説明

テープ状酸化物超電導線の製造方法及びその製造装置

【課題】幅方向に均一な超電導特性を有する大面積(幅広)のテープ状酸化物超電導線を高速で製造する。
【解決手段】一対のリール5a、5b間にテープ状線材6を掛け渡し、反応性ガス供給管3aのガス供給孔からテープ状線材の上部側の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給してテープ状線材の膜体を超電導層に反応させるとともに、同時に反応後のガスの排出管4a、4bのガス排出孔から反応後のガスを排出する。同様に、テープ状線材6の下部側の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給し、テープ状線材の膜体を超電導層に反応させるとともに、同時に反応後のガスの排出管4c、4dのガス排出孔から反応後のガスを排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ状酸化物超電導線の製造方法及びその製造装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導マグネット等の機器や超電導ケーブルへの使用に適したテープ状のYBCO系(Y―Ba―Cu―O)の酸化物超電導線の製造方法として、非真空プロセスで製造可能な有機金属塩塗布熱分解(MOD)法によるものが知られている。
【0003】
この方法においては、基板上に中間層を形成し、その上に超電導体を構成する各金属元素を所定のモル比で含むトリフルオロ酢酸塩(TFA塩)を始めとするオクチル酸塩、ナフテン酸塩等の金属有機酸塩の混合溶液を基板上に塗布して仮焼した後、熱処理を施して超電導層を形成する。
【0004】
このようなテープ状の酸化物超電導線の長尺化を図るためには、処理炉に管状炉が用いられ、従来、炉心管の一方の端部から他方の端部に雰囲気ガス(反応性ガス)を流すことによって炉内の雰囲気を制御することが行われている。このように長尺材料に対して炉心管の軸方向にガスを流すと、長尺材料から反応時に発生するガスの影響によって炉心管の軸方向に雰囲気が変化し、長尺材料を均一に反応させることが極めて困難となることが知られている。
【0005】
特に、前述のTFAを仮焼した前駆体で、Fを含有した前駆体(ex-situ法)をテープ表面に成膜した後、これに熱処理を施してYBCO膜を形成する方法(TFA-MOD法)においては、前駆体膜にFを含んでおり、かつ熱処理時に水蒸気を使用するため、仮焼および熱処理時にHFが発生し、この反応後に発生するHFガスの影響により超電導特性が低下するという問題がある。
【0006】
このような問題を回避するためには、反応後のガスの影響を抑えて炉内の雰囲気を一定に保つために、炉心管の軸方向に対して垂直方向のテープ表面に沿って反応性ガスを流すことが必要となる。
【0007】
この炉心管の軸方向に対して垂直方向のテープ表面に沿って反応性ガスを流す雰囲気制御型熱処理炉として、同心状に配置された外管及び内側とからなる炉心管と、外管及び内管によって形成された円筒状空間を炉心管の軸方向に垂直な断面内において複数に分割する仕切板により複数のガス流路を形成し、複数のガス流路の内管のほぼ対向する位置に、それぞれ複数箇所のガス流出孔及びガス流入孔を設けた雰囲気制御型熱処理炉が知られている(特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−121076(第2頁右欄第24行〜31行、第37〜41行、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の炉心管の軸方向に対して垂直方向のテープ表面に沿って反応性ガスを流す雰囲気制御型熱処理炉においては、複数箇所のガス流出孔及びガス流入孔を有するガス流路に、同質のガスを異なる流速で供給することにより、ガス流出孔とガス流入孔との間に圧力差を生じさせることが可能となり、炉心管の軸方向に対する垂直方向のテープ表面に沿って反応性ガスを均一に流すことができる。
【0010】
しかしながら、上記の方法において、大面積の(幅広の)基板上に超電導前駆体の膜体を形成したテープ状線材を炉内に連続的に走行させて、膜体を超電導層に反応させると、テープの幅方向に結晶の成長速度が異なり、即ち、反応性ガスの供給側の結晶の成長速度に比較して反応後のガスの排出側の結晶の成長速度が著しく小さくなり、基板上の幅方向に均一な特性を有する超電導層を形成することが困難であることが判明した。
【0011】
その結果、大面積(幅広)のテープ状酸化物超電導線を得ることが困難であるという問題があった。
【0012】
本発明は、以上の問題を解決するためになされたもので、幅方向に均一な超電導特性を有する大面積(幅広)のテープ状酸化物超電導線を高速で製造することのできる製造方法及びそれに適合する装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の問題を解決するために、本発明のテープ状酸化物超電導線の製造方法は、テープ状の基板表面に、超電導前駆体の膜体を形成したテープ状線材を加熱帯域に連続的に走行させ、この加熱帯域において膜体の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給するとともに、膜面上から膜面に沿って両側から反応後のガスを排出し、膜体を反応結晶化させ、超電導層に形成させたものである。
【0014】
この場合において、反応性ガスの供給は、テープ状線材の走行方向に沿って複数箇所から供給されるととともに、反応後のガスの排出は、反応性ガスの供給に対応して膜面に沿って両側に複数箇所から排出されるようにすることが好ましい。
【0015】
また、以上の場合において、反応性ガスの供給は、膜面の幅方向に対応して複数箇所から供給されるようにすることが好ましい。
【0016】
また、テープ状酸化物超電導線の大面積化と高速化を同時に達成するために、テープ状線材は、加熱帯域の内部に配設された一対のリール間に少なくとも一回テープ状の基板がリールに接するように掛け渡され、リール間を走行するそれぞれの膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給することができる。
【0017】
この場合において、リール間に掛け渡されて反転するテープ状線材のそれぞれの膜面に対して反応性ガスが供給され、反応後のガスは膜面上から膜面に沿って両側から排出される。反応性ガスをテープ状線材の走行方向に沿って複数箇所から供給し、反応後のガスの排出を反応性ガスの供給に対応して膜面に沿って両側の複数箇所から排出するようにすること及び反応性ガスの供給を膜面の幅方向に対応して複数箇所から供給するようにすることが好ましいことは前述と同様である。
【0018】
以上のテープ状酸化物超電導線の製造方法は、テープ状の基板表面の超電導前駆体の膜体を、RE123系超電導体(ここでREは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu又はYから選択された1種又は2種以上の元素を示す。)を構成する元素を含む金属有機酸塩の混合物を塗布後、仮焼することにより形成されたものに用いる場合に好適する。
【0019】
さらに、上記の問題を解決するために、本発明のテープ状酸化物超電導線の製造装置は、テープ状の基板表面に超電導前駆体の膜体が形成されたテープ状線材を加熱反応させて超電導体を製造するための装置であって、(イ)テープ状線材が連続的に走行する管状炉と、(ロ)管状炉内の膜体の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給するためのガス供給孔と、(ニ)膜面上から膜面に沿って両側から反応後のガスを排出するためのガス排出孔とを備えるようにしたものである。
【0020】
上記の装置において、ガス供給孔をテープ状線材の走行路に沿って複数箇所設けるとともに、ガス排出孔をガス供給孔に対応して両側に複数箇所設けることが好ましい。この場合において、ガス供給孔は、膜面の幅方向に対応して複数箇所設けることが好ましい。
【0021】
また、本発明の目的は、テープ状の基板表面に超電導前駆体の膜体が形成されたテープ状線材を加熱反応させて超電導体を製造するための装置であって、(イ)テープ状線材が連続的に走行する管状炉と、(ロ)管状炉内部にテープ状線材を掛け渡すために配設された一対のリールと、(ハ)一対のリール間に掛け渡されて走行するテープ状線材のそれぞれの膜体の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給するためのテープ状線材の走行方向に沿って設けられた複数のガス供給孔と、
(ニ)ガス供給孔に対応して膜面上から反応後のガスを排出するための膜面に沿って両側に設けられた複数のガス排出孔とを備えたテープ状酸化物超電導線の製造装置によって達成することができる。
【0022】
以上の装置において、ガス供給孔を膜面の幅方向に対応して複数箇所設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、超電導層の結晶の成長速度がテープの幅方向に亘って均一なテープ状酸化物超電導線を製造することができ、有機金属塩塗布熱分解(MOD)法により幅30mm以上の大面積で長尺のテープ状酸化物超電導線を高速度で製造することができるため、その実用的価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明によるテープ状酸化物超電導線の製造装置10の一実施例を示す炉心管の軸方向を含む概略垂直断面図、図2は、その炉心管の軸方向に垂直な断面図である。以下、図1及び2を用いて説明する。
【0025】
図1及び2において、1は円筒状のヒーター、2はヒーター1と同心状に配設された管状炉、3a及び3bは管状炉2内部の上下に配設された反応性ガス供給管、4a、4b、4c及び4dは管状炉2内部に配設された反応後のガスの排出管、5a及び5bは管状炉2内部に配設された一対のリールを示す。
【0026】
ヒーター1は、管状炉2の外側に管状炉の軸方向の中央部に配設され、一対のリール5a、5bは、ヒーター1の軸方向の中央部に位置するように配設されている。
【0027】
反応性ガス供給管3aは、一対のリール5a、5b間に掛け渡されたテープ状線材6の上部側の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給するように、そのガス供給孔が膜面の上部に位置するように配設されている。一方、反応性ガス供給管3bは、一対のリール5a、5b間に掛け渡されたテープ状線材6の下部側の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給するように、そのガス供給孔が膜面の下部に位置するように配設されてる。
【0028】
反応後のガスの排出管4a、4bは、一対のリール5a、5b間に掛け渡されたテープ状線材6の上部側の膜面に沿って両側から反応後のガスを排出するように、
膜面の両側に沿ってそのガス排出孔が位置するように配設されている。一方、反応後のガスの排出管4c、4dは、一対のリール5a、5b間に掛け渡されたテープ状線材6の下部側の膜面に沿って両側から反応後のガスを排出するように、膜面の両側にそのガス排出孔が位置するように配設されている。
【0029】
このような装置において、テープ状の基板表面に超電導前駆体の膜体が形成されたテープ状線材6は、図1において左側から管状炉2内部に供給されて一対のリール5a、5b間に掛け渡され、右側から送出される。この場合において、テープ状線材6を一対のリール5a、5b間に複数回掛け渡して走行させ、熱処理を施すようにすることもできる。
【0030】
一対のリール5a、5b間に掛け渡されたテープ状線材6は、反応性ガス供給管3aのガス供給孔からその上部側の膜面に対して垂直方向から反応性ガスが供給され、テープ状線材6の膜体を超電導層に反応させるとともに、同時に反応後のガスの排出管4a、4bのガス排出孔から反応後のガスが排出される。同様に、一対のリール5a、5b間に掛け渡されたテープ状線材6は、反応性ガス供給管3bのガス供給孔からその下部側の膜面に対して垂直方向から反応性ガスが供給され、テープ状線材6の膜体を超電導層に反応させるとともに、同時に反応後のガスの排出管4c、4dのガス排出孔から反応後のガスが排出される。
【0031】
図3は、反応性ガス(A)の供給と反応後のガス(B)の排出方向を模式的に示したもので、走行するテープ状の基板6a表面に超電導前駆体の膜体6bが形成されたテープ状線材6の膜体6bの膜面に対して垂直方向から反応性ガス(A)が供給され、反応後のガス(B)は膜面に沿って両側から排出される。
【0032】
図4は、反応性ガス供給管3aの断面を示したもので、反応性ガス供給管3aは、円筒状のパイプ30の下部に矩形状のパイプ31が結合した形状を有し、この円筒状のパイプ30から矩形状のパイプ31内にガスを排出するための2つの開口部32が円筒状のパイプ30の中心軸に対して60度の角度をもって設けられている。また、この開口部32は、第1図において、反応性ガス供給管3aの右端の1箇所にのみ設けられている。矩形状のパイプ31には所定の間隔をもって3つのガス供給孔33が設けられており、これらのガス供給孔33は、反応性ガス供給管3aの軸方向に沿って所定の間隔をもって多数設けられている。
【0033】
反応性ガスは、円筒状のパイプ30から開口部32を通って矩形状のパイプ31内に排出され、テープ状線材6の走行方向と逆方向に進行し、過熱されながら多数のガス供給孔33からテープ状線材6に対して垂直方向に供給される。反応性ガス供給管3bも、反応性ガス供給管3aと同様の構造を有する。
【実施例】
【0034】
図1及び2に示すテープ状酸化物超電導線の製造装置10及び図4の反応性ガス供給管3a、3bにおいて、長さ1000mmの円筒状のヒーター1、長さ1460mm、内径216mmの管状炉2、内径φ12.5mmの円筒状のパイプ30及び内幅36.5mmの矩形状のパイプ31からなる反応性ガス供給管3a及び3b、内径φ12.5mmの反応後のガスの排出管4a、4b、4c及び4d、軸間距離400mm、外径φ100mmの一対のリールにより、製造装置10を構成した。
【0035】
尚、反応性ガス供給管3a及び3bについては、開口部32の径をφ6mm、
ガス供給孔33の径をφ0.35mm、ガス供給孔33の間隔を13mm、ガス供給孔33の分布長を300mmとし軸方向に2mmの間隔で形成した。
【0036】
(テープ状線材の準備)
YBCO系(123)超電導体を構成する各金属元素を所定のモル比で含むトリフルオロ酢酸塩(TFA塩)の混合溶液を用意し、この混合溶液をテープ状の基板表面にスピンコート法により塗布した後、400℃以下の低温でアルゴンガス中に酸素及び水蒸気を含有した混合ガスを供給しながら仮焼して、基板表面に厚さ2.0μmの超電導前駆体の膜体を形成して、テープ状線材を製造した。
【0037】
(平行流ガスによる結晶成長速度)
幅10〜30mmのテープ状線材を用いて、725〜800℃の温度に保持された炉内で超電導前駆体の膜体の膜面に沿う一側からアルゴンガス中に酸素及び水蒸気を含有した混合ガスを供給するとともとに、他側から反応後のガスを排出し、膜体を超電導層に反応させた。
【0038】
図5は、このようにして得られたテープ状の基板表面に形成された超電導層の結晶の成長速度とテープ状の基板端からの距離の関係を示す。また、同図には、同一の条件で計算した結晶の成長速度を同時に示した。
【0039】
この図から明らかなように、平行流に対して基板の幅が大きくなると、結晶の成長速度が著しく減少することが判る。即ち、反応性ガスの供給側の結晶の成長速度に比較して反応後のガスの排出側の結晶の成長速度が著しく小さくなり、基板上の幅方向に均一な特性を有する超電導層を形成することが困難となる。
【0040】
実施例1
図1及び2に示すテープ状酸化物超電導線の製造装置10を用いて、幅30mmのテープ状の基板表面に超電導前駆体の膜体を形成したテープ状線材を、725〜800℃の温度に保持された管状炉内に0.26m/hの速度で連続的に走行させ、この管状炉内で超電導前駆体の膜体の膜面に対して垂直方向からアルゴンガス中に酸素及び水蒸気を含有した混合ガスを3ノズル方式で供給するとともとに、膜面上から膜面に沿って両側から反応後のガスを排出し、膜体を超電導層に反応させた。
【0041】
図6は、このようにして得られた超電導層の幅方向の位置と結晶の成長速度との関係を示す。
【0042】
実施例2
実施例1と同様の方法により、基板表面に超電導前駆体の膜体を形成したテープ状線材を、管状炉内に連続的に走行させた。この管状炉内で超電導前駆体の膜体の膜面の中心部から垂直方向に1ノズル方式でアルゴンガス中に酸素及び水蒸気を含有した混合ガスを供給するとともとに、膜面上から膜面に沿って両側から反応後のガスを排出し、膜体を超電導層に反応させた。この場合において、図4の反応性ガス供給管3a、3bの矩形状のパイプ31には中心部のみにガス供給孔33が設けられたものを使用した。
【0043】
図6に、このようにして得られた超電導層の幅方向の位置と結晶の成長速度との関係を示した。
【0044】
比較例
実施例1と同様の方法により、基板表面に超電導前駆体の膜体を形成したテープ状線材を、管状炉内に連続的に走行させた。この管状炉内で超電導前駆体の膜体の膜面に沿って一方の側に設けられたガス供給孔から反応性ガスを供給するとともに、膜面に沿って反対側に設けられたガス排出孔から反応後のガスを排出させた。
【0045】
図6に、このようにして得られた超電導層の幅方向の位置と結晶の成長速度との関係を示した。
【0046】
以上の実施例1、2及び比較例の結果から明らかなように、比較例の平行流ガスによる方法では、テープ幅のガスの供給側から反応後のガスの排出側に向う程、反応後の排出物質の濃度が高くなるため、結晶の成長速度が供給ガスの供給側から反応後のガスの排出側に向って著しく減少して不均一となる傾向を示すのに対し、実施例2のガス供給孔33を中心部に設けた1ノズル方式では、結晶の成長速度が超電導層の幅方向に亘って均一であり、また、実施例1のガス供給孔33を中心部とその両側に設けた3ノズル方式では、結晶の成長速度が超電導層の幅方向に亘って均一である上、1ノズル方式に比較して、結晶の成長速度が全体に大きく改善される。
【0047】
実施例3
幅10mmのテープ状の基板表面に超電導前駆体の膜体を形成したテープ状線材を用い、一対のリール間にテープ状線材を3ターンさせたこと以外は、実施例1と同様の方法により膜体を超電導層に反応させた。
【0048】
図7は、上記の結果を示したもので、実施例と同様に結晶の成長速度が超電導層の幅方向に亘って均一である結果を示している。図7と実施例1(図1)との結晶の成長速度の差異は、反応性ガスの供給量(流速)の差に依存している。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、大面積で長尺のテープ状酸化物超電導線を高速で製造することを可能にし、特に、有機金属塩塗布熱分解(MOD)法により特性の優れたテープ状酸化物超電導線の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によるテープ状酸化物超電導線の製造装置の一実施例を示す炉心管の軸方向を含む概略垂直断面図である。
【図2】図1に示すテープ状酸化物超電導線の製造装置の炉心管の軸方向に垂直な断面図である。
【図3】本発明によるテープ状酸化物超電導線の製造方法における反応性ガス(A)の供給と反応後のガス(B)の排出方向を示す模式図である。
【図4】本発明によるテープ状酸化物超電導線の製造装置に用いられる反応性ガス供給管3aの断面図である。
【図5】従来の平行流方式による超電導層の幅方向の位置と結晶の成長速度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例及び比較例によるテープ状酸化物超電導線の製造方法によって製造された基板上に形成された超電導層の幅方向の位置と結晶の成長速度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の他の実施例によるテープ状酸化物超電導線の製造方法によって製造された基板上に形成された超電導層の幅方向の位置と結晶の成長速度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1 円筒状のヒーター
2 管状炉
3a、3b 反応性ガス供給管
4a、4b、4c、4d 反応後のガスの排出管
5a、5b 一対のリール
6 テープ状線材
6a テープ状の基板
6b 超電導前駆体の膜体
10 テープ状酸化物超電導線の製造装置
30 円筒状のパイプ
31 矩形状のパイプ
32 開口部
33 ガス供給孔
A 反応性ガス
B 反応後のガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の基板表面に、超電導前駆体の膜体を形成したテープ状線材を加熱帯域に連続的に走行させ、前記加熱帯域において前記膜体の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給するとともに、前記膜面上から前記膜面に沿って両側から反応後のガスを排出し、前記膜体を反応結晶化させ、超電導層を形成させることを特徴とするテープ状酸化物超電導線の製造方法。
【請求項2】
反応性ガスの供給は、前記テープ状線材の走行方向に沿って複数箇所から供給されるととともに、反応後のガスの排出は、前記反応性ガスの供給に対応して前記膜面に沿って両側の複数箇所から排出されることを特徴とする請求項1記載のテープ状酸化物超電導線の製造方法。
【請求項3】
反応性ガスの供給は、前記膜面の幅方向に対応して複数箇所から供給されることを特徴とする請求項1または2記載のテープ状酸化物超電導線の製造方法。
【請求項4】
テープ状線材は、加熱帯域の内部に配設された一対のリール間に少なくとも一回テープ状の基板が前記リールに接するように掛け渡され、前記リール間を走行するそれぞれの膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のテープ状酸化物超電導線の製造方法。
【請求項5】
超電導前駆体の膜体は、RE123系超電導体(ここでREは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu又はYから選択された1種又は2種以上の元素を示す。)を構成する元素を含む金属有機酸塩の混合物を塗布後、仮焼することにより形成されたことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載のテープ状酸化物超電導線の製造方法。
【請求項6】
テープ状の基板表面に超電導前駆体の膜体が形成されたテープ状線材を加熱反応させて超電導体を製造するための装置であって、
(イ)前記テープ状線材が連続的に走行する管状炉と、
(ロ)前記管状炉内の前記膜体の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給するためのガス供給孔と、
(ニ)前記膜面上から前記膜面に沿って両側から反応後のガスを排出するためのガス排出孔とを備えたことを特徴とするテープ状酸化物超電導線の製造装置。
【請求項7】
ガス供給孔は、テープ状線材の走行路に沿って複数箇所設けられるとともに、
ガス排出孔は、前記ガス供給孔に対応して両側に複数箇所設けられていることを特徴とする請求項6記載のテープ状酸化物超電導線の製造装置。
【請求項8】
ガス供給孔は、前記膜面の幅方向に対応して複数箇所設けられていることを特徴とする請求項6または7記載のテープ状酸化物超電導線の製造装置。
【請求項9】
テープ状の基板表面に超電導前駆体の膜体が形成されたテープ状線材を加熱反応させて超電導体を製造するための装置であって、
(イ)前記テープ状線材が連続的に走行する管状炉と、
(ロ)前記管状炉内部に、前記テープ状線材を掛け渡すために配設された一対のリールと、
(ハ)前記一対のリール間に掛け渡されて走行する前記テープ状線材のそれぞれの膜体の膜面に対して垂直方向から反応性ガスを供給するための前記テープ状線材の走行方向に沿って設けられた複数のガス供給孔と、
(ニ)前記ガス供給孔に対応して前記膜面上から反応後のガスを排出するための前記膜面に沿って両側に設けられた複数のガス排出孔とを備えたことを特徴とするテープ状酸化物超電導線の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−269347(P2006−269347A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88798(P2005−88798)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超電導応用基盤技術研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】