説明

ディスククランプ機構およびこれを備えるディスク回転用モータ

【課題】車載用途に用いられるディスク回転用モータは、締結信頼性、耐振動性、耐衝撃性、耐塵埃性が要求され、ディスククランプ機構も同様の要求があるが、従来の主流となっているマグネット吸引式のクランプ機構はバックヨークの締結が難しく、またマグネットが露出していることによる異物の付着等で、耐塵埃性の確保が難しい。
【解決手段】上面をターンテーブル部として構成したロータフレームの上面に前記クランプマグネットを直接固定し、かつディスク調芯用センタリング部材により前記クランプマグネットの上面を覆う構成とし、前記クランプマグネットが外部に露出しない密閉構造とすることで、部品点数が削減できてコスト面で有利であることに加え、バックヨークがないため小型化、薄型化にも有利で締結信頼性も高く、かつクランプマグネットを密閉した構造としているため異物の付着等はなく、耐塵埃性が高いディスククランプ機構を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として、CD、DVDといった光メディアに楽曲や映像の情報を記録したり、その記録情報を再生したりするディスク駆動装置に関するものであり、詳しくはディスクをセンタリング保持するディスククランプ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CDやDVDといった光メディアに楽曲や映像の情報を記録したり、その記録情報を再生したりするディスク駆動装置は、近年、小型、薄型、高性能化、低コスト化などが要求されているが、それに加えて車載用途に用いられる場合、締結信頼性、耐振動性、耐衝撃性、耐塵埃性が要求されている。これに伴い、光メディアを支持、回転させるディスク回転用モ−タも上記要求に対応すべく、ディスクを安定して保持するためのディスククランプ機構の重要度が増している。
【0003】
上記ディスククランプ機構において、従来、車載用途で主流となっていたのは、クランパー設置機構に構成されたバネ力によってディスクをターンテーブル部に押圧し保持するクランプ機構であったが、近年の記録容量の増大に伴う機器の高精度化によって、より高いディスク保持力を確保できるマグネット吸着力によるディスククランプ機構に主流が移りつつある。(例えば特許文献1参照)
図2に上記特許文献1に開示された従来の技術によるディスク回転用モ−タ、及びディスククランプ機構を示す。
【0004】
図2に示すように、ディスク101の内径部102を保持する略円筒状のセンタリング部材103と、これに収納されたクランプマグネット104と、前記マグネットの磁束を確保するためのバックヨーク105とを備えたディスククランプ機構が、ディスク装着面となるゴムシ−ト106を貼り付けられたタ−ンテ−ブル部107の中央に固定され、磁性体108を収容したクランパー109とゴムシ−ト106によってディスク101を挟持することにより、安定した保持を可能としている。
【0005】
図2に示すディスククランプ機構におけるバックヨークの締結については、図3に示すようにバックヨーク110をセンタリング部材111に一体成形するもの(例えば特許文献2参照)や、図4に示すようにバックヨーク112をシャフト113に圧入固定するもの(例えば特許文献3参照)や、図5に示すようにバックヨーク114をセンタリング部材に構成した係合部115によって組込み勘合するもの(例えば特許文献4参照)など、さまざまな提案がなされている。
【0006】
また、上記従来の技術とは別に、ターンテーブル部にマグネットを直接的に設置し、ターンテーブル部をバックヨークとして共用した構造も提案されている。(例えば特許文献5参照)
図6に上記特許文献5に開示された従来の技術によるディスク回転用モ−タ、及びディスククランプ機構を示す。
【0007】
図6に示すように、ディスク116に一体的に構成された磁性体117と、金属製のタ−ンテ−ブル部118に直接設置されたクランプマグネット119の吸着力によって、ディスク116をターンテーブル部118の側壁部120に押圧固定する構成とすることで、ターンテーブル部118をバックヨークとして共用可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−127625号公報
【特許文献2】特開2001−37141号公報
【特許文献3】特開2004−56930号公報
【特許文献4】特許第3852763号
【特許文献5】特開平4−313858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図2に示す上記特許文献1に開示された構成では、マグネット、およびバックヨークの固定方法は明記されておらず、仮に接着による固定をおこなったと想定しても、車載用途での過酷な使用環境下では締結信頼性、耐衝撃性に乏しい。また、マグネットの上部平面が露出しているため、磁性材の微小な異物を吸着することが懸念され、耐塵埃性の確保も難しい。
これに対し特許文献2に開示された構成ではバックヨークがセンタリング部材に一体成形されており締結信頼性、耐衝撃性は高い。しかしながら、低コスト化が求められる市場にあって、一体成形は比較的高価であり、コスト面で不利になる。また、車載用途特有の広範囲にわたる温度衝撃がかかった場合、センタリング部材とバックヨークに用いられる材料の熱膨張係数の差からセンタリング部材に過度な応力が集中し、クラックの発生を誘発するという懸念もある。
また、特許文献3に開示された構成ではバックヨークが回転軸に圧入締結されているため締結信頼性、耐衝撃性は高い。しかしながら、圧入強度を確保するためにバックヨークには一定以上の厚さが必要とされ、小型化、薄型化が要求されているディスク回転用モ−タにあっては不利な構造と言わざるを得ない。
また、特許文献4に開示された構成ではバックヨークを係合固定するため締結信頼性、耐衝撃性は高いが、構造が複雑化するため部品も高精度が要求されるだけでなく、組立工数もかかり、コスト面で不利となる。
これらに加え、特許文献2〜4に開示された構成は、特許文献1に開示された構成同様、マグネットの上部平面が露出しているため、磁性材の微小な異物を吸着することが懸念され、耐塵埃性の確保も難しい。
【0010】
これらに対し、特許文献5に開示された構成ではマグネットをタ−ンテ−ブル部に直接設置するためバックヨークの締結の課題から開放されるだけでなく、バックヨーク専用部材を必要としないため部品点数を削減でき、コスト面でも有利となる。しかし、特許文献1〜4に開示された構成と同様に耐塵埃性への懸念は拭えない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、上面をターンテーブル部として構成したロータフレームの上面にクランプマグネットを直接固定し、かつディスク調芯用センタリング部材の上面部により前記クランプマグネットの上面を覆う構成とすることで、前記クランプマグネットが外部に露出しない密閉構造としたことを特徴とするディスククランプ機構を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロータフレームのタ−ンテ−ブル部がバックヨークの役割を果たすため部品点数が削減できてコスト面で有利であることに加え、バックヨークがないため小型化、薄型化にも有利で、締結信頼性も高い。また、クランプマグネットを密閉した構造としているため異物の付着等はなく、耐塵埃性が高いことに加え、クランプマグネットの脱落等の発生もないために耐衝撃性への信頼性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るディスク回転用モ−タの断面図
【図2】従来の技術によるディスク回転用モ−タの断面図
【図3】従来の技術によるディスク回転用モ−タの断面図
【図4】従来の技術によるディスク回転用モ−タの断面図
【図5】従来の技術によるディスククランプ構造の断面図
【図6】従来の技術によるディスククランプ構造の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態に係るディスク回転用モ−タの断面図である。
【0016】
図1においてディスク回転用モ−タは、略カップ形状のロ−タフレ−ム1とこのロ−タフレ−ム1に固定されたシャフト2とロ−タフレ−ム1の内周側に固定されたリング状のロ−タマグネット3と、ロ−タフレ−ム1のタ−ンテ−ブル部4に貼り付けられたゴムシ−ト5と、ディスク内径部の調芯を行う略円筒形状のセンタリング部材6と、センタリング部材6の内部に収納されたクランプマグネット7とを備えたロ−タ組立体と、前記シャフト2を回転自在に支承する軸受8とこの軸受8をその内周側に保持する円筒形状の軸受ハウジング9と、前記ロ−タマグネット3と対向配置され巻線10を絶縁部材11を介して巻装したステ−タコア12とステ−タコア12を固定するためのコアホルダ−13と、前記軸受ハウジング9を収納する凹部が形成されたブラケット14からなるステ−タ組立体によって構成されている。このディスク回転用モータのセンタリング部材6にディスク15が装着され、その上方には前記クランプマグネット7と吸着するための磁性体16を格納したクランパー17が位置し、前記ゴムシート5とクランパー17でディスク15を挟み、クランパー17がクランプマグネットに吸着する押圧力によってディスクの保持力を確保している。なお、クランパー17はディスク回転用モータを取り付けるディスク駆動装置(図示せず)に取り付けられている。
【0017】
本発明の実施の形態では、クランプマグネット7はロ−タフレ−ム1のタ−ンテ−ブル部4の中央に直接配置し、接着剤等で固定している。そして、その上からセンタリング部材6を被せ、クランプマグネット7はセンタリング部材6によって完全に密閉された構成となる。なお、センタリング部材6はタ−ンテ−ブル部4の中央突起部に圧入固定している。
【0018】
従って、以上のような構成とすることで、まず、ロータフレームのタ−ンテ−ブル部がバックヨークの役割も果たすため、クランプマグネット用のバックヨークを備える必要はなく、部品点数が削減できてコスト面で有利であることに加え、バックヨークがないため小型化、薄型化にも有利で、締結信頼性も高い。また、クランプマグネットを密閉した構造としているため異物の付着等はなく、耐塵埃性が高いことに加え、クランプマグネットの脱落等の発生もないために耐衝撃性への信頼性は高い。
【産業上の利用可能性】
【0019】
小型、薄型、高性能化、低コスト化に加え、締結信頼性、耐振動性、耐衝撃性、耐塵埃性が要求されている、CDやDVDといった光メディアに楽曲や映像の情報の記録・再生を行う、PC用ディスクドライブやAV機器、またカ−ナビやカ−オ−ディオ等に代表されるディスク駆動装置に有用である。
【符号の説明】
【0020】
1 ロ−タフレ−ム
2、113 シャフト
3 ロ−タマグネット
4、107、118 タ−ンテ−ブル部
5、106 ゴムシ−ト
6、103、111 センタリング部材
7、104、119 クランプマグネット
8 軸受
9 軸受ハウジング
10 巻線
11 絶縁部材
12 ステ−タコア
13 コアホルダ−
14 ブラケット
15、101、116 ディスク
16、108、117 磁性体
17、109 クランパー
102 内径部
105、110、112、114 バックヨーク
106 ゴムシート
115 係合部
120 側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ部に構成されたクランプマグネットとクランパーとの吸着力によって、情報記録ディスクをターンテーブル部に押圧支持するディスククランプ機構において、上面をターンテーブル部として構成したロータフレームの上面に前記クランプマグネットを直接固定し、かつディスク調芯用センタリング部材により前記クランプマグネットの上面を覆う構成とすることで、前記クランプマグネットが外部に露出しない密閉構造となっていることを特徴とするディスククランプ機構。
【請求項2】
請求項1に記載のディスククランプ機構を備えるディスク回転用モ−タ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−81866(P2011−81866A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233305(P2009−233305)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】