説明

テープ貼り付け治具

【課題】テープで被固定物を基材部に取り付ける場合に、所定の圧力で押圧を行うことが品質の均一化には必要であるが、従来は人の手による感覚に頼っていた。また、テープ等による接着には、接着箇所をもれなく押圧することが好ましいが、後から押圧を行った部分と行わなかった場所を見分けることも容易ではなかった。
【解決手段】貫通孔を有する弾性部材と、前記弾性部材を押圧し、前記弾性部材の貫通孔と同心上に穿設されたペン固定用貫通孔を有する台座と、塗布先端が前記ペン固定用貫通孔から前記弾性部材の貫通孔に挿入固定された塗布用ペンを有することを特徴とするテープ貼り付け治具は、決められた圧力以上の押圧処理を行ったことを、痕跡として残すことができるので、作業の完了と作業が行われた記録が一度にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープを用いて被固定物を基材部に固定する際のテープ貼り付け治具に係る。より具体的には、所定の圧力でテープを押圧し、また、押圧した事が後にチェックできるテープ貼り付け治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被固定物を基材部に固定する際には、ネジによる締結や、ロウ付け、溶接といった方法が用いられる。しかし、室内若しくは車両の車内設備関係では、金属に限らず、布や紙、プラスチック、被覆された線材なども取り扱う対象物となる。したがって、その固定方法も、糊、接着剤とともに、テープによる固定もある。具体的には、カーペット、壁紙などの直接人の目に触れる部分の部材や、伝送用のカプラ、車内配線などの固定である。
【0003】
これらの部材を固定する際は、糊やテープで張り付けた後、人の手感によって接着部分を押圧することで、接着を完了させる場合が多い。しかし、人の感覚による押圧は、個人差が生じるため、完成物の品質を一定に保持するのが容易ではない。また、所謂手作業となるため、工数がかかる。
【0004】
一方、押圧治具によって接着箇所に圧力を加える場合もある。この場合は、人の手による場合よりも、均一な圧力を加えることができ、完成品の品質を均一化するという点からは好ましい方法である。
【0005】
しかし、いずれの方法であったとしても、全ての接着箇所で適切な押圧がされたか否かという点の確認はできなかった。すなわち、複数の接着箇所で接着される仕様となっていたにもかかわらず、いくつかの接着箇所で押圧作業が忘れられていても、見掛けだけではそれを認識できない場合があった。
【0006】
例えば、一定の面積を有するカーペットの床面への接着や、所定の長さを有するカプラを複数箇所でテープ固定する場合などである。これらの場合、数か所で押圧作業が行われなくとも、作業直後は被固定物(この場合、カーペットやカプラ)は、一見固定されているように見える。しかし、接着が弱い箇所が残っているということであるから、経年的に固定がはずれ、不良となって顕在化するおそれがある。
【0007】
そこで、作業が行われた事を被作業体に記録として残すことが考えられる。特許文献1では、壁に硬質ウレタンフォーム層を吹き付け塗装する際の膜厚を確認する検査治具が開示されている。図5を参照して、この検査治具101は、インクを保持するインク保持部102とインク保持部102に隣接配置されたインク案内部103があり、測定針104がインク案内部103から外側に向かって突出固定されている。
【0008】
この治具は、吹き付け塗装を終えた壁に測定針104を突き立てる。測定針104の先端とインク案内部103との間の距離105を吹き付け塗装の膜厚に設定しておけば、所定の膜厚の吹き付けができていれば、塗装表面にインクが残る。一方、吹き付け塗装の膜厚が不足していれば、塗料の表面にインク跡は残らない。
【0009】
すなわち、インク跡が残っていない部分は、硬質ウレタンフォームの吹き付け厚が不足していたことがわかる。また、インク跡が残っていれば、所定の厚みの塗布が完了していることを表し、作業後にも所定厚みがあることを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−298730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の技術は作業完了の結果がインク跡として残るので、後から作業が適切に行われたことを確認することができる。しかし、特許文献1の方法は、作業結果が適正膜厚であったか否かという事の確認だけに終わる。したがって、適正に押圧出来たか否かという観点には応用できない。
【0012】
また、特許文献1の技術は、作業結果の良否の検査であり、作業と検査が独立してしまう。作業終了とともに、必ず適切な作業が行われたという痕跡が残るような方法でなければ、作業工程が増えてしまう。なぜなら、もし、良好な作業が行われなかったとしたら、追加の作業を行わなければならないからである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題に鑑みて相当されたものであり、押圧の結果が痕跡として残り、また適切な押圧作業の結果のときのみ痕跡が残るようなテープ貼り付け治具を提供するものである。
【0014】
具体的には、本発明のテープ貼り付け治具は、
貫通孔を有する弾性部材と、
前記弾性部材を押圧し、前記弾性部材の貫通孔と同心上に穿設されたペン固定用貫通孔を有する台座と、
塗布先端が前記ペン固定用貫通孔から前記弾性部材の貫通孔に挿入固定された塗布用ペンを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記の構成を有するので、弾性部材が所定長だけ圧縮されることで、作業面全体に所定の圧力がかかり、テープを押圧する。また、弾性部材が所定長だけ圧縮されたときにのみ、弾性部材の中央に設けられたペンの塗布先が、テープに当接し、塗布跡が残る。従って、痕跡が残っているということは、適切な押圧が施されたと判断できる。つまり、決められた圧力以上の押圧処理を行ったことを、痕跡として残すことができるので、作業の完了と作業が行われた記録が一度にできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のテープ貼り付け冶具の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の断面を示す図である。
【図3】本発明のテープ貼り付け冶具の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3の断面を示す図である。
【図5】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。なお、以下の説明は本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、下記の実施形態を変形してもよい。
【0018】
(実施の形態1)
図1に本発明のテープ貼り付け治具を示す。本発明のテープ貼り付け治具1は、弾性部材10と、台座12と、ペン16を有する。弾性部材10は、テープを直接押圧する部分である。テープ9に接触する押圧面を符号10aで表す。弾性部材10は、発泡ウレタン等の弾性を有する材料が好適に用いられる。幅は押圧されるテープ9より広ければ特に限定されるものではない。また、長さは作業がしやすい長さであれば、特に限定されるものではなく、適宜決めることができる。
【0019】
台座12は、弾性部材10上に配置され、弾性部材10を直接押圧する。従って、弾性部材10と接触する台座12の下面12aは、平坦であるのが好ましい。最も単純な台座12の形状は板状部材である。弾性部材10がテープ9全体を均一に押圧するためには、台座12は少なくとも弾性部材10と同じ面積若しくは広い面積であるのが望ましい。また台座12は弾性部材10に均一な圧力をかけるために、硬度が必要である。台座12に圧力をかけた時に、台座12自体が変形してしまっては、弾性部材10に均一な圧力がかからないからである。
【0020】
図2には、図1のA−Aの断面を示す。図2(a)を参照して、台座12および弾性部材10の中央部には、貫通孔が形成されている。台座12の貫通孔はペン固定用貫通孔12hとよび、弾性部材10の貫通孔は、弾性部材貫通孔10hとよぶ。これらの貫通孔は同心上に形成されているのが、好ましい。台座12および弾性部材10にペン16が挿入固定されるからである。台座12のペン固定用貫通孔12hの内側には、ネジ12sが削設されており、雄ネジが削設されたペン16を螺着させることができる。また、ペン固定用貫通孔12hには、ペンを固定しやすいように延設部12bを有していても良い。
【0021】
ペン16はペン先が塗布先端16aとなっており、この塗布先端16aが対象物(テープ9)に当接した時にインクを対象物に転写することができれば、構造として特に制限はない。ペン16には雄ネジが削設されているので、台座12に螺着させるときの挿入長によって、台座12の下面から塗布先端までの長さ16dを調節することができる。
【0022】
なお、ペン16および台座12の貫通孔の組合せで、台座12の下面12aより下側で塗布先端16aを固定させることができ、なおかつ台座12の下面12aから塗布先端16aまでの距離16dを調節できるようになっていれば、ペン16と台座12以外の部材を用いてもよい。また、上記の説明ではペン16に雄ネジを設け、台座12のペン固定用貫通孔12hの内壁に雌ネジ12sを設けた例を説明したが、これ以外の構成で、台座12の下面の所定位置にペン16の塗布先端16aが固定できるようにしてもよい。
【0023】
次に本発明のテープ貼り付け治具の使用方法を説明する。固定対象物90および91は、シート状の物品である。これをテープ9で固定する場合を示す。固定対象物90および91は、予め所定の位置に配置されている。それにテープ9を載置する。載置は、手動で行われてもよいし、機械的に置かれていてもよい。
【0024】
次に本発明のテープ貼り付け治具1を押圧面10aをテープ9に当接するように、テープ上に配置する(図1及び図2(a)参照)。そして、台座12を均等に押圧する。押圧は手動で行ってもよい。ただし、台座12全体が均一に押圧されるように注意が必要である。図2(b)を参照して、押圧された結果、弾性部材10は、押し込み量18だけ圧縮される。弾性部材10は、一体物として形成されているので、押し込み量18に比例した反発力Fが生じる。
【0025】
反発力Fは弾性部材10の内側から表面に向かって均等に発生し、テープ9部分にも圧力がかかる。この圧力は押し込み量18に比例すると考えられるので、予め所定の押圧力Fと押し込み量18との関係を求めておけば、所望の圧力を得るためには、どの程度の押し込み量18が必要かを知ることができる。
【0026】
そこで、その押し込み量18と同じ長さが、塗布先端16aから弾性部材10の押圧面10a(テープ9への接触面)までの距離になるように、台座12の下面12aから塗布先端16aまでの長さ16dを設定しておく。このようにすれば、所定の押し込み量18の時に、インクがテープ9表面に塗布され、押圧されたという痕跡を残すことができる。
【0027】
本発明のテープ貼り付け治具1は、テープ9に押圧痕跡を残すことが目的であるので、ペン16の位置は、テープ9を押圧する位置に配置されていればよい。例えば、テープ貼り付け治具1のデザインにより、台座12の端領域でテープ9に押圧を加えるのであれば、その部分にペン16を配置してよい。また、ペンの本数は1本である必要はなく、複数本が配置されていてもよい。
【0028】
(実施の形態2)
図3に本発明のテープ貼り付け治具2の他の実施形態を示す斜視図を示す。本実施の形態のテープ貼り付け治具2は、基本的に実施の形態1の場合と同じであるが、段差のある部分にテープ9を張り付ける場合に用いることができる。対象とする被固定物92は、断面方形状の長尺物で、具体的には、主としてカプラ等を配線する際に用いる配線ガード等が挙げられる。
【0029】
本実施の形態のテープ貼り付け治具2は、弾性部材11と台座12とペン16に加え、外枠20と押圧ハンドル22が追加される。弾性部材11の材質は、実施の形態1の場合と同じである。しかし断面形状は被固定物92である断面方形状の長尺物を跨いで載置できるように、下面に凹みの溝が形成されている。凹みの上面11aでは、被固定物92とテープ9の上面を押圧し、凹みの両裾面11bでは、基材部95とテープ9を押圧するためである。
【0030】
台座12は、弾性部材11の上面に配設されており、実施形態1と同じ平坦面を下面12aに持つ板状部材である。弾性部材11と同じか若しくは広い面積を有するのが好ましい。特に、弾性部材11の凹みの上面11aだけでなく、凹みの両裾面11b上を押圧できるだけの面積を有するのが好ましい。硬度を有するのが好ましい点も実施の形態1の場合と同じである。
【0031】
外枠20は、台座12と弾性部材11を囲むように形成されたドーム状の形状を有する。これは樋を逆さに伏せた形状ともいえる。外枠20には、台座12を押圧する力を加えるための押圧ハンドル22を外側から操作できるように、外枠貫通孔20hが形成されている。外枠20の内側面間の幅20wは、弾性部材11の幅と略一致するのが好ましい。これは、弾性部材11が押圧されることで、側面方向に変形するのを防止することで、被固定物92の側面にも押圧がかかるようにするためである。
【0032】
図4には、図3のB−B断面を示す。台座12の略中央および弾性部材11の中央にもそれぞれ、ペン固定用貫通孔12hおよび弾性部材貫通孔11hが形成されており、ペン固定用貫通孔12hには、印用のペン16が挿入固定されている点も、実施の形態1と同じである。
【0033】
押圧ハンドル22は、外枠20に形成された貫通孔20hを通じて外枠20の外側から台座12に押圧を加えることができるように構成されていれば、特に限定はされない。図4では、押し手22aにロッド22bが接続され、外枠20の貫通孔20hを貫いたロッド22bの先端が台座12に接続固定された押圧ハンドル22を示す。ロッド22bの中心は、中空状態になっており、ペン16が中空内で固定されている。押し手22aはロッド22bに一体的に形成されているが、ネジによって螺着されていてもよい。押し手22aの中心は貫通孔となっており、ペン16にインクを供給することができる。もちろん、押圧ハンドル22は、複数設けられていても良いし、また押圧ハンドルは、必ずしもペンを内装できなくてもよい。
【0034】
次に本実施の形態のテープ貼り付け治具の使用方法について説明する。図4を参照して、基材部95上に被固定物92を載置した後、接着テープ9は被固定物92と基材部95の両方にかかるように載置される。これは手動であってもよいし、機械的に載置されていてもよい。次に本発明のテープ貼り付け治具2を被固定物92が、弾性部材11の凹みに合わせて載置する(図4(a)参照)。その後、ペン16の塗布先端16aがテープ9の表面に当接するまで、押圧ハンドル22を押し下げる。
【0035】
弾性部材11は、側方を外枠20の内側面で規制され、下方は被固定物92とテープ9と基材部95で規制されたうえで、上方から台座12で圧力を加えられるので、基材部95および被固定物92に接着しているテープ9に押圧力F(図4(b)では矢印で示した。)をかける。この時の押圧力Fは、被固定物92の上面92u、側面92sに、基材部95上とほぼ同じ圧力を加えることができるので、均一な押圧処理を行うことができる。
【0036】
また、押圧ハンドル22と共にペン16が降下し、所定の押し下げ長だけ下がった際には、テープ9の表面に、塗料による痕跡が残るので、押圧処理が終了したことを後から確認することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のテープ貼り付け治具は、車両の内装や配線の取り回しを行う際に、利用できる他、家やオフィスなどの室内内装の際に、テープや接着剤を用いる箇所にも利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1、2 テープ貼り付け冶具
9 テープ
10、11 弾性部材
10a 押圧面
10h、11h 弾性部材貫通孔
11a 凹みの上面
11b 凹みの両裾面
12 台座
12a 台座の下面
12b 延設部
12h ペン固定用貫通孔
12s ネジ
16 ペン
16a 塗布先端
16d 台座12の下面から塗布先端までの長さ
18 押し込み量
20 外枠
20h 外枠貫通孔
20w 外枠の内側面間幅
22 押圧ハンドル
22a 押し手
22b ロッド
90、91 固定対象物
92 被固定物
92u 被固定物の上面
92s 被固定物の側面
95 基材部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ貼り付け治具であって、
貫通孔を有する弾性部材と、
前記弾性部材を押圧し、前記弾性部材の貫通孔と同心上に穿設されたペン固定用貫通孔を有する台座と、
塗布先端が前記ペン固定用貫通孔から前記弾性部材の貫通孔に挿入固定された塗布用ペンを有するテープ貼り付け治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−136237(P2012−136237A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288896(P2010−288896)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】