ディスクリートトラック型の磁気記録媒体における書込位置の決定方法及び決定機構、並びに同決定機構を用いたディスクリートトラック型の磁気記録媒体の評価装置及びハードディスクドライブ
【課題】DTMにおける書込位置をより正確に決定する。
【解決手段】DTMにおける書込位置の決定方法は、評価対象トラックの近傍で、磁気ヘッドの半径方向位置RkをN段階で離散的に変えながら、記録媒体の半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を記録媒体に印加する記録工程S1と、角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに対して、磁気ヘッドの半径方向位置を移動して、イレーズパターンを有する磁界を印加するスクイーズ工程と、記録媒体から磁気データを読み出す再生工程S3と、半径方向位置Rk毎に、読み出した磁気データの再現性指標Ikを求める工程S4と、再現性指標Ikの極値に対応する半径方向位置Rkをトラックに対する最適書込位置として決定する工程S5と、を有している。
【解決手段】DTMにおける書込位置の決定方法は、評価対象トラックの近傍で、磁気ヘッドの半径方向位置RkをN段階で離散的に変えながら、記録媒体の半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を記録媒体に印加する記録工程S1と、角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに対して、磁気ヘッドの半径方向位置を移動して、イレーズパターンを有する磁界を印加するスクイーズ工程と、記録媒体から磁気データを読み出す再生工程S3と、半径方向位置Rk毎に、読み出した磁気データの再現性指標Ikを求める工程S4と、再現性指標Ikの極値に対応する半径方向位置Rkをトラックに対する最適書込位置として決定する工程S5と、を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクリートトラック型の磁気記録媒体における書込位置の決定方法及び決定機構、並びに同決定機構を用いたディスクリートトラック型の磁気記録媒体の評価装置及びハードディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
高記録密度が可能な記録媒体として、ディスクリートトラック型の磁気記録媒体(以下、DTMまたは単に記録媒体という。)が知られている。DTMには、あらかじめ、磁気的に互いに分離された、同心円状の、複数のデータ書込み可能なトラックが形成されている。各トラック間は非磁性材料や溝から構成された非磁性領域となっており、磁気データは非磁性領域には記録されない。DTMでは、非磁性領域によって、磁気ヘッドの漏れ磁界による実効記録トラック幅の拡大が回避されるため、磁気データを高密度で記録することができる。従来の磁気ディスクでは、磁気ヘッドが磁界を印加した位置に磁気データが記録されるのに対して、DTMではあらかじめ記録位置が物理的に定められている点が大きな特徴となっている。
【0003】
図9は、DTMに磁気データを書込むときの概念図である。トラックT及び非磁性領域Hは実際にはリング状であるが、同図では直線状に示している。図9(a)は断面図であり、図9(b)は平面図を示している。磁気データを書込むときには、磁気ヘッド1の書込素子2は、理想的には評価対象トラックTの直上(または直下)位置に、記録媒体Mに対してわずかのギャップを介して位置決めされる。図9はこの状態を示しており、磁気ヘッド1の書込素子2の中心線21は、トラックTの中心線22に一致している。これに対して、図10は、磁気ヘッド1の書込素子2の中心線21が非磁性領域Hの中心線23に一致している場合を示している。しかし、非磁性領域Hには磁気データを書込むことができないので、このような書込動作はまったく意味をなさない。また、一般に書込素子2から印加される磁界の磁界印加領域4(記録媒体M上の磁界が印加される領域をいう。)は、非磁性領域Hより大きい幅を有しているため、磁界印加領域4は非磁性領域Hの両側の隣接トラックTに及び、隣接トラックTに無用な磁気データが書込まれてしまう。従って、磁気データを書込む際には、まず第一に、磁気ヘッドの書込素子を評価対象トラック上に正確に位置させることが必要となる。
【0004】
ところで、記録電流にも依存するが、一般に磁気ヘッドから印加される磁界の磁界印加領域は、トラック幅と比べても大きい幅を有している場合が多い。このような場合は、書込位置が図9の状態から多少径方向にずれても、評価対象トラックへの磁気データの書込みに関しては問題は生じない。しかし、この場合、磁界印加領域が隣接トラックに接近するため、隣接トラックへの書込み(サイドライト)の可能性が高まる。DTMでは、高記録密度化のため、非磁性領域はあまり幅広に設定されていないため、サイドライトの発生を防止する必要性は高い。そこで、磁気データを書込む際には、磁気ヘッドの書込素子を評価対象トラック上に正確に位置させるだけでなく、さらに、磁界印加領域の中心線とトラックの中心線とを極力一致させるように、磁気ヘッドの書込素子の位置を決定することが必要となる。
【0005】
従来技術では、例えば以下の方法で磁気ヘッドの書込素子の位置を決定している。図11を参照すると、まず、書込素子2を評価対象トラックTの近傍の径方向位置R1に位置させ、その状態で磁気データを書込む。引き続き、書込んだ磁気データの信号出力を磁気ヘッド1の再生素子(不図示)で読み出す。この際、書込素子2と再生素子とでは記録媒体Mの中心からの距離が異なるため、読み込みの際には磁気ヘッド1の位置を調整する。次に、書込素子2の径方向位置を径方向外側に径方向位置R2,・・,RNと順次動かし、同様の作業を繰り返す。この結果、書込素子2はトラックTを横断しながら径方向に移動し、最初はトラックTの内側領域だけに磁界を印加し、引き続いてトラックTの全幅に磁界を印加し、最後はトラックTの外側領域だけに磁界を印加する。上述のように磁界印加領域4の幅はトラック幅6より大きいため、書込素子2がトラックTの中心線22付近にある場合は、一定の径方向位置の範囲で、書込素子2はトラックTの全幅に磁界を印加する。この結果、書込素子2の径方向位置をx軸、信号出力をy軸に取った出力プロファイル曲線を作成すると、図12に示すような台形状の形状が得られる。そこで従来は、台形の両側側部の延長線の交点に対応する書込素子2の径方向位置Rjで磁界印加領域4の中心線24とトラックTの中心線22とが一致していると考え、径方向位置Rjを最適な書込位置であると評価していた。
【特許文献1】特開2005−166115号公報
【特許文献2】特開2005−166116号公報
【特許文献3】特開2007−95168号公報
【特許文献4】特開2004−192733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のように磁界印加領域の幅がトラック幅より大きい場合には、最適な書込位置の評価においては一定の誤差が避けられない。なぜなら、台形の両側側部の延長線の交点に対応する書込素子2の径方向位置Rjを最適な書込位置であると評価するのは単なる推定に過ぎないし、磁気ヘッドの径方向位置と信号出力との関係も正確な台形形状になるとは限らないからである。特に台形の上辺が長い場合は相当の誤差が生じることが考えられる。この結果、本来の最適な書込位置から径方向にずれた位置で書込みが行われ、隣接トラックに無用な磁界を及ぼす可能性がある。このことは、DTMの書込位置の決定方法及び決定機構や、同機構を用いた評価装置及びハードディスクドライブの信頼性に悪影響を与えることを意味する。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされ、DTMにおける書込位置をより正確に決定する方法及び機構、並びにこのような決定機構を用いたDTMの評価装置及びハードディスクドライブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様によれば、磁気的に互いに分離された同心円状の複数のデータ書込み可能なトラックが形成されたディスクリートトラック型の記録媒体における書込位置の決定方法が提供される。本方法は、回転する記録媒体の評価対象トラックの近傍で、磁気ヘッドの半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、記録媒体の半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N。ただし、θ1からθNまでの和は360度以下。)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を記録媒体に印加する記録工程と、記録工程で磁界が印加された記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに対して、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側に移動して、イレーズパターンを有する磁界を、記録工程における磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加するスクイーズ工程と、磁気ヘッドを、記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに固定しながら、スクイーズ工程を経た記録媒体のトラックから磁気データを読み出す再生工程と、半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した磁気データの、印加した磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求める工程と、再現性指標Ikの極値に対応する半径方向位置Rkをトラックに対する最適書込位置として決定する工程と、を有している。
【0009】
スクイーズ工程では、イレーズパターンを有する磁界が磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加される。このため、記録工程における磁界印加領域が実質的に縮小したのと同じ効果が得られる。その状態で再生工程を実行することで、再現性指標Ikの極値が生じる角度範囲θkを狭めることができるため、最適書込位置の決定精度が向上する。
【0010】
本発明の他の一実施態様によれば、ディスクリートトラック型の記録媒体における書込位置の決定機構が提供される。この決定機構は、磁気的に互いに分離された同心円状の複数のデータ書込み可能なトラックが形成されたディスクリートトラック型の記録媒体を回転させ、かつ記録媒体の評価対象トラックの近傍で磁気ヘッドの半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、記録媒体の半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N。ただし、θ1からθNまでの和は360度以下。)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を記録媒体に印加するように、磁界印加位置を位置決めする記録制御部と、磁化パターンを有する磁界が印加された記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する各半径方向位置Rkに対して、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側に移動して、イレーズパターンを有する磁界を、上記所定の磁化パターンを有する磁界の記録媒体上における磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加するように、イレーズパターンを有する磁界の印加位置を位置決めするスクイーズ制御部と、磁気ヘッドを、記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに固定しながら、イレーズパターンを有する磁界が印加された記録媒体のトラックから磁気データを読み出すための再生制御部と、半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した磁気データの印加した磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求め、再現性指標Ikの極値に対応する半径方向位置Rkをトラックに対する最適書込位置として決定する最適書込位置算出部と、を有している。
【0011】
さらに、本発明の他の一実施態様によれば、ディスクリートトラック型の記録媒体の評価装置は、上述の書込位置の決定機構と、記録媒体を回転させる媒体回転機構と、所定の磁化パターンを有する磁界と、イレーズパターンを有する磁界とを印加し、記録媒体のトラックから磁気データを読み出すことができる磁気ヘッドと、磁気ヘッドのヘッド位置決め機構と、を有している。
【0012】
本発明のさらなる一実施態様によれば、ハードディスクドライブは、上述の書込位置の決定機構と、媒体回転機構と、磁気ヘッドと、ヘッド位置決め機構と、記録媒体と、を有している。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、DTMにおける書込位置をより正確に決定する方法及び機構、並びにこのような決定機構を用いたDTMの評価装置及びハードディスクドライブを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態を説明する。まず、本発明の一実施形態に係るDTMの評価装置について説明する。
【0015】
図1はDTMの評価装置の全体構成図である。図2は、記録媒体とヘッド位置決め機構の上面図であり、評価対象のトラックは網掛け表示されている。DTMの評価装置11は、媒体回転機構12と、磁気ヘッド1と、ヘッド位置決め機構13と、制御部14と、を有している。
【0016】
媒体回転機構12は、その先端部が記録媒体Mの中心孔に挿通させられて記録媒体Mを保持するハブ12aと、制御部14の制御下でハブ2aを介して記録媒体Mを定速回転させるスピンドルモータ12bと、を備えている。
【0017】
磁気ヘッド1は、記録媒体Mに所定の磁化パターン及びを持った磁界を印加することによって磁気データを書込む書込素子2と、記録媒体Mの磁界を検出することによって記録媒体Mに記録された磁気データを読み出す再生素子5と、を備えている。書込素子2は、後述するように、イレーズパターンを有する磁界を印加することもできる。
【0018】
ヘッド位置決め機構13は、磁気ヘッド1を先端部で支持するアーム13aと、アーム13aを記録媒体Mの内周方向及び外周方向に回転支点13cを中心に回転させるボイスコイルモータ13b、とを備えている。ボイスコイルモータ13bは制御部14によって制御され、磁気ヘッド1の書込素子2及び再生素子5を記録媒体Mの所定のトラックに位置させる。
【0019】
制御部14は、媒体回転機構12と、磁気ヘッド1と、ヘッド位置決め機構13を制御して、媒体回転機構12に装着された記録媒体Mの各種の評価を行う。制御部14は、中央処理ユニット、メモリー、A/D変換器(いずれも、不図示)など、一般的に評価に必要とされる各種の回路を備えている。
【0020】
書込位置の決定機構19は制御部14の一部として設けられており、本実施形態ではその機能は中央処理ユニットによって実行されるが、専用の回路が設けられていてもかまわない。
【0021】
書込位置の決定機構19は、記録制御部15と、スクイーズ制御部16と、再生制御部17と、最適書込位置算出部18と、を有している。
【0022】
記録制御部15は、書込位置の決定プロセスの一部として、記録媒体Mへの磁気データの書込みを行うように、媒体回転機構12と、磁気ヘッド1と、ヘッド位置決め機構13と、を制御する。
【0023】
スクイーズ制御部16は、書込位置の決定プロセスの一部として、記録媒体Mに所定のイレーズパターンを有する磁界を印加するように、媒体回転機構12と、磁気ヘッドと、ヘッド位置決め機構13と、を制御する。
【0024】
再生制御部17は、書込位置の決定プロセスの一部として、記録媒体Mから磁気データを読み出すように、媒体回転機構12と、磁気ヘッド1と、ヘッド位置決め機構13と、を制御する。
【0025】
最適書込位置算出部18は、記録媒体Mへの磁気データの書込み、イレーズ、読み出しの結果に基づき、最適書込位置を決定する。
【0026】
以下、図3のフロー図を参照し、上記の書込位置の決定機構の各部の機能について述べながら、本発明の一実施形態に係る書込位置の決定方法について説明する。
【0027】
(ステップS1:記録工程)記録制御部15は、まず、記録媒体Mの、書込位置を決定すべきトラックTを選定し、書込素子2をトラックTの近傍に位置させる。図2では、書込位置を決定すべきトラックTは網掛け表示されている。後述するように、書込素子2はトラックTを径方向に横断するように移動するため、トラックTから多少内側または外側にずれた位置に位置させる。本実施形態では書込素子2をトラックTの内側に位置させ径方向外側に移動させる場合を説明するが、書込素子2をトラックTの外側に位置させ径方向内側に移動させることも同様に可能である。
【0028】
記録媒体Mは、製作精度やハブ12aとのはめ合い精度ために、記録媒体Mの回転中心に対してトラックTが多少偏心していたり、真円度が十分でない場合もある。しかし、記録媒体Mは、いったんトラックTの近傍に書込素子2を位置させれば、記録媒体Mを回転させても書込素子2がトラックTに近傍に位置し続けるだけの製作精度と取り付け精度が確保されている。
【0029】
図4は、書込位置を決定すべき対象トラックの展開図である。便宜上、図面左側を記録媒体Mの径方向内側、図面右側を径方向外側として説明する。DTMの場合、トラックTには一定の角度間隔でサーボ領域31が設けられており、磁気データを記録可能な領域(セクター)はサーボ領域31によって分断されている。図4の場合、トラックTには6つのサーボ領域31が設けられ、トラックTは6つのセクターに分割されているが、分割数はDTMによって異なっていてもよい。本明細書では、この記録可能な領域を角度範囲θ1〜θ6と呼ぶ。角度範囲は一般的には角度範囲θk(1≦k≦N ただし、Nは2以上の自然数)として規定され、θ1からθNまでの和は360度以下である。本実施形態ではN=6である。
【0030】
磁界を印加する際には、記録制御部15は、まず磁気ヘッド1の書込素子2を記録媒体Mの中心Cから距離R1の半径方向位置R1に位置させ、その状態で角度範囲θ1の範囲に磁界を印加する。磁界印加領域4はトラック幅6より大きい。磁気パターンは、すべてのビットでプラスまたはマイナスの、非零の読み出し電圧が得られるようなものが望ましい。このような読み出し電圧はすべてのビットに「1」を書込むような磁界を印加することによって得られる。
【0031】
角度範囲θ1での磁界印加が終了したら、記録制御部15は、書込素子2の半径方向位置をR2に変更する。本実施形態では、上述のようにR1<R2である。そして、同様に、角度範囲θ2の範囲に磁界を印加する。その後、角度範囲θ3からθ6についても同様に、半径方向位置をR3からR6まで変えて同様の作業を行う。
【0032】
以上のプロセスを一般化すれば、書込素子2の半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、記録媒体Mの半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を記録媒体Mに印加する、ということになる。図4は、本プロセスの終了時の状態を示している。角度範囲θ2からθ4では、磁界印加領域4がトラック幅6の全域にかかっていることに留意されたい。
【0033】
(ステップS2:スクイーズ工程)次に、スクイーズ制御部16は、書込素子2を半径方向位置R1に対して所定の距離だけ内側にずらし、その状態で、回転する記録媒体Mの角度範囲θ1にイレーズパターンを有する磁界を印加する。図5は、スクイーズ工程を図示する概念図である。同図は角度範囲θ1の部分だけを取り出しており、状態Aが記録工程終了時の状況、すなわち図4の状況を示している。
【0034】
トラック幅6をx、磁界印加領域4の径方向幅をz、トラック幅の両側の磁界が印加される領域の幅を内周側でy1、外周側でy2とする。このとき、z=x+y1+y2の関係が成り立つ。まず、角度範囲θ1で、書込素子2を半径方向位置R1に対してz−y1だけ内側にずらした径方向位置R1’でイレーズパターンを有する磁界を印加する。イレーズパターンを有する磁界とは、記録工程で印加された磁界を消去するような磁界である。従って、トラックTに書込まれた磁気データは消去されるが、非磁性領域Hには元々磁気データは書込まれないため、本工程では何も生じないことになる。イレーズ磁界印加領域4aは磁界印加領域4に対して内周側にz−y1だけずれているので、状態Aにおける磁界印加領域4のうち、内周側の幅y1の範囲がイレーズ磁界の印加を受ける(状態B)。この結果、磁界印加領域4のうち内周側の幅y1の範囲は、最初から磁界の印加を受けていない場合と等価な状態となる。
【0035】
角度範囲θ1での磁界印加が終了したら、引き続き、書込素子2を半径方向位置R2に対してz−y1だけ内側にずらし、その状態で、回転する記録媒体Mの角度範囲θ2にイレーズパターンを有する磁界を印加する。その後、角度範囲θ3からθ6についても同様に、半径方向位置をR3からR6に対してz−y1だけ内側にずらし、同様の作業を行う。
【0036】
次に、角度範囲θ1で、書込素子2を半径方向位置R1に対してz−y2だけ外側にずらした径方向位置R1”でイレーズパターンを有する磁界を印加する。イレーズ磁界印加領域4bは磁界印加領域4に対して外周側にz−y2だけずれているので、状態Aにおける磁界印加領域4のうち、外周側の幅y2の範囲がイレーズ磁界の印加を受ける(状態C)。この結果、状態Cは、状態Aにおいて、磁界印加領域4のうち内周側の幅y1の範囲と外周側の幅y2の範囲とが最初から磁界の印加を受けていない状態、すなわち記録媒体Mが最初からトラック幅6に等しい磁界印加領域を受けたのと等価な状態となる(状態D)。このように、所定の距離は、イレーズされないで残った磁化パターンの径方向の幅が概ねトラックの径方向の幅と一致するよう定められる。さらに、同様の作業を角度範囲θ2からθ6についても行う。
【0037】
こうして得られた、修正された磁界印加領域4’が図6に示されている。本ステップを実施することで、最初からトラック幅に等しい幅で磁界が印加されたのと同等の結果が得られる。x,y1,y2は既知、あるいはあらかじめ測定によって知ることができるため、半径方向位置R1’,R1”等は正確に求めることができる。なお、磁界印加領域4’がトラック幅6の全域にかかっている角度範囲はθ3だけであることに留意されたい。
【0038】
上記のプロセスの代わりに、角度範囲θ1について半径方向位置R1に対して所定の距離だけ内側にずらし、イレーズパターンを有する磁界を印加した後、記録媒体を1回転させ、半径方向位置R1に対して所定の距離だけ外側にずらし、イレーズパターンを有する磁界を印加し、その作業を角度範囲θ2からθ6について繰り返してもよい。
【0039】
以上のプロセスを一般化すれば、記録工程で磁界が印加された記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに対して、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側及び径方向外側に移動して、イレーズされないで残った磁化パターンの径方向の幅が概ねトラックの径方向の幅と一致するようなイレーズパターンを有する磁界を、記録媒体の、トラック幅より大きい幅の磁界印加領域Mの内周部及び外周部と重なるように印加する、ということになる。
【0040】
(ステップS3:再生工程)再生制御部17は、磁気ヘッド1の再生素子5を、記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに固定しながら、スクイーズ工程を経た記録媒体MのトラックTから磁気データを読み出す。隣接トラックからの磁界は上記スクイーズ工程で実質的に消去されているので、多少径方向にずれていても差し支えない。読み出した磁気データは例えば信号電圧の形で取り出し、A/D変換した上で、制御部14のメモリーに一時的に格納しておく。
【0041】
(ステップS4)最適書込位置算出部18は、半径方向位置R1〜R6毎に、読み出した磁気データの信号電圧の平均値を求める。この平均値を半径方向位置R1〜R6をパラメータとして整理すると、図7のようなグラフを描くことができる。図7のグラフは本実施形態の説明のために示すもので、実際に最適書込位置算出部18でこのようなグラフを作成するわけではない。図6から明らかなように、スクイーズ工程後は、径方向位置R1ではトラックTの三分の一程度しか有効な磁気データが書込まれていないため、信号出力は小さい。径方向位置R2ではトラックTの三分の二程度の範囲に磁気データが書込まれているため、信号出力は増加する。そして、径方向位置R3ではトラックTの全範囲で磁気データが書込まれているため、信号出力は最大となる。径方向位置R4,R5では信号出力は減少し、トラックTに有効な磁気データが書込まれていない径方向位置R6では信号出力は0となる。半径方向位置R1〜R6のいずれの位置でも、トラックTの全幅に等しい磁化パターンが得られるように、記録工程およびスクイーズ工程を実行しているので、信号出力は印加した磁界に対する再現性指標と理解することができる。
【0042】
以上のプロセスを一般化すれば、半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した磁気データの、印加した磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求める、ということになる。
【0043】
(ステップS5)ステップS4によって、信号出力、すなわち再現性指標I1〜I6と径方向位置R1〜R6との関係が得られるため、この関係を用いて、信号出力が最大値となる半径方向位置を求める。上記の例ではR3が信号出力が最大値となる半径方向位置であり、書込素子2はこの位置で最も有効に磁気データをトラックT上に書込んでいることがわかる。よって、半径方向位置R3がトラックTに対する最適書込位置として決定される。
【0044】
図7を参照すると、実線が本実施形態のスクイーズ工程を実行して得られたグラフである。これに対して破線はスクイーズ工程を実行しない場合のグラフである。すなわち、破線のグラフは記録工程が実行された直後の、図4の磁界印加領域4に対応するグラフである。図4から明らかなように、径方向位置R2〜R4でトラック幅全域に磁界が印加されているため、この状態でステップ3の再生工程以降のステップを実行すると、径方向位置R2〜R4で同じレベルの最大出力が得られる。従って、従来技術の欄で述べたように、最適な書込位置を精度よく決定することができない。これに対して、実線のグラフは図6に対応しており、径方向位置R3で最大値をとる。よって、最適な書込位置を精度よく決定することができる。
【0045】
実際には、径方向位置Rkの設定によっては、図7のような三角形のグラフが得られない場合も考えられるが、その場合でも図7に一転鎖線で示したように上辺が絞られた台形のグラフが得られるため、書込位置の決定精度は向上し、従来技術に対する優位性は確保される。
【0046】
また、以上の説明から明らかなように、スクイーズ工程においては、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側及び径方向外側に移動し、イレーズされないで残った磁化パターンの径方向の幅が概ねトラックの径方向の幅と一致するようなイレーズパターンを有する磁界を、磁化パターンの内周部及び外周部と重なるように印加することが最も有利である。しかし、図7の一点鎖線で示したように、従来技術よりも上辺が絞られた台形のグラフが得られれば、一定の効果を奏することができる。そこで、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側のいずれか一方だけに動かすことも可能である。この場合は左右非対称の台形が得られるが、上辺は従来技術の場合よりも絞られている。また、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側及び径方向外側に移動する場合であっても、必ずしも等価的な磁界印加範囲4’がトラック幅6に一致する必要はない。等価的な磁界印加範囲4’がスクイーズ工程によってトラック幅6に近づくだけでも本発明の効果は得られる。さらに、等価的な磁界印加範囲4’がトラック幅6より減少してもかまわない。この場合は信号出力は若干低下するが、上辺が絞られた台形のグラフが得られるため、本発明の効果を奏することができる。
【0047】
また、角度範囲θkをトラックのセクターに対応して設定すれば、角度範囲θkの境界を明確に仕切ることができ好ましいが、必ずしも角度範囲θkをトラックのセクターに対応させる必要はない。あらかじめ角度範囲θkと径方向位置Rkの関係を設定しておけば、その設定に従って記録工程やスクイーズ工程を実行することができる。特に、セクター数が少ない場合や、最適書込位置の決定精度を上げたい場合は、角度範囲θkをより細かく設定することも望ましい実施形態の一つである。
【0048】
上述の通り、角度範囲θkはセクターに対応しており、角度範囲θ1〜θNの和は360度以内である。このため、記録工程、スクイーズ工程、及び再生工程は記録媒体Mが一周する間にすべて行われるが、一つの径方向位置に対してトラック一周分を使って記録工程、スクイーズ工程、及び再生工程を行うこともできる。しかし、この場合、次の径方向位置に対する記録工程を行う前に評価対象トラックの磁気データの消去を行うことが必要である。なぜなら、磁気データを単に上書きする場合、径方向位置が変わっているために元の磁気データが残ってしまうことがあり得るからである。これに対して、本実施形態では別のセクターに書込みが行われるため、消去は不要である。また、記録工程、スクイーズ工程、及び再生工程は各々一回の作業ですみ、作業の分割も不要であるため、作業性に優れている。
【0049】
再現性指標Ikはビットエラーレートとすることもできる。この場合、記録工程で、ある所定のパターン(例えば、「1」「0」「0」「1」「0」等の任意の信号パターン)を記録するように磁界を印加する。スクイーズ工程、再生工程は上述と同様に実行し、ステップ4で、読み込んだ磁気データを信号パターンに変換する。そして、元の信号パターンと比較することで角度領域θk毎にビットエラーレートを算出する。ビットエラーレートは、元の信号と再生して得られた信号とが食い違っている比率のことで、例えば、「1」「0」「0」「1」「0」の信号パターンを書込み、「1」「0」「1」「1」「0」の再生信号パターンが得られた場合は0.2(20%)と求められる。書込素子がトラックの中央付近にある場合は、信号パターンの再現性が高まる。従って、ビットエラーレートを再現性指標Ikとして用いることができる。なお、ビットエラーレートが小さいほど書込素子がトラックの中央付近にあることになるため、ビットエラーレートを再現性指標Ikとして用いる場合は、再現性指標Ikの最小値に対応する径方向位置が最適な書込位置となる。つまり、最適な書込位置は、再現性指標Ikの内容に応じて、再現性指標Ikの最大値または最小値と対応するため、一般的には再現性指標Ikの極値が最適な書込位置に対応する。
【0050】
本発明はDTMを備えたハードディスクドライブにも適用できるが、その構成は書込位置の決定機構に関しては同一である。ただし、ハードディスクドライブは、装置固有のDTMを内蔵している点でDTMの評価装置と異なる。図8を参照すると、ハードディスクドライブ41は、スピンドルモータ42に取り付けられた記録媒体Mと、ヘッドスタックアセンブリ43と、を有している。ヘッドスタックアセンブリ43は、複数のアーム44(図では1つのみ図示)を有するキャリッジ45を有している。各アーム44には、ヘッドジンバルアセンブリ46が、互いに間隔を開けて垂直方向に並ぶように取り付けられている。キャリッジ45の、アーム44の反対側には、ボイスコイルモータの一部となるコイル47が取り付けられている。ボイスコイルモータは、コイル47を挟んで対向する位置に配置された永久磁石(不図示)を有している。記録媒体M毎に、磁気ヘッドが搭載された2つのスライダ48が、記録媒体Mを挟んで対向配置されている。ヘッドスタックアセンブリ43はスライダ48を支持すると共に、スライダ48を記録媒体Mに対して位置決めする。スライダ48はアクチュエータ(不図示)によって、記録媒体Mのトラック横断方向に動かされ、記録媒体Mに対して位置決めされる。スライダ48は磁気ヘッド1を含んでおり、磁気ヘッド1は記録媒体Mに情報を記録する書込素子2と、記録媒体Mに記録されている情報を再生する再生素子5とを含んでいる。ヘッド位置決め機構はあらかじめ上述のように作動し、最適な書込位置を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係るDTMの評価装置の全体構成図である。
【図2】記録媒体とヘッド位置決め機構の上面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る書込位置の決定方法を示すフロー図である。
【図4】書込位置を決定すべき対象トラックの、記録工程における展開図である。
【図5】スクイーズ工程の概念図である。
【図6】書込位置を決定すべき対象トラックの、スクイーズ工程工程における展開図である。
【図7】半径方向位置と信号電圧の平均値との関係を示す概念図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るハードディスクドライブの全体構成図である。
【図9】従来技術における、DTMに磁気データを書込むときの概念図である。
【図10】従来技術における、DTMに磁気データを書込むときの概念図である。
【図11】従来技術における、磁気ヘッドの書込素子の位置を決定方法を示す概念図である。
【図12】従来技術における、半径方向位置と信号電圧の平均値との関係を示す概念図である。
【符号の説明】
【0052】
1 磁気ヘッド
2 書込素子
4 磁界印加領域
5 再生素子
6 トラック幅
11 DTMの評価装置
12 媒体回転機構
13 ヘッド位置決め機構
14 制御部
15 記録制御部
16 スクイーズ制御部
17 再生制御部
18 最適書込位置算出部
19 書込位置の決定機構
21 書込素子の中心線
22 トラックの中心線
23 非磁性領域の中心線
24 磁界印加領域の中心線
41 ハードディスクドライブ
H 非磁性領域
M 記録媒体
T トラック
Rk 半径方向位置
Ik 再現性指標
θk 角度範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクリートトラック型の磁気記録媒体における書込位置の決定方法及び決定機構、並びに同決定機構を用いたディスクリートトラック型の磁気記録媒体の評価装置及びハードディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
高記録密度が可能な記録媒体として、ディスクリートトラック型の磁気記録媒体(以下、DTMまたは単に記録媒体という。)が知られている。DTMには、あらかじめ、磁気的に互いに分離された、同心円状の、複数のデータ書込み可能なトラックが形成されている。各トラック間は非磁性材料や溝から構成された非磁性領域となっており、磁気データは非磁性領域には記録されない。DTMでは、非磁性領域によって、磁気ヘッドの漏れ磁界による実効記録トラック幅の拡大が回避されるため、磁気データを高密度で記録することができる。従来の磁気ディスクでは、磁気ヘッドが磁界を印加した位置に磁気データが記録されるのに対して、DTMではあらかじめ記録位置が物理的に定められている点が大きな特徴となっている。
【0003】
図9は、DTMに磁気データを書込むときの概念図である。トラックT及び非磁性領域Hは実際にはリング状であるが、同図では直線状に示している。図9(a)は断面図であり、図9(b)は平面図を示している。磁気データを書込むときには、磁気ヘッド1の書込素子2は、理想的には評価対象トラックTの直上(または直下)位置に、記録媒体Mに対してわずかのギャップを介して位置決めされる。図9はこの状態を示しており、磁気ヘッド1の書込素子2の中心線21は、トラックTの中心線22に一致している。これに対して、図10は、磁気ヘッド1の書込素子2の中心線21が非磁性領域Hの中心線23に一致している場合を示している。しかし、非磁性領域Hには磁気データを書込むことができないので、このような書込動作はまったく意味をなさない。また、一般に書込素子2から印加される磁界の磁界印加領域4(記録媒体M上の磁界が印加される領域をいう。)は、非磁性領域Hより大きい幅を有しているため、磁界印加領域4は非磁性領域Hの両側の隣接トラックTに及び、隣接トラックTに無用な磁気データが書込まれてしまう。従って、磁気データを書込む際には、まず第一に、磁気ヘッドの書込素子を評価対象トラック上に正確に位置させることが必要となる。
【0004】
ところで、記録電流にも依存するが、一般に磁気ヘッドから印加される磁界の磁界印加領域は、トラック幅と比べても大きい幅を有している場合が多い。このような場合は、書込位置が図9の状態から多少径方向にずれても、評価対象トラックへの磁気データの書込みに関しては問題は生じない。しかし、この場合、磁界印加領域が隣接トラックに接近するため、隣接トラックへの書込み(サイドライト)の可能性が高まる。DTMでは、高記録密度化のため、非磁性領域はあまり幅広に設定されていないため、サイドライトの発生を防止する必要性は高い。そこで、磁気データを書込む際には、磁気ヘッドの書込素子を評価対象トラック上に正確に位置させるだけでなく、さらに、磁界印加領域の中心線とトラックの中心線とを極力一致させるように、磁気ヘッドの書込素子の位置を決定することが必要となる。
【0005】
従来技術では、例えば以下の方法で磁気ヘッドの書込素子の位置を決定している。図11を参照すると、まず、書込素子2を評価対象トラックTの近傍の径方向位置R1に位置させ、その状態で磁気データを書込む。引き続き、書込んだ磁気データの信号出力を磁気ヘッド1の再生素子(不図示)で読み出す。この際、書込素子2と再生素子とでは記録媒体Mの中心からの距離が異なるため、読み込みの際には磁気ヘッド1の位置を調整する。次に、書込素子2の径方向位置を径方向外側に径方向位置R2,・・,RNと順次動かし、同様の作業を繰り返す。この結果、書込素子2はトラックTを横断しながら径方向に移動し、最初はトラックTの内側領域だけに磁界を印加し、引き続いてトラックTの全幅に磁界を印加し、最後はトラックTの外側領域だけに磁界を印加する。上述のように磁界印加領域4の幅はトラック幅6より大きいため、書込素子2がトラックTの中心線22付近にある場合は、一定の径方向位置の範囲で、書込素子2はトラックTの全幅に磁界を印加する。この結果、書込素子2の径方向位置をx軸、信号出力をy軸に取った出力プロファイル曲線を作成すると、図12に示すような台形状の形状が得られる。そこで従来は、台形の両側側部の延長線の交点に対応する書込素子2の径方向位置Rjで磁界印加領域4の中心線24とトラックTの中心線22とが一致していると考え、径方向位置Rjを最適な書込位置であると評価していた。
【特許文献1】特開2005−166115号公報
【特許文献2】特開2005−166116号公報
【特許文献3】特開2007−95168号公報
【特許文献4】特開2004−192733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のように磁界印加領域の幅がトラック幅より大きい場合には、最適な書込位置の評価においては一定の誤差が避けられない。なぜなら、台形の両側側部の延長線の交点に対応する書込素子2の径方向位置Rjを最適な書込位置であると評価するのは単なる推定に過ぎないし、磁気ヘッドの径方向位置と信号出力との関係も正確な台形形状になるとは限らないからである。特に台形の上辺が長い場合は相当の誤差が生じることが考えられる。この結果、本来の最適な書込位置から径方向にずれた位置で書込みが行われ、隣接トラックに無用な磁界を及ぼす可能性がある。このことは、DTMの書込位置の決定方法及び決定機構や、同機構を用いた評価装置及びハードディスクドライブの信頼性に悪影響を与えることを意味する。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされ、DTMにおける書込位置をより正確に決定する方法及び機構、並びにこのような決定機構を用いたDTMの評価装置及びハードディスクドライブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様によれば、磁気的に互いに分離された同心円状の複数のデータ書込み可能なトラックが形成されたディスクリートトラック型の記録媒体における書込位置の決定方法が提供される。本方法は、回転する記録媒体の評価対象トラックの近傍で、磁気ヘッドの半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、記録媒体の半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N。ただし、θ1からθNまでの和は360度以下。)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を記録媒体に印加する記録工程と、記録工程で磁界が印加された記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに対して、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側に移動して、イレーズパターンを有する磁界を、記録工程における磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加するスクイーズ工程と、磁気ヘッドを、記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに固定しながら、スクイーズ工程を経た記録媒体のトラックから磁気データを読み出す再生工程と、半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した磁気データの、印加した磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求める工程と、再現性指標Ikの極値に対応する半径方向位置Rkをトラックに対する最適書込位置として決定する工程と、を有している。
【0009】
スクイーズ工程では、イレーズパターンを有する磁界が磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加される。このため、記録工程における磁界印加領域が実質的に縮小したのと同じ効果が得られる。その状態で再生工程を実行することで、再現性指標Ikの極値が生じる角度範囲θkを狭めることができるため、最適書込位置の決定精度が向上する。
【0010】
本発明の他の一実施態様によれば、ディスクリートトラック型の記録媒体における書込位置の決定機構が提供される。この決定機構は、磁気的に互いに分離された同心円状の複数のデータ書込み可能なトラックが形成されたディスクリートトラック型の記録媒体を回転させ、かつ記録媒体の評価対象トラックの近傍で磁気ヘッドの半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、記録媒体の半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N。ただし、θ1からθNまでの和は360度以下。)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を記録媒体に印加するように、磁界印加位置を位置決めする記録制御部と、磁化パターンを有する磁界が印加された記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する各半径方向位置Rkに対して、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側に移動して、イレーズパターンを有する磁界を、上記所定の磁化パターンを有する磁界の記録媒体上における磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加するように、イレーズパターンを有する磁界の印加位置を位置決めするスクイーズ制御部と、磁気ヘッドを、記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに固定しながら、イレーズパターンを有する磁界が印加された記録媒体のトラックから磁気データを読み出すための再生制御部と、半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した磁気データの印加した磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求め、再現性指標Ikの極値に対応する半径方向位置Rkをトラックに対する最適書込位置として決定する最適書込位置算出部と、を有している。
【0011】
さらに、本発明の他の一実施態様によれば、ディスクリートトラック型の記録媒体の評価装置は、上述の書込位置の決定機構と、記録媒体を回転させる媒体回転機構と、所定の磁化パターンを有する磁界と、イレーズパターンを有する磁界とを印加し、記録媒体のトラックから磁気データを読み出すことができる磁気ヘッドと、磁気ヘッドのヘッド位置決め機構と、を有している。
【0012】
本発明のさらなる一実施態様によれば、ハードディスクドライブは、上述の書込位置の決定機構と、媒体回転機構と、磁気ヘッドと、ヘッド位置決め機構と、記録媒体と、を有している。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、DTMにおける書込位置をより正確に決定する方法及び機構、並びにこのような決定機構を用いたDTMの評価装置及びハードディスクドライブを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態を説明する。まず、本発明の一実施形態に係るDTMの評価装置について説明する。
【0015】
図1はDTMの評価装置の全体構成図である。図2は、記録媒体とヘッド位置決め機構の上面図であり、評価対象のトラックは網掛け表示されている。DTMの評価装置11は、媒体回転機構12と、磁気ヘッド1と、ヘッド位置決め機構13と、制御部14と、を有している。
【0016】
媒体回転機構12は、その先端部が記録媒体Mの中心孔に挿通させられて記録媒体Mを保持するハブ12aと、制御部14の制御下でハブ2aを介して記録媒体Mを定速回転させるスピンドルモータ12bと、を備えている。
【0017】
磁気ヘッド1は、記録媒体Mに所定の磁化パターン及びを持った磁界を印加することによって磁気データを書込む書込素子2と、記録媒体Mの磁界を検出することによって記録媒体Mに記録された磁気データを読み出す再生素子5と、を備えている。書込素子2は、後述するように、イレーズパターンを有する磁界を印加することもできる。
【0018】
ヘッド位置決め機構13は、磁気ヘッド1を先端部で支持するアーム13aと、アーム13aを記録媒体Mの内周方向及び外周方向に回転支点13cを中心に回転させるボイスコイルモータ13b、とを備えている。ボイスコイルモータ13bは制御部14によって制御され、磁気ヘッド1の書込素子2及び再生素子5を記録媒体Mの所定のトラックに位置させる。
【0019】
制御部14は、媒体回転機構12と、磁気ヘッド1と、ヘッド位置決め機構13を制御して、媒体回転機構12に装着された記録媒体Mの各種の評価を行う。制御部14は、中央処理ユニット、メモリー、A/D変換器(いずれも、不図示)など、一般的に評価に必要とされる各種の回路を備えている。
【0020】
書込位置の決定機構19は制御部14の一部として設けられており、本実施形態ではその機能は中央処理ユニットによって実行されるが、専用の回路が設けられていてもかまわない。
【0021】
書込位置の決定機構19は、記録制御部15と、スクイーズ制御部16と、再生制御部17と、最適書込位置算出部18と、を有している。
【0022】
記録制御部15は、書込位置の決定プロセスの一部として、記録媒体Mへの磁気データの書込みを行うように、媒体回転機構12と、磁気ヘッド1と、ヘッド位置決め機構13と、を制御する。
【0023】
スクイーズ制御部16は、書込位置の決定プロセスの一部として、記録媒体Mに所定のイレーズパターンを有する磁界を印加するように、媒体回転機構12と、磁気ヘッドと、ヘッド位置決め機構13と、を制御する。
【0024】
再生制御部17は、書込位置の決定プロセスの一部として、記録媒体Mから磁気データを読み出すように、媒体回転機構12と、磁気ヘッド1と、ヘッド位置決め機構13と、を制御する。
【0025】
最適書込位置算出部18は、記録媒体Mへの磁気データの書込み、イレーズ、読み出しの結果に基づき、最適書込位置を決定する。
【0026】
以下、図3のフロー図を参照し、上記の書込位置の決定機構の各部の機能について述べながら、本発明の一実施形態に係る書込位置の決定方法について説明する。
【0027】
(ステップS1:記録工程)記録制御部15は、まず、記録媒体Mの、書込位置を決定すべきトラックTを選定し、書込素子2をトラックTの近傍に位置させる。図2では、書込位置を決定すべきトラックTは網掛け表示されている。後述するように、書込素子2はトラックTを径方向に横断するように移動するため、トラックTから多少内側または外側にずれた位置に位置させる。本実施形態では書込素子2をトラックTの内側に位置させ径方向外側に移動させる場合を説明するが、書込素子2をトラックTの外側に位置させ径方向内側に移動させることも同様に可能である。
【0028】
記録媒体Mは、製作精度やハブ12aとのはめ合い精度ために、記録媒体Mの回転中心に対してトラックTが多少偏心していたり、真円度が十分でない場合もある。しかし、記録媒体Mは、いったんトラックTの近傍に書込素子2を位置させれば、記録媒体Mを回転させても書込素子2がトラックTに近傍に位置し続けるだけの製作精度と取り付け精度が確保されている。
【0029】
図4は、書込位置を決定すべき対象トラックの展開図である。便宜上、図面左側を記録媒体Mの径方向内側、図面右側を径方向外側として説明する。DTMの場合、トラックTには一定の角度間隔でサーボ領域31が設けられており、磁気データを記録可能な領域(セクター)はサーボ領域31によって分断されている。図4の場合、トラックTには6つのサーボ領域31が設けられ、トラックTは6つのセクターに分割されているが、分割数はDTMによって異なっていてもよい。本明細書では、この記録可能な領域を角度範囲θ1〜θ6と呼ぶ。角度範囲は一般的には角度範囲θk(1≦k≦N ただし、Nは2以上の自然数)として規定され、θ1からθNまでの和は360度以下である。本実施形態ではN=6である。
【0030】
磁界を印加する際には、記録制御部15は、まず磁気ヘッド1の書込素子2を記録媒体Mの中心Cから距離R1の半径方向位置R1に位置させ、その状態で角度範囲θ1の範囲に磁界を印加する。磁界印加領域4はトラック幅6より大きい。磁気パターンは、すべてのビットでプラスまたはマイナスの、非零の読み出し電圧が得られるようなものが望ましい。このような読み出し電圧はすべてのビットに「1」を書込むような磁界を印加することによって得られる。
【0031】
角度範囲θ1での磁界印加が終了したら、記録制御部15は、書込素子2の半径方向位置をR2に変更する。本実施形態では、上述のようにR1<R2である。そして、同様に、角度範囲θ2の範囲に磁界を印加する。その後、角度範囲θ3からθ6についても同様に、半径方向位置をR3からR6まで変えて同様の作業を行う。
【0032】
以上のプロセスを一般化すれば、書込素子2の半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、記録媒体Mの半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を記録媒体Mに印加する、ということになる。図4は、本プロセスの終了時の状態を示している。角度範囲θ2からθ4では、磁界印加領域4がトラック幅6の全域にかかっていることに留意されたい。
【0033】
(ステップS2:スクイーズ工程)次に、スクイーズ制御部16は、書込素子2を半径方向位置R1に対して所定の距離だけ内側にずらし、その状態で、回転する記録媒体Mの角度範囲θ1にイレーズパターンを有する磁界を印加する。図5は、スクイーズ工程を図示する概念図である。同図は角度範囲θ1の部分だけを取り出しており、状態Aが記録工程終了時の状況、すなわち図4の状況を示している。
【0034】
トラック幅6をx、磁界印加領域4の径方向幅をz、トラック幅の両側の磁界が印加される領域の幅を内周側でy1、外周側でy2とする。このとき、z=x+y1+y2の関係が成り立つ。まず、角度範囲θ1で、書込素子2を半径方向位置R1に対してz−y1だけ内側にずらした径方向位置R1’でイレーズパターンを有する磁界を印加する。イレーズパターンを有する磁界とは、記録工程で印加された磁界を消去するような磁界である。従って、トラックTに書込まれた磁気データは消去されるが、非磁性領域Hには元々磁気データは書込まれないため、本工程では何も生じないことになる。イレーズ磁界印加領域4aは磁界印加領域4に対して内周側にz−y1だけずれているので、状態Aにおける磁界印加領域4のうち、内周側の幅y1の範囲がイレーズ磁界の印加を受ける(状態B)。この結果、磁界印加領域4のうち内周側の幅y1の範囲は、最初から磁界の印加を受けていない場合と等価な状態となる。
【0035】
角度範囲θ1での磁界印加が終了したら、引き続き、書込素子2を半径方向位置R2に対してz−y1だけ内側にずらし、その状態で、回転する記録媒体Mの角度範囲θ2にイレーズパターンを有する磁界を印加する。その後、角度範囲θ3からθ6についても同様に、半径方向位置をR3からR6に対してz−y1だけ内側にずらし、同様の作業を行う。
【0036】
次に、角度範囲θ1で、書込素子2を半径方向位置R1に対してz−y2だけ外側にずらした径方向位置R1”でイレーズパターンを有する磁界を印加する。イレーズ磁界印加領域4bは磁界印加領域4に対して外周側にz−y2だけずれているので、状態Aにおける磁界印加領域4のうち、外周側の幅y2の範囲がイレーズ磁界の印加を受ける(状態C)。この結果、状態Cは、状態Aにおいて、磁界印加領域4のうち内周側の幅y1の範囲と外周側の幅y2の範囲とが最初から磁界の印加を受けていない状態、すなわち記録媒体Mが最初からトラック幅6に等しい磁界印加領域を受けたのと等価な状態となる(状態D)。このように、所定の距離は、イレーズされないで残った磁化パターンの径方向の幅が概ねトラックの径方向の幅と一致するよう定められる。さらに、同様の作業を角度範囲θ2からθ6についても行う。
【0037】
こうして得られた、修正された磁界印加領域4’が図6に示されている。本ステップを実施することで、最初からトラック幅に等しい幅で磁界が印加されたのと同等の結果が得られる。x,y1,y2は既知、あるいはあらかじめ測定によって知ることができるため、半径方向位置R1’,R1”等は正確に求めることができる。なお、磁界印加領域4’がトラック幅6の全域にかかっている角度範囲はθ3だけであることに留意されたい。
【0038】
上記のプロセスの代わりに、角度範囲θ1について半径方向位置R1に対して所定の距離だけ内側にずらし、イレーズパターンを有する磁界を印加した後、記録媒体を1回転させ、半径方向位置R1に対して所定の距離だけ外側にずらし、イレーズパターンを有する磁界を印加し、その作業を角度範囲θ2からθ6について繰り返してもよい。
【0039】
以上のプロセスを一般化すれば、記録工程で磁界が印加された記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに対して、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側及び径方向外側に移動して、イレーズされないで残った磁化パターンの径方向の幅が概ねトラックの径方向の幅と一致するようなイレーズパターンを有する磁界を、記録媒体の、トラック幅より大きい幅の磁界印加領域Mの内周部及び外周部と重なるように印加する、ということになる。
【0040】
(ステップS3:再生工程)再生制御部17は、磁気ヘッド1の再生素子5を、記録媒体の角度範囲θk毎に、対応する半径方向位置Rkに固定しながら、スクイーズ工程を経た記録媒体MのトラックTから磁気データを読み出す。隣接トラックからの磁界は上記スクイーズ工程で実質的に消去されているので、多少径方向にずれていても差し支えない。読み出した磁気データは例えば信号電圧の形で取り出し、A/D変換した上で、制御部14のメモリーに一時的に格納しておく。
【0041】
(ステップS4)最適書込位置算出部18は、半径方向位置R1〜R6毎に、読み出した磁気データの信号電圧の平均値を求める。この平均値を半径方向位置R1〜R6をパラメータとして整理すると、図7のようなグラフを描くことができる。図7のグラフは本実施形態の説明のために示すもので、実際に最適書込位置算出部18でこのようなグラフを作成するわけではない。図6から明らかなように、スクイーズ工程後は、径方向位置R1ではトラックTの三分の一程度しか有効な磁気データが書込まれていないため、信号出力は小さい。径方向位置R2ではトラックTの三分の二程度の範囲に磁気データが書込まれているため、信号出力は増加する。そして、径方向位置R3ではトラックTの全範囲で磁気データが書込まれているため、信号出力は最大となる。径方向位置R4,R5では信号出力は減少し、トラックTに有効な磁気データが書込まれていない径方向位置R6では信号出力は0となる。半径方向位置R1〜R6のいずれの位置でも、トラックTの全幅に等しい磁化パターンが得られるように、記録工程およびスクイーズ工程を実行しているので、信号出力は印加した磁界に対する再現性指標と理解することができる。
【0042】
以上のプロセスを一般化すれば、半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した磁気データの、印加した磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求める、ということになる。
【0043】
(ステップS5)ステップS4によって、信号出力、すなわち再現性指標I1〜I6と径方向位置R1〜R6との関係が得られるため、この関係を用いて、信号出力が最大値となる半径方向位置を求める。上記の例ではR3が信号出力が最大値となる半径方向位置であり、書込素子2はこの位置で最も有効に磁気データをトラックT上に書込んでいることがわかる。よって、半径方向位置R3がトラックTに対する最適書込位置として決定される。
【0044】
図7を参照すると、実線が本実施形態のスクイーズ工程を実行して得られたグラフである。これに対して破線はスクイーズ工程を実行しない場合のグラフである。すなわち、破線のグラフは記録工程が実行された直後の、図4の磁界印加領域4に対応するグラフである。図4から明らかなように、径方向位置R2〜R4でトラック幅全域に磁界が印加されているため、この状態でステップ3の再生工程以降のステップを実行すると、径方向位置R2〜R4で同じレベルの最大出力が得られる。従って、従来技術の欄で述べたように、最適な書込位置を精度よく決定することができない。これに対して、実線のグラフは図6に対応しており、径方向位置R3で最大値をとる。よって、最適な書込位置を精度よく決定することができる。
【0045】
実際には、径方向位置Rkの設定によっては、図7のような三角形のグラフが得られない場合も考えられるが、その場合でも図7に一転鎖線で示したように上辺が絞られた台形のグラフが得られるため、書込位置の決定精度は向上し、従来技術に対する優位性は確保される。
【0046】
また、以上の説明から明らかなように、スクイーズ工程においては、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側及び径方向外側に移動し、イレーズされないで残った磁化パターンの径方向の幅が概ねトラックの径方向の幅と一致するようなイレーズパターンを有する磁界を、磁化パターンの内周部及び外周部と重なるように印加することが最も有利である。しかし、図7の一点鎖線で示したように、従来技術よりも上辺が絞られた台形のグラフが得られれば、一定の効果を奏することができる。そこで、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側のいずれか一方だけに動かすことも可能である。この場合は左右非対称の台形が得られるが、上辺は従来技術の場合よりも絞られている。また、磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側及び径方向外側に移動する場合であっても、必ずしも等価的な磁界印加範囲4’がトラック幅6に一致する必要はない。等価的な磁界印加範囲4’がスクイーズ工程によってトラック幅6に近づくだけでも本発明の効果は得られる。さらに、等価的な磁界印加範囲4’がトラック幅6より減少してもかまわない。この場合は信号出力は若干低下するが、上辺が絞られた台形のグラフが得られるため、本発明の効果を奏することができる。
【0047】
また、角度範囲θkをトラックのセクターに対応して設定すれば、角度範囲θkの境界を明確に仕切ることができ好ましいが、必ずしも角度範囲θkをトラックのセクターに対応させる必要はない。あらかじめ角度範囲θkと径方向位置Rkの関係を設定しておけば、その設定に従って記録工程やスクイーズ工程を実行することができる。特に、セクター数が少ない場合や、最適書込位置の決定精度を上げたい場合は、角度範囲θkをより細かく設定することも望ましい実施形態の一つである。
【0048】
上述の通り、角度範囲θkはセクターに対応しており、角度範囲θ1〜θNの和は360度以内である。このため、記録工程、スクイーズ工程、及び再生工程は記録媒体Mが一周する間にすべて行われるが、一つの径方向位置に対してトラック一周分を使って記録工程、スクイーズ工程、及び再生工程を行うこともできる。しかし、この場合、次の径方向位置に対する記録工程を行う前に評価対象トラックの磁気データの消去を行うことが必要である。なぜなら、磁気データを単に上書きする場合、径方向位置が変わっているために元の磁気データが残ってしまうことがあり得るからである。これに対して、本実施形態では別のセクターに書込みが行われるため、消去は不要である。また、記録工程、スクイーズ工程、及び再生工程は各々一回の作業ですみ、作業の分割も不要であるため、作業性に優れている。
【0049】
再現性指標Ikはビットエラーレートとすることもできる。この場合、記録工程で、ある所定のパターン(例えば、「1」「0」「0」「1」「0」等の任意の信号パターン)を記録するように磁界を印加する。スクイーズ工程、再生工程は上述と同様に実行し、ステップ4で、読み込んだ磁気データを信号パターンに変換する。そして、元の信号パターンと比較することで角度領域θk毎にビットエラーレートを算出する。ビットエラーレートは、元の信号と再生して得られた信号とが食い違っている比率のことで、例えば、「1」「0」「0」「1」「0」の信号パターンを書込み、「1」「0」「1」「1」「0」の再生信号パターンが得られた場合は0.2(20%)と求められる。書込素子がトラックの中央付近にある場合は、信号パターンの再現性が高まる。従って、ビットエラーレートを再現性指標Ikとして用いることができる。なお、ビットエラーレートが小さいほど書込素子がトラックの中央付近にあることになるため、ビットエラーレートを再現性指標Ikとして用いる場合は、再現性指標Ikの最小値に対応する径方向位置が最適な書込位置となる。つまり、最適な書込位置は、再現性指標Ikの内容に応じて、再現性指標Ikの最大値または最小値と対応するため、一般的には再現性指標Ikの極値が最適な書込位置に対応する。
【0050】
本発明はDTMを備えたハードディスクドライブにも適用できるが、その構成は書込位置の決定機構に関しては同一である。ただし、ハードディスクドライブは、装置固有のDTMを内蔵している点でDTMの評価装置と異なる。図8を参照すると、ハードディスクドライブ41は、スピンドルモータ42に取り付けられた記録媒体Mと、ヘッドスタックアセンブリ43と、を有している。ヘッドスタックアセンブリ43は、複数のアーム44(図では1つのみ図示)を有するキャリッジ45を有している。各アーム44には、ヘッドジンバルアセンブリ46が、互いに間隔を開けて垂直方向に並ぶように取り付けられている。キャリッジ45の、アーム44の反対側には、ボイスコイルモータの一部となるコイル47が取り付けられている。ボイスコイルモータは、コイル47を挟んで対向する位置に配置された永久磁石(不図示)を有している。記録媒体M毎に、磁気ヘッドが搭載された2つのスライダ48が、記録媒体Mを挟んで対向配置されている。ヘッドスタックアセンブリ43はスライダ48を支持すると共に、スライダ48を記録媒体Mに対して位置決めする。スライダ48はアクチュエータ(不図示)によって、記録媒体Mのトラック横断方向に動かされ、記録媒体Mに対して位置決めされる。スライダ48は磁気ヘッド1を含んでおり、磁気ヘッド1は記録媒体Mに情報を記録する書込素子2と、記録媒体Mに記録されている情報を再生する再生素子5とを含んでいる。ヘッド位置決め機構はあらかじめ上述のように作動し、最適な書込位置を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係るDTMの評価装置の全体構成図である。
【図2】記録媒体とヘッド位置決め機構の上面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る書込位置の決定方法を示すフロー図である。
【図4】書込位置を決定すべき対象トラックの、記録工程における展開図である。
【図5】スクイーズ工程の概念図である。
【図6】書込位置を決定すべき対象トラックの、スクイーズ工程工程における展開図である。
【図7】半径方向位置と信号電圧の平均値との関係を示す概念図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るハードディスクドライブの全体構成図である。
【図9】従来技術における、DTMに磁気データを書込むときの概念図である。
【図10】従来技術における、DTMに磁気データを書込むときの概念図である。
【図11】従来技術における、磁気ヘッドの書込素子の位置を決定方法を示す概念図である。
【図12】従来技術における、半径方向位置と信号電圧の平均値との関係を示す概念図である。
【符号の説明】
【0052】
1 磁気ヘッド
2 書込素子
4 磁界印加領域
5 再生素子
6 トラック幅
11 DTMの評価装置
12 媒体回転機構
13 ヘッド位置決め機構
14 制御部
15 記録制御部
16 スクイーズ制御部
17 再生制御部
18 最適書込位置算出部
19 書込位置の決定機構
21 書込素子の中心線
22 トラックの中心線
23 非磁性領域の中心線
24 磁界印加領域の中心線
41 ハードディスクドライブ
H 非磁性領域
M 記録媒体
T トラック
Rk 半径方向位置
Ik 再現性指標
θk 角度範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気的に互いに分離された同心円状の複数のデータ書込み可能なトラックが形成されたディスクリートトラック型の記録媒体における書込位置の決定方法であって、
回転する記録媒体の評価対象トラックの近傍で、磁気ヘッドの半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、前記記録媒体の前記半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N。ただし、θ1からθNまでの和は360度以下。)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を前記記録媒体に印加する記録工程と、
前記記録工程で磁界が印加された前記記録媒体の前記角度範囲θk毎に、対応する前記半径方向位置Rkに対して、前記磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側に移動して、イレーズパターンを有する磁界を、前記記録工程における磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加するスクイーズ工程と、
前記磁気ヘッドを、前記記録媒体の前記角度範囲θk毎に、対応する前記半径方向位置Rkに固定しながら、前記スクイーズ工程を経た前記記録媒体の前記トラックから磁気データを読み出す再生工程と、
前記半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した前記磁気データの、印加した前記磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求める工程と、
前記再現性指標Ikの極値に対応する前記半径方向位置Rkを前記トラックに対する最適書込位置として決定する工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
前記スクイーズ工程は、前記磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側及び径方向外側に移動し、前記イレーズパターンを有する磁界を前記磁化パターンの内周部及び外周部と重なるように印加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スクイーズ工程は、イレーズされないで残った前記磁化パターンの幅が概ね前記トラックの幅と一致するように、前記磁気ヘッドの前記半径方向位置を選定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記記録工程は、前記トラックの各セクターに対応して前記角度範囲θkを設定することを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記再現性指標Ikはビットエラーレートである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記再現性指標Ikは出力信号強度である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
磁気的に互いに分離された同心円状の複数のデータ書込み可能なトラックが形成されたディスクリートトラック型の記録媒体を回転させ、かつ該記録媒体の評価対象トラックの近傍で磁気ヘッドの半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、前記記録媒体の前記半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N。ただし、θ1からθNまでの和は360度以下。)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を前記記録媒体に印加するように、磁界印加位置を位置決めする記録制御部と、
前記磁化パターンを有する磁界が印加された前記記録媒体の前記角度範囲θk毎に、対応する各半径方向位置Rkに対して、前記磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側に移動して、イレーズパターンを有する磁界を、前記所定の磁化パターンを有する磁界の前記記録媒体上における磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加するように、該イレーズパターンを有する磁界の印加位置を位置決めするスクイーズ制御部と、
前記磁気ヘッドを、前記記録媒体の前記角度範囲θk毎に、対応する前記半径方向位置Rkに固定しながら、前記イレーズパターンを有する磁界が印加された前記記録媒体の前記トラックから磁気データを読み出すための再生制御部と、
前記半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した前記磁気データの印加した前記磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求め、前記再現性指標Ikの極値に対応する前記半径方向位置Rkを前記トラックに対する最適書込位置として決定する最適書込位置算出部と、
を有する、ディスクリートトラック型の記録媒体における書込位置の決定機構。
【請求項8】
請求項7に記載の書込位置の決定機構と、
前記記録媒体を回転させる媒体回転機構と、
前記所定の磁化パターンを有する磁界と、前記イレーズパターンを有する磁界とを印加し、前記記録媒体の前記トラックから磁気データを読み出すことができる磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドのヘッド位置決め機構と、
を有する、ディスクリートトラック型の記録媒体の評価装置。
【請求項9】
請求項7に記載の書込位置の決定機構と、
前記記録媒体を回転させる媒体回転機構と、
前記所定の磁化パターンを有する磁界と、前記イレーズパターンを有する磁界とを印加し、前記記録媒体の前記トラックから磁気データを読み出すことができる前記磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドのヘッド位置決め機構と、
前記記録媒体と、
を有する、ハードディスクドライブ。
【請求項1】
磁気的に互いに分離された同心円状の複数のデータ書込み可能なトラックが形成されたディスクリートトラック型の記録媒体における書込位置の決定方法であって、
回転する記録媒体の評価対象トラックの近傍で、磁気ヘッドの半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、前記記録媒体の前記半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N。ただし、θ1からθNまでの和は360度以下。)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を前記記録媒体に印加する記録工程と、
前記記録工程で磁界が印加された前記記録媒体の前記角度範囲θk毎に、対応する前記半径方向位置Rkに対して、前記磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側に移動して、イレーズパターンを有する磁界を、前記記録工程における磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加するスクイーズ工程と、
前記磁気ヘッドを、前記記録媒体の前記角度範囲θk毎に、対応する前記半径方向位置Rkに固定しながら、前記スクイーズ工程を経た前記記録媒体の前記トラックから磁気データを読み出す再生工程と、
前記半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した前記磁気データの、印加した前記磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求める工程と、
前記再現性指標Ikの極値に対応する前記半径方向位置Rkを前記トラックに対する最適書込位置として決定する工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
前記スクイーズ工程は、前記磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側及び径方向外側に移動し、前記イレーズパターンを有する磁界を前記磁化パターンの内周部及び外周部と重なるように印加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スクイーズ工程は、イレーズされないで残った前記磁化パターンの幅が概ね前記トラックの幅と一致するように、前記磁気ヘッドの前記半径方向位置を選定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記記録工程は、前記トラックの各セクターに対応して前記角度範囲θkを設定することを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記再現性指標Ikはビットエラーレートである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記再現性指標Ikは出力信号強度である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
磁気的に互いに分離された同心円状の複数のデータ書込み可能なトラックが形成されたディスクリートトラック型の記録媒体を回転させ、かつ該記録媒体の評価対象トラックの近傍で磁気ヘッドの半径方向位置Rk(1≦k≦N。ただし、Nは2以上の自然数)をN段階で離散的に変えながら、前記記録媒体の前記半径方向位置Rkに対応した所定の角度範囲θk(1≦k≦N。ただし、θ1からθNまでの和は360度以下。)毎に、所定の磁化パターンを有する磁界を前記記録媒体に印加するように、磁界印加位置を位置決めする記録制御部と、
前記磁化パターンを有する磁界が印加された前記記録媒体の前記角度範囲θk毎に、対応する各半径方向位置Rkに対して、前記磁気ヘッドの半径方向位置を径方向内側または径方向外側に移動して、イレーズパターンを有する磁界を、前記所定の磁化パターンを有する磁界の前記記録媒体上における磁界印加領域の内周部または外周部と重なるように印加するように、該イレーズパターンを有する磁界の印加位置を位置決めするスクイーズ制御部と、
前記磁気ヘッドを、前記記録媒体の前記角度範囲θk毎に、対応する前記半径方向位置Rkに固定しながら、前記イレーズパターンを有する磁界が印加された前記記録媒体の前記トラックから磁気データを読み出すための再生制御部と、
前記半径方向位置Rk(1≦k≦N)毎に、読み出した前記磁気データの印加した前記磁化パターンに対する再現性を表す再現性指標Ik(1≦k≦N)を求め、前記再現性指標Ikの極値に対応する前記半径方向位置Rkを前記トラックに対する最適書込位置として決定する最適書込位置算出部と、
を有する、ディスクリートトラック型の記録媒体における書込位置の決定機構。
【請求項8】
請求項7に記載の書込位置の決定機構と、
前記記録媒体を回転させる媒体回転機構と、
前記所定の磁化パターンを有する磁界と、前記イレーズパターンを有する磁界とを印加し、前記記録媒体の前記トラックから磁気データを読み出すことができる磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドのヘッド位置決め機構と、
を有する、ディスクリートトラック型の記録媒体の評価装置。
【請求項9】
請求項7に記載の書込位置の決定機構と、
前記記録媒体を回転させる媒体回転機構と、
前記所定の磁化パターンを有する磁界と、前記イレーズパターンを有する磁界とを印加し、前記記録媒体の前記トラックから磁気データを読み出すことができる前記磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドのヘッド位置決め機構と、
前記記録媒体と、
を有する、ハードディスクドライブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−55664(P2010−55664A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217616(P2008−217616)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
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