説明

ディスクケース及び磁気ディスク用ガラス基板の出荷方法

【課題】主表面に傷を付けることなく、磁気ディスク用ガラス基板の収納量を多くすることが可能なディスクケース及び磁気ディスク用ガラス基板の出荷方法を提供すること。
【解決手段】本発明のディスクケースは、磁気ディスク用ガラス基板を収容可能なディスク本体と、前記ディスク本体に設けられた複数の仕切り部と、を具備し、一方の主面のみに磁気記録層を設ける複数の磁気ディスク用ガラス基板を、前記仕切り部間に立設させた状態で収納するディスクケースであって、前記磁気ディスク用ガラス基板は、前記磁気記録層を設ける面同士及び前記磁気記録層を設けない面同士が対面するように配設されており、前記磁気記録層を設けない面同士間の距離が前記磁気記録層を設ける面同士間の距離よりも短いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク用ガラス基板を収納するディスクケース及び磁気ディスク用ガラス基板の出荷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ハードディスク、光ディスク等の記録媒体や、このような記録媒体用基板としては円盤状のディスクが広く用いられている。このようなディスクは、高記録密度化に伴い、その表面平滑性を確保することが要請されている。ディスクは、一般的に、研削加工(ラッピング)、形状加工工程(コアリング及びチャンファリングなど)、研磨加工(端面部及び表面部)、最終検査工程を経て製造される。そして、各工程間では検査が実施され、この検査により異常が発見された場合、原因を調べ、これに対処するということが行われている。例えば、研磨装置の上定盤の研磨パッドに異物が混入したことにより、研磨工程を経たディスクの表面に傷や異物が発見された場合、上定盤の研磨パッドの交換が行われる。このような製造管理は、要求される品質を確保し収率を改善することで量産/製造コストを低減するという要請に応えるために実施され、製造の各工程で一度に処理する枚数は、例えば125枚を1ロットとする単位で行われている。
【0003】
ところで、ディスクは傷を受け易く、また、厚みも通常0.6mm〜1.5mm程度と薄いので、製造の各工程における処理や各工程を経たディスクの保管、搬送に際しては、ディスクが相互に接触したり、あるいは他のものと接触したりして損傷を受けることがないようにする必要がある。そこで、ディスクの処理、保管及び搬送に際しては、複数枚のディスクを所定の間隔を配して収納するディスクケースが用いられている。このようなディスクケースとしては、例えば特許文献1で開示されたものが知られている。図6は、当該文献で開示されたディスクケース100を示す斜視図である。同図に示すディスクケース100は、側壁11に複数のリブ(仕切り部)12を有し、リブ間の隙間によって形成した溝13にディスク1を収納する。ディスク1の収納は、ディスクケース100の開放された上方から溝13に向けて挿入する。このように、複数枚のディスク1を立てた状態で配列収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−261594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、出荷コストの低減の要請に応えるため、ディスクケースに収納可能なディスクの枚数を増加する傾向にある。一方、作業スペースや保管スペースの問題から、ディスクケース使用を少なくする、さらには収納効率を向上させるためカセット内でのディスク間隔を小さくするという要請がある。これらのことから、ディスクケースに設けられた溝(リブ同士の隙間)を狭くし、ディスク収納密度を高めることが求められている。しかし、溝13の間隔を狭くすると、ディスクをディスクケース100に収納した際に、ディスク同士が触れてしまい、主表面に傷が入る恐れがあり、不良品となってしまうことがある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、主表面に傷を付けることなく、磁気ディスク用ガラス基板の収納量を多くすることが可能なディスクケース及び磁気ディスク用ガラス基板の出荷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のディスクケースは、磁気ディスク用ガラス基板を収容可能なディスク本体と、前記ディスク本体に設けられた複数の仕切り部と、を具備し、一方の主面のみに磁気記録層を設ける複数の磁気ディスク用ガラス基板を、前記仕切り部間に立設させた状態で収納するディスクケースであって、前記磁気ディスク用ガラス基板は、前記磁気記録層を設ける面同士及び前記磁気記録層を設けない面同士が対面するように配設されており、前記磁気記録層を設けない面同士間の距離が前記磁気記録層を設ける面同士間の距離よりも短いことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、磁気記録層を設けない面同士間の距離が磁気記録層を設ける面同士間の距離よりも短いので、磁気ディスク用ガラス基板の収納量を多くすることができる。また、磁気記録層を設ける面同士及び磁気記録層を設けない面同士が対面するように磁気ディスク用ガラス基板を配設し、磁気記録層を設ける面同士間の距離を相対的に長くしているので、ハンドリングの際、搬送・出荷の際に主表面に傷を付けることを防止できる。
【0009】
本発明のディスクケースにおいては、前記磁気記録層を設ける面側の仕切り部を識別可能に設けたことが好ましい。この場合においては、前記磁気記録層を設ける面側の前記仕切り部の色を変えることが好ましく、前記磁気記録層を設ける面側の前記仕切り部の高さを変えることが好ましく、前記磁気記録層を設ける面側の前記仕切り部に表記することが好ましい。このような構成により、磁気記録層を設ける面と磁気記録層を設けない面とを誤ることなく、磁気ディスク用ガラス基板をディスクケースに収納することができる。
【0010】
本発明の磁気ディスク用ガラス基板の出荷方法は、上記ディスクケースに、前記磁気ディスク用ガラス基板を、前記磁気記録層を設ける面同士及び前記磁気記録層を設けない面同士が対面するように配設した状態で出荷することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のディスクケースは、磁気ディスク用ガラス基板を収容可能なディスク本体と、前記ディスク本体に設けられた複数の仕切り部と、を具備し、一方の主面のみに磁気記録層を設ける複数の磁気ディスク用ガラス基板を、前記仕切り部間に立設させた状態で収納するディスクケースであって、前記磁気ディスク用ガラス基板は、前記磁気記録層を設ける面同士及び前記磁気記録層を設けない面同士が対面するように配設されており、前記磁気記録層を設けない面同士間の距離が前記磁気記録層を設ける面同士間の距離よりも短いので、主表面に傷を付けることなく、磁気ディスク用ガラス基板の収納量を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るディスクケースを示す部分断面図である。
【図2】図1に示すディスクケースに磁気ディスク用ガラス基板を収納した状態を示す図である。
【図3】図1に示すディスクケースに磁気ディスク用ガラス基板を収納した状態の他の例を示す図である。
【図4】磁気ディスク用基板の製造において用いられる外観検査装置を模式的に示す図である。
【図5】磁気ディスクの構成を示す図である。
【図6】従来のディスクケースを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
磁気ディスクの記録密度は年々増加しており、片面で40GB以上の磁気ディスクも開発されている。現在、磁気ディスクは、両面合わせて必要とする記録密度を満足しているが、このように記録密度が増加していくと、記録密度をあまり必要としない電子機器では、片面だけで必要とする記録密度を満足することになる。このように片面で必要とする記録密度を満足すると、HDD(ハードディスクドライブ)装置側でも1枚の磁気ディスクに対して磁気ヘッドを1本とするなど部品点数を減らすことが出来るためコスト的にも有利となり、かつ薄型化を実現することができる。
【0014】
このように、片面のみに磁気記録層を設けた磁気ディスクはこれからニーズが高まることが予想される。そして、片面のみに磁気記録層を設けた磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス基板については、磁気記録層を設けない方の面の傷/ダメージなどの欠陥に関しては、記録面に求められるような規格を満たす必要がない場合が多い。本発明者はこのような点に着目し、片面のみ磁気記録面として使用する磁気ディスク用ガラス基板のディスクケースへの収納量を増加することを見出して本発明をするに至った。
【0015】
すなわち、本発明の骨子は、磁気ディスク用ガラス基板を収容可能なディスク本体と、前記ディスク本体に設けられた複数の仕切り部と、を具備し、一方の主面のみに磁気記録層を設ける複数の磁気ディスク用ガラス基板を、前記仕切り部間に立設させた状態で収納するディスクケースであって、前記磁気ディスク用ガラス基板は、前記磁気記録層を設ける面同士及び前記磁気記録層を設けない面同士が対面するように配設されており、前記磁気記録層を設けない面同士間の距離が前記磁気記録層を設ける面同士間の距離よりも短くすることにより、主表面に傷を付けることなく、磁気ディスク用ガラス基板の収納量を多くすることである。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係るディスクケースを示す断面図である。このディスクケース10は、磁気ディスク用ガラス基板1を収容可能なディスク本体と、前記ディスク本体に設けられた複数の仕切り部(リブ)12a,12bと、を具備する。なお、本実施の形態において上下方向とは、ディスクケースの通常の使用態様における上下方向をいい、必ずしも重力方向を基準とする上下方向ではない。また、以下の説明において具体的な材質、形状、リブの数などは理解を容易とするための例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態のディスクケース10は、側壁の上下方向に延在する複数のリブ12a,12bを備えており、リブ12a,12b同士の隙間によって磁気ディスク用ガラス基板1を収納するための溝13が形成されている。本実施の形態においては、磁気ディスク用ガラス基板1は、片面のみに磁気記録層を設ける円盤状の磁気ディスク用ガラス基板であって、ディスクケース10の上方から溝13へと挿入されることにより、リブ12a,12b間に立設させた状態で収納される。
【0018】
図1に示すように、リブは、ガラス基板の配列方向Xにおいて相対的に幅が広いリブ12aと、ガラス基板の配列方向Xにおいて相対的に幅が狭いリブ12bとを有する。これらのリブ12a,12bがガラス基板の配列方向Xにおいて交互に設けられている。
【0019】
図1に示すようなディスクケース10に磁気ディスク用ガラス基板1を収納すると、図2に示すようになる。ここで、図2に示すディスクケース10に収納する磁気ディスク用ガラス基板1は、一方の主面のみに磁気記録層を設ける磁気ディスク用のガラス基板である。図2において、磁気記録層を設ける面をA面とし、磁気記録層を設けない面をB面とする。したがって、図2から分かるように、A面同士及びB面同士が対面するように各磁気ディスク用ガラス基板1が立設された状態でディスクケース10に収納されている。
【0020】
A面同士は相対的に幅の広い12aを介して対面しており、B面同士は相対的に幅の狭い12bを介して対面している。すなわち、A面同士間の距離(L)がB面同士間の距離(L)よりも長くなっている(B面同士間の距離がA面同士間の距離よりも短い)。このような配列にすることにより、ハンドリングの際又は搬送・出荷の際に、磁気記録層を設ける面に傷が生じることを防止できる。また、B面同士間の距離を短くしているので、より多くの磁気ディスク用ガラス基板をディスクケースに収納することができる。そして、このような状態で、すなわち、A面同士及びB面同士が対面するように配設した状態で磁気ディスク用ガラス基板1を出荷する。
【0021】
ディスクケース10への磁気ディスク用ガラス基板1の収納作業においては、A面、B面を意識しながら行う必要がある。すなわち、A面同士間の距離をB面同士間の距離よりも長くするように各磁気ディスク用ガラス基板を収納する必要がある。この場合において、A面同士とB面同士を対面させる際に、誤りなくA面同士間の距離をB面同士間の距離よりも長くするために、リブ12aとリブ12bとを識別可能に設けることが望ましい。例えば、図3に示すように、一方のリブの高さを変えて識別することが望ましい。なお、図3においては、リブ12aの高さをリブ12bの高さよりも高くした場合について説明しているが、本発明においては、リブ12bの高さをリブ12aの高さよりも高くしても良い。また、リブ12aの色とリブ12bの色とが異なるように少なくとも一方のリブに着色しても良い。あるいは、リブ12aとリブ12bとが識別できるように少なくとも一方のリブに表記しても良い。
【0022】
このように、ディスクケース10内で磁気ディスク用ガラス基板1の配置間隔を、A面同士が対面する箇所では広くし、B面同士が対面する箇所では狭くすることで、主表面に傷を付けることなく、ディスクケース10への磁気ディスク用ガラス基板1の収納量を多くすることができる。
【0023】
磁気ディスク用ガラス基板の材料としては、結晶化ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどが用いられる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦性及び基板強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を提供することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好ましく用いることができる。また、ガラス基板に限らず、本発明の効果は磁気ディスク基板種によらず発揮できることから、その他の磁気ディスク基板(アルミニウム基板など)への適用を排除するものではない。
【0024】
磁気ディスク用ガラス基板の製造工程は、素材加工工程及び第1ラッピング工程;端部形状工程(穴部を形成するコアリング工程、端部(外周端部及び/又は内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程));端面研磨工程(外周端部及び内周端部);第2ラッピング工程;主表面研磨工程(第1及び第2研磨工程);化学強化工程などの工程を含む。
【0025】
このようにして製造した磁気ディスク用ガラス基板をディスクケース10に収納して出荷・搬送し、その後、光学式自動外観検査(AOI;Automated Optical Inspection)により自動検査を行ってA面を識別し、A面上に磁気記録層を形成する。以下に、製造した磁気ディスク用ガラス基板に対して、磁気記録面として使用する主表面(最終研磨まで施した主表面)を識別し、その主表面上に磁気記録層などを形成して磁気ディスクを製造する場合について説明する。
【0026】
製造した磁気ディスク用ガラス基板は、磁気記録面として使用する主表面(A面)と、磁気記録面として使用しない主表面(B面)とを備えている。したがって、磁気ディスク製造工程を考慮して、間違いなくA面に磁気記録層などが形成されるように、製造された磁気ディスク用ガラス基板のA面を識別しておく必要がある。ガラス基板は透明体であり、しかもB面についても所定レベルの算術平均粗さを有しているので、目視でA面を精度良く識別することは非常に難しい。このため、例えば、図4に示すような光学式自動外観検査による外観検査装置2を用いてA面を精度良く識別する。
【0027】
図4に示す外観検査装置2は、2個の欠陥検出プローブ用レーザ21a,21bと、それぞれがレーザ光のほぼ全方向の散乱光を検出する4個の検出器22a〜22dとを備えている。2個の欠陥検出プローブ用レーザ21a,21bは、レーザ出力方向を同じにして離間配置されている。欠陥検出プローブ用レーザ21aは測定用レーザ光を出光し、欠陥検出プローブ用レーザ21bは参照用レーザ光を出光する。検出器22a,22b,22cは、欠陥検出プローブ用レーザ21aのレーザ照射位置の回折・散乱光を検出できる位置に配置されており、それぞれ磁気ディスク用ガラス基板1からの回折・散乱光を検出し、散乱光強度情報を取得する。なお、検出器22bは、検出器22cの前段に配置されたビームスプリッタ23で分割されたうちの一方の光を検出するように配置されている。また、検出器22dは、欠陥検出プローブ用レーザ21bのレーザ照射位置の回折・散乱光を検出できる位置に配置されており、磁気ディスク用ガラス基板1の基準となる回折・散乱光を検出し、参照散乱光強度情報を取得する。このようにして得られた散乱光強度情報及び参照散乱光強度情報から算術平均粗さの大小を判定する。すなわち、算術平均粗さが大きい主表面(B面)においては、散乱光強度が相対的に大きく、算術平均粗さが小さい主表面(A面)においては、散乱光強度が相対的に小さいので、B面においては、散乱光強度と参照散乱光強度との間の差分が相対的に大きく、A面においては、散乱光強度と参照散乱光強度との間の差分が相対的に小さい。このような関係から、A面を識別することができる。
【0028】
図4に示す外観検査装置2においては、レーザ径が例えば5μm程度で小さく、レーザ波長が短くパワーが大きいので識別精度が高い。このような構成の外観検査装置2においては、磁気ディスク用ガラス基板1を移動させながら、磁気ディスク用ガラス基板1の表面に対して、2個の欠陥検出プローブ用レーザ21a,21bからレーザ光を照射し、そのときの回折・散乱光を各検出器22a〜22dで検出する。その後、各検出器22a〜22dの出力信号を判定回路(図示せず)が取り込み、当該出力信号を基に磁気ディスク用ガラス基板10のA面/B面を識別する。
【0029】
このようにして識別されたA面同士が対面し、A面同士が相対的に広くなるようにしてディスクケース10に収納して、磁気ディスク製造ラインに搬送し、該磁気ディスク製造ラインにおいて、A面に磁気記録層などの成膜を行う。
【0030】
図5は、磁気ディスクの概略構成を示す図である。図5に示す磁気ディスクは、ディスク基体1、中間層30、磁気記録層31、媒体保護層32、潤滑層33を順次積層することにより構成されている。
【0031】
ディスク基体(磁気ディスク用ガラス基板)1は、上述したようにして製造され、磁気記録面として使用する主表面(A面)が識別された状態であり、このA面上に各層が形成される。
【0032】
中間層30としては、ディスク基体1と磁気記録層31との間に設けることができる層をすべて含み、例えば、密着層、軟磁性層、配向制御層、下地層などを含む。磁気記録層31は、ディスク基体1上に直接又は中間層30を介して形成される。磁気記録層31としては、例えば、複数の種類の酸化物(以下、「複合酸化物」という)を含有させることにより、非磁性の粒界に複合酸化物を偏析させてなるグラニュラ磁気記録層などを挙げることができる。中間層30や磁気記録層31は、例えばスパッタリング法などにより成膜することができる。
【0033】
媒体保護層32は、磁気ヘッドの衝撃から磁気記録層31を保護するための保護層である。一般にCVD法によって成膜されたカーボンは、スパッタリング法によって成膜したものと比べて膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対してより有効に磁気記録層31を保護することができる。
【0034】
潤滑層33は、PFPE(パーフロロポリエーテル)などがディップコート法により媒体保護層32上に塗布されることで形成され、その後熱処理又は紫外線照射が行われる。
【0035】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(実施例)
上述したようにして磁気ディスク用ガラス基板を製造し、次いで、この磁気ディスク用ガラス基板の両主表面について、磁気記録層を設ける主表面(A面)を識別した。ここでは、図4に示す外観検査装置を用いて100枚の磁気ディスク用ガラス基板のA面を識別した。
【0036】
このような磁気ディスク用ガラス基板1を図1に示すディスクケース10に収納した。すなわち、ディスクケース10内では、A面同士及びB面同士が対面するように、かつ、A面同士が対面する箇所ではA面同士間の距離を広くし、B面同士が対面する箇所ではB面同士間の距離を狭くなるように、複数の磁気ディスク用ガラス基板1が配列される。このディスクケース10に、35枚の磁気ディスク用ガラス基板1を収納した。
【0037】
前記ディスクケースで出荷・搬送された磁気ディスク用ガラス基板のA面上に、それぞれ下地層、磁気記録層、媒体保護層及び潤滑層を順次積層して磁気ディスクを3,500枚作製(100ケース相当)した。これらの磁気ディスクに対して、欠陥検査を行ったところ問題となる欠陥は発見されなかった。これは、上記ディスクケースを用いても、A面に傷を付けることなく搬送できたからであると考えられる。したがって、本実施の形態によれば、従来のディスクケースよりも多くのディスクを収納することができて、出荷コストを削減することができる。
【0038】
本発明は上記実施の形態に限定されず、適宜変更して実施することができる。上記実施の形態における数値、材質、サイズ、処理手順などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 磁気ディスク用ガラス基板
2 外観検査装置
10 ディスクケース
12a,12b リブ
13 溝
21a,21b 欠陥検出プローブ用レーザ
22a〜22d 検出器
30 中間層
31 磁気記録層
32 媒体保護層
33 潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスク用ガラス基板を収容可能なディスク本体と、前記ディスク本体に設けられた複数の仕切り部と、を具備し、一方の主面のみに磁気記録層を設ける複数の磁気ディスク用ガラス基板を、前記仕切り部間に立設させた状態で収納するディスクケースであって、前記磁気ディスク用ガラス基板は、前記磁気記録層を設ける面同士及び前記磁気記録層を設けない面同士が対面するように配設されており、前記磁気記録層を設けない面同士間の距離が前記磁気記録層を設ける面同士間の距離よりも短いことを特徴とするディスクケース。
【請求項2】
前記磁気記録層を設ける面側の仕切り部を識別可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載のディスクケース。
【請求項3】
前記磁気記録層を設ける面側の前記仕切り部の色を変えたことを特徴とする請求項2に記載のディスクケース。
【請求項4】
前記磁気記録層を設ける面側の前記仕切り部の高さを変えたことを特徴とする請求項2に記載のディスクケース。
【請求項5】
前記磁気記録層を設ける面側の前記仕切り部に表記したことを特徴とする請求項2に記載のディスクケース。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のディスクケースに、前記磁気ディスク用ガラス基板を、前記磁気記録層を設ける面同士及び前記磁気記録層を設けない面同士が対面するように配設した状態で出荷することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の出荷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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