説明

ディスクチャック機構およびディスクの表面加工装置

【課題】
ばね等の付勢により大きなチャック力が確保でき、ディスクへのダメージを低減して異物の付着を抑えることができるディスクチャック機構を提供することにある。
【解決手段】
この発明は、スピンドルに設けられるチャック機構を、スピンドルとされる中空シリンダとこれの中空部に装着した円筒チャック部材(コレット)との二重構造とすることで、直接スピンドルの頭部をチャック部材とすることなく、円筒チャック部材を別部材として設けることで、テーパ部材を押込む先割れ円筒チャック部材の構造を拡大することが容易な構造にすることができ、さらに頭部の外周には円周方向にV溝が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスクチャック機構およびディスクの表面加工装置に関し、詳しくは、磁気ディスク、あるいはその基板(サブストレート)に対して研磨等による旋削加工、テクスチャ形成、ポリッシュ加工、テープクリーニング処理などの表面加工処理をする表面加工装置に設けられるディスクチャック機構において、ばね等の付勢により大きなチャック力が確保でき、ディスクへのダメージを低減して異物の付着を抑えることができるようなディスクチャック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクあるいはそのサブストレートは、スピンドルに装着されて回転状態で旋削加工、テクスチャ形成、ポリッシュ加工、テープクリーニング処理などの表面加工処理がなされ、その後に、表面検査装置により、表面の疵や欠陥等の有無が検査される。
表面加工装置においても表面検査装置と同様にスピンドルにディスクをチャックして回転状態で加工処理をするのが一般的に行われている。
表面検査装置におけるディスクチャック機構は、ディスクへのダメージを軽減するために、通常、数百g程度のチャック力を持つが、表面加工装置におけるディスクチャック機構は、1kg乃至2kgか、それ以上のチャック力が必要になる。そのため、マテハンマークと呼ばれるようなチャック痕が検査装置の場合よりもディスクに残り易い。
なお、表面加工装置のディスクチャック機構は、表面検査装置とほぼ同様な構造のものが用いられ、そのチャック力を増強させたものとなっているが、スピンドルの回転数は、表面検査装置のものよりも低く、300rpm程度である。
【0003】
表面検査装置のディスクチャック機構としては出願人による出願が公知となっている(特許文献1)。そのチャック機構は、チャックリングを4分割して1/4円弧の4個のチャックピースをO型弾性リングで締め付けたラジアルチャックと呼ばれるものである。チャックされるディスクは、スピンドルの基準面に当接載置された状態でハンドリングロボットによりスピンドルに装着されてディスクの内周側面を4個のチャックピースでチャックする。
表面加工装置のディスクチャック機構としては、スピンドルとなる先割れした円筒チャック部材にテーパ部材(テーパヘッド)を押込むことで、先割れした円筒部分を拡大して拡大した円筒部分の外周でディスクの内周をチャックするディスクチャック機構が公知である(特許文献2)。
【特許文献1】特願2003−91905号公報
【特許文献2】特願平11−353646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような従来のチャック機構は、スピンドルに設けた基準面にディスクの内周部分あるいは内周チャンファ部分とその近傍内周面を載置してスピンドルがディスクを受けてから内周側面あるいはチャンファ部分をチャックするものである。そのため、表面加工装置のようにディスクの表面に大きな加工力が加わると、スピンドルの基準面に当接載置されたディスクに回転ずれが生じて基準面とディスクとの間の摩擦によりディスクにダメージを与えあるいはその摩擦により異物が発生し易い問題がある。
一方、特許文献2に示されるような表面加工装置に使用されるチャック機構は、スピンドルとなる円筒チャック部材にテーパヘッドを押込むために、テーパヘッドの力の多くが円筒部分の拡大に費やされ、ばね等の反発力を利用してテーパヘッドを押込む場合には、拡大した円筒部分によるディスクに対するチャック力が落ち、それを1kg以上にすることが難しく、大きな反発力のばね駆動機構をモータ駆動機構とは別に設けなければならない。
この発明の目的は、このような問題点を解決するものであって、ばね等の付勢により大きなチャック力が確保でき、ディスクへのダメージを低減して異物の付着を抑えることができるディスクチャック機構を提供することにある。
この発明の他の目的は、旋削加工、テクスチャ形成、ポリッシュ加工、テープクリーニング処理などの表面加工装置において、ばね等の付勢により大きなチャック力が確保でき、ディスクへのダメージを低減して異物の付着を抑えることができるディスクの表面加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するためのこの発明のディスクチャック機構およびディスクの表面加工装置の特徴は、先割れした円筒チャック部材に対してこれの内径より大きな径を持つテーパ部材を円筒チャック部材の頭部に挿入して押込むことで、先割れした頭部を拡大して拡大した頭部の外周でディスクの内周をチャックするディスクチャック機構において、
頭部が飛び出し頭部の外周が外側に拡大できる状態で内側中空部に円筒チャック部材が装着された中空シリンダと、頭部の外周において円周方向に設けられたV溝とを有し、
V溝が、チャックするディスクの裏面側に位置する第1の傾斜面がディスクの表面側に位置する第2の傾斜面より外側に突き出していて、頭部の外周にその中心開孔が挿入されたディスクの裏面側チャンファ部を第1の傾斜面で受けてテーパ部材が頭部に押込まれたときに第2の傾斜面がディスクの表面側チャンファ部に接触して第1の傾斜面と第2の傾斜面によりディスクをチャックするものである。
【発明の効果】
【0006】
このように、この発明は、スピンドルに設けられるチャック機構を、スピンドルとされる中空シリンダとこれの中空部に装着した円筒チャック部材(コレット)との二重構造とすることで、直接スピンドルの頭部をチャック部材とすることなく、円筒チャック部材を別部材として設けることで、テーパ部材を押込む先割れ円筒チャック部材の構造を拡大することが容易な構造にすることができる。しかも、コイルスプリング等のばね部材をスピンドルを回転させるモータ等と一体的な構造で装着しあるいはチャック機構に内蔵することが容易で大きなチャック力を確保することができる。
さらに、この発明では、円筒チャック部材(コレット)の頭部外周部に円周方向にV溝を設けて、このV溝の第2の傾斜面(下側傾斜面)を第1の傾斜面(上側傾斜面)より突き出させることで、突き出した第2の傾斜面(下側傾斜面)でディスクの裏面側チャンファ部を受けて保持し、その状態でチャックすることができる。
これにより、スピンドルに設けた基準面に内周チャンファ部分とその近傍内周面を載置てスピンドルがディスクを保持しなくても済み、ディスクに対する接触面はチャンファ部分以外はほとんどなくなるので、ディスクに対する異物の付着を低減することができる。
その結果、ばね等の付勢により大きなチャック力が確保でき、ディスクへのダメージを低減して異物の付着を抑えることができるディスクチャック機構を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、この発明を適用した一実施例のディスクチャック機構の断面図、図2は、ディスクチャック機構に内装されたコレットの説明図、図3は、コレット頭部に形成されるV溝についての説明図、図4は、ディスクチャック・アンチャック駆動をするばね機構の説明図、そして図5は、そのディスクチャック状態とアンチャック状態の部分拡大断面図である。
なお、各図において、同一の構成要素は、同一の符号で示し、それらの説明を割愛する。
図1において、ディスクチャック機構1は、スピンドルとされるSUS製の中空のシリンダ2と、これの中空部の頭部内側に挿入されたSUS製のコレット(円筒チャック部材)3、コレット3の内側に挿入された、コレット3の内径より大きな径を持つ同じくSUS製の逆テーパヘッド(テーパ部材)4、逆テーパヘッド4が頭部に結合されシリンダ2を貫通する結合ロッド5、コレット3の外周に挿着された2本のリングスプリング(OリングあるいはCリング)6,6、そしてモータ10の中心を貫通する作動軸12を有する図4に示すディスクチャック・アンチャック駆動機構11とを備えている。
コレット3の頭部に装填された逆テーパヘッド4は、円錐を逆さにした形状である。図1では、この逆テーパヘッド4は、上昇していて、コレット3がディスクをチャックしていないアンチャック状態にある。このときには、ディスクチャック・アンチャック駆動機構11により結合ロッド5の底部が押上げられた状態にある。このときには、逆テーパヘッド4のテーパ部41の外周面は、図示するように、コレット3のチャック31が形成する内周面36とは所定の間隙をもって離れている。
【0008】
コレット3には、図2(a),(b)に示すように、フランジ状に拡大した頭部外周部がシリンダ2の先端部より飛び出す形でチャック31として形成されている。そして、これの下側には2本の円周溝32,32(図2(a)参照)が設けられいる。
チャック31と円周溝32とはシリンダ2の先頭部分の中空部の内径より大きく形成され、図1に示すように、リングスプリング6の先端部より上側に配置される。リングスプリング6は、チャック31の径が拡大したときにその径を縮小する方向に付勢する。
コレット3は、頭部から軸方向に沿って形成された幅1mm程度のスリット3aにより4分割され、スリット3aは、コレット3の頭部から2/3程度下まで刻まれ、全体として先割れの円筒部材として構成されている。
チャック31は、図3(a)に示すように、頭部で切溝32a,32b,32c,32dにより均等に4分割されて形成された実質的に1/4円弧からなる4個のチャック部31a,31b,31c,31dからなる。これには、V溝33a,33b,33c,33dが各チャック部31a,31b,31c,31dの外周側面において外周に沿ってに形成されている。
また、図3(a)および図2(b)の縦断面図に示すように、各チャック部31a,31b,31c,31dの頭部背面にはチャック31全体をすり鉢状にする傾斜面34がそれぞれに形成されている。
さらに、コレット3にはスリット3aにより分割された各チャック部31a,31b,31c,31dに対応してこれらを支持するチャック部支持部3bがスリット3aによる分割により同時に形成され、分割がされていない根本部35の周面には、コレット3をシリンダ2に固定するためのねじ孔35a,35bが設けられている。
コレット3は、2本の円周溝32が形成された部分とチャック部支持部3bとの接続部が段差3cになっていて、この段差3cがシリンダ2の頭部上面に位置する状態でコレット3がシリンダ2の中空部に装着され、2本の円周溝32より上部がシリンダ2の頭部から顔を出す形で装着されている。
【0009】
例えば、2.5インチ程度のディスクをチャックする場合では、そのディスク内周の孔径が20mmφ程度であるので、コレット3の頭部外径が19mmφ、本体の外径が16mmφ程度であり、全体の長さは、55mm〜65mm程度であり、チャック31+2本の円周溝32の長さが8mm〜15mm程度、スリット3aにより形成される割れ深さが40mm〜50mm程度は確保されることが好ましく、8mm〜15mm程度ががシリンダ2の頭部から顔を出す形で装着されている。
さらに、図3(b)の縦断面図に示すように、チャック部31に形成されるV溝33(V溝33a,33b,33c,33dを代表するものとして)の下側傾斜面37(チャックするディスク9の裏面側を受ける傾斜面)の外径が21mmφ程度で上側傾斜面38に対して2mm程度突出して形成されるものである。そして、逆テーパヘッド4の押下により、ディスク9がチャックされた状態では、シリンダ2から首を出したチャック31+2本の円周溝32の部分が1mm程度移動するだけである。このとき、図3(b)では、チャック部31の外周がシリンダ2の内壁面とは接触していない。しかし、ディスク9が存在しないときに逆テーパヘッド4が押下された場合にはチャック31がシリンダ2の内壁面に接触する。このことでシリンダ2がチャック部31の首振り角度を制限してコレット3を保護する役割を果たしている。
しかも、チャック部31a,31b,31c,31dを支える4分割されたそれぞれのチャック部支持部3bの壁面の厚さは、0.3mm〜1mm程度と通常のシリンダ2の壁面の厚さより薄い。
以上により、コレット3の構造がチャック部支持部3bのストロークが長くかつその壁面厚が薄い形状となり、それにより4個のチャック部31a,31b,31c,31dが拡大し易くなり、シリンダ2の頭部上面でチャック31+2本の円周溝32が首振り状態で逆テーパヘッド4に押されてこれと一体となってディスク9の内周を押さえ、チャックする。コレット3の頭部の拡大変形が小さな力でもし易い。
そこで、逆テーパヘッド4の押下により、チャック部31a,31b,31c,31dが拡大されるときには、小さい力で拡大させることができ、ここでの拡大による力の損失が低減される。
その結果、リングスプリング6を拡大させる以外は、逆テーパヘッド4の拡大力をほとんど減ずることなく、大きなチャック力を4個のチャック部31a,31b,31c,31dに伝達することができる。このとき、リングスプリング6の付勢力もチャック部支持部3bが変形し易すいのでその弾性力を大きく採る必要はない。
【0010】
チャック31+2本の円周溝32を除いた拡大前のコレット3の本体の外径は、例えば、前記したように16mmφであるときには、シリンダ2の頭部中空孔21の内径は、例えば、18mmφとして、これよりも少し小さくして、図1に示すように、コレット3をシリンダ2の頭部に装着する。そして、ねじ孔35a,35bを介してねじ36a,36bによりシリンダ2の頭部に固定する。
すなわち、コレット3の分割されていない根本部35は、シリンダ2の中空孔22の部分に装着される。中空孔22の下側には径が絞られた突出部23がシリンダ2に設けられているので、突出部23がコレット3の根本部35の底部を受けてコレット3が固定される。なお、中空孔22の内径は、根本部35の外径に嵌合する径となっている。
シリンダ2の突出部23のさらに下側には中空孔24が設けられている。ここに結合ロッド5を受ける円筒軸受25が固定されている。さらにこれに結合ロッド5が貫通して上下方向(軸方向)にスライド可能に結合ロッド5が円筒軸受25を介してシリンダ2に支持される。
シリンダ2の中空孔24の底部には鍔26が固定されていて、結合ロッド5がこれを貫通して鈎型の端部5aがシリンダ2から所定量突出している。
円筒軸受25と鍔26との間に設けられたスライドガイドスリーブ7は、中空部にボールが装着され、結合ロッド5が嵌合してシリンダ2の軸方向に結合ロッド5をガイドする。
鈎型の端部5aより先は、モータ10の頭部を一部切欠き断面として示す図4にみるように、モータ10とディスクチャック・アンチャック駆動機構11とが設けられている。
ディスクチャック・アンチャック駆動機構11は、作動軸12のほか、大きな鍔13aを有するばねホルダー13と、コイルスプリング14、鍔15、ボス16、そしてエアーシリンダ17等とからなる。
作動軸12は、その頭部にある端部5aとは逆方向の鈎型の端部12aが鈎型の端部5aに嵌合して結合され、モータ10を貫通して後端に延び、モータ10の後部に固定された台座10aを貫通し、これに接続固定されたばねホルダー13、コイルスプリング14を貫通して、その後端部に鍔15が挿入されてボス16が結合ロッド5の後端部に固定されて完結している。
コイルスプリング14は、ばねホルダー13と鍔15との間に圧縮状態で装着されている。結合ロッド5の後端部に固定されたボス16は、その後ろ側に設けられたエアーシリンダ17に当接されていて、エアーシリンダ17が駆動されてその進退ロッド17aが前進されたとときにコイルスプリング14がさらに圧縮される。これが図1に示すディスクアンチャック状態である。
エアーシリンダ17の駆動が停止されると、ロッド17aが後退してコイルスプリング14は、エアーシリンダ17による圧縮状態が解除される。このとき、圧縮状態で装着されたコイルスプリング14は、結合ロッド5を介してシリンダ2の軸方向下方に付勢してその反発力で逆テーパヘッド4を押下げる。これがディスクチャック状態である。すなわち、ここでのコイルスプリング14は、逆テーパヘッド4に対する付勢部材になっている。
モータ10の回転軸10bとディスクチャック機構1とは、シリンダ2の底部に設けられた取付用フランジ27を介して一体的に固定されて、ディスクチャック機構1をスピンドルとしてモータ10の回転軸に取り付けられている。
【0011】
逆テーパヘッド4は、逆さ円錐状に形成された傾斜面を有するテーパ部41を有していて、テーパ部41の傾斜面がチャック31が形成するすり鉢状の傾斜面34に対応する傾斜となっている。結合ロッド5の底部の端部5aの押上を停止すると、逆テーパヘッド4が降下し、これら傾斜面は、接触し、さらなる降下でチャック部31a,31b,31c,31dを外側へと押し出す。
逆テーパヘッド4は、結合ロッド5を介してディスクチャック・アンチャック駆動機構11の圧縮が解除されたコイルスプリング14により押下げられ、コイルスプリング14の付勢力は、さらにリングスプリング6,6の締め付け力に抗して逆テーパヘッド4を押下げてリングスプリング6,6の径を拡大し、チャック部31a,31b,31c,31dの径が拡大してV溝33a,33b,33c,33dが外側へと突出してディスクをチャックする状態になる。
【0012】
ここで、V溝33a,33b,33c,33dが形成する外径とディスク9の中心開口が形成する内周の内径との関係について図3(a),(b)を参照して説明する。
図3(a)に示すように、V溝33a,33b,33c,33dは、下側傾斜面37(図3(b)参照)と上側傾斜面38とからなり、チャックするディスク9の裏面側に位置する下側傾斜面37(図3(b)参照)がチャックするディスク9の表面側に位置する上側傾斜面38より外側に突き出して形成されている。
チャック31の傾斜面34と逆テーパヘッド4の傾斜面41の傾斜角はアンチャック状態では対応しているが、最終的なディスクチャック状態では、図3(b)に示すように、チャック部31a,31b,31c,31dの傾斜面34は、チャック部31a,31b,31c,31dが外側に飛び出している分だけ傾斜面41の傾斜より大きくなる。
ハンドリングロボット8(図5(a)参照)からディスク9を受けるときには、ディスクチャック機構1がアンチャック状態(図1参照)にあって、下側傾斜面37がディスク9の下側チャンファ部と接触してディスク9を受ける。この下側傾斜面37は、ディスク9の下側チャンファ部の傾斜角である43゜〜60゜の範囲の傾斜角を有して形成されている。
また、V溝33(33a,33b,33c,33d)の上側傾斜面38も同様に、ディスク9の上側チャンファ部の傾斜角である43゜〜60゜の範囲の傾斜角を有して形成されている。V溝33の底面39は、ディスク9のディスクチャンファ部の側面が手前に位置するようにこれより奥に位置している。V溝33の上部に形成される外周面40は、アンチャック状態ではディスク9の内周面の内径より少し小さい径、例えば、前記したようにディスク内周の孔径が20mmφである場合には19mmφ程度になっている。
【0013】
ディスクチャック機構1がチャック状態では、図3(b)に示すように、V溝33(33a,33b,33c,33d)の下側傾斜面37とV溝33の上側傾斜面38とがそれぞれにディスク9の上下のチャンファ部に係合する。これにより、テーパヘッド4の拡大力の多くが4個のチャック部31a,31b,31c,31dを介して各V溝33に伝達される。そこで、ディスクチャック・アンチャック駆動機構11のコイルスプリング14の反発力により発生する力でディスク9を1kg以上のチャック力でチャックすることが可能になる。このときには、内周チャンファ部分の近傍内周面がV溝33が接触することはほとんどない。
その結果、V溝33によりディスク9は確実にチャックされ、ディスクチャック・アンチャック駆動機構11のコイルスプリング14の弾性力を強くしても内周チャンファ部分の近傍内周面にチャック痕が残ることはなく、強固なチャックが可能になる。
【0014】
図5(a),(b)は、ディスクチャック状態とアンチャック状態の部分拡大断面図である。
結合ロッド5の底部が押上げられてアンチャック状態にあるときに、ディスクチャック機構1に対して、例えば、3点あるいは4点でディスク9の外周をチャックするハンドリングロボット8がディスクチャック機構1の上部からの降下してくる。
ハンドリングロボット8が所定の降下位置まで降下すると、ディスク9の内周チャンファ部がV溝33a,33b,33c,33dの下側傾斜面37に係合する(図5(a)参照)。そのタイミングで結合ロッド5の底部の押上を停止すると、ディスクチャック・アンチャック駆動機構11のコイルスプリング14の反発力により逆テーパヘッド4が押下げられてチャック部31a,31b,31c,31dの径が拡大してV溝33a,33b,33c,33dが外側へと突出してディスク9の中心孔の内周チャンファ部をチャックする。
このチャックの後に、ハンドリングロボット8のディスクチャックが解除されて、ハンドリングロボット8は、上昇してディスクチャック機構1の位置から待避する(図5(b)参照)。
ディスク1をディスクチャック機構1からハンドリングロボット8が受けるときには、逆に、図5(b)のチャックされた状態のディスク9の外周をハンドリングロボット8がチャックして、そのタイミングでディスクチャック機構1の結合ロッド5の底部が押上げられてアンチャック状態にされて、図5(a)の状態になり、ハンドリングロボット8は、上昇してディスクチャック機構1の位置から待避することになる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上説明してきたが、実施例では、コレット3のチャック31を4分割した例を示しているが、その分割数は2以上であればよい。
また、実施例では、磁気ディスクのサブストレートをチャックしているが、さらにチャックされるディスクは、サブストレートに限定されるものではなく、例えば、磁気ディスクや光ディスクであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明を適用した一実施例のディスクチャック機構の断面図である。
【図2】図2は、ディスクチャック機構に内装されたコレットの説明図である。
【図3】図3は、コレット頭部に形成されるV溝についての説明図である。
【図4】図4は、ディスクチャック・アンチャック駆動をするばね機構の説明図、
【図5】図5は、そのディスクチャック状態とアンチャック状態の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1…ディスクチャック機構、
2…シリンダ、3…コレット(円筒チャック部材)、
3a…スリット、3b…チャック部支持部、3c…段差、
4…逆テーパヘッド(テーパ部材)、
5…結合ロッド、6…リングスプリング(Oリング)、
7…スライドガイドスリーブ、8…ハンドリングロボット、
9…ディスク、10…モータ、
11…ディスクチャック・アンチャック駆動機構、12…作動軸、
13…ばねホルダー、14…コイルスプリング、
15…鍔、16…ボス、17…エアーシリンダ、
21…頭部中空孔、22,24…中空孔、23…突出部、
25…円筒軸受、26…鍔、27…取付用フランジ、
31…チャック、32…円周溝、
33,33a,33b,33c,33d…V溝、
34…傾斜面、35…根本部、35a,35b…ねじ孔、
36a,36b…ねじ、37…下側傾斜面、
38…上側傾斜面、39…底面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先割れした円筒チャック部材に対してこれの内径より大きな径を持つテーパ部材を円筒チャック部材の頭部に挿入して押込むことで、先割れした前記頭部を拡大して拡大した前記頭部の外周でディスクの内周をチャックするディスクチャック機構において、
前記頭部が飛び出し前記頭部の外周が外側に拡大できる状態で内側中空部に前記円筒チャック部材が装着された中空シリンダと、
前記頭部の外周において円周方向に設けられたV溝とを有し、
前記V溝は、チャックする前記ディスクの裏面側に位置する第1の傾斜面が前記ディスクの表面側に位置する第2の傾斜面より外側に突き出していて、前記頭部の外周にその中心開孔が挿入された前記ディスクの裏面側チャンファ部を前記第1の傾斜面で受けて前記テーパ部材が前記頭部に押込まれたときに前記第2の傾斜面が前記ディスクの表面側チャンファ部に接触して前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面により前記ディスクをチャックするディスクチャック機構。
【請求項2】
さらに、前記中空シリンダを貫通し前記テーパ部材に結合するロッドと前記テーパ部材を前記頭部に押込む方向にこのロッドを前記中空シリンダの軸方向に沿って付勢する付勢部材とを有し、前記ディスクは磁気ディスクあるいはそのサブストレートであり、前記頭部から下側に延びる先割れした円筒チャック部材の側壁面の厚さが前記中空シリンダの側壁面の厚さより薄い請求項1記載のディスクチャック機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載のディスクチャック機構を備えたディスクの表面加工装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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