容易に行うことができる。更に、インクカバー114は、図1及び図2に示すように、前面の一部に透明もしくは半透明のプラスチックでなる窓114bが設けられている。ユーザは、インクカバー114を開けなくても窓114bから内部を覗くことにより、インクカートリッジ10の状態を視認することができる。
【0016】
更に、プリンタ本体部110は、図1〜図3に示すように、前面側から見て右側の上層の上面には、ユーザが記録制御等を操作するための操作パネル115が配設されている。この操作パネル115は、液晶画面と各種ボタンが配設されており、ユーザが液晶画面を見て確認しながらボタン操作できるようになっている。ユーザは、視認による確実な操作を行うことができるので、動作エラーや動作ミス等を無くすことができる。
【0017】
プリンタ脚部120は、図1〜図4に示すように、逆T字形の2本の支持柱121と、これらの支持柱121間に架け渡された補強柱122を備えている。そして、支持柱121の上部にプリンタ本体部110が載置されネジ止め固定されるようになっている。プリンタ脚部120によりプリンタ本体部110が持ち上げられた状態におかれるため、ユーザは給排紙処理や各種メンテナンス処理等を楽に行うことが可能になる。更に、プリンタ脚部120の空間に排紙受け部を設置することが可能となり、記録済みの用紙を効率良く回収することができるとともに、記録済みの用紙の汚染等を防止することができる。
【0018】
ロール紙収納部130は、図3に示すように、ロール紙Rの内周部に貫装されてロール紙Rを支持するスピンドル131と、このスピンドル131の両端を回動自在に軸支持する図示しない軸受を備えている。用紙吸引部160の背面は、その両側のインク供給部170の背面とヘッド特性回復部180及び駆動制御部190の背面よりも凹んで形成されており、この凹み部を利用してロール紙収納部130が配設されている。即ち、インク供給部170とヘッド特性回復部180及び駆動制御部190の対向側面には、スピンドル131を主走査方向に向けてその両端を回動自在に軸支持する図示しない軸受が内蔵されている。そして、これらの軸受間にロール紙Rの内周部を貫装しているスピンドル131を架け渡すことにより、ロール紙Rをプリンタ本体部110の背面側から突出させずにセッティングすることができる。
【0019】
給排紙部140は、図4に示すように、紙送りローラ(搬送ローラ)141とその紙送り従動ローラ142及び本発明の特徴的な部分であるテンション調整機構149(図5参照)を備えている。紙送りローラ141とその紙送り従動ローラ142は、ロール紙収納部130から直の給紙下流側、即ちプリンタ本体部110内の後部側において、軸が主走査方向を向いて周面が上下に対向するように配置されている。紙送りローラ141は、1本の長尺のローラとして形成されており、記録可能な最大用紙幅より若干大きい周面部分にはセラミック粉等がコーティングされている。これにより、紙送りの際の滑りを防止することができるので、用紙を高精度に送り出すことができる。この紙送りローラ141は、両端がサイドフレーム116に図示しない軸受を介して軸支持されており、紙送りモータ143からプーリ144及びベルト145を介して伝達される駆動力により正逆回転駆動するようになっている。
【0020】
紙送り従動ローラ142は、複数個の短尺のローラとして形成されており、紙送りローラ141の上方で軸方向に複数並設された従動ローラ支持部材146に回動自在に軸支持されている。この紙送り従動ローラ142は、従動ローラ支持部材146に取り付けられている図示しないバネ等の付勢部材により紙送りローラ141に押圧されており、紙送りローラ141の正逆回転駆動に追従して正逆回転するようになっている。これにより、用紙を両面からしっかりと押さえ込んで送り出すことができるので、高精度な記録を行うことができる。そして、紙送りローラ141とその紙送り従動ローラ142は、図3に示すプリンタ本体部110の上下層間に形成されている給紙口147から給紙されるロール紙Rやカット紙を挟持して、図2及び図4に示す記録部150のプラテン151上に向けて送り出し、図1に示すプリンタ本体部110の上下層間に形成されている排紙口148から排紙するようになっている。
【0021】
記録部150は、図2及び図4に示すように、紙送りローラ141から直の搬送下流側に配設されたプラテン151と、記録ヘッド152を搭載したキャリッジ153と、キャリッジ153に装着されたカッタ154を備えている。更に、記録部150は、記録ヘッド152と記録を実行するための駆動制御部190とを電気的に接続する図示しないフレキシブルフラットケーブル(以下、FFCという)、記録ヘッド151とインクが入ったインクカートリッジ10とを繋ぐ図示しないインクチューブ等を備えている。
【0022】
プラテン151は、記録可能な最大用紙幅より若干大きい長さの矩形平板状に形成されて紙送りローラ141に沿って配設されている。このプラテン151は、表面から裏面にかけては用紙吸引部160に繋がる図示しない複数の孔が穿設され、表面には吸湿によって生じる用紙のコックリング等を吸収する図示しない複数の凹凸部が形成されている。これにより、記録中の用紙を略平面状に保持することができるので、高精度な記録を行うことができる。更に、プラテン151の表面には、主走査方向に延びるカッタ溝151aが形成されている。このカッタ溝151aは、カッタ154がロール紙Rを幅方向にカッティングする際にプラテン151の表面を傷付けないように、ロール紙Rの下面から突出したカッタ154の刃先が入り込むことができる大きさに形成されている。これにより、ロール紙Rの記録部分と未記録部分とを確実に切り離すことができる。
【0023】
記録ヘッド152は、キャリッジ153の下部においてプラテン151の上面に供給されるカット紙やロール紙Rと所定間隔を空けて対向するように配設されており、2種類のブラックインクを吐出するブラックインク用記録ヘッドと、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー等の各色のインクを吐出する複数のカラーインク用記録ヘッドとを備えている。そして、記録ヘッド152は、圧力発生室とそれに繋がるノズル開口が設けられており、圧力発生室内にインクを貯留して所定圧で加圧することにより、ノズル開口からプラテン151の上面に供給されるカット紙やロール紙Rに向けてコントロールされた大きさのインク滴を吐出するようになっている。
【0024】
キャリッジ153は、主走査方向に設けられているキャリッジガイド軸155に図示しないベアリングを介して載置され、ベルト156に結合されている。そして、キャリッジ153は、図示しない移動手段を構成するキャリッジモータによって移動手段を構成するプーリ157が回転して移動手段を構成するベルト156が回動すると、ベルト156の動きに連行され、キャリッジガイド軸155に案内されて主走査方向に往復移動するようになっている。これにより、キャリッジ153を高精度に移動させることができるので、高精度な記録を行うことができる。
【0025】
カッタ154は、刃先が下方を向くようにして、上下方向に昇降可能であって主走査方向に移動可能に配設されている。このカッタ154は、例えばソレノイド等により上下方向に昇降され、キャリッジ153とともに主走査方向に移動されるようになっている。従って、カッタ154を移動させるための手段を別途設ける必要は無いので、省スペースを図ることができるとともに、コストを抑えることができる。尚、カッタ154をキャリッジ153から分離して独自のベルト機構やモータ等により主走査方向に移動するように構成しても良い。
【0026】
FFCは、一端が駆動制御部190のコネクタに接続され、他端が記録ヘッド152のコネクタに接続されており、記録信号を駆動制御部190から記録ヘッド152に送るようになっている。インクチューブは、上記各色のインク用が配設されており、図示しないインク加圧供給手段を介して各一端が対応する各色のインクカートリッジ10に繋がれ、各他端が対応する各色の記録ヘッド152に繋がれている。そして、インクチューブは、インク加圧供給手段によって加圧された各色のインクをインクカートリッジ10から記録ヘッド152に送るようになっている。
【0027】
用紙吸引部160は、図4に示すように、プラテン151の下部に配設された圧力室161と、圧力室161の下部に配設された図示しないファンを備えている。圧力室161は、上面と底面の一部が開放された箱状に形成されており、上面の開放部にプラテン151が取り付けられ、底面の開放部にファンが取り付けられている。ファンを回転させることにより、プラテン151に穿設されている孔から圧力室161内に吸気され、ファンを通って外部に排気される。従って、プラテン151の上面にカット紙やロール紙Rが供給されると、カット紙やロール紙Rの下面側に負圧が発生するので、カット紙やロール紙Rをプラテン151の上面に吸着させてカット紙やロール紙Rの浮き上がりを防止することができ、記録精度を高精度に維持することができる。
【0028】
インク供給部170は、図4に示すように、箱状のカートリッジ収納部171と、カートリッジ収納部171の前面側に取り付けられたカートリッジ押さえ部172を備えている。カートリッジ収納部171は、図示左側から順に2種類のブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエローの計8色のインクカートリッジ10が前面側から個々に引き出し、押し入れ可能なように仕切られている。カートリッジ押さえ部172は、カートリッジ収納部171の各仕切り部毎に開閉自在に取り付けられており、閉動作に連動して仕切り部内のインクカートリッジ10を押さえ込み、開動作に連動して仕切り部内のインクカートリッジ10を飛び出させるようになっている。
【0029】
ここで、インクカートリッジ10は、例えば硬質プラスチック材料で直方体状に形成された外装ケース内に、例えば可撓性材料で袋状に形成されて内部にインクが充填されたインクタンクが密閉されている。そして、カートリッジ収納部171への挿入側の面には、インクタンクに繋がるインク供給口と、カートリッジ収納部171での位置決め穴が形成されている。一方、カートリッジ収納部171の内側後面には、インクカートリッジ10のインク供給口内に挿入されるインク供給針と、インクカートリッジ10の位置決め穴内に挿入される位置決め針が、インクカートリッジ10の引き出し、押し入れ方向に突き出るように配設されている。
【0030】
従って、カートリッジ収納部171内に収納されたインクカートリッジ10は、カートリッジ押さえ部172が閉じられると、自動的に位置決め針が位置決め穴内に侵入して位置決めされると同時に、自動的にインク供給針がインク供給口内に侵入して記録ヘッド152へのインク供給が可能となる。また、カートリッジ押さえ部172が開かれると、自動的に位置決め針が位置決め穴から抜き出されると同時に、自動的にインク供給針がインク供給口から抜き出される。
【0031】
ヘッド特性回復部180は、図4に示すホームポジションに位置したキャリッジ153の下方に配設されており、ワイピング手段とキャッピング手段及び吸引手段とこれらの駆動手段を備えている。ワイピング手段は、ゴム、フェルトあるいはプラスチック等により略矩形平板状に形成されたワイパーを備えており、記録ヘッド152のノズル形成面に対して擦れてノズル形成面に付着しているインクを払拭するようになっている。キャッピング手段は、ゴムにより略直方体状に形成されたキャップを備えており、上部に設けられている窪みが記録ヘッド152のノズル形成面に押し付けられてノズル開口を封止するようになっている。吸引手段は、ノズル開口の目詰まりや混入した気泡を除去するためにインクを強制的に吸引排出するようになっている。従って、キャリッジ153がホームポジションに位置している状態のときに記録ヘッド152のインク吐出特性を一定な状態に維持する処理を行うことができる。
【0032】
廃インク回収部200は、着脱自在な廃液カートリッジ201を備えている。廃液カートリッジ201は、記録ヘッド152に至るインク供給系に初期充填する際に使用されるインク、あるいは記録ヘッド152に至るインク供給系を洗浄する際に使用される洗浄液等の廃液を貯留するようになっている。これにより、廃液カートリッジ201を交換するのみで廃液の処理を完了することができるので、作業工数を低減させることができるとともに、プリンタ周辺部の汚染を防止することができる。
【0033】
図5は、上記テンション調整機構149の詳細を示す側面図である。このテンション調整機構149は、ロール紙収納部130から給排紙部140に至るロール紙Rの搬送経路中、即ちスピンドル131に軸支持されたロール紙Rと紙送りローラ141の間に配設されており、定慣性の発生機構20と定トルクの発生機構30を備えている。定慣性の発生機構20は、定トルクの発生機構30の搬送方向下流側に配設されている。
【0034】
定慣性の発生機構20は、上下動自在なフリーのローラ21と、当該上下動の範囲内の下死点Pdを有する上下動自在な錘22と、紙姿勢ローラ23を有している。フリーローラ21は、下部周面にロール紙Rが巻き付けられてロール紙Rで支持されており、ロール紙Rの搬送・逆搬送により上下動するようになっている。錘22は、フリーローラ21の上方であって上下動の範囲内に設定された下死点Pdに配設されており、フリーローラ21と下死点Pdで一体となって上下動するようになっている。紙姿勢ローラ23は、フリーローラ21の上方であってロール紙Rの搬送方向下流側に、ロール紙Rが略水平となるように紙送りローラ141と平行に回転自在に軸支持されている。
【0035】
定トルクの発生機構30は、トルクリミッタ付きのローラ31とその従動ローラ32とを有している。トルクリミッタ付きローラ31は、フリーローラ21の上方であってロール紙Rの搬送方向上流側に、ロール紙Rが略水平となるようにスピンドル131に軸支持されたロール紙Rと平行に軸支持されている。従動ローラ32は、トルクリミッタ付きローラ31とロール紙Rを挟持可能なようにトルクリミッタ付きローラ31の上部で平行に回転自在に軸支持されている。
【0036】
このような構成のテンション調整機構149を設けることにより、スピンドル131に軸支持されたロール紙Rは、トルクリミッタ付きのローラ31と従動ローラ32の間を通って略直角下方に曲げられ、錘22の図示右側を通ってフリーローラ21の下部周面でUターンし、錘22の図示左側を通って紙姿勢ローラ23の上部周面で略水平に曲げられ、紙送りローラ141と紙送り従動ローラ142の間を通ることになる。この構成では、フリーローラ21の質量をWf、トルクリミッタ付きローラ31のリミットトルク(定トルク発生機構30のテンション)をTt、錘22の質量をWwとしたとき、Wf<Tt<Wf+Wwとなるように設定する。次に、ロール紙Rのバックフィード時、定速送り時、加速度発生時におけるテンション調整機構149の作用について図5(A)、(B)、(C)を参照して順に説明する。
【0037】
図5(A)に示すように、フリーローラ21によりロール紙Rに掛かるテンションWf/2は、トルクリミッタ付きローラ31のリミットトルクTtよりも小さいので、トルクリミッタ付きローラ31は回転しない。従って、紙送りローラ141と紙送り従動ローラ142が回転してロール紙Rを搬送すると、フリーローラ21が上昇する。このときのロール紙Rに掛かるテンションは、Wf/2となる。
【0038】
図5(B)に示すように、フリーローラ21が上昇して錘22と接すると、フリーローラ21と錘22は一体となって上昇する。このとき、フリーローラ21と錘22によりロール紙Rに掛かるテンション(Wf+Ww)/2は、トルクリミッタ付きローラ31のリミットトルクTtよりも大きいので、トルクリミッタ付きローラ31が回転してロール紙Rを搬送する。このときのロール紙Rに掛かるテンションは、Ttとなる。
【0039】
図5(C)に示すように、紙送り加速度が発生していると、ロール紙Rのイナーシャによりロール紙Rに掛かるテンションはトルクリミッタ付きローラ31のリミットトルクTtよりも大きくなる。ここで、ロール紙Rのイナーシャが大きく変化しないと仮定すると、フリーローラ21と錘22が一体で上昇する。紙送り加速度をαとすると、このときのロール紙Rに掛かるテンションは、(1+α)×(Wf+Ww)となる。但し、実際はロール紙Rもある程度回転するために、ロール紙Rに掛かるテンションは、(1+α)×(Wf+Ww)よりは小さくなる。
【0040】
このように、テンション調整機構149によれば、特別な制御を行わなくても、ロール紙Rに掛かるテンションの変動を抑制して適切にすることができる。更に、ロール紙Rの滑り変動を小さくすることができ、紙送り精度を向上させることができる。従って、記録精度を常に高精度に維持することができる。
【0041】
図6は、上記テンション調整機構149の別例の詳細を示す側面図である。このテンション調整機構149は、ロール紙収納部130から給排紙部140に至るロール紙Rの搬送経路中、即ちスピンドル131に軸支持されたロール紙Rと紙送りローラ141の間に配設されており、定慣性/定トルクの発生機構40を備えている。尚、スピンドル131は、後方に平行に配設されベルト133掛けされたロール紙駆動モータ132により駆動されるようになっている。
【0042】
定慣性/定トルク発生機構40は、上下動自在なフリーのローラ41と、当該上下動の範囲を規制する上限ストッパ42及び下限ストッパ43と、紙姿勢ローラ44、45を有している。フリーローラ41は、下部周面にロール紙Rが巻き付けられてロール紙Rで支持されており、ロール紙Rの搬送・逆搬送により上下動するようになっている。上限ストッパ42及び下限ストッパ43は、フリーローラ41の上方及び下方であって上限位置Pmax及び下限位置Pminにそれぞれ配設されており、フリーローラ41を上限位置Pmax及び下限位置Pminでそれぞれ停止させるようになっている。紙姿勢ローラ44、45は、フリーローラ41の上方であってロール紙Rの搬送方向上流側及び搬送方向下流側に、ロール紙Rが略水平となるようにスピンドル131及び紙送りローラ141とそれぞれ平行に回転自在に軸支持されている。
【0043】
このような構成のテンション調整機構149を設けることにより、スピンドル131に軸支持されたロール紙Rは、紙姿勢ローラ44の上部周面を通って斜め下方に曲げられ、フリーローラ41の下部周面を通って仰角θで斜め上方に曲げられ、紙姿勢ローラ45の上部周面で略水平に曲げられ、紙送りローラ141と紙送り従動ローラ142の間を通ることになる。この構成では、フリーローラ41の質量をWff、フリーローラ41の上昇加速度をa、重力加速度をgとすると、ロール紙Rに掛かるテンションは、Wff(a+g)/(2sinθ)で表される。従って、フリーローラ41が上限位置Pmaxに位置したときにロール紙Rに掛かるテンションと下限位置Pminに位置したときにロール紙Rに掛かるテンションが適切な値となるように、ロール紙Rの仰角θを設定する。これにより、特別な制御を行わなくても、ロール紙Rに掛かるテンションの変動を抑制して適切にすることができる。更に、ロール紙Rの滑り変動を小さくすることができ、紙送り精度を向上させることができる。従って、記録精度を常に高精度に維持することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態のテンション調整機構149によれば、スピンドル131に軸支持されたロール紙Rと紙送りローラ141の間に、定慣性と定トルクを発生させてロール紙Rのテンションを調整するようにしているので、ロール紙Rの残量に関係無く一定の負荷を与えることができると共に、ロール紙Rがバックフィードしてもロール紙Rにテンションが掛かるようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
媒体搬送装置を備えた記録装置であれば、例えばファクシミリ装置、コピー装置等であっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成例を正面側から見た第1の斜視図である。
【図2】図1のプリンタの外観構成例を正面側から見た第2の斜視図である。
【図3】図1のプリンタを背面側から見た斜視図である。
【図4】図1のプリンタの内部構造を示す斜視図である。
【図5】図1のプリンタのテンション調整機構の詳細を示す側面図である。
【図6】図1のプリンタのテンション調整機構の別例の詳細を示す側面図である。
【符号の説明】
【0047】
20 定慣性発生機構、21 フリーローラ、22 錘、23 紙姿勢ローラ、30 定トルク発生機構、31 トルクリミッタ付きローラ、32 従動ローラ、40 定慣性/定トルク発生機構、41 フリーローラ、42 上限ストッパ、43 下限ストッパ、44、45 紙姿勢ローラ、100 インクジェット式プリンタ、110 プリンタ本体部、120 プリンタ脚部、130 ロール紙収納部、140 給排紙部、141 紙送りローラ、142 紙送り従動ローラ、150 記録部、160 用紙吸引部、170 インク供給部、180 ヘッド特性回復部、190 駆動制御部、200 廃インク回収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された被搬送媒体を搬送ローラにより搬送する際に、前記被搬送媒体と前記搬送ローラとの間に、定慣性と定トルクを発生させて前記被搬送媒体のテンションを調整することを特徴とするテンション調整機構。
【請求項2】
前記定慣性の発生機構は、上下動自在なフリーのローラと当該上下動の範囲内の下死点を有する上下動自在な錘とを有し、前記定トルクの発生機構は、トルクリミッタ付きのローラとその従動ローラとを有することを特徴とする請求項1に記載のテンション調整機構。
【請求項3】
前記フリーローラの質量をWf、前記定トルク発生機構のテンションをTt、前記錘の質量をWwとしたとき、Wf<Tt<Wf+Wwとなるように構成することを特徴とする請求項2に記載のテンション調整機構。
【請求項4】
前記定慣性及び前記定トルクの発生機構は、上限位置と下限位置の範囲内で上下動自在なフリーのローラを有し、前記被搬送媒体のテンションが最大値となるとき及び最小値となるときが、前記フリーローラが上限位置に位置したとき及び下限位置に位置したときであるように、前記フリーローラと前記搬送ローラとの間に架け渡される前記被搬送媒体と水平線との成す角度及び前記フリーローラの質量を設定することを特徴とする請求項1に記載のテンション調整機構。
【請求項5】
ロール状に巻回された被搬送媒体を搬送する媒体搬送装置であって、
請求項1〜4の何れか一項に記載のテンション調整機構を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
ロール状に巻回された被記録媒体を搬送しつつ記録する記録装置であって、
請求項5に記載の媒体搬送装置を備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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