説明

テープ案内機構、磁気テープドライブ及び磁気テープの製造方法

【課題】テープの走行位置を精度良く規制することができるとともに、走行するテープに生じた振動の伝藩を防ぐことができるテープ案内機構を提供することを課題とする。
【解決手段】走行する磁気テープMTを案内するためのテープ案内機構であって、磁気テープMTが接触する円周面を有し、走行する磁気テープMTを案内する溝付ガイドローラ18と、溝付ガイドローラ18を軸回りに回転させるガイドローラ駆動装置22(ガイドローラ駆動手段)とを備え、溝付ガイドローラ18の円周面には、溝付ガイドローラ18の軸回りに螺旋状の凹溝が形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ等のテープを案内するためのテープ案内機構、磁気テープの記録又は再生を行うための磁気テープドライブ、及び磁気テープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気テープは、高密度記録化が進んでおり、コンピュータのバックアップ用では400ギガバイト程度の記憶容量を有するものがある。そのために、磁気テープには幅方向に数百本のデータトラックが形成されている。したがって、データトラックの幅は非常に狭くなっており、隣接するデータトラック間も非常に狭くなっている。そのため、磁気ヘッドの記録/再生素子をデータトラックにトレースさせるために、磁気テープにサーボ信号を予め書き込んでおき、このサーボ信号を磁気ヘッドで読み取ることにより、磁気ヘッドの位置(磁気テープの幅方向の位置)をサーボ制御している。
【0003】
そして、磁気テープにサーボ信号を書き込むためのサーボライタとしては、図6に示すように、送出リール11から送り出した磁気テープMTを巻取リール12で巻き取って走行させる磁気テープ走行系と、磁気テープMTにサーボ信号を書き込むサーボ信号書込ヘッド16と、走行する磁気テープMTのテンションを調節するテンション調節部13と、を備えているサーボライタ100がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
テンション調節部13は、走行する磁気テープMTの振れを防ぐために、磁気テープMTに長手方向のテンションを与えるものであり、例えば、走行する磁気テープMTの一部を吸い込むことにより、磁気テープMTに長手方向のテンションを与える構成や、走行する磁気テープMTが掛け渡されたテンションローラを移動させて磁気テープMTの一部を引き込むことにより、磁気テープMTに長手方向のテンションを与える構成がある。
【0005】
また、前記した従来のサーボライタ100では、走行する磁気テープMTを案内するガイドローラ19及びテープガイド20が複数設けられている。ガイドローラ19は、走行する磁気テープMTを案内する円周面を有する円筒状のローラ本体を備えており、送出リール11と巻取リール12の間に配置されている。テープガイド20は、走行する磁気テープMTをサーボ信号書込ヘッド16の記録面に沿わせるための部材であり、二体のテープガイド20,20がサーボ信号書込ヘッド16の両側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−259239号公報(段落0018〜0024、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した従来のサーボライタ100では、走行する磁気テープMTのエッジを、ガイドローラ19やテープガイド20のフランジ部に摺動させて、磁気テープMTの走行位置を規制しており、磁気テープMTのエッジが長手方向に湾曲している場合には、磁気テープMTはエッジの湾曲に沿ってテープ幅方向に振れることになり、書き込まれたサーボ信号がテープ幅方向に変動して、磁気テープMTに書き込まれた信号の位置ずれ量のばらつきを示すPES(Position Error Signal)が大きくなってしまう。これにより、磁気テープ記録再生装置では、サーボ信号の読み取りエラーが生じて、磁気ヘッドの位置制御を正確に行えなくなってしまうという問題がある。
【0008】
また、前記した従来のサーボライタ100では、走行する磁気テープMTのエッジがテンション調節部13の部品に擦れることにより、磁気テープMTに振動が生じるとともに、走行する磁気テープMTのエッジがテープガイド20に擦れることにより、磁気テープMTに振動が生じることになる。そして、テンション調節部13及びテープガイド20で生じた磁気テープMTの振動が共振し、この共振の影響により、磁気テープMTに書き込まれたサーボ信号に長手方向の変動成分が現れてしまうという問題がある。
【0009】
なお、磁気テープMTの走行を案内する各ガイドローラ19では、走行する磁気テープMTの周囲を流れる空気(以下、「同伴空気」という場合がある。)が磁気テープMTとローラ本体の間に入り込み、この同伴空気によって磁気テープMTとローラ本体の間に空気層が生じるため、磁気テープMTはローラ本体の円周面から浮いた状態で走行することになる。このように、走行する磁気テープMTがガイドローラ19のローラ本体に接触しないため、ローラ本体の円周面上で磁気テープMTがテープ幅方向に振れ易いとともに、磁気テープMTに生じた振動がガイドローラ19に案内されている部位を通過し、磁気テープMTの長手方向に伝播して共振することになる。
【0010】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、テープの走行位置を精度良く規制することができるとともに、走行するテープに生じた振動の伝藩を防ぐことができるテープ案内機構を提供することを課題とする。
また、磁気テープに信号やデータを正確に記録することができ、または、磁気テープから信号やデータを正確に読み取ることができる磁気テープドライブを提供することを課題とする。
また、磁気テープにサーボ信号を正確に書き込むことができる磁気テープの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、走行するテープを案内するためのテープ案内機構であって、テープが接触する円周面を有し、走行するテープを案内するガイドローラと、ガイドローラを軸回りに回転させるガイドローラ駆動手段と、を備え、ガイドローラの円周面には、ガイドローラの軸回りに螺旋状の凹溝が形成されていることを特徴としている。
【0012】
このように、ガイドローラの円周面に凹溝を形成することにより、走行するテープとガイドローラの間に入り込む同伴空気(走行するテープの周囲を流れる空気)が、ガイドローラの円周面に形成された凹溝から外部に排出され、走行するテープがガイドローラの円周面に接触することになる。このように、走行するテープがガイドローラに接触した状態で、テープの走行速度とガイドローラの回転速度に差がある場合には、テープのテープ面とガイドローラの円周面の間に滑りが生じ、その摩擦抵抗力によってガイドローラからテープに引張力が作用することになる。
具体的には、テープの走行速度に対して、ガイドローラの回転速度が遅い場合には、ガイドローラからテープに対して走行方向の後方に向けて引張力が作用し、テープの走行速度に対して、ガイドローラの回転速度が速い場合には、ガイドローラからテープに対して走行方向の前方に向けて引張力が作用することになる。
そして、凹溝はガイドローラの軸回りに螺旋状に形成されており、ガイドローラの円周面において、凹溝以外のテープに接触する部位も凹溝に沿って螺旋状に形成されるため、ガイドローラからテープに作用する引張力は、凹溝の傾斜方向に沿って、テープの走行方向に対して斜めに作用し、走行するテープはガイドローラの円周面上で幅方向の一方に寄ることになる。
したがって、テープの走行速度に対して、ガイドローラの回転速度が遅い場合と速い場合では、ガイドローラからテープに対して作用する引張力の向きが逆方向となり、走行するテープが幅方向に寄る方向も逆方向となる。さらに、テープの走行速度とガイドローラの回転速度との差を調節し、テープとガイドローラの間の摩擦抵抗力を変化させることにより、走行するテープを幅方向に寄せる力を調節することができる。
このように、本発明のテープ案内機構では、テープの走行速度とガイドローラの回転速度の関係を調節することにより、テープの走行位置を精度良く規制することができる。
また、ガイドローラの円周面の両端縁にフランジ部を形成し、このフランジ部にテープのエッジを摺動させる場合であっても、走行するテープを幅方向に寄せる力を調節することにより、テープのエッジとフランジ部の接触圧を調節することができ、テープの損傷を防ぐことができる。
【0013】
また、走行するテープとガイドローラの間に入り込む同伴空気が、ガイドローラの円周面に形成された凹溝から外部に排出され、走行するテープがガイドローラの円周面に接触するため、テープに生じた振動の伝播を防ぐことができる。
【0014】
前記したテープ案内機構は、テープをガイドローラの円周面に巻き掛けるラップ角を調節するラップ角調節手段を備えているように構成することができる。
【0015】
ここで、テープをガイドローラの円周面に巻き掛けたときのラップ角が小さい場合には、テープとガイドローラの円周面の接触面積が小さくなり、走行するテープとガイドローラの摩擦抵抗力が小さくなる。また、テープをガイドローラの円周面に巻き掛けたときのラップ角が大きい場合には、テープとガイドローラの円周面の接触面積が大きくなり、走行するテープとガイドローラの間の摩擦抵抗力が大きくなる。このように、ラップ角調節手段によって、テープをガイドローラの円周面に巻き掛けるラップ角を調節して、テープとガイドローラの間の摩擦抵抗力を変化させることにより、テープを幅方向に寄せる力を調節することができ、テープの走行位置を精度良く規制することができる。
【0016】
前記したテープ案内機構は、テープの走行位置から基準位置までの変化量を検出するテープ検出手段と、テープが基準位置で走行するように、テープ検出手段によって検出された変化量に基づいて、ガイドローラの回転速度を調節する制御手段と、を備えているように構成することができる。
【0017】
この構成では、テープの走行位置から基準位置までの変化量をテープ検出手段によって検出している。ここで、テープの適正な走行位置を基準位置に設定することにより、テープの走行位置から基準位置までの変化量は、テープの走行位置のずれ量を示していることになる。そして、制御手段では、その変化量(ずれ量)に基づいて、テープが基準位置を走行するように、ガイドローラの回転速度を調節して、テープの走行位置を規制するため、テープの走行位置のずれを確実に修正することができる。
【0018】
また、本発明は、磁気テープの記録又は再生に用いられる磁気テープドライブであって、送出リールから送り出した磁気テープを巻取リールで巻き取って走行させる磁気テープ走行系と、走行する磁気テープの記録又は再生を行う磁気ヘッドと、を備え、走行する磁気テープを、前記したテープ案内機構によって案内するように構成されていることを特徴としている。
【0019】
この構成によれば、ガイドローラの回転速度を調節することにより、走行する磁気テープを幅方向に寄せる方向及びその力を変化させて、磁気テープの走行位置を精度良く規制することができるため、磁気テープを磁気ヘッドに対して適正な位置で走行させることができる。
また、走行する磁気テープがガイドローラに接触しており、磁気テープに生じた振動の伝播を防ぐことができるため、ガイドローラに対して、磁気テープ走行方向の上流側で磁気テープに生じた振動と、下流側で磁気テープに生じた振動とが磁気テープの長手方向に伝播して共振することを防ぐことができ、この共振が磁気ヘッドの記録又は再生に与える影響を防ぐことができる。
【0020】
また、本発明は、磁気テープの製造方法であって、送出リールから送り出した磁気テープを巻取リールで巻き取って走行させる磁気テープ走行系と、走行する磁気テープのサーボバンドに、磁気ヘッドのトラッキング制御をするためのサーボ信号を書き込むサーボ信号書込ヘッドと、を備え、走行する磁気テープを、前記したテープ案内機構によって案内するように構成されているサーボライタを用いており、磁気テープ走行系によって、磁気テープを送出リールから巻取リールに向けて走行させる段階と、走行する磁気テープを前記したテープ案内機構によって案内しながら、サーボ信号書込ヘッドによって、磁気テープのサーボバンドにサーボ信号を書き込む段階と、を含むことを特徴としている。
【0021】
この構成によれば、ガイドローラの回転速度を調節することにより、走行する磁気テープを幅方向に寄せる方向及びその力を変化させて、磁気テープの走行位置を精度良く規制することができるため、磁気テープをサーボ信号書込ヘッドに対して適正な位置で走行させることができる。
また、走行する磁気テープがガイドローラに接触しており、磁気テープに生じた振動の伝播を防ぐことができるため、ガイドローラに対して、磁気テープ走行方向の上流側で磁気テープに生じた振動と、下流側で磁気テープに生じた振動とが磁気テープの長手方向に伝播して共振することを防ぐことができ、この共振がサーボ信号の書込みに与える影響を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のテープ案内機構によれば、ガイドローラの回転速度を調節することにより、走行するテープを幅方向に寄せる方向及びその力を変化させて、テープの走行位置を精度良く規制することができるため、テープを適正な位置で走行させることができる。
【0023】
また、テープとガイドローラの間に入り込む同伴空気は、ガイドローラの円周面に形成された凹溝から外部に排出され、走行するテープがガイドローラに接触するため、テープに生じた振動の伝播を防ぐことができる。
【0024】
本発明の磁気テープドライブによれば、ガイドローラの回転速度を調節することにより、磁気テープの走行位置を精度良く規制することができるため、磁気テープを磁気ヘッドに対して適正な位置で走行させることができる。また、磁気テープに生じた振動の伝播を防ぐことができるため、ガイドローラの上流側と下流側で生じた振動の共振を防ぐことができ、この共振が磁気ヘッドの記録又は再生に与える影響を防ぐことができる。したがって、本発明の磁気テープドライブでは、磁気テープに信号やデータを良好な記録状態で記録することができ、または、磁気テープから信号やデータを正確に読み取ることができる。
【0025】
本発明の磁気テープの製造方法によれば、ガイドローラの回転速度を調節することにより、磁気テープの走行位置を精度良く規制することができるため、磁気テープをサーボ信号書込ヘッドに対して適正な位置で走行させることができる。また、磁気テープに生じた振動の伝播を防ぐことができるため、ガイドローラの上流側と下流側で生じた振動の共振を防ぐことができ、この共振がサーボ信号の書込みに与える影響を防ぐことができる。したがって、本発明の磁気テープの製造方法によれば、磁気テープにサーボ信号を正確に記録することができ、高品質な磁気テープを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第一実施形態のサーボライタを示した構成図である。
【図2】第一実施形態の溝付ガイドローラを示した図で、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図3】第一実施形態の溝付ガイドローラを示した図で、(a)は磁気テープの走行速度に対して、ローラ本体の回転速度が遅い場合の平面図、(b)は磁気テープの走行速度に対して、ローラ本体の回転速度が速い場合の平面図である。
【図4】第一実施形態の変形例の磁気テープ記録再生装置を示した構成図である。
【図5】第二実施形態のラップ角調節装置を示した図で、(a)は磁気テープをローラ本体の円周面の頂部に対して水平に巻き掛けた場合の側面図、(b)は磁気テープをローラ本体の円周面の頂部に対して垂直に巻き掛けた場合の側面図である。
【図6】従来のサーボライタを示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0028】
<第一実施形態>
第一実施形態では、磁気テープにサーボ信号を書き込むためのサーボライタについて説明した後に、そのサーボライタを用いた磁気テープの製造方法について説明する。
なお、以下の説明において、上流側、下流側とは、磁気テープ走行方向の上流側、下流側を示している。
【0029】
[サーボライタの構成]
図1は、第一実施形態のサーボライタを示した構成図である。
図1に示す第一実施形態のサーボライタ10は、磁気テープMTのサーボバンドにサーボ信号を書き込むための装置であり、送出リール11、巻取リール12、リール駆動装置14、テンション調節部13、テープ検出装置21(特許請求の範囲における「テープ検出手段」)、パルス発生回路15、サーボ信号書込ヘッド16、制御装置17(特許請求の範囲における「制御手段」)を備えている。
【0030】
また、サーボライタ10には、走行する磁気テープMTを案内する溝付ガイドローラ18、ガイドローラ19及びテープガイド20が設けられており、溝付ガイドローラ18を回転駆動させるためのガイドローラ駆動装置22(特許請求の範囲における「ガイドローラ駆動手段」)を備えている。
なお、前記した溝付ガイドローラ18、ガイドローラ駆動装置22、テープ検出装置21、制御装置17が特許請求の範囲に記載の「テープ案内機構」に相当するものである。
【0031】
(送出リール及び巻取リールの構成)
送出リール11では、幅広のウェブ原反から製品幅に裁断された磁気テープMTが、大径巻のパンケーキにセットされており、サーボ信号の書き込み時に磁気テープMTを送り出すように構成されている。
この送出リール11から送り出された磁気テープMTは、ガイドローラ19、溝付ガイドローラ18、テープガイド20に案内されてサーボ信号書込ヘッド16に搬送される。
そして、サーボ信号書込ヘッド16を通過した磁気テープMTは、テープガイド20、溝付ガイドローラ18、ガイドローラ19に案内されて巻取リール12に搬送される。
巻取リール12は、リール駆動装置14によって回転駆動することにより、サーボ信号書込ヘッド16を通過した磁気テープMTを巻き取るように構成されている。
【0032】
(リール駆動装置の構成)
リール駆動装置14は、巻取リール12を回転駆動するための装置であり、図示しないモータ及びそのモータに電流を供給するためのモータ駆動回路、さらにモータ軸と巻取リール12を連結するためのギヤ等を備えている。
このリール駆動装置14では、制御装置17からのモータ電流信号に基づいてモータ駆動回路でモータ電流を発生させ、このモータ電流をモータに供給することにより、ギヤを介してモータの回転駆動力を巻取リール12に伝達して、巻取リール12を回転駆動させるように構成されている。
【0033】
なお、前記した送出リール11、巻取リール12、リール駆動装置14が特許請求の範囲に記載の「磁気テープ走行系」に相当するものである。
【0034】
(テンション調節部の構成)
テンション調節部13は、走行する磁気テープMTの振れを防ぐために、磁気テープMTに長手方向のテンションを与える装置であり、サーボ信号書込ヘッド16の上流側及び下流側にそれぞれ設けられている。このテンション調節部13は、走行する磁気テープMTのテープ面の近傍で空気を吸引して、磁気テープMTの一部を吸い込むことにより、磁気テープMTに長手方向のテンションを与える公知のエアチャンバである。
【0035】
(テープ検出装置の構成)
テープ検出装置21は、磁気テープMTの走行位置から、予め設定された基準位置までの変化量を検出する装置である。ここで、基準位置とは、サーボ信号書込ヘッド16によって磁気テープMTの適正な位置にサーボ信号が書き込まれるときの磁気テープMTの走行位置である。すなわち、テープ検出装置21では、磁気テープMTの走行位置のずれ量を検出している。
【0036】
このテープ検出装置21は、磁気テープMTを挟んで上下に配置された投光部21a、受光部21bを備えている。投光部21aでは、磁気テープMTのエッジを含む領域に光を照らしており、受光部21bでは、磁気テープMTによって遮られなかった光を検出している。そして、テープ検出装置21では、受光部21bで検出された光量に基づいて、磁気テープMTのエッジの位置から基準位置までの変化量を検出し、その変化量を示す検出信号を制御装置17に送信するように構成されている。
【0037】
なお、磁気テープMTのエッジの位置から基準位置までの変化量を検出する方法としては、磁気テープMTのエッジを含む領域に光を照らし、その領域の明部と暗部の境界を画像で認識することにより、磁気テープMTのエッジの位置から基準位置までの変化量を検出することもできる。このように、磁気テープMTのエッジの位置から基準位置までの変化量を検出するための装置は限定されるものではなく、各種公知の装置を用いることができる。
【0038】
(パルス発生回路の構成)
パルス発生回路15は、サーボ信号書込ヘッド16に記録パルス電流を供給する回路であり、各種電子部品を備えている。
このパルス発生回路15では、制御装置17からのパルス制御信号に基づいて、記録パルス電流を発生させている。そして、パルス発生回路15では、記録パルス電流をサーボ信号書込ヘッド16のコイル(図示せず)に供給している。
【0039】
(サーボ信号書込ヘッドの構成)
サーボ信号書込ヘッド16は、磁気テープMTのサーボバンドにサーボ信号を書き込むための磁気ヘッドであり、磁束を発生するためのコイル(図示せず)を備えるとともに、ヘッドギャップ(図示せず)が形成されている。
このサーボ信号書込ヘッド16では、磁気テープMTの幅方向における各サーボバンドの位置に対応させて、複数のヘッドギャップが一列に配置されている。
【0040】
(テープガイドの構成)
テープガイド20は、サーボ信号書込ヘッド16の上流側及び下流側にそれぞれ一体ずつ配置されており、走行する磁気テープMTをサーボ信号書込ヘッド16の記録面に沿わせて走行させるための部材である。
このテープガイド20は、摺接抵抗が少なく、耐摩耗性に優れたセラミックス等の非磁性体によって略直方体に形成されている。
【0041】
サーボ信号書込ヘッド16の上流側に配置されたテープガイド20aの下面は、斜め下方に向かって走行する磁気テープMTを、水平方向に案内するように円弧形状のガイド面となっている。そして、テープガイド20aに案内された磁気テープMTが、サーボ信号書込ヘッド16の記録面に沿って走行するように構成されている。
一方、サーボ信号書込ヘッド16の下流側に配置されたテープガイド20bの下面は、サーボ信号書込ヘッド16の記録面を通過して水平方向に走行する磁気テープMTを、斜め上方に向けて案内するように円弧形状のガイド面となっている。
【0042】
(ガイドローラの構成)
溝付ガイドローラ18及びガイドローラ19は、走行する磁気テープMTが所定の方向に搬送されるように、送出リール11と巻取リール12の間に配置されており、二体の溝付ガイドローラ18,18と複数のガイドローラ19によって、走行する磁気テープMTを案内するように構成されている。
ここで、特許請求の範囲に記載の「ガイドローラ」は、溝付ガイドローラ18であり、その他のガイドローラ19は、磁気テープMTを案内する公知のガイドローラであるため、本実施形態では説明を省略する。
【0043】
(溝付ガイドローラの構成)
図2は、第一実施形態の溝付ガイドローラを示した図で、(a)は斜視図、(b)は平面図である。図3は、第一実施形態の溝付ガイドローラを示した図で、(a)は磁気テープの走行速度に対して、ローラ本体の回転速度が遅い場合の平面図、(b)は磁気テープの走行速度に対して、ローラ本体の回転速度が速い場合の平面図である。
なお、以下の説明において、左右方向とは、図2及び図3に示した左右方向に対応している。
【0044】
溝付ガイドローラ18は、図1に示すように、サーボ信号書込ヘッド16の上流側及び下流側で、各テンション調節部13,13とテープガイド20a,20bの間にそれぞれ配置されている。なお、サーボ信号書込ヘッド16の上流側及び下流側に設けられた各溝付ガイドローラ18,18は同じ構成であるため、本実施形態では、サーボ信号書込ヘッド16の上流側に設けられた溝付ガイドローラ18について説明し、サーボ信号書込ヘッド16の下流側に設けられた溝付ガイドローラ18については説明を省略する。
【0045】
溝付ガイドローラ18は、図2に示すように、円筒状のローラ本体18aを備えており、ガイドローラ駆動装置22(図2参照)によって、ローラ本体18aが磁気テープ走行方向に沿って軸回りに回転駆動するように構成されている。そして、ローラ本体18aの円周面18bに、磁気テープMTのテープ面を接触させることにより、走行する磁気テープMTを案内するように構成されている。また、ローラ本体18aの円周面18bの幅方向における両端縁には、全周に亘ってフランジ部18cが立ち上げられている。
【0046】
ローラ本体18aの円周面18bには、ローラ本体18aの軸回りに凹溝18dが形成されている。この凹溝18dは、図2(b)に示す平面視で左上から右下に向かって傾斜した螺旋状に形成されている。また、凹溝18dは、円周面18bの幅方向における断面形状がV字形状となっている。
【0047】
ここで、溝付ガイドローラ18によって磁気テープMTを案内したときには、磁気テープMTとローラ本体18aの間に入り込む同伴空気が凹溝18dから外部に排出され、走行する磁気テープMTのテープ面がローラ本体18aの円周面18bに吸い付けられて接触した状態となる。
そして、磁気テープMTと、軸回りに回転駆動するローラ本体18aとが接触している状態で、磁気テープMTの走行速度とローラ本体18aの回転速度に差がある場合には、磁気テープMTのテープ面とローラ本体18aの円周面18bの間に滑りが生じ、その摩擦抵抗力によってローラ本体18aから磁気テープMTに引張力が作用することになる。
【0048】
前記したように、ローラ本体18aの円周面18bの凹溝18dは、ローラ本体18aの軸回りに螺旋状に形成されており、円周面18bにおいて、凹溝18d以外の磁気テープMTに接触する部位も凹溝18dに沿って螺旋状に形成されているため、ローラ本体18aから磁気テープMTに作用する引張力は、凹溝18dの傾斜方向に沿って、磁気テープ走行方向に対して斜めに作用し、走行する磁気テープMTはローラ本体18aの円周面18b上で幅方向の一方に寄ることになる。
【0049】
具体的には、図3(a)に示すように、磁気テープMTの走行速度に対して、ローラ本体18aの回転速度が遅い場合には、ローラ本体18aから磁気テープMTに対して、磁気テープ走行方向の後方に向けて、図3(a)の平面視で右下から左上に引張力が作用する。この引張力により、走行する磁気テープMTは円周面18b上で左側に寄ることになる。
また、図3(b)に示すように、磁気テープMTの走行速度に対して、ローラ本体18aの回転速度が速い場合には、ローラ本体18aから磁気テープMTに対して、磁気テープMT走行方向の前方に向けて、図3(b)の平面視で左上から右下に引張力が作用する。この引張力により、走行する磁気テープMTは円周面18b上で右側に寄ることになる。
このように、磁気テープMTの走行速度に対して、ローラ本体18aの回転速度が遅い場合と速い場合では、ローラ本体18aから磁気テープMTに対して作用する引張力の向きが逆方向になり、走行する磁気テープMTが円周面18b上で寄る方向も左右逆方向となる。
【0050】
(ガイドローラ駆動装置の構成)
ガイドローラ駆動装置22は、図1に示すように、各溝付ガイドローラ18,18のローラ本体18aを軸回りに回転駆動させるための装置であり、図示しないモータ及びそのモータに電流を供給するためのモータ駆動回路、さらにモータ軸とローラ本体18aを連結するためのギヤ等を備えている。
このガイドローラ駆動装置22では、制御装置17からのモータ電流信号に基づいてモータ駆動回路でモータ電流を発生させ、このモータ電流をモータに供給することにより、ギヤを介してモータの回転駆動力をローラ本体18aに伝達して、ローラ本体18aを回転駆動させるように構成されている。
なお、第一実施形態では、ガイドローラ駆動装置22は、ローラ本体18aを磁気テープMTの走行速度の50〜150%の速度で回転駆動させるように構成されている。
【0051】
(制御装置の構成)
制御装置17は、サーボライタ10の各部の動作を制御する装置であり、CPU(Central Processing Unit)や各種記憶装置等を備えている。
この制御装置17では、サーボ信号を書き込むときの磁気テープMTの走行速度を一定にするために、リール駆動装置14のモータ電流を制御するためのモータ電流信号を生成して、リール駆動装置14に送信するように構成されている。
また、制御装置17では、サーボ信号書込ヘッド16によって磁気テープMTに書き込まれるサーボ信号が所定のサーボパターンとなるように、記録パルス電流の電流値、パルス幅及び発生タイミングを制御するためのパルス制御信号を生成して、パルス発生回路15に送信するように構成されている。
【0052】
さらに、制御装置17では、磁気テープMTの走行位置のずれを修正して、磁気テープMTが基準位置を走行するように、テープ検出装置21からの検出信号(磁気テープMTの走行位置の変化量)に基づいて、ガイドローラ駆動装置22のモータ電流を制御するためのモータ電流信号を生成して、ガイドローラ駆動装置22に送信するように構成されている。
【0053】
[磁気テープの製造方法]
次に、前記サーボライタ10を用いた磁気テープMTの製造方法について説明する。
まず、図1に示すように、サーボライタ10の送出リール11として、パンケーキ状の磁気テープMTをセットし、磁気テープMTの先端を引き出す。この磁気テープMTの先端をガイドローラ18,19及びテープガイド20を介して巻取リール12の巻心に結合する。
この状態でリール駆動装置14によって巻取リール12を回転駆動させて、磁気テープMTを巻取リール12に巻き取らせることにより、磁気テープMTを送出リール11から巻取リール12に向けて走行させる。
このとき、走行する磁気テープMTをテンション調節部13で吸い込み、走行する磁気テープMTに長手方向のテンションを与えることにより、走行する磁気テープMTの振れを防ぐことができる。
【0054】
また、テープ検出装置21では、磁気テープMTの走行位置から基準位置までの変化量を検出し、その変化量を示す検出信号を制御装置17に送信する。そして、制御装置17では、テープ検出装置21からの検出信号に基づいてモータ電流信号を生成し、ガイドローラ駆動装置22に送信する。
【0055】
このとき、磁気テープMTの走行位置が基準位置よりも幅方向の右側に変化している(ずれている)場合には、制御装置17では、図3(a)に示すように、磁気テープMTの走行速度に対して、ローラ本体18aの回転速度が遅くなるように、ガイドローラ駆動装置22にモータ電流信号を送信する。これにより、ローラ本体18aから磁気テープMTに対して、図3(a)の平面視で右下から左上に向かって引張力が作用し、走行する磁気テープMTを円周面18b上で左側に寄せることができるため、磁気テープMTを基準位置で走行させることができる。
【0056】
また、磁気テープMTの走行位置が基準位置よりも幅方向の左側にずれている場合には、制御装置17では、図3(b)に示すように、磁気テープMTの走行速度に対して、ローラ本体18aの回転速度が速くなるように、ガイドローラ駆動装置22にモータ電流信号を送信する。これにより、ローラ本体18aから磁気テープMTに対して、図3(b)の平面視で左上から右下に向かって引張力が作用し、走行する磁気テープMTを円周面18b上で右側に寄せることができるため、磁気テープMTを基準位置で走行させることができる。
【0057】
このように、制御装置17では、テープ検出装置21によって検出された磁気テープMTの走行位置の変化量に基づいて、磁気テープMTの走行速度と、ローラ本体18aの回転速度との関係を調節することにより、磁気テープMTが基準位置を走行するように精度良く規制することができ、サーボ信号書込ヘッド16(図1参照)に対して、磁気テープMTを直線状に安定して走行させることができる。
また、溝付ガイドローラ18の円周面18bの両端縁に形成されたフランジ部18cに磁気テープMTのエッジを摺動させる場合であっても、走行する磁気テープMTを幅方向に寄せる力を調節することにより、磁気テープMTのエッジとフランジ部18cの接触圧を調節することができ、磁気テープMTの損傷を防ぐことができる。
【0058】
このように、適正な走行位置に規制された磁気テープMTには、図1に示すように、サーボ信号書込ヘッド16によって、サーボ信号が正確に書き込まれることになる。
具体的には、制御装置17からのパルス制御信号に基づいて、パルス発生回路15から記録パルス電流がサーボ信号書込ヘッド16のヘッドギャップのコイルに流される。そして、パルス発生回路15からサーボ信号書込ヘッド16に記録パルス電流が供給されると、サーボ信号書込ヘッド16のヘッドギャップからの漏れ磁束によって磁気テープMTの磁性層が磁化され、磁気テープMTのサーボバンドにサーボパターンが形成されることになる。
【0059】
サーボ信号が書き込まれた磁気テープMTは、巻取リール12に巻き取られた後に、製品の仕様に応じたテープ長さに裁断されて、カートリッジケース等に収納される(図示せず)。
【0060】
ここで、磁気テープMTを走行させたときには、走行する磁気テープMTのエッジがテンション調節部13の部品に擦れることにより、溝付ガイドローラ18の上流側で磁気テープMTに振動が生じることになる。また、走行する磁気テープMTのエッジがテープガイド20aに擦れることにより、溝付ガイドローラ18の下流側で、磁気テープMTに振動が生じることになる。
【0061】
図2に示す溝付ガイドローラ18では、走行する磁気テープMTとローラ本体18aの間に入り込む同伴空気は、ローラ本体18aの円周面18bに形成された凹溝18dから外部に排出され、走行する磁気テープMTがローラ本体18aの円周面18bに接触するため、磁気テープMTに生じた振動の伝播を防ぐことができる。したがって、溝付ガイドローラ18の上流側で磁気テープMTに生じた振動と、下流側で磁気テープMTに生じた振動とが磁気テープMTの長手方向に伝播して共振することを防ぐことができ、この共振がサーボ信号の書き込みに与える影響を防ぐことができる。
【0062】
このように、溝付ガイドローラ18、ガイドローラ駆動装置22、テープ検出装置21、制御装置17からなるテープ案内機構を用いたサーボライタ10(図1参照)では、磁気テープMTにサーボ信号を正確に記録することができるため、高品質な磁気テープMTを製造することができる。
【0063】
[変形例]
次に、本発明の第一実施形態の変形例について説明する。例えば、図2(b)に示す第一実施形態の溝付ガイドローラ18では、ローラ本体18aの円周面18bに形成された凹溝18dを、図2(b)に示す平面視で左上から右下に向かって傾斜した螺旋状に形成しているが、この溝付ガイドローラ18とは反対に、平面視で右上から左下に向かって傾斜した螺旋状の凹溝を形成してもよい。この構成では、磁気テープの走行速度に対して、ローラ本体の回転速度を調節したときに、走行する磁気テープが円周面上で幅方向に寄る方向が、前記した溝付ガイドローラ18の場合とは反対方向になる。
【0064】
また、図2に示す第一実施形態の溝付ガイドローラ18では、ローラ本体18aの円周面18bに、断面形状がV字形状の凹溝18dを形成しているが、凹溝18dの断面形状は限定されるものではなく、矩形状、半円形状等の凹溝を形成してもよい。さらに、凹溝18dの幅方向の断面積は限定されるものではなく、走行する磁気テープMTとローラ本体18aの間に入り込む同伴空気を外部に排出可能な大きさであればよい。
【0065】
また、第一実施形態では、図1に示すように、二体の溝付ガイドローラ18,18を各テンション調節部13,13とテープガイド20a、20bの間にそれぞれ設けているが、溝付ガイドローラ18をその他のガイドローラ19に適用することにより、サーボライタ10の各部において、磁気テープMTを安定して走行させることができるとともに、磁気テープMTに生じた振動の伝播を防ぐことができる。
【0066】
また、第一実施形態では、テンション調節部13は、走行する磁気テープMTの一部を吸い込むことにより、磁気テープMTに長手方向のテンションを与えるエアチャンバを用いているが、その構成は限定されるものではなく、走行する磁気テープMTが掛け渡されたテンションローラを移動させて磁気テープMTの一部を引き込むことにより、磁気テープMTに長手方向のテンションを与えるように構成してもよい。
【0067】
また、第一実施形態では、図1に示すように、磁気テープMTにサーボ信号を書き込むためのサーボライタ10に本発明を適用した場合について説明したが、各種の磁気テープドライブに適用することができる。図4は、磁気テープ記録再生装置に本発明を適用した場合を示しており、この磁気テープ記録再生装置10´によれば、前記したテープ案内機構を用いることにより、磁気テープMTを記録再生ヘッド16´に対して適正な位置で走行させることができる。また、磁気テープMTに生じた振動が伝播して共振することを防ぐことができ、この共振が記録再生ヘッド16´の記録又は再生に与える影響を防ぐことができる。したがって、磁気テープMTにデータを良好な記録状態で記録することができるとともに、磁気テープMTからデータを正確に読み取ることができる。
【0068】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図5は、第二実施形態のラップ角調節装置を示した図で、(a)は磁気テープをローラ本体の円周面の頂部に対して水平に巻き掛けた場合の側面図、(b)は磁気テープをローラ本体の円周面の頂部に対して垂直に巻き掛けた場合の側面図である。
【0069】
第二実施形態のサーボライタは、前記した第一実施形態のサーボライタ10(図1参照)と略同様の構成であり、磁気テープを溝付ガイドローラのローラ本体の円周面に巻き掛けるラップ角を調節するラップ角調節装置(特許請求の範囲における「ラップ角調節手段」)を備えていることが異なっている。
【0070】
ラップ角調節装置23は、図5(a)に示すように、溝付ガイドローラ18の上流側に配置されており、基端部23aを中心にして、縦方向に回動自在なアーム部23bを備えている。このアーム部23bの先端部には、磁気テープMTの幅方向に軸方向が配置された円筒状の回転ローラ23cが、軸回りに回転自在に取り付けられている。この回転ローラ23cの円周面は、磁気テープMTの上面に接触しており、水平方向に走行する磁気テープMTのテープ上面で回転ローラ23cが転動するように構成されている。なお、図5(a)では、磁気テープMTがローラ本体18aの円周面18bの頂部に対して水平(0度のラップ角)に巻き掛けられている。
【0071】
また、図5(b)に示すように、基端部23aを中心にしてアーム部23bを下方に向けて回動させるとともに、アーム部23bを溝付ガイドローラ18側に移動させて、回転ローラ23cを溝付ガイドローラ18よりも下方に移動させ、回転ローラ23cによって磁気テープMTを引き降ろすことにより、磁気テープMTをローラ本体18aの円周面18bの頂部に対して垂直(90度のラップ角)に巻き掛けた状態にすることができる。
ここでは、磁気テープMTをローラ本体18aの円周面18bの頂部に対して0度のラップ角(水平)に巻き掛ける場合と、90度のラップ角(垂直)に巻き掛ける場合について説明したが、アーム部23bの角度を調節することにより、0〜90度の間でラップ角を調節することができる。
【0072】
そして、図5(a)に示すように、磁気テープMTをローラ本体18aの円周面18bに巻き掛けたときのラップ角が小さい場合(0度)には、磁気テープMTとローラ本体18aの円周面18bとの接触面積が小さくなり、走行する磁気テープMTとローラ本体18aの間の摩擦抵抗力が小さくなる。また、磁気テープMTをローラ本体18aの円周面18bに巻き掛けたときのラップ角が大きい場合(90度)には、磁気テープMTとローラ本体18aの円周面18bとの接触面積が大きくなり、走行する磁気テープMTとローラ本体18aの間の摩擦抵抗力が大きくなる。
【0073】
このように、第二実施形態のサーボライタでは、ラップ角調節装置23によって、磁気テープMTをローラ本体18aの円周面18bに巻き掛けるラップ角を変化させて、磁気テープMTとローラ本体18aの間の摩擦抵抗力を変化させることにより、磁気テープMTを幅方向に寄せる力を調節することができ、磁気テープMTの走行位置を精度良く規制することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 サーボライタ
11 送出リール
12 巻取リール
13 テンション調節部
14 リール駆動装置
15 パルス発生回路
16 サーボ信号書込ヘッド
17 制御装置
18 溝付ガイドローラ
18a ローラ本体
18b 円周面
18c フランジ部
18d 凹溝
20 テープガイド
21 テープ検出装置
22 ガイドローラ駆動装置
MT 磁気テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するテープを案内するためのテープ案内機構であって、
前記テープが接触する円周面を有し、走行する前記テープを案内するガイドローラと、
前記ガイドローラを軸回りに回転させるガイドローラ駆動手段と、を備え、
前記ガイドローラの円周面には、前記ガイドローラの軸回りに螺旋状の凹溝が形成されていることを特徴とするテープ案内機構。
【請求項2】
前記テープ案内機構は、前記テープを前記ガイドローラの円周面に巻き掛けるラップ角を調節するラップ角調節手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のテープ案内機構。
【請求項3】
前記テープ案内機構は、
前記テープの走行位置から基準位置までの変化量を検出するテープ検出手段と、
前記テープが前記基準位置で走行するように、前記テープ検出手段によって検出された変化量に基づいて、前記ガイドローラの回転速度を調節する制御手段と、を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープ案内機構。
【請求項4】
磁気テープの記録又は再生に用いられる磁気テープドライブであって、
送出リールから送り出した前記磁気テープを巻取リールで巻き取って走行させる磁気テープ走行系と、
走行する前記磁気テープの記録又は再生を行う磁気ヘッドと、を備え、
走行する前記磁気テープを、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のテープ案内機構によって案内するように構成されていることを特徴とする磁気テープドライブ。
【請求項5】
送出リールから送り出した磁気テープを巻取リールで巻き取って走行させる磁気テープ走行系と、
走行する前記磁気テープのサーボバンドに、磁気ヘッドのトラッキング制御をするためのサーボ信号を書き込むサーボ信号書込ヘッドと、を備え、
走行する前記磁気テープを、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のテープ案内機構によって案内するように構成されているサーボライタを用いた磁気テープの製造方法であって、
前記磁気テープ走行系によって、前記磁気テープを前記送出リールから前記巻取リールに向けて走行させる段階と、
走行する前記磁気テープを前記テープ案内機構によって案内しながら、前記サーボ信号書込ヘッドによって、前記磁気テープの前記サーボバンドに前記サーボ信号を書き込む段階と、
を含むことを特徴とする磁気テープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−59359(P2012−59359A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250456(P2011−250456)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2006−113583(P2006−113583)の分割
【原出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】