説明

ディスクアレイ記憶システムとその新設・増設時における初期化方法、及び初期化プログラム

【課題】ディスクアレイ記憶システムの新設又は増設時の初期化時間の短縮化をはかると共に、通常運用中の性能劣化も起こさない即応性と利便性の向上したディスクアレイ記憶システム、その初期化方法及び初期化プログラムを提供する。
【解決手段】アレイコントローラ50は、磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bを順次参照し初期化済みか否かを判別する判別手段51と、その判別の結果、初期化されていなければ、当該磁気ディスク装置のデータ記憶領域を初期化させるための指令を送るコマンド送出手段52と、全磁気ディスク装置21〜24の判別が終了すると、RAID構成にかかる情報を保存してRAID構成を終了する情報保存手段53と、各初期化確認領域21B〜24Bの初期化済み情報をリセット情報に変更するリセット手段54、及びこれら手段を全体として制御する主制御部56とを備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置を用いたディスクアレイ記憶システムに係り、特に、RAID技術を用いたディスクアレイ記憶システムの初期化構成を行なうディスクアレイ用初期化方法、そのシステム、及び初期化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置(Hard Disk Drive:HDD)(「磁気ディスク装置」ともいう)の集合を、記憶容量が大きく信頼性の高い記憶装置として構成し動作させるディスクアレイ記憶システムが広く用いられている。このディスクアレイ記憶システムでは、大容量化及び高性能化を図ると共に、必要な信頼性を確保するために磁気ディスク装置の冗長構成を利用するRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)技術が用いられている。RAID技術は、その冗長構成の形態によってレベル0からレベル6までの分類があることはよく知られている。
【0003】
ちなみに、RAID−1(レベル1)は、2台のHDDでペアを組み、2台のHDDに同じデータを書込むことで二重化する方法であり、ミラーリングとも呼ばれる。片方のHDDが故障しても片側だけで読み書きが正常に続けられるので信頼性は高いが、2倍のハードウェア構成を必要とし記憶容量の利用効率は50%で、コストが高い。
【0004】
また、RAID−5(レベル5)は、データ記憶用の(n−1)台のHDDとパリティ部を記憶する専用のHDDを備えたRAID−4(レベル4)構成の欠点を改善するために考案されたもので、パリティ部を各HDDに分散記憶するようにして、複数HDDへの同時書込み動作が行えるようにして小ブロックデータの書込み速度を速めたものである。パリティ則として奇数と偶数のパリティの2種類がある。
【0005】
ところで、このようなRAID構成をとるディスクアレイ記憶システムの新設又は容量増加等のための増設時における磁気ディスク装置の初期化は、その膨大な記憶領域に初期化データを書き込むことで行なわれる。磁気ディスク装置1台当り1〜2分程度の時間がかかるとして、複数台の磁気ディスク装置から成るディスクアレイ記憶システムでは、その台数倍の時間が初期化設定にかかることになる。
【0006】
この問題点について、ディスクアレイ記憶システムの新設又は増設時の初期化動作の時間を減らすための提案もいくつかなされている。その中の一つに、通常の初期化とは違って、実際には磁気ディスク装置に初期化データ(“0”など特定パターン)を書き込まないで、記憶領域のブロック又はトラック単位毎に設けた「初期化状態フラグ」のみを「セット(初期化状態)」にしておき、実際のデータ書込み指令があった場合には、「初期化状態フラグ」をチェックして「セット」であれば、データを書込むと共に例えば書込みに使ったトラックの残り部分に初期化データの書込みを行い、その後そのトラックの「初期化状態フラグ」を「リセット」状態に変更して、以後のアクセスにおいて「初期化状態フラグ」が「リセット」状態ならば通常の書込み動作を行なうという技術が開示されている(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平05−324453号公報
【特許文献2】再公表特許WO02/017055
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この方法によると、初期化設定には書込みは行なわないので初期化時間は短縮できるが、実際の運用が始まってから、通常の書込みに随伴して、例えばトラックごとの初期化のための書込みを行なっているので、運用初期には速度低下が生じ、また、運用中、必ず初期化フラグの参照を行なうという余分の動作を伴う、という不都合がある。
【0008】
このように、既存の方法では、ディスクアレイ記憶システムを新設又は増設した時には、磁気ディスク装置間でデータ整合を取るために、磁気ディスク装置へのデータ書き込みが記憶容量分必要となり、初期設定時間がかかり即応性と利便性が悪くなるという問題がある。また、増設を実施する際に増設した磁気ディスク装置に対してRAID構成設定のための書き込みコマンドが多量に発行されるため、増設を実施していない時に比べて通常運用中の性能劣化を引き起こすという不都合が常に生じていた。
【0009】
(発明の目的)
本発明は、上記問題点に鑑み、ディスクアレイ記憶システムの新設又は増設時の初期化時間の短縮化をはかると共に、通常運用中の性能劣化も起こさない即応性及び利便性向上を図ったディスクアレイ記憶システム、その初期化方法及び初期化プログラムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係るディスクアレイ記憶システムは、RAID構成の対象である複数の磁気ディスク装置と、この各磁気ディスク装置によるRAIDの設定とその動作を制御するアレイ制御装置を備えてなり、前記各磁気ディスク装置は、データを記憶するデータ記憶領域とこのデータ記憶領域が初期化済みか否かを示す初期化情報を記憶する初期化確認領域を備え、前記アレイ制御装置は、前記各磁気ディスク装置の前記初期化確認領域の初期化情報を順次参照し初期化済みか否かを判別する判別手段と、この判別手段が初期化済みでない磁気ディスク装置を判別した場合には当該未初期化の磁気ディスク装置に初期化を指令すると共に当該未初期化の磁気ディスク装置の初期化が完了した場合に前記RAID構成にかかる情報を保存する情報保存手段とを含む構成としたことを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るディスクアレイ用初期化方法は、RAID構成の対象である複数の磁気ディスク装置と、この各磁気ディスク装置によるRAIDの設定とその動作を制御するアレイ制御装置を備えてなるディスクアレイ記憶システムにあって、前記各磁気ディスク装置が初期化済みか否かの情報を得るために前記各磁気ディスク装置が備えている初期化確認領域を順次参照する初期化確認領域参照工程と、この各初期化確認領域から得られる情報に基づいて前記各磁気ディスク装置が初期化済みか否かを判別する初期化判別工程と、この初期化判別工程で未初期化の磁気ディスク装置が判別されなかった場合に当該各磁気ディスク装置を対象としたRAID構成を設定するための情報を保存し当該情RAID構成の設定準備を完了する報保存工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
さらに、上記課題を解決するため、本発明に係るディスクアレイ用初期化プログラムは、 RAID構成の対象である複数の磁気ディスク装置と、この各磁気ディスク装置によるRAIDの設定とその動作を制御するアレイ制御装置を備えてなるディスクアレイ記憶システムにあって、前記各磁気ディスク装置が初期化済みか否かの情報を得るために前記各磁気ディスク装置が備えている初期化確認領域を順次参照する初期化確認領域参照機能、この各初期化確認領域から得られる情報に基づいて前記各磁気ディスク装置が初期化済みか否かを判別する初期化判別機能、この初期化判別機能による判別処理によって未初期化の磁気ディスク装置が判別されなかった場合に当該各磁気ディスク装置を対象としたRAID構成を設定するための情報を保存し当該RAID構成の設定準備を完了する情報保存機能を前記アレイ制御装置が備えているコンピュータで実現させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
これにより、本発明によると、ディスクアレイ記憶システムの新増設時における磁気ディスク装置の初期化設定において磁気ディスク装置の初期化確認領域を参照・判別するだけでよく、初期化のための読み書きのアクセスが原則として不要となり、初期化設定の時間は大幅に短縮され、また通常運用中の性能劣化も引き起こさず、即応性、利便性が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態:RAID−1及び偶数パリティRAID−5)
次に、本発明の第1の実施形態に係るディスクアレイ記憶システムついて図面を参照して説明する。図2は、RAID−1構成をとるディスクアレイ記憶システム1の構成図を示す。ディスクアレイ記憶システム1は、4台の磁気ディスク装置21〜24とアレイコントローラ(アレイ制御装置)50を備えて構成されている。
【0015】
ここで、先ず、これら磁気ディスク装置21〜24の内部記憶領域の構成について図3に基づいて説明する。この図3において、磁気ディスク装置10の内部記憶領域(アドレス空間)には、実際のデータを保存する領域であるデータ記憶領域10Aと、このデータ記憶領域10Aの初期化が完了(例えば“0”データの書込み)しているか否かを示す初期化情報を記憶する初期化確認領域10Bとが設けられている。この初期化確認領域10Bは、磁気ディスク装置10全体の初期化状態を示すものであり、理論的には最低1ビットの情報でよいが、適当なビットの集合(バイト等)をその環境に合わせて用いることが出来る。
【0016】
この初期化確認領域10Bに初期化情報が書込まれているため、この初期化情報をチェックするだけで簡単にデータ記憶領域の初期化状態、すなわち“0”データ書込み状態が確認できるので、この磁気ディスク装置10を実際のディスクアレイ記憶システムに組み込む新設、増設時において、RAID構成に必要なデータ整合のための磁気ディスク装置10への書込みが少なく、短時間でディスクアレイ記憶システムのRAID構成が完了し、また通常運用中の性能劣化も引き起こさず、即応性や利便性が向上するというメリットが生じる。
【0017】
なお、この初期化確認領域10Bの初期化情報は、RAID構成完了後はリセット状態(初期化状態ではない状態)に戻される。これは、初期化されていない磁気ディスク装置あるいは初期化状態ではなくなった磁気ディスク装置を初期化済みと間違って判断しないためである。具体的には、RAID構成の中に組み入れていた磁気ディスク装置を、例えば、別装置に移したり、故障等何らかの事情で一旦RAID構成から外した後に、再度組み入れるような場合を想定している。このとき、一度RAID構成に組み入れ、データの書き込みがなされた磁気ディスク装置は工場出荷直後の磁気ディスク装置と異なり、初期化済み(通常は“0”書込み)として扱う訳にはいかなくなるので、これを検出するために初期化確認領域をリセット状態にするようにしている。
【0018】
また、この初期化確認領域10Bの初期化情報は、新設又は増設時等のみ参照され、通常の運転時には参照されることはない。
【0019】
次に、図2に戻って、RAID−1構成とアレイコントローラ(アレイ制御装置)50について説明する。
ここで、RAID−1構成とは、磁気ディスク装置のペアで構成され、データを二重化する冗長構成方法であり、全く同じデータを各ペアの磁気ディスク装置に書き込むのでミラーリングとも呼ばれる。ここでは、2ペア、すなわち、磁気ディスク装置21と22とのペア、磁気ディスク装置22と23とのペアの2組のペアで構成されたミラーリングが示されている。
【0020】
このようなRAID−1構成では、記憶容量の利用効率は低くコストは高いが、片方の磁気ディスク装置が故障しても片側だけで読み書きが正常に続けられるという点で信頼性は高い。また、データの書き込みの際は、2台の磁気ディスク装置の双方に書き込むため性能は低下するが、データの読出しの際は、ミラーリングしない場合に比べて性能は最大2倍になるという特徴を有している。
なお、ここでは2ペアの磁気ディスク装置から成るRAID−1構成を一例として示しているが、ペア数は多くてもよいし、また最低1ペアの磁気ディスク装置でもよい。
【0021】
アレイコントローラ(アレイ制御装置)50は、図示しないホストコンピュータからの書込み読出し指令(コマンド)に基づいて、磁気ディスク装置21〜24に対する書込み読出し動作を制御する。また、アレイコントローラ50は、磁気ディスク装置21〜24を監視し、信頼性と性能を向上させるRAID技術を実現している。
【0022】
すなわち、このアレイコントローラ(アレイ制御装置)50は、複数の磁気ディスク装置21〜24を用いてRAIDを構成できる機能、RAIDを構成することにより各磁気ディスク装置21〜24に分割して保存されている情報を元の情報に戻す機能、万が一壊れている磁気ディスク装置が発見された場合でも、壊れた磁気ディスク装置を切り離してRAID構成が許す限り動作し続ける機能、組み込むRAIDの種類により磁気ディスク装置21〜24に適切なアドレスで適切なコマンドを出す機能などを備えて構成されている。
【0023】
それに加えて、本アレイコントローラ50は、図1に示すように、本ディスクアレイ記憶システム1の新設又は増設時に必要なRAID構成の初期化設定を行なうための構成要素を備えている。
【0024】
この図1において、アレイコントローラ50は、初期化設定の際動作する各構成要素、すなわち、各磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bを順次参照し初期化済みか否かを判別する判別手段51と、その判別の結果、もし初期化されていなければ、当該磁気ディスク装置のデータ記憶領域を初期化(“0”書込み)させるため、当該磁気ディスク装置に初期化指令であるFORMATコマンドを送るコマンド送出手段52と、全ての磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bの判別が終了すると、RAID情報を保存してRAID構成を終了する情報保存手段53と、磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bの初期化済み情報をリセット情報に変更するリセット手段54、及びこれら手段を全体として制御する主制御部56とを備えている。
【0025】
上記の判別手段51は、各磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bを順次参照し初期化済みか否かを判別する。この判別手段51を備えたことにより、もし磁気ディスク装置が出荷時又はRAID構成組み込み時に初期化済みであれば、初期化確認領域を参照・判別するだけで、ディスクアレイ記憶システムの新増設時における磁気ディスク装置の初期化は終了するので、初期化設定にかかる時間が大幅に短縮され、また通常運用中の性能劣化も引き起こさず、即応性、利便性が向上するという効果を奏する。また、書込みが無いので、アレイコントローラに対する負荷を低減させるという効果も生ずる。
【0026】
また、上記のコマンド送出手段52は、上記の判別の結果、もし初期化確認領域がリセット情報になっていれば、その磁気ディスク装置のデータ記憶領域を初期化(“0”書込み)させるため、当該磁気ディスク装置にFORMATコマンドを送る。このコマンド送出手段52を備えることにより、万一、磁気ディスク装置が出荷時に初期化されていないような場合にも、判別手段51が初期化確認領域からそれを判別すると、コマンド送出手段52が当該磁気ディスク装置自身が有する初期化(フォーマット)動作を起動するコマンドを送出して、初期化させるので、やはり、初期化構成にかかる時間が短縮され、即応性や利便性が向上するという効果を奏する。
【0027】
さらに、上記のリセット手段54は磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bの初期化済み情報をリセット情報に変更する。このリセット手段54を備えることにより、一旦ディスクアレイに組み入れた磁気ディスク装置を、再度組み入れる際などに、初期化されていない磁気ディスク装置、あるいは一度書込みがなされ最早初期化状態ではなくなった磁気ディスク装置を判別できるので、誤設定を防ぐことが出来る。
なお、この初期化確認領域21B〜24Bの初期化情報は、新設又は増設時等のみ参照され、通常の運転時には参照されることはない。
【0028】
なお、上記のコマンド送出手段52は、この初期化のために特別設ける必要は無く、通常、アレイコントローラ50が有しているコマンド送出手段をこのために利用するだけでよい。
【0029】
また、上記の情報保存手段53は、上記のようにアレイコントローラ50の中に設ける必要はなく、例えば磁気ディスク装置の一定領域を利用してRAID情報を記憶させるようにしてもよい。
以下、これら構成要素による初期化設定の動作の詳細について説明する。
【0030】
(新・増設時の初期化設定の動作説明)
図4は、本ディスクアレイ記憶システム1が、RAID−1の初期化構成を実行する動作シーケンスを示している。ここで、RAID−1においては、ペアとなる磁気ディスク装置に格納されているデータの内容が一致している必要がある。そのため、例えば、図2において磁気ディスク装置21と22、及び磁気ディスク装置23と24で夫々ペアを組み、RAID−1を構成する場合には、磁気ディスク装置21と22、及び磁気ディスク装置23と24に保存されているデータ記憶領域21Aと22Aの内容、データ記憶領域23Aと24Aの内容は夫々一致するよう運用される。
【0031】
ここで、本実施形態の動作の詳細に入る前に、その初期化動作の特徴を既存の動作と対比して明確にするため、既存のRAIDシステムにおける初期化シーケンスの一例を説明する(図9参照)。図9に示すように、その動作は、先ずRAIDを構成する磁気ディスク装置が存在することを確認している(ステップS320)。そして次の動作は、RAIDを構成する磁気ディスク装置間のデータの整合を取るために、RAID構成に適合したデータの書込みを磁気ディスク装置に行っている(ステップS330)。このデータの書込みが完了すると、RAID構成が完了したとして、RAID構成の設定情報をアレイコントローラ内、もしくは磁気ディスク装置のデータ記憶領域内に保存して、RAID構成設定を完了している(ステップS340)。
【0032】
これに対して、図4に示す本実施形態の動作シーケンスでは、先ず、RAID構成設定を実施する磁気ディスク装置の存在を確認している点は(ステップS120)同様であるが、次のステップS121が異なっている。
【0033】
このステップS121では、RAID構成設定を実施する磁気ディスク装置21〜24が初期化済みか否かを、図2の初期化確認領域21B〜24Bに記憶されている初期化情報を参照し(初期化確認領域参照工程)、その初期化情報に基づいて確認・判定している(ステップS121、初期化判別工程)。
【0034】
この判別工程で当該磁気ディスク装置が初期化済みで有ることが判断されると、図4のステップS123に移り、同じRAID構成設定で使用される他の磁気ディスク装置が存在するか否かを判定し、もし存在すれば、ステップS121(初期化判別工程)に戻り、その磁気ディスク装置の初期化状態をその初期化確認領域21B〜24Bでチェックする。
【0035】
一方、上記の判別工程(ステップS121)において、初期化済みでない磁気ディスク装置が発見された場合には、ステップS122に移行し、磁気ディスク装置自身が備えている初期化(フォーマット)手段を起動して、この磁気ディスク装置を初期化するための初期化指令「FORMATコマンド」を送出する(ステップS122、初期化指令工程)。このとき、磁気ディスク装置自身が持つ磁気ディスク装置内の初期化機能を用いているため、アレイコントローラ50は当該磁気ディスク装置に対し、初期化指令である「FORMATコマンド」発行する(初期化指令工程)のみで、他の書込み指令「WRITE」や読出し指令「READ」といった磁気ディスク装置内のデータ記憶領域にアクセスするコマンドを発行する必要はないので、アレイコントローラ50の性能は低下しない。
【0036】
このようにして、RAIDを構成している全ての磁気ディスク装置21〜24の初期化済みが確認されると、次のステップS140に移り、RAID構成情報を保存してRAID構成設定を完了する(ステップS140、情報保存工程)。
【0037】
そして最後に、磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bをクリアにする、すなわち、リセット状態に設定しなおす(ステップS150、リセット情報設定工程)。これは、一度使用された磁気ディスク装置が一旦何らかの理由で構成から除かれ、再度組み込まれるような場合に、初期化されていない磁気ディスク装置、あるいは一度書き込みが行なわれもはや初期化状態ではなくなった磁気ディスク装置を初期化済みと間違って判断しないためである。
【0038】
以上のようにして、RAIDを構成する磁気ディスク装置21〜24が初期化確認領域21B〜24Bにより初期化が完了していることが示されると、アレイコントローラ50は磁気ディスク装置21〜24に対して、磁気ディスク装置内のデータ記憶領域21A〜24Aにアクセスする書込み指令「WRITE」や読出し指令「READ」といったコマンドを発行する必要がない。そのため、短時間にRAID構成設定を完了することができる。しかも、磁気ディスク装置へのアクセスが最小限になっているので、他の磁気ディスク装置で既にRAID構成が出来ているアレイコントローラ50においても、アレイコントローラ50は追加したRAID構成に対してもアクセスを継続する。
【0039】
(ディスクアレイ用初期化方法)
ここで、上記の動作シーケンスで説明した初期化確認領域参照工程、初期化判別工程、初期化指令工程、情報保存工程、及びリセット情報設定工程の各工程によりディスクアレイ用初期化方法が構成されている。
【0040】
すなわち、ディスクアレイ記憶システム1の初期化設定を行なうためのディスクアレイ用初期化方法では、各磁気ディスク装置21〜24が初期化済みか否かの情報を得るためにこれら各磁気ディスク装置21〜24が備えている初期化確認領域21B〜24Bを順次参照する初期化確認領域参照工程と、
この各初期化確認領域21B〜24Bから得られる情報に基づいて各磁気ディスク装置21〜24が初期化済みか否かを判別する初期化判別工程と、この初期化判別工程で未初期化の磁気ディスク装置が判別された場合に機能して当該未初期化の磁気ディスク装置に初期化を指令する初期化指令工程と、各磁気ディスク装置を対象としたRAID構成を設定するための情報を保存し当該情RAID構成の設定準備を完了する報保存工程と、各磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bの初期化情報をリセット情報に変更するリセット情報設定工程とを備えている。
【0041】
これにより、磁気ディスク装置がRAID構成組み込み時に初期化済みであれば、初期化確認領域の初期化情報を参照・判別するだけで、磁気ディスク装置の初期化は終了し、初期化設定にかかる時間が大幅に短縮されるという効果を奏する。
【0042】
また、万一、磁気ディスク装置が出荷時に初期化されていない場合にも、初期化確認領域からそれを判別し、当該磁気ディスク装置自身が有する初期化(フォーマット)動作を起動することにより初期化できるので、やはり、初期化構成にかかる時間が短縮され、通常運用中の性能劣化も引き起こさず、即応性や利便性が向上するという効果を奏する。また、書込み指令が無いので、アレイコントローラに対する負荷を低減させるという効果も生ずる。
【0043】
(ディスクアレイ用初期化プログラム)
また、ここで上記の動作シーケンスで説明した初期化確認領域参照工程、初期化判別工程、初期化指令工程、情報保存工程、及びリセット情報設定工程の各工程の内容に対応した機能をコンピュータで実現するようプログラムとして構成したものがディスクアレイ用初期化プログラムである。
【0044】
すなわち、RAID構成の対象である複数の磁気ディスク装置21〜24と、この各磁気ディスク装置によるRAIDの設定とその動作を制御するアレイ制御装置を備えてなるディスクアレイ記憶システム1にあって、これら各磁気ディスク装置21〜24が初期化済みか否かの情報を得るために各磁気ディスク装置21〜24が備えている初期化確認領域21B〜24Bを順次参照する初期化確認領域参照機能、この各初期化確認領域21B〜24Bから得られる情報に基づいて各磁気ディスク装置21〜24が初期化済みか否かを判別する初期化判別機能、この初期化判別機能による判別処理によって未初期化の磁気ディスク装置が識別された場合に稼動して当該未初期化の磁気ディスク装置に初期化を指令する初期化指令機能、磁気ディスク装置21〜24の初期化が完了すると各磁気ディスク装置を対象としたRAID構成を設定するための情報を保存しRAID構成の設定準備を完了する情報保存機能、その情報保存機能による情報保存処理の後に各磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bに設定された初期化情報をリセット情報に設定変更するリセット情報設定機能、を前記アレイ制御装置50が備えているコンピュータに実現させるよう構成されている。
【0045】
これにより、もし磁気ディスク装置が初期化済みであれば、初期化確認領域を参照・判別するだけで、磁気ディスク装置の初期化は終了し初期化設定にかかる時間が大幅に短縮され、また、万一、磁気ディスク装置が出荷時に初期化されていない場合にも、初期化確認領域からそれを判別し、当該磁気ディスク装置自身が有する初期化動作を起動することにより初期化できるので、やはり、初期化構成にかかる時間が短縮され、また通常運用中の性能劣化も引き起こさず、即応性や利便性が向上するという効果を奏する。
【0046】
(偶数パリティRAID−5)
なお、上記実施形態では、RAIDの構成例として、RAID−1(ミラーリング)の場合を説明してきたが、例えば、ディスクアレイ記憶システムが、偶数パリティを使用するRAID−5であってもよい。
【0047】
図5は、アレイコントローラ60と磁気ディスク装置31〜35を備えたディスクアレイ記憶システム2の構成図である。この図5において、アレイコントローラ60は、磁気ディスク装置31〜35を用いてRAID−5を実現するように構成されている。アレイコントローラ60の初期化に必要な構成要素は、前述したRAID−1のアレイコントローラ50と基本的に同じである。
【0048】
ここで、磁気ディスク装置31〜35は、前記ディスクアレイ記憶システム1で説明した磁気ディスク装置と同様にデータ記憶領域と初期化確認領域を備えている。ここでは、RAID−5の構成であるため、各々の磁気ディスク装置のデータ記憶領域はRAID−5を実現する上でのデータ部とパリティ部に分かれている。図5に示されているように、データ記憶領域32A−4,33A−3,34A−2,35A−1が、RAID−5におけるパリティ部であり、残りの部分である31A−1〜31A−4,32A−1〜32A−3,33A−1,33A−2,33A−4,34A−1,32A−3,34A−4,35A−2〜35A−4は、RAID−5におけるデータ部となる。
【0049】
本ディスクアレイ記憶システム2はパリティチェックとして偶数パリティを採用しており、偶数パリティの場合は、データ部とパリティ部で偶数個(零個を含む)の“1”を含むように調整される。そのため、初期化確認領域31B〜35Bのチェックにより、もしこれら全ての磁気ディスク装置31〜35のデータ記憶領域31A〜35Aが初期化(“0”書込み)されていることが判明する場合には、“1”を含んでいないので、パリティ部における偶数パリティの条件が自動的に満たされていることになり、磁気ディスク装置31〜35へのアクセスをそれ以降行わず、RAID構成設定を完了できる。
【0050】
この場合も、図4に示した初期化設定のシーケンスにしたがって、全く同様に初期化構成が行なわれる。そのため、もし磁気ディスク装置が全て初期化済みであれば、初期化確認領域を参照・判別するだけで、ディスクアレイ記憶システム2の新増設時における磁気ディスク装置の初期化は終了し初期化設定時間が大幅に短縮され、また、万一、磁気ディスク装置が出荷時に初期化されていない場合にも、初期化確認領域からそれを判別し、当該磁気ディスク装置自身が有する初期化(フォーマット)動作をアレイ制御装置から起動することにより初期化できるので、やはり、初期化設定時間が短縮され、また通常運用中の性能劣化も引き起こさず、即応性や利便性が向上するという効果を奏する。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るディスクアレイ記憶システムとして、奇数パリティのRAID−5構成を有するディスクアレイ記憶システムを図面に基づいて説明する。
【0052】
図6は、本ディスクアレイ記憶システム3(奇数パリティのRAID−5構成)のブロック構成図であり、アレイコントローラ(アレイ制御装置)70と磁気ディスク装置31〜35とを備えて構成されている。これらの磁気ディスク装置31〜35は、図3で説明した磁気ディスク装置10と同様のデータ記憶領域と初期化確認領域を備えている。
【0053】
本ディスクアレイ記憶システム3では、奇数パリティのRAID−5構成を採用している。そのため、RAID−5のパリティ部となるデータ記憶領域32A−4、33A−3,34A−2,35A−1は、奇数パリティと整合させるため、パリティ部を除いた残りのデータ記憶領域である31A−1〜31A−4,32A−1〜32A−3,33A−1,33A−2,33A−4,34A−1,34A−3,34A−4,35A−2〜35A−4と整合するデータを書き込むよう動作が行なわれる。
【0054】
本実施形態では、このパリティ初期化のための書込み動作が存在する点が、第1の実施形態と異なる特徴である。図6において、アレイコントローラ(アレイ制御装置)70は、図示しないホストコンピュータからの書込み読出し指令(コマンド)を仲介し、磁気ディスク装置31〜35に対する書込み読出し動作を制御する。また、アレイコントローラ70は、磁気ディスク装置31〜35を監視し、信頼性と性能を向上させるRAID技術を実現している。すなわち、複数の磁気ディスク装置31〜34を用いてRAIDを構成できる機能、RAIDを構成することにより各磁気ディスク装置31〜34に分割して保存されている情報を元の情報に戻す機能、万が一壊れている磁気ディスク装置が発見された場合でも、壊れた磁気ディスク装置を切り離してRAID構成が許す限り動作し続ける機能、組み込むRAIDの種類により磁気ディスク装置31〜34に適切なアドレスで適切なコマンドを出す機能などを備えて構成されている。
【0055】
それに加えて、本アレイコントローラ70は、図7に示すように本実施形態に特徴的なディスクアレイ記憶システム3の新設、又は増設時に必要なRAID構成等の初期化設定を行なうための構成要素を備えている。
【0056】
この図7において、アレイコントローラ70は、初期化設定の際動作する各構成要素、すなわち、各磁気ディスク装置31〜35の初期化確認領域31B〜35Bを順次参照し初期化済みか否かを判別する判別手段71と、その判別の結果、もし初期化されていなければ、当該磁気ディスク装置のデータ記憶領域を初期化(“0”書込み)させるため、当該磁気ディスク装置にFORMATコマンドを送るコマンド送出手段72と、全ての磁気ディスク装置31〜35の初期化確認領域31B〜35Bの判別が終了すると、各磁気ディスク装置のデータ記憶領域であって、RAIDのパリティ領域に該当する部分に、奇数パリティ則にしたがって“1”を書き込む指令を送出するパリティ初期化手段75と、RAID情報を保存してRAID構成を終了する情報保存手段73と、磁気ディスク装置31〜35の初期化確認領域31B〜35Bの初期化済み情報をリセット情報に変更するリセット手段74、及びこれら各手段を制御する主制御部76を備えて構成されている。
【0057】
第1の実施形態に係るアレイコントローラ50との違いは、パリティ初期化手段75が付加されている点である。このパリティ初期化手段75は、各磁気ディスク装置のデータ記憶領域であって、RAIDのパリティ領域に該当する部分に、奇数パリティ則にしたがって“1”を書き込む指令を送出する。このパリティ初期化手段75により、奇数パリティのRAID構成の場合であっても、パリティ部分にのみ“1”を書込めばよいので、n台の磁気ディスク装置構成のディスクアレイ記憶システムであれば、前記憶容量の1/nで済むので、初期化時間は従来に比べて大幅に短縮され、また通常運用中の性能劣化も引き起こさず、即応性や利便性が向上するという効果を奏する。
【0058】
次に、上述の初期化設定の詳細な動作を図面に基づいて説明する。図8は初期化設定の動作シーケンス図である。先ず、磁気ディスク装置31〜35が初期化済みであるかどうかをチェックする段階(ステップS221からステップS223)までは第1の実施形態(図4に示す処理)と同じである。
【0059】
すなわち、先ず、RAID構成設定を実施する磁気ディスク装置の存在を確認し(ステップS220)、続いて、RAID構成設定を実施する磁気ディスク装置が初期化済みか否かを、図6の初期化確認領域31B〜35Bの初期化情報を参照し(初期化確認領域参照工程)、その初期化情報に基づいて確認・判定している(ステップS221、初期化判別工程)。
【0060】
この判別工程で当該磁気ディスク装置が初期化済みで有ることが判断されると、図8のステップS223に移り、同じRAID構成設定で使用される他の磁気ディスク装置が存在するか否かを判定し、もし存在すれば、ステップS221(初期化判別工程)に戻り、その磁気ディスク装置の初期化状態をその初期化確認領域31B〜35Bでチェックする。
【0061】
一方、上記の初期化判別工程(ステップS221)において、初期化済みでない磁気ディスク装置を発見した場合には、ステップS222に移行し、磁気ディスク装置自身が備えている初期化(フォーマット)手段を起動してこの磁気ディスク装置を初期化するために初期化指令を送出する(ステップS222、初期化指令工程)。このとき、磁気ディスク装置自身が持つ磁気ディスク装置内の初期化機能を用いているため、アレイコントローラ70は当該磁気ディスク装置に対し、初期化指令である「FORMATコマンド」発行する(初期化指令工程)のみで、他の書込み指令「WRITE」や読出し指令「READ」といった磁気ディスク装置内のデータ記憶領域にアクセスするコマンドを発行する必要はない。
【0062】
このようにして、RAID構成している全ての磁気ディスク装置31〜35が初期化済みとなる。ここで、本実施形態においては奇数パリティであるため、各磁気ディスク装置31〜35のデータ記憶領域に初期化によって“0”が書き込まれていても、RAID構成においてパリティ部分の役割を担っている磁気ディスク装置のデータ記憶領域部分に、“1”の書込みが必要となる。
【0063】
そこで、次のステップS230に移り、各磁気ディスク装置のデータ記憶領域であって、RAIDのパリティ領域に該当する部分32A−4、33A−3,34A−2,35A−1であるか否かを判別し(ステップ230)、そうであれば奇数パリティ則にしたがって“1”を書き込む指令を送出する(ステップS231,パリティ初期化工程)。
【0064】
書き込むデータの実際の値は、RAID−5のデータ部の値によるが、例えば、図6でRAID−5のパリティ部であるデータ記憶領域32A−4の値を決める為には、他の磁気ディスク装置31,33,34,35のデータ記憶領域31A−4,33A−4,34A−4,35A−4の値が必要である。もし、初期化確認領域のチェックによってデータ記憶領域31A−4,33A−4,34A−4,35A−4が全て初期化状態であることが確認されたときは、それらの値はすべて“0”であるから、パリティ部であるデータ記憶領域32A−4にだけ“1”を書き込めば、RAID−5の構成を完了することができる。この場合は、全てに書き込む場合に比べて、1/5で済んでいる。そのため初期化設定に要する時間も大幅に短縮される。
【0065】
これによって、RAID−5のパリティが奇数に設定されると、RAID構成情報を保存してRAID構成設定を完了する(ステップS240、情報保存工程)。
【0066】
そして最後に、磁気ディスク装置31〜34の初期化確認領域31B〜35Bをクリアにする、すなわち、リセット状態に設定しなおす(ステップS250、リセット情報設定工程)。これは、一度使用された磁気ディスク装置が一旦何らかの理由で構成から除かれ、再度組み込まれるような場合に、初期化されていない磁気ディスク装置、あるいは一度書き込みが行なわれもはや初期化状態ではなくなった磁気ディスク装置を初期化済みと間違って判断しないためである。
【0067】
以上のようにして、RAIDを構成する磁気ディスク装置31〜35が初期化確認領域31B〜35Bにより初期化が完了していることが示されると、アレイコントローラ70は磁気ディスク装置31〜35のデータ記憶領域31A〜35Aのパリティ部分に対してだけ、奇数パリティ則にしたがって“1”を書込むので、短時間にRAID構成設定を完了することができる。
【0068】
ここで、上記の動作シーケンスで説明した初期化確認領域参照工程、初期化判別工程、初期化指令工程、パリティ初期化工程、情報保存工程、及びリセット情報設定工程の各工程により奇数パリティ用のディスクアレイ用初期化方法が構成されている。
【0069】
すなわち、ディスクアレイ記憶システム3を初期化構成する奇数パリティのディスクアレイ用初期化方法では、データを記憶するデータ記憶領域31A〜35Aとこのデータ記憶領域が初期化済み(“0”書込み)か否かを示す初期化情報を記憶する初期化確認領域31B〜35Bを備えた各磁気ディスク装置31〜35の初期化確認領域31B〜35Bを順次参照する初期化確認領域参照工程と、その初期化情報に基づいて初期化済みか否かを判別する初期化判別工程と、前記判別の結果、もし前記初期化確認領域31B〜35Bがリセット情報になっていれば、当該磁気ディスク装置のデータ記憶領域を初期化(“0”書込み)させるため、アレイコントローラ(アレイ制御装置)70から当該磁気ディスク装置に初期化を指令するコマンドを送る初期化指令工程と、前記全ての磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bの初期化判別工程が終了すると、前記各磁気ディスク装置31〜35のデータ記憶領域であって、RAIDのパリティ領域に該当する部分に、奇数パリティ則にしたがって“1”を書き込む指令を送出するパリティ初期化工程と、RAID情報を保存してRAID構成を終了する情報保存工程と、磁気ディスク装置21〜24の初期化確認領域21B〜24Bの初期化済み情報をリセット情報に変更するリセット情報設定工程とを備えている。
【0070】
これにより、もし磁気ディスク装置が初期化済みであれば、初期化確認領域を参照・判別するだけで、また、万一、磁気ディスク装置が出荷時に初期化されていない場合には、初期化確認領域からそれを判別し、当該磁気ディスク装置自身が有する初期化(フォーマット)動作を起動することにより初期化した後、上記パリティ初期化工程により、パリティ部分にのみ“1”が書込まれるので、n台の磁気ディスク装置構成のディスクアレイ記憶システムであれば、書込みは前記憶容量の1/nで済むので、初期化時間は従来に比べて大幅に短縮され、また通常運用中の性能劣化も引き起こさず、即応性や利便性が向上する。
【0071】
(プログラム)
また、ここで上記の動作シーケンスで説明した初期化確認領域参照工程、初期化判別工程、初期化指令工程、パリティ初期化工程、情報保存工程、及びリセット情報設定工程の各工程の内容に対応した機能をコンピュータで実現させるようプログラムとして構成したのが奇数パリティのディスクアレイ用初期化プログラムである。
【0072】
すなわち、RAID構成の対象である複数の磁気ディスク装置31〜35と、この各磁気ディスク装置によるRAIDの設定とその動作を制御するアレイ制御装置を備えてなるディスクアレイ記憶システム1にあって、これら各磁気ディスク装置31〜35が初期化済みか否かの情報を得るために各磁気ディスク装置31〜35が備えている初期化確認領域31B〜35Bを順次参照する初期化確認領域参照機能、この各初期化確認領域31B〜35Bから得られる情報に基づいて各磁気ディスク装置31〜35が初期化済みか否かを判別する初期化判別機能、この初期化判別機能による判別処理によって未初期化の磁気ディスク装置が識別された場合に稼動して当該未初期化の磁気ディスク装置に初期化を指令する初期化指令機能、磁気ディスク装置31〜35の初期化が完了すると各磁気ディスク装置のデータ記憶領域31A〜35Aであって、RAIDのパリティ領域に該当する部分に、奇数パリティ則にしたがって“1”を書き込む指令を送出するパリティ初期化機能、このパリティ初期化が完了すると各磁気ディスク装置31〜35を対象としたRAID構成を設定するための情報を保存しRAID構成の設定準備を完了する情報保存機能、その情報保存機能による情報保存処理の後に各磁気ディスク装置31〜35の初期化確認領域31B〜35Bに設定された初期化情報をリセット情報に設定変更するリセット情報設定機能を前記アレイ制御装置50が備えているコンピュータに実現させるよう構成されている。
【0073】
これにより、もし磁気ディスク装置が初期化済みであれば、初期化確認領域を参照・判別するだけで、また、万一、磁気ディスク装置が出荷時に初期化されていない場合には、初期化確認領域からそれを判別し、当該磁気ディスク装置自身が有する初期化(フォーマット)動作を起動することにより初期化した後、上記パリティ初期化処理により、パリティ部分にのみ“1”を書込めばよいので、n台の磁気ディスク装置構成のディスクアレイ記憶システムであれば、前記憶容量の1/nで済むので、初期化時間は従来に比べて大幅に短縮され、また通常運用中の性能劣化も引き起こさず、即応性や利便性が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るディスクアレイ記憶システムのアレイコントローラが備える初期化動作に必要な構成要素を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るディスクアレイ記憶システム(RAID−1構成)の一構成ブロック図である。
【図3】図1に開示した磁気ディスク装置の記憶領域の使用区分を示した図である
【図4】図2に示すディスクアレイ記憶システム(RAID−1構成)の初期化動作を示すシーケンス図である。
【図5】第1の実施形態に係る他の例としてのディスクアレイ記憶システム(偶数パリティRAID−5構成)の一構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るディスクアレイ(奇数パリティRAID−5構成)の一構成例を示すブロック図である。
【図7】図6に示すアレイコントローラ部分が備える初期化動作に必要な構成要素を示すブロック図である。
【図8】図6に示すディスクアレイ記憶システム(奇数パリティRAID−5構成)の初期化動作を示すシーケンス図である。
【図9】関連技術における一ディスクアレイ記憶システムのRAID構成初期化動作の一例を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0075】
1 ディスクアレイ記憶システム(RAID−1)
2 ディスクアレイ記憶システム(偶数パリティのRAID−5)
3 ディスクアレイ記憶システム(奇数パリティのRAID−5)
10 磁気ディスク装置
10A データ記憶領域
10B 初期化確認領域
21〜24 磁気ディスク装置(RAID−1構成)
21A〜24A データ記憶領域
21B〜24B 初期化確認領域
31〜35 磁気ディスク装置(RAID−5構成における)
31A−m〜35A−m 磁気ディスク31から35のデータ記憶領域
31B〜35B 磁気ディスク31から35の初期化確認領域
32A−4,33A−3,34A−2,35A−1 RAID−5構成のパリティ部分
50,60 アレイコントローラ(アレイ制御装置)
51,71 判別手段
52,72 コマンド送出手段
53,73 RAID情報保存手段
54,74 リセット手段
56、76 主制御部
70 アレイコントローラ(アレイ制御装置)(奇数パリティのRAID−5構成)
75 パリティ初期化手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RAID構成の対象である複数の磁気ディスク装置と、この各磁気ディスク装置によるRAIDの設定とその動作を制御するアレイ制御装置を備えてなるディスクアレイ記憶システムであって、
前記各磁気ディスク装置は、データを記憶するデータ記憶領域とこのデータ記憶領域が初期化済みか否かを示す初期化情報を記憶する初期化確認領域を備え、
前記アレイ制御装置は、前記各磁気ディスク装置の前記初期化確認領域の初期化情報を順次参照し初期化済か否かを判別する判別手段と、この判別手段が初期化済でない磁気ディスク装置を判別した場合には当該未初期化の磁気ディスク装置に初期化を指令すると共に当該未初期化の磁気ディスク装置の初期化が完了した場合に前記RAID構成にかかる情報を保存する情報保存手段とを含む構成としたことを特徴とするディスクアレイ記憶システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載のディスクアレイ記憶システムにおいて、
前記判別手段が未初期化の磁気ディスク装置を判別した場合に当該未初期化の磁気ディスク装置に前記データ記憶領域を初期化させるための初期化指令であるコマンドを送り込むコマンド送出手段を、前記アレイ制御装置に設けたことを特徴とするディスクアレイ記憶システム。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のディスクアレイ記憶システムにおいて、
前記各磁気ディスク装置のデータ記憶領域であって、RAIDのパリティ領域に該当する部分に、奇数パリティ則にしたがって“1”を書き込む指令を送出するパリティ初期化手段を前記アレイ制御手段に設けたことを特徴とするディスクアレイ記憶システム。
【請求項4】
前記請求項1、2又は3に記載のディスクアレイ記憶システムにおいて、
前記初期化確認領域の前期初期化済み情報をリセット情報に変更するリセット手段を前記アレイ制御手段に設けたことを特徴とするディスクアレイ記憶システム。
【請求項5】
RAID構成の対象である複数の磁気ディスク装置と、この各磁気ディスク装置によるRAIDの設定とその動作を制御するアレイ制御装置を備えてなるディスクアレイ記憶システムにあって、
前記各磁気ディスク装置が初期化済みか否かの情報を得るために前記各磁気ディスク装置が備えている初期化確認領域を順次参照する初期化確認領域参照工程と、
この各初期化確認領域から得られる情報に基づいて前記各磁気ディスク装置が初期化済みか否かを判別する初期化判別工程と、
この初期化判別工程で未初期化の磁気ディスク装置が判別されなかった場合に当該各磁気ディスク装置を対象としたRAID構成を設定するための情報を保存し当該情RAID構成の設定準備を完了する報保存工程とを備えたことを特徴とするディスクアレイ用初期化方法。
【請求項6】
前記請求項5に記載のディスクアレイ用初期化方法において、
前記初期化判別工程で未初期化の磁気ディスク装置が判別された場合に機能して当該未初期化の磁気ディスク装置に初期化を指令する初期化指令工程を、前記情報保存工程の前に設けると共に、
前記報保存工程は、この未初期化の磁気ディスク装置の初期化の完了を待って前記RAID構成を設定するための情報を保存し当該情RAID構成の設定準備を完了する構成としたことを特徴とするディスクアレイ用初期化方法。
【請求項7】
前記請求項6に記載のディスクアレイ用初期化方法において、
前記初期化判別工程を前記未初期化の磁気ディスク装置に対して前記アレイ制御装置から初期化を指令するコマンドを発信することにより実行することを特徴としたディスクアレイ用初期化方法。
【請求項8】
前記請求項5、6又は7に記載のディスクアレイ用初期化方法において、
前記情報保存工程の前に、前記各磁気ディスク装置のデータ記憶領域であって、RAIDのパリティ領域に該当する部分に、奇数パリティ則にしたがって“1”を書き込む指令を送出するパリティ初期化工程を設けたことを特徴とするディスクアレイ用初期化方法。
【請求項9】
前記請求項5、6、7又は8に記載のディスクアレイ用初期化方法において、
前記情報保存工程の後に、前記各磁気ディスク装置の初期化確認領域の初期化情報をリセット情報に変更するリセット情報設定工程を設けたことを特徴とするディスクアレイ用初期化方法。
【請求項10】
RAID構成の対象である複数の磁気ディスク装置と、この各磁気ディスク装置によるRAIDの設定とその動作を制御するアレイ制御装置を備えてなるディスクアレイ記憶システムにあって、
前記各磁気ディスク装置が初期化済みか否かの情報を得るために前記各磁気ディスク装置が備えている初期化確認領域を順次参照する初期化確認領域参照機能、
この各初期化確認領域から得られる情報に基づいて前記各磁気ディスク装置が初期化済みか否かを判別する初期化判別機能、
この初期化判別機能による判別処理によって未初期化の磁気ディスク装置が判別されなかった場合に当該各磁気ディスク装置を対象としたRAID構成を設定するための情報を保存し当該RAID構成の設定準備を完了する情報保存機能、
を前記アレイ制御装置が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするディスクアレイ用初期化プログラム。
【請求項11】
前記請求項10に記載のディスクアレイ用初期化プログラムにおいて、
前記初期化判別機能による判別処理によって未初期化の磁気ディスク装置が識別された場合に稼動して当該未初期化の磁気ディスク装置に初期化を指令する初期化指令機能を、前記初期化判別機能に付設し、
前記情報保存機能では、前記未初期化の磁気ディスク装置の初期化の完了を待って前記RAID構成を設定するための情報を保存し前記RAID構成の設定準備を完了する構成としたことを特徴とするディスクアレイ用初期化プログラム。
【請求項12】
前記請求項10又は11に記載のディスクアレイ用初期化プログラムにおいて、
前記情報保存機能に、当該情報保存機能による情報保存処理の後に前記各磁気ディスク装置の初期化確認領域に設定された初期化情報をリセット情報に設定変更するリセット情報設定機能付設したことを特徴とするディスクアレイ用初期化プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−128981(P2009−128981A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300338(P2007−300338)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】