説明

ディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造

【課題】 ディスクトレイに固定される取付け用フレームをトレイ飾りから分離し、トレイ飾りを単独で変位可能とすることにより、キャビネットの凹入部内でのトレイ飾りのセンタリングを容易に行えるようにする。トレイ飾りの組立て容易性を改善する。
【解決手段】 ディスクトレイ5の前端部に動かないように結合された取付け用フレーム8がトレイ飾り6から分離されている。取付け用フレーム8とトレイ飾り6とを圧縮コイルばねでなるばね体3を介して連結する。トレイ飾り6の任意方向での変位幅を規制する変位幅規制機構9と、トレイ飾り6をディスクトレイ5に対する初期位置に位置決めするための位置決め機構7とを備える。変位幅規制機構9が軸部91円形孔部92とによって構成されている。位置決め機構7が円錐状の突起71と凹部72とによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットの凹入部に開口窓が形成され、そのキャビネットに収容されているDVDローダといったローダのディスクトレイが上記開口窓に進退移動可能に挿入されていて、ディスクトレイの前端部に取り付けられているトレイ飾りが、ディスクトレイの後退移動により上記凹入部に嵌まり込んで上記開口窓を外側から塞ぐように構成されているキャビネットとトレイ飾りとの取付け構造に関する。
【0002】
特に、ディスクトレイに対してトレイ飾りを独立して変位可能に構成することによって、上記凹入部内でのトレイ飾りの位置合わせ(センタリング)を容易にしたり、ディスクトレイの後退位置(クローズ位置)の誤差を容易に吸収させたりすることのできるディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0003】
記録媒体としてのディスクを光学的に処理する機能を有するDVDローダなどのローダは、ディスクを光学的に処理するためのディスクセット位置(上記したクローズ位置に相当する)に対して前進後退の各移動を行うディスクトレイを備えている。また、このようなローダを収容しているキャビネットには開口窓が設けられていて、その開口窓を通してディスクトレイがキャビネットの外方の突出位置(オープン位置)とキャビネットの内方の後退位置(クローズ位置)との間で前進移動と後退移動とを行うように構成されている。
【0004】
図1はこの種のキャビネットの要部とディスクトレイとの取り合わせを示した概略斜視図である。ローダを収容しているキャビネットは高さ方向Hよりも幅方向Wに長い横長偏平の箱体でなる。一般的なこの種のキャビネットは、フロントパネルとボトムシャーシとトップケースとを合わせることにより箱形に形成されている。
【0005】
図1には、キャビネットの構成要素であるフロントパネルを符号1で示してあり、キャビネットに収容されているローダのディスクトレイを符号5で示してあって、上記したボトムシャーシやトップケースは図示省略されている。ディスクトレイ5が組み付けられているローダも図示省略されている。
【0006】
同図のように、ディスクトレイ5は、フロントパネル1の開口窓21を通して矢印Y1で示した外方への前進移動と矢印Y2で示した内方への後退移動とが可能である。そして、開口窓21の外側へ矢印Y1のように前進移動して突出位置に到達したディスクトレイ5に対して、ディスクを載架したりディスクを取り出したりすることが行われる。さらに、ディスクが載架されたディスクトレイ5は、開口窓21を通して矢印Y2方向に後退移動してそのディスクを後退位置まで搬入する。
【0007】
開口窓21は、フロントパネル1に設けられた凹入部2の底壁22に形成されている。具体的には、開口窓21は、凹入部2の矩形環状の底壁22により取り囲まれて横長矩形に形作られている。なお、フロントパネル1の凹入部2、底壁22、開口窓21は、後述する図11〜図13によっても説明的に示されている。
【0008】
ディスクトレイ5には、その前端部を覆う形態で幅方向Wに長い横長のトレイ飾り6が取り付けられていて、ディスクトレイ5が開口窓21の内方へ矢印Y2のように後退移動してディスクをディスクセット位置に搬入したときに、トレイ飾り6が凹入部2に嵌まり込んで開口窓21を外側から塞ぐようになっている。このトレイ飾り6は、凹入部2に嵌まり込んで開口窓21を見えなくすることにより、キャビネットの外観の見栄えを向上させることに役立っている。
【0009】
トレイ飾り6をディスクトレイ5と一体に成形することなく、それを別体としてディスクトレイ5の前端部に取り付けてある理由は、トレイ飾り6は、凹入部2に嵌まり込むことができるけれども開口窓21を通過し得ないサイズを有していることによる。すなわち、トレイ飾り6が開口窓21を通過し得ないサイズを有しているので、ディスクトレイ5を備えるローダをキャビネットに装着する前にトレイ飾りをディスクトレイ5に取り付けてしまうと、トレイ飾り6を凹入部2の外側に配備することができなくなる。そこで、ローダをキャビネットに装着した後に、開口窓21の外側へ突き出したディスクトレイ5の前端部にトレイ飾り6を装着する必要があることによる。
【0010】
また、従来は、トレイ飾り6が、それと共に樹脂で一体成形されている取付け用フレーム(図に現れていない)を備えていて、その取付け用フレームをディスクトレイ5の前端部に係合構造、ビス止め構造などの適宜手段で固定することにより、トレイ飾り6がディスクトレイ5の前端部に動かないように取り付けられている。
【0011】
ところで、フロントパネル1の凹入部2にトレイ飾り6が嵌まり込んでいるときに、トレイ飾り6が、凹入部2内で傾いていたり凹入部2内で偏って位置していたりすると、それが目立ってキャビネットの外観品位が低下することが判っている。
【0012】
一方、ディスクトレイ5の前端部に対するトレイ飾り6の取付け構造として、トレイ飾り6をディスクトレイ5の前端部に動かないように固定した構造が従来より知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1には、開口窓の口縁部分やトレイ飾り(トレイパネル)が開口窓を有する凹入部に嵌まり込むときに、そのトレイ飾りを凹入部の中央に誘導して位置合わせするというセンタリングを行うための位置規制部を設けることも記載されている。
【0013】
しかし、特許文献1のように、トレイ飾り6をディスクトレイ5の前端部に動かないように固定してあるものには次に説明する問題があった。すなわち、ディスクトレイを備えるローダはキャビネットのボトムシャーシの所定位置にビス止めなどの手段で固定されているけれども、ローダが傾いて取り付けられたり、取付け部分にがたつきが存在していたりすることがある。また、ローダの取付位置精度には不可避的なばらつきがある。さらに、キャビネットのフロントパネルやボトムシャーシ自体が公差範囲内で傾いていることもある。そのため、ディスクトレイが後退位置まで後退移動してトレイ飾りがフロントパネルの凹入部に嵌まり込んで開口窓を塞いでいるときに、凹入部内でトレイ飾りが傾いたりして凹入部の中央に位置合わせされなくなって、キャビネットの外観品位を低下させるという事態を招くおそれがあった。
【0014】
そこで、ローダにおけるディスクトレイ5の組付け部分に不可避的に存在する組付けガタを利用してディスクトレイに取り付けられたトレイ飾りをキャビネットの凹入部の中央に位置合わせさせることが行われていた。しかし、この方法では、組付けガタによって吸収することのできる範囲内でのみトレイ飾りを凹入部の中央に位置合わせすることできるに過ぎず、トレイ飾りを位置合わせすることのできる範囲が狭く制限されてしまうという不都合がある。
【0015】
一方、従来より、ディスクトレイの前端部に取付け用フレームを介してトレイ飾りを取り付けている記録再生装置にあっては、取付け用フレームをトレイ飾りから分離して別部材とし、それらの取付け用フレームとトレイ飾りとを引張りコイルばねを用いて連結することにより、ディスクトレイに対するトレイ飾りの変位を許容するという構成を採用したものがあった(たとえば、特許文献2参照)。この特許文献2に示されている記録再生装置では、トレイ飾り(蓋体)が、ディスクトレイに固定されている取付け用フレーム(ベース部材)に対して引張りコイルばね(弾性体)の作用で常時引き寄せられていて、ディスクトレイが後退位置まで後退したときには、トレイ飾りが開口窓(挿抜口)の傾斜した口縁(傾斜面)に弾圧され、かつ、引張りコイルばねが引き延ばされて取付け用フレームがトレイ飾りから少しだけ離れるようになっている。
【特許文献1】特開2006−134414号公報
【特許文献2】特開2006−323928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献2によって提案されている記録再生装置によると、ディスクトレイに対するトレイ飾りの変位が許容されているので、その特許文献2に記載されている技術を適用すると、上記したようなローダの取付位置精度のばらつきやフロントパネルやボトムシャーシの傾きなどが存在していも、そのことの影響を受けることなく、フロントパネルの凹入部に嵌まり込んだトレイ飾りの凹入部内での傾きを修正してキャビネットの外観品位の低下を回避することが可能であるとも考えられる。
【0017】
しかしながら、特許文献2に記載されている技術を適用すると、ディスクトレイに固定されている取付け用フレームとトレイ飾りとの間に引張りコイルばねを介在させるときに、その引張りコイルばねの一端及び他端のフック部を取付け用フレームやトレイ飾りのばね掛け部に引掛けるという煩わしい作業を狭いスペースで行うことを余儀なくされるために、組立てに熟練が必要になり、しかも、組立て作業の迅速性がその作業によって阻害されるおそれが多分にある。
【0018】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、ディスクトレイに固定される取付け用フレームをトレイ飾りから分離して別部材とし、それらの取付け用フレームとトレイ飾りとをばね体を用いて連結してディスクトレイに対するトレイ飾りの変位を許容するという構成を採用することにより、キャビネットの凹入部に嵌まり込んだトレイ飾りを凹入部の中央に位置合わせすることを容易にすることを基本とし、その上で、特許文献2に記載されているものよりも組立て容易性が改善されるディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造を提供することを目的としている。
【0019】
また、本発明は、ディスクトレイに対してトレイ飾りが不必要に変位することを回避し、併せて、ディスクトレイが前進移動してトレイ飾りがフロントパネルの凹入部の前方へ突き出たときでも、ディスクトレイに対する初期位置にトレイ飾りが位置してその外観品位が高まるディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造を提供することを目的としている。
【0020】
さらに、本発明は、ディスクトレイに固定されている取付け用フレームとトレイ飾りとを圧縮コイルばねを用いて連結した構造において、ディスクトレイが後退位置まで後退移動したときに、圧縮コイルばねが過度に圧縮されてその圧縮コイルばねによる適正な付勢作用が損なわれるという事態を未然に防ぐことのできるディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造を提供することを目的としている。
【0021】
さらに、本発明は、一般的に樹脂製であるトレイ飾りや取付け用フレームの成形用の金型の構造を簡素化することのできるディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造は、キャビネットの凹入部の底壁に備わっている開口窓を通してキャビネットの外方の突出位置とキャビネットの内方の後退位置との間で前進移動と後退移動とが可能なディスクトレイと、このディスクトレイがその後退位置まで後退移動しているときに上記凹入部に嵌まり込んで上記底壁に重なり合うことによりその開口窓を外側から塞ぐトレイ飾りと、このトレイ飾りに設けられて上記ディスクトレイの前端部に動かないように結合された取付け用フレームと、を備えている。
【0023】
そして、上記取付け用フレームが上記トレイ飾りから分離されていて、それらの取付け用フレームとトレイ飾りとが、それら両者を前後方向で互いに近付く方向に常時弾発付勢しかつ上記前後方向と交差する任意方向に上記トレイ飾りが変位することを許容する圧縮コイルばねでなるばね体を介して連結されている。また、上記ディスクトレイに対する上記トレイ飾りの上記前後方向に直交する任意方向での変位幅を規制する変位幅規制機構と、上記ばね体によってディスクトレイの前端部に近付く方向に付勢されたトレイ飾りを上記ディスクトレイに対する初期位置に位置決めするための位置決め機構と、を備えていて、ディスクトレイが後退位置まで後退移動したときには上記位置決め機構による位置決め状態が解除されるようになっている。
【0024】
この構成であると、トレイ飾りがディスクトレイに対して前後方向と交差する任意方向に変位可能であることにより、キャビネットの凹入部に嵌まり込んだトレイ飾りを凹入部の中央に容易に位置合わせすることが可能になる。また、取付け用フレームとトレイ飾りとを連結するばね体に圧縮コイルばねを用いたことにより、ばね体を取付け用フレームとトレイ飾りとの間に介在させるときの作業性が改善されて、組立て作業を迅速にかつ容易に広いスペースで行うことができるようになる。
【0025】
本発明では、ばね体を形成している上記圧縮コイルばねの輪線部同士が嵌まり合わないように当該圧縮コイルばねの収縮量を規制するストッパ機構が追加されている、という構成を採用することが可能である。これによれば、圧縮コイルばねが過度に圧縮されてその輪線部同士が嵌まり合うという事態が起こらなくなる。そのため、圧縮コイルばねによる適正な付勢作用が損なわれなくなる。
【0026】
本発明では、上記変位幅規制機構が、上記トレイ飾りから突出された円柱状の軸部と、上記取付け用フレームに開設されて上記軸部が隙間を保持して遊嵌合されている円形孔部とによって構成されていることが望ましい。これによると、変位幅規制機構の構成が簡単になり、しかも、トレイ飾りや取付け用フレームの成形用金型の構成が、変位幅規制機構によって複雑化されないという利点がある。
【0027】
本発明では、上記位置決め機構が間隔を隔てた2箇所に設けられ、それぞれの位置決め機構が、上記トレイ飾り及び上記取付け用フレームのうちの一方側部材に設けられた先端が円錐状の突起と、他方側部材に設けられて上記突起の円錐状の先端が嵌まり込む円錐状壁面を有する凹部とによって構成されていることが望ましい。これによると、ディスクトレイが前進移動してトレイ飾りがフロントパネルの凹入部の前方へ突き出たときでも、ディスクトレイに対する初期位置にトレイ飾りが確実に位置してその外観品位が高まるだけでなく、トレイ飾りや取付け用フレームの成形用金型の構成が、変位幅規制機構によって複雑化されないという利点がある。
【0028】
本発明では、上記取付け用フレームが上記圧縮コイルばねの軸方向一端部を支えるばね受座とその取付け用フレームを貫通して形成された第1開口部とを有し、上記トレイ飾りが、上記第1開口部に隙間を保持して遊嵌合されている第1突出部を有し、その第1突出部に、上記ばね受座で軸方向一端部が支えられた上記圧縮コイルばねが外嵌合されているフック部が設けられ、そのフック部が上記圧縮コイルばねの軸方向他端部に係止してその圧縮コイルばねを圧縮状態に保っている、という構成を採用することが可能である。この構成であると、圧縮コイルばねを設置するのに余分な部品を用いなくて済む。しかも、圧縮コイルばねを設置するのに必要なフック部が圧縮コイルばねの内側に位置しているために、そのフック部の設置スペースを圧縮コイルばねの外側に確保する必要がなくなり、それだけ取付け用フレームなどを小形化しやすくなる。
【0029】
本発明において、上記圧縮コイルばねは、その軸方向他端の輪線部を直径方向に横切るまっすぐな線状の係止端を有し、上記フック部が、円柱状の上記第1突出部の頂部からその第1突出部の軸方向に突き出し、かつ、上記係止端を挿入可能な隙間を隔てて上記第1突出部の径方向で対峙している2つのフック要素に分かれていて、それぞれのフック要素に、上記係止端が引掛けられる掛け止め部と、上記隙間に押し込まれた上記係止端を上記圧縮コイルばねの軸線回りで回転させて上記掛け止め部に導入するための横孔部とが、点対称の位置関係を保って設けられている、という構成を採用することが可能である。この構成を採用すると、取付け用フレームのばね受座に載置した圧縮コイルばねの線状の係止端を2つのフック要素の隙間に押し込んだ後、その係止端を圧縮コイルばねの軸線回りで回転させて横孔部に入れて掛け止め部に導入するという作業を行うだけで、その圧縮コイルばねを設置することが容易に可能になる。
【0030】
本発明において、上記第1突出部は、それぞれの上記フック要素の掛け止め部と横孔部との両方に対向する部位が軸方向全長に亘って欠除されていると共に、上記トレイ飾りには、上記第1突出部の欠除箇所に連通する開口が開設されていて、それらの欠除箇所と開口とが、上記トレイ飾りを成形することに用いられる金型の抜き跡によって形成されている、という構成を採用することが可能である。この構成を採用することにより、トレイ飾りを成形することに用いられる金型の構成が簡素化される。
【0031】
本発明において、上記圧縮コイルばねは、軸方向で相隣接している任意の2つの輪線部の相互において軸方向一端部に近い側の輪線部の直径よりも軸方向他端部に近い側の輪線部の直径が短くなっていると共に、それら2つの輪線部のそれぞれの直径の寸法差が、それらの輪線部の軸方向投影像が重なり合う値に定められている裁頭円錐形状を有し、上記取付け用フレームに設けられている上記ばね受座の周囲に円形のリブが突設されていると共に、線状の上記係止端が、上記圧縮コイルばねの軸方向他端部の輪線部の両側に突き出て円形の上記リブの外周直径よりも長くなっていることが望ましい。この構成であれば、圧縮コイルばねが過度に圧縮されて線状の係止端がその圧縮コイルばねの内側に嵌まり込むという事態が防止されて、圧縮コイルばねによる適正な付勢作用が損なわれなくなる。
【0032】
本発明では、上記ストッパ機構が、上記トレイ飾りから突出された円柱状の第2突出部と、上記取付け用フレームを貫通して形成されていて上記第2突出部が隙間を保持して遊嵌合されている第2開口部と、上記第2突出部の頂部に取り付けられていて上記第2開口部よりも径大な鍔部と、上記第2開口部の口縁部により形成されて上記鍔部に対峙している受け部と、を有し、上記鍔部と上記受け部とが当接することによって、上記圧縮コイルばねの輪線部同士が嵌まり合うことを阻止するように構成されていることが望ましい。この構成によっても、圧縮コイルばねによる適正な付勢作用が損なわれなくなる。
【0033】
本発明では、上記鍔部が、上記第2突出部の頂部にねじ込まれたビスに一体に形成されているものであってもよい。
【0034】
本発明では、上記変位幅規制機構の軸部が、上記第1突出部と同一部位によってその第1突出部と兼用され、かつ、上記変位幅規制機構の円形孔部が、上記第1開口部と同一部位によってその第1開口部と兼用されている、という構成を採用することが可能である。また、上記変位幅規制機構の軸部が、上記第2突出部と同一部位によってその第2突出部と兼用され、かつ、上記変位幅規制機構の円形孔部が、上記第2開口部と同一部位によってその第2開口部と兼用されている、という構成を採用することが可能である。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明によれば、ディスクトレイに固定された取付け用フレームにばね体を用いてトレイ飾りが変位可能に連結されているので、キャビネットの凹入部に嵌まり込んだトレイ飾りを凹入部の中央に位置合わせすることが容易に可能になる。また、上記ばね体として圧縮コイルばねを用いたことにより、特許文献2に記載されているものよりも組立て容易性が改善されるという効果が奏される。さらに、本発明では、変位幅規制機構の作用により、ディスクトレイに対してトレイ飾りが不必要に変位することが回避され、併せて、位置決め機構の作用により、ディスクトレイが前進移動してトレイ飾りがフロントパネルの凹入部の前方へ突き出たときでも、ディスクトレイに対する初期位置にトレイ飾りが位置してその外観品位の低下が防止されるという効果も奏される。
【0036】
そのほか、本発明によると、圧縮コイルばねが過度に圧縮されてその圧縮コイルばねによる適正な付勢作用が損なわれるという事態を未然に防ぐことができるという効果が奏される。
【0037】
さらに、本発明によると、トレイ飾りや取付け用フレームの成形用の金型の構造を簡素化することができるという効果も奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図2は本発明の第1実施形態に係るトレイ飾りや取付け用フレームなどを示した分解斜視図である。同図のトレイ飾り6は、樹脂成形体でなる横長のトレイ飾り本体61とアルミニウム製の化粧パネル62とを有し、両者は両面粘着テープ63を用いて一体に接合される。そして、トレイ飾り6が、圧縮コイルばねでなるばね体3を用いて取付け用フレーム8に連結されるようになっている。
【0039】
図3Aは、取付け用フレーム8、トレイ飾り6、ばね体3などを有するトレイ飾りユニットAの分解斜視図、図3Bはトレイ飾りユニットAを分解断面図である。
【0040】
取付け用フレーム8はトレイ飾り6から分離された別部材によって構成されている。この取付け用フレーム8は、横長の前板部81とその前板部81の幅方向端部に立ち上げられた目隠し板部82とを一体に有するほか、多くのリブや係止爪の集合でなる取付け機構83を有し、その取付け機構83の作用によって、ディスクトレイ5(図1参照)の前端部に動かないように固定することができるようになっている。
【0041】
取付け用フレーム8とトレイ飾り6とは、上記したように圧縮コイルばねでなるばね体3を介して連結されていて、そのばね体3の作用によって、取付け用フレーム8とトレイ飾り6とが前後方向(図1に矢印Y1,Y2で示した方向)で互いに近付く方向に常時弾発付勢され、かつ、上記前後方向と交差する任意方向に上記トレイ飾りが変位することが許容されている。ここで、「前後方向と交差する任意方向」とは、図1に矢印Y1で示した前進移動方向及び同図に矢印Y2で示した後退移動方向に直交している高さ方向Hや幅方向Wのほか、上記各移動方向Y1,Y2に対する任意の斜め方向を含めた方向を意味している。
【0042】
次に、図7〜図10を参照してばね体3の取付け部構造の具体例を説明する。図7はトレイ飾りユニットAの部分断面図である。図8はトレイ飾り6の部分断面図であり、図9は図8のIX−IX線に沿う部分の断面図である。図10はばね体3の取付け部構造の背面図である。
【0043】
図7〜図9のように、トレイ飾り6には、トレイ飾り本体61に設けられた円柱状の第1突出部41が備わっていて、この第1突出部41にその頂部から軸方向に突き出たフック部42が設けられている。図8又は図10のように、この実施形態のフック部42は、第1突出部41の径方向で隙間Sを隔てて対峙している2つのフック要素43,43に分かれている。それぞれのフック要素43,43は点対称の形状を有し、かつ、点対称の位置関係を保って第1突出部41の頂部から軸方向に突き出ている。それらのフック要素43には、第1突出部41に向けて開いている鉤形の掛け止め部44と、上記隙間Sに向けて開いて上記掛け止め部44につながっている横孔部45とが設けられている。これに対し、図7に示したように、取付け用フレーム8には、上記第1突出部41よりも十分に径大な円形の第1開口部84が貫通して形成されている。この第1開口部84は、取付け用フレーム8に設けられている円形のばね受座85により取り囲まれて円形に形作られている。そして、第1開口部84に第1突出部41が遊び空間としての隙間を保持して遊嵌合されている。また、トレイ飾り6と取付け用フレーム8とは、後述する位置決め機構7を介して重なり状に合わされている。
【0044】
図7のように、圧縮コイルばねでなるばね体3は、上記した第1突出部41とフック部42とに外嵌合されていて、その軸方向一端部が取付け用フレーム8のばね受座85に載架されて支えられているのに対し、その軸方向他端部に設けられているまっすぐな線状の係止端31が上記した2つの各フック要素43の掛け止め部44に係止されている。この状態で、ばね体3は軸方向に圧縮された状態に保たれている。したがって、トレイ飾り6は、ばね体3の弾発付勢作用によって取付け用フレーム8側に常時引き寄せられている。そして、取付け用フレーム8はディスクトレイ5の前端部に固定されているので、トレイ飾り6がばね体3によってディスクトレイ5の前端部に近付く方向に常時付勢されていることになる。
【0045】
この実施形態の取付け構造には、ばね体3によってディスクトレイ5の前端部に近付く方向に付勢されたトレイ飾り6をディスクトレイ5に対する初期位置に位置決めするための位置決め機構7と、ディスクトレイ5に対するトレイ飾り6の上記前後方向に直交する任意方向での変位幅を規制する変位幅規制機構9とが設けられている。
【0046】
図7のように、位置決め機構7は、取付け用フレーム8に設けられた先端が円錐状を形成している突起71と、トレイ飾り6(具体的にはトレイ飾り本体61)に設けられた円錐状壁面73を有する凹部72とによって形成されていて、突起71の円錐状の先端が凹部72に嵌まり込むようになっている。また、この位置決め機構7は、間隔を隔てた2箇所に設けられている。したがって、ばね体3によって取付け用フレーム8側にトレイ飾り6が引き寄せられている状態で、2箇所の位置決め機構7において突起71が凹部72に嵌まり込んでいると、トレイ飾り6が、取付け用フレーム8が動かないように固定されているディスクトレイ5に対して定位置に位置決めされる。こうして位置決めされているトレイ飾り6の位置がディスクトレイ5に対する初期位置になる。この実施形態では、トレイ飾り6及び取付け用フレーム8の幅方向(長手方向)の両端部2箇所に位置決め機構7を設けることによって、トレイ飾り6と取付け用フレーム8、ひいてはトレイ飾り6とディスクトレイ5の初期位置での位置決め精度を高めてある(図3B参照)。
【0047】
この実施形態において、変位幅規制機構9は、図7に示した第1突出部41と同一部位によって形成されている円柱状の軸部91と、同図に示した第1開口部84と同一部位によって形成されている円形孔部92とによって構成されている。この構成を備える変位幅規制機構9によると、円形孔部92に遊嵌合している軸部91の周囲の隙間、すなわち遊び空間の広さに見合う量だけ、トレイ飾り6が、取付け用フレーム8の固定されているディスクトレイ5に対して前後方向に直交する任意方向に変位することができるようになる。言い換えると、トレイ飾り6は、ディスクトレイ5に対して前後方向に直交する任意方向に変位可能であるけれども、その変位幅は、軸部91と円形孔部92の口縁とが当接することによって規制されるようになる。
【0048】
さらに、この実施形態の取付け構造には、ばね体3を形成している圧縮コイルばねの輪線部同士が嵌まり合わないように当該圧縮コイルばねの収縮量を規制するストッパ機構10が追加されている。図7に示したように、このストッパ機構10は、トレイ飾り6を形成しているトレイ飾り本体61から突出された円柱状の第2突出部101と、取付け用フレーム8を貫通して形成された円形の第2開口部102と、第2突出部101の頂部に取り付けられていて第2開口部101よりも径大な鍔部103と、第2開口部101の口縁部により形成されている円環状の受け部104とを有している。そして、第2突出部101が隙間を保持して第2開口部102に遊嵌合されていると共に、鍔部103に間隔を隔てて受け部104が対峙している。第2突出部101と第2開口部102の口縁との間の隙間の広さは、上記した円形孔部92に遊嵌合している軸部91の周囲の隙間(遊び空間)の広さよりも広くなっている。また、鍔部103と受け部104との隙間の広さは、鍔部103と受け部104とが当接した状態でも、ばね体3でなる圧縮コイルばねの輪線部同士が嵌まり合うことのない程度に定められている。この実施形態では、鍔部103が、第2突出部101の頂部にねじ込まれたビス105に一体に形成されている。すなわち、ビス105に鍔付きビスを用いることにより、そのビス105の鍔部分で上記鍔部103を形成させている。
【0049】
取付け用フレーム8にトレイ飾り6を取り付けるときの組立て中間段階の状態を図4Aと図4Bに示してあり、図4Aは組立て中間段階の概略斜視図、図4Bは組立て中間段階の水平断面図である。さらに、図5Aは組立て後の概略斜視図、図5Bは組立て後の水平断面図であり、図6は組立て後の背面図である。なお、図3A、図4A、図5Aでは、ビス105を用いた上記ストッパ機構10が図示省略されている。
【0050】
図5B及び図6に示されているように、この実施形態の取付け構造では、上記した位置決め機構7における場合と同様に、ばね体取付け部構造とストッパ機構10とを、トレイ飾り6及び取付け用フレーム8の幅方向の両端部2箇所に対称に設けてある。
【0051】
取付け用フレーム8にトレイ飾り6を取り付けるときの組立て工程の一例を図4B、図5Bを参照して次に説明する。
【0052】
図4Bのように、組立て工程の初期段階では、トレイ飾り本体61の上に取付け用フレーム8を重なり状に合わせる作業が行われる。この作業では、幅方向2箇所の位置決め機構7の突起71(図7参照)が凹部72(図7参照)に嵌め込まれて、トレイ飾り本体61に対して取付け用フレーム8が位置決めされる。また、トレイ飾り本体61の第1突出部41や第2突出部101が、取付け用フレーム8の第1開口部84や第2開口部102にそれぞれ遊嵌合される。なお、この実施形態では、変位幅規制機構9の軸部91が上記第1突出部41と同一部位によって兼用され、かつ、変位幅規制機構9の円形孔部92が上記第1開口部84と同一部位によって兼用されているので、トレイ飾り本体61の第1突出部41を取付け用フレーム8の第1開口部84に遊嵌合させることによって、上記軸部91や円形孔部92に遊嵌合される。
【0053】
次の工程では、図5Bのように、ばね体3をトレイ飾り本体61側のばね受座85と取付け用フレーム8側のフック部42との間に介在させる作業が行われる。この作業を図9又は図10を参照して説明する。まず、圧縮コイルばねでなるばね体3を第1突出部41やフック部42に外嵌合させてその軸方向一端部をトレイ飾り本体61側のばね受座85の上に載架する。この後、図10のように、ばね体3の軸方向一端部に設けられている線状の係止端31を、2つのフック要素43,43の間の隙間Sに位置合わせする。次に、ばね体3を圧縮させながら係止端31を隙間Sに押し込んで2つのフック要素43,43の横孔部45,45の位置まで押し下げ、続いて、図10に矢印Rで示したように横孔部45,45を経て掛け止め部44に対応する箇所まで係止端31を回転させ、最後に、係止端31を押し込んでいる力を解除してばね体3を復元させることにより、その係止端31を掛け止め部44に係止させる。係止端31をフック要素43,43の掛り止め部44に係止させるときには、係止端31の末端が取付け用フレーム8の目隠し板部82側を向くようにすると、その係止端31の末端で作業者が怪我をする危険性が少なくなり、また、係止端31の末端に手の指などが引掛かるおそれが少なくなるという利点がある。なお、図4Aは図4Bに対応する斜視図であり、図5Aは図5Bに対応する斜視図である。
【0054】
図9及び図10を参照して説明した上記作業を行うことにより、図5B及び図6のように、取付け用フレーム8にトレイ飾り6が取り付けられ、その取付け状態では、ばね体3を介して取付け用フレーム8とトレイ飾り6とが連結されている。こうして連結された取付け用フレーム8とトレイ飾り6との一体部品がトレイ飾りユニットAである。
【0055】
上記トレイ飾りユニットAにあっては、その取付け用フレーム8が取付け機構83を介してフロントパネル1の開口窓21の外側へ突き出されたディスクトレイ5の前端部に動かないように固定される(図1参照)。
【0056】
こうしてディスクトレイ5に取り付けられたトレイ飾りユニットAにおいて、トレイ飾り6は、取付け用フレーム8にばね体3によって連結されている過ぎず、かつ、変位幅規制機構9がディスクトレイ5に対するトレイ飾り6の前後方向に直交する任意方向での変位幅を規制しているだけである。そのため、トレイ飾り6は、変位幅規制機構9がトレイ飾り6の変位幅を規制しない限り、ディスクトレイ5に対して前後方向と交差する任意方向に変位可能である。
【0057】
図11はディスクトレイ5がフロントパネル1の開口窓21を通してキャビネットの外方の突出位置に向けて前進移動している途中の段階を示した横断平面図、図12はディスクトレイ5がキャビネットの内方の後退位置まで後退移動している状態を示した横断平面図、図13はトレイ飾り6が何らかの外力によって強制的に前方へ引き出された状態を示した横断平面図である。
【0058】
図11のように、ディスクトレイ5が矢印Y1のようにキャビネットの外方の突出位置に向けて前進移動しているときには、トレイ飾り6がフロントハネル1の凹入部2から突き出ている。この状態では、ばね体3の付勢作用によって位置決め機構7の突起71が凹部72に嵌まり込んでいるので、トレイ飾り6が取付け用フレーム8に対して位置決めされている。したがって、トレイ飾り6がディスクトレイ5に対する初期位置に位置決めされていることになる。ディスクトレイ5がキャビネットの外方の突出位置まで前進移動しているときでも同様である。したがって、トレイ飾り6がフロントパネル1の凹入部2から突き出ているときには、そのトレイ飾り6がディスクトレイ5に対する初期位置に位置決めされて良好な外観が得られる。
【0059】
図12のように、ディスクトレイ5が矢印Y2のようにキャビネットの内方の後退位置まで後退移動しているときには、トレイ飾り6が凹入部2の底壁22に当接する一方で、ディスクトレイ5はばね体3を少し圧縮させている。したがって、ディスクトレイ5の後退位置の誤差をばね体3によって容易に吸収させたりすることが可能である。また、位置決め機構7の突起71は凹部72から抜け出て位置決め状態が解除されている。そのため、仮に、凹入部2に、トレイ飾り6を凹入部2の中央位置に誘導するためのガイド機構が設けられている場合、トレイ飾り6は、そのガイド機構により誘導されて凹入部2の中央位置に確実に位置合わせ(センタリング)される。このセンタリングは、トレイ飾り6がディスクトレイ5やそれに固定されている取付け用フレーム8に対して変位することにより行われるので、センタリングによる調整幅がローダに対するディスクトレイの組付けガタの大きさに依存することはない。
【0060】
図13のように、トレイ飾り6が何らかの外力、たとえば人力により人為的に矢印Y1のように前方へ引っ張られたような場合には、トレイ飾り6が強制的に前方へ引き出されてしまうことがある。そのような事態が生じると、ばね体3が圧縮過度になって、そのばね体3を形成している圧縮コイルばねの輪線部同士が嵌まり合ってしまって、圧縮コイルばねによる適正な付勢作用が損なわれるという事態の起こるおそれがある。そこで、この実施形態では、図13のようにストッパ機構10を追加し、ストッパ機構10の鍔部103がその受け部104に当接することにより圧縮コイルばねの収縮量を規制するようにしてある。
【0061】
実施形態の取付け構造では、取付け用フレーム8にトレイ飾り6を連結するためのばね体3として圧縮コイルばねを用いている。図14及び図15には、この取付け構造に採用し得る2種類の圧縮コイルばねの形状を斜視図で示してある。
【0062】
これらの圧縮コイルばねは、いずれも側面視が裁頭円錐形状を有している。ばね体3として側面視が裁頭円錐形状の圧縮コイルばねを用いると、ばね体3の軸方向一端部の直径をばね受座85(図7参照)のサイズに合わせ、ばね体3の軸方向他端部の直径をフック部42(図7参照)のサイズに合わせることが容易であるという利点がある。また、上記圧縮コイルばねは、軸方向で相隣接している任意の2つの輪線部32,33の相互において軸方向一端部に近い側の輪線部33の直径よりも軸方向他端部に近い側の輪線部32の直径が短くなっている。また、それら2つの輪線部32,33のそれぞれの直径の寸法差は、それらの輪線部32,33の軸方向投影像が重なり合う値に定められている。すなわち、圧縮コイルばねを軸方向に見たときに、相隣接している任意の2つの2つの輪線部32,33の相互間では、径小な輪線部32の外周部が径大な輪線部33の内周部に重なり合って見える。
【0063】
そして、図14に示したばね体3としての圧縮コイルばねでは、軸方向他端部に設けられている線状の係止端31が、軸方向他端部の輪線部34の両側に突き出ている。したがって、圧縮コイルばねが過度に圧縮されたときには、図16に説明的に示したように、係止端31が輪線部34に係合するので、その係止端31が輪線部34の内側に嵌まり込んで圧縮コイルばねによる適正な付勢作用が損なわれるという事態が起こらない。したがって、図14に示した圧縮コイルばねを用いると、図7や図13を参照して説明したストッパ機構10を省略することも可能である。
【0064】
これに対し、図15に示したばね体3としての圧縮コイルばねでは、軸方向他端部に設けられている線状の係止端31が、軸方向他端部の輪線部34の直径寸法と略同一寸法に定められている。したがって、図15の圧縮コイルばねでは、それが過度に圧縮されたときには、図17に説明的に示したように、係止端31が輪線部34にの内側に嵌まり込んでしまって、圧縮コイルばねによる適正な付勢作用が損なわれるおそれがある。しかし、図7や図13を参照して説明したストッパ機構10を採用しておくことにより、係止端31が輪線部34の内側に嵌まり込むことを抑制することが可能である。
【0065】
図7及び図10に示したように、この実施形態では、取付け用フレーム8に設けられているばね受座85の周囲に円形のリブ86が突設されている。そして、図14に示したばね体3としての圧縮コイルばねの係止端31の長さが、円形の上記リブ86の外周直径よりも長くなっている。そのため、上記のように図14の圧縮コイルばねを採用してストッパ機構10を省略した場合でも、リブ86の高さを適切に定めておくだけで、圧縮コイルばねが過度に圧縮されたときには、係止端31がそのリブ86に係合して輪線部34の内側に嵌まり込むことが防止されるようになる。
【0066】
この実施形態では、トレイ飾り本体61に一体成形されているフック部42の2つのフック要素43が、第1突出部41に向けて開いている鉤形の掛け止め部44を有している。そのため、トレイ飾り本体61を成形するための金型としては、2つの合わせ型の他に、それらの合わせ型の離型方向に対して直角方向にスライド可能なスライド型が必要になると考えられる。そこで、この実施形態では、2つの合わせ型だけでトレイ飾り本体61を成形することができるようにするための対策を講じている。
【0067】
すなわち、図9に示したように、第1突出部41は、2つのフック要素43の掛け止め部44と横孔部45との両方に対向する部位が軸方向全長に亘って欠除されている。図9には第1突出部41の欠除箇所を符号46で示してある。併せて、トレイ飾り本体61には、第1突出部41の欠除箇所46に連通する開口47を開設してある。開口47は図2にも示されている。そして、それらの欠除箇所46と開口47とが、トレイ飾り本体61を成形することに用いられる金型の抜き跡によって形成されている。この構成を採用しておくと、トレイ飾り本体61の2つのフック要素43が、第1突出部41に向けて開いている鉤形の掛け止め部44を有しているとしても、トレイ飾り本体61を成形するための金型としては、2つの合わせ型を用いるだけで済み、上記したスライド型を必要としなくなる。図9の矢印B1,B2は上記した2つの合わせ型の離型方向を示している。
【0068】
本発明の構成は上記した実施形態の構成に限定されない。たとえば、変位幅規制機構9の軸部91や円形開口92を、第1突出部41や第1開口部84の形成箇所とは異なる箇所に別途形成することが可能である。また、変位幅規制機構9の軸部91や円形開口92を、第2突出部10や第2開口部102と同一部位によって兼用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】キャビネットの要部とディスクトレイとの取り合わせを示した概略斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るトレイ飾りや取付け用フレームなどを示した分解斜視図である。
【図3A】トレイ飾りユニットの分解斜視図である。
【図3B】図3Aに対応するトレイ飾りユニットの分解断面図である。
【図4A】トレイ飾りユニットの組立て中間段階の概略斜視図である。
【図4B】図4Aに対応するトレイ飾りユニットの組立て中間段階の水平断面図である。
【図5A】トレイ飾りユニットの組立て後の概略斜視図である。
【図5B】図5Aに対応する組立て後のトレイ飾りユニットの水平断面図である。
【図6】トレイ飾りユニットの組立て後の背面図である。
【図7】トレイ飾りユニットの部分断面図である。
【図8】トレイ飾りの部分背面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う部分の断面図である。
【図10】ばね体の取付け部構造の背面図である。
【図11】ディスクトレイが前進移動している途中の段階を示した横断平面図である。
【図12】ディスクトレイが後退位置まで後退移動している状態を示した横断平面図である。
【図13】トレイ飾りが強制的に前方へ引き出された状態を示した横断平面図である。
【図14】圧縮コイルばねの形状を例示した斜視図である。
【図15】圧縮コイルばねの他の形状を例示した斜視図である。
【図16】図14の圧縮コイルばねの作用説明図である。
【図17】図15の圧縮コイルばねの作用説明図である。
【符号の説明】
【0070】
2 凹入部
3 ばね体(圧縮コイルばね)
5 ディスクトレイ
6 トレイ飾り
7 位置決め機構
8 取付け用フレーム
9 変位幅規制機構
10 ストッパ機構
22 凹入部の底壁
21 開口窓
31 圧縮コイルばねの係止端
32,33,24 圧縮コイルばねの輪線部
41 第1突出部
42 フック部
43 フック要素
44 掛け止め部
45 横孔部
46 第1突出部の欠除箇所
47 開口
71 突起
72 凹部
73 円錐状壁面
84 第1開口部
85 ばね受座
86 円形のリブ
91 軸部
92 円形孔部
101 第2突出部
102 第2開口部
103 径大な鍔部
104 受け部
105 ビス
S 隙間
Y1 ディスクトレイの前進移動方向
Y2 ディスクトレイの後退移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットの凹入部の底壁に備わっている開口窓を通してキャビネットの外方の突出位置とキャビネットの内方の後退位置との間で前進移動と後退移動とが可能なディスクトレイと、このディスクトレイがその後退位置まで後退移動しているときに上記凹入部に嵌まり込んで上記底壁に重なり合うことによりその開口窓を外側から塞ぐトレイ飾りと、このトレイ飾りに設けられて上記ディスクトレイの前端部に動かないように結合された取付け用フレームと、を備えるディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造であって、
上記取付け用フレームが上記トレイ飾りから分離されていて、それらの取付け用フレームとトレイ飾りとが、それら両者を前後方向で互いに近付く方向に常時弾発付勢しかつ上記前後方向と交差する任意方向に上記トレイ飾りが変位することを許容する圧縮コイルばねでなるばね体を介して連結されていると共に、
上記ディスクトレイに対する上記トレイ飾りの上記前後方向に直交する任意方向での変位幅を規制する変位幅規制機構と、上記ばね体によってディスクトレイの前端部に近付く方向に付勢されたトレイ飾りを上記ディスクトレイに対する初期位置に位置決めするための位置決め機構と、を備えていて、ディスクトレイが後退位置まで後退移動したときには上記位置決め機構による位置決め状態が解除されるようになっていることを特徴とするディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項2】
ばね体を形成している上記圧縮コイルばねの輪線部同士が嵌まり合わないように当該圧縮コイルばねの収縮量を規制するストッパ機構が追加されている請求項1に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項3】
上記変位幅規制機構が、上記トレイ飾りから突出された円柱状の軸部と、上記取付け用フレームに開設されて上記軸部が隙間を保持して遊嵌合されている円形孔部とによって構成されている請求項1に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項4】
上記位置決め機構が間隔を隔てた2箇所に設けられ、それぞれの位置決め機構が、上記トレイ飾り及び上記取付け用フレームのうちの一方側部材に設けられた先端が円錐状の突起と、他方側部材に設けられて上記突起の円錐状の先端が嵌まり込む円錐状壁面を有する凹部とによって構成されている請求項1に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項5】
上記取付け用フレームが上記圧縮コイルばねの軸方向一端部を支えるばね受座とその取付け用フレームを貫通して形成された第1開口部とを有し、上記トレイ飾りが、上記第1開口部に隙間を保持して遊嵌合されている第1突出部を有し、その第1突出部に、上記ばね受座で軸方向一端部が支えられた上記圧縮コイルばねが外嵌合されているフック部が設けられ、そのフック部が上記圧縮コイルばねの軸方向他端部に係止してその圧縮コイルばねを圧縮状態に保っている請求項1に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項6】
上記圧縮コイルばねは、その軸方向他端の輪線部を直径方向に横切るまっすぐな線状の係止端を有し、上記フック部が、円柱状の上記第1突出部の頂部からその第1突出部の軸方向に突き出し、かつ、上記係止端を挿入可能な隙間を隔てて上記第1突出部の径方向で対峙している2つのフック要素に分かれていて、それぞれのフック要素に、上記係止端が引掛けられる掛け止め部と、上記隙間に押し込まれた上記係止端を上記圧縮コイルばねの軸線回りで回転させて上記掛け止め部に導入するための横孔部とが、点対称の位置関係を保って設けられている請求項5に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項7】
上記第1突出部は、それぞれの上記フック要素の掛け止め部と横孔部との両方に対向する部位が軸方向全長に亘って欠除されていると共に、上記トレイ飾りには、上記第1突出部の欠除箇所に連通する開口が開設されていて、それらの欠除箇所と開口とが、上記トレイ飾りを成形することに用いられる金型の抜き跡によって形成されている請求項6に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項8】
上記圧縮コイルばねは、軸方向で相隣接している任意の2つの輪線部の相互において軸方向一端部に近い側の輪線部の直径よりも軸方向他端部に近い側の輪線部の直径が短くなっていると共に、それら2つの輪線部のそれぞれの直径の寸法差が、それらの輪線部の軸方向投影像が重なり合う値に定められている裁頭円錐形状を有し、上記取付け用フレームに設けられている上記ばね受座の周囲に円形のリブが突設されていると共に、線状の上記係止端が、上記圧縮コイルばねの軸方向他端部の輪線部の両側に突き出て円形の上記リブの外周直径よりも長くなっている請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項9】
上記ストッパ機構が、上記トレイ飾りから突出された円柱状の第2突出部と、上記取付け用フレームを貫通して形成されていて上記第2突出部が隙間を保持して遊嵌合されている第2開口部と、上記第2突出部の頂部に取り付けられていて上記第2開口部よりも径大な鍔部と、上記第2開口部の口縁部により形成されて上記鍔部に対峙している受け部と、を有し、上記鍔部と上記受け部とが当接することによって、上記圧縮コイルばねの輪線部同士が嵌まり合うことを阻止するように構成されている請求項2に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項10】
上記鍔部が、上記第2突出部の頂部にねじ込まれたビスに一体に形成されている請求項9に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項11】
上記変位幅規制機構の軸部が、請求項5に記載した第1突出部と同一部位によってその第1突出部と兼用され、かつ、上記変位幅規制機構の円形孔部が、請求項5に記載した第1開口部と同一部位によってその第1開口部と兼用されている請求項3に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。
【請求項12】
上記変位幅規制機構の軸部が、請求項9に記載した第2突出部と同一部位によってその第2突出部と兼用され、かつ、上記変位幅規制機構の円形孔部が、請求項9に記載した第2開口部と同一部位によってその第2開口部と兼用されている請求項3に記載したディスクトレイとトレイ飾りとの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−9678(P2010−9678A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168393(P2008−168393)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】