説明

テープカセット

【課題】下ケースのボス部にテープスプールを取り付ける段階でテープスプールの回転規制をすることによって、テープのバラケ防止を図りつつ、テープスプールの組み付け作業の作業性を向上させ、治工具を外し忘れる問題も解消できるテープカセットを提供する。
【解決手段】テープカセット1では、下ケース3は平面視において先端面34Aがカセットボス31よりも外側に突出する凸部34を有する。凸部34はテープスプール17をカセットボス31に取り付けるとテープスプール17の内周面17Dと接触してテープスプール17の回転を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープが巻回されたテープスプールと、該テープスプールが回転可能に取り付けられるボス部を有すると共に上面が開放される下ケースと、該下ケースの上面を開閉する上ケースとを備えるテープカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テープが巻回されたテープスプールと、当該テープスプールが回転可能に取り付けられるボス部を有すると共に上面が開放される下ケースと、当該下ケースの上面を開閉する上ケースを備えるテープカセットが知られている。そのようなテープカセットを組み立てる際には、まず下ケースのボス部にテープスプールを回転可能に取り付け、その後に上ケースで下ケースを閉塞する。
【0003】
図17は特許文献1における従来のテープカセットの組み付け工程を示す要部の拡大断面図である。図17のように、下ケース403の底面にはカセットボス431がほぼ垂直に立設されている。そして、カセットボス431の上端部の所定位置には一対の係止孔432、432が穿設されている。テープ414が巻回されたテープスプール417がカセットボス431に取り付けられてテープスプール417が下ケース403に収納される。
また、上ケース402は下ケース403の開放面である上面を上側から被覆するものであり、カセットボス431に対向する位置に所定高さの円筒状のリブ450が穿設されている。リブ450の係止孔432、432に対向する位置には、各係止孔432、432内に嵌挿される一対の係止突起460、460が形成されている。そして、上ケース402は、リブ450がテープスプール417の上端部に形成された段差部417Aに挿入されつつ、下ケース403に圧接され、各係止突起460、460が係止孔432、432内に係止される。これにより、テープスプール417に巻回されたテープ414がカセットボス431に回転可能に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−43338号公報
【0005】
ここで、テープスプール417それ自体には、テープ414がただ巻いているだけであり、そのバラケを防止する機構は付いていない。製造ラインにおいて、テープスプール417をカセットボス431に取り付ける工程から、上ケース402で下ケース403を完全に閉塞する工程までには一定のタイムラグがあり、その間にテープ414がバラケやすい。具体的に言うと、当該2工程の間にはインクリボンやローラ等、他の内容物を下ケース403に充填したり、上ケース402を下ケース403に被せたり、といった作業が行われ、その際の振動等によりテープスプール417が回転するとテープ414のバラケが起きてしまう。上ケース402と下ケース403とは、下ケース403の多数の孔部と当該多数の孔部のそれぞれに対応する上ケース402の突起部との係合によって嵌合するので、上記2工程の間にテープ414がバラけると、下ケース403と上ケース402とを嵌合する際にいずれかの突起部とそれに対応する孔部との間にテープが挟まってしまう。
また、テープ414がバラけたまま出荷されると、テープカセットをテープ印刷装置に装着して使用する時に、バラケた部分のテープ414の搬送にはより大きな力が必要となるために作成されるラベルの長さがばらついてしまう問題もある。
【0006】
このため製造現場ではテープスプール417をカセットボス431に挿入する際に、カセットボス417内にバネ状の治工具(不図示)を取り付けている。そして当該治工具がカセットボス417に形成される孔部(不図示)を介してテープスプール417内周面に接触してテープスプール417の回転を規制することにより、バラケ防止を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の治工具を用いた回転規制ではわざわざ、孔部を介してテープスプール内周面に接触するようにバネ状の治工具をカセットボス内に取り付けなくてはならず、これによりテープスプールの組み付け作業の作業性が大幅に低減してしまう。また、該治工具を下ケースから取り外すのを忘れたテープカセットを出荷してしまうと、該治工具はテープカセットをテープ印刷装置へ取り付ける際に邪魔になってしまう。
【0008】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、下ケースのボス部にテープスプールを取り付ける段階でテープスプールの回転規制をすることによって、テープのバラケ防止を図りつつ、テープスプールの組み付け作業の作業性を向上させ、治工具を外し忘れる問題も解消できるテープカセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため請求項1に係るテープカセットでは、テープが巻回されたテープスプールと、前記テープスプールが回転可能に取り付けられるボス部を有すると共に上面が開放される下ケースと、前記下ケースの上面を開閉する上ケースと、を備えるテープカセットにおいて、前記下ケースは、平面視において先端が前記ボス部よりも外側に突出する凸部を有し、前記凸部は、前記テープスプールを前記ボス部に取り付けると前記テープスプールの内周面に接触してテープスプールの回転を規制すると共に、前記上ケースが下ケースの上面を閉塞すると前記テープスプールの内周面から離間する方向に変動してテープスプールの回転規制を解除することを特徴とする。
【0010】
また請求項2に係るテープカセットでは、請求項1に記載のテープカセットにおいて、前記テープスプールの内周面には凹溝部が少なくとも一つ形成され、前記凸部が前記凹溝部と嵌合することにより前記テープスプールの回転が規制されることを特徴とする。
【0011】
また請求項3に係るテープカセットでは、請求項1に記載のテープカセットにおいて、前記凸部と前記テープスプールの内周面との摩擦により前記テープスプールの回転が規制されることを特徴とする。
【0012】
また請求項4に係るテープカセットでは、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテープカセットにおいて、前記下ケースは樹脂製であって一体成型により底面に立設して撓み変形可能な棒状のリブを有すると共に前記凸部は前記リブに形成され、前記上ケースは、前記下ケースの前記リブに対応する位置に配設される突起部を有し、前記上ケースが前記下ケースを閉塞する時に前記突起部が前記リブを押圧して撓み変形させることにより前記凸部を前記テープスプール内周面から離間させることを特徴とする。
【0013】
また請求項5に係るテープカセットでは、請求項4に記載のテープカセットにおいて、前記ボス部は円筒状であって、軸方向に長い長孔と、長孔の上側で長孔と連続する長孔上壁部とを有し、前記突起部は、前記上ケースが前記下ケースを閉塞する際に前記長孔上壁部に係止し、前記リブは前記長孔の基端部から立設し、当該リブと前記長孔上壁部とは前記下ケース底面に対して垂直な同一直線上に形成されることを特徴とする。
【0014】
また請求項6に係るテープカセットでは、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のテープカセットにおいて、前記テープスプールに巻回するテープは、印刷面の裏面に粘着剤層を備えてセパレータが貼り付けられるレセプターテープであることを特徴とする。
【0015】
また請求項7に記載のテープカセットでは、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のテープカセットにおいて、前記テープスプールに巻回するテープは、感熱発色層の裏面に粘着剤層を備えてセパレータが貼り付けられる感熱テープであることを特徴とする。
【0016】
また請求項8に記載のテープカセットでは、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のテープカセットにおいて、前記テープスプールに巻回するテープは、印刷後に両面粘着テープと貼り合わされる印刷面を備える被印字テープであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係るテープカセットでは、下ケースは平面視において先端がボス部よりも外側に突出する凸部を有し、当該凸部はテープスプールをボス部に取り付けるとテープスプールの内周面に接触してテープスプールの回転を規制する。よって請求項1のテープカセットでは下ケースのボス部にテープスプールを取り付ける動作によってテープスプールをそのまま回転が規制された状態にできるから、テープスプール組み付け時のテープのバラケ防止を図りつつ、バネ状の治工具を用いるよりもテープスプールの組み付け作業の作業性を格段に向上させることができる。また、治工具を外し忘れる問題も解消できる。
また、上ケースが下ケースを閉塞すると凸部はテープスプールの内周面から離間する方向に変動してテープスプールの回転規制を解除する。よって上ケースと下ケースの間にテープが挟まることを回避するために最も回転規制が必要とされる間にだけ回転規制を行うことができる。
【0018】
請求項2に係るテープカセットでは、テープスプールの内周面には凹溝部が少なくとも一つ形成され、凸部が凹溝部と嵌合することによりテープスプールの回転が規制される。よって凸部と凹溝部との嵌合によりテープスプールの回転を確実に止めることができ、テープスプールを下ケースに取り付けてから上ケースが下ケースを閉塞するまでの間の振動等が大きくてもテープがバラケることがない。
【0019】
請求項3のテープカセットでは、凸部とテープスプールの内周面との摩擦によりテープスプールの回転が規制される。よってテープスプールの内周面に凹溝部等を形成する必要がなく製造コスト減となるだけでなく、テープスプールをボス部に取り付ける際に凸部がテープスプール内周面のどの箇所に接触しても、取り付けた時点でテープスプールの回転を規制でき、更に作業性を向上させることができる。
【0020】
請求項4のテープカセットでは、下ケースは樹脂製であって一体成型により底面に立設して撓み変形可能な棒状のリブを有すると共に凸部は当該リブに形成される。よって請求項4のテープカセットでは、テープスプールと接触する位置から離間する位置まで変動する凸部を、非常に簡易な構成で実現でき、製造コストを抑制できる。
また上ケースが下ケースを閉塞する時に、上ケースの突起部がリブを直接押圧して撓み変形させるから、凸部をテープスプール内周面から確実に離間させることができる。
【0021】
また請求項5のテープカセットでは、ボス部は円筒状であって、軸方向に長い長孔と、長孔の上側で長孔と連続する長孔上壁部とを有し、突起部は、上ケースが下ケースを閉塞する際に長孔上壁部に係止し、リブは長孔の基端部から立設する。よって突起部と協働して上ケースと下ケースとを嵌合するために穿設される長孔にリブを形成できるから、ボス部の強度を減少させることなくリブを形成できる。また、突起部が、長孔及び長孔上壁部と協働して上ケースと下ケースを嵌合させる役割だけでなく、リブを押圧して凸部によるテープスプールの回転規制を解除する役割も果たすので、回動規制解除のための別の突起部を上ケースに形成する必要がなく、部品点数を抑制できる。また、上ケースが下ケースを閉塞した後、突起部はリブから継続的に上方に押される状態となるから、上ケースの突起部が形成される箇所は上方に膨らみ易い。しかしリブと長孔上壁部とは下ケース底面に対して垂直な同一直線上に形成されるから、突起部が上方に押されても突起部が係止する長孔上壁部がストッパとなり、上ケースにおける突起部の形成箇所が膨らんでしまうのを防ぐことができる。
【0022】
請求項6のテープカセットでは、凸部は印刷面の裏面に粘着剤層を備えてセパレータが貼り付けられるレセプターテープが巻回されるテープスプールの回転を規制するから、当該レセプターテープをテープカセットへ組付ける際の作業性を向上させると共に、当該組付作業時にレセプターテープがバラケてしまうことを防止することができる。
【0023】
請求項7のテープカセットでは、凸部は感熱発色層の裏面に粘着剤層を備えてセパレータが貼り付けられる感熱テープが巻回されるテープスプールの回転を規制するから、当該感熱テープをテープカセットへ組付ける際の作業性を向上させると共に、当該組付作業時に感熱テープがバラケてしまうことを防止することができる。
【0024】
請求項8のテープカセットでは、凸部は印刷後に両面粘着テープと貼り合わされる印刷面を備える被印字テープが巻回されるテープスプールの回転を規制するから、当該被印字テープをテープカセットへ組付ける際の作業性を向上させると共に、当該組付作業時に被印字テープがバラケてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態のテープカセットの斜視図である。
【図2】第1実施形態のテープカセットの内部構成を示す平面図である。
【図3】第1実施形態のテープスプールの斜視図である。
【図4】第1実施形態の下ケースの斜視図である。
【図5】図2の部分拡大図である。
【図6】第1実施形態においてテープスプールを回転規制する過程を示すA−A線断面図である。
【図7】第2実施形態のテープカセットの内部構成を示す平面図である。
【図8】第3実施形態のテープカセットの内部構成を示す平面図である。
【図9】第3実施形態の下ケースの斜視図である。
【図10】図8の部分拡大図である。
【図11】第3実施形態においてテープスプールを回転規制する過程を示すB−B線断面図である。
【図12】第4実施形態のテープスプールの斜視図である。
【図13】第4実施形態においてテープスプールを下ケースのカセットボスに取り付けた状態を示す部分拡大平面図である。
【図14】第4実施形態においてテープスプールを回転規制する過程を示すC−C線断面図である。
【図15】第6実施形態においてテープスプールが下ケースのカセットボスに嵌挿した状態を示す部分拡大平面図である。
【図16】第6実施形態において被印字テープのテープスプールを回転規制する過程を示すD−D線断面図である。
【図17】従来のテープカセットにおいてテープスプールをテープカセットに組み付ける工程を示す要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るテープカセットについて、具体化した6つの実施形態に基づいて図面を参照しつつ詳細に説明する。
[第1実施形態]
【0027】
以下では、図1乃至図6に基づいて、第1実施形態のテープカセット1について説明する。
まず図1及び図2に基づいてテープカセット1の概略構成について説明する。図1はテープカセット1の外観を示す斜視図である。図1のように、テープカセット1は略直方体形に樹脂(実施形態ではABS樹脂である)で形成した上下一対のケースであり、上ケース2と下ケース3とを有する。
図2は下ケース3に内容物を組み付けて上ケース2を外した状態を示す平面図である。
以下では、図1の左下側、及び図2の下側をテープカセットの前側として説明する。
図1のように、テープカセット1には各支持孔4、5、7、10が形成されている。なお、図1中には、上ケース2に形成された各支持孔4、5、7、10のみしか図示されていないが、下ケース3についても同様に上ケース2の各支持孔に対向して支持孔4、5、7、10が形成されている。
【0028】
図2のように、下ケース3の内部には、被印字媒体(テープ)であるレセプターテープ14を巻回したテープスプール17が収納されるほか、レセプターテープ14に印字を施すためのインクリボン13を巻回したリボンスプールが収納されている。また、レセプターテープ14上に文字等を印字する際にリボンスプール2からインクリボン13を引き出すとともに巻取るリボン巻取スプール16も備えられている。図1及び図2のように、下ケース3の支持孔7はテープスプール17を回動可能に支持し、下ケース3の支持孔5はリボン巻取スプール16を支持する。
【0029】
図1、図2のようにテープカセット1の前側には、テープスプール17から引き出されたレセプターテープ14、及び、リボンスプール2から引き出されたインクリボン13を案内し、開口8Aから送出するアーム部8が設けられており、かかるアーム部8の後方にはテープ印刷装置のサーマルヘッド(不図示)が装着されるヘッド装着部9が設けられている。
また図1に示す支持孔10は、各インクリボン13、レセプターテープ14の走行方向に関しヘッド装着部9の下流側に位置して図2のテープ搬送ローラ19を回動可能に支持する。
【0030】
ここで、レセプターテープ14は、片面に粘着剤が塗布された基材テープと粘着剤を介して基材テープに付着されたセパレータとから構成されており、基材テープの粘着剤が塗布されていない表面が文字等を印字する印刷面となる。図示しないが、印刷面を有する基材テープは、ポリエチエンテレフタレート(以下、「PET」という。)層とこのPET層上に設けられPET層へのインクの付着を助ける受像層とからなり、PET層の下に粘着剤が塗布された粘着層が、さらにその下にセパレータ(離形紙)が位置している。なお、粘着剤は、レセプターテープ14の上下端縁までしっかりと塗布されている。かかるレセプターテープ14は、その印刷面上に文字等が印字されて文字付テープとされた後、セパレータを剥すことにより各種の対象に対して貼り付けることが可能となるものである。レセプターテープ14は、セパレータが外側になるようにテープスプール17に巻回された状態でカセットケース11内に収納されている。
【0031】
図2のように、テープ印刷装置(図示せず)から回転駆動を受けるテープ搬送ローラ19と、それに対向する側からテープ搬送ローラ19に圧接される圧接ローラ28との協働により、レセプターテープ14は、テープスプール17から引き出され、3つの補助ガイド20A、20B、20Cを経由して、テープカセット1の開口8Aを通過し、テープカセット1の外部に至る。
【0032】
インクリボン13は、終端がリボン供給スプール2に接合され、巻回されて収納されている。一方、リボン巻取スプール16の内側には内歯19が形成されている。内歯19は、テープカセット1をテープ印刷装置(不図示)に装着した際にテープ印刷装置の回転駆動端と嵌合される。内歯19がテープ印刷装置から駆動されることにより、リボン巻取スプール16が回転する。当該リボン巻取スプール16の回転によりリボン供給スプール2から引き出されたインクリボン13は、開口8Aにてレセプターテープ14の印刷面と重ね合わされ、レセプターテープ14とともに開口8Aを通過する。その後、レセプターテープ14から離され、リボンガイド21、22を経由して、リボン巻取スプール16に至る。
【0033】
ここで、開口8Aにてインクリボン13と重ねあわされたレセプターテープ14の印刷面はカセット1のヘッド装着部9に位置するサーマルヘッド(不図示)とプラテンローラ(不図示)との間を通過し、プラテンローラがサーマルヘッドに押圧されることにより、レセプターテープ14の印刷面に印字が行なわれる。印字される画像は正像で形成される。
【0034】
なお、テープカセット1の右後縁位置にはカセット検出部16が形成されており、このカセット検出部16には、テープカセット1の種類(例えば、各レセプターテープ17の幅、インクリボン19に塗布されたインクの色等によりテープカセット1の種類が特定される)を検出するため所定のパターンをもって複数個のスイッチ孔16Aが穿設されている。スイッチ孔16Aの形成パターンは、各テープカセット1の種類に従って異なるパターンとされており、各スイッチ孔16Aは、テープ印刷装置側に配設された複数個の検出スイッチ(不図示)のオン・オフの組合せに基づいて検出されるものである。
【0035】
続いて、図3に基づいてレセプターテープ14が巻回されたテープスプール17について説明する。図3のように、テープスプール17は、レセプターテープ14の幅と略等しい高さを有する外側円筒部17Aと、外側円筒部17Aに対して小さい内径寸法を有して外側円筒部17Aの内側に配置する内側円筒部17Bとが連結されている。当該構成により以下では内側円筒部17Bの内周面をテープスプール17の内周面17Dと呼ぶ。内側円筒部17Bの高さ寸法は外側円筒部17Aよりも小さく、外側円筒部17A内側の上下端部には、それぞれ内側円筒部17Bとの高低差によって段差部17Cが形成される(図6(B)等参照)。内側円筒部17Bの内周面には90°間隔毎に凹溝部18が形成されている。各凹溝部18はテープスプール17の軸方向に長く、内側円筒部17Bの上端から下端までの全長に渡って形成される。
【0036】
続いて、図4に基づいて下ケース3に形成される凸部34について説明する。図4は下ケース3において内容物を全て取り払った状態を示す斜視図である。
図4のように、下ケース3の底面3Aには、上述したリボン巻取スプール16を回転可能に支持する支持孔5や、テープ搬送ローラ19が回転可能に支持される支持孔10が形成されている。またリボン供給スプール2を回転可能に支持する2段円柱状のリボンボス51も突設されている。また、レセプターテープ14を巻回するテープスプール17が回転可能に嵌挿するカセットボス31も底面3Aから略垂直な方向に立設されている。
【0037】
ここで、テープスプール17が嵌挿されるカセットボス31の構成を詳述する。カセットボス31は略円筒状をしており、その周囲を円筒状のリブ40に同心状に取り囲まれている。カセットボス31の内部は空洞であり、その内周面により下ケース3の支持孔7を構成する(図6等参照)。カセットボス31の周壁には一対の長孔32、32が穿設される。各長孔32、32は、平面視円周状のカセットボス31の周壁に180°間隔で形成されてテープカセット1の長手方向に並列している。各長孔32、32は略円筒状のカセットボス31の軸線方向に長い細長な略長方形状をしており、下側では下ケース3の底面3Aまで延びる。しかし長孔32の上側はカセットボス31の上端までは到達せず、各長孔32の上側には、カセットボス31の略円筒状の周壁の一部として各長孔32と連続する長孔上壁部35、35が存在している。
【0038】
また各長孔32、32の基端部32A、32Aからはそれぞれ棒状のリブ33、33が立設している。すなわち下ケース3の底面3Aにおいてリブ33、33はカセットボス31の下端部が立設される円周上に180°間隔で配設される。各リブ33は細長板形状をしており各リブ33の下端部33A(図6参照)は平面視略長方形をしており当該長方形の長手方向が当該円周に沿うように配設される。またリブ33、33は樹脂製の下ケース3の底面3Aと一体に形成されており、底面3Aと接続する下端部33Aを中心に、カセットボス31を平面視した円周上の接線に対して略直角な方向に撓み変形可能である。リブ33の横幅は長孔32の横幅よりも若干小さく形成されると共に、その高さ寸法も長孔32の高さ寸法よりも若干小さく形成される。このため、長孔上壁部35とリブ33上端部との間には隙間が形成される(図6(A)等参照)。また、各リブ33の先端には、外側に向うに従い下方に傾斜するテーパ面33Bが形成されている(図6参照)。
【0039】
各リブ33はその先端より少し下側の位置にそれぞれ外側に突起する凸部34、34を有する(図4では左側の凸部34は隠れて見えない)。凸部34については後述する。
【0040】
図3及び図4のように、下ケース3において補助ガイド20A〜20Cやリボンガイド21、22には上方に向けて開口する円形孔が形成されている。これらの孔のほか下ケース3の外周付近には円形孔部23A〜23Fが形成されており、これら各孔が上ケース2下面の対応する位置に形成される各棒状突起部(不図示)と嵌合することにより、下ケース2と上ケース3とが嵌着する。
【0041】
続いて、図5及び図6に基づいて、テープスプール17の回転規制がなされる過程を説明する。図6(A)はカセットボス31にテープスプール17が嵌挿される前の状態、図5と図6(B)はテープスプール17がカセットボス31に嵌挿して凸部34が凹溝部18と嵌合した状態、図6(C)は上ケース2を下ケース3に嵌着して下ケース3の上面を閉塞した状態を示す。図6(A)〜(C)は各段階のカセットボス31を図5のA−A線で切断した要部拡大断面図である。
【0042】
図6(A)のように、リブ33は長孔の基端部32Aに立設し、リブ33の下端部33Aとその上方に位置する長孔上壁部35とは、下ケース3の底面3Aと垂直な同一の線上に配設されている。またリブ33は底面3Aに対して略垂直な状態に立設している。
【0043】
続いて図5及び図6(B)のように、カセットボス31にテープスプール17を嵌挿させた後にカセットボス31の回りにテープスプール17を回転させるとリブ33上に形成される上述の凸部34が、テープスプール17の凹溝部18に嵌入する。
【0044】
図5のように、凸部34の幅(カセットボス31の外周に沿う幅)はテープスプール17に形成される凹溝部18の幅よりかなり小さい(実施形態では凸部34の幅は凹溝部17の幅の1/2〜1/3程度である)。また凸部34の高さ寸法(カセットボス31の中心軸と垂直な方向における凸部34の基端部から先端までの長さ)は凹溝部34の深さ寸法よりも若干大きいか又は同程度である。よってテープスプール17の僅かな回転により凸部34は凹溝部18内に嵌入する。
図5に示すように、凹溝部18の底面18Aはテープスプール17の中心軸を、凸部34はカセットボス31の中心軸を、それぞれ中心とする平面視円弧状に形成される。よって凸部34は、凸部34を凹溝部18内に嵌入させるためにテープスプール17が僅かに回転する間に、その先端面34Aがテープスプール17の内周面17Dを滑ってスムーズに凹溝部18内に嵌入する。嵌入後は凸部34の先端面34Aと凹溝部18の底面18Aとが密接して凸部34と凹溝部18とがしっかり嵌合する。
【0045】
図6(A)及び図6(B)に示すように、テープスプール17がカセットボス31に嵌挿するといったん凸部34がテープスプール31に押圧されてリブ33は内側に撓み変形するが、凸部34が凹溝部18に嵌入するとリブ33はテープスプール33の嵌挿前の形状に戻る。図5のように平面視において凹溝部18内に嵌入した凸部34の先端面34Aはカセットボス31の外周面から突出しており、これはテープスプール17の嵌挿前とも同様である。
図6(B)のように、カセットボス31に嵌挿したテープスプール17の内周面17Dはカセットボス31の外周面とほぼ当接すると共に、下側段差部17Cの下部(外側円筒部17Aの内周部)が円筒状のリブ40と当接した状態となっている。
【0046】
更に、図6(C)に示すように、上ケース2を下ケース3に嵌着して下ケース3の上面を閉塞する。ここで、上ケース2の下面には長孔32、32と対向する位置に係止突起60、60が形成されている。各係止突起60は上ケース2下面から略垂直に突出する基部60Aと基部60Aから内側に突出する先端部60Bとからなり、先端部60Bの上面は上ケース2の下面と略平行な水平面に形成されている。
【0047】
ここで、上ケース2を下ケース3に嵌着しようとすると、各係止突起60は長孔上壁部35に上方から当接することになる。係止突起60、60の先端間の距離は長孔上壁部35、35間の距離よりも小さいものの、各係止突起60の先端部60Bの内側下端にテーパ面60Cが形成され、このテーパ面60Cが長孔上壁部35外側上端部に形成されるテーパ面と対応することにより、各係止突起60の先端部60Bの内側面が長孔上壁部35の外側面に当接するように案内されてそのまま下方にスライドし、長孔60に外側から嵌入する。すると、各係止突起60の各先端部60Bの上面が長孔上壁部35の下端面に当接し、係止突起60が長孔上壁部35に係止した状態となる。長孔上壁部35の下端面も下ケース3の底面3Aと平行な水平面に形成され、係止突起60の先端面60Bの上面に対応する。
【0048】
同時に、係止突起60の先端部60Bはリブ33の先端に当接してリブ33を内側に押圧する。リブ33外側上端に形成されるテーパ面33Bは、係止突起60のテーパ面60Cに対応した形状をしており、リブ33先端と係止突起60とが面と面(テーパ面33Bとテーパ面60C)とで当接することにより、リブ33の先端が係止突起60の押圧力をしっかり受けることができる。これにより、リブ33は下端部33Aを中心に内側方向に撓み変形し、凸部34が凹溝部18から離間する。図6(C)のように、凸部34の先端がテープスプール17の内周面17Dより内側に変動して、テープスプール17が凸部34に邪魔されずに回転可能になる。
【0049】
また、このとき、リブ33先端には係止突起60を持ち上げようとする力が働くが、係止突起60がリブ33により上側に押されても、係止突起60の先端部60Bの上面を長孔上壁部34の下端面が押圧する。
【0050】
以上詳細に説明したように、第1実施形態のテープカセット1では、下ケース3は平面視において先端面34Aがカセットボス31よりも外側に突出する凸部34を有し、凸部34はテープスプール17をカセットボス31に取り付けるとテープスプール17の内周面17Dに接触してテープスプール17の回転を規制する。よってテープカセット1では下ケース3のカセットボス31にテープスプール17を取り付ける動作によってテープスプール17をそのまま回転が規制された状態にできるから、レセプターテープ14のバラケ防止を図りつつ、バネ状の治工具を用いるよりもテープスプール17のテープカセット1への取り付け作業の作業性を格段に向上させることができる。また、治工具を外し忘れる問題も解消できる。
また、上ケース2が下ケース3を閉塞すると凸部34はテープスプール17の内周面17Dから離間する内側方向に変動してテープスプール17の回転規制を解除する。よって上ケース2と下ケース3の間にレセプターテープ14が挟まることを回避するために最も回転規制が必要とされる間にだけ回転規制を行って、凸部34とテープスプール17との接触が印刷の弊害となるのを防止できる。
【0051】
またテープスプール17の内周面17Dには凹溝部18が形成され、凸部34が凹溝部18と嵌合することによりテープスプール17の回転が規制される。よって凸部34と凹溝部18との嵌合によりテープスプール17の回転を確実に止めることができ、テープスプール17を下ケース3に取り付けてから上ケース2で下ケース3を閉塞するまでの間の振動等が大きくてもレセプターテープ14がバラケることがない。
【0052】
また、テープカセット1では、下ケース3は樹脂製であって一体成型により底面に立設して撓み変形可能な棒状のリブ33を有すると共に凸部34は当該リブ33に形成される。よってテープスプール17と接触する位置から、離間する位置まで変動する凸部34を、非常に簡易な構成で実現でき、製造コストを抑制できる。
また上ケース2が下ケース3を閉塞する時に、上ケース2の係止突起60がリブ33を直接押圧してリブを撓み変形させるから、凸部34をテープスプール17の内周面17Dから確実に離間させることができる。
【0053】
またテープカセット1では、カセットボス31は円筒状であって、軸方向に長い長孔32、32と、長孔32、32の上側で長孔と連続する長孔上壁部35、35とを有し、係止突起60、60は、上ケース2が下ケース3を閉塞する際に長孔上壁部35、35に係止し、リブ33、33は長孔32、32の基端部32A、32Aから立設する。よって係止突起60、60と協働して上ケース2と下ケース3とを嵌着するために穿設される長孔32、32にリブ33、33を形成できるから、カセットボス31の強度を減少させることなくリブ33、33を形成できる。また、係止突起60、60が、長孔32、32及び長孔上壁部35、35と協働して上ケース2と下ケース3とを嵌着させる役割だけでなく、リブ33、33を押圧してテープスプール17の回転規制を解除する役割も果たすので、回動規制解除のための別の突起部を上ケース2に形成する必要がなく製造コスト減に繋がる。また、上ケース2が下ケース4を閉塞した後、係止突起60、60はリブ33、33から継続的に上方に押される状態となるから、上ケース2の係止突起60、60が形成される箇所は上方に膨らみ易い。しかしリブ33と長孔上壁部35とは下ケース3の底面3Aに対して垂直な同一直線上に形成されるから、係止突起60、60が上方に押されても長孔上壁部35、35がストッパとなり、上ケース2における係止突起60、60の形成箇所が膨らんでしまうのを防ぐことができる。
[第2実施形態]
【0054】
続いて、図7に基づいて第2実施形態のテープカセット100について説明する。なお、以降第2実施形態〜第6実施形態では第1実施形態と同一又は相等する構成については第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では第1実施形態と異なり、テープスプール17に巻回されているのが、レセプターテープ14ではなく、感熱テープ74である。感熱テープ74はPET等からなり、印刷面に感熱発色層を備え、印刷面の裏面に粘着剤層を備えた基材テープと、基材テープの粘着剤層に貼着されるセパレータとから構成されている。
【0055】
感熱テープ74はセパレータが外側となるようにテープスプール17に巻回される。図7のように、テープ印刷装置(図示せず)から回転駆動を受けるテープ搬送ローラ19と、それに対向する側からテープ搬送ローラ19に圧接される圧接ローラ28との協働により、感熱テープ74は、テープスプール17から引き出され、補助ガイド20A、20B、20Cを経由して、開口8Aを通過し、テープカセット1の外部に至る。そして、ヘッド装着部9に位置するテープ印刷装置のサーマルヘッド(不図示)の加熱により選択的に感熱発色層が発色することにより感熱テープ74の印刷面に印字が行なわれる。印字される画像は正像である。
【0056】
その他、テープカセット100の外観は図1に示すものと同様であり、また感熱テープ74を巻回したテープスプール17の構成は図3に示すものと同様である。下ケース3の構成は図4に示すものと同様であり、感熱テープ74のバラケを凸部34により防止する過程も図5、図6に示すものと同様である。
【0057】
従って、第2実施形態のテープカセット100では、上述した第1実施形態のテープカセット1が奏する効果の他に、凸部34は感熱発色層の裏面に粘着剤層を備えてセパレータが貼り付けられる感熱テープ74が巻回されるテープスプール17の回転を規制するから、感熱テープ74をテープカセット100へ組付ける際の作業性を向上させつつ当該組付作業時に感熱テープ74がバラケてしまうことを防止することができる。
[第3実施形態]
【0058】
続いて、図8〜図11に基づいて第3実施形態のテープカセット200について説明する。テープカセット200の外観は図1に示すものと同様である。
図8に示すように、第3実施形態では、レセプターテープ14が巻回されるテープスプール17の替わりに両面粘着テープ82が巻回される基材供給スプール85が、カセットボス31に嵌挿する。また、カセットボス31に隣接するカセットボス41に、被印字テープ84が巻回されるテープスプール87が嵌挿している。
【0059】
被印字テープ84は、PET層と、PET層上に設けられPET層へのインクの付着を助ける受像層を備える透明テープであり、印刷面が内側となるようにテープスプール87に巻回されている。また、両面粘着テープ82は、被印字テープ84と同一幅で両面に接着剤層を有すると共にその片面に対しセパレータを貼り合わせて構成され、セパレータが外側に位置するように、基材供給スプール85に巻回されている。両面粘着テープ82はその巻回状態においてテープ内側の粘着層が当該テープの内側に位置するセパレータと接する状態で巻回されるためバラケが比較的少ない。よって以下では両面粘着テープ82が巻回される基材供給スプール85の回転規制の説明は行わないが、この点は何ら本発明を限定しない。
【0060】
図8のように、テープ印刷装置(不図示)から回転駆動を受けるテープ搬送ローラ19と、それに対向する側からテープ搬送ローラ19に圧接される圧接ローラ28との協働により、被印字テープ84は、テープスプール87から引き出され、補助ガイド20A〜20Cを経由して、開口8Aを通過する。開口8Aにおいて被印字テープ84はその印刷面がインクリボン13と重ね合わされた状態で、ヘッド装着部9に位置するテープ印刷装置のサーマルヘッド(不図示)とプラテンローラ(不図示)との間を通過する際に、プラテンローラがインクリボン13と被印字テープ84とをサーマルヘッドに対して押圧して被印字テープ84に印字が行なわれる。なお印字される画像は鏡像で形成される。
【0061】
一方、両面粘着テープ82はテープ搬送ローラ19と圧接ローラ28との協働により、基材供給スプール85から引き出される。そして印字済みの被印字テープ84と両面粘着テープ82とがテープ搬送ローラ19と圧接ローラ28の間を通過することにより被印刷テープ84の印字済みの印刷面と両面粘着テープ82の接着剤層とが貼り合わされて、積層テープとしてテープカセット200の外部に至る。よって、ユーザは、被印字テープ84の印刷面の裏面側(即ち、積層テープの表面側)から印刷画像の正像を視認可能である。
【0062】
また、図9に示すように、第3実施形態の下ケース103が第1実施形態と異なるのは、基材供給スプール85が嵌挿するカセットボス31の長孔32、32の基端部にはリブが形成されていない一方で、被印字テープ84を巻回するテープスプール87が嵌挿するカセットボス41における長孔42、42の基端部42A、42A(図11(A)参照)には棒状のリブ43、43が立設される点である。
【0063】
カセットボス41、長孔42、リブ43の構成は、図4で説明したカセットボス31、長孔32、リブ33の各構成とほぼ同様である。
すなわちカセットボス41は空洞な略円筒状の周壁からなり、その内周面は下ケース103の支持孔4を構成する(図1、図11等参照)。また各長孔42、42はカセットボス41の周壁において180°間隔で設けられてテープカセット200の長手方向に並列する。各長孔42、42はカセットボス41の軸線方向に長い細長な略長方形状である。各長孔42、42は、下方では下ケース3の底面まで延びるが、上方では周壁上端まで到達せず、下端面が水平に形成された長孔上壁部45、45と連続している。また下ケース103の底面103Aにおける各長孔42、42の基端部42A、42Aからはそれぞれ棒状のリブ43、43が立設している。
すなわちリブ43、43は、底面103Aにおいてカセットボス41の基端部が立設する円周上のうち、180°間隔の2箇所から立設される。そして細長い板状のリブ43、43は平面視においてその先端面の略長方形の長手方向が当該円周に沿うように配設される。またリブ43、43は樹脂製の下ケース103の底面103Aと一体に形成され、基端部43Aを中心に、カセットボス31の円周上の接線に対して略直角な方向(図11の左右方向)に撓み変形可能である。リブ43の高さ寸法は長孔42よりも若干小さく、長孔上壁部45とリブ43上端部との間には隙間が形成される。各リブ43の先端には、外側に向うに従い下方に傾斜するテーパ面43Bが形成されている(図11参照)。
また各リブ43の先端より少し下側に、外側方向に突出する凸部44が形成される。
【0064】
なお、被印字テープ84を巻回するテープスプール87の構成は図3等に示すテープスプール17の構成とほぼ同様であり、外側円筒部87Aと内側円筒部87Bとが連結してその間に段差部87Cが形成され、内側円筒部87の内周面がテープスプール88の内周面87Dを構成する。図10、図11に外側円筒部87A、内側円筒部87B、段差部87C、内周面87Dが示されている。
【0065】
続いて図10及び図11に基づいて、第3実施形態においてテープスプール87の回転規制がなされる過程を示す。当該過程は第1実施形態とほぼ同様であるから、以下はかいつまんで説明する。図11(A)〜(C)は各段階のカセットボス31を図10のB−B線で切断した要部拡大断面図である。
【0066】
図11(A)のように、リブ43の基端部43Aとその上方に位置する長孔上壁部45とは、下ケース103の底面103Aと垂直な同一の線上に配設されている。
そして図10及び図11(B)のように、カセットボス41にテープスプール87を嵌挿した後にカセットボス41の回りにテープスプール87を回転させるとリブ43上に形成される上述の凸部44が、テープスプール87の凹溝部88に嵌入する。
【0067】
図10のように、凸部44の幅はテープスプール87に形成される凹溝部88の幅の1/2〜2/3程度である。また凸部44の高さ寸法は凹溝部88の深さ寸法よりも若干大きいか又は同程度である。なお、図10のように、凹溝部88の底面88Aはテープスプール87の中心軸を、凸部44の先端面44Aはカセットボス41の中心軸を、それぞれ中心とする平面視円弧状に形成される。よって凸部44は、カセットボス41に嵌挿したテープスプール97を回転させる際に、その先端面44Aがテープスプール87の内周面87Dを滑ってスムーズに凹溝部88内に嵌入する。嵌入後は凸部44の先端面44Aと凹溝部88の底面88Aとが密接して凸部44と凹溝部88とがしっかり嵌合する。
【0068】
図11(A)及び図11(B)に示すように、テープスプール87がカセットボス41に嵌挿すると、テープスプール87の内周面87Dに押されてリブ43は内側に撓み変形するが、凸部44がテープスプール87の凹溝部88に嵌入すると、リブ43はテープスプール87をカセットボス41に嵌挿する前の状態とほぼ同じ形状に戻る。
【0069】
更に、図11(C)に示すように、上ケース102を下ケース103に嵌着して下ケース103の上面を閉塞する。上ケース102の下面には、長孔42、42に対応する位置に係止突起90、90が形成されている。各係止突起90は上ケース102下面から略垂直に突出する基部90Aと基部90Aから内側に突出する先端部90Bとからなり、先端部90Bの上面は上ケース2の下面と略平行な水平面に形成されている。
そして下ケース103の閉塞時には係止突起90、90の各先端部90B、90Bが長孔上壁部45、45に上方から当接し、長孔上壁部45、45の外側面を下方にスライドして長孔90、90に嵌入する。すると、各係止突起90の各先端部90Bの上面が長孔上壁部45の下端面に当接し、係止突起90が長孔上壁部45に係止した状態となる。
【0070】
同時に、係止突起90の先端部90Bはリブ43の先端に当接してリブ43を内側に押圧する。リブ43外側上端に形成されるテーパ面43Bは、係止突起90のテーパ面90Cに対応した形状をしており、リブ43先端と係止突起90とが面と面とで当接することにより、リブ43の先端が係止突起90の押圧力を確実に受ける。これにより、リブ43は基端部43Aを中心に内側方向に撓み変形し、凸部44が凹溝部88から離間する。凸部44の先端はテープスプール87の内周面87Dより内側に変動して、テープスプール87が回転可能となる。
【0071】
よって、第3実施形態のテープカセット200では、上記第1実施形態で説明したテープカセット1の各効果を有するほか、凸部44が回転を規制するテープスプール87は、印刷後に両面粘着テープ82と貼り合わされる印刷面を備える被印字テープ84が巻回されるから、該被印字テープ84をテープカセット200へ組付ける際の作業性を向上させつつ該組付け作業時に被印字テープ84がバラケてしまうことを防止することができる。
[第4実施形態]
【0072】
続いて、図12〜図14に基づいて、第4実施形態のテープカセット300について説明する。第4実施形態のテープカセット300はレセプターテープ14が巻回されたテープスプール97について説明する。第4実施形態のテープカセット300において第1実施形態と異なるのは、レセプターテープ14を巻回するテープスプール97の形状と、下ケース3の長孔32、32に立設する棒状のリブ133、133の形状であり、その他の点では第1実施形態と同様である。よってテープカセット300の外観は図1と同様であり、またテープカセット300の内部構成は図2について、テープスプール17とカセットボス31とを示す拡大部分を図13に変更したものとなる。
【0073】
図12に示すように、レセプターテープ14を巻回するテープスプール97は、第1実施形態のテープスプール17とほぼ同様の構成を有するが、テープスプール97の内周面97Dには凹溝部が形成されない点で第1実施形態と異なっている。
【0074】
また第4実施形態の下ケース203は、第1実施形態の下ケース3とほぼ同様の構成を有するが、第1実施形態において、長孔32の基端部32Aに立設されるリブ33が下ケース3の底面3Aから略垂直方向に立設されていたのに対し、図14(A)のように、第3実施形態では長孔32の基端部32Aに立設されるリブ133は底面203Aに対して斜めに立設している点で異なる。具体的に言うと、リブ133、133は、底面203Aと接続する下端部133A、133Aから上方に向うに従いそれぞれ外側に傾斜するように形成されている。よって各リブ133、133の先端から僅かに下側に形成される凸部134、134は長孔32よりも大きく外側に外れた位置にあり、その先端と外側の円筒状のリブ40の内側面とは、底面203Aに対して垂直な同一線上にある。
【0075】
そして図14(B)のように、レセプターテープ14が巻回されたテープスプール97をカセットボス31に嵌挿すると、テープスプール97の内周面97Dによって凸部134、134が押圧されて各リブ133、133が下端部133A、133Aを中心に内側に撓み変形する。そして凸部134がテープスプール97の内周面97Dを押圧する力によって(具体的に言うと、凸部134がテープスプール97の内周面97Dを押圧する力に比例する摩擦力により)テープスプール14の回転が規制される。
なお第4実施形態でも、リブ133先端には外側に向うに従い下方へ傾斜するテーパ面133Bが形成されるが、当該テーパ面133Bは、テープスプール97をカセットボス31に嵌挿する際に、テープスプール97の下側段差部97Cが凸部134と干渉してもテープスプール97をスムーズに下方に進入させる役割も担う。
【0076】
図13のように、凸部134、134は、テープスプール97の内周面97Dを180°離れた2箇所において互いに反対方向に押圧しているため、テープスプール97は回転を停止した状態で安定する。
また、凸部134の先端面134Aは、テープスプール97をカセットボス31に嵌挿する際にテープスプール97の内周面97Dと面一になるように、平面視においてカセットボス31の中心軸を中心とする円弧状に形成される。これにより、凸部134の先端面134A全体がテープスプール97の内周面97Dに密着するので、摩擦によるテープスプール97の回転規制力をより高めることができる。
【0077】
続いて図14(C)のように、上ケース2を下ケース203に嵌着して下ケース203の上面を閉塞する。
第1実施形態等と同様に、上ケース2下面において長孔32、32と対応する位置に形成される係止突起60、60の各先端部60B、60Bが長孔32、32に外側から嵌入し、各先端部60B、60Bの上面が各長孔上壁部35、35の下端面に当接する。同時に、係止突起60の先端部60Bはリブ133の先端に当接してリブ133を内側に押圧する。リブ133のテーパ面133Bと、係止突起60のテーパ面60Cとが当接して、リブ133の先端が係止突起60の押圧力を確実に受ける。これにより、リブ133は下端部133Aを中心に内側方向に更に撓み変形し、凸部134がテープスプール97の内周面97Dから離間して、テープスプール97が回転可能になる。
【0078】
従って第4実施形態のテープカセット300では、上記の第1実施形態のテープカセット1について説明した効果のほかに、凸部134とテープスプール97の内周面97Dとの摩擦によりテープスプール97の回転が規制される。よってテープスプール97の内周面97Dに凹溝部等を形成する必要がなく製造コスト減となるだけでなく、テープスプール97をカセットボス31に取り付ける際に凸部134がテープスプール97の内周面97Dのどの箇所に接触しても、取り付けた時点でテープスプール97の回転を規制できる。
[第5実施形態]
【0079】
図示しないが、第5実施形態のテープカセットは、テープスプール97にレセプターテープ14の替わりに感熱テープ74を巻回した感熱タイプのテープカセットである他は第4実施形態のテープカセット300と同様である。つまり、第5実施形態のテープカセットは、第1実施形態から第4実施形態への変更(テープスプール97に凹溝部を形成せず、下ケース203において長孔32に形成されるリブ133を斜めに立設させる)を第2実施形態の感熱タイプのテープカセット10に行ったものとも言える。
【0080】
よって第5実施形態のテープカセットは、第1実施形態及び第4実施形態で説明した効果のほかに、感熱テープ74をテープカセット300へ組付ける作業性を向上させつつ当該組付作業時に感熱テープ74がバラケてしまうことを防止できるという効果を有する。
[第6実施形態]
【0081】
続いて、図15及び図16に基づいて第6実施形態のテープカセット400について説明する。第6実施形態のテープカセット400は、被印字テープ84が巻回されたテープスプール107に凹溝部を形成せず、当該テープスプール107が嵌挿するカセットボス141の長孔42からリブ143を斜めに立設させる点以外は第3実施形態のテープカセット200とほぼ同様である。
【0082】
すなわち第6実施形態において被印字テープ84が巻回されたテープスプール107の外観は、図12に示すレセプターテープ14を巻回したテープスプール97と同様である。
また図16(A)のように、長孔42、42の基端部42A、42Aから立設すると共に凸部144を備えたリブ143、143は、下端部143A、143Aから上方に向うに連れて外側に傾斜する。
【0083】
図16(B)に示すように、被印字テープ84を巻回したテープスプール107は、各リブ143先端に形成されるテーパ面143Bに案内されてスムーズにカセットボス141に取り付けられる。すると、リブ143、143がテープスプール107の内周面107Dに押圧されて、内側に撓み変形する。そして凸部144、144がテープスプール107の内周面107Dを押圧する力によってテープスプール107の回転が規制される。
【0084】
図15のように、凸部144、144は、テープスプール107の内周面107Dを180°離れた2箇所において互いに反対方向に押圧しているため、テープスプール107は回転を停止した状態で安定する。
また、凸部144の先端面144Aは、テープスプール107をカセットボス141に嵌挿する際にテープスプール107の内周面107Dと面一になるように、平面視においてカセットボス141の中心軸を中心とする円弧状に形成される。これにより、凸部144の先端面144A全体がテープスプール107の内周面107Dに密着するので、摩擦によるテープスプール107の回転規制力をより高めることができる。
【0085】
続いて図16(C)のように、上ケース102を下ケース303に嵌着して下ケース303の上面を閉塞する。
第3実施形態と同様に、上ケース102下面において長孔42、42と対応する位置に形成される係止突起90、90の各先端部90B、90Bが長孔42、42に外側から嵌入し、各先端部90B、90Bの上面が各長孔上壁部45、45の下端面に当接する。同時に、係止突起90の先端部90Bはリブ143の先端に当接してリブ143を内側に押圧する。リブ143のテーパ面143Bと、係止突起90のテーパ面90Cとが当接して、リブ143の先端が係止突起90の押圧力を確実に受ける。これにより、リブ143は下端部143Aを中心に内側方向に更に撓み変形し、凸部144がテープスプール107の内周面107Dから離間して、テープスプール107が回転可能になる。
【0086】
従って、第6実施形態のテープカセット400では、上記の第1実施形態のテープカセット1及び第4実施形態のテープカセットが奏する効果のほかに、凸部144は印刷後に両面粘着テープ82と貼り合わされる印刷面を備える被印字テープ84が巻回されるテープスプール107の回転を規制するから、当該被印字テープ84をテープカセット400へ組付ける際の作業性を向上させつつ当該組付け作業時に被印字テープ84がバラケてしまうことを防止することができる。
【0087】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば実施形態ではレセプターテープ又は感熱テープ用のカセットボスと、被印字テープ用のカセットボスのいずれかにテープスプール回転規制のためのリブを設けたが、両方のカセットボスにリブが形成されたテープカセットも、当然本発明に包含される。
【0088】
また、リブの位置は、必ずしも長孔の基端部である必要はなく、例えば長孔の位置と略直交するカセットボスの基端部に配置してもよい。その場合は、カセットボスの一部を棒状に形成してリブとするのでもよい。なお、上ケースには長孔上壁部に係止する突起部のほかに、リブを押圧するための突起部を別に設ければよい。
【0089】
また、本発明は例えばインクリボンを巻回するスプールに用いてもよいが、インクリボンよりも実施形態で挙げたレセプターテープ、感熱テープ及び被印字テープの方が、テープ厚さ等の理由からバラケやすく、本発明の効果が大きい。
【0090】
また第3〜5実施形態では、テープスプールの回転規制をするリブを斜めに立設させたが、凸部をより高くしたり、リブの形状を変形する等によって凸部によりテープスプールの内周面を押圧する力を高めることも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1、100、200、300、400 テープカセット
2、102 上ケース
3、103、203、303 下ケース
14 レセプターテープ
17、87、97、107 テープスプール
17D、87D、97D、107D テープスプール内周面
18、88 凹溝部
31、41 カセットボス
32、42 長孔
32A、42A 長孔の基端部
33、43、133、143 リブ
35、45 長孔上壁部
34、44、134、144 凸部
60、90 係止突起
74 感熱テープ
84 被印字テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープが巻回されたテープスプールと、
前記テープスプールが回転可能に取り付けられるボス部を有すると共に上面が開放される下ケースと、
前記下ケースの上面を開閉する上ケースと、
を備えるテープカセットにおいて、
前記下ケースは、平面視において先端が前記ボス部よりも外側に突出する凸部を有し、
前記凸部は、前記テープスプールを前記ボス部に取り付けると前記テープスプールの内周面に接触してテープスプールの回転を規制すると共に、前記上ケースが下ケースの上面を閉塞すると前記テープスプールの内周面から離間する方向に変動してテープスプールの回転規制を解除することを特徴とするテープカセット。
【請求項2】
前記テープスプールの内周面には凹溝部が少なくとも一つ形成され、
前記凸部が前記凹溝部と嵌合することにより前記テープスプールの回転が規制されることを特徴とする請求項1に記載のテープカセット。
【請求項3】
前記凸部と前記テープスプールの内周面との摩擦により前記テープスプールの回転が規制されることを特徴とする請求項1に記載のテープカセット。
【請求項4】
前記下ケースは樹脂製であって一体成型により底面に立設して撓み変形可能な棒状のリブを有すると共に前記凸部は前記リブに形成され、
前記上ケースは、前記下ケースの前記リブに対応する位置に配設される突起部を有し、
前記上ケースが前記下ケースを閉塞する時に前記突起部が前記リブを押圧して撓み変形させることにより前記凸部を前記テープスプール内周面から離間させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテープカセット。
【請求項5】
前記ボス部は円筒状であって、軸方向に長い長孔と、長孔の上側で長孔と連続する長孔上壁部とを有し、
前記突起部は、前記上ケースが前記下ケースを閉塞する際に前記長孔上壁部に係止し、
前記リブは前記長孔の基端部から立設し、当該リブと前記長孔上壁部とは前記下ケース底面に対して垂直な同一直線上に形成されることを特徴とする請求項4に記載のテープカセット。
【請求項6】
前記テープスプールに巻回するテープは、印刷面の裏面に粘着剤層を備えてセパレータが貼り付けられるレセプターテープであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のテープカセット。
【請求項7】
前記テープスプールに巻回するテープは、感熱発色層の裏面に粘着剤層を備えてセパレータが貼り付けられる感熱テープであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のテープカセット。
【請求項8】
前記テープスプールに巻回するテープは、印刷後に両面粘着テープと貼り合わされる印刷面を備える被印字テープであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のテープカセット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−30433(P2012−30433A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170627(P2010−170627)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】