説明

ディスククランプ装置

【課題】簡易構造でありながらディスクの反りなどに起因する面振れ回転を好適に抑制することのできるディスククランプ装置の提供。
【解決手段】ターンテーブル1と協同してディスクDを挟んで回転されるディスククランプ装置であり、ターンテーブル1からディスクDを介して回転力が与えられるクランプ盤4と、クランプ盤4の外周部に取り付けられて第1位置と第2位置との間で揺動可能とされるディスク保持部材7と、を備える。ディスク保持部材7は、前記第1位置でディスクDの外周縁をクランプ盤4に押し付け、前記第2位置でディスクDの外周縁から離れて該ディスクDの外周縁よりも外側の領域に退避する爪部7Bを有する。又、ディスク保持部材7は、クランプ盤4の回転により発生する風圧を受けて、爪部7BがディスクDの外周縁に押し付く前記第1位置に向かう揺動力を発生するフィン7Cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク駆動装置に用いられるディスククランプ装置に係わり、特に回転すべきディスクの反りを矯正し、その回転時の面振れを抑制できるようにしたディスククランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オーディオ情報やビジュアル情報の記録/再生に用いられるディスク駆動装置は、情報記録媒体としてのディスクをターンテーブルに載せて回転させながら、その半径方向にピックアップを移動させて情報の読み出しや書き込みを行う構成とされている。
【0003】
ここに、ディスクをターンテーブルに固定する方法として、ターンテーブルにディスクの中心孔の周縁を押え込むチャック爪を設けたもの、あるいはターンテーブルに対向して配置されるクランプ盤によりディスクの中心部をターンテーブルに押し付けるようにしたものが知られる。
【0004】
しかし、その何れもディスクの中心部分を保持するだけなので、ディスクの回転時に外部からの伝搬振動を受けてディスクの外周側が大きく振動してしまったり、ディスクの反りにより面振れを起こしてしまったりすることがあり、このためトラッキングサーボやフォーカスサーボといった制御系が激しく変動し、再生音にノイズを生ずるなど情報の記録/再生に支障を来たすことがあった。
【0005】
そこで、ターンテーブルを挟んで外周にマグネットを有するクランプ盤(クランパ)とそのマグネットに吸引されるリングとを設け、そのクランプ盤とリングとにより、ターンテーブル上に置かれたディスクの外周が挟み込まれて固定されるというディスククランプ装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
又、ターンテーブルと協同してディスクを挟み込むクランプ盤(クランプ部)のディスクと対向する面に、凹部と凸部とを放射状またはスパイラル状に設け、ディスク回転時に凹部内に発生する負圧によりディスクがクランプ盤に吸着するようにした装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】実開昭62−202646号公報
【0008】
【特許文献2】特開平08−063848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1によれば、クランプ盤やリングのほか、リングを磁力に抗してクランプ盤から離間させるためにリングを囲む断面逆L字形のリング切離片を必要とすることから、部品点数が多くコスト高になり、しかもリングを配置するときにはリング切離片を外側に押し広げなければならないので、組立作業が煩雑で作業効率の悪化を招き、リングを配置するときに切離片を破損させてしまう虞もある。
【0010】
一方、特許文献2によれば、ディスクの反りを矯正するような負圧を発生させることは困難である。特に、凹部は外周に向かって幅広となるテーパ状にして外部に開放されるので、ディスクの外周側にはこれをクランプ盤に押し付けるに足る負圧が作用しない。よって、特許文献2では、ディスク回転時の面振れ抑制効果を然程期待することはできない。
【0011】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は簡易構造でありながらディスクの反りなどに起因する面振れ回転を好適に抑制することのできるディスククランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するため、
ターンテーブル1と協同してディスクDを挟んで回転されるディスククランプ装置であり、
ターンテーブル1からディスクDを介して回転力が与えられるクランプ盤4と、
クランプ盤4の外周部に取り付けられて第1位置と第2位置との間で揺動可能とされるディスク保持部材7と、を備え、
そのディスク保持部材7は、
前記第1位置でディスクDの外周縁に当接して該ディスクをクランプ盤4に押し付け、前記第2位置でディスクDの外周縁から離れて該ディスクDの外周縁よりも外側の領域に退避する爪部7Bと、
クランプ盤4の回転により発生する風圧あるいは遠心力を受けて、前記爪部7Bが前記第2位置から前記第1位置に向かう揺動力を発生する揺動力発生部(フィン7Cやウェイト)と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るディスククランプ装置によれば、
クランプ盤の外周部にディスク保持部材が揺動可能に取り付けられ、そのディスク保持部材に回転時のディスクの外周縁をクランプ盤に押し付ける爪部が設けられることから、ディスクの反りを矯正し、ディスクを面振れなく安定して回転させることができる。このため、トラッキングサーボやフォーカスサーボに支障を来たさず、情報の記録/再生を良好に行うことができる。
【0014】
特に、ディスク保持部材は、クランプ盤の回転により発生する風圧あるいは遠心力を受けて爪部がディスクの外周縁に押し付く方向に揺動力を発生する揺動力発生部を有することから、マグネットなどを使用せずにディスクを均平状態でクランプすることができ、しかもターンテーブルを停止させたときには風圧、遠心力が作用しなくなることによりディスクを自動的に解放することができる。
【0015】
又、本発明によれば、クランプ盤の外周部にディスク保持部材を付加するだけなので、簡易構造にして装置全体の組立作業を従来通り容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るディスククランプ装置の具体的な構成例を図面に基づいて詳しく説明する。図1はディスクDがクランプされていない状態であり、このときターンテーブル1は回転されることなく静止状態に保たれる。
【0017】
図1において、2はターンテーブル1を一方向に回転駆動するモータ、3はディスクに情報を記録したりその記録情報を読み出したりするピックアップであり、このピックアップ3はターンテーブル1で支持されたディスクDが回転されるとき、該ディスクDの盤面に沿ってその半径方向に移動される。尚、ピックアップ3の移動機構は公知であるから、説明を省略する。
【0018】
一方、4はディスク回転時にターンテーブル1と協同してディスクDを挟み込む円盤状のクランプ盤であり、このクランプ盤4はターンテーブル1に対向する位置で装置フレーム5に回転自在に取り付けられる。尚、クランプ盤4の回転軸4Aの外周部には、ターンテーブル1側への移動を規制する抜止め用の鍔部6が設けられる。
【0019】
又、クランプ盤4はディスクDより少し大きい直径を有し、ターンテーブル1と対向する面側には、ディスクDの片面(非記録面)に押し付く内周凸部4Bおよび外周凸部4Cが形成される。その内周凸部4Bと外周凸部4Cはいずれもリング状で、ディスクDのクランプ時には内周凸部4Bの内側にターンテーブル1のボス部1Aが入り込み、外周凸部4CにはディスクDの外周縁が押し付けられる。尚、クランプ盤4には、ターンテーブル1と対向する部位(回転軸4Aの一端やその周辺)に図示せぬマグネットが設けられ、その磁力によりターンテーブル1とクランプ盤4とが互いに吸引し合い、その吸引力にてディスクDのクランプが行われるようになっている。
【0020】
7はクランプ盤4にディスクの外周縁を押し付けるためのディスク保持部材であり、このディスク保持部材7は、クランプ盤4の外周部に揺動可能に取り付けられる。特に、係るディスク保持部材7は、クランプ盤4の軸線と直交する軸回りで後述する第1位置と第2位置との間を揺動可能とされる。
【0021】
図2及び図3は、ディスク保持部材7の取付部分を拡大して示した部分断面図である。尚、図2はディスク保持部材7が第1位置にある状態を示し、図3はディスク保持部7が第2位置にある状態を示している。
【0022】
図2、図3において、7Aはディスク保持部材7の揺動中心を成す軸部であり、その軸部7Aは、ディスク保持部材7の取付位置におけるクランプ盤4の円周接線方向に向けられた状態でクランプ盤4に形成される図示せぬブラケットで回転自在に支持されている。
【0023】
又、図2、図3から明らかなように、ディスク保持部材7は逆L字形の断面を有し、その一端には爪部7Bが一体に設けられ、他端には薄片状のフィン7Cが一体に設けられている。
【0024】
フィン7Cは、クランプ盤4の回転により発生する風圧(空気抵抗)を受け、ディスク保持部材7に上記第2位置から上記第1位置に向かう揺動力を発生する揺動力発生部を構成するものであり、これによりディスク回転時に爪部7BがディスクDの外周縁に押し付けられるようになっている。
【0025】
つまり、クランプ盤4がディスクDを介してターンテーブル1で回転されるとき、これによる風圧の作用により、フィン7Cがクランプ盤4の外周側(図2のF方向)に押され、これによりディスク保持部材7を図2のF方向に揺動させるような揺動力が発生する構成とされている。しかして、クランプ盤4の回転時(ディスク回転時)には、ディスク保持部材7が図2に示される第1位置に保持され、このとき爪部7BがディスクDの外周縁をクランプ盤4の外周凸部4Cに押え付け、クランプ盤4が停止されたときにはフィン7Cに風圧が作用しなくなることにより、フィン7Cの重量によりディスク保持部材7が上記とは逆向きに揺動されて図3に示される第2位置となり、このとき爪部7BがディスクDの外周縁から離れて該ディスクDの外周縁よりも外側の領域に退避し、ディスクDを解放するようになっている。
【0026】
従って、反りを生じているディスクDでも、その反りを矯正した状態で面振れなく回転させることができる。
【0027】
又、図2から明らかなように、クランプ盤4の外周凸部4Cとディスク保持部材7の爪部7Bにはそれぞれ傾斜面4C,7Bが形成され、ディスク保持部材7が第1位置にあってディスクDの回転が行われるときに2つの傾斜面4C,7Bが「ハ」の字状を呈してディスクDの外周縁を挟み込むようにしてあるので、ディスク保持部材7でディスクDの外周縁を押え込むときディスクDの信号記録エリアに傷を付けてしまうことはない。
【0028】
尚、図3のように、クランプ盤4には第2位置にあるディスク保持部材7の部位(フィン7Cを有する部分)が干渉せぬよう凹部4Dが形成されるが、フィン7Cの位置をクランプ盤4の厚さ方向に離間させることにより、係る凹部4Dを省略することもできる。
【0029】
次に、図4はクランプ盤の平面概略図であり、図5には図4の部分拡大図を示す。図4から明らかなように、ディスク保持部材7は、クランプ盤4の周方向に所定の間隔で複数(本例において90度間隔で4つ)設けられている。特に、それらディスク保持部材7のフィン7Cは、クランプ盤4の半径方向に対して傾斜し、フィン7Cの外周側の一端が内周側の一端よりもクランプ盤4の回転方向に向けられ、クランプ盤4の回転時に各フィン7Cがクランプ盤4の回転方向とは逆向きの風圧を受けてクランプ盤4の外周方向(図5のF1方向)に押されるようになっている。
【0030】
このため、上記の如くクランプ盤4の回転時には、ディスク保持部材7を第2位置から第1位置に向かわせる揺動力が発生し、これによりディスク保持部材7が第1位置に保持されてディスクの外周縁がクランプ盤4の外周凸部4Cに押し付けられることになる。
【0031】
図6はディスク回転時の状態を示している。この図で明らかなように、ディスクDの回転時にはターンテーブル1とクランプ盤4とによりディスクDが挟み込まれる。尚、このようなクランプ動作は、ターンテーブル1やピックアップ3を含むユニット全体がクランプ盤4側に移動することにより行われるが、このときクランプ盤4は上記の如くマグネットの磁力によりターンテーブル1に吸着される。但し、係るマグネットは必ずしも必要でなく、これを省略することもできるし、これに代えて板バネなどの弾性部材を用い、これによりクランプ盤4をターンテーブル1側に付勢するようにしてもよい。
【0032】
ここに、ターンテーブル1とクランプ盤4とでディスクDが挟み込まれただけの状態では、ディスクDの外周縁にディスク保持部材7の爪部7Bが押し付かず、ディスク保持部材7は上記第2位置にあってその爪部7BがディスクDの外周縁よりも外側の領域に退避している(図3参照)。
【0033】
そして、ターンテーブル1の回転駆動により、そのターンテーブル1に磁力吸引されているクランプ盤4がディスクDを介して同方向に回転されると、これによる風圧をフィン7Cが受けてディスク保持部材7が上記第2位置から図6に示される第1位置に揺動し、その爪部7BがディスクDの外周縁に押し付き、以ってディスクDの外周縁をクランプ盤4の外周凸部4Cに押し付けるようになる。
【0034】
よって、ディスクDは中心部と外周縁を保持されたまま、面振れすることなく回転されるので、ピックアップ3による情報の読み出しや書き込みを適正に行うことができ、しかもターンテーブル1を停止させれば、これに同調してクランプ盤4も停止し、このときフィン7Cに風圧が作用しなくなり、これによりディスク保持部材7が第2位置に復帰してディスクDの外周縁から爪部7Bが離れるために、ディスクDをターンテーブル1で支持したままクランプ盤4から離間させることができる。
【0035】
以上、本発明に係るディスククランプ装置の構成例を図面に示して説明したが、本発明は上記のような構成に限らず、フィン7Cに代わる揺動力発生部として、ディスク保持部材7に金属などの比重の大きい重量物から成るウェイト(重錘)を設けるようにしてもよい。具体的には、ディスク保持部材7の軸部7Aを挟んで爪部7Bとは反対側となる一端(フィン7Cに相当する位置)に図示せぬウェイトを固定し、そのウェイトがクランプ盤4の回転による遠心力を受けることにより、ディスク保持部材7を上記第2位置から第1位置に向かわせる揺動力が発生する構成とすることもできる。
【0036】
これによれば、爪部7Bによるディスク外周縁の保持力をウェイトの重量に比例して大きくすることができるが、この場合には保持力の過大によりディスクの外周縁が押し潰されてしまうことがないような重量バランスに調整することが肝要である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るディスククランプ装置を示す説明図(ディスクの非クランプ時)
【図2】本発明に係るクランプ装置の要部拡大図(保持部材が第1位置にある状態)
【図3】本発明に係るクランプ装置の要部拡大図(保持部材が第2位置にある状態)
【図4】クランプ盤の平面概略図
【図5】図4の部分拡大図
【図6】本発明に係るディスククランプ装置を示す説明図(ディスク回転時の状態)
【符号の説明】
【0038】
1 ターンテーブル
3 ピックアップ
4 クランプ盤
7 ディスク保持部材
7A 軸部
7B 爪部
7C フィン(揺動力発生部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターンテーブルと協同してディスクを挟んで回転されるディスククランプ装置であり、
前記ターンテーブルからディスクを介して回転力が与えられるクランプ盤と、
前記クランプ盤の外周部に取り付けられて第1位置と第2位置との間で揺動可能とされるディスク保持部材と、を備え、
前記ディスク保持部材は、
前記第1位置でディスクの外周縁に当接して該ディスクを前記クランプ盤に押し付け、前記第2位置でディスクの外周縁から離れて該ディスクの外周縁よりも外側の領域に退避する爪部と、
前記クランプ盤の回転により発生する風圧あるいは遠心力を受けて、前記爪部が前記第2位置から前記第1位置に向かう揺動力を発生する揺動力発生部と、を有することを特徴とするディスククランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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