説明

テーブルロールの清掃装置および清掃方法

【課題】熱間圧延の操業を停止せずに清掃可能なテーブルロールの清掃装置および清掃方法を提供する。
【解決手段】圧延ロール2の前後で素材Aの移送方向に沿って複数のローラ5を並べてなるテーブルロール5Aを清掃する装置であって、前記ローラの表面を擦過する擦過部21と、前記ローラ5の前記表面を払拭する払拭部22と、前記擦過部21および前記払拭部22を、前記テーブルロール5A上で前記ローラ5の回転方向とは逆の方向に移動させる移動手段23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する複数のローラを有するテーブルロールによって素材を移送しながら圧延を行う圧延装置を清掃する清掃装置および清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚さ300〜650mm程度のアルミニウム等の鋳塊(スラブ)から板状の圧延材を製造する場合、まず粗圧延として、可逆式圧延機を用いて再結晶温度以上の例えば400〜550℃の温度で厚さ数十mmとなるまで熱間圧延し、さらに仕上げ圧延機で20mm以下まで圧延し、円筒状に巻き取ってコイルとしている。
【0003】
その可逆式圧延機による熱間圧延は、圧延ロールを介してその前後間で素材を往復走行させるように両圧延ロール間に複数回通過させながら、圧延ロール間のギャップを徐々に減少させることにより、その厚さを薄くしていく方法である。素材は、その走行方向に並ぶ複数のローラからなるテーブルロール上に載置され、このローラの回転によって往復走行する。
【0004】
このような熱間圧延では、素材の表面の酸化物が圧延ロール、テーブルロールや素材に付着・蓄積するなどにより、圧延材の表面品質が悪化するという問題がある。このため、テーブルロールに潤滑油を供給したり、特許文献1に記載の技術のように小径のローラで素材の両端を支持してテーブルロールから浮かせるなどにより、テーブルロールによる表面品質の低下を防止している。
【特許文献1】特開平6−246324公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸化物等の発生自体を防止することはできないので、テーブルロールを清掃して、付着した異物を除去する必要がある。したがって、圧延装置の定期的なメンテナンスの際にはテーブルロールの清掃も行われるが、このような圧延装置全体のメンテナンスとは別にテーブルロールを清掃しなければならない場合も生じうる。熱間圧延の操業は停止すると生産効率が低下してしまうので、停止時間を短縮してテーブルロールを清掃することが求められる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、熱間圧延の操業停止時間を短縮可能なテーブルロールの清掃装置および清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るテーブルロールの清掃装置は、圧延ロールの前後で素材の移送方向に沿って複数のローラを並べてなるテーブルロールを清掃する装置であって、前記ローラの表面を擦過する擦過部と、前記ローラの前記表面を払拭する払拭部と、前記擦過部および前記払拭部を、前記テーブルロール上で前記ローラの回転方向とは逆の方向に移動させる移動手段とを有する。
また、本発明に係るテーブルロールの清掃方法は、圧延ロールの前後で素材の移送方向に沿って複数のローラを並べてなるテーブルロールを清掃する方法であって、前記テーブルロール上に、前記ローラを擦過する擦過部と、前記ローラを払拭する払拭部とを配置して、これら擦過部および払拭部を前記ローラの回転方向とは逆の方向に移動させることにより、回転する前記ローラの表面を前記擦過部によってその回転とは逆方向に擦過するとともに、擦過された前記ローラの表面を前記払拭部によって払拭する。
この発明によれば、ローラの回転とは逆方向に擦過部および払拭部を移動させることにより、ローラの周面全体を容易に効率よく清掃できる。この場合、テーブルロール上に擦過部と払拭部とを載せて移動するという簡単な作業であるので、これら擦過部と払拭部とを待機させておいて、テーブルロール上の素材を移送した直後等に清掃を実施することができる。
【0008】
また、このテーブルロールの清掃装置において、前記擦過部と払拭部とが一体に前記移動手段によって移動され、この移動方向における前記擦過部の後方に前記払拭部が配置されることが好ましい。この場合、ローラの回転に反して擦過部を移動させ、擦過部により擦過されたローラを払拭部で払拭するので、ローラ表面から除去した付着物をすぐに拭い取ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るテーブルロールの清掃装置および清掃方法によれば、ローラを回転させたままテーブルロールを清掃するので、圧延装置の操業停止時間を短縮して、圧延材の表面品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るテーブルロールの清掃装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1に、圧延材の製造装置を示す。圧延機1は、上下に一対の圧延ロール2を備えるとともに、これら圧延ロール2が回転駆動モーター3によりそれぞれ正逆両方向に駆動されるようになっており、また、両圧延ロール2の背部には大径のバックアップロール4がそれぞれ接触した、いわゆる4段圧延機を構成している。この圧延機1の前後に、素材Aを搬送する複数のローラ5を有するテーブルロール5A,5Bがそれぞれ設けられている。なお、テーブルロール5Aは図において圧延ロール2の左方、テーブルロール5Bは図において圧延ロールの右方に配置されている。
【0011】
上側のバックアップロール4には、これを押圧する圧下用スクリュー6、及びこの圧下用スクリュー6を移動させて圧延ロール2間の距離を設定する位置制御モーター7等からなる圧下手段8が設けられている。また、下側のバックアップロール4には、圧延ロール2から素材Aへの圧延荷重を検出するロードセル等の圧延荷重検出手段9が設けられている。
両圧延ロール2の近傍には、クーラント(圧延油)を供給するクーラント吐出手段10が設けられている。
圧延ロール2の回転駆動モーター3にはロール回転検出器11が備えられるとともに、圧下用スクリュー6の位置制御モーター7にはロールギャップ位置検出器12、テーブルロール5A,5Bのローラ駆動モーター13にはローラ回転検出器14がそれぞれ備えられている。
【0012】
各パス毎の圧延ロール2の間隔や圧延ロール2の回転方向及び回転速度、圧延荷重、テーブルロール5A,5Bの搬送速度等の目標値は、パススケジュールとしてあらかじめ設定されている。この目標値に基づき、位置制御モーター7、圧延ロール2の回転駆動モーター3、圧下用スクリュー6、テーブルロール5A,5Bのローラ駆動モーター13等が、圧延速度及びロールギャップ値等の出力値のフィードバックに応じて制御される。
なお、図1中、符号17はストリッパーガイドを示しており、圧延ロール2の前後に設けられる。
【0013】
次に、このように構成した製造装置によりアルミニウムの鋳塊から圧延材を製造する方法について説明する。
アルミニウムの鋳塊は、例えば300〜650mmの厚さを有しており、これを加熱炉(図示略)を経由して、再結晶温度以上の例えば400〜550℃の温度で圧延機1に送り込む。そして、この圧延機1では、設定されたパススケジュールにしたがって圧延ロール2間のギャップを徐々に減少させながら両圧延ロール2間に鋳塊を複数回通過させて圧延する。最初の段階では、1パス毎に約5〜60mm程度厚さを減少させるように圧延ロール2間のギャップを制御することが行われる。
【0014】
圧延においては、まず、圧延ロール2間を当該圧延パスのロールギャップに設定して、その圧延ロール2間に素材Aを送り込む。素材Aが圧延ロール2間に噛み込まれると、圧延が開始される。素材Aが圧延ロール2間から抜け出したら、パススケジュールに従い、圧延ロール2及びテーブルロール5A,5Bを逆転させて圧延ロール2への送り方向を変えて、次の圧延パスが実行される。
そして、最後の圧延パスにおいては、図1に示すように、素材Aを圧延ロール2間からそのまま前進させて巻き取りコイル20に巻き取らせる(巻き取りパス)。この巻き取りパスにおいて、テーブルロール5Aの清掃を行う。
【0015】
テーブルロール5Aを清掃する清掃装置Bは、ローラ5の表面を擦過する擦過部21と、ローラ5の表面を払拭する払拭部22と、擦過部21および払拭部22をローラ5の回転方向とは逆の方向に移動させる移動手段23とを備える。これら擦過部21と払拭部22とは、連結手段24によって互いに連結されている。
【0016】
擦過部21と払拭部22とは、素材の移送方向に直交する幅寸法がローラ5の長さとほぼ同等であり(図7参照)、素材の移送方向に沿う長さ寸法が複数本のローラ5にまたがって載置可能な大きさを有する舟形であり、テーブルロール5Aの各ローラ5との間に適度な摩擦力が生じる程度の適度な重量を有している。そして、擦過部21の下面にはサンドペーパー21aが貼付され、払拭部22の下面にはネル布22aが貼付されている。
【0017】
移動手段23は、たとえば、擦過部21に連結されたワイヤ23aと、このワイヤ23aを巻き取るウィンチ23bとにより構成することができる。また、連結手段24としては、たとえば、棒状の部材やワイヤ等を用いることができる。このような連結手段24によって連結された擦過部21と払拭部22とを、移動手段23のワイヤ23aに連結してけん引することにより、テーブルロール5A上で一体に移動することができる。
【0018】
ここで、この清掃装置Bを用いてテーブルロール5Aを清掃する方法について説明する。
まず、圧延パスが繰り返されている間は、図2に示すように、擦過部21および払拭部22は、テーブルロール5Aの上方に配置された保持板25上に載置し、テーブルロール5A上から退避させておく。この保持板25は、自在に回転するアイドラーロールで構成されており、擦過部21および払拭部22が圧延方向に沿って自由に移動可能となっている。そして、図2に示すように、巻き取りパスが開始されて素材Aが圧延ロール2の右方に移動を始め、図3に示すように素材Aの後端が保持板25の前端よりも前方に移動したら、保持板25を傾斜させて擦過部21および払拭部22を自重により滑らせてテーブルロール5A上に降ろし(図4)、擦過部21および払拭部22をテーブルロール5Aの回転により圧延ロール2近傍まで移動させる。このとき、テーブルロール5A,5Bは右方向へ回転し続けており、素材Aは圧延ロール2の右方へ向けて移送されている。
【0019】
次いで、図5に示すように、素材Aを追って圧延ロール2の近傍まで擦過部21および払拭部22が前進したら、ウィンチ23bを用いてワイヤ23aを巻き取り、テーブルロール5Aによる移動に抗して、擦過部21および払拭部22を図の左方、すなわちテーブルロール5Aの各ローラ5の回転方向とは逆の方向に移動する。すなわち、移動手段23による移動方向の前方に擦過部21、後方に払拭部22が配置される。
これにより、ローラ5の周面に対して擦過部21が摩擦しながら接触し、その後すぐに払拭部22が摩擦しながら接触する。したがって、擦過部21の下面で、ローラ5周面に固着した付着物がサンドペーパー21aによって除去された後、払拭部22の下面のネル布22aによってローラ5周面から異物が拭い去られる。
さらに、図6に示すように、擦過部21および払拭部22がウィンチ23bへと近づき、次に圧延される鋳塊(次スラブ)Cの配置位置から待避したら、次スラブCをテーブルロール5A上に配置する。つまり、擦過部21および払拭部22が保持板25上へ待避する前に、次スラブCの圧延パスを開始する。そして、次スラブCの圧延パスが開始された後、テーブルロール5Aが反転する前に、擦過部21および払拭部22は保持板25上へと引き上げられ、テーブルロール5A上から待避する。
【0020】
このように、圧延後の素材Aの巻き取りパスが実行されている間に、テーブルロール5Aの駆動を止めずにその清掃を開始できるとともに、清掃装置Bがテーブルロール5A上から待避完了する前に次の圧延パスを開始することができるので、生産効率を低下させることなく、圧延材の表面品質を向上させることができる。つまり、本発明は、巻き取りパス圧延中および次材の圧延中にテーブルロールを清掃することにより、見かけ上の清掃時間を短縮させることに成功した。
【0021】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態では、粗圧延工程における圧延ロールの手前側のテーブルロールを清掃する例を示したが、本発明の清掃装置および清掃方法は圧延ロールの前後いずれのテーブルロールにも適用でき、また仕上げ圧延工程のテーブルロールにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る清掃装置の一実施形態を示す側面模式図である。
【図2】巻き取りパスの途中を示す模式図である。
【図3】清掃装置をテーブルロール上に移動する状態を示す模式図である。
【図4】清掃装置がローラの回転によって移送される状態を示す模式図である。
【図5】清掃装置がローラの回転に反して移動される状態を示す模式図である。
【図6】清掃装置が待避する前に次スラブがテーブルロール上に載置された状態を示す模式図である。
【図7】図1に示す清掃装置を示す上面模式図である。
【符号の説明】
【0023】
1 圧延機
2 圧延ロール
3 回転駆動モーター
4 バックアップロール
5 ローラ
5A,5B テーブルローラ
6 圧下用スクリュー
7 位置制御モーター
8 圧下手段
9 圧延荷重検出手段
10 クーラント吐出手段
11 ロール回転検出器
12 ロールギャップ位置検出器
13 ローラ駆動モーター
14 ローラ回転検出器
17 ストリッパーガイド
20 巻き取りコイル
21 擦過部
21a サンドペーパー
22 払拭部
22a ネル布
23 移動手段
23a ワイヤ
23b ウィンチ
24 連結手段(ワイヤ)
A 素材
B 清掃装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延ロールの前後で素材の移送方向に沿って複数のローラを並べてなるテーブルロールを清掃する装置であって、
前記ローラの表面を擦過する擦過部と、
前記ローラの前記表面を払拭する払拭部と、
前記擦過部および前記払拭部を、前記テーブルロール上で前記ローラの回転方向とは逆の方向に移動させる移動手段とを有することを特徴とするテーブルロールの清掃装置。
【請求項2】
前記擦過部と払拭部とが一体に前記移動手段によって移動され、この移動方向において前記擦過部の後方に前記払拭部が配置されることを特徴とする請求項1に記載のテーブルロールの清掃装置。
【請求項3】
圧延ロールの前後で素材の移送方向に沿って複数のローラを並べてなるテーブルロールを清掃する方法であって、
前記テーブルロール上に、前記ローラを擦過する擦過部と、前記ローラを払拭する払拭部とを配置して、これら擦過部および払拭部を前記ローラの回転方向とは逆の方向に移動させることにより、回転する前記ローラの表面を前記擦過部によってその回転とは逆方向に擦過するとともに、擦過された前記ローラの表面を前記払拭部によって払拭することを特徴とするテーブルロールの清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137254(P2010−137254A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315895(P2008−315895)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)