説明

テープ巻取リール

【課題】テープ巻取部にスリットを形成することなく、巻き取ったカバーテープをまとまった状態で容易且つ確実に取り外すことができるようにする。
【解決手段】テープフィーダのベース部に固定され、回転軸を中心に回転される固定側リール14と、該固定側リールと一体的に回転する分離可能な脱着側リールとからなるテープ巻取リールにおいて、前記固定側リールのフランジ14Aと前記脱着側リールのフランジ16Aとの間のテープ巻取部が、軸方向途中の接合部14B、16Bで分離可能に接合された、固定側巻取部14Cと脱着側巻取部16Cとから形成され、前記固定側巻取部及び前記脱着側巻取部の各外周が、同一径の各接合部から、対応する各フランジに向かって角度θで漸増する径からなる円周面で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ巻取リール、特にキャリアテープに封入された電子部品を所定位置に供給するテープフィーダにおいて、キャリアテープから引き剥がされたカバーテープを巻き取って回収する際に適用して好適なテープ巻取リールに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板等の基板上に電子部品を搭載する表面実装装置では、所定のピックアップ位置に電子部品を供給するために、いわゆるテープフィーダ(部品供給装置)が使用されている。
【0003】
このようなテープフィーダでは、ベーステープのキャビティ内にチップ状の電子部品を収容するとともに、該電子部品をカバーテープで封入したキャリアテープを、間欠的に送り出すとともに、下流側の剥離位置でカバーテープを剥がしてピックアップ位置に電子部品を供給するようにしている。
【0004】
このようにテープフィーダでは、電子部品を供給する際にキャリアテープから剥離したカバーテープを回収する必要があるが、そのために従来より回収用の巻取リールが用いられている。
【0005】
このような巻取リールでは、回収したカバーテープを最終的には取り外して除去する必要があるが、そのためにカバーテープを巻き戻したのでは時間がかかる上に面倒である。
【0006】
そこで、特許文献1では、カバーテープを簡単に取り外すことができる、図17に示すような巻取リール100を開示している。
【0007】
この巻取リール100では、巻取部109にスリット111を形成し、これよって巻取部109の一部が半径方向に変形可能にしてある。そして、ドライブホイール103を上記巻取リール100に組み合せると、押上げ爪105によって巻取部109が半径方向外周側に押し上げられるようにし、リール100をドライブホイール103から分離すると、押上げ爪105による押し上げが解除され、トップテープ(カバーテープ)の巻締め力によって巻取部109が半径方向中心側に変形することから、トップテープが容易に取り外すことができるようにしている。
【0008】
このように、従来の巻取リール100では、ロック開閉時に押上げ爪105により押し上げられる、樹脂性の巻取部109の半径方向の弾性変形を利用して、カバーテープの取り外しを容易にしている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−186145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に開示されている巻取リール100には、巻取部109と巻き取られたテープとの関係を詳細に観察し検討した結果、押上げ爪105による押し上げを解除するためにロック開方向に回すと、スリット111にテープが入り込んで弾性変形ができなくなってしまうことからロックが解除しにくくなることが起こる上に、巻き取られているテープの束をまとまったままの状態で取り外すことができなくなるという問題があることが明らかになった。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、巻取部にスリットを形成することなく、巻き取ったカバーテープをまとまった束のままの状態で容易且つ確実に取り外すことができるテープ巻取リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、テープフィーダのベース部に固定され、回転軸を中心に回転される固定側リールと、該固定側リールと一体的に回転する分離可能な脱着側リールとからなるテープ巻取リールにおいて、前記固定側リールのフランジと前記脱着側リールのフランジとの間のテープ巻取部が、軸方向途中の接合部で分離可能に接合された、固定側巻取部と脱着側巻取部とから形成され、前記固定側巻取部及び前記脱着側巻取部の各外周が、同一径の各接合部から、対応する各フランジに向かって漸増する径からなる円周面で形成されているようにしたことにより、前記課題を解決したものである。
【0013】
本発明においては、前記固定側巻取部及び前記脱着側巻取部の少なくとも一方の外周には、軸方向に沿って複数のリブ部が所定の間隔を隔てて形成されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、テープ巻取部を接合部から2つの巻取部に分離させるだけで、各巻取部には外側に向かって拡径する円周面が形成されているため、カバーテープ自体の半径方向の締付け力を利用して、該カバーテープを各巻取部から離脱させることが可能となることから、まとまった束のままの状態で容易且つ確実に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1には、本発明に係る一実施形態のテープ巻取リール10と、これが適用されるテープフィーダ1との関係の概要を示す。
【0017】
本実施形態のテープ巻取リール10は、図2、図3に拡大して示すように、テープフィーダ1のベース部1Aに固定され、回転軸12を中心に回転される固定側リール14と、該固定側リール14と組合せることにより一体的に回転する分離可能な脱着側リール16とを備えている。
【0018】
又、図4には、図3のように一体的に組合せてベース部1Aに取付けた状態の側面図を、図5には、軸中心を通る図4のW−W断面図を、それぞれ示す。なお、図5中、符号18は、ワンウェイクラッチである。
【0019】
本実施形態のテープ巻取リール10の特徴を説明するために、ベース部1Aから取り外した状態を図6に、その正面図を図7に、図7の一点鎖線で囲んだ範囲を拡大した部分正面図を図8に、それぞれ示す。
【0020】
本実施形態では、前記固定側リール14のフランジ14Aと前記脱着側リール16のフランジ16Aとの間のテープ巻取部が、図7では矢印Bで分離(分割)位置を示すように、軸方向途中(ここでは中間位置)の各接合部14B、16Bで分離可能に接合された固定側巻取部14Cと脱着側巻取部16Cとから形成されている。
【0021】
又、前記固定側巻取部14C及び脱着側巻取部16Cの各外周が、各接合部14B、16Bでは同一径で、対応する外側の各フランジに向かって漸増する径からなる円周面で形成されている。図8には、円周面が、いずれも軸中心に対して傾斜角θの拡径端面で形成されている状態を示してある。
【0022】
更に、本実施形態では、固定側巻取部14Cの外周には、図9に示した固定側リール14の一点鎖線の範囲を拡大した図10にも示すように、軸方向に沿って複数のリブ部14Dが所定の間隔を隔てて形成されている。
【0023】
一方、脱着側巻取部16Cの外周は、前記のようにフランジ16A方向には固定側巻取部14Cと同様に拡径されているが、脱着側リール16を示す図11の一点鎖線の範囲を拡大した図12に示すように、リブ部の無い平坦な円周面で形成されている。
【0024】
次に、固定側リール14に対する脱着側リール16の着脱を容易に実現するためのロック機構について説明する。
【0025】
図13(A)には脱着側リール16の側面図を、同図(B)にはその右正面図を、同図(C)には(A)のX−X位置の断面図をそれぞれ示す。
【0026】
この脱着側リール16には、前記回転軸12を中心とする3箇所の対称位置に、接合部16Bの接合端面より内側に、該端面に平行なロック爪20とロックガイド22が形成されている。
【0027】
一方、図14(A)には、固定側リール14の側面図を、同図(B)にはその右正面図を、同図(C)には(A)のY−Y位置の断面図をそれぞれ示す。
【0028】
この固定側リール14には、前記脱着側リール16に組合せた場合に、そのロック爪20とロックガイド22にそれぞれ対応する位置関係で、逆方向に延びるロック爪24、ロックガイド26が、接合部14Bの接合端面より外側に突出して形成されている。
【0029】
そして、図14(A)の固定側リール14に、図13(A)の状態の脱着側リール16を、回転軸12に中心が一致するように重ね合わせ、該脱着側リール16を回転させることにより、図15(A)、(B)に両リールのロック前とロック後のロック爪とロックガイドの関係をそれぞれ示すように、容易且つ確実に両リール14、16を一体的に組合せることができる。
【0030】
即ち、脱着側リール16の装着時には、ロック方向に回転させると、脱着側ロックガイド22が、固定側ロックガイド26の内側面をスライドしながら、脱着側ロック爪20が固定側ロック爪24の凸部24Aを乗り越えた後に引っ掛かってロックされる構造になっている。
【0031】
又、両ロックガイド22、26は、ロック時の脱着側リールのガイドの他に、軸方向の抜け止めとしても機能しており、又、3箇所に設けられているため、使用中にロック爪が1箇所破損した場合であっても、テープ巻取リールとして十分に機能するようになっている。
【0032】
以上の構成からなる本実施形態のテープ巻取リールの作用を以下に説明する。
【0033】
本実施形態のテープ巻取リール10では、カバーテープが固定側フランジ14Aと脱着側フランジ16Aをガイドにしながら接合位置Bで分離可能な固定側巻取部14Cと脱着側巻取部16Cとからなるテープ巻取部に巻き取られる。
【0034】
その際、初期段階で巻き取られたカバーテープの締付け力がテープ巻取部の中心軸に対して垂直に作用するが、固定側巻取部14Cと脱着側巻取部16Cはそれぞれ外側のフランジ14A、16Aに向かって角度θで拡径する方向に傾斜しているため、各巻取部14C、16Cに対してそれぞれ前記図8に併記したように外側に押し拡げようとする力Fがはたらく構造になっている。
【0035】
従来のテープ巻取部は傾斜角度が0°(水平)であるため、テープの締付け力はテープ巻取部の外周の円周面に対して垂直に作用することになる。従って、カバーテープの巻き取りが完了した後、該テープを取り外そうとした場合、従来のテープ巻取リールでは、テープの取り外しが困難になる。
【0036】
これに対して、本実施形態によれば、前述した如く前記図8に示した力Fにより脱着側リール16の分離取り外しが容易である上に、固定側リール14の巻取部14Cの軸方向に角度θをもっているため、同様にこの力Fにより簡単に巻き付いているカバーテープを取り外すことが可能となる。
【0037】
更に、本実施形態では、脱着側巻取部16Cの周囲は単純な円周面であるのに対し、前記図10に示したように、固定側巻取部14Cの周囲には脱着側巻取部16Cと同径の円周面に複数のリブ部14Dが所定の間隔で形成された形状になっている。そのため、図16に最初のカバーテープTが巻き付けられているイメージを拡大して示すように、リブ部14Dに対してTa、Tbで示す位置のカバーテープTによる締付け力が集中するために、隣り合うリブ部14D間に該テープTが緊張した状態で巻き付けられることになる。
【0038】
従って、リブ部14D間の巻取部14Cの周面部への締付け力は、有ったとしても極めて小さいために、摩擦力が小さいまま巻き取ることが可能となることから、所定の巻き取りが完了した後のカバーテープTが巻かれたままの状態でも一段と容易に取り外すことが可能となる。
【0039】
なお、前記実施形態では、固定側巻取部14Cと脱着側巻取部16Cの接合位置が軸方向の中間である場合を示したが、これに限定されず接合位置は任意である。
【0040】
又、リブ部は、前述した固定側巻取部14Cに限らず、脱着側巻取部16Cに設けても、あるいは両方に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る一実施形態のテープ巻取リールが適用されたテープフィーダの概要を示す斜視図
【図2】テープフィーダのベース部に取り付けられた本実施形態の固定側リールを拡大して示す斜視図
【図3】図2の固定側リールに脱着側リールを組み合せて完成させたテープ巻取リールを示す斜視図
【図4】図3に示したテープ巻取リールの側面図
【図5】図4のW−W位置における断面図
【図6】テープフィーダから分離した状態の本実施形態のテープ巻取リールを示す斜視図
【図7】図6のテープ巻取リールの正面図
【図8】図7の一部を拡大した正面図
【図9】固定側リールを単独で示す斜視図
【図10】図9に示した固定側リールの一部を拡大した斜視図
【図11】脱着側リールを単独で示す斜視図
【図12】図11に示した脱着側リールの一部を拡大した斜視図
【図13】脱着側リールのロック機構を示す側面図、正面図、要部断面図
【図14】固定側リールのロック機構を示す側面図、正面図、要部断面図
【図15】固定側リールと脱着側リールのロック前とロック後の各状態を示す要部断面図
【図16】固定側巻取部に巻き付けられたカバーテープとリブ部の関係のイメージを拡大して示す説明図
【図17】従来のテープ巻取リールの特徴を示す側面図
【符号の説明】
【0042】
1…テープフィーダ
1A…ベース部
10…テープ巻取リール
12…回転軸
14…固定側リール
14A…固定側フランジ
14B…固定側接合部
14C…固定側巻取部
14D…リブ部
16…脱着側リール
16A…脱着側フランジ
16B…脱着側接合部
16C…脱着側巻取部
18…ワンウェイクラッチ
20…脱着側ロック爪
22…脱着側ロックガイド
24…固定側ロック爪
26…固定側ロックガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープフィーダのベース部に固定され、回転軸を中心に回転される固定側リールと、該固定側リールと一体的に回転する分離可能な脱着側リールとからなるテープ巻取リールにおいて、
前記固定側リールのフランジと前記脱着側リールのフランジとの間のテープ巻取部が、軸方向途中の接合部で分離可能に接合された、固定側巻取部と脱着側巻取部とから形成され、
前記固定側巻取部及び前記脱着側巻取部の各外周が、同一径の各接合部から、対応する各フランジに向かって漸増する径からなる円周面で形成されていることを特徴とするテープ巻取リール。
【請求項2】
前記固定側巻取部及び前記脱着側巻取部の少なくとも一方の外周には、軸方向に沿って複数のリブ部が所定の間隔を隔てて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のテープ巻取リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−83641(P2010−83641A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256277(P2008−256277)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】